■『侍戦隊シンケンジャー』感想まとめ2■


“火と水と天と木と土 宿命の文字の守護よ
成り変われ いざ獣へ 折神大変化!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『侍戦隊シンケンジャー』 感想の、まとめ2(6〜10話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

戻る

〔まとめ1〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕
〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・  〔まとめ9〕 ・ 〔まとめ10〕 ・  〔総括〕 ・ 〔劇場版他〕


◆第6話「悪口王」◆ (監督:竹本昇 脚本:小林靖子)
 侍、稽古中。その様子を監督とコーチのように見守る殿と爺。
 「ことはの剣はいいですな。素直で迷いが無い」
 「千明じゃまだ、歯が立たなくて当然か」
 「ただことはは……武術以外、さっぱりですからな」
 「まあ……確かになぁ……」
 どじっこ属性を追加したことは、稽古中に負傷させた千明にお手製小麦粉シップを貼ろうとして、小麦粉をひっくり返すなど、大騒ぎ。
 「茉子ちゃんなんて、綺麗で賢くて、料理も出来んのになぁ」
 「いや、料理はちげえだろ」
 先日の衝撃発言は、ことはのレベルが低すぎる故に、茉子の料理でも憧れの対象に見えてしまう、と判明(笑) 良かった、 茉子に洗脳されていたのではなかった! ただ、修理不能なだけだった!!(あれ?)
 「ううん、ほんま。でも、しょうがないわ。うち、アホやし」
 「なんだよそれ……」
 すぐに自分を卑下する言動が目立つことはに、千明が苛立ちを見せる、というのは納得のいく絡め方。殿は我関せずだし、 流ノ介は細かい機微とかわからない上で素直に受け止めて前向きに励ましそうだし、 姐さんは姐さんで土壇場ではフォロー入れるけどそういう事もあるよねと見守ってしまいそうだし。
 劣等感というのは下手に使うと面倒くさくなるだけですが、千明のそれは、今作におけるキャラクターの階層化の形成にあたって、 巧く使われています。
 そんな時、「デブ」「プチ整形」「穀潰し」など、本人が言われたくない言葉を告げる事で、 精神的ダメージをそのまま物理的ダメージとして及ぼす、という性質の悪いアヤカシが登場。対峙するシンケンジャーだが……
 「落ちこぼれ」
 千明、綺麗な弾道で吹っ飛ぶ。
 「ファザコン」
 流ノ介、更に高く飛ぶ(笑)
 「一生独身」
 姐さん、ちょっと耐えるけど、やはり吹っ飛ぶ。
 この辺り、姐さんはやはり、ストレートに落としにくい気配が窺えます。
 「嘘つき――大嘘つき」
 そして、最初の一言には耐えるも、思わぬ言葉で吹っ飛ぶ殿。丈瑠は意外なトラウマを色々と隠し持っていそうではありますが、 先に繋がるっぽいネタを仕込んできました。
 4人が次々と吹き飛び、残るはことは。
 「おまんは、ドジ」
 だが、シンケンイエローは吹き飛ぶ事なく、アヤカシへと攻撃を繰り出す。
 「アホ」「バカ」「間抜け」「これでどうだ、鈍くさ女!」
 続けざまに罵声を繰り出すアヤカシだが、イエローには一切効かず、撤退。
 「うち、慣れてるから」
 要領の悪さで小さい頃からイジメられ、他人からバカにされる事の多かったことはは、罵詈雑言への耐性が強く、 またそれをその通りだ、と自ら受け入れてさえいた。しかしその態度に、千明は苛立ちを露わにする。
 「笑ってんじゃねえよ。おまえすぐ自分のことアホとか言うけどさ、それでへらへら笑ってんのって信じらんねぇ。なんか苛つく。 私はアホです、て誰かに言い訳してんだ。謙遜ならイヤミだし……本気で思ってるなら、マジで馬鹿だ」
 なお、「ファザコン……だったのか私」とがっくり落ち込む流ノ介を、珍しく殿がフォロー。変な遺言を残された身なので、 父子関係には思うところあるのか。
 その頃、ことはに自分の技が通用しなかったアヤカシは、三途の川で薄皮太夫を練習台として吹っ飛ばしていた。前回、 「太夫はアヤカシとそりが合わない」というネタがありましたが、ドウコクのお気に入りで三味線弾いているだけだからか、 どうも太夫はアヤカシから軽んじられているらしい、というのが重ねて描写。まあ基本的に、忠誠心とか、組織だった上下関係はなく、 外道衆はドウコクが強いから従っている、というシンプルな縦社会なのでしょうが。
 出来ればついでにドウコクさんにも、「駄目人間」とか言ってみて欲しかった。
 気にしてないかもしれないけど!
 屋敷の庭に飛び出したことはは、追いかけてきた千明に、姉との思い出を語る。 ことはが自分に対するどんな悪口も受け入れて受け流すのは、病弱な姉の為だった。 自分の代わりに侍の道を歩む事になったことはを心配する姉を泣かさない為に、何があっても強くあろう、 ということはなりの一つの決意と戦いだったのである。
 「泣いたら、お姉ちゃんが心配して、もっと泣かはる。そやから、笑うんや。何があっても」
 ことははホント、ぐいぐい攻めてくるなぁ(笑)
 かつてここまで、健気押しの戦隊メンバーが居たでありましょうか。
 まあ殿が複雑骨折している分、ある程度、元来レッドが担当する事が多い“真っ直ぐな部分”というのを、流ノ介・千明・ことはに、 配分している感じでありますが。その上で、各個人にそれぞれの屈折を与えている(流ノ介は侍の使命と歌舞伎や家への夢と愛情、 千明は侍を否定したがりながら捨てきれない矛盾と力不足への劣等感、ことはは侍に依存している在り方そのもの)。
 そう考えると茉子だけ少し変則なのですが、一人だけ普通の社会人経験があったり(流ノ介はやや特殊と見る) 軸が強くて道が見えている、というのは意図的なものか。まあまだ6話なので、この後、茉子の揺れも描かれるかもしれませんが。 単純なキャラ付けといえばそれまでですが、茉子が日常シーンでは大体雑誌を手にしていて、 常に最も一般社会に近い位置に居る描写がされているのというも、深読みとしては興味深いところ。
 「アホって言われたって、自分でわかってたら、何ともないし。でも、自分でアホって思う事が、ほんまのアホやっていうのは、 気付かへんかったわ。うち、やっぱりあかんな」
 「ごめん! バカなのは俺だ」
 ことはの芯の強さ、自分とは違う劣等感への向き合い方を知った千明は、自分より年下で武芸に優れることはが「自分は駄目だ」 という言葉に、立場を無くした苛立ちがあった、と謝罪。
 「ごめん……八つ当たり」
 とはいえまあ、劣等感を抱えつつも負けず嫌いな千明からすると、ことはの「アホだから仕方ない」 という言い分が最初から負けを認めているようで受け入れがたいのは本音でしょうし、その辺りは千明のいい所であり、 わかりやすいクラスのヤンキー未満の立ち位置でもあります(笑)
 お互いの本音を知り、アヤカシ出現の報に駆け出す寸前、千明の袖を引くことは。
 「千明、うち、千明の剣、好きや。真っ直ぐで千明らしい。きっと、もっと強くなる」
 ナチュラルに、傷口に、塩を擦り込みにいきました。

 天然、怖い。

 「さんきゅ」
 それはそれとして、年下の可愛い女子と距離感が縮まる今の環境も悪くない、みたいな空気が滲み出ているのも、 千明のいい所です(笑) 青春中だから。
 ところで、ことはは千明より年下という言及がありましたが、千明でギリギリ高卒なので、ことはは今度こそ休学中なのか。 或いはそもそも、高校通ってない感じか(ありそう)。
 陣幕張って揃い踏みしたシンケンジャーは、図星アヤカシと再戦に挑み、備えが出来ていれば大丈夫、 と精神力で打ち勝とうとするが……
 「心頭滅却すれば、火もまた」
 「マザコン」
 開始早々、流ノ介、吹っ飛ぶ。
 図星アヤカシはナナシを呼び出して4人と戦わせ、黄色と一騎打ち。
 「儂の言葉は絶対だ。必ずおまんを、言葉で倒す」
 怪人の特殊能力が物語と密接に絡むという方がやはり好きなのですが、図星アヤカシは自分の技にこだわりを持っているのも、 いい個性になりました。何故か土佐弁?なのは、このはと対決させる関係のアクセントか。
 「姉ちゃんの補欠!」という言葉にわずかに動揺を見せるも、アヤカシの悪口に抵抗し、攻撃を続ける黄色。 怒りの緑が救援に駆けつけ、連係攻撃でダメージを与えると、最後は殿のカブトキャノンで成敗。巨大化後は、 シンケンオーが左手を個別に立方体に戻し、更に分離攻撃という荒技を見せ、最後は海老キャノンで滅殺する。
 カブトシンケンオーは、折角だから余った足を両肩にちゃんと装備しているのと、割と後頭部が大きく余り気味なのが、 けっこう好きです(笑)
 かくして戦いはシンケンジャーの勝利に終わった……が、戦闘終了の直後に倒れて気絶してしまうイエロー。 ことはは決して投げかけられた言葉に対して無傷であったわけではなく、封じ込んだ無意識の奥では、確かに傷ついていたのだ。
 「おまえ、やっぱバカだな。けど、すげっ。おまえは凄えよ」
 気絶したことはを千明が背負って運び、後ろでは流ノ介のマザコンを掘り返す姐さん。
 「やめとけ。誰にでも、触れられたくない事だってあるだろ」
 今日の殿は、流ノ介に優しい。
 「ふ〜ん……嘘つきも?」
 「――そういう事だ」
 「…………まあ、そうだよね。殿様も、それぐらいはね」
 姐さんの、天使センサーがこぇぇぇぇ。
 それにしても姐さんは、弱っている男にはセンサーが感知して助けたくなるけど恋愛の対象外、 という事は本質的な好みは強い男と思われるのですが、 姐さんと付き合うと事あるごとにこんな感じで内角に直球を投げ込まれて耐久力を試されるのかと思うと、 それは大抵の男は泣いて逃げ出すわけで、「一生独身」がクリティカルヒットしたのも、むべなるかな。
 かくして年下組が交流を見せ、流ノ介は安定のお笑い要員、そして殿がじわじわセンサーに追い詰められていくのであった(笑)  やはり、怪人の能力が物語に絡む方が面白く、今後のアヤカシのバリエーション付けには期待したい所です。
 ところで今作、ここまでずっとオチのシーンは屋敷への帰り道で描かれており、 時代劇のまた旅物のエンド(一つの街の事件を解決して、次の街へ)を意識しているようですが、 演出サイドでの作品世界の雰囲気の統一として、なかなか面白い。
 次回、お笑い要員はいい所を見せられるのか。フィーーーッシュ!

◆第七幕「舵木一本釣」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
 かつての戦いでディスクから解き放たれて野生化していた舵木折神が発見されるが、タイミング悪く外道衆が出現し、 殿は流ノ介に舵木折神のゲットを任せ、4人でアヤカシに挑む事に。流ノ介は文字力で作り出した竿に空の ポケモンボール 秘伝ディスクをはめると、巨大な舵木折神とのスーパーフィッシングに挑む!
 見所は、アヤカシの毒でよろよろしている勢いで、流ノ介を叱咤激励する殿。
 「流ノ介! 爺は大袈裟に言ってるんだ! 余計な事は気にしないで、おまえはカジキだけに集中しろ!」
 「いいか、俺は適当におまえを選んで行かせたんじゃない。おまえなら出来ると思ったからだ」
 殿、この一週間の間に、ビジネス書でも読んで人材マネジメントに目覚めたのか。
 文字力を酷使しながら釣りに励む流ノ介と、強烈な毒霧を吐くアヤカシに苦戦するシンケンジャーが交互に描かれるのですが、釣りは、 どうしても、盛り上がりきれず(^^;
 ぼろぼろの体で変身もままならないまま、少しでも被害を食い止めようとアヤカシに挑む殿の方は格好良くなったのですが。
 文字力と侍について知り、先代に仕えて死んだ侍の友人、を名乗る漁師と出会った流ノ介は、侍の使命など親に刷り込まれたもので、 その為に戦っても虚しいだけではないか、と問われるが、丈瑠の言葉と戦いに、自分の意志を見つめ直す。
 「あの殿なら、命を預けて一緒に戦える。そう決めたのは自分です! 親じゃない」
 と、最も家臣としての忠義に純粋であり、家と使命に縛られている流ノ介が、“殿という存在”ではなく、 丈瑠個人に対して忠義を抱くに至っている、という立ち位置確認エピソード。 その言葉を聞いた漁師は懸命にカジキに挑み続ける流ノ介に手を貸し、流ノ介は遂に舵木折神をゲット。
 生身でアヤカシと戦い続ける殿の元には、同じく猛毒に冒されながらも3人が駆けつけ、更に4人の窮地を救った青が、 カジキアローで毒を浄化。揃い踏みから反撃に移り、赤と青の2人で、舵木五輪弾を放ってアヤカシの一の目を撃破する。
 烈火大斬刀の大筒モードは、兜専用ではなく、舵木でも発動可能と判明。また、その気になれば一緒に撃てる事もわかりました(笑)
 マネジメント! イッツ・マネジメント! 遅ればせながら、帝王学!
 巨大化したアヤカシの噴き出した霧で相手の姿を見失い苦戦するシンケンオーだったが、青がカジキ折神を操って霧を払い、反撃。 殿なら相手の姿が見えなくても殺気で攻撃を見切ったりできそうですが、 ここまで特に見せ場の無かった青に活躍の場を与えようという心遣いです。ザ・マネジメント!
 そして侍武装で、カジキも被る。
 巨大ロボは、『百獣戦隊ガオレンジャー』以降の組み替え路線のようですが、 頭部へのこだわりが新機軸なのか(笑)
 カブト同様、余ったボディ部分が背中にバックパックとして付くのは、無駄な余剰パーツを出さずにいい所。
 カジキシンケンオーは刀を薙刀モードに変形させると、バックパックから魚雷発射。シンケンオーは、兜を付け替えると、 飛び道具に走るなぁ(笑) 最後は、薙刀を頭に刺して、そのままお辞儀で敵を切り裂く「カジキ一刀両断!」で成敗。
 多分、上級技で、更に深く相手を切り裂く「ドゲザ一刀両断!」があるに違いありません。
 カジキのイメージをそのまま技に組み込んだのでしょうが、てっきり突き刺すと思ったら、頭から切り下ろしたのには意表を突かれました(^^;
 カジキというチョイスが既に変化球気味でもありますが。
 新たなシンケンジャーの戦いに、かつての志を取り戻した謎の漁師は、黒子の一員として志波家に復帰。 彦馬がわざわざ顔を合わせて迎え入れているので、凄い黒子なのでしょうか。今後出てくるかはともかく(そういう点で、 顔が見えなくても、あれがあの漁師かもしれない、という事に出来る黒子を巧く活用)。
 7話にして、遅まきながら、青、単独見せ場。浮かないように、という判断だったのか、割と早めに、 流ノ介「個人」としての忠義の姿を描いてきました。この辺り、主要メンバーの好感度を下げないように、 という配慮が今作には強く窺えます。また、流ノ介の忠義に足る人物である事を強調する為に、合わせて殿も見せ場。 初戦で珍しく殿が正面からアヤカシに負けたのですが、それを乗り越え、言葉よりも行動で見せるという、殿らしい見せ場になりました。 結果、微妙に流ノ介の見せ場が食われ気味なのは、流ノ介だから仕方ない。
 そしてそんなシンケンジャーを見つめる、新たな外道衆の影。OPにのみ登場していた幹部がいよいよ姿を現し、次回……結婚。

◆第八幕「花嫁神隠」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子)
 教会で行われる結婚式――ウェディングドレスに身を包むのは、白石茉子。隣に立つ新郎は、志葉丈瑠。
 ……なんか殿、目が死んでないか(笑)
 その時、教会を襲うナナシ集団……が狙って連れ去ったのは別の教会、別の花嫁。頻発するナナシによる花嫁誘拐事件を止める為、 偽装結婚式で囮を仕掛けたシンケンジャーだったが、空振りに終わってしまう。
 志葉家の力では、さすがに付近の結婚式を全て中止させる事は出来なかった模様。
 ちなみに、『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003)では、闇のフィクサー疑惑のあるカレー屋店長・介さんが、同様の囮作戦の為に、 「結婚式を全て中止してもらって」いました(笑)
 マスコミに情報管制をお願いしたり、最後まで謎の人物でした、介さん。
 シンケンジャーの囮作戦は一応、それまでの7件の事件のパターンから次に狙われそうな式場を推測して行っていた事が判明。 さらわれた花嫁の居場所を突き止める為、もう一度囮作戦を行おうとするが、翌日に予定されている近隣一帯での結婚式はまだまだ多い。 そこで丈瑠は一計を案じ、花嫁誘拐事件の危険性を大袈裟に騒がせる事で(恐らく黒子の大量活用による)式場に結婚式を延期させ、 結果、行われる結婚式は一つに絞られる。
 上で『アバレンジャー』の例をあげましたが(『アバレン』の世界観としてはこれで問題なかった)、 「志葉家の力」はあくまで大袈裟にしすぎず、作戦に作戦を重ねるという形で、結婚式場を絞っていくというのは、 段取りを踏んで今作としてのリアリティを描きました。それでも結構大がかりですが、 一足飛びしてやってしまうよりは良かったと思います。あと多分、黒子の皆さんは《忍者》スキルを持っていそうなので、 流言飛語による情報操作の類いは得意分野でないかと想像されます。
 一方、さらわれた花嫁達は古寺に集められ、薄皮太夫によって繭の中に閉じ込められていた。
 「気持ちのよい声……きっとわちきにふさわしい仕上がりになる」
 太夫はさらった花嫁達の涙で紡ぎ出した絹糸で、打掛を作ろうとしていた。
 ようやく幹部クラスが真面目に仕事する気になったのかと思ったら、個人的趣味でした!
 「打掛とは未練じゃないか。昔を忘れられないって事だろう」
 三途の川では、他のアヤカシとは毛色が違う事が匂わされる太夫について、シタリが伏線言及。 打掛というと元々は武家の婦人の礼服ですが、これは太夫が、武家に関わる出身という事なのか。
 あ、ドウコクさんは、今日も元気にお酒を飲んでいました!
 翌日、シンケンジャーは結婚式ジャックを行い、花嫁になりかわった茉子は予定通りにさらわれる。 だが太夫はシンケンジャーがこそこそ動いている事に勘づいており(まあ急に、結婚式が一つになったわけで)、茉子だけでなく、 本物の花嫁も同時にさらっていた。太夫は茉子の書道フォンを奪うと、花嫁達を人質にして茉子に嘘の情報を流させ、 4人は突入した倉庫で大爆発。
 窮地に陥る茉子だが、その時、古寺に大爆死した筈の殿達が飛び込んでくる。
 「引っかかったのはそっちて事。私はただの囮。――もう1人潜入していたのよ」
 「その通り」
 花嫁を捕らえる繭を中から切り開いたのは、白無垢姿の流ノ介。
 歌舞伎で培った《女形》スキルを用い、流ノ介が“もう1人の花嫁”ともすり替わっていたという、二重三重の囮作戦だったのである。
 女装だけど、前回よりもむしろ見せ場だ!(笑)

 というか、戦隊的には女装=見せ場だ!

 事前に殿の「打てる手は打っておく」という台詞があり、流ノ介の女装も設定と特技を活かして、無理なくはまりました。
 流ノ介から太夫のアジトの情報を聞いた殿達は、偽情報の倉庫には文字力で作り出した影を向かわせて外道衆をたばかり、 本命の古寺へと急行。花嫁達を助け出した5人は、一筆奏上。8話にして初の幹部との対決という事もあってか、 外へ飛び出した太夫を取り囲む形で、次々とシンケンジャーが登場するという、変則パターンで格好いい名乗り。
 ピンクが木の上に居たり、グリーンが座った体勢から立ち上がったりとそれぞれ変化をつけているのも良く、 対する太夫が三味線を片手に中央でぐるりと回る、というのも格好いい。
 初アクションの薄皮太夫は、幻術や特殊攻撃など変則の戦闘タイプかと思ったら、凄く、肉弾戦でした。 真っ向勝負で青と桃と火花を散らし、三味線の仕込み刀で花嫁2人を撃破。応援に来た殿と一騎打ちとなり、ここのバトル音楽が、 ちょっと西部劇チックで面白い。
 緑と黄が雑兵ナナシを片付けて5人が揃い、連続の属性攻撃で崩した所にカブト五輪弾を放つが、謎の鬼面忍者がそれを阻む。
 「おまえか、俺の裏正に見合う奴は」
 前回ちらっと登場し、シタリ曰く“はぐれ者”のアヤカシは、オオナナシを放つと太夫を連れて撤退。……見た目忍者なのですが、 バトルジャンキー系の患者さんでしょうか……?(笑)
 多数のオオナナシに動きを封じられるカブトシンケンオーだが、キャストオフで囲みを破るとカジキ武装に切り替え、 オジギ一刀両断でまとめて成敗。オオナナシは、一般怪人の出てこない特殊な回に、ロボット戦をねじ込むのに使える事が判明しました。
 前回は、流ノ介が漁師の小屋を訪れて置き手紙を見つける→漁師は黒子に復帰、というオチでしたが、今回はいつもの帰り道エンド。
 「結婚前に花嫁衣装を着ると、本当の結婚が遅れるって話、思い出した。二度も着ちゃったし、やばい……」
 ノリノリの花嫁コスプレを今更悔やむ茉子、女形スキルをもっと磨こうと考える流ノ介、そして鬼面忍者の事を気にする殿は、 いつの間にかケーキをおごらされる事になっていた……でオチ。そこは気前よくおごって家臣の心を掴むチャンスですよ殿!  1人2個まで!
 OPに登場した忍者幹部が、いよいよ本格登場? CVの唐橋充さんというと、スネークオルフェノクか。
 太夫の過去については、シタリの言及以上には触れられませんでしたが、
 「これを着れば、昔のように……」
 「これを着たわちきの姿に、アヤカシどもも皆ひれ伏すであろう」
 という台詞があり、打掛をこのエピソードにおいて武家の婦人のシンボルと見るならば、太夫は零落した武家のお姫様、 それを軽んじるアヤカシは元来は武家の者という推測も出来そうです。
 三途の川が死者しか行く事が出来ず(今回の彦馬の台詞より)、ドウコク曰く「生きも死にも出来ずによ! ここに居るしかねえ、 俺たち外道衆」という事なので、外道衆(アヤカシ)は成仏できない怨霊、それも武士に限られるという事なのか。「侍戦隊」だけに、 その辺りが何らかの因縁を持って繋がりそうでもあり、心の隅に留めておきたい。
 次回……縦ロール?

◆第九幕「虎反抗期」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:小林靖子)
 赤と青の練習試合を見て、流ノ介が思ったより強い、と感心する千明。剣の技術だけなら丈瑠に匹敵する、 と一同に褒めそやされる流ノ介だが、これは勿論、迫り来る転落の前置きでしか無かった。
 その頃、三途の川では腑破十蔵が、ドウコクと因縁のある志波家当主の跡取り(丈瑠)を狙う事について筋を通しに現れ、 あっさりと了解を得ていた。
 「そうか、何も仕掛けていないのか」
 何やら含みのある物言いで姿を消す十蔵。
 「ドウコクめ。気付いていなかったとは驚きだな。が、わざわざ教えてやる必要もあるまい」
 今のところ何が何やらですが、物語に関わる秘密を握っているキャラ、として十蔵が一つ印象づけられました。
 「なあ、裏正。肌が粟立つほどの戦い無くして、生きて三途の川に入った甲斐はない」
 意外と律儀な十蔵でしたが、やはりバトル大好き病の重症患者でありました。しかも、 たった1人の友達の日本刀に話しかけるというおまけ付き。生きながら三途の川へ入ったという十蔵は、人間の姿に変身。
 外道衆幹部クラスのキャストがキャストだけに、経験者とはいえ声の力の弱さが少々気になっていたのですが、 なるほど十蔵は顔出し前提のキャスティングでしたか。
 一方、かつての戦いで地割れにはまっていたという虎折神を妖術で洗脳し、自分の手先として操るアヤカシが出現。 流ノ介も術を受けてしまい、バーサク状態で、桃、緑、黄を撃破。アヤカシを狙っていた殿は3人を助けて一時撤退を余儀なくされる。
 水分補給したアヤカシが再び現れ、ブルーとの一騎打ちに臨む殿。
 「なに考えてんだよ、丈瑠の奴。いつまでも殿様の顔崩さねえから、こういう時100パー信じらんねえじゃねえか!」
 色々としこりがあったけれど、本当は丈瑠の事を信じたくなっている千明、といういい叫び。
 赤と青は激しく刀を打ち合わせ、ふらっとやってきた十蔵、戦いを解説(笑) 技量には優れるが、型どおりの道場剣術であり綺麗な 「一本」を狙う癖がついている青に対し、実戦で鍛え抜かれた赤の剣は臨機応変、状況を利用し、 最後の「一撃」を狙っている……十蔵の解説通り、戦いが長引くにつれ、ペースを握りだした赤は、渾身のモヂカラを刃に込める。
 (流ノ介、耐えろ!)
 スパルタ殿、「反」のモヂカラをブルーに叩き込み、流ノ介洗脳解除。
 アヤカシは虎を呼び出して赤が獅子で対応し、殿は虎の妖術も力技で解除。残り4人が連続攻撃でアヤカシを撃破し、 巨大化したアヤカシに対して早速虎折神を侍武装。 縦ロール トラシンケンオーがここに誕生する!
 これまで被り物重視の侍武装でしたが、虎はバックパックの4つのドリルが主体で、兜の交換は申し訳程度。 4つのドリルで標的を打ち砕く「虎ドリル突撃」により、アヤカシを粉砕する。
 …………何代目かに特別駄目なご先祖様が居たのかもしれませんが、志葉家のセンスはかなり危険だ。
 戦いは終わったが、洗脳されて殿に刀を向けた事に意気消沈する流ノ介……とそれを見て超嬉しそうな姐さん。姐さん、 弱っている男を放っておけない天使というより、弱っている男を助ける事でエネルギーを得る悪魔みたいになっているよーな。
 なお、一度痛い目を見た事もあってか、茉子の甘言をきっぱり無視する所に、流ノ介の精神的成長が窺えます。
 流ノ介のあまりの嘆きように、足を止め、振り返る丈瑠。
 「流ノ介。あれだけのモヂカラを打ち込んだ、おまえは死ぬかもしれなかったんだ。俺はおまえの命を勝手に賭けた。 ………………ごめん」
 と、と、と、殿が!

 殿が壊れた!(待て)

 「これでこの話は終わりだ。もう二度とするな。いいな」
 そして早足で歩み去った!!
 「殿、勿体ないお言葉……」
 かくして殿が家臣の方へ歩みより、一件落着。前途多難な船出だった主従の関係も、少しずつ滑らかになっていくのでありました。 最近殿は流ノ介に優しいのですが、殿からすると割とざっくりしている茉子とかの方が楽で、忠義一徹の流ノ介とかへの対応が面倒くさく、 「俺が折れた方が面倒くさくなさそうだぞ……」という結論に達した様子が窺える一幕。
 真面目な話としては、先の千明の台詞とも対応して、「殿様の顔」から「丈瑠の顔」がほのかに覗ける良いシーン。
 面倒くさい流ノ介は、女装→洗脳で、ネタキャラの地位を確固たるものとし、 はぐれ外道衆・腑破十蔵は密かにその牙を研ぐのであった。
 ところで前回初めて気付いたのですが、アイキャッチで回す刀のツバに本編の画像が映り込んで、 ズームアウト/ズームインする演出は格好いい。

◆第十幕「大天空合体」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:小林靖子)
 カブト・カジキ・トラ、三枚の秘伝ディスクを手に入れた事でシンケンジャーは、3つの折神を合体させる大天空の力を得る。 大天空を操るにあたり、トラは殿、カジキは流ノ介、カブトは茉子が担当する事になり、内心カブトを得たいと思っていた千明は、 悔しさからひとり稽古に励む。
 やさぐれ気味に行きがちだった千明の負けず嫌いが徐々に前向きになっている姿が描かれ、爺、ご満悦。 そこへ人を絶望に落ち込ませる雨を降らせるアヤカシが出現する。
 赤「なんだこれは……」
 緑「みんな流ノ介になってるよ……」
 桃「やばい、ぎゅっとしてあげなきゃ、ぎゅって」
 まあ相手は喜ぶかもですが、姐さんの悪魔化がドンドン進んでいきます(笑)
 珍しく丁寧な口調で知的な雰囲気のアヤカシは空中移動でシンケンジャーを攪乱し、 ピンクが落としたカブトのディスクを使おうとするグリーンだが、使いこなせずアヤカシに逃げられてしまう。
 「おまえは、侍になるのは早すぎたのかもしれんな!」
 爺は書道フォンを取り上げて千明に謹慎を命じるが、内心では、悪くない素養を持ちながら、 その力を発揮しきれない千明に歯がゆさを感じていた。口うるさいのは殿のように若き侍達を育て上げねば、という熱意の現れであり、 千明への接し方について殿に相談するなど、可愛げを見せる爺。
 殿のコミュニケーション能力に問題がある原因の、半分ぐらいは爺の責任だな、と改めて。
 爺の相談を受ける殿は獅子折神と戯れ、何かを虚空に向けてアピール。
 なぜ殿は、虚空に向けてアピールするのか。
 爺はゲーセンで暇をつぶしていた千明を派手なバイクに乗せて竹林へ。
 「少し気付いた事があるのだ。千明、おまえが受け継いだ文字はなんだ」
 「木だけど」
 「どんな木だ?」
 曖昧な言葉しか出てこない千明に、爺はモヂカラの本質を問う。
 文字には一つ一つの形があり、意味があり、そこに力が宿る。丈瑠、流ノ介、茉子、ことは……それぞれが受け継いだ文字と力は、 それぞれ自身のものであり、他の誰かの真似をしても、巧くはいかない。
 「おまえの中にある、お前の木を見つけよ」
 ここで、竹林の外に古木が立っている、というロケーションは秀逸。
 何かを掴んだ千明は、外道衆出現の連絡を受け、アヤカシの空中攻撃に苦戦する4人の元に推参。それにしても、 はじめての空飛ぶ怪人に苦戦するのはお約束ですが、飛行手段がという斜め上。 傘を閉じたモードと広げたモードがあって、着ぐるみの造形も妙に凝っていたり。
 「シンケングリーン、谷千明、参る!」
 グリーンはウッドスピアを構えると、空中から銃撃してくるアヤカシに突撃。
 「俺のモヂカラ……でかくて、強くて、それで……すげー広がってる自由な感じ!」
 適当だ。
 自分の道に目覚めた千明は、ウッドスピアを変形させて棒高跳びの要領で空高く飛び上がると空中攻撃でアヤカシを撃破。 巨大化したアヤカシはまたも空中攻撃で優位に立ち、殿は大天空の使用を決断。何かきっかけがあれば使えるようになる筈、 と千明のモヂカラの上達を評価していた茉子がカブトディスクを千明に渡し、男衆3人は、大天空へと合体する!
 千明の「姐さん!」は、物凄く舎弟感が出ていて素敵。
 そして姐さんからすると、殿と流ノ介と一緒の箱に入るより、ことはときゃっきゃうふふしていたい。
 カブト・カジキ・トラは変形合体すると飛行要塞となり、傘アヤカシと空中戦を展開。前回の虎から少々疑念がありましたが、 どこかの代の志葉家当主が、折神の魔改造を行ったのは想像に難くありません。
 大天空は優れた機動性で傘アヤカシを追い詰め、シンケンオーが両肩から女子力ビームを浴びせた所に、「大天空・大激突」で成敗。
 割と体当たりが好きな家系です。
 未熟者ポジションの千明の成長話に、基本何でもありのモヂカラとは何か、というのを絡め、可愛げを出した爺が急接近。 まあ爺の内心は定番通りですが、あまり引っ張りすぎずに、明確に距離を詰めてきました。それはそれとして、志葉家は全体的に、 対人スキルを何とかした方が、いい。
 ここ数話で少しずつ殿の突出も抑え、メンバー5人の戦力ヒエラルキーを均していっているのですが、流ノ介が持ち上げられ、 千明がレベルアップした結果、戦闘面で姐さんが目立たなくなっているのはちょっと気になる所。モヂカラの扱いが得意なようですが、 特にそれを役立てて活躍した事が無いので、存在感が薄くなっています。いずれ秘伝ディスク絡みの話はあるのでしょうが、 その前に戦闘でもう少し、特徴を見せてほしい所。
 外道衆の方では、十蔵の言葉を気にして、シタリが志波家に関する古い資料を調べていた。その十蔵は、 地上で日本刀と語り合っていた。ドウコクは、寝ていた。

→〔その3へ続く〕

(2015年1月28日)
(2017年9月3日 改訂)
戻る