■『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想まとめ5■


“ひとひら風花! シロニンジャー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『手裏剣戦隊ニンニンジャー』 感想の、まとめ5(25〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


手裏剣ライン

◆忍びの25「夏休みスペシャル  夏だ!ドラキュラにご用心」◆ (監督:竹本昇 脚本:毛利亘宏)
 お友達とショッピング中に芸能事務所にスカウトされた風花は、人気俳優シルバーと共演する映画のヒロイン、 ミス・ドラキュラを選ぶオーディションを受ける事に。ところがそのオーディションは、美女を集めて生命エネルギーをいただこうとする、 西洋妖怪ドラキュラの罠であった……。
 キンジ、意外と活躍(主にコスプレで)し、八雲とコンビ決裂の危機(笑)
 前回までの流れで女装担当は八雲とキンジだと思ったのですが、さすがにキンジは背がありすぎるという事になったのか、 八雲と凪がオーディションの参加者として会場に紛れ込む事に。……まあ、霞が普通に参加しているので、 この2人が女装する必然性は極めて低いのですが。下手すると、煽るだけ煽って、霞は最後に参加を決めた。
 …………そういえば、まだ凪に、前々回のお仕置きをしていませんでしたからね(ガタガタ)。
 そんなわけで、八雲に比べて今ひとつノリが悪かったのか、脇の処理を怠る凪。
 覚悟が足りません。
 肝心のドラキュラは、オーディションに集まった一般女性と区別なく、八雲と凪を普通に襲い、 戦闘シーンではライオンハオーからもちゅーちゅーしているので、ドラキュラ界の中でも名うての変態だったと思われますが。
 キンジは山荘の使用人になりすまし、そしてただ1人、何の変装もしないまま、正面から乗り込もうとするタカ兄。
 段々、作り手の方で天晴のバカさの加減が掴めてきたのか、最近の天晴は、好感の持てるバカになってきたのは良い所。また今回は、 風花に迫るシルバーに随所で苛立ちと怒りを見せており、いつも以上の正面突破に説得力を増しています。
 サブライターで入っている毛利さんが『ニンニンジャー』の家族テーマを真っ当にやろうとしているようで、父の日回に続いて、 今回の天晴は風花にやたら優しく、いいお兄ちゃんぶりを発揮。
 むしろ若干、父さんの変装を疑いたくなるレベル。
 野球回を受ける形で、「夢ってなんだろ?」と惑う風花に、天晴が自分なりの「夢」を語るシーンは、今作にしては珍しく、 過去のエピソードと意識的な関連付けで流れを作ったのは良かった所。
 姿を現したドラキュラにより、一般参加者のみならず、八雲、凪、霞が次々と倒れてしまうが、キンジの餃子作戦により、 ドラキュラの正体がシルバーのマネージャーであった事が判明。
 太陽の光は大丈夫だけどニンニクは駄目、というドラキュラの設定は物語都合もいい所ですが、 妖怪ハンターに「今時のドラキュラは……」と解説させる事で、強引に理屈をつけました。強引ですが、 キンジが久々に妖怪ハンターらしい使われ方をしたのは評価したい(笑)
 白・赤・金が連携攻撃でドラキュラを撃破して吸い取られた生命エネルギーは無事に戻り、 巨大ドラキュラはライオン&ドラゴン・ダンプ・リニアで撃破。夏休み編はロボ戦は変則パターンという事で、 各オトモ忍を使ってきたのも良かったです。
 クライマックス前に、カーテンを閉め切って怪しげな棺が置かれたシルバーの部屋が映るのですが、この作り込みを見る限り、 撮影段階ではシルバーがもっと胡散臭くてドラキュラの正体っぽく匂わせるシーンがあったけど、尺の都合でカットされたのでしょうか。 お陰で、シルバーはただの空気を読まない変態紳士になりました(笑)
 あと、シルバーがカーテンをあっさり開くのと、棺の中から本物のマネージャーが飛び出してくるのがギャグとして成立しなかったのは、 ちょっと残念。
 ところで霞のシルバーに向ける視線が終始厳しいのですが、そもそもミス・ドラキュラコンテストを疑ってかかった所に始まり 「(私ならともかく)風ちゃんに積極的にアプローチするなんて、この男は絶対に怪しい」と考えていたようにしか見えません。
 家族愛と、女のプライドは別カテゴリなのです。
 次回、愛と憎しみは裏表、ラストニンジャ中間発表で再び殺伐の予感。

◆忍びの26「夏休みスペシャル 夏だ!ラストニンジャレース中間発表!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:毛利亘宏)
 見所は、割と普通に伊賀崎家の忍者屋敷に辿り着いてしまう妖怪マタネコ。
 予告で妖怪の着ぐるみが使い回しだったので何となくそんな予感はしていましたが、「ラストニンジャレース中間発表」 という形を取っての総集編風味&浴衣スペシャル。
 ところがテンション高く司会する好天は実は変化したマタネコで……と、物凄く普通に屋敷の内部に入り込まれていますが、 それでいいのか(^^;
 忍者屋敷の場所を探ろうとした挙げ句に敢えなく爆死した傘の妖怪が居たような記憶があるのですが……て、毛利さん脚本回だ(笑)
 ランキング形式で発表された順位は、上から順に、風花・凪・霞・キンジ・八雲・天晴。
 この結果にキンジと八雲は凪に凄み、霞は風花に目の笑っていない笑顔を向けるが…… いい加減なランキングで不和を起こして仲間割れを目論むマタネコの思惑とは裏腹に、通常営業です。
 沈み込むかと思われた天晴も勿論そんな繊細な神経は持ち合わせておらず、「初心に返って鍛え直せ、て言ってるんだ」 とかえって熱く燃え上がってしまい、マタネコは身内でポイントを奪い合うクイズに舞台をチェンジ。
 全員が浴衣に着替えてのまさかの『笑点』パロディ(日曜夕方も、見てくれよな!)で、山○くん役の旋風父さんが、 かつてなくノリノリ。
 かくしてBパートはクイズと過去映像を交えて進み、八雲がこれまで言った「EASYだな」の回数を覚えている凪、 かなり変態。……それはデータというかストーキングというか、後々何かの取引材料に使おうという、 復讐日記の類いでは。
 八雲が落とされに落とされまくるクイズ合戦の末、霞が本物の好天を連れてきて、正体を曝すマタネコ(なお、 キンジだけ出題できなかった)。
 「せっかくお前達を仲間割れさせてやっつけるつもりだったのに」と逃げ出すマタネコですが、 ニンニンジャーは血で血を洗い両手両足を引っ張って身内を泥沼に蹴落とそうとする戦隊なので、 作戦に根本的な問題があったと思います(笑)
 一応下調べの上で、デキると思っているメンバーを落として精神的ショックを与えようという作戦だったようですが (しかし霞を3位に置かざるを得ない所に何やら感じる苦しさ)、 むしろ八雲を1位にして調子づかせる方がメンバーの亀裂という点では有効だったと思います!
 マタネコを追い詰めるニンニンジャーだが、拾った小槌で発動した、妖術・肥大販促の術により超絶アカがまさかの巨大化。 『ウルトラ○ンX』が始まったタイミングで、攻撃的なネタを打ち込んできました(笑)
 超絶アカはシノビ丸と協力し、小槌で自ら巨大化したマタネコを撃破。マタネコは「またそっくりな奴が来るぞ」と、 不吉な言葉を残して手裏剣へと戻り、九衛門は落とした小槌を取り戻すのであった。
 ラストニンジャへの道はまだまだ横一線、再び修行に打ち込んでいくニンニンジャーだが、残る西洋妖怪・狼男の存在に、 キンジは独り思いを巡らせる――。
 「まだスタートラインに立てぬ者もおるか……」
 という好天の台詞は、良い引きでした。
 次回、キンジは過去を乗り越える事が出来るのか、というか、因縁を夏休みの内に片付けられてしまうのか。 出オチ感満載の西洋妖怪軍団、最後の砦は物語をシリアスに出来るのか!?
 夏休みスペシャルの更に閑話休題でしたが、回想映像のチョイスも良く、『笑点』パロディに活き活きとする好天と旋風も輝き、 楽しいバラエティ編でした。蛾眉さんを倒した乱舞・忍烈斬はやはり格好いいのですが、もう超絶してしまったので二度と出番は無いのか……。
 一つだけ気になったのは、ランキング&クイズで泥沼の更に底が抜ける所までひたすら蹴落とされた八雲が、 クライマックスバトルでも特に活躍しなかった事。マタネコの正体は困った時の邪悪策士で解決してしまいましたし、 さすがにここまで落としたら、八雲に少し活躍の場を与えて欲しかったです。最近ちょっと、 八雲に関しては公式がネタ化しすぎている感がありますが、あまりやりすぎると笑えなくなるので、適度なバランスを配慮してほしい所(^^;
 発音ネタの頃からその節はありましたが、八雲は完全にホージーさん(『特捜戦隊デカレンジャー』) 2号機の道を歩んでいますけれど、ホージーさんは………………えー……んー……あまり変わらない気もしてきましたが……あー、 そうだほら、ホージーさんには、生暖かい目で見守ってくれる同僚とか、同じフォルダ内の相棒とか居たから!
 八雲の周囲には、敵しかいない。信頼できるのは、カーリーだけ……(涙)

◆忍びの27「夏休みスペシャル 夏だ!超絶スター誕生」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
 見所は、よりによって天晴に「一人で突っ込みすぎだ!」とツッコミを受けるスターニンジャー。
 夏休みのラストを締めるアクション編としては見所がありましたが、話の内容は引っかかる所が幾つかあって、ちょっともやもや。
 まずは、西洋三大妖怪・来日を知った時の軽い反応から、狼男は狼男でも、キンジの仇とは限らない(同種族の別個体) という事なのかなーと思っていたのですが、今回、特に確認する前から仇と決め打ちしており、それなら、 来日を知った時点からもう少しキンジの反応を思わせぶりにしてほしいな、と。
 昨日今日の因縁ならともかく、ほぼキンジ登場時から引っ張っている話であり、キンジの土台とも言える要素なので、 もう少し丁寧に扱って欲しかったです。
 発祥としてもヨーロッパから来たとおぼしいのに、「西洋」の名の下にアメリカとヨーロッパがひとくくりにされているのも少々引っかかりますし……根本的には、 因縁の相手が狼男であった必然性、というのが物語として全く無いのはいただけなかった所。……重ねて書きますが、 昨日今日の因縁ではなく、キンジの根幹設定なので。
 無類の回復力を誇る狼男の必殺攻撃にスターが敗れ、ニンニンジャーは一時撤退。 仇討ちにこだわって冷静さを失ったキンジは好天から弟子失格を言い渡されてしまい、そこに再び、九衛門がヘッドハンティングに現れる。
 「仇討ちぐらいさせてやればいいじゃんか!」
 「馬鹿者! ニンジャの力をなんじゃと思っておる。感情で使うものではないじゃろうが」
 ……いつ、そういう事に?
 天晴の発言もどうかと思いますが、今回の好天はやたらに発言が道徳的かつ倫理的で、二週続けて本物かどうか怪しい(笑)
 ここで、好天がキンジの心の弱さを「元馬鹿弟子みたい」、九衛門が話を聞かないキンジのせっかちさを「あのクソジジイみたい」と、 それぞれなぞらえる、というのは面白かったです。
 「爺ちゃんの弟子なんだろ! もっとキンちゃんのこと信じてやれよ! なんだかんだで一番恐れてるのは、爺ちゃんじゃんか!」
 心の弱い奴はダメ、ホントダメ、何やらせてもダメ、という好天に、孫達が反論したのは良かった所。
 そもそも好天、弟子を全く導こうとしないので、そこを正面から描いてしまうと、 根本的に駄目師匠ですからね……好天は何を考えているのかわからないジョーカーとする事で、 師匠としての駄目さを覆い隠している所があったので、同じ所に立たせて真っ向から切り込むと、ちょっと厳しい。
 再び街で暴れ出した狼男に挑むニンニンジャーだが、キンジは九衛門の出した好条件に釣られ、転職を考えていた。 普通の人間の力では傷を与えられない狼男を倒す為、キンジは九衛門から妖怪の力を注がれ、ここでどうやら、 九衛門が半妖となっている事が判明。
 「僕にはわかるんだよ、スターニンジャー。君の心に、深い闇があるという事をね。僕と同じさ。僕らは似たもの同士。 手を組む運命なんだよ」
 出たてで強かった頃のキンジならともかく、今のキンジと「似たもの同士」発言をすると、 凄い勢いで株価が下がっていきますが、もしかしなくても九衛門、昔から落とし物とか多かったのか。
 「すみません師匠ぉぉぉぉぉぉ!! <終わりの手裏剣>をどこかに落としましたぁぁぁぁぁぁ!!」
 みたいな事が5回もあれば、それは破門されても仕方ないかもしれません。
 「いや……あっしは……おめえさんとが違いやす!」
 心の揺らぎにつけこまれ、妖力に呑み込まれかけるキンジだったが、天晴達の「俺達はキンちゃんを信じる!」という言葉が届き、 妖力を振り払うと5人に合流。
 「あっしは仇討ちどころか、父と兄を復活させる為に、<終わりの手裏剣>を手に入れる私情で、好天様に弟子入りを願っておりました」
 あ、そこまでみんな言うんだ……(^^;
 まあ、この辺りで触れておかないと、そもそも<終わりの手裏剣>自体が忘れられた設定になりそうという都合もあったのかもですが。
 「確かにあっしは妖怪ハンターの息子でございやす。しかし、今はラストニンジャの弟子。私情を捨て、世の人の為に、 戦わせていただきやす」
 ここで、浮かれた普段着からニンジャ装束に切り替わる、というのは格好良かったのですが、本当にいつの間に、 ニンジャは「私情を捨て、世の人の為に戦う」職業になったのか。
 復讐に囚われて悪の誘惑に溺れそうになったキンジが仲間達の絆で正道を取り戻す、 という表向きの大筋は真っ向スタンダードで特に悪い構成でもないのですが、 劇中のニンジャ観がいつの間にか偽造されていて、今ひとつ盛り上がりきれませんでした。
 ここで、「ニンジャとはこうだ!」という話を持ってくるなら、もっとしっかり、「ニンジャ」に関する積み重ねをしておいて欲しかったです。
 また、ニンジャの正道と対比させる為に「私情」という言葉をキーワードにしているのですが、これまで特に用いてないし、 あまり日常的な言葉でもないのに、やたらめったら「私情」「私情」と使うのが、どうにも不自然になってしまいました。
 もう少し、キーワードを巧く用いてほしかった所。
 普通の人間の力では傷つけられない狼男だが、精霊の力なら大丈夫、とスター、先日拒否したばかりの超絶に。 強化装甲の色が一緒(赤)な為に見た目の差異がアカとあまり無い所を、二刀流で区別したのは良かったです。
 「キンさん、キャラまで変わっちゃったよ」
 ……まあそもそも、落ち着いた事がない。
 超絶キンは5人との連携から、二刀流で狼男をずんばらりん。巨大化後はシュリケンジンハオーで天晴バスターし、 父と兄の仇討ちを果たすのであった。師匠にも<終わりの手裏剣>を狙っていた事を告白しようとするキンジだが、 好天はそれを押しとどめると弟子見習いから正式な弟子にして、大団円。だが一方、有明の方に現場指揮権を願い出た九衛門は、 「ニンジャにはニンジャ」をぶつけようとしていた……。
 父兄の仇討ちから<終わりの手裏剣>まで、一気に過去の因縁と動機を片付けられたキンジですが、狼男の攻撃で受けた傷を妙に強調、 超絶の時の青い瞳、と、新たな伏線めいたものが描写されました。また狼男の断末魔で「妖怪ハンター……必ず! 必ず貴様等は!  根絶やしとなるだろう……うはぁぁっ!!」と、これまた妙に「妖怪ハンター」を強調しており、 妖怪ハンターの血統そのものに何かの意味があるのか、或いは九衛門に妖力を注がれた影響なのか、今後の展開に繋がる……かもしれない。
 さすがにキンジの畳み方は今作にしても強引な気がするのですが、何か内部で、路線修正の動きでもあったのかなぁ……(^^;  というわけでこの新たな伏線めいたものも、あまり期待も信用もしないで心の片隅に留め置いておこうと思います(笑)
 次回、予告が妙に格好いい音楽で、新展開はニンジャvsニンジャ?!

◆忍びの28「激走!牙鬼ニンジャ軍団」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
 突然の、ご近所さんへのニンジャ・カミングアウト。
 少なくとも天晴には隠す意識は無いでしょうし、今作の世界観はどちらかといえば、 ニンジャがその辺りを歩いていても当たり前……に近いのだとは思いますが、前半とにかくそういう細かな描写がされない作品だったので、 急に前面に押し立ててくると、妙な違和感を強く覚えます(^^;
 前回、夏の終わりにキンジの設定を実質ほぼリセットした勢いで、 なし崩し的に世界観を変更しようとしているのではないか。
 そして、「ニンジャなんてださい」発言から、あかんべーをして幼稚園バスで走り去る園児に向けた天晴さんの視線が、 人を殺せそうでヤバい。
 あ、天晴さんの逆鱗に触れちまったぁ!!
 「す、すみませんうちの子が! どうか、どうか命だけはご勘弁を……!」という勢いで平謝りのお母さんから(間違いなく近所で、 あそこの屋敷は若い男の奇声が響いてきたり銃撃音が聞こえてきたり矢が突き刺さったりして危ないので、あまり関わってはいけない、 と教えられている)渡し忘れた弁当を奪い取った天晴は、報復するは我にあり、と影走りで幼稚園バスを猛然と追いかける。
 危うし、ひろしクン……!
 ところが、幼稚園には大人の侵入を阻む謎の結界が貼られていた。囚われの園児達を救うべく、 八雲の魔法で玩具に変身して潜入を試みるニンニンジャー。だがそこには恐るべき強敵、 十六夜九衛門の弟子である十六夜流忍者・ハヤブサが手ぐすね引いて待ち構え、今ここに、 ニンジャvsニンジャの凄絶な死闘が幕を開けようとしていた!
 次回予告から盛り上げた新展開なのですが、蓋を開けたらバラエティ重視のほぼギャグ回で、 夏休みの延長戦(主にタカ兄がずっと延長戦)みたいなノリ。
 玩具で潜入作戦、ニンニン体操、天晴オンザラン……と次から次に色々と繰り出すアトラクション展開なのですが、 盛り込みすぎのギミックを出来る限り映像化しようとした上で、新展開スタートという事でかメンバーそれぞれに活躍の場を与えようとした結果、 物凄く散漫な事に。
 せめて、多少強引でも忍者ハヤブサのモチーフと使用忍術を繋げてくれれば、 ニンジャ対決という部分で盛り上がりとまとまりがあったのですが、火の術使ったり、重力操ったり、走り続ける呪いをかけたり、 と関連性が非常に薄く(あんなにハヤブサを強調したデザインなのに)、ますます散らかり放題になってしまいました。
 物語において劇中の要素の連動性を重視して見るというのもあって、こういう、手当たり次第にボールを投げ込んで、 個々の要素の関連については“考えない”というのは苦手(^^;
 新展開の一発目としてはあまりにも空気が軽いのを含め、作品全体で路線修正を始めた雰囲気も感じるのですが、 このノリがベースになると、個人的にはちょっと辛い。
 無論、低年齢層をターゲットにした作品の場合、矢継ぎ早にギミックを繰り出すアトラクション展開には有効性があるのですが、 あまりにも統一されたテーマ性を欠くアトラクションになってしまった気がします。
 後、ここしばらく八雲個人を下げまくっていた所で、ブレーキかけずにこれでもかと魔法を便利に描いてしまった為、 八雲が超強力なスキルを持っているのに使いこなせない排水溝のカビみたいな事になっていますが、 それでいいのか、加藤・クラウド・八雲。私は別にいいけど。
 八雲といえば、終始、熱中症になりそう……みたいな顔をしていましたが、髪型か、髪型が悪いのか。
 幼稚園バスを救い、ハヤブサを倒したニンニンジャーの前に九衛門が現れて宣戦布告し、巨大化したハヤブサは圧倒的火力で粉砕。 敵の種族が妖怪からニンジャに変わっていますが、ニンジャと名乗った以上はどう殺されても文句は言えないのです。 それが忍びのジャスティス。
 まあ、巻物から生まれていましたし、見た目からして半妖のような感じですが、一応今作、 器物+手裏剣から誕生した存在だからぶっ殺していい、というエクスキューズが妖怪相手にはあったので、妖怪ニンジャと言及するなり、 何か一言フォローは欲しかった所です。
 バスを止めたアカニンジャーの活躍に感動したひろし少年は天晴に弟子入りを申し入れ、 天晴は「ラストニンジャになったら弟子に取ってやる」と約束して一件落着。前回からやけに人間性に目覚めた好天は 「儂は悪い師匠だったかもしれん」と反省モードに入り、十六夜軍団のニンジャは、 九衛門が奪った旋風の忍タリティによって生み出されているという事実を告げるのであった……。
 バタバタとしたエピソードでしたが、最後に父の日回の「旋風は昔は忍術が使えたし、今も勢いで発動する事がある」 は勢いネタではなく、しっかりした布石だった事が判明して、つづく。次回、伊賀崎家の過去がまた一気に明かされたりしてしまうのか?!

◆忍びの29「忍者すごろく決定版!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:下山健人)
 旋風は九衛門に忍タリティと記憶を奪われていた、という真実が好天の口から語られ、衝撃を受けるニンニンジャー。一方、 九衛門は次なる十六夜流忍者・イッカクサイを召喚し、めっきり影の薄くなった軍師様の入れ知恵で、 子供を閉じ込める忍者双六を作り出す。囚われの子供達を救うべく、双六に突入したニンニンジャーは二手に分かれ、 「いけいけどんどん」組に入れられる凪。
 ……どう考えてもその組は、天晴・キンジ・風花、だと思うのですが、口に出して文句は言えないヒエラルキーです。
 合わせてやってます。
 順調に進んだかと思われたいけいけ組だが、「力を失い絶望して永久に休み」のマスで子供達と一緒に囚われてしまい、 残されたじっくり組は双六が、旋風の記憶から作り上げられている事に気付く。
 この双六を突破する為には、たとえ忍タリティを失った時の辛い記憶が甦ったとしても、 旋風の力を借りるしかない――八雲は旋風を連れて双六に再突入し、旋風はその中で、 自分が弟弟子の九衛門(やはり美少年だった)に力とその時の記憶を奪われた過去を思い出す……。
 それは、優しすぎるが故に忍者には向かないと指摘された旋風の、苦い挫折の記憶であった。だが――
 「ライバルが現れようが、爺さんになんて言われようが、そんなもん、諦めちゃいけなかったんだ! 反論して、 戦うべきだったんだ! だからみんな! ……俺みたいになっちゃいけない」
 力を失った事が問題なのではない、夢を簡単に諦めてしまった事が問題なのだ……誰かのせいにするのではなく、 自らの過ちとしてそれを認め、乗り越えた旋風は、子供達に檄を飛ばす。
 「夢なんて……最初から真っ暗で見えないんだ。だから、自分で切り拓くしかないじゃないか!」
 父さん(中年)だってトラウマがあっていいし、父さん(中年)だってトラウマを乗り越えていい……親世代向けのメッセージですが、 下山さんがこのぐらいの世代なのか、普段よりむしろメッセージ性に力が入っている気がします(笑)
 旋風は、自分に敢えて過去のトラウマをぶつけてきた八雲を「魔法忍者とかどうやってなるのかおじさんに言ってみろ!」と煽り、 八雲は、闇の中を手探りで夢に向かって進む為、その杖を振る。
 「見えないなら、こうする!」
 ある種の劣等感(旋風に対する九衛門、八雲に対する天晴)を持って、旋風と八雲を繋げる、 という意外な組み合わせは面白かったのですが、八雲が「前代未聞の魔法忍者への道(笑)」について悩んでいるというのが初耳すぎて、 もう一つ唐突になってしまったのは残念だったところ。……まあ今作に、その手の積み重ねは基本的に期待出来ないのですが、 視聴者的な八雲の扱いは「開き直って魔法を使いだした忍者」だったと思うのですが(^^;
 八雲が魔法で作った光の道に続いて、ニンニンジャーも絶望を切り裂く光を放ち、強引に双六をゴール。 犀だけにサイを使う忍者イッカクサイは、時間の都合でさっくり撃破。リアルだけど変化球の武器を、 駄洒落で使ってくれたのはちょっと良かった。
 「俺の夢は、かなわなかったけど……天晴や風花達に、それを継いでもらうのが、今の俺の夢だ。あの頃見えなかったものが、 今は見える。…………父さんのお陰だ」
 失った記憶を取り戻し、真実を受け止めた旋風――かつて抱きしめられなかった息子――を無言で抱きしめる好天。
 二世代の親子の繋がりも盛り込まれ、このラストはとても良かったです。
 前回から、爺ちゃんが急に反省するようになったのがちょっと気持ち悪いけど(おぃ)
 爺ちゃんは元々、天晴の崇拝の対象であり、能力的にもジョーカーという、神聖不可侵のキャラクターだったのですが、 ライオンハオーの辺りから、時に失敗もすれば短所もある人物、という描き方に変わってきているのは、興味深い所。 後はそれが話の展開に都合の良い失策ではなく、好天の人間的弱さとして、物語で厚みをしっかり持たせて欲しい所です。
 その点で今回、いい大人(旋風も好天も)が、過去の自分の過ちを認め、関係を改善していく、その上で今の自分を肯定する、 という構造になっていたのは良かったです。今作はなんだかんだ、「家族」テーマの時は軸がしっかりする事と、 キャスティングの成功もあって、あまり外れない。
 浦沢−大和屋ラインという事で自然と期待されてしまう向きもあるかとは思うのですが、正直、 過去の戦隊参加も含めてここまでの下山脚本を見る限り、それ程はっちゃけた話が得意なようには見えず (例えばむしろ小林靖子とかの方が発想から狂っている)、手堅く真っ当な路線の方が今作アベレージ高かったのではないか、とはちらちら思う所。
 次回――まさかの、天晴に女の影。

◆忍びの30「ねらわれた忍者塾!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:下山健人)
 割と鍛えられた上腕二頭筋を披露しながらのランニング中、旧知の女忍者・キキョウの奇襲を受ける天晴。
 (うぉっ?! ぜっんぜん変わんないな)
 襲撃を回避した天晴だが、姿を隠したキキョウを探してゴミ箱などを漁っている内に足を滑らせて川に落ちそうになってしまい、 思わず飛び出してきたキキョウに助けられる。
 「ほっんと、相変わらず馬鹿なんだから」
 「自慢じゃないけど、おまえに頭で勝った事ないからな」
 天晴の言葉に、はにかむキキョウ。
 ストップ! キキョウさん、STOP!!
 タカ兄それ、

 誰にでも言ってるから!!

 貴女だけが特別じゃないから!

 キキョウさんが割とダメっぽいというのはともかく、 挨拶代わりに襲いかかってくるニンジャセンス・天晴のバカっぷり・キキョウの根っこの人の良さと天晴へのうっすらとした好意、 が開始2分に凝縮されており、“短いシーンでキャラクター(とその関係)を見せる”という点においては、 今作ここまででベストと言って良いかもしれない素晴らしいシーンでした(笑)
 キキョウは天晴が修行の旅に出ていた際に知り合ったニンジャであり、伊賀崎家を訪れたその姿に、騒然とするニンニンジャー。
 「か、彼女ー?! お兄ちゃんに彼女?!」
 「ナンダソレ?」
 天晴さん、「彼女なんかじゃねーよ」ではなく、「“彼女”、て何? ラテン語?」レベルで、薄々そんな気はしていましたが、 思春期がまだダウンロードされていない。
 まあ、〔軽いお茶目(ゴミ箱を探す)→母性をくすぐる突然のドジ(川に落ちそうになる)→殺し文句(「自慢じゃないけど、 おまえに頭で勝った事ないからな」)〕のコンボで、危うく天然ジゴロ属性が付く所だったので、 現在のバージョンではそのアプリケーションが起動不能で一安心です。
 伊勢喜六(演:ブルーバスター)というニンジャが開設した忍者塾の講師として招かれた、 というキキョウについていった天晴は訓練に飛び入り参加すると、頭の悪い変な人だが体術は凄い、と子供達の尊敬を勝ち得る。だが、 妙に無感情な生徒達を「機械みたい」と言ってしまった事で、伊勢を尊敬するキキョウとぎこちなくなってしまう。
 いっけん爽やか系の伊勢が、小学生ぐらいの子供達に火炎の術を教えようとしたり、 躊躇なき必殺を要求するハードな剣術指南を行っている事で怪しさを強調しているのですが、 天晴はそこに全く疑問を抱いていないので、劇中の常識と視聴者へ向けた伏線が混線してしまったのは、残念だった部分。
 劇中では当たり前の事は、視聴者に対しても「劇中では当たり前の事」として見せるべきであって、 そこを「視聴者に対しては怪しげに」見せては世界観がブレてしまいます。
 キキョウも火炎の術の修練に一度は反対していますが、結局教えていますし、剣術の訓練には疑問を感じていない様子であるならば、 それを視聴者には「小学生に火炎の術を教えるのって変だよね」と見せてはならず、 「小学生に火炎の術を教えるのはニンジャなら当たり前!」と見せなくてはなりません。
 何度か書いていますが、常識が思い切りを邪魔して、素っ頓狂のようで実際は安全運転という今作の欠点がまた顔を出してしまっています。 せっかく“他流派”のニンジャが登場した事で、ニンジャ世界の常識/非常識の摺り合わせが出来るチャンスだったのに、もう一押し、 攻めきれずに勿体ない。
 冒頭のキキョウの強襲もあったわけで、いっそイケイケドンドンで子供達に火炎の術を教えようとする天晴、 ぐらいまで振り切れて欲しかったところ。
 一方、忍者塾の存在を怪しんだ八雲達は塾の様子を探っていた。……ここも、Ninjyapediaはあるけど、「忍者塾は突飛」という、 場当たり的にネタを放り込んでくる割に、突如発動する常識の基準がまちまちというのが、今作のどうも弱い部分。
 裏で糸引く正影はあえて八雲達の前に姿を現し、御家老、初?の本格アクション。忍者塾の背後に牙鬼軍団の影あり、 と知った天晴はキキョウに伊勢への疑惑を話そうとするが、感情的なしこりの出来たキキョウは天晴の言葉にかたくなになってしまう…… そしてそれが、正影の狙いであった。姿を見せた伊勢と激しく斬り合う天晴だが、キキョウが天晴を押さえ込み、そこに伊勢の刃が迫る。 果たしてどちらを信じるべきなのか……千々に乱れるキキョウの脳裏に、これまでの天晴の言動が蘇る。
 (天晴は……嘘をつけるような 知力 人間じゃない)
 日頃の行いが功を奏して天晴は難を逃れ、寄生忍術で伊勢を操っていた十六夜流忍者・クロアリが正体を見せた所で、 子供達を逃がしたニンニンジャー集合。キキョウも華麗なアクションを披露し、天晴との連係攻撃でクロアリを追い詰めると、 最後は超絶。巨大化したクロアリの作り出した蟻地獄に飲み込まれるロボだが、ライオンハオー要塞モードに掴まって脱出する。
 「さすが、天空のオトモ忍で、ございやす!」
 UFO……(涙)
 キングシュリケンジンとライオンハオーの連続攻撃でクロアリはわっしょいされるが、回収した手裏剣を手に、 九衛門は何やらほくそ笑むのであった……。
 「天晴……次会えた時は……」
 「なんだよ?」
 「次会えた時は、どうなってるかな」
 「決まってんだろっ。とりあえず俺は、ラストニンジャになってるぜ」
 「……そうだね。頑張って」
 「ああ、おまえもな」
 途中、本命は熱血バカだけど、爽やか知性派に憧れる時もあるよね、という態度を見せていたキキョウですが、 最後は天晴への秋波を仄かに漂わせるも綺麗にスルーされ、「お兄ちゃんにはまだ早い」で終了。
 受け取りようによっては、ラストニンジャになるまでお前に会う気は無いという絶縁宣言に近いですが、 むしろそれ以上にバカ、という事で、痴情のもつれによる零距離から手裏剣に発展せずに済みました。
 前回ラストにちらっと顔見せ、クライマックスアクションにも参加、と扱いの良かったゲストヒロイン(山本千尋)は、 幼少時から太極拳を学んで世界ジュニア武術選手権大会優勝の経歴を持ち、 2014年には『太秦ライムライト』でヒロイン役を演じていた、というアクションヒロインとして狙い澄ましたゲストだった模様。
 美人度も高く、天晴と似たもの同士のニンジャセンス+人の良さ、が上手く描写され、好感の持てるゲストヒロインで良かったです。
 もう一人のゲスト、伊勢喜六(馬場良馬)の方は、『ゴーバスターズ』を現在見ている(半分まで見たら安心してまた止まっているので、 早く再開しなくては……)のに加え、顔も髪型もあまりに変わっていないので、リュウジの忍者コスプレにしか見えなくて、 ちょっと困りました(^^; それこそ、『ゴーバスターズ』でもブラックモードもやっているしなぁ(笑)
 もう一つ振り切り具合が足りないのが毎度の難点ですが、ゲストの好演に加え、ニンジャ塾のロケ地が雰囲気出ていて良かったです。

→〔その6へ続く〕

(2018年4月24日)

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