■『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想まとめ6■


“ゆらめく霞! モモニンジャー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『手裏剣戦隊ニンニンジャー』 感想の、まとめ6(31〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕  ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


手裏剣ライン

◆忍びの31「ニンジャ逃走中!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:下山健人)
 ニンジャ対決が始まって以来、そもそも“十六夜流”って何? という疑問がありましたが、今回、九衛門が召喚したニンジャに 「今日から君は十六夜流忍者ってことでよろしく☆」と名乗らせていたという、悲しい現実が判明。
 そんな十六夜流の新たな刺客、ハードボイルド系ニンジャ・ムジナが訓練中だった凪と霞に襲いかかり、 凪をかばった霞が忍法“いいとこ取り”の術により霞の長所――知性と分析能力を奪われ、アホの子になってしまう。 スキンケアの旅から帰還した奥方の命令により、“いいとこ”を賭けた鬼ごっこ勝負が始まるが、ムジナにいいように翻弄され、 次々と長所を奪われてしまう八雲と天晴。
 「八雲くんのいいところって、魔法だけだったんですねぇ」
 助けてマミー。
 残り3人が機転を利かせ、霞のいい所を取り戻す事に成功するが、戦闘中にそれが天晴の中に入ってしまい、知性を得る天晴。 代わりにキンジが捕まってしまい、天晴@脳細胞がトップギアだぜ、凪、風花は一時撤退して戦況を立て直す事に。
 ネタとしては、アホの子になった霞・魔法を使えなくなった八雲・テンションの低い天晴・日本語を喋れなくなったキンジ、よりも、 千点頭脳を得た天晴の方が面白いのですが、天晴は台詞の文字数が増えると滑舌の悪さがより目立ってしまう事が判明し、 叫ばせておくのが無難、というまたも悲しい現実に直面。
 そして、キンジの長所は、「変な日本語を喋れるだけ」だったという、残酷すぎる現実。
 割と本気で、スタッフがキンジをどうすればいいのか、わからなくなってきていませんか。
 長所を失ったメンバーの描写があまり面白くない(特に霞のアホの子演技は少々やりすぎで、 笑えるというよりは見ていて引いてしまう感じに)というのは二段構えのネタの布石だったと見るにしても、 天晴の人格改造は野球回で既に一度やっており、出来れば他の組み合わせで広がりを見せて欲しかった所です。
 人格交換ネタの変則パターンと、ドタバタアクションの融合をはかったようにも見えますが、どうも中途半端になって、 どちらの面白さも減じてしまった感。
 天晴@灰色の脳細胞、凪、風花の3人は、霞のアドバイスを思い出した凪の発案で、上級忍術の応用で見事にムジナを化かすと、 捕まったメンバーの長所を取り戻す事に成功。デザインに分福茶釜が盛り込まれているムジナですが、カチカチ山を絡めた反撃は、 モチーフを活かして良かったです。ムジナがそもそも、妖怪に近いので前半ノリで話を転がせた、というのがあるのでしょうが。
 黄と赤の合体攻撃でずんばらりんしたムジナは、巨大化後も、シュリケンジンハオーで瞬殺。だが……隼、犀、蟻、狢、 4つのニンジャ手裏剣を得た九衛門は、自らのオトモ忍を起動する――その名を、カラクリキュウビ!  ニンニンジャーの巨大ロボの攻撃を覚えたニンジャ手裏剣を装備した九尾は、対シュリケンジンの抗体結界を張り巡らし、 あらゆる攻撃を無効化。シュリケンジンらを圧倒し、そしてライオンハオーも爆炎に沈む……!
 ニンニンジャー完敗で次回へ続く、なのですが、既に予告で新ロボが暴れまくっているので、 むしろ風前の灯火な九衛門の明日はどっちだ?! この流れだと、夏休み明けの大幅新展開のようで実は新ロボの踏み台でした、 という事になりそうですが、むしろそこから次の展開へどう転がしていくのかに、興味。

◆忍びの32「ゲキアツ忍者! アチャー!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:下山健人)
 冒頭、狐ファンネルで人間を直接攻撃、は面白かった。
 ……まるっきりファンネルのつもりで見ているから、というのもあるでしょうが(笑)
 その後のラストニンジャvs九衛門、も満を持してという事もあり、 CG飛び道具だけでなく近接戦も交えて力の入ったアクションで格好良かったです。
 十六夜流が、一人だけど寂しくないもん、という自称の個人流派なので、 「十六夜流の強さが!」という辺りで微妙に盛り上がらないのが難ですが、こうなってみると、妙にキンジの勧誘に固執していたのは、 「弟子が欲しかったんだよ……!(涙) 僕だって、「おいキンジ、おしるこ缶買ってこい」って、 やってみたかったんだよ……!」という泣ける現実が透けて見えます。
 九衛門の奥義・手裏剣フルバーストに対し、好天は謎の力を見せると天晴達を連れて撤退に成功するが、眠りに落ちてしまう。 爆散したハオーが石化してしまい、鉄之助を呼んだ天晴達だが、その修理には数週間が必要。 他のオトモ忍もダメージが大きく使用不能という危機に、自分たちで新たなオトモ忍を作り出せないか、と霞が奇策を思いつく。
 雑賀鉄之助、またまた登場。こういったサブキャラを続けて引っ張ってくれるのは好きです。オトモ忍の魂入れに失敗した時、 凄く普通に首をひねっていたのは面白かった(笑)
 「俺たちが爺ちゃんと同じやり方で、作れるかなぁ」
 ラストニンジャを真似てオトモ忍を作り出す、という発想に説明できない違和感を覚える天晴だが、そんなタイミングで、 影分身の術で生きていたムジナが街に現れ、借りた小槌でガシャドクロを召喚。……割と誰でも使えるのね、小槌。天晴は、 とにかく目の前の敵を倒すのがやるべき事だ、と駆け出していき、それに続く、凪、キンジ。
 ここで凪が「僕も行く……!」と立ち上がったのは、凪が馬鹿になった、というよりは、前回を受けて、 バランサーを自認しつつも前を走ろうとするようになった、と凪の変化の見せ方としては悪くなかったと思います。代わりに、 プチ天晴ぽかった風花の立ち位置が非常にどっちつかずで存在感を減らしていますが(^^;
 風花は当初、最終ほだし系ヒロインとして使おうとしていた節があるのですが、致命的に“喋り方が可愛くならない”為、 どうも扱いに困っているのを感じます。よく天晴の台詞言えないのがネタにされますけど、風花の方が酷いと思うし。
 「天晴は、ラストニンジャにはラストニンジャの、自分たちには自分たちのやり方がある。そう言いたかったんじゃないのか。 まあ……自分たちのやり方といったところで、あいつは目の前の物に飛び込むしか、出来ないようだがな」
 ラストニンジャより力の無いニンニンジャーが、ラストニンジャと同じ事をやろうとしても、勝利には届かないのではないか。 それならば、自分たちのやり方を見つけるしかない――天晴の言葉の真意を分析してみせる鉄之助。
 「鉄之助さん……天晴くんの通訳として、雇わせていただきたいです」
 霞姉、割と失礼(笑)
 オトモ忍の事は後回しにし、集結した5人(星はロデオ丸でガシャドクロを担当)は、連携攻撃でムジナを撃破。 だが自ら巨大化したムジナに打つ手が無いその時、一つの閃きを得た天晴は、憑依合体の術でオトモ素体と融合し、 自らが魂となる事で新たなオトモ忍を誕生させる!
 「オトモじゃないけど、暴れるぜぇ!」
 ここで新オトモ忍の誕生に、霞のアイデア+凪の思いついた術+天晴の閃き、という手順を踏んだのは、 今作には珍しくチームらしさがしっかり重ねられて良かったです。ムジナ撃破に見せた5人一斉の必殺攻撃も初だったと思いますし、 新メカ誕生とニンニンジャーのチームとしての進歩が巧く重なりました。
 とはいえ、足止め要員のキンジはともかく、八雲と風花はこれといって話に関わっておらず、どうにも詰めが足りません。 60点のハードルに対して65点までは飛べても、そこから10点20点を上積みできないのが、実に『ニンニンジャー』。
 また、天晴の真っ直ぐさを正解に辿り着く直感とし、説明不足という減点要素を加えた上で、 爺ちゃんとは別の今の自分たちで出来る事をする、という“ニンニンジャーの道”を見いだす流れは良かったのですが、 その結論が、“とりあえず目の前の敵をぶっ飛ばす”なのは、それでいいのか(^^;
 そんな形で天晴が引っ張っていくのを、周りの皆がフォローしてこその勝利、という構造になれば良いのですが、基本、 天晴ワッショイ戦隊なので、“皆が天晴になって何も考えずに突撃するのが脈絡と無関係に物語として正当化される”、 という事になってしまわないかには、まだ不安が残ります。
 ただ、一番駄目な造りの場合、ムジナを撃破した時点でこの正当化作用により、何らかの外的なボーナス要因(例:溢れる勇気でDL、 地球の力でDL)が発動し、その後の問題が自動解決してしまうのですが、今回は、前回を伏線にする形で天晴が解決策を閃く、 という段取りを組んだ事で、踏みとどまる事に成功しました。
 これが前半だと、ムジナ撃破→忍タリティがレベルアップして新しい合体手裏剣が生成→新オトモ忍誕生、とやりかねなかったので、 ここを逆にした(解決策を見いだし実行する事により忍タリティがLVアップして新しい手裏剣に変化)のは、 崖から転落回避という点で、だいぶ良かったと思います。
 5人の憑依合体により新たに起動したオトモ忍、その名を――鳳凰丸・青龍丸・玄武丸・白虎丸・パンダ丸・真鯉丸。
 ……なんと言っているのかわからなくて公式サイトで調べてしまったのですが、真鯉、真鯉ってなんだ(笑)  屋敷のふすまに描かれていた四聖獣から思いついたという事でかそのモチーフ(朱雀でなく鳳凰ですけど)に加え、パンダはまだ、 お爺さま大好きの霞が好天伝説から取ったと解釈できるにしても、真鯉がキンジのどこから出てきたのかさっぱりわかりません(^^;
 メタ的にも鯉のメカって選択が理解不能なのですが………………あ。

 広島か、広島なのか。

 野球回は、この伏線だったのか?!
 開幕前の予想から、本来ならこの時期、広島カープの存在が熱い話題の筈だったのか?!
 (なお丁度昨日、4位が決定してシーズン終了いたしました)
 あの! 幻の! ホームランが無ければ……! という全国の広島ファンの怒りのオーラを込めて、6体は激熱手裏剣合体。
 「ゲキアツ・ダヨーーーーーン!」
 と聞こえたのですが、たぶん違う。
 ……どうやら、ゲキアツダイオーらしいです。
 新ロボ・激熱大王は格闘能力に優れており(パンダは『カンフーパンダ』も入っているのか)、近接打撃でムジナを圧倒。 乱入してムジナを仕留めたメカ九衛門と対決すると、新兵器と手数で圧倒し、とどめは激熱人間大砲でわっしょい。
 ニンニンジャーが次々と打ち出されて敵を切り裂くという激熱フィーバーは、 今作の必殺技らしさを継承・強化しているのも含めて面白かったですが、搭乗員が全員降りてしまうという、 文字通りの最後の技だなぁ(笑)
 あれが最後の九衛門とは思えない……「勝ったらヘルメットの油断が大敵!」という天晴の謎標語の通訳を求められ、
 「……わからない」
 そそくさと逃げ出した鉄之助は、本当はわかっているのだけど、 これ以上の理解を示すと天晴と同じ精神構造だと思われるのを避ける為に退散したのかと思われます。
 割と正統派の合体ロボで、顔の意匠を残した以外はシュリケンジンよりもスマートな造形になった激熱 (そもそも名前に「シュリケン」が入っていない)ですが、追加戦士のメカが普通に腕パーツ、というのはなかなか珍しいでしょうか。 その分、天晴の鳳凰がほぼ余剰パーツですが、鳥形メカではよくある事なので仕方ない。
 回転テーブルに6人を乗せて回るコックピットは地味に撮影が面倒くさそう(^^;
 次回、八雲はまたもネタ回の犠牲になるのか? 果たして――。

◆忍びの33「八雲を愛したくノ一」◆ (監督:竹本昇 脚本:毛利亘宏)
 「思えば、惜しい狐を亡くしたものよ。名はなんであったか」
 「十六夜……Q太郎にございます」
 久々の名前ネタですが、これはやるならホント、徹底してやって欲しかったところ。途中で御家老が普通に呼ぶようになってしまったので、 ネタとしてもう一押し足りず。
 小槌は、前回カラクリ狐ロボと共に星になった九衛門の遺品としてイカ軍師が使う事になり、 本人よりも巨大化アイテムが重要になるというこの展開は、誰かを思い出します。ブ……ブ……ううっ、ノイズが。
 イカ軍師は忍び招聘の術で牙鬼家御庭番最後の刺客、極妻系くノ一・スズメバチを召喚。スズメバチの毒針は、受けたが最後、 18時間以内に解毒剤を飲まないと必ず死ぬという恐るべきものであり、高空からの狙撃により、アカニンジャーが倒されてしまう。 続けて仲間達に迫る毒針を、次々と弾き飛ばすアオニンジャー。
 メイン回とはいえ、天晴が戦線離脱したと思ったらやたらに八雲が無双するという、このバランス(^^;  せめて魔法を使ってくれれば色が出るのですが、剣術と体術で防いでしまうので、 物語都合で八雲がドーピングされているだけになってしまっています。勿論、物語都合ドーピングも、 そこに至る流れを組んだ上でなら構わないのですが、それが無いのでただ急に無双しているだけに。
 「忍びたるもの、目的の為に仲間でさえ犠牲にするのは、当たり前や!」
 命の危険を冒してまで仲間を守る青に苛立つスズメバチは下忍に組み付かせてその動きを封じるが、アオはかろうじて毒針を回避し、 その攻撃は下忍に命中。
 「貴様!」
 話と会話の流れからすると、部下の命を何とも思わないスズメバチに対する怒りの叫びなのでしょうが、 盾にしたの八雲。
 「ウチは忍び、目的の為なら手段は選ばん!」
 鎬を削る両者だが、もつれあった拍子に、八雲のミラクルマジック・床ドンが発動。精神判定に失敗したスズメバチは、 アオニンジャーと恋に落ちてしまう。
 ここから、スズメバチがアオ及び八雲の言動を全て一方的に恋愛に結びつける勘違い言葉遊びは、コミカルでそれなりに面白かったです。
 色恋ネタに弱いニンニンジャーは、動揺した霞とキンジが次々と毒針を受けてリタイア。戦力半減したニンニンジャーは、 八雲が自らを囮にした『ロミオとジュリエット』作戦を展開。伊賀崎流を抜けると宣言した八雲が凪と風花と剣を交え、 スズメバチの毒針を故意に受ける事で自らに解毒剤を使わせ、それを奪い取る事に成功する。
 敵とは言え純粋な恋心を利用するのはどうなのか という点については
 「この人でなし!」
 「人ではない――俺はニンジャだ。ニンジャなら目的の為には手段を選ばない。お前が言った事だ」
 と、前半のスズメバチ自身の言動に責任を取らせる、というのはくるっと収まって良かった所。ここで収まったので、この後、 毒針を受ける際にどうして変わり身の術を使わなかったのかと問われ、
 「おまえの想いは本気だった。だから騙す以上、命を賭けるべきだと思った」
 はむしろ、言い訳がましくなってしまい、いらなかったような。
 フィーバータイムのアオニンジャーは単身でスズメバチを撃破し、巨大化したスズメバチは激熱で瞬殺。天晴の影に隠れがちだが、 いざという時は八雲の決断力もかなりのものなのだ、と最近下がりっぱなしだった八雲を持ち上げて、大団円。
 …………八雲が、もう少し、演技、良ければなぁ。3クール目なのでそろそろ、役者の演技で脚本や演出以上のものを出して欲しい所なのですが。
 次回、ジライヤ参上!
 予告の「みんな、見るでやんす!」でポイント+1。

◆忍びの34「伝説の世界忍者、ジライヤ参上!」◆ (監督:竹本昇 脚本:下山健人)
 今作の開始当初にネタにはしていたけど、笑い話のたぐいだった『世界忍者戦ジライヤ』(1988)とのコラボが、 まさかの実現!
 最初に書いておきますと、 『ジライヤ』については3年ほど前に〔東映特撮YouTube Official〕の配信で全話視聴し、 かなり思い入れのある好印象の作品です。その上で、とても楽しめる競演スペシャルでした。 『ジライヤ』に全く思い入れが無い場合にどうかはわかりませんが、ファンとしては非常に満足、 そして『ニンニンジャー』としても面白かった。
 (参考:『世界忍者戦ジライヤ』感想まとめ1
 路線変更したのか、いちゃいちゃしている奴等が気にくわないと、 街で足軽軍団を暴れさせてカップルから恐れの力を得ようとする有明の方。……そういえば小槌は回収されていましたが、 ヒョウタンはどうなったのか。
 そこにニンニンジャーが現れ、有明の方のお付き、 一緒にツッコミ入れたり有明の方を持ち上げて回したりニンニンジャーの一斉攻撃をガードしたり、けっこう高性能。
 足軽軍団を蹴散らすも有明の方には逃げられてしまうニンニンジャーだが、突然の銃撃を受ける。そして高い所に現れる謎の忍者。
 「おまえ達が、最近巷で暴れているという忍びか!」
 「確かに忍ぶどころか暴れてるけど、それがなんだ!」
 「俺が倒す!」
 「何だいきなり。あんたは誰だ」
 「戸隠流正統、ジライヤ!」
 さかのぼる事、27年――というナレーションから、『ジライヤ』のタイトルを入れて始まる、変則OPでコラボ感ばっちり。
 ニンニンジャーと切り結ぶ謎の忍者・ジライヤは、6対1でもニンニンジャーに全く引けを取らない技の冴えを見せつけ、 剣術の合間に拳の打ち込み入れてくる辺りが、ジライヤっぽい。
 「この忍者、むっちゃくちゃつええなぁ!」
 現役ヒーローに、やたら強いロートルが問答無用で襲いかかってくる、という導入は、 傑作だった映画『海賊戦隊ゴーカイジャーvs宇宙刑事ギャバン』を思い出します(笑)
 「俺が日本に居ない間に、おまえ等のような連中がのさばっていたとはな。俺が戻ってきた以上、悪の忍者は一掃してやる!」
 邪悪な忍者→とりあえず抹殺
 凄く、戸隠流っぽいです(笑)
 天晴、八雲、キンジがヒートアップする中、残り3人は何となく誤解に気付き、金だらいの術で戦闘の停止に成功。 たらいの印を見てすぐに伊賀崎流だと把握する辺り、ジライヤの成長が感じられる部分(笑)
 誤解に気付いたジライヤが「すまん!」と謝罪して頭を下げ、上げると変身解除されている、 というのは間違いに対して素直に謝れる闘破の性格を示しつつ、色々と明確に描けないジライヤの変身シーンを見事に誤魔化して巧かったです。
 そして27年ぶりの山地闘破は、やたら原辰徳に似ていた。
 「ま、誰でも勘違いはあるから気にすんなよ、おっちゃん」
 「おいおい、おっちゃんは酷いだろう。俺はまだ40代だぞ」
 「じゃあ……うちの親父と同じぐらいか」
 「え? 俺……このくらいの息子が居てもおかしくないのか」
 当然、家庭の有無まで描くのは野暮でそこはご自由にご想像下さいという部分ですが、 原作ではヒーロー属性を遺憾なく発揮して割とモテだった闘破は、少なくとも子供は居ない様子。 ここで天晴を見つめて呆然とする闘破の「急に我に返って己の立ち位置に気付く」感じは、後半に効くのも含めて、実に秀逸。 天晴が闘破より少し背が高いというのも、映像的に良かったです。
 「まー、人間、年齢じゃないって」
 「だよな」
 「「ははははは」」
 おっさん呼ばわりに不満を言いつつも一瞬で天晴と意気投合し、イケイケドンドン型に区分される闘破。 凪のこの発言には異論が無いでもないですが、カクレンジャー&ハリケンジャー回と差別化を図る意図が強かったのかと思われます。
 霞がネット検索し、数々の世界忍者とジライヤの戦いがスチール写真で次々と表示されるのは、やたらなサービスシーンで、 スタッフの熱い思いを感じます。
 (参考:〔『世界忍者戦ジライヤ』<世界忍者大全>〕
 とりあえず闘破を連れて忍術道場へ戻る一行だが、そこには、「忍者の名誉を守る委員会」が来訪していた。 十六夜流忍者が暴れ回ったせいで一般のニンジャの印象が悪くなっており、その状況を正常化する為に制定した規約を一方的に告げ、 忍術の使用前には書類の提出を要求するなど、融通の利かないお役所仕事で対応した旋風を困惑させる委員会……てどうして、 コラボ回で、普段ならクリティカルレベルのネタを持ち出してくるのか(笑)
 夏休み明けから、ニンジャと世間の関係性が描写上明確に変化している今作ですが、ここで更に大きく一押しが来ました。
 1クール目からこれぐらい壊したネタをやってくれていればなぁ……とは、正直思う所です(^^;
 術の発動に手裏剣を使うのが引っかかり、規約に従っていては戦闘どころか変化も出来なくなってしまう伊賀崎流だが、 その委員会の会長こそが……なんと、ジライヤ。ところが闘破はこれを知るや居間に乗り込み、 会長を引き受けた覚えは無いと怒りを見せる。実は闘破は、「忍者の名誉を守る委員会」の会長職を頼まれるもこれを固辞して逃げ回っていたのである。
 「やべ……俺、こいつらから逃げてたんだった」
 思わず飛び出した所を逆にこれ幸いと委員会に捕まりそうになった闘破は、天晴と一緒にその場を逃げ出し、 車の上を飛び移ったりオフィスの中を滑り抜けたり。原作OPのパロディ演出をしつつ、 闘破の体術が天晴を上回る描写がそれとなく入っており、今回、こういう見せ方が巧い。
 「でもさ、なんとか委員会の会長なんて、すげえじゃん」
 「はっ、会長だなんて。そんな、人の上に立って指示するのは、俺のガラじゃないんだよ。俺は……現場で、暴れてる方が、向いてんだよ」
 その頃、イカ軍師が誕生させた上級妖怪コナキジジイが街に出現していた。
 「今時の我が儘で情けない若造どもには、年上の者を背負う辛さと怖さを、知ってもらいたいぞよ!」
 コナキ光線を浴びた人間は、付近に居る年長者を強制的に背負う事になってしまう。しかも妖力によって、 その重みはどんどん増していくのだった。一人が一人を背負うばかりではなく、複数の老人に覆い被さられて潰れる若者という、 さらりと毒のある風刺ネタ。いち早く駆けつけて挑む赤とジライヤだが、連携の乱れから揉めた所に光線を浴び、 赤が強制的にジライヤを背負う羽目に。
 コナキの攻撃に「よけろ!」と言われた赤は何故かその場で一回転し、背中のジライヤを盾に(笑)
 一切よけてないよタカ兄!
 「お主など、戦働きが出来ねば、まさに、お荷物だぞよ、おほほほほほほ」
 残り5人が到着し、久々にスターが記念写真。コナキジジイは一時撤退し、戦闘不能の天晴と闘破を連れて家に戻るニンニンジャーだが、 そこにはまたも忍者委員会が待ち受けていた。天晴が街中で変化した事と、 周囲に一般市民が居る状況で危険な忍術を使った事を咎められたニンニンジャーは、 規約違反で一ヶ月間の忍術使用禁止を言い渡されてしまう。更に委員会の監視を付けられるという状況で再びコナキジジイが出現し、 天晴達を置いて出撃した5人は、やむなく変化無しで戦闘する事に。
 下手に逆らって邪悪ニンジャ認定を受けると刺客が大手を振って抹殺しにやってくるので、頭を下げてじっと堪え忍ぶしかないのです。 戸隠流第三十四代宗家・山地哲山が僕らに教えてくれた事。忍者に必要なのは、情報力と政治力!
 だが、上級妖怪相手に変化無しでは分が悪く、5人はコナキ光線を浴びてしまい、風花の「重い……」発言に、霞、 珍しいクリティカルダメージ。そこへ闘破を背負ってやってきた天晴だが、コナキジジイのスピードについていく事が出来ず、 連続攻撃を受けてしまう。
 「どっから来るかよく見えない!」
 「お荷物を背負って、まともな忍者働きが出来るわけないぞよ!」
 「お荷物お荷物って、うるせえやつだなぁ!」
 苛立つ闘破の姿には、忍者働き一つで生きてきた男の、現役を離れた自分を思い描けない恐怖、 が微妙に垣間見えるのも今回の手の込んだ所。
 「このまま何もできないと思うな! いいか天晴、目に頼るな!」
 「目に頼らない。てことは、鼻に頼るのか!」
 「違う! とにかく、俺の言うとおりにしろ」
 闘破は敢えて目を閉じると敵の気配を読み取り、背中から天晴に的確な指示を出すと、二人の変則連携攻撃で反撃。 『ジライヤ』第27話と第43話で、視覚を封じ(られ)たジライヤが敵にカウンターを決めるというシーンがあり、こっそり原作ネタ。 勢いに乗る二人はコナキジジイの妖力の元である腕の鉄アレイを破壊する事で、妖術の無効化に成功し、全員が解放される。
 「先輩。人の上で指示するの、すっげーうまいじゃん」
 「え?」
 一歩間違えると嫌味なのですが、天晴の裏表の無い性格と、ここで呼び方を「おっちゃん」から「先輩」に変える事で、 素直な賞賛の意味を巧く持たせました。
 「くぅぅ、お荷物にしてやったのに、なんてやつだぞよ」
 「お荷物になるわけないだろ。伝説の忍者は暴れなくてもすっっげーんだよ」
 「ふっ。……そうか。俺が暴れなくても、若い忍者がちゃんと戦えるように出来ればいいんだよな。天晴、お前のお陰で、 なんか吹っ切れたよ。よーし、おもいっきり忍術を使ってもいいぞ。俺が会長になって、全て責任を持つ。大いに暴れろ」
 いつまでも若いつもりで現場にこだわる中年の気持ちが、妖怪の特殊攻撃の打破方法から思わぬ角度でひっくり返され、 今とは別の在り方もある事を認めさせる、という流れは前半の軽いやり取りの伏線から綺麗に着地して、お見事。
 またここで序盤の「このくらいの息子が居てもおかしくないのか」という闘破の気付きが凄く効果を発揮して、ああ俺は、 こいつらのオヤジになれるのかもしれない……と思い至るというのが、原作『ジライヤ』が父(師匠)と子(弟子)を軸とした家族の物語であったからこそ、非常に自然。
 更に、どんなに年齢を重ね、実力も実績も持ち合わせていても、生き方を変えるという事には一定の恐怖がつきまとい、そんな時、 それを後押ししてくれた若者を肯定する、という構造にもなっています。
 山地闘破の新たな決意、そして伊賀崎天晴の真っ直ぐな心――それはどちらに応えたのか、或いは双方にか。 忍タリティによって新たにジライヤ手裏剣が誕生し、天晴がそれを用いると、 磁光真空剣(『ジライヤ』真ヒロイン)が宇宙から帰還する!
 「磁光真空剣、戻ってきてくれたのか」
 ここは完全に原作前提のネタですが、ジライヤが気がつくと持っているのではなく、敢えてこれをやったのが、 コラボ作品の原作に対する真摯さとして評価したい。
 ニンニンジャーとジライヤはフル名乗りで揃い踏みし、今回かなり内容が詰まっている中、これをきちっとねじ込むのは、 さすが竹本監督。
 「忍ぶどころか」
 「「暴れるぜ!!」
 そして流れるジライヤOP。
 「行くぜ、ニンニンジャー!」
 ここから一気にジライヤ無双かと思わせて、青・黄・白・桃が木の術で動きを封じた所に星がロックンロールサンダーを浴びせる…… という、前座ではありますが、5人が空気にならなかったのは良かった所。
 「許さん!」
 正真正銘27年ぶりに炸裂する、磁光真空剣・真っ向両断。
 更に獅子王が復活し、赤が超絶した所で流れ出すニンニンジャーのOP。赤はジライヤから借りた磁光真空剣を用い、 超絶二刀流でコナキジジイをワッショイ。ここのライオン復活は物語の盛り上がりと全く関係ないので雑と言えば雑なのですが、 現役ヒーローにもきちっと見せ場を与えるバランスという事で良かったと思います。
 激熱大王は巨大コナキジジイにのしかかられて沈められそうになるが、ジライヤ手裏剣で謎の磁雷神パワーが発動し、 緑のオーラがコナキジジイを吹き飛ばす。ここは完全に謎ですが、手裏剣のパワーとして磁光真空剣を置いていくわけにはいかないし、 「おお、磁雷神」とやたらにジライヤが嬉しそうなので、まあいいか(笑)
 落下したコナキジジイを必殺ニンジャ大砲でフィーバーし、ジライヤEDインストをバックに、エピローグ。正式に、 「忍者の名誉を守る委員会」の会長を受ける事を委員会に約束する闘破。
 「わかったんだよ。君たちのような、若い忍者の意思を守る為に戦う事が、今後の俺の役目だってな。……まずは、 くだらん規約を廃止して、君たちには、悪を滅ぼすために、暴れてもらうぜ!」
 「はい」「おお」「ああ」「アイアムは、賛成でございやす」
 キンジが、男爵ネタ、ぶちこんできた(笑)
 「だが、いいか。忍法とは、心と体を鍛錬し、正義を守る為の武芸だ。少しでも気持ちに、油断や慢心があれば、 技を鈍らせる。それを忘れないでほしい」
 「「「「「「はい!」」」」」」
 かつて自分が師から教わった言葉を、若き忍者達に伝える闘破……公式サイトによると、脚本時点ではこの台詞はなくて、 演じる筒井巧氏からのアイデアとの事。山地闘破の立ち位置の変化と自覚が明確になり、流れがまとまって非常に良かったと思います。
 「そして、どんな時も、臆する事なく――若さの剣をうならせろ!」
 「よーし、こうなったら先輩の期待に応えて! 忍ぶどころか、暴れるぜぇぇぇ、燃えてきたぁぁぁ!!」
 「お兄ちゃんは、少しぐらい忍んでも、いいけどねー」
 で、みんな笑顔で大団円。
 いや良かった
 “下り坂になってきたヒーローがそれをわきまえる話”ではなく、“能力は若い者に全く劣らないが、 いい年になったヒーローが今の自分だからこそより良く出来る事を見つける話”になっているのが、特に秀逸。
 父子の関係を重要な軸としていた“家族の物語“だった『ジライヤ』の視点から見た時、若輩主人公だった山地闘破が、 年経て「若きニンジャ達を見守る父親になる」という流れは、いわば父であり師であった山地哲山の後を名実ともに継ぐ事であり、 その責任を受け入れる、という構造になっています。
 で、男が一つの覚悟を持って、自分の中年としての立ち位置を見定めた時に(「オヤジになる」、という事を受け入れた時に)、 遠い昔に失った真ヒロイン(磁光真空剣)が宇宙の彼方から帰ってくるわけですよ!
 ここで、執着と一種の恐怖を乗り越えて、変わる事を選んだ闘破が、 ヒロインによって肯定されるというこの最後の一押しが素晴らしい。
 戸隠流のえげつない一面はばっさりとオミットされていましたが、今回に関してはそれで正解だったと思いますし、 ホントよく原作を研究していて、アフター『ジライヤ』としても納得いくレベルで成立しています。こだわりが強すぎて、 『ジライヤ』に全く思い入れのない(或いは知らない)方にはピンと来ない部分が多かった可能性もありますが、 ただの映像的なサービスだけではなく、原作のテーマをしっかりと汲み取り、その上で『ニンニンジャー』としても面白かったと思います。
 もともと毎回登場しているわけではありませんが、ヒエラルキーがややこしくなりそうな好天は出さずに、 憧れの有名忍者に出会って大興奮の旋風、を描く事で、ネット検索だけで済まさずに作品世界におけるジライヤの位置づけを補強するなど、 細かい描写も冴えていましたし、正直、『ニンニンジャー』でここまで完成度の高いエピソードを見られるとは思っていませんでした(笑)
 とにかく誰かスタッフに、『ジライヤ』好きな人が居たのだろうなぁ……。
 まさかまさかのコラボ編でしたが、もともと今作の大きな3要素、妖怪退治(『カクレンジャー』)・忍術学校(『ハリケンジャー』) ・忍者家族(『ジライヤ』)は明らかに過去作を意識していたとは思われ、かなり初期に『カクレン』『ハリケン』コラボがあった事、 今回の出来の良さを見るに、やれればやりたい、という意識はあったのかな、とも想像されます。
 後先わかりませんが、筒井巧氏が『特捜戦隊デカレンジャー 10YEARS AFTER』(監督:竹本昇)に出演していたのも、 その辺りの打診があっての事か。
 …………という事は、冬映画では、ダイナブラックが、UFO丸と出会うのか。  (※ダイナブラック/星川竜は、宇宙人に会う事を夢見ている天文学者?という設定)
 でもね、ここまでやってですね、ダイナブラックがコラボしないって事は無いと思うんですがどうなんですか?!
 次回、Q太郎、早くも復帰。そしてキンジと凪が急接近。夏休みのラストに背景をリセットされたキンジですが、果たしてこれは引きネタになるのや否や。

◆忍びの35「キンジ、妖怪への迷路!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
 「こんな所で……死んでたまるか」
 カラクリ狐ロボの爆発炎上後、行方不明になっていた九衛門は、割と普通に落ちぶれていた。そんな九衛門に、 イカ軍師が放った刺客・オオムカデが迫る。夏の終わりに伏せられたトラップカードが発動し、 オオカミオトコの妖力に飲み込まれそうになるキンジは、妖怪化を止める手段として九衛門から妖刀の存在を教えられる。 妖刀を手に入れる為、図らずもオオムカデから九衛門を守る事になるキンジだが、果たしてキンジは体内の妖力を消し去る事が出来るのか?
 伏線が張られたのが第27話で、この間7話あったわけですが、その途中で引っかかるような描写は一切なく、見え見えの伏線にしても、 というか見え見えの伏線だからこそ、もう少しキンジの妖怪化に前振りの欲しかった所。
 正影の術によりビル内に張り巡らされた心の迷いの迷宮は、迷うほど道が増え、迷いが晴れると一本道になる、 と物語の流れと映像が連動して、アイデアとしては面白かったです。……ただ、天晴さんには効かない気がしましたが(笑)
 妖怪化に苦しむキンジを軸に、運動会の頃からやたらキンジになついている凪(多分、自分より立場が低いから) をそこに絡め、気遣いキャラの確定した凪が、誰かを信じる事で自分に自信を得る、という流れは悪くは無いのですが、 肝心のキンジが登場当初から延々とブレまくり、実質的に一度設定リセットまでされている為、そんなキンジを信じろと言われても、 信じてはいけない気がしてしまい、凪の成長として素直に受け止める事が出来ません(^^;
 ……しかも結局、キンジはまんまと騙されていたというオチ。
 何か、凪まで、まとめて奈落に突き落とされたような。
 ビルから飛び降りながらの変則名乗りと、ムカデが体を伸ばして激熱大王に絡みつくシーンは格好良かったです。 前回手に入れたジライヤ手裏剣も、ちゃんと使われました。……磁雷神の顔が出てくると激熱大王が熱くなる、という意味は不明ですが(笑)
 オオムカデを撃破するニンニンジャーだが、妖刀を抜いたキンジが、妖怪オオカミオトコの姿に変貌してしまう。 ほくそ笑みながら姿を消す九衛門の真の狙いは、そしてキンジはどうなってしまうのか!
 ……であれ? 次回いきなり、御家老大ピンチ? ……まあ正直、奥方との二頭体制は、お互いの存在感を削っている感じが強いですが(^^;

◆忍びの36「キンジ、栄光のスーパースター!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
 オオカミオトコとして暴れるもすぐに気絶、凪が家に連れ帰ったキンジの状態を率先して診る好天爺ちゃんはホント、 どこで脳改造手術を受けたのだろう。
 根本的に設定が変更された疑惑さえあります(笑)
 好天の説明により、妖力は、恐れ・悩み・侮りに巣食う、と、妖力を忍タリティの対立存在として設定に繋げてきましたが、 どちらかというと、九衛門の出奔により爺ちゃんが羮に懲りて膾を吹いた結果、 「恐れず・悩まず・侮らず」の三無し主義が伊賀崎流に掲げられてしまった感が強く、 話が進むほどに爺ちゃんはニンジャマスターとしては駄目な人になっていきます!
 今や『ニンニンジャー』の軸設定として、
 「心の弱さが闇につけ込まれる隙になる」
 というのは納得できるのですが、今作ここまでの描写は、
 「だから深く考えない」
 というものになってしまっており、もう少し巧く組み立てられなかったものか(^^; ……まあ、 前半ここまで繋がっていなかったのだとは思うのですが。
 御家老がガシャドクロ軍団に手裏剣二つ足して、地均しロボ、もとい妖怪オボログルマが生まれるというのは格好良かったです。 あっさりシュリケンジンを倒されてしまったニンニンジャーが逃げ出した為にビル一つぺしゃんこになったのは、結構ギリギリ(笑)  まあ前回で、中の人たちは皆逃げている筈ではありますが。
 ニンニンジャーはイカ軍師と直接対決し、超絶手裏剣斬が炸裂するが、正影を倒す事ができない。復帰したキンジと凪が駆けつけるが、 御家老の範囲攻撃を防ごうとしたキンジは妖刀を抜く事でそれを打ち破るも、自らは妖力に飲み込まれて再びオオカミオトコへと変貌してしまう……!
 妖怪ハンターとして、妖怪になるなら、むしろ本望!(待て)
 キンジの心象風景で、これまで出てきた数々の妖怪の顔がキンジ、という映像は面白かったです。あと、 キンジに囁き戦術を仕掛ける九衛門の装甲パーツが紅いのは、今後への伏線か。
 恐れや迷い、全てを忘れて楽になろうよ……今なら、全能力値が+5されるよ、と種族:妖怪へのデータ変更をそそのかされるキンジだが、
 「忘れるなんて違いやす」
 心が弱かったからこそ、天晴達と一緒に来られた、その弱さ、恐れや迷いも自分の一部だから忘れてはいけない、 とキンジは妖怪化への恐怖を乗り越え、それを自らの一部と認める事で乗り越える。
 これまでの日々が絆の力になる、というお約束の展開で悪くはないのですが、 お父さんとお兄さんの事は一切思い出さないので、 本当に設定リセットされているんだな、という。
 そして、恐れも悩みも自分の一部、はまあいいとして、「ならば妖力も、もはやあっしの一部」……って、それでいいのか……?
 ここで好天の助言が最後の一押しになるので爺ちゃんが何かドーピングしたのでしょうが、 キンジが恐れを乗り越えて体内の妖力を打ち破ると、妖刀が新たなニンジャ刀へと姿を変え、スターはポンチョニンジャーへと変身。
 キンジの治療を餌に<終わりの手裏剣>との交換を持ちかけようとした九衛門は、これを見て作戦失敗でぷんすかしているのですが、 全く虚勢で無くなっているようで、師弟揃ってどんどん駄目な感じになっていくのであった……。
 ポンチョニンジャーは圧倒的な力で御家老を粉砕し、巨大化したオボログルマに自ら乗り込む御家老。対するニンニンジャーは、 激熱大王をライオンハオーに搭載してバイソンキング武器セットを構えるという、シュリケンジン用済み合体を発動。 激しいタンクバトルを繰り広げ、最後はお約束の各パーツ型のエネルギー波を放ってオボログルマを撃破するのであった。 激熱オトモ忍に全く個性が描かれていないので、新必殺技は、お約束のお約束という感じで、あまり盛り上がらないものに(^^;
 強化モードの必殺攻撃を受け、わざわざオボログルマに乗り込むなど、自らリタイアフラグを積みまくった御家老ですが、 空の彼方へ飛んでいくというギャグっぽい処理をされたので、まだ続投か。にしても、誰かのアップになると、 常に誰かの背中が一緒に映るという、あの激熱ターンテーブル型コックピットはやはり失敗だったのではないか……。
 最後に爺ちゃんによる補足解説が入るのですが、弱さを乗り越えて、恐れや悩みが消えたら、 力だけが残ったって、なんだか妖力より危ない力を手に入れてしまったような。
 スターまさかの単独パワーアップ回でしたが、個人的にキンジの、キメラみたいなキャラクター→考えすぎ→それは心の弱さ、 と順々にすり替えられていった挙げ句に、強引に九衛門に対比される、という物語の流れにどうしてもノれない為、 もうひとつ盛り上がりきれず。せめて昔の設定(父と兄)も拾ってくれれば良かったのですが、完全に無視されましたし。 ポンチョニンジャーに関しては、爺ちゃんが「仕方ない……」みたいな事を言っていたので、あの出鱈目な強さと存在自体が、 何らかの伏線という可能性が高そうですが。
 次回、手裏剣伝説。サブタイトルの文字がドット風なのは細かくて秀逸。

→〔その7へ続く〕

(2018年4月25日)

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