■『侍戦隊シンケンジャー』感想まとめ4■
“半端な覚悟じゃないぜ 男の約束
甘ったれるなよ 一貫献上
六人目の侍 握れ金色の魂”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『侍戦隊シンケンジャー』
感想の、まとめ4(16〜20話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
戻る
〔まとめ1〕 ・
〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕
〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・
〔まとめ9〕 ・ 〔まとめ10〕 ・
〔総括〕 ・ 〔劇場版他〕
- ◆第十六幕「黒子力」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:大和屋暁)
-
「どうした太夫。今日は音色が湿ってやがる。何かあったのか?」
違いのわかる男・血祭ドウコク (だばだーだーばー だばだー)
普段ただの酔っ払いなのに、太夫に対してだけ洞察力が発揮されるので、いっそ特殊能力に見えます(笑)
あと、基本雑な口調のドウコクさんにしては「何かあったのか?」という言い回しが大人の男の優しさが滲み出てラブい。
前回、川岸で見つけた十臓を助けていた太夫は少し動揺を見せるが、ドウコクにはその件について語らず。十臓との会話によると、
どうやら太夫も、生きて三途の川へ入ったはぐれ者?
その頃志波家では、屋敷の中でモヂカラを使って黒子に迷惑をかけた青緑黄が彦馬に怒られていた。
「黒子の爪の垢でも煎じて、飲ませてやりたいわ。はははははは」
街へ繰り出した5人は、親切に道案内をしたりゴミ拾いをしたり、地元に密着して街の人々から好かれる黒子達の姿を目にする。
そう、見覚えの無い男女が日がな一日たむろして庭から奇声や変な物音が聞こえてきたり、
突然馬に乗って飛び出してくる男が居たりしてもこれまで志波家が通報されずに済んでいたのは、
黒子達の地道な慈善活動の賜物であった!
……まあ若干、志葉家近辺のご町内は、不思議コメディに浸蝕されていると思っておけばいいものと思われます。
今まで気付かなかった黒子達の姿に、テンションの上がった流ノ介、千明、ことはの3人は、
街の人々に親切を押し売り。
更に、黒子を尾行して、親切を横取り。
だがいずれも、うまくいかずに黒子に良い所を持って行かれてしまう。
「どなたかぁー、困ってる方は、いらっしゃいませんか!」
無駄にいい声で無駄に華麗にジャンプする流ノ介。
それらを生暖かい目で放置する殿と姐さん。
これまで、年少組/年長組、忠義一徹組/現代っ子組、というチーム分けはありましたが、今回は、
精神年齢高い組/精神年齢低い組みたいな分け方か。
そこへダンゴムシアヤカシが登場し、鋼鉄の鎧のような皮膚は、シンケンジャーのあらゆる攻撃を弾き返す。
黄と緑が街の人々を逃がす黒子に気を取られている内に、残り3人は回転攻撃を受け、アヤカシは乾燥肌で退却。
実は元々、黒子達は付近の人々の避難誘導など、かなり戦いに近い所でも陰に日向にシンケンジャーをサポートしていたのであった。
殿の言い方だと侍の常識っぽいのですが、千明とことはが知らなかったというのは、若干苦しいか。
まあ千明は割といい加減な家の出身という自己申告があり、ことはは途中から修行に入ったので、
引き継ぎミスがあったのかもしれません(^^;
「黒子さんが居るから、私達は安心して戦える。私達が戦うから、黒子さんはサポートに徹する事が出来る」
流ノ介も年少組と一緒に滑っていたのに、姐さんがやたらに黒子に詳しいのは、親戚筋に黒子を輩出している家系でもあるのでしょうか。
今回多分、日常のお世話係だと思われた黒子達が実は戦いにも関わっていた!
という所を千明とことはを視聴者代理にしてギャップで面白さに繋げるのがポイントだったのかと思うのですが、個人的には、
そこの驚きは無かったので、面白みは感じず(^^;
年少視聴者にとっては、黒子さんが今ひとつわかりにくいかも、という事で作り手としては、
必要なエピソードだと考えたのかと思われますが。
リアリティの補強としては、不思議コメディが領空侵犯してきて、
良かったのか悪かったのか(ネタのバランスとしては嫌いではないですが)。
ダンゴムシアヤカシが再び地上に現れ、黒子による着物への着替えシーン付きで、シンケンジャー出陣。
赤の指示を受け、まずは緑と黄が枝と岩で回転攻撃を止めると、続いて桃の風に乗せて強化した赤の火でアヤカシの装甲を熱し、
最後は青が波で急速冷却。急激な温度差によってダンゴムシアヤカシの装甲が脆くなった所に、虎五輪弾で成敗。
巨大化後はまずはシンケンオーの侍斬りの後、カブトシンケンオーで(何故か)火を噴き、カジキシンケンオーで水を吐いて冷却し、
最後はトラシンケンオードリル突撃で粉砕。シンケンオーの合体からバンクシーンをたっぷり使い、各侍武装をおさらいしました。
黒子フィーチャー含め、新展開前に、これまでのひとまとめ、という位置づけのエピソードでもあった模様。
カブトがどうして火を噴いたのかはわかりませんが!
木属性なのに、森を燃やしてどうするのかカブト。
最後は、日常に戻って、黒子もたまにはミスをする、でオチ。彦馬もやってしまって、実に1話で三つの壺が壊れる志葉家であった
(まあ彦馬は何でもすぐに家宝認定しそうだけど)。
次回、寿司食いねぇ。
- ◆第十七幕「寿司侍」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
-
殿、アピール度満点の斬Tシャツ。
アヤカシの反応に出陣する5人だが見つける事が出来ず、屋敷に戻ると「近日見参」と書いた矢文が打ち込まれる。
更に殿が何かの気配を感じ、1人で床をゴロゴロ転がって、姐さんから遠回しに「疲れてるのよ……」扱い。
入浴中でも視線を感じる殿は屋敷の中で刀を振り回し、そんな殿の心労を少しでも減らそうと、
アヤカシの反応が出た場所を改めて探った4人は、矢文を放ったと思われる屋台の寿司屋、ゴールド寿司と接触する。
もともと寿司は屋台で提供されるものだったので、非常に由緒正しい寿司屋です。
どうにも怪しげな寿司屋が逃げ出し追いかける4人だが、殿が1人で外出したという連絡に、年長組は殿を追い、
年少組は寿司屋を追う事に。水中だと何者かの気配が弱まる事に風呂場で気付いた殿(ただのサービスシーンでは無かった!)は、
邪気を払う泉に潜ってアヤカシの妖術から目をくらますと、のこのこ出てきたアヤカシの妖術を打ち破る事に成功。
一旦謎の寿司屋を捨て置いて合流する5人だが、妖術使いのキツネアヤカシに連係攻撃も破られて苦戦。……やはりどうも、
搦め手に弱い傾向が続きます。
だがその時、何故か寿司屋がそこに現れる。
「誰だあいつ?」
「寿司屋です」
「は? 寿司屋?」
だ、誰か、素でついていけない殿にもっとわかりやすい解説を!
シンケンジャーがピンチになるのを待っていた、という寿司屋が取り出したのは、寿司チェンジャーに寿司ディスク。
……えー、なんだこの、観光地のお土産コーナーの片隅にある玩具コーナーに並んでいるような、物凄いばったもん感。
「一貫献上! 俺が6人目のシンケンジャー! シンケンゴールドだ!」
そんなばったもんで変身してしまった光の戦士の登場に、全員硬直。
……寿司屋で金ピカで武器がサンマなので、まあ、当然の反応です。
志葉家の先祖は、何を考えていたのか。
誰も知らない6人目の侍、シンケンゴールドはサンマもとい魚丸を手に取ると、ナナシ軍団を高速の居合い斬りで撃破。
逆手+小太刀+抜刀術という、シンケンジャー5人との差別化を図ろうとして物凄くカオスな剣士が生まれてしまいましたが、
侍というより忍者に近いスタイル。突然の矢文や強烈ワサビ寿司などの卑劣なやり口といい、
もしかして:武神館の手の者か。
ゴールドはキツネアヤカシの妖術に苦戦するが、レッドが助太刀に入ってトドメは連続居合い斬り百枚おろしでアヤカシを成敗。
巨大化したアヤカシの透明妖術に天空シンケンオーも苦しむが、ゴールドが新たな折神、烏賊折神を召喚。
イカスミを吹きかけて透明化を破った所に天空唐竹割りで斬殺するのであった。
新戦士の登場にともなうパワーアップ展開に繋げる為か、天空シンケンオー、早くも苦戦。……まあシンケンオーの場合、
各種侍武装が追い詰められた事は特にないので、そもそも天空シンケンオーでなければならない必然性、
というのも余り無いのですが(^^; シンケンオーで戦う場合と最初から天空シンケンオーを発動する場合に特に理由が付けられないのは、
今作の短所。
そして烏賊折神を見た丈瑠は、シンケンゴールドの正体に思い当たっていた。
「おまえ……源太か」
「覚えててくれたかぁ! 久しぶりだな、たけちゃん!」
歓喜の勢いで殿に抱き付く寿司屋、嫉妬に狂いそれを速攻で引きはがしにかかる流ノ介。
果たして寿司屋の正体は、そしてシンケンゴールドとは何なのか?! という、新戦士登場編。
殿を筆頭に物事を思い詰めるメンバーが多い中、陽気で素っ頓狂な光の剣士は、いかなる嵐を巻き起こすのか。とりあえず、
千明とどう差別化するのかに注目。
- ◆第十八幕「侍襲名」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子)
-
ゴールド寿司の店主にしてシンケンゴールドを名乗る青年の正体は、殿の幼なじみでありかつて志葉家の近所にあった寿司屋の息子、
梅盛源太。幼い頃によく屋敷に潜り込んで丈瑠と遊んでいた源太だが、店が潰れて一家夜逃げをしてしまいそれっきり……
烏賊折神はそんな源太に子供の頃の殿が渡した餞別であった。
と、家臣一同の前で幼き日の過ちを曝される殿。
これまで一切言及してこなかった事を見るに、殿、この事を記憶の闇に封じていたのでは(笑)
そこへ自分で陣太鼓を打ちながら、正装のつもりで大きく間違った衣装を着た源太がやってくる。
「後は任せる……」
殿、逃走。だが、いっけん呆れたように見えた殿は、廊下に出た所で爆笑。
「あいつ……変わってない」
大きくなったら侍になって一緒に戦う……子供の頃の他愛ない約束を果たしに戻ってきた、真っ直ぐな友。だが、侍でもない友を、
本当の戦いに巻き込むわけにはいかない、と、殿は新たな悩みに揺れる。
子供の頃の殿が泣き虫でへたれな感じなのですが、いったい如何なる魔改造の末に、殿はこんな事になってしまったのか……
志葉家の闇は深い。
まあ、それだけ“侍の使命”が重く、覚悟をその身に背負っているという事なのでしょうが、志葉家に代々伝わる暗黒教育術、
恐るべし。
寿司チェンジャーと寿司ディスクは、烏賊折神と殿の話を頼りに、源太が自作していた事が判明。
彦馬いわく「電子モヂカラ」という事ですが、科学の力で擬似的なモヂカラを発生させているとでもいう事か。
以前の黒子回で「侍と黒子の最大の違いはモヂカラの有無」と語られていましたが、これ、本格的に研究開発したら
量産型シンケンブラックを大量に生産できるのでは。……某カラス天狗ばりのやられモブにしかならない予感ですが。
父の寿司屋を継いだ源太は寿司セットを作る傍ら、丈瑠との約束を守る為に侍を目指して独り剣の稽古に励み、逆手抜刀術を習得。
……千明が途中で囃すのですが、どうも源太は本当に天才っぽい。……バカだけど。
剣も発明も完全独力だとあまりに天才なので、通りすがりの山なんとかいう老忍者に教えを受けた可能性をそこはかとなく考慮したいですが、
それにしても、変身装備を完全自作、というのはシリーズでも相当異端でしょうか。ある意味で、70年代ヒーロー的(笑)
とにかく、ご先祖様には責任はありませんでした、すみません。
源太のトンデモぶりと熱い思いを好意的に受け止める年少組だが、彦馬はシンケンジャーへの参加を拒否し、
寿司チェンジャーを取り上げる。そこへアヤカシ出現の反応があり、やってきた殿も、源太の協力を拒絶。
「爺の言う通りだ。おまえは侍じゃないし、6人目でもない」
あくまでも他者を巻き込む事を良しとしない丈瑠の冷たい態度に、源太は欄干から転がり落ちて気絶。
キツネの仇を討とうと気合いの乗った、二刀流のヒャッハー系アヤカシ(鎌鼬か)が高速の剣技で暴れ回り、
全身に纏った刃による攻撃はレッドすら捌ききれない剣風となってシンケンジャーを苦しめるが、乾燥肌で撤退。
「次までに見切らないとな」
「……助っ人はいなくていいの?」
殿の悩みを感じ取り、それとなく追い込みをかける姐さん、スーツの中はきっと獣の目。
「俺、いらないんだってさ……」
一方、黄昏れる寿司屋に、年少組は仲介を買って出る。空回り気味な所に同族意識を感じているのか、千明は早くも「源ちゃん」扱い。
「いいの……幼なじみ、帰っちゃうよ?」
その頃志波家では、考え込む殿に、餓狼の如く姐さんが追撃をかけていた。
「問題あるか。あいつは侍じゃない」
「またぁ。最近くだけてきたと思ってたんだけど」
「俺は同じだ。変わってない」
迷いから目を逸らすかのように、1人稽古を行おうとする殿に、横から打ちかかる茉子。
「本当は嬉しかったくせに」
ここから、竹刀を打ち合わせながらの会話、というのは今作らしさが出て味わいのあるいいシーンになりました。
「巻き込みたくないんでしょ。でも……一つ勝手な推測。幼なじみが居たんじゃ、今までみたいな強い殿様で居づらい。
だから追い返した」
的確なボディブローに動揺した殿、茉子に一本を取られる。
「……当たり?」
やばい、やばいよ天使センサー!
「自分で言ったろう。勝手な推測だ」
だがその時、垣根の下でこの会話を耳にしていた寿司屋が飛び込んでくる。
「馬鹿野郎! 幼なじみを助けたら、なんで強くねえんだ! 水くせぇぞ! 俺だって覚悟決めてきたんだ。
幾らだって命預ける。だから巻き込めよ俺を!! もう、ぐっるぐるにぃ!!」
今作において主従の絆のキーワードである「命を預ける」をそれと知らない筈の源太が口にした所で、
いったんカメラを切り替えて息を呑む殿の表情を映す、というのは地味ながら効いた演出。
「馬鹿、いいから帰れ! おまえは――」
更にそこへ、千明とことはもやってくる。
「丈瑠、源ちゃんから聞いたぜ、子供の頃の話」
よりによって、年下組に恥ずかしい過去がバレたーーー。
「もう1人で格好つけらんねえな」
「お前達……」
自分の幼年期の事を勝手に語られるとか、殿とか侍とか関係なく、深い、精神的ダメージです(笑)
「強くなきゃ殿様で居られないっていうのは違うんじゃない? たまには弱かったり、誰かに頼る殿様でもいいじゃない」
テンプルにいい打撃を喰らって下がった殿の顎に、姐さんの右フックが炸裂。
「俺は、別に……」
最後に面倒くさい流ノ介も、いざという時は自分がフォローすると源太を認め、殿、K.O!
早めにフォローを入れないといけないメンバーが多い都合でキャラクターの掘り下げや活躍が後回しになっていた茉子ですが、
12話−13話と来て、ここでおいしい役回り。新メンバーも含め、男衆がみんなアレなので、
精神年齢の高いポジションに落ち着くようです。
「返せよ。寿司チェンジャー。あん時の約束だ」
――遠くに行っても、友達だから。
――よし、稽古して、たけちゃんが殿様になったら、俺、家来になってやるよ。だから、侍にしてくれよな。
――うん!
あの日の約束を果たしに戻ってきた友に、丈瑠も覚悟を決める。
「おまえが、シンケンジャー6人目の侍だ」
殿と家臣の心が一つになり、本当の意味で戦隊になるまでは1クールかけてやりましたので、ここはあまり時間をかけずに、
そんな家臣達の側面攻撃もあり、殿、陥落。
殿はこのまま、ゆるふわ生物になってしまうのか。
再び現れたアヤカシに、源太を加えた6人は出陣し、陣幕延長でシンケンジャー揃い踏み。赤がちらっと横を見たのは、
友達がちゃんとポーズ取れるのか心配したのか(笑)
赤と金は息の合ったコンビネーションでアヤカシの全身刃を捌ききり、ダブル攻撃で成敗。
巨大化したアヤカシの全身刃に苦戦するシンケンオーだったが、ここで、烏賊折神が侍武装。
これまでカブトにこだわっていたシンケンオーなので、てっきり頭に烏賊を被ってロケットマン攻撃とかするのかと思っていたのですが、
先端が右手の槍、真ん中が左手に盾、残りの足が背中に付く、という新パターン。
イカシンケンオーは槍衾の連続突きで刃を弾き、盾からの冷凍ガスでアヤカシの動きを封じると、背中の足に集めた電気を槍に移し、
必殺・ヤリイカ一閃で刺殺。
殿の決め台詞の前にゴールドが強引に一本締めを挟み、ちょっとコミカルな一幕の後、「これにて、一件落着」。
これまで残念流ノ介が滑り芸で獅子奮迅の活躍を見せていた今作のコミカル成分ですが、ここで陽気な正統派バカキャラが加わり、
演出も明るさが強調されました。
シンケンオーの追加武装は、イカの加入により、カブトムシ・カジキ・トラ・イカで、
半分が魚介類という、大胆な展開。寿司屋の水槽に、なんかもう一つ入ってるしなぁ……。
戦い終わり、ゴールド寿司をご馳走になるシンケンジャー。それを見つめる、殿と彦馬。
「俺は弱くなったのか……? 前は独りで平気だったのに、今は――」
「さぁ……それを申せば、そういう殿をお諌めできぬどころか、少し嬉しく思ってしまっている爺もまた……あっはははははは」
殿のみならず、志波家の因縁と宿命に頑なになっていた主従、という形で彦馬の変化も描かれているのは良い所。……なお、
寿司の味は普通でした。
まずは登場編という事で丈瑠との友情を軸に描かれたゴールド、“物凄い努力”で納得できる範疇を飛び越えている気がする開発力で、
自分のハイスペックに気付いていない天然バカ、といった感じですが、この陽性のキャラが5人とどんな科学反応を見せるかは楽しみです。
今作の場合、初期メンバー5人の関係性が収まったのが12話と遅かった為、バランスが取れている所に新キャラが入るというよりも、
流れの中の6人目といった感じが強く、追加戦士で発生しがちな歯車の噛み合わない感じが薄いのは良い所。
次回、真のコメディリリーフの座を賭けて、流ノ介と源太、激突。
- ◆第十九幕「侍心手習中」◆ (監督:竹本昇 脚本:小林靖子)
-
OPマイナーチェンジで、ゴールド追加。
モヂカラの研究中に、折神は文字のプログラムのようなもの、と気付いた源太は、自作の折神――海老折神を披露。
源太登場回からイカと一緒に水槽に入っていましたが、また海産物が増えました。
電子モヂカラは、書の代わりに、携帯電話(寿司チェンジャー)を介した文字入力で擬似的なモヂカラを発生させるシステムと説明……
博士ポジションが居ないのを良い事に、源太の開発能力がトンデモ。
まあ、志葉家が志葉家なので、これまであまり、科学的なアプローチを試みていなかった、という可能性はありそうですが。
「確かに凄い……侍というより、職人だな」
皆が褒めそやす源太に、ぐさっと五寸釘を突き刺す流ノ介。
「侍になってはしゃいでいる内は侍じゃない。侍ごっこだ!」
「なにぃぃぃ」
侍の純粋培養種である流ノ介に自分が侍である事を認めてもらいたい源太は、茉子達のアドバイスを受け、
生活態度の改善……の前にまずは黒子の扮装で屋敷に潜り込み、流ノ介をストーキングしてその一日を観察する事に。
夕食後、モヂカラの練習を行い、それを終えたら就寝まで歌舞伎の稽古、そして朝4時には起床してトレーニング……
と真面目一筋の流ノ介。基本的に、修練の積み重ねと実力が繋がっている世界観なので、流ノ介の背景としては納得する所。
早朝ランニング中に女性の悲鳴を聞いた流ノ介は、既に尾行している事を察していた源太に声をかけ、2人は山奥の結界の中へ。
そこにはかつて三途の川に繋がっていた井戸があり、初めて地上出張したシタリは、その井戸に生け贄を捧げる事で井戸と三途の川を繋げ、
人間界に外道衆の出城を作り出そうとしていた。
ここでドウコクが人間界に出てこられないのは、封印の後遺症で乾燥肌が酷い為である事が判明。
シタリが繰り出した油アヤカシに油をかけられて武器が握れず、直接打撃もぬるぬるボディに通じず、
シタリの妖術で吹っ飛ばされる2人。怪我をした源太に逃げるように言って単身人質の元へ向かう流ノ介は生アクションを披露するが、
そこに源太も駆けつける。
「助けなきゃいけねえ人が居るのに、侍が自分の命守るかよ」
「どうやら、他はともかく、その一点だけはおまえも侍のようだな」
源太の覚悟を聞いて流ノ介がそれを認めるのですが、この辺りはどうも悪い意味で月並みにして雑。お約束はお約束で構わないのですが、
源太がそこに至る背景描写が薄いので、うわべのお約束になった感じは否めません。
「丈瑠の為に侍になりたい」というのと、「侍として〜」というのは、別の事項なので、
その分は土台を補強しなければいけなかったのですが、そこが足りていない。
まあ解釈としては源太の場合、侍ではないが故に、“侍らしさ”の理想に対して純粋、という事かもしれませんが、
殿との幼馴染みの約束、にもうワンステップ加える大事な所だけに、ここを描くなら、もう1話ぐらい使って欲しかった所。
結界の影響で他のメンバーに連絡を取れない2人だったが、自分が稽古の時間に遅れれば、必ず変事を察して動いてくれる、
という確信が流ノ介にはあった。
「信じるんじゃない。殿は来る。それだけだ。私はただ、戦えばいい」
先行して突貫した2人は人質の救出に成功。油アヤカシの攻撃に苦戦するが、そこに流ノ介の確信通り、4人がやってくる。
「ほー、信じるんじゃなくて疑わねえんだ。これっぽっちも。参ったねぇ。侍が命預けるってのは、こういう事か」
シタリは退却し、相性が悪いという忠告を無視して戦いを挑んだ油アヤカシは案の定、殿に燃やされ、水と光のダブル攻撃で成敗。
巨大化後は油攻撃でイカを分離させるが、イカスミ吐いて再合体して冷凍された所を一閃。今回も一本締めを入れて一件落着。
何かと残念な流ノ介の、高性能かつ芯から侍な箇所だけがピックアップされた結果わかった事は、
自分に厳しく他人にも厳しい上で結構高圧的な努力家というのは、身近に居るとなかなか嫌な奴だな、と(笑)
むしろ流ノ介には愛嬌として残念が必要だ、というのが良くわかるエピソードになりました。
そして源太は、侍としてはともかく、人間としてはあまり影響を受けてはいけない人の影響を受けたキガスル。
- ◆第二十幕「海老折神変化」◆ (監督:竹本昇 脚本:小林靖子)
-
ことはのサプライズ誕生パーティが準備され、殿、ケーキ屋さんにはじめてのおつかい。
近所なら、多分、迷子にはならない……筈。
ドウコクの縛りが完全に抜けた十臓は、久々に復帰して地上に出た早々、荒野で屋台とすれ違う。
「あんた……ただもんじゃないな。屋台を見る目つきでわかる。相当のグルメだ」
「面白い。寿司屋。次に会った時は食わせろ」
……バカの相手をするの面倒くさくなったな(笑)
「あの雰囲気……もしかして 無職 ミシュラン」
バカとバトルジャンキーがそんな出会いをしていた頃、市街地に魂を吸い取る口アヤカシが出現し、ことはが魂を吸われてしまう。
「魂を食われた人間は、一日で死ぬ」
助けたければアヤカシを倒すしかないが、性格の悪いアヤカシはわざわざ種明かしをした上で、三途の川へ引きこもると宣言。
ことはは倒れ、他にも54人の人々が意識不明となり、その近しい人々の悲嘆が三途の川を増水させていく。
「ほんま……うちだけでよかったわ」
翌朝、わずかに意識を取り戻したことはは、仲間達の無事を見て、けなげ爆弾で全方位大爆破。
丈瑠の好感度が激しく上昇した!▼
流ノ介の好感度が激しく上昇した!▼
茉子の好感度が激しく上昇した!▼
千明の好感度が激しく上昇した!▼
彦馬の好感度が激しく上昇した!▼
黒子たちの好感度が激しく上昇した!▼
殿も思わずことはを抱き起こして励まし、千明は矢も楯もたまらずアヤカシが姿を消した隙間を我武者羅に刀で斬りつける。
何とか三途の川へ乗り込む方法は無いのかと思い悩む4人の前に、姿を見せるのは通りすがりの腑破十臓。
「俺は勝負運が無いのかな。やっと戦えるかと思うと、おまえは妙に取り込み中と来ている」
自分の都合で休暇していた自覚があるのか、殿の事情にも気をつかうバトルジャンキーさん(重病)。
「わかっているならどけ。おまえの相手をしてる暇はない」
「生きた人間が、三途の川に行く方法ならある」
三味線のBGMに合わせて、背景には薄皮太夫のシルエットも入り、太夫もはぐれ者確定という事でいい模様。
生きて三途の川に入る方法――それはおよそ人の道から外れた事をして、生きて外道に身を堕とす事。
「どれほどの事をするか、それを考えろ」
「おまえ……まさかそうやって外道衆に」
「同じ外道となって、人の命を超えて戦う。それもまた、一興だな」
ことはの為、人々の為、外道に落ちるもやむなしと覚悟を決める4人……ここで侍の使命の為に戦う礎になっているのは、
近しい人を想う情の部分であり、それがあるから、どこかの誰かの為に戦えるのだ、
だから仲間の為に戦うのは使命を捨てる事ではないし丈瑠が一人で重荷を背負う事もない、と持ってくるのですが、
それはいいけど4人とも、どんな外道を働くつもりなの? という部分が引っかかって話がすっと入ってきませんでした(^^;
前回も踏まえる形で「覚悟」と「覚悟の背景」と「殿と家臣」を繋げているのですが、現実的な手段として突き付けられた
「人の道から外れた行い」に関する葛藤が軽い為、話のピントがずれた感じに。
流ノ介の恥ずかしい過去をインターネットに流すぐらいでは、たぶん無理ですよ?
そこへ源太が、アヤカシを引っ張り出せるかもと海老折神の海老ぞーを持ってやってくる……と他の解決手段が持ち出されるので、
そもそもこのエピソードで突き詰める問題ではなかった、という事になるのですが、
当然その展開はキャラクターが知っているわけではないので、この前段階では相応の重みを持たせなければなりません。
太夫と十臓に関する伏線も兼ねていたのでしょうが、小林靖子としては珍しいレベルのミステイク。
また、海老ぞーが来た途端にその話が完全に雲散霧消してしまい、思わぬ助けで空気が一変、という意図だったのかとは思いますが、
十臓の登場が久々だけに、あおりをくって十臓の印象まで薄くなってしまったのは少々やりすぎだったと思います。
5人は海老ぞーにモヂカラを打ち込みまくり、徐々に巨大化していく海老。そして、
先の戦闘中にゴールドに「海老」の文字を打ち込まれていた口アヤカシの体が、遂に起動した海老折神と文字の力で繋がった事により、
海老に引き寄せられる形で地上へと引きずり出されてくる。
「海老」の文字の作用により得意の分離攻撃も不能になったアヤカシは、怒りの5人の猛攻を受けてあっさり焼死。
シンケンオー合体不能のため巨大化したアヤカシに挑む海老折神は、侍変形により、巨大ロボットへと姿を変える!
「ダイカイオー東、へいお待ち!」
……東?
顔が変わると武装が変わる仕様のダイカイオーは、西、南とフォームチェンジすると大天空と共にオオナナシ軍団を蹴散らし、
最後は東に戻って「海老ハサミ 灰皿テキーラ 本手返し」により、口アヤカシを成敗。
エネルギー供給こそ4人の助けを借りましたが、源太はとうとう独力で変形ロボットを開発してしまい、この男、
戦隊史上に残るトンデモメンバーかもしれません。
志波家は正式に、給料払って抱えておいた方がいいと思います。野に放っておくには、危険すぎる……。
黄色回かと思ったら黄色は寝ているだけで、終わってみれば、海老回。海老でダイカイオーで東西南北とかさっぱり意味がわかりませんが、
率直に格好悪いので、これは合体前提だと思いたい(^^; 名前は大海王と言う所でしょうが、
どちらかというと色々なセンスが前作『炎神戦隊ゴーオンジャー』ぽい(笑) ……そしてこの後、貝折神も出てくるのであろうか。
ラストはことはの誕生パーティで和やかに締め……かと思いきや、源太が屋敷を出ると、寿司屋台に近づいていた謎の男が、
烏賊折神を自前のクーラーボックスにしれっと収めていた。
「この世界のお宝、折神は、僕がいただいた」
「なんだとぉ? てめぇなにもんだ?!」
「ま、通りすがりの仮面ライダー、てとこかな」
ゴールド加入後、新メカ登場などノルマ達成優先という所か、やや出来の悪いエピソードが2本続きました。一応、
「侍の使命と覚悟」という部分を振り返っているのですが、物語の中に今ひとつ綺麗に収まらず。状況が落ち着くのを少し待ちたい。
なお寿司屋はまだ、EDには入れず。
- ※番外編※◆『仮面ライダーディケイド』第24話「見参侍戦隊」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子)
-
「この世界のお宝、折神は、僕がいただいた」
「なんだとぉ? てめぇなにもんだ?!」
「ま、通りすがりの仮面ライダー、てとこかな」
「仮面ライダー? なんじゃそりゃ」
『シンケンジャー』20話→『ディケイド』24話→『シンケンジャー』21話→『ディケイド』25話という形で、
同時期に放映していた『仮面ライダーディケイド』と2週にまたがってコラボするという、クロスオーバースペシャル。リアルタイムでは、
放映をそのまま見ていると自然と繋がる作りなのですが、後から個別で作品を見ると、これといった説明が付加されていないので、
割と意味不明(^^; 折良く配信されたものを、『シンケンジャー』最終回まで視聴後に、視聴。
源太が泥棒を追いかけ始めた頃、殿様の居る世界へやってきた門矢士(『ディケイド』主人公)は、黒子の役割を与えられていた。
士のこの役割もあってか、陣幕を張るシーンや撤収シーンなど、黒子の活動シーンの描写が長め。合わせて、
家臣達の見ていない所で爺と口喧嘩する殿(の姿を士が目にする)など、本編メインライターである小林靖子が出張して書いているだけあって、
『シンケンジャー』本編の裏面を描く、という仕掛けと構造。
寿司屋に追われる泥棒は、生身の人間相手にカニとエイ(海産物ライダー)を召喚するが、相手はトンデモ光の戦士であった。
その戦いを隙間から覗くシタリは百目アヤカシを放ち、その攻撃を受けて無残に変身アイテム(銃)を奪われる泥棒。
……普段から弱いのでしょうか、この人?(^^;
ケガをした泥棒を拾った士はディケイドに変身し、ディエンド銃を手に入れて暴れ回るアヤカシと戦うが、逃げられてしまう。
水切れを起こさなくなったアヤカシは、なんと、ディエンド銃で「変身」し、ディエンドもどきの仮面ライダーとなると、
自らの肉体からナナシ軍団を生み出す……で、『シンケンジャー』本編、21話へ続く。
出張編という事で、シンケンジャーがいつもと違う変身パターンというサービス。
あくまで『ディケイド』のおまけという事かと思いきや、割とがっつり登場して、ちょっとビックリ。
→〔その5へ続く〕
(2015年6月6日)
(2017年9月3日 改訂)
戻る