- ◆忍びの37「手裏剣伝説〜ラストニンジャへの道〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:下山健人)
- 進路指導の教師から、「ラストニンジャについてもう少し調べるように」と進路調査票を渡された凪は、 好天による体験型本格RPG『ラストニンジャへの道』をプレイする事になり、一同揃ってゲームの世界でコスプレ回。
凪と進路面談をした教師がラストニンジャについて微妙な反応で、今更ファンタジー扱いするのかと思ったら、 家庭の事情を深く追求しない方がいいと思ったのか突っ込んだ言及をしない為、結局作品の中でニンジャがどういう扱いなのか、 相変わらずもやもや。本当に「覚悟」が足りないのは、いったい誰なのか、少しばかり考えさせられる所です。
その頃、前回派手に吹っ飛ばされた末にドラム缶の下敷きになっていた正影は、九衛門に助けられる。 恐れエネルギー不足で急に苦しみだした奥方の為に、 ニンニンジャーに悟られずにこっそり恐れエネルギーを集めようとした正影はコンピューターに侵入できる妖怪モクモクレンを放つが、 それがかえってニンニンジャーとバッティングする事に。
画面に、ドット表示で「やくものこうげき!」など出る演出は、ネタ回としては悪くなかったと思います。 少々RPGの表現が古すぎる気はしましたが、途中で妖怪に襲われた子供達は割と最近ぽいゲームをやっていたり、 スマホゲーだったりしたので、別にリサーチ不足というわけではなく、演出としてのわかりやすさを優先した模様。
順調にゲームを進めていたニンニンジャーはゲームの中でモクモクレンと出会い、プログラム書き換え攻撃に苦戦。 怪人・赤ピーマン再びは飛び道具で面白かったのですが、どうやってプログラム攻撃を破るのかと思ったら、結局、 スーパースターが力尽くという、凝りきれなさは相変わらず残念(^^; 反撃を受けて倒れたポンチョは元妖刀を黄色にパス。
「凪ぼっちゃん、これを、お使いくださいやし!」
え?
使えるの??(^^;
別に専用武器でも無かった元妖刀を手にした黄色は一度は倒れるも、簡単にリセットしないで難敵に立ち向かう覚悟にゲームが応え、 覚悟手裏剣を入手。
中盤以降、年下で成長要素が強い・メンバーの中では比較的演技が達者、という事で物語内における凪のウェイトが上がっており、 それ自体はどの戦隊でも起こりうる事なのですが、どうして、〔凪が一皮剥けて超絶→キンジがスーパー化→凪が覚悟を知って成長〕 という構成になったのか(^^;
前々回、自分に自信を持つ事で成長が描かれた凪が、今回は、強敵に立ち向かう覚悟を得て成長する、 という内容も若干被り気味(更に言えば、今回の覚悟の決め方は以前のユキオンナ回と被り気味)。
せめて今回はスター以外と絡めばいいものを、武器を渡す都合でスターもアピールしてしまった為、3話続けて、 画面が黄色過ぎます。
6人はゲームの世界から飛び出し、黄色が覚悟手裏剣斬りを決めてモクモクレンを撃破。手裏剣は好天に回収され、 この後の会話だと実物の<終わりの手裏剣>だという扱いを受けるのですが、本当にそれでいいのか。 まあ天晴達の勝手な推測による誤解という可能性の方が高そうですけど。
にしても、ライオンハオーの回を受けて“他者を認める”ようになった変化の描写なのかもしれませんが、 凪が先に<終わりの手裏剣>を使ってしまったかもしれない事件にも、「よーし、俺も頑張るぞ」的な感じで済ます最近の天晴は、 丸くなったというより、がつがつした飢えが無くなったなぁ。
序盤の天晴は正直好きではありませんでしたが、飢えの無い天晴は、それはそれで個性が消えてきた気もします(^^;
単発として見ればそれほど悪くない出来だったのですが、立て続けに凪を持ち上げて、 体験ゲームのギミック扱いだった<終わりの手裏剣>がなし崩しで本物扱いを受けるという大きな展開が上手くなく、 どうもスッキリしないエピソードに。そろそろ3クール目も終わりますが、物語全体の引きの弱さとバランスの悪さが目立つ事になりました。
そんな中、妙な態度を見せていたキンジが1人どこかへ……というのは今作これまでにない伏線の見せ方で、 最終クールに向けた布石としては悪くなかったです。正直、今作ここまでの出来から判断する限りでは、 下山さんはメインライターとしては力不足に思えますが、最終クール、逆転の盛り上がりに多少なりとも期待したい。
次回――マジ黄色。…………て、世界繋がってるの?! というか、 八雲が残念クール気取りを通り越して可哀想な子になったのは、師匠のせいかぁぁぁぁぁぁっっっ!!
- ◆忍びの38「魔女っ子は八雲がお好き?」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:毛利亘宏)
- 前回の今回で、雑誌見ながら忍者成人式の話題でスタート……まあ、業界紙なんでしょうが。
その頃、本日の買い出し当番だったらしい八雲は、魔法学園の校長先生の娘で、学園で共に魔法を学んでいた魔女っ娘エレナと再会する。 なかなかイギリスに帰ってこない八雲が気になって一人で日本に来てしまったというエレナ(小学生ぐらい)。
「ね、魔法戦隊の仲間、紹介して」
「え?」
「クラウド、リーダーやってるって、手紙に書いてくれたでしょ」
君はやっぱり、そういう路線なのか。
慌てて居間を魔法戦隊風に改造した八雲は、エレナに4人を魔法使いだと紹介。「理由は云えない。 聞かないでくれ」と詳しい事情には口をつぐみながら、エレナが帰国するまでは魔法使いとして振る舞ってほしいと頼み込む……。
ここでいきなり、霞ねえが八雲の胸ぐらをむんずと掴んでストレートに怒っているのが、かなり意味不明。
……いや、毛利さん的に、霞が「魔法使い扱いをされた事」ではなく、「八雲が幼女を連れ込んだ事」に反応している、 というのはわかるのですが、あくまで毛利脚本基準で、物語全体の描写としての一貫性が薄いので、 非常にわかりづらい事になっています。
以前からうっすら気になってはいたのですが(近い回だと、ハチ女に煽られた時に霞が少し動揺するシーンがある)、 冒頭で「一緒に成人式」がちょっと嬉しそうだったりなど、今回通して見て、毛利さんの中では桃→青がやりたいというのが、 確定(今回は渡辺監督、ハチ回は竹本監督、芝刈り回は加藤監督なので、演出ではなく脚本繋がり)。
……なのですが、本当に毛利さんの中だけ設定の疑惑があり、会話はもとより、 演出も役者もどのシーンでどこまで感情を見せればいいのかがハッキリしていない様子で、 1エピソードの中ですら描写が安定していません。
更に、ラブコメ要素を入れるなら最低限、それによってキャラクターを可愛く見せてこそ意味があると思うのですが、 演出的にもそこを凄く曖昧にしている為、霞の可愛げアップに全く繋がっておらず、さりとて話の流れに影響をもたらすわけでなく、 何もかも中途半端。
今作全体の、この期に及んで腰が据わっていない感じと非常に悪い化学反応を起こしており、演出にしろ脚本にしろ、 キャラクターの魅力が引き出せないなら、何の意味があって入れている要素なのか。
驚くほど、誰のプラスにもなっていません。
この後、4人は八雲の頼みを聞いて忍法を魔法に見せかけたり、そこへキンジが山から帰ってきて一騒動あったり(なお、 エレナが一人足りない事を疑問に思っている様子が無いので、多分キンジの存在は手紙に書かれていない) とドタバタの後、八雲とエレナのデートタイム。
キャストクレジットで扱いが大きかったり、着替えまでありで割と長めの尺でしたが、有名子役だったりしたのでしょうか。
で、前回も触れましたが最近の天晴は、みんなの力を引き出す俺ポジションが気に入ったのか「○○がそこまで言うなら、 俺はやるぜ!」みたいな扱いが多いですが、“大抵の物事を相手に合わせて処理していたら、 本人のこだわりが雲散霧消してしまった”という非常に困った事態に。
第2話の頃だったら、
「ばっか、俺が魔法使いとかふざけんな! 八雲もガキんちょも爺ちゃんに対して失礼だぞ。おまえら謝れ。 爺ちゃんに土下座して謝れ! 謝らないならこうだ。上級手裏剣忍法・蓑踊りの術!!」
『火の術ー 木の術ー メラメラギャー』
だったと思うのですが。
……いや、これはこれで悪い例で、八雲の事情を汲み取って配慮できるように成長したとは言えるのですが、 物語の積み重ねからすれば天晴から「ニンジャへのこだわり」を除いたら筋肉しか残らないわけです。本来、 八雲からの魔法使い扱いに怒るのも、空気読まずに忍者衣装で姿を見せるのも天晴の仕事であって、そのリアクションをやった上で、 八雲の言い分を聞いて敢えて自分を曲げる、というのならわかるのですが、物語の都合に合わせて最初から軸を曲げて待ち構えている為、 すっかりキャラクターの芯がどこかへ行ってしまいました。
その後、妖怪カミキリが現れ、エレナの目を誤魔化す為に魔法戦隊風に変身した6人だが、戦闘中に八雲が魔法の杖を、 天晴が忍者一番刀をちょっきんされ、更にエレナがさらわれてしまう。エレナの身柄と全員の変身手裏剣の交換を迫られた八雲は、 仲間に迷惑をかけずにエレナを救う為、深夜こっそり家を出ようとするが、それを止める仲間達。
そもそも、変に誤魔化そうとしたからこんな事になったのでは……と追求された八雲は重い口を開き、魔法学校時代、 ともに修行していたエレナから「立派な魔法使いになったらお嫁さんになってあげる」という手紙を貰った事、 エレナの気持ちを守る為に、日本に帰って魔法使いではなくニンジャをやっている事を秘密にしておきたかったのだと告白。 子供の話だから重く捉えなくてもいいのではと霞が口にするが、
「だがイギリス紳士として! レディからのプロポーズを、無視する事はできない……」
加藤・クラウド・八雲、38話にして、紳士というか、ただのバカに。
いやこれ、普段から連発していればギャグとして成立するのですが、八雲の「イギリス人」ネタが、 恐らく毛利脚本回だけしか使っていない為、全くギャグになっておらず、そして本気なら頭が悪すぎて手遅れ、という状況に。
加えて、百歩譲ってプロポーズの件は言い出しにくかったにしても、 それなら本人だけ誤魔化して残りの4人はニンジャでも何の問題も無かった筈なのですが、 手紙で「魔法戦隊のリーダーなどを自称した」為により状況がややこしくなった、という真相に関してはだんまりを決め込んでおり、 いっけん八雲に正統な理由があったように見せて、実は全く正反対。
ギャグでもなく、八雲がバカでも無いのだとしたら、本当に問題のある部分を自らネタを放って目くらましをしたという事になり、 物凄く悪質。
というわけでギャグが成立していない以上、無難に収める為には、八雲の脳と心は残念を通り越して手遅れ、 という結論にならざるを得ません。
毛利さんや渡辺監督だけの責任ではなく、『ニンニンジャー』全体の抱える縦横の連携不足、という問題点が、ここに来て大噴火。 今作、基本的に個々のエピソードによる積み上げが不足している上に、
1+2+3+4+5=15
ではなく、
1+2+3+4+5=あ
といった具合で、それまで描いてきた事を集約しようとすると、 大抵斜め下にズレた頓珍漢な結論に着地する為に山場回が軒並み盛り上がらない(キンジに関しては、 正直思考放棄レベル)というのがもはや特徴といえます。
その中で、毛利さんはまだしもネタの連動性を意識した脚本を書いているのです それが下山回でほとんど拾われない為にかえって仇となり、演出も演者も煮詰められない、 たまに出てくる妙な(と言わざるを得ない)設定が、インターバルなど無かったかのように当然の背景扱いを受けるという、 非常に困った状況が発生。
監督とは脚本会議やっている筈ですし、毛利さんと下山さんが全く打ち合わせをしていないともさすがに思えず、 それらを統轄する為にプロデューサーなどが居る筈なのですが、どうしてこうなっているのか。
序盤からとかく、伏線の張り方や回収が上手くない作品でしたが、“設定に縛られすぎない自由”ではなく、 単に“設定を大事にしない”作品になってしまっています。
八雲の告白に、「女の子の夢を大事にするって素晴らしい!」と乙女回路に火がついた白が突然盛り上がり、 こいつもう駄目だ……と顔を見合わせる桃黄金、そこから強引にいい話にまとめようとする赤。
八雲を止める時に一番最後に出てきたり、プロボーズの手紙について「子供の話」と訴えたり、 桃→青を匂わせる描写を補強しておきながら、ここで霞が凪やキンジと同じラインに下がって埋没してしまい、 いったい何の為に匂わせているのか、全く以て意味不明。3人の表情も、最大限好意的に解釈して「困ったな……」なのですが、 演出も演者も困惑していて話の流れと人物の表情とその後の展開が全て噛み合っておらず、あまりにちぐはぐで笑えてくるという、 悪い意味でここが一番面白かったです。
そしてそんな表向きいいシーンの筈なのに、八雲の頬に黄色っぽい粉(多分、髪を染める粉) がついていて、凄く、気になります。
翌日、5人から変身手裏剣を受け取った八雲は、色とりどりの布を身につけ、単身、呼び出しの場所へ。 手裏剣を渡すも足軽兵の待ち伏せを受けるが、実は身につけていたバンダナやマフラーが魔法で変身させた仲間達だった! で反撃し、 手裏剣を取り返すと、エレナを助け出して反撃スタート。
「ちょっと、天晴坊ちゃん、これを使ってくださいやし!」
天晴の一番刀が切られたままなのを変身前にわざわざ強調したのは、元妖刀の為か。……まあ、特に活用はされないのですが。 そしてポンチョに関しては、存在などしなかったようにスルー。
ニンニンジャーの戦いを見守るエレナの元へ、エレナを迎えにイギリスからやってきた、小津翼(30前後)が登場。 てっきり校長先生(エレナの父親)だと思っていたのですが、使いっ走りの臨時講師でした。 師匠にあたる翼の登場にハッスルした八雲は電撃の魔法忍法をカミキリに炸裂させ、その腕に生じる超絶ブレス。
「なかなかやるじゃねえか、一緒に行くぜぇ」
「やるか」
で青は超絶アオへと変身し、
「クールに熱いぜぇ!!」
……あ、『デカ』ネタ入った(笑)
戦隊史における残念クール気取りの系譜として、小津翼さん(30)の先代にあたる、 「Supercool(笑)でPerfect(笑)」で有名なホージーさんゆかりの『デカレンジャー』のキャッチフレーズに似た台詞が入ったのは、 意図的だと思って良いのでしょうか。
それはそれとして、第22話(ヌリカベ回)の時に、獅子王に認められた上で「今はまだ、タカにぃに託してやる。俺達はちゃんと、 タカにぃを乗り越えた時に使う」と理由をつけて超絶化を断ったのに、今回勢いで変身してしまうという、 物凄い台無し展開。毛利さんは毛利さんで、下山回を木っ端微塵に踏みつけにしてきましたが、 本合わせではいったい何を打ち合わせているのでしょうか。
マジカル手裏剣斬で両断されたカミキリは巨大化し、対するニンニンジャーは最初から激熱ハオーを召喚。 ……まあクリスマス回の辺りでしれっと復活しそうですが、シュリケンジンは本当にプレスされてしまったのか。 超絶化でテンション高いアオ(そんな設定でしたっけ?)の指揮の下、ニンニンジャーは一気にカミキリを粉砕するのであった。
ところで、誰かがアップになる(目立つ)と、誰かが背中になる(消える)、という激熱コックピットは、 作品そのものに対する皮肉という気がしてきました。深い。
「大した事は教えてねえよ。強いて言えば、勇気が大事ってことぐらいか」
戦い終わり、八雲から皆に紹介を受けた翼は、魔法であっさりと杖と一番刀を修復。八雲が何故、 残念クール気取りを通り越して可哀想な子になったのかは、先生の責任だった、 という事で深く納得できましたが、出番の量も含め、正直、無駄コラボ。
東映ユニバースは基本的に世界の境界線が緩い、というのはわかった上で、 個人的にTVシリーズにおける過去作とのコラボは麻薬みたいなもので、なるべくやらない方が無難だと思っているのですが、 今作これまでのコラボ2回が「忍者」繋がりという事でギリギリ納得できたのに比べると、 『魔法戦隊マジレンジャー』10周年という要素はあったにしても、安易に世界を繋げてしまった気がします。
コラボというより、パロディ込みのサービストラックと受け止めるべきかもしれませんが、それなら予告では隠しておけば良かったのに、 と思うところ。
今は魔法忍者としての戦いがあり、しばらくイギリスには戻れないとエレナに伝え、手紙の話をする八雲だが……
「でも、ごめんね。私、ボーイフレンド出来たから、クラウドと結婚してあげられないの」
「え?!」
という、定番のオチ。
ここでエレナが八雲の頬にキスした時に背後で霞が愕然とした顔をしているのですが、周囲がそれにリアクションを示すわけでもなく (要するに周囲が認識して良いのか決めていないので描けないのだと思われます)、その後はオチのギャグに紛れてしまうので、 だから何をどうしたいのか。
いやこれ、1クール目、せいぜい2クール目までなら、使うか使わないかわからない布石として有りですが、 もう3クール目も終わりの時期の描写としては、作品としてあまりに酷いし拙い。
しかも、少女からほっぺにちゅー程度のアプローチでも動揺するのに、途中では場を取り繕う為に笑顔で二人をデートに送り出しており、 この1エピソードの中ですら描写を一貫させる事ができず、だから何をどうしたいのか。
覚悟を決めて、エレナを交えた青×桃エピソードにしてしまえばまだ良かったと思うのですが、何から何まで中途半端で、 そしてそれが、このエピソードだけの問題ではなく『ニンニンジャー』全体の作劇・構成・スタッフワークの問題と思えるのが、 非常に厳しい。
個々の設定を大事にしない為に様々な部分の連動性が低い、描写の一貫性が薄いのでキャラクターに与えた要素が分離・分裂している、 感情の積み重ねが弱いので仕草や表情に意味を乗せた芝居が出来ない、結果として、 38話にもなって実に意図せずちぐはぐなやり取りが展開するという、物語とは別の部分で、 今作の悪い所が濃縮されて噴き出してしまったエピソード。
一方その頃牙鬼一味では、前回今回と奥方が苦しんでいたのは産気づいていた為だと判明し、まさかの若君誕生。 …………えー……この時期の新幹部投入は、下手するとクリスマスの生け贄で終了する可能性も頭をよぎりますが、 果たして若君は初日の出を無事に拝む事が出来るのか?!
次回、「最強ニンジャ霞、ついに敗北!?」。
と煽りに書かれ、相変わらず、メタにラスボス扱いを受ける邪悪策士であった。
- ◆忍びの39「牙鬼の息子、萬月あらわる!」◆ (監督:竹本昇 脚本:毛利亘宏)
- 牙鬼幻月の息子・牙鬼萬月が現れ、子供達からおやつ狩りを行って暴れ回る。大口叩いて威勢は良いが腕はからっきしの萬月と、 側に仕える強力な足軽親衛隊を分断する為、ニンニンジャーは霞発案のティーパーティー作戦を決行。 まんまと罠にはまったと思われた萬月だが、実は真の力を隠してうつけを装っていたのであり、圧倒的な力で白と桃を粉砕。 その目的は、父・幻月を復活させる為に、ニンジャの恐れを集める事にあった――!
ティーパーティー作戦が、こんな作戦にしましょう……というイメージシーンのような導入で始まり、 作戦の映像とその内容説明を交互に挟んで展開する為、いつの間にか作戦が実際に進行中で内容説明は回想シーンになっている事がピンと来ず、 その切り替えに戸惑っている内にあれよあれよと事態が進行してしまい、物凄く置き去りにされてしまいました(^^;
まあこれに関しては私の勘違いが悪いですし、最後まで見ると、 前半の“霞が一人で考えた作戦”と後半の“みんなで考えた作戦”を対比して見せる意図だったというのはわかるのですが、 これから詳細を説明しますという居間でのシーンから場面切り替わった時に作戦説明をナレーションで被せてしまい(この為、 居間でのシーンの延長上だと錯覚)、謎の庭園と中途半端なコスプレに、そこにいきなり現れる萬月という流れが如何にも脳内イメージシーンすぎて、 もう少しわかりやく切り替えても良かったような。
その上で、実は強かった萬月、頭悪い奴は騙しやすいぜ発言、で強引に引きずり落とされる霞、という展開自体が全く面白くなく、 前半あまりに邪悪無双させすぎた霞をどうも持て余し気味な気配も伝わってきます(^^;
爺ちゃんに「策士策に溺れる」と言わせてそれらしくしていますが、霞の心理的陥穽を描くならば、“霞だからこそ油断した” という状況設定をしてこそなのに全くそういう仕掛けが無い為、本当に、ただ油断していただけという事に。 霞をここまで一種の最強キャラと描いていたからこそ、敗北をさせるにはそれなりの段取りが必要なわけですが、それが無い為、 物語の積み重ねに対して不誠実。
で、霞が「全く油断していなかった」にも関わらず萬月の力が「それを上回っていた」のなら、 霞の敗北と萬月の凶悪さがコントラストになって互いに引き立つのですが、敗北直後に霞が「相手を認める」のではなく 「自分の慢心を戒めてしまう」為、どちらも引き立たない、という底なし沼。
一応、本気の萬月は超絶アカよりも強い、というアピールも入っているのですが、 物語の流れ自体は霞敗北に焦点を合わせているので完全に刺身のツマな上に、超絶先日、御家老に負けたばかりという蟻地獄。
そしてこの後、仲間達がそれぞれ霞を励ますのですが、ここで、今作における根幹的な問題が改めて浮上。
やはり、
「恐れるべからず、悩むべからず、侮るべからず」って、根本的におかしいのでは。
敵を「恐れない」されど「侮らない」、はまあ納得できる範囲ではあるのですが、色々ここまで言葉を駆使してきたものの、 そこに「悩まない」がどうにも繋がりません(^^; 特に今作は明確に“未熟な若者達”の物語であり、例えば今回に限っても、 ほんの数秒前に霞の敗北はそういう要素の一貫として処理されたばかりなのに、直後に「悩むな」と持ち出されると、 「考えるな」と言っているようにしか聞こえません(^^;
「悩む」をここまでネガティブに扱って否定する必要はなかったと思うのですが、結局、 爺ちゃんの悔恨に孫達が振り回されているというタチの悪い構図のような。
「心に、刻むが良い。優れたニンジャほど、侮り、恐れ、悩みやすいもの。故に…………修行には、果てがない」
これは、霞を諭しているようで爺ちゃんの反省というニュアンスを汲み取っていいのかもしれませんが、 ここで爺ちゃんが言う「悩むな」は、力を持つが故の悩みが心の隙を生むので気をつけろ的な感じで、 この後に八雲が言う「悩むな」は、気に病んで閉じこもりすぎるな的な感じで、一つの言葉が複数の意味を持つのは別に構わないのですが、 それにしてもフレキシブルすぎてまとまりが悪い、という凄く今作の悪い部分がまた出ています。
で、ブログにいただいたコメントによるとどうやらこの心得、忍術の秘伝書として有名な『万川集海』に記述のある「忍者の三病」がネタ元のようで、 原典の問題部分は「考えすぎない」――いざ事にあたった時に決断が遅れてはいけない――といったニュアンスで解釈される事が多いようなのですが、 「恐れるべからず・考えすぎる(思い悩む)べからず・侮るべからず」だと語呂が悪いので置き換えた結果、 「恐れるべからず・悩むべからず・侮るべからず」にスライドして、変換ミスが発生したのか。
思えば第2話における霞の
「天晴くんって、何も悩まないですよね。それってニンジャとして、一番凄いです。……お馬鹿さんだからかもしれませんけど」
というのはこの時点では、一般市民を守る為に迷わず戦える決断力、という点において原典からそれほどズレていなかったようなのですが、 変換ミスとそれに絡めた発言の内容を発端に複数の問題が発生。
第一に、「悩まない」と訳してしまった事により、「○○“すぎ”」という過度を戒める否定的な要素を付け加えたニュアンスが、 消滅してしまった事。
第二に、「お馬鹿さんだからかもしれませんけど」という台詞により、「悩まない」と「考えない」のイメージを近づけてしまった事。
第三に、「悩むべからず」とは何か、というのを具体的に描く事で物語の中に落とし込めばまだ良かったものを、 それをずっと曖昧にしてしまった為に、劇中の描写と繋がらないままだった事。
第四に、こうして言葉だけが浮き上がってしまった「悩むべからず」が、どう考えても物語のコンセプトと相性が悪かった事。
第五に、劇中の扱いを見る限りまだ「迷うべからず」の方が意味が通ったと思うのですが、 その「迷い」というキーワードをキンジに与えてしまった為に内容の微修正もままならず、結果、 キンジは二重三重に迷って大気圏を離脱してしまい、作品として心が弱い=悪みたいな勢いに。
これら諸々により、劇中で時折まとめられる「悩むべからず」と物語で描かれてきたものがしっくり噛み合わず、 言っている事と描かれている事が乖離したまま最終盤に突入。そしてキーワードそのものは元ネタがあるので、君臨せざるを得ない、 という袋小路。
設定を大事にしない為に要素を物語の中に落とし込むという作業が雑で、 その為に原典のあるキーワードが物語から浮き上がったまま“解釈”が今作の物語と融合しない、という大惨事コンボが発生。
こういう原典があるならそれこそ、霞が敵の攻撃を深読みし過ぎて失策を犯す (判断の遅れから決定打のタイミングを逃して一般市民に被害が及びそうになった所をかばった仲間が負傷するとか) みたいな展開にすれば、「悩むべからず」の中身を描きつつ、霞ならではの敗因を作ったりできたと思うのですが、 最近の『ニンニンジャー』はこの辺りもどこまで共有されているのかから、不審を抱くレベル。
(……今思い出しましたが、一応、獅子王初登場回のニンニンジャーへの駄目出しは、この辺りの要素だったのでしょうか…… そこからあまり強調して繋げられた記憶は無いのですけど)
中盤以降、どうしてここまで物語とキーワードが食い違っているのだろう、と疑問だったのですが、とにかくキーワード先にありきで、 その内容を追求していなかった、という可能性が浮上してなんだか色々と腑に落ちました。
物語はそれぞれの励ましで霞も前を向き、皆で対萬月の作戦を考える事で、 改めてチームワークを強調しつつ「悩むな」と「考えない」は別である、というアピールも入れているのですが、 作品として“忍タリティの体現者”である天晴が、イケイケドンドンの人なので、説得力は無し(^^;
更に悪いに事に天晴が「霞が「行け」っていったら行くし、「突っ込め」って言ったら突っ込むぜ」と言ってしまい、 霞に対する信頼と信認の言葉ではあるのですが、最近の天晴さんは、いっけん“他者を尊重している”ようで、 実は“自分が消えている”だけなので、それはもう、ただのマシーンだよ、タカ兄!
そして“みんなで考えた作戦”が、霞を囮にして相手が油断した所を、 攻撃力の高い二人(赤と星)が背後から不意打ちするというのは、 久々に殺伐ニンジャファミリーの闇が噴出して良い意味で今作らしかったのですが、肝心の萬月の強敵アピールが不足しているので、 主題歌フルコーラスまでした割には、もう一つ盛り上がらず。
なんというか萬月、ちょっと元気な蛾眉さん程度のインパクトですし。
ライオンブレスを借りつつ、センス的に許せない、と超絶は拒否した桃(ここは良かった)は、 キンジから元妖刀を借りて超絶妖刀乱れ斬り。更に全員連続攻撃を被せ、必殺技、更に必殺技、と萬月の戦闘力というか生命力はアピール。 自力で巨大化までしてしまい、初日の出どころかクリスマスも拝めない可能性を危惧された若君だが、さすがに撤退。 ニンニンジャーは残ったガシャドクロを粉砕してひとまず一件落着するが、霞はどこかスッキリしない表情をするのであった……。
新幹部が登場し、霞に壁を見せるイベントと絡める事で「霞を負かす事で新幹部のインパクトを増す」という発想はわかるのですが、 この場合重要なのは、「霞が負ける」事ではなく「霞が如何に負けるか」であるのに、そこが抜け落ちてしまった為に、 萬月のインパクトを押し出す事に失敗。その為に、続く展開が全て土台不足になってしまうという、典型的な、 机上の字面だけで展開したエピソードになってしまいました。
で、前回あれだけやって、霞メイン回で、毛利さん連投にもかかわらず、桃→青を匂わせる要素は一切なしで、 だから一体何がしたいのか。例えば霞を励ますシーンで、最後に霞を微笑ませるのが八雲、とでもすればだいぶ違うのに、 そこは天晴のギャグにしてしまいますし。なんだか、キンジのみならず作品全体が人格分裂しているような感じに。
まあ次回も少し霞の話を引くようなので、そこでもう少し何とかするかもしれませんが。
いよいよ、クリスマス商戦を超えて年が明けたら最終決戦というシークエンスに突入した『ニンニンジャー』ですが、今作これまで、 まだ前半(中盤)だから……と許されていた問題点が、すべからく何も解決しないまま終盤を迎えてしまい、 物語が収束していくのに合わせて全ての膿が盛大に噴き出すという、 珍しいカタストロフのパターンを迎えている気がします。
次回、若君と狐が絡むのは、面白く広げられそうな気配があるので、どうにかしてほしい。
- ◆忍びの40「あぶないサンタクロース!」◆ (監督:竹本昇 脚本:下山健人)
- 見所は、上半身裸に布一枚巻き付けただけの姿で霞ねえに肩ポンする天晴さん。
割と女性に対してフランクな対応の多い天晴ですが、多分、女子の着替えに遭遇してもそのまま平気で自分も着替えだしていつか逮捕されるタイプ。
妖怪の反応に出撃したニンニンジャーだが、街は平和そのもので妖怪の姿はどこにもない。霞が開発した妖怪ホイホイを発動するが、 やってきたのは足軽兵ばかり。萬月への敗戦以来どうも調子の出ない霞をフォローしつつ足軽兵と戦うニンニンジャーだが、 実は妖怪はサンタクロースの姿で平然としており、人々に怪しい指輪を配るのであった……。
その頃、キンジはすっかりアウトドア生活に慣れてきた九衛門を追い詰めていた。近頃キンジが度々姿を消していたのは、 九衛門に転がされて一騒動起こした事で天晴達と一緒にいても気まずい……と、それを払拭するべく九衛門を一人で探し回っていたからだったのだ。
……えーと……なんか、「弱いから皆さんと一緒にいられるんでやんす!」とかスッキリしていたような気がしたのですが、 それはそれで気に病んでいたという事なのか。そして、 最近のキンジの思わせぶりな行動が別に何も面白くない所に物凄くあっさり着地するという安心の『ニンニン』クオリティ。
ちょっとでも期待した私の方が間違っていた気がします!
ポンチョニンジャーは九衛門の究極奥義さえ打ち破る強さを見せるが、そこに萬月が乱入。両者その場を撤退し、 萬月は九衛門に「嫌な匂い」を感じてその動向を気にするのであった……。
登場初回以降、扱いの急降下していたポンチョニンジャーが九衛門を一対一で上回る力を見せ、更にその両者を退ける萬月、 と九衛門の弱体化が酷い事になっていますが、その萬月は前回ラストでニンニンジャーに袋だたきにされていたので、 各キャラの強さをどういう風に見せたいのかよくわかりません(^^;
一方、足軽兵を蹴散らしたニンニンジャーは一度集合するが、そこでサンタクロースに化けていた妖怪ビンボウガミの妖術が発動し、 拾った指輪をはめていた天晴も、その妖術で貧相な姿にされてしまう。妖怪の正体を突き止めようとするが、霞の発明も空回り。 そんな霞を腫れ物に触れるように扱う八雲・凪・風花だが、そういった誤魔化しはお互いの為に良くないのでは、 と天晴が率直に「スランプ」について触れた事で、正直に悔しさを表に出せるようになった霞は吹っ切れ、発明品を魔法で強化。 科学×魔法×忍術を融合した、本音引き出しメカによって、妖怪の正体を突き止める!
メカの電波を浴びると人々が揃ってサンタクロースを指さすという本音引き出しメカが、もはや洗脳装置で超怖い。
八雲達は霞に対て、半端な誤魔化しをしていた事を謝り、その光景を見て進み出るキンジ。
「あっしも、隠し事が……」
もうやだ、こいつ(笑)
まるっきりもののついでに、一人で九衛門を追っていた事をキンジが5人に告白するのですが、 もはや物語としての意味すらほとんどなく、伏線にした意味がわからないレベルで、 ただただキンジの心が煮すぎた春雨のようにぐづぐづでどろどろで原形質に還っていきます。
「え?! キンさんまで?!」
「ともかくだ、霞」
そして天晴、キンジの告白を完全スルー。
凪のリアクションも宙ぶらりんになっており、00年代にここまで扱いに困っている追加戦士枠というのもなかなか珍しいような。
ビンボウガミ戦ではフル名乗りから、珍しく「「「「「「暴れるぜ!」」」」」」と揃って言うので、前回のvs萬月を経て、 ニンニンジャーが終盤に向けて全員連携モードに入るのかと思ったら、特にそういう事はなく、超絶アカの一人舞台で妖怪を倒すのも、 安定の『ニンニン』クオリティ。
……まあ、身内は全て仲間ではなく蹴落とすべきライバルだから仕方ない。
ビンボウガミを撃破したニンニンジャーだが、突如現れた萬月が本音引き出しメカを強奪。 またも萬月に一敗地にまみれたモモが「悔しい悔しい」を連発して因縁を強化されるのですが、萬月は最終的に、 邪悪策士に血も凍るようなお仕置きを受けて処刑されるのでは……。
それにしても萬月は、ここまで強キャラ扱いするなら、どうして登場初回に一度倒してしまったのか……(^^; もう少し、 やりようがったと思うのですが。
前回を受ける形で、落ち込んだ霞がそんな自分自身を受け入れる事を認める、というのは悪くなかったのですが、 天晴は“隠し事が出来ない”だけであって、“相手の事を思っているなら時に本音をぶつけるのが大事”だと考えているわけではないので、 メッセージと物語が少しずつズレているような、というのも安定の『ニンニン』クオリティ。あまりこう、天然最強、 みたいな着地は好きではないのです。
そして妖怪ホイホイは足軽兵の強制召喚に成功するし(しかも現場に妖怪が居たので、その代用と考えられる)、 スロー光線は効果を発揮するし、役に立たなかったけど嘘発見器は超高精度だし……意図したものとあべこべの機能が発動してしまう、 などなら納得できるのですが、霞のスランプ周りの表現もどうも首をひねります(^^;
しれっと3体分身して別々のマシンを研究開発しているし、 どちらかというと修羅場モードが発動して普段を超える能力を発揮していた気がするのですが。
最後に萬月が奪った本音マシンを使って九衛門の正体を暴こうとするが、途中で逃げられてしまうのであった……で、つづく。
- ◆忍びの41「牙鬼パーティ、五番勝負!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
- 萬月の招待を受けたニンニンジャーは罠を承知で敢えて乗り込むが、超上級妖怪シュテンドウジと五番勝負を行う事に。
旋風から「守破離」について聞いた天晴は、爺ちゃんの元を離れて一人前になる時が近づいているという思いから、 獅子王に力を借りない事にこだわるが、その獅子王に諭される。
「一人前っていうのは、人に頼らねぇって事じゃねえ。巣から飛び立つ為に、より人の意見に耳を傾けられる――大人になれ」
ここは良かったのですが、一方で、孫達から一斉に「言い方が回りくどい」と責められる爺ちゃんの人間としての株価がますます下がっていきます。
獅子王の助けもあり5番勝負に勝利したニンニンジャーだが、直接戦闘でシュテンドウジに苦戦。
「人生の先輩……そっか!」
酔いつぶれた獅子王の寝言を聞いたアカは、大量のおっさんもとい先輩ニンジャを召喚する新必殺技でシュテンドウジを撃破。 だが巨大化したシュテンドウジの妖術により獅子王が洗脳されてしまい、ニンニンジャーはライオンハオーとシュリケンジンを奪われてしまう。 萬月の目的は最初から、ハオーシュリケンジンを我が物とする事にあったのだ!
で、萬月の操るハオーシュリケンジンに激熱大王が敗北するのですが、恐ろしいほど盛り上がりません。
萬月が本当に強いなら別にハオーシュリケンジンを奪う必要性がありませんし、 前回イカ軍師のビンボウガミ作戦に「結果が出れば面白さとかどうでもいい」と言っているので忍者狩りに趣向を凝らす性格でも無い筈ですし、 ”ニンニンジャーの前に立ちふさがる強敵としての萬月”の描写があまりにも一貫しない為、キャラクターと作戦が繋がらず、 結果として物語の盛り上がりも生じません。
単純に、ロボ強奪をすれば盛り上がるだろう、程度の造りでロボ強奪に至る必然性が全く物語に組み込まれていない上に、 前半の五番勝負をほぼギャグっぽく処理した上で、全くそこから繋がらない形で「実は全部この為の布石でしたぴょーん」 と持ってくるので、むしろ呆気に取られます。アトラクションパートはアトラクションパートで勿論重要なのですが、 そのアトラクションパートでどこまで物語を広げられるか、が腕の奮い所だと思うのですが。
萬月は正影にニンニンジャーのデータを提出させたり、敢えて言えば実際は謀略の士として設定しているようなのですが、 デザインや最前線で剣を振り回す姿とちぐはぐ。馬鹿っぽいけど策士、というギャップ狙いだったのかもしれませんが、 最終盤の登場であるからこそ一点を強調してわかりやすい造形にした方が良かったような。何でもありにした結果、 キャラクターとしては何もかも中途半端、という最も良くないパターンになっています。
……まあ、どう描きたいのかといえば、要するに踏み台なのでしょうが。
次回――「萬月、僕の名を言ってみろ」みたいな映像がありましたが、果たして若君は、初日の出を拝む事が出来るのか?!
- ◆忍びの42「オトモ忍ウォーズ!ネコマタの逆襲」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
- ……いやぁ、ホント酷いなぁ……正直、ここまで全身粉砕骨折みたいな事になるとは、さすがに思いませんでした。
ほぼ唯一の見所は、クライマックス戦でのアカニンジャーのワイヤージャンプ。あれは、格好良かった。
前回、歴史に残る盛り上がらなさで巨大ロボが完全敗北を喫し、外に飛び出すニンニンジャー。 シュリケンジンで街を破壊して暴れ回る萬月から逃げた6人は、旋風と合流する。 何とかシュリケンジンを取り戻すにはコックピットを奪い返すしかない……だが、萬月はニンジャの気配を察知する力を持っている。
「俺が行く」
ここで、鼻が利く萬月を出し抜くために、既に忍タリティを失っているお父さんが、 コックピットへの潜入を買って出るというのは良かった。良かった、のですが……
「いいに決まってんじゃん。それが親父のやりたい事なら、やるべきだろ」
と何の根拠もなく笑顔で送り出す天晴は、それでいいのか。
良く受け取れば父親への信頼の表現なのですが、旋風がリアルバトルで役に立たないのは明確ですし、 その「やりたい事をやればいい」というのは、天晴のどこから湧いて出たのか。
最近、海賊戦隊のDVDでも見たのか。
八雲の閃きで魔法により妖怪ネコマタの姿となった旋風は、 メガネコマタを自称すると「伊賀崎家を見つけた」と偽って萬月とシュリケンジンを荒野におびき出す事に成功。 首尾良く萬月はニンニンジャーを倒す為にコックピットを降りていくが、シュテンドウジと足軽はその場に残ってしまい、 右往左往する事に。
ここでお父さんが機転を利かせてコックピットを奪還する活躍を見せるのかと思ったら、全くそんな事は無く話が進み、 ニンニンジャーが萬月相手に結界を発動した事でシュテンドウジが「結界か。俺も行く」と唐突に外に出て行くという、 意味不明な展開。
……それで出て行くなら、旋風が何か頭を使った方がよほど面白かったと思うのですが、 息子達の為に勇気を奮った旋風がいい所を見せるのかと思ったらギャグの種にされるだけなので、 どういう形で物語を積み上げたいのかよくわかりません。結局この後、獅子王に助けられるだけで物凄く台無し。
その獅子王は、何故か屋敷で好天に絡んでいた。意地でも孫達を助けに行かないのかと獅子王にどやされ、 天晴の言葉を思い出した好天は、「厠に行く」と言って姿を消す――。
ニンニンジャーの方は、6対1で手も足も出なかった萬月を足止めする切り札として結界に閉じ込めるのはいいとして、 内部で一騎打ちを挑むアカが何故か1対1でいい勝負をしており、短い間に余りにちぐはぐ。一応ニンジャ結界なので、 手裏剣空間の中では伊賀崎流ニンジャの戦闘能力は通常空間の3倍になるのかもしれませんが、特にアカが強化されている描写が無いので、 ひたすら意味不明の展開が続きます。ここでその辺りの強弱を丁寧に描写しないと、萬月の脅威度が伝わらないわけで。
後、毎度ぞんざいにレンタルされる元妖刀は、もはやスターに与えた事が失敗レベルな気が。
シュテンドウジの乱入で結界が破壊され、萬月の必殺剣でまとめて吹き飛ばれるニンニンジャー。だがその時、 爺ちゃんの手裏剣――終わりの手裏剣<仮>――が天晴の手にする元妖刀にはまり、その力を借りた天晴は超絶ニンジャ斬りで萬月に反撃。 ……結局、逆転の鍵は爺ちゃんの助力、という身も蓋もなくて何も締まらない展開。
いやここで、ニンニンジャー6人の姿なり想いなりが何か重い理由を抱えている爺ちゃんを動かす、というならわかるのですが、 爺ちゃんを動かしたのは獅子王という、もう、本当に何をしたいのかわかりません。
一応、天晴が前回口にした「爺ちゃんのやりたい事をやればいい」という台詞も思い出しているのですが、えー……今作ここに来て、
「親もやりたい事をやればいい」が、伝えたいメッセージなのでしょうか???
とにかく、何もかも積み重ねが無いので何もかも繋がりません。
そもそも今作、物語の中で「親」という存在をどう置きたいのかすらさっぱりわからないわけですが。
コックピットに突入してきた獅子王が足軽兵を吹き飛ばした事で旋風はシュリケンジンの奪取に成功し、 意気上がるニンニンジャーは反撃スタート。怒濤の連続攻撃で萬月を圧倒する……のですが…… 先ほどは手も足も出なかった萬月を今度は一方的に砂にするのが不自然すぎて、非常に困惑。
いや、「ノリがいい方が勝つ」というのはヒーロー物として一つの真理で、それ自体は全く構わないのですが、そうであるからこそ、 そのノリに至る段取りを如何に積み上げるかが肝心なのに、それが全く出来ていない為に、 単に話の都合で萬月の戦闘力がアップダウンしているだけになっています。
敢えて言うならこの逆転の理由は、凄い手裏剣を借りたからにしか見えないわけですが、持ち出すテーマの説得力云々以前に、 物語が逆転に至る流れが全く組み上げられておらず、あまりに拙すぎます。
「確かに、私達は一人前じゃありません」
「だから、家族一つになって戦うんだ!」
そして、戦闘のインターバルに改めて理由を持ち出すのですが、とりあえずこれは反撃スタートの時に置いておいた方が良かったかと。
その上で、いや今作に、そんなテーマ無かったですよね……。
上述した、“物語の中で「親」という存在をどう置きたいのかすらさっぱりわからない”という点とも繋がりますが、例えばキンジは、 親兄弟の因縁が戦いに身を投じるきっかけになっていたわけなのですが、夏休み最後にリセットされて以降、 全く触れられない(勿論今回も触れられない)。百地家の親も、松尾家の親も一言も触れた事がない。 不在の伊賀崎母について1ミリも匂わす描写をした事がない(もしかしたら旋風がお約束の「風花も母さんに似てきたなぁ」 とかどこかにあったかもしれませんが)……と、むしろ、 「家族」や「親」というテーマについて広げられるとっかかりは幾らでもあったのに、ほぼ一切広げてこなかったわけです。
また、過去に3例あるから、というのはあったのでしょうが、今作において兄妹戦隊ではなく従兄妹戦隊という形式を取った事に関しては、 兄妹とは違う距離感を描ければ面白いと思っていたのですが、特にそういう面白みは無し。 別に互いの距離が縮まるエピソードがあるわけでもなく、常に冷厳なヒエラルキーが存在しているだけだったのに、ここに来て、 力不足を補い合う「家族一つ」なんていう着地をするのだったら、シンプルに兄妹戦隊の方がスッキリして良かったのではないかと。
もう、(品が無いので削除)レベルの罵詈雑言がさすがに喉まで出かかりました。
ここでシロに「キンさんも家族」と言われてスターが喜ぶのですが、それ本来なら、 キンジにとって物凄く重要な言葉になる筈なのですが、設定が実質リセットされている為に、凄く無駄遣い(スターが感極まる、 というようなリアクションをしていたのは、多分、役者さんはその設定を覚えていてくれたのだと思う)。
で、こんな回で一番活躍しているのは、家族でもなければ人間でもない獅子王で、いや、そんな獅子王にも「おまえも勿論、 家族だ」とか言うならまだ良いのですが、獅子王には誰も何も言わないという。
好天・旋風・獅子王が乗り込んだシュリケンジンのコックピットとか、 おいしい台詞を軒並み持っていく獅子王とかは確かに面白いのですが、最終決戦前のターニングポイントになる重要回のポイントが 「獅子王がネタとして面白かった」というのは、どうなのか。
ここまで、掘り下げられる所を掘り下げず、繋げられる所を繋げずに、 ほとんどの要素を表層だけなぞって進めてきたツケがまとめて回ってきて、 あらゆる関節が曲がってはいけない方向に曲がっている墜落死体、みたいな事態に。
全ロボットが揃い踏み、シュテンドウジはもののついでにフィーバーされて爆死。 萬月を守ろうと有明の方がガシャドクロで割って入るも、ビームの盾にされて空の彼方へ。
「母親を盾にするなんて……何考えてんだ!」
……いやその人、自分から盾になりにきたような。
「親だろうがなんだろうが、俺様は使える物は何でも使う主義なんだよ!」
「親の事を物とか言うな!」
そう繋げたかったのか、というのはわかるのですが、それは「立っているものは親でも使え」というレトリックだと思うんですが。 あと根本的な所で、仮に萬月が有明の方をかばったら、「なんて立派な親子の愛情なんだ!」と、ニンニンジャーは両者を許すのか。 次に有明の方に出会ったらごく普通に斬りかかりそうなのに中途半端に「母親」への同情とか描かない方が良かったと思うのですが…… いやこの要素、年明けに引いてきたら感心しますけど、多分何事も無かったかのように処理されるだろうしなぁ……。
最後は一斉攻撃で萬月を撃破するのですが、もはや存在が踏み台すぎて、盛り上がりようがありません。短期でリタイアするからこそ、 こういう敵をどこまで憎らしく強大そうに描けるかというのも腕の見せ所だと思うのですけど。 萬月は爆発直前に「オヤジ殿……」と呟くのですが、だからそういう要素は、生きている内に物語に組み込みましょうね!
「いや、今日は儂がやりたいようにやった。弟子である前に、お前達は、儂の孫。ただそれだけの事じゃ」
戦い終わりクリスマスパーティのさなか、家族の愛情を優先した事を口にする好天だが、その体には謎の異変が起きつつあった……。
前回に続き、爺ちゃんの肉体の一部が金色の粒子になって消えかける、という表現。好天、そもそも死んだ事になっていた事や、 これまでの行動から、<終わりの手裏剣>絡みで世界の因果にあまり干渉してはいけない存在と化しているのではというのは、 概ね想定の範囲内。ラストニンジャ自体が、世界への人柱ぐらいの事は考えていたのですが、近年の戦隊の傾向と都合からすると、 そこまでは重くならないのかなぁ……。
そして――瀕死の萬月の前に姿を見せた九衛門は、自ら真実を告げる。
「僕は牙鬼幻月の息子。君の、兄だ」
御家老が突然言い出した幻月の予言した「息子」とは、九衛門の事だった! と最終盤へ向けてのカードがめくられた所で、萬月、爆死。
うん、まあ、ここまで来たので最後まで付き合います。
(2018年5月20日)
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