■『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想まとめ3■


“轟け八雲! アオニンジャー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『手裏剣戦隊ニンニンジャー』 感想の、まとめ3(13〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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手裏剣ライン

◆忍びの13「燃えよ!ニンジャ運動会」◆ (監督:金田治 脚本:下山健人)
 弟子入りを懇願するキンジに対し、かつて自ら後継者と目して育てた九衛門がその力に惑い道を踏み外した過去から、 刺客に徹する事ができず逆に孫達と交友を深めしてしまうような、心に揺らぎのある者は弟子には取らない、ときっぱり告げる好天。
 「1人しか継げぬラストニンジャを、塾かなんかで学ぶ事と、混同するでない」
 1クール目が、いきなり全否定されたゾ(笑)
 爺ちゃんが作品の根幹を揺るがしかねない発言をしている頃、九衛門は蛾眉雷蔵大暴れによって集めた恐れの力を用いて、 翁面の新幹部――牙鬼家の家老にして軍師、晦正影を復活させる。バトルジャンキーだった蛾眉さんとは打って変わって知謀の士である正影は、 牙鬼復活の為に恐れを集めると共に、邪魔なニンニンジャーを始末する為の策を巡らすのであった……。
 蛾眉さんが、般若面+青鬼みたいな如何にも暴れん坊だったのに対し、晦は翁面+……海産物? そこはかとなく宇宙的ホラーの雰囲気。 中尾隆聖さんの演技も合わせ、如何にも嫌らしい感じです。
 好天の言葉に自分の中の迷いを消し去ろうと努めるキンジは、伊賀崎家に向かうとお手伝いさん退職を宣言し、 凪の英語の宿題の手伝いも拒否して姿を消す。
 「どうしたんだろう……?」
 あー、その人、サイコさんだから。
 気にしたら負けです。
 一方、暇を持てあましていた天晴は「忍者運動会」のチラシを目にし、伊賀崎流5人で参加する事になるのだが、それは勿論、 正影のめぐらした策であった……というわけで、金田監督アクション回がやって参りました。
 フラッグレースやトラップ有りの大玉転がしに奮闘するニンニンジャー(&モブ忍者達)、そこに乱入するサイコな刺客スター、 がテンポ良く描かれ、楽しい出来。
 基本的にライトな作風という事もありますが、ニンニンのメンバーは、あれこれ思い悩ませるよりも、 はしゃがせておいた方が絵としても面白い。
 昼食の時間、天晴が水筒を忘れ、飲み物を買いに行くパシリこと凪。5人分なのに、誰一人、一緒に行こうなどとは言いません、 言いませんとも。この世には、変える事の出来ないヒエラルキーというものがあるのです。
 その道中、凪は樹上で独りハンバーガーを口にするキンジを見つけて気さくに声をかけるが、馴れ合いを拒否される。
 「あっしは狙う方。坊ちゃん方は狙われる方。仲良くするのは、変でございやす」
 「なに急にキャラ変わって。ただでさえ、変な忍者なんだから」
 凪の何気ない一言!
 キンジの心にクリティカルヒット!
 キンジは心に深い傷を負って木から落ちた!
 「変で、ございやすか?」
 「うん、すっっごい変! お爺ちゃんに弟子入りとか、変すぎ」
 凪はキンジの落とした写真を拾い、キンジが思わせぶりに見ていた写真の人物は、妖怪ハンターであったキンジの父と兄と判明。 写真を見られて動揺していた割には、実にあっさり、家庭の事情を話すキンジ(笑)
 幼い頃に父と兄を妖怪に殺されて亡くし、「家族」というものがよくわからないキンジは、 ただパシらされている凪の姿に家族愛を見て勝手に感動し、「家族」に対して少々麗しすぎる思い込みを持っている模様。
 一応、前回の「家族」キーワードに対するニンニンジャーへの肩入れの理由も繋がりました。まあ前回は、 後から理由付けすればいいタイプの展開ではありませんでしたが。
 「とにかくあっしは、二人を超える妖怪ハンターになる為、ラストニンジャ様の弟子になろうと思ってるんでございやす」
 ……うん、その発想が、変。
 「ですから、これ以上仲良くしないよう、お願いいたしやす」
 「わかったけど……多分それ、無理じゃない?」
 「え?」
 凪が何か言おうとしたその時、二人は運動会の運営委員の男達が足軽兵に姿を変えるのを目撃。 運動会は牙鬼一味の罠だと報せに駆け戻る凪とキンジだが、正影によって青桃白とモブ忍者達がくす玉の中に閉じ込められてしまう。
 ……あ、モブ忍者の皆さんは、本当に一般参加者だったのか(笑) てっきり、こちらも足軽兵の変装だと思っていました。
 正影は運動靴から妖怪ヤマワラワを生み出し、赤黄星は、囚われた仲間達とモブを救い出す為にヤマワラワと三人四脚競争をする羽目に。 俺様ワッショイの天晴と、思考回路が霧の迷宮のごときサイコキラーの息が合うわけもなく引き離される3人だが、 凪が間に入ってリードをする事で徐々に噛み合い、快走を見せる。
 「ナイスリード凪坊ちゃん!」
 「合わせるの得意だからね!」
 ああ、成る程、そうか、そうだったのか……。
 長らく、ニンジャ一家の残忍で冷酷なヒエラルキーの中で、凪がどうやって心のバランスを保っているのか不思議だったのですが、 上(主に八雲)からの圧力や、ナチュラルすぎるパシリ扱いを甘んじて受け入れていたのは、 俺がこいつらのレベルに合わせてやっている、という視点だったのか!!
 まさかの、最下層からの超蔑みの視線。
 殺伐ニンジャファミリーの関係がくるっと一回りして、物凄く腑に落ちました(笑)
 丸太を飛び越えたり、火薬の埋まった川の中を突っ切ったり、の三人四脚は、映像としてはあまり面白く感じませんでした。 身長差の問題もあって、微妙に両脇から、真ん中の黄を持ち上げているっぽい時もあるし(笑)
 途中、正影により青桃白3人の幻影が障害物として放たれるが、洗脳されているのだったら「後で謝る!」と、赤が本気攻撃で突破。
 ……微妙に既視感あると思ったら、去年、『トッキュウジャー』が似たような事をしていたなぁ(笑)
 ピッタリと息の合った3人は僅差でヤマワラワを破り、囚われの人々を解放。先程の3人が幻影ではなく本物なら一大事だった、 と赤に詰め寄る星だが、赤は伊賀崎流のニンジャとしての迷いの無さを見せつける。
 赤「俺達はどんな状況でも、全力で戦うしかないだろ」
 青「そうだな。ニンジャたるもの、悩むべからず。四の五の言ってられん」
 桃「まあ、身内であっても、容赦はしませんよ」
 …………たぶん、霞ねえの「容赦しない」は、赤と青の言う「全力」と、意味が微妙に違うと思います。
 ここ、既存の戦隊で言うと、「お互いに信頼しあっているからいつでも全力をぶつけられる」みたいなニュアンスだと思うのですが、 今作のここまでの積み重ねと、最後を締めた霞の台詞のせいで、ニンジャ一家の抱える邪悪な何かが滲み出てしまいました。
 前作『烈車戦隊トッキュウジャー』は、一言で現すと、「ライトに狂気」な戦隊でしたが、 それになぞらえると今作は「ライトに残酷」な感じで、もしこれを計算してやっているなら、 後半に大化けする可能性があるかもしれないでもないかもしれない。
 囚われていた3人も変身し、スターを交えて6人で揃い踏み、後ろでポーズを決めるモブニンジャ達(笑)  これをアイキャッチ代わりにしてパートの切れ目にしたのは良い演出でした。
 ヤマワラワは赤と星の同時攻撃でさくっとパーリナイし、巨大化後はキング手裏剣神でざっくり撃破。今回、 金田回という事でロボ戦短めなのは配分通りでしょうが、キング手裏剣神はあまり動けないのではないか、 という疑念がそれとなく募ります。
 「仲良くなったら戦えないだなんて、あっしは本当に甘かったでございやすね」
 殺伐としたニンジャ一家の姿を見て、キンジ、更に悪い方向に振り切れる……というか、この人のこれまでの行動を考えると、 単に好天に「何おまえ標的と仲良くなってんの」と言われた事で、「仲良くなった相手は殺せない自分」という新しい妄想が発生し、 自分自身がそれに騙されていただけで、一周回って、元のサイコキラーに戻っただけではないのか。
 もしかすると、父も兄も「妖怪ハンター」という職業の存在も、全て妄想。
 或いは、「父」と「兄」を殺し、自分を残された「弟」だと思いこんでいる妖怪なのかもしれない。
 ……ぐらいまで考えると、キンジのこの、一向に落ち着かず、全く軸の定まらないキャラクターに納得行くのですが。
 まあ8割与太ですが、キンジの正体が妖怪「鵺」である可能性については、心の隅で抑えておきたい(笑) 雷の術、使うし。
 凪が再び英語の宿題の手伝いを頼んで断られた所に爺ちゃんからの矢文が届き、 正影を倒す力として天空のオトモ忍を呼び覚まして手なずけたらラストニンジャの最有力候補だ、と更なるガソリン投下。 天空のオトモ忍……U、UF……ううっ、頭が割れるように痛い。
 にしても、
 好天「晦正影は、蛾眉とは違い、一筋縄では倒せぬ」
 正影「蛾眉の奴は誤魔化せたようじゃが、儂を騙せると思うな。十六夜などという小姓、我が軍には、おらぬ。……ふっ、 素性も目的も聞かぬ。おかしな事をやりおったら――斬る」
 前回、無残な最期を遂げた挙げ句、敵からも味方からも脳まで筋肉のアンポンタン扱いを受ける蛾眉さん、死んだ後まで扱いが酷い。
 好天の言動は一から十まで信用できないので本当に元弟子かはわかりませんが、九衛門に関しては正影からも、 元からの牙鬼一味ではないと言及があり、少なくとも何かの含みを持って恐れを集めている事がハッキリしました。
 正影が九衛門の名前をわざと間違えるネタは、単に喧嘩の強さで空威張りしていた蛾眉さんとはまた違った嘲り方が差別化されていて、 良いと思います。
 ところで凪は、英語の宿題に関して八雲とキンジは頼ろうとするけど、高校の英語ぐらい教えてくれそうな霞に声をかけないのは、 霞に借りを作ると後でどんな目に遭うかわからない、と動物的本能が告げているのか(ガタガタ)

◆忍びの14「助けてサギにご用心!」◆ (監督:金田治 脚本:下山健人)
 スターがお命頂戴と道場に現れて天晴と丁々発止と切り結び、慌てる旋風、我関せずと読書を続ける八雲、 嵐が去るのをやり過ごそうと寝転がる凪、平然と勉強をする霞、後片付けを考えてキレる風花。
 騒動に対するリアクションでそれぞれの色づけをするのは良かったのですが、油断していると被る要素のある八雲と霞が、 平然と読書(勉強)をしているという似たようなものになってしまい、ここはもう少し、意識して見た目の違いを付けて欲しかった所です。
 まあ多分、八雲はポーズで、霞は本気なんですが!
 (タカにぃとスターが周囲で戦っていても平然と読書をたしなむ俺、EASYだな!)
 合わせて、連日スターと戦っている事で、順調に経験値を獲得して天晴がレベルアップしている、と補強。これも良かったのですが、 スターが明らかに天晴しか狙っていないのが物語都合にしかなっておらず、これはキンジに、 とりあえず天晴を優先目標とするような宣言を前回か前々回ぐらいにさせておいて欲しかった所。
 怒りの風花によって天晴とキンジは説教を受けてお命頂戴禁止令が発布されるが、妖怪の反応をガマガマ銃がキャッチ。 現場へ向かうニンニンジャーと妖怪ハンターだが、足軽兵ばかりで妖怪の姿が見えず、手分けして探す事になる。だがそれは、 正影が公衆電話から生み出した妖怪ヤマビコによる作戦であった。
 ヤマビコの作戦……それは、風花と好天の声真似を用いた、「兄さん助けてよ詐欺」。ころりと騙された天晴は、 言われるがままに仲間達の変化手裏剣を集めて、怪しい“代理の男”に渡してしまう(笑)
 一方、当の風花は、後を追いかけてきたキンジに道場での騒ぎについて改めて謝罪されていた。
 「風花お嬢ちゃん、どうも申し訳ございやせん!」
 真っ正面から真摯に謝るキンジ、基本、いい人です。
 いい人だけど、サイコです。
 麗しい家族幻想を抱くキンジは、道場をちらかした事よりもむしろ風花と天晴の兄妹仲を気にするが、あんな残念はどうでもいい、 と冷たい風花の態度に、「兄妹ってのはもっとこう、仲が良いものかと」と戸惑い、父と兄を既に亡くしている、 と今回も重い設定を明かして年下組に気まずい空気を投げつける。
 全ては亡き父兄を超える妖怪ハンターになりたいが為――
 「必死になりすぎて、迷惑をかけていた事に、気付かないでおりやした。面目ない」
 これまでのキンジの行動の数々は、全て目的に集中して周囲が見えていなかった為と、ここで理由付け。確かに、 妖怪が出現した途端にそれまでのいざこざを綺麗に忘れる性格ではあるので、視野が直線しかない、というのは頷ける所。
 そんな風花とキンジの元に、まんまと4つの変化手裏剣を入手したヤマビコから、天晴の声真似で電話がかかってくる。
 「はぁ?! どういう事それ!」
 「だから妖怪と間違って、人に忍術かけて怪我させちゃったんだって」

 あ・り・そー

 だが残念な兄と違ってしっかりしていた風花をヤマビコは巧く騙す事が出来ず、生身の4人が足軽兵と戦っている所にやってくる風花とキンジ。
 お互いが偽電話の内容で口論する兄妹の姿に、凪が「この兄してこの妹ありとは、まさにこういうのだね!」と言うのですが、 この台詞は、流れとしては、ちょっと変。いや、状況だけを見た凪の台詞としてはおかしくないのですが、物語としては、 “ころりと騙された天晴”と“しっかり者の風花”が対比されているので、ここは素直に風花の活躍に繋げるべき所で、 凪のこの台詞自体が不要だった気がします。
 風花とキンジは変身し、ヤマビコは階段落ちを披露し、白は土遁の術で4人の手裏剣を取り返す事に成功。 揃って反撃するニンニンジャーだが、ヤマビコの、声真似で助けを求め隙を突いて音波攻撃、のコンボに次々とやられてしまう。が、 白だけは兄が助けを求める筈が無いとヤマビコにカウンターパンチを炸裂させ、戦況逆転。
 「名前で呼び合うから、騙されちゃうんだよね」
 「では、コードネームぽく行きましょう」
 と、アオとかアカとか呼び合う事にするニンニンジャー。この手のセルフパロディは、嫌いではありません。
 6人は突発的な連係攻撃を炸裂させ、勢い兄妹紅白アタックでヤマビコを撃破。 巨大化したヤマビコは高周波でオトモ忍の動きを止めるが、犬が吠えてそれを無効化し、初の活躍。 最後は手裏剣とバイソンのダブル必殺技でワッショイし、白は助けてくれたお礼に、スターに朝8:00〜夜6:00まで、 お命頂戴の許可を出すのであった。
 ……て、許可出すのか。
 ……そして、喜んで受けるのか。
 謝罪と反省→別のアプローチを模索する、という流れになるのかと思いきや、キンジの中で「伊賀崎家に迷惑をかけるのは悪いと思う」 と「孫の皆さんのお命頂戴」は普通に共存可能なようで、やはり、真性のサイコキラーです。
 ニンジャの世界に、情け容赦の4文字は無いのだッ!
 で、これは今作のトータルな問題点に繋がるのですが、キンジのみならず風花もちょっとおかしいかもしれない、 というこの手の倫理観のぐらつきは、メインキャラだけでやっていてもローカルルールにしかならず、 次々と頭のおかしいゲストキャラを出してこそワールドルールとなって世界観の面白さに繋がるわけで(例:浦沢時空、 『世界忍者戦ジライヤ』、など)、その点で今作には、狂ったゲストキャラが圧倒的に足りていません。
 また逆に、狂ったニンジャと対比される真っ当な一般人もほぼ出てこない為、キンジだけが狂っているのか(個人)、 好天の関係者が狂っているのか(一部)、世界そのものが狂っているのか(世界観)、というのがハッキリせず、 狂気のスケール感が曖昧なまま進行していっています。
 その上でこの13−14話を見る限り、物語の流れが「ニンニンジャーとの交流を通してキンジが真人間(?)になっていく」 という構造になっている為、構造的にキンジの狂気だけが強調され、結果としてむしろ、 どんどんキンジが人外の思考回路の持ち主に見えていく、という事態に。
 例えば前回の運動会で、他流派のニンジャがレース中に、当たったら死ぬよ?! レベルの妨害をナチュラルに仕掛けてくる、 など描写があれば世界に狂気が拡散できて、キンジの「お命頂戴」も、今回の風花の大岡裁きも、 そういう世界の中に収めていけたと思うのですが、現状の積み重ねではニンニンジャー側とキンジに「お命頂戴」 に対する認識の差があるようにしか見えず、そのギャップがただちぐはぐなだけで、今ひとつ笑いに繋がっていません。 というかキンジに関してはむしろ、段々笑えなくなっているレベル。
 意図はともかく現状キンジは、“「家族」についてよくわからず、「人間」として精神的欠落を抱えているから、 平然とお命頂戴をできる男”という描写になってしまっており、いやそれは、笑えないよね、と思うわけであります。
 そこを視聴者の笑い所にする為には、もう少し世界のデザインをかちっとしなければいけないと思うのですが、どうも今作、 そこで腰が据わっていません。
 今作の世界観の緩さというのは柔軟性を重視した意図的なものなのでしょうが、同時に、宇宙人にしろ魔法使いにしろ、 どこか曖昧に置いてあるだけになってしまっており、様々な要素が安全係数を取り過ぎて余りにふわふわとしてしまっています。
 そしてこの、いっけん派手で弾けているが、その実態はかなり安全運転、という基本構造が、 濃い要素を詰め込んだキンジの造形と非常に相性が悪く、キンジがどんどん得体の知れない生き物になってしまっています。 キンジと5人の関係が一連の流れの中でどう着地するかにもよりますが、そろそろ、世界観に対する覚悟を固めてほしい所。
 ところで前回、キンジの正体は妖怪なのではと書きましたが、今回見ていたらロボットという可能性もありそうな気がしてきました。
 強力な妖怪の攻撃を受けて、傷を負うキンジ。なんと、破れた服の下に見える傷口から覗くのは、煙をあげる歯車とケーブル!
 「……あ、あっしはロボットだったんでがんすかー?!」(更に混線している)
 いっそこのぐらい、弾けてくれてもいい(笑)
 その夜、真剣な顔で夜間の自主練に励んでいた天晴は、風花の気配に気付く。
 「珍しいな。お前が自主練なんて」
 「お兄ちゃんはまだ私が面倒見なきゃ駄目だって、わかったからね。……だから、お兄ちゃんより強くならないと」
 「……そうか。頑張ろうぜ」
 ここで妹が出てきた後も、天晴が真剣な表情を崩さなかったのは、非常に良かったです。星とバトルしているからだけではなく、 遅まきながら天晴は天晴できちんと修練を積んでいる、というシーンが入ったのも良かった(恐らく今までも修練はしていたのでしょうが、 映像として見せていなかったので……まあ天晴の場合、自主練で攻撃力しか上げていないという問題の根幹は解決していないのですが)。 また、天晴は真面目な顔しているとちゃんと格好いい、という点でも貴重なシーン(笑)
 キンジの造形ひいては世界観の積み上げとの噛み合ってなさには不満を書きましたが、前回今回と、 新展開入ってからの流れそのものは割と良かったです。
 ・存在感が忍びっぱなしの凪と風花のキャラエピソード。
 ・前回の「他人と歩調が合わせられない」、今回の「騙された事も理解できないレベルで、脳細胞がサイドブレーキだぜ!」と、 天晴の短所をちゃんと弱点として描く。
 ・天晴の真剣な自主練シーン。
 と、1クール目に必要だった要素が穴埋めされてきて、どこまで計算通りでどこから軌道修正かわかりませんが、 少しずつバランスが取れてきました。第12話の事があるので全く油断はなりませんが、この方向性で進んでくれるといいなぁ。
 ――次回、予告から既に漂う、邪悪な気配。
 待てキンジ、そのハンコは、その女の罠だ!

◆忍びの15「妖怪、ワタシ失敗しないので」◆ (監督:竹本昇 脚本:下山健人)
 いや今回良かった、面白かったです。
 冒頭、霞を狙いに現れるスターニンジャー。……うんなんかもう、一貫性が無いのは気にしない事にしよう。
 霞から忍術理論の講習を受けていた風花と凪にブーイングを浴びたスターは、残念2人に相手してもらってこい、と追い払われる。 その残念2人は好天の告げた「天空のオトモ忍」を探していたが、それを見つめる正影がオトモ忍離間の計を思いつき、 交渉の得意な妖怪フタクチオンナ(モチーフは眼鏡か)を誕生させる。
 前回、ヤマビコには自発的に作戦を任せた癖に、今回フタクチオンナにはやたら厳しくて、 早くも正影にまで一貫性が無いのは気になる所です(^^; それともご家老、昔の火傷の傷とかうずくのか。
 フタクチオンナはまんまとロデオ丸を騙して契約書に拇印を押させ、待遇の改善を訴えるロデオ丸の代理人としてキンジと交渉開始。 ガシャドクロと戦うニンニンジャーはそれを見て、青と桃は交渉に介入、赤はシノビ丸でロデオを止め、黄と白はガシャドクロと戦闘続行、 と役割分担。
 ここでシノビ丸が抜けた後を、残された2人がパオン丸で凌ぐ、というのはギミックが物語に取り込まれて良かった所。 とはいえ2人ではやはり劣勢に追い込まれるが、白のアイデアで分身の術を用い、白3人と黄2人で強引に穴埋めすると、
 UFO丸来たぁーーーーー!
 勝ったぁーーーーー!!
 うん、もう今回は、ここだけで+3点(笑)
 一方、キンジの元へ向かった八雲と霞はフタクチオンナの妖術による交渉フィールドに入り込み、霞ねえ、黒スーツにコスプレ。
 「手裏剣忍法、美人代理人の術です」
 恐らく戦隊史上でも希に見るレベルで、堂々と言い切りました。
 交渉フィールドは会社の会議室のような場所で、背景の窓で、ロボットが戦闘しているというもの。
 「勝算はありません。……でも、負けはしません」
 と交渉に臨む霞だが、外でロデオとシノビが殴り合うのを見たキンジが我慢できずに拇印を押してしまい、妖術にかかって暴れ出す。
 ……八雲の存在には何の価値があるのかと思ったら、暴れるキンジを羽交い締めにする係か(笑)
 ロデオの銃撃を浴びたシュリケンジンは分解してしまい、そこに九衛門が更なるガシャドクロを召喚。 黄と白はオトモ忍総攻撃で立ち向かい、ダンプと犬、そしてUFOとゾウも活躍。ロデオ丸に対しては赤がシノビ丸で挑み、 今作のウリの一つであるオトモ忍のスピーディなアクションバトルが炸裂。
 「ばっかやろぉぉぉ!! 話してもわかんねぇなら、男と男、拳で語りあおうぜ!」
 特徴的なギミックがテンポ良く盛り込まれ、遂に真っ向勝負を始めてしまう赤も、良い意味で天晴らしくて面白い(笑)
 なおこのバトルで、シノビが殴り返された時に赤が顔を押さえているのですが、オトモ忍のダメージのフィードバック描写は初か (天晴の気分かもしれないけど)。
 辛うじて戦線を維持するも、キンジは状態異常、ロデオ丸の攻撃で街に被害、白と黄もガシャドクロに押され気味、 と苦境に追い込まれるニンニンジャー。頼みの綱の交渉も劣勢で、お手上げ宣言をする霞だが、そこから一転、 自分達をここまで追い詰めた優れた妖怪であるフタクチオンナはさぞ職場での待遇も良いのでしょう、 と物凄い勢いでフタクチオンナを煽りだす。
 「こんなにも優秀な貴女は、もっと幸せになる権利があります! 妖怪として、女として!」
 成る程、正影のフタクチオンナへの厳しい態度はこの伏線でしたか。ネタ自体は好きなのですが、 正影の態度がヤマビコの時と違いすぎたのが、同じ脚本家が書いているだけに、ちょっと残念。そこを合わせた上で、更に、 ヤマワラワ、ヤマビコが正影に粗雑な扱いを受けているのをニンニンジャー(モモ)が目にしているシーンが仕込まれていれば完璧だったのですが。
 霞に乗せられたフタクチオンナは、畜生! 転職だ! と契約書を自ら破棄し、妖術が解除されて動きを止めるロデオ。
 「俺達の拳の意味……やっとわかってくれたか」
 「「違うと思う」」
 そしてキンジも無事に回復し、邪悪策士の罠にはまった事を悟るフタクチオンナ。
 「手裏剣忍法。ヨイショッショの術です」
 ……普段この戦隊でやっている事を考えると、言葉の裏に真っ暗な闇が広がっていて震えが止まりません(笑)
 「ロデオ丸、お互い操られて、いいとこなしでございやしたからねぇ。名誉挽回と行きやしょう!」
 復活したスター&ロデオがガシャドクロを担当し、フタクチオンナの前に並ぶ5人。
 「あたしを騙すとは、やな女、やな女ーっ!」
 「騙したのではありません。手玉に取らせていただいただけです」
 ここで夕空(フィルターだと思うけど)を背景に、手裏剣が周囲を飛びながらの各人名乗りは格好良かった。
 「忍ぶどころ〜……あ?!」
 「暴れます!」
 赤の決め台詞を奪った桃は妖怪に切り込み、夕陽をバックに炸裂する物凄いエフェクトの火炎斬りが普通に格好いいのですが、 特撮班、力入れすぎではないか(笑) 先日、赤が蛾眉さんを倒した技レベルだゾ。
 「手裏剣忍法、火炎アバレ斬り――。それでは行きますよ、皆さん」
 「……ああ。逆らって、霞ねえを敵に回したくないからな」
 「はい?」
 霞派による恐怖政治の元、ガマガマ銃一斉射撃でジャッジメント。
 「ごきげんよう」
 桃の最後の台詞は、妖怪CV:沢城みゆきさんと絡めた、お遊びメタネタか(笑)
 バイソンもガシャドクロをひゃっはーするが、そこへ飛んでくる、真の交渉人・きゅうべえ……じゃなかった、九衛門。
 「やあスターニンジャー。少し話をしないかい?」
 「十六夜……九衛門」
 夕闇が暮れる中、向かい合う、キンジと九衛門。
 「あっしもおめえさんに聞きたい事があったんでございやす。どうしてラストニンジャ様を、裏切ったんですかい」
 「彼は恐れたんだよ。伊賀崎の一族じゃ無い、僕に“終わりの手裏剣”を託す事をね。僕からしたら、裏切ったのは彼の方さ。 そこでだ……スターニンジャー。僕の弟子にならないかい?」
 「おめえさんの弟子? 何を馬鹿げた事を」
 「馬鹿げてるかな? 2人の力があれば奪えると思わないかい。君も狙っている、“終わりの手裏剣”をね」
 「どうして、その事を……」
 「ふふふ、まあ、考えておいてよ」
 きゅうべ……じゃなかった、九衛門は姿を消し、最後は霞派の勢力が拡大しつつ、今後への含みを残してオチ。
 ・契約交渉というシチュエーションコメディー
 ・シノビとロデオのスピーディーなアクション
 ・その他オトモ忍も揃って活躍して年下組が奮戦
 と、パーティー分割しながらも散漫にならず、むしろ各自の見せ場がバランス良く取られた上で、 天晴に鋭くツッコむ凪と風花などそれぞれの個性も巧く引き出され、面白かったです。
 「俺達の拳の意味……やっとわかってくれたか」と浸る天晴とか、「口が二つあっても、ご家老様には言えませんから」 など台詞の切れ味も良く、打率2割だと思って気楽にボール投げたら場外ホームランが飛び出したみたいな感じ(笑)
 また、エピソード要素である「交渉」が、ラストでキンジと九衛門の接触に繋がって先への伏線となり、 いやらしくならないレベルのお遊びメタネタがその仕込みになっていたり、 ギャグっぽく描かれていたキンジの性格が不安を募らせる仕掛けとして発動したりと、完成度の高いシナリオ。
 だけに、逆転のキーとなる正影の態度に仕込みが足りなかったのが残念でしたが、竹本監督のバランス配分の巧さ及び、 “逢魔ヶ刻にキンジと九衛門が出会う”シーンから逆算した演出、オトモ忍大活躍を主体に特撮班の力の入った仕事も含めて、 良く出来たエピソードでした。
 最後にぶるぶるっと頭を振って、狐に化かされた、とでもいうようなキンジの表情も良かった。
 …………リニア丸? は、霞様に踏んでいただけるだけで満足です、という体質に調教済みなので、 活躍できなくても離反の心配は1ミリもありません、ハイ。
 次回、父の日を前に、父頑張る。
 ところで予告の後、劇場版前売り券の宣伝で一足早く夏モードの服装(?)が披露されているですが、 キンジがストローハットに派手な柄物の黄色いシャツという、人格改造を受けた後みたいな姿になっていて、 やはりこの後、そういう展開が待っているのか……(ガタガタ)

◆忍びの16「父ツムジはスーパー忍者!?」◆ (監督:竹本昇 脚本:毛利亘宏)
 見所は、間近で見る火薬の爆発に割と素で「すげー」という顔になっている気がするお父さん。
 ニンニンジャーのアジトを突き止めようとするイカ軍師は、足軽兵にニンニンジャーを尾行させるも失敗……が、それは陽動で、 ご家老の真の狙いは、旋風にあった。
 「あの者が特売日にあの店に来る事は調査済みよ……」
 あなた方! ホント! 現代社会の情報収集綿密だな!
 ご家老は復活してこの方、
 大目標の遂行より障害(ヒーロー)の排除を優先する
 ヒーローの基地を狙う
 と、通常、悪の組織が色々なしがらみで後回しになる問題に率先して取り組んでおり、 これで後「身近な人を人質に取る」に手を付けてきたら、作品として明確な意図を感じる所です(笑)
 イカ軍師は父が落とした万年筆から妖怪カサバケを生み出し、妖術にわか雨→フリーの置き傘に偽装して伊賀崎家へ潜り込ませようとするが、 途中でニンニンジャーに気付かれて失敗。無力な自分が息子達の弱点として標的にされた事に落ち込んだ旋風は、天晴と風花に、 自分もかつては好天に憧れてラストニンジャを目指していた事を改めて語る……。
 「親父が凄いニンジャだったとしても、俺はニンジャになったよ。だって熱いじゃん。爺ちゃんと親父と俺、親子3代でニンジャって」
 ネガティブモードに入った父を励ます天晴が、爺ちゃん以外にも家族への愛情を見せると共に、前向きな明るさも巧く描かれ、 かなり好感度を稼ぎました。出来ればこういう好感要素は、話数1桁の内に仕込んでおいて欲しい所です……!
 後やっぱり、天晴は「ニンジャ」を職業として認識しているっぽい(笑)
 天晴の発案で、旋風が実はスーパー忍者だ作戦を展開し、ノリノリではしゃぐ父。妖怪を騙す事に成功するニンニンジャーだが、 珍しく真っ向勝負で大苦戦。……この傘、蛾眉さんより強くないか(笑) 少なくとも、 ニンニンジャーが正面から妖怪に力負けするのは、蛾眉さん以外では初のような。
 旋風は子供達を守ろうと、ニンジャの才能は無くとも、ニンジャの魂で妖怪に立ち向かい、 その心が何かを打ち破ったのか手裏剣忍法・竜巻の術が発動。ここでOPが前奏から流れ出し、 旋風の放った竜巻に乗っての天晴の必殺攻撃、というのは格好良かったです。多少の強引さは、 格好良ければ問答無用で許されるのです(笑)
 そのままOP流れっぱなしで巨大戦に突入し、ドタバタのオチまで入れてOPフルサイズで使い切り。
 「やっくん! ここは、UFO丸だよ」
 と言う風花ちゃんは、UFO丸に優しいので、以後、少し贔屓しようと思います!
 その後、旋風は再び手裏剣忍法を使えなくなってしまうが、
 「家族を思う気持ちが、奇跡を起こしたのかも、しれやせんね」
 突然、壁の裏側から出てきたキンジ、駄目な方向に綺麗にまとめてしまう。
 そういうのは、演出で格好良くまとめた時は、口に出して言わない方がいい時もあるんですよ!!
 キンジは、「家族」という単語に反応する、という視聴者の共感しやすい行動指針を与えられた結果、主な行動指針が3つに増え、 その時々の行動指針に応じて全てがドンドン上書きされていく病がますます悪化してしまい、そろそろ何とかしてほしい……。
 ラスト、天晴と風花が父の日のプレゼントを渡し、3人で雨の中の買い物へ、というのは良いシーンでした。
 劇場版の都合か、16話にして、下山さん以外の脚本家が初参加。個人的な毛利さんの評価は、 見た範囲の『ゴーバスターズ』参加回は駄目駄目だったけど、去年の『トッキュウジャー×鎧武』コラボSPは素晴らしかった、 というもので、上下の振り幅が大きい状態でしたが、今回は旋風父さんに焦点を当てるとともに、天晴と風花の好感度をきちっと上げ、 特別良くはないものの、やる事はやった、という出来。
 ただ全体としては及第点だったのですが、少し引っかかった所があり、好天から「才能が無い」と言われていた旋風の、 子供の頃は「忍術の天才」と呼ばれていて、風花ぐらいの年に「全く忍術が使えなくなった」という自己申告。
 旋風の発言まで疑っているとキリが無いのでここでは一応これを事実として扱いますと、手裏剣忍法とは、 “技術的蓄積で成り立つものではなく、最低限の前提(素養)を必要とした特殊能力”という事になります。
 それゆえ、修練による強化は可能でも、前提条件が消滅すると使用不能になる。
 で、「才能が無い」という言葉を用いる場合、「前提条件としての才能(素養)が無い」或いは 「技術を身につける為の最低限の才能が無い」という物言いは成り立ちますが、使えたものが使えなくなったとするならば、 「能力を失った」が適切ではないか、と思う所。
 まあ、半ば言葉遊びの範疇ではありますし、「能力を失った」=「能力が無い」=「才能が無い」という意味で使っている、 或いは「思春期を超えても忍タリティを維持できるか否か」が、一族における才能の「あり/なし」の判断基準、 という考え方も出来るのですが、個人的にはもう少し、<技術>と<能力>の違いに、作品として気を配って欲しかった所。 特に今作の場合、血統に裏打ちされている部分、と、修練で何とかなる部分、のバランスと意味は作品全体にとって重要な点なので。
 具体的な問題点としては、旋風が子供の頃は忍術を使えた、というのは無くても今回の話は成立したので、どうしてそれを入れたのか、 という事なのですが。全く使えないのではなくそよ風ぐらいは起こせる、で伏線としては事足りているので、 クライマックスの説得力はさして変わりませんし。
 とはいえこれは、今回のシナリオ時点の問題というよりは、作品トータルの設定上の問題といった感じ。更に言うと、 好天が何らかの理由で旋風の忍タリティを奪った、或いは今後、ニンニンメンバーが手裏剣忍法を使えなくなるという事態が起きる、 など、先への伏線という可能性もあるかな、とは思う所。個人的には、深く考えていなかったのではなく、考えた伏線であってほしい、 という希望も込めて、ちょっと気にしておきたい。
 次回、ロックなアイツがグッドバイ?!

◆忍びの17「グッバイ、スターニンジャー!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下山健人)
 見所は、天晴を生き餌にする邪悪策士。
 仮に術に引っかかっても、天晴なら大した問題にはならないだろう(実際、ピーマン怖い、だった)、 という辺りまで計算されている所が実に邪悪です。
 ピーマンは駄目でもチンジャオロースなら行けるのでは、というのは子供向け番組として凄く正しい解決法、という事でいいのか(笑)
 好天に指定された弟子入り試練の期日が明日に迫り、焦るスターニンジャー。それを知ってしまったニンニンジャー5人は、 それぞれ果たし状を用意して、互いに悔いが無いように、とスターのお命頂戴を待ち受ける。
 筆で殴り書き(そして漢字が間違っている)の天晴、ワープロっぽい凪、「親展」とついている霞、レターセットに書いた風花、 何それ洒落てるつもりなの?的なフォントを用いる八雲、とそれぞれの果たし状で個性をつけたのは非常に良い小ネタでした。
 だが肝心のスターは、妖怪のハントに向かっていた。正影が、ガマガマ銃に反応しないように結界の中で妖怪を生み出し、 誘き出されたスターは妖怪ウミボウズの幻術にはまってしまう。
 毎度、優先順位の上書きの激しいスターですが、ここで、ウミボウズの幻術によって入水しようとした人々を助けており、一応、 妖怪ハントには人々を助けるという優先事項があった事がわかり、一安心。
 本格登場回だった10話では、妖怪に襲われた工事現場の人にすがりつかれて冷たくあしらっていた覚えがありますが(その後、 子供はかばったけど)……(^^;
 恐らく、ここ数話を経てのキンジの人間的成長、を意図した表現だろうとは思うのですが、 特にキンジが周辺の一般人に気を遣うような描写はなかったので、その辺りの積み重ねは不足。 風花に「必死になりすぎて迷惑に気付いていなかった」と謝った辺りが一つの転機だったという事なのでしょうが、それならその後で、 妖怪との戦闘に巻き込まれた一般人を助ける、というようなシーンを明確に造っておいて欲しかった所です。
 今作、妙に活き活きと小ネタを入れてくる割に、肝心の所の仕込みが足りていないのは、いちいち勿体ない。
 久々にお父さん謎のご近所情報網(「みんな! 妖怪が現れたと、情報が入った!」)が発動し、 ウミボウズの元へ向かうニンニンジャーだが、そこではキンジが、幻術によって引き出された過去の恐怖に囚われてしまっていた。
 ここで今回の大きな問題点なのですが、キンジの父と兄の仇と思われるオオカミ男?のシルエットが物凄いクオリティの低さ(^^;
 時々そういう事はあるにしても、何かトラブルでもあったのですか、というような出来&見せ方の悪さで、 キンジの過去のトラウマそのものが、映像的に非常に安っぽくなってしまいました。お父さんとお兄さんも棒立ちで喋っているだけですし、 今回のエピソードの芯になる筈の部分だったのに、全面的にガタガタに。
 その為、キンジが成り行きで過去を話す、ニンニンジャー励ます、皆でラストニンジャを目指して競い合おうぜ、幻術破る、 の流れも非常に雑な感じに。そこから一致団結揃い踏みとなるのですが、6人揃い踏みはこれまで散々やっていますし、 ここにポイントを合わせた盛り上げとしては、もっと落としてから上げて欲しかったところで、ジャンプの為のバネのタメが足りない。
 赤と星が敵の生み出した互いの幻影を躊躇無く切り裂き、
 「おまえらどんな関係だ? 仲間じゃないのか?!」
 「刺客と――」
 「その、標的だ!」
 というのは単独のネタとしては面白かったのですが、ここまで馴れ合いすぎなので、どうも本来の攻撃力を発揮できず。
 全体的に、80点の素材を、中途半端に調理して、60点で皿に並べてしまった、みたいな感じ。
 天晴達のキンジを認める心意気が忍タリティを高めたとか何とかで新たなオトモ忍・サーファー丸が誕生し、 波乗りサーファーアタックでウミボウズをワッショイ。改めて向かい合って刃を交える天晴とキンジだったが、そこに好天が乱入。 なんとキンジは日付をアメリカ時間から直しておらず、弟子入り試練の期限は既に過ぎていたのであった。 かくして試験落第となったキンジは、好天が餞別で用意したサーファー丸(潜水艦←→人型、に変形)に乗って、 アメリカへ帰る事に……。
 5人で別れの紙テープを引っ張る所と、ニンニンジャーが好天から九衛門との関係について説明を聞いている背景で、 潜水艦が容赦なく出航してしていく、というシーンは面白かったです。映像としては、ようやくここだけ面白かったというか。
 試験に落第するも「アメリカへ帰る……旅費が……ない」と、キンジが居候&家事手伝いになる、 という展開は可能性として一つ考えていたのですが、帰る手段を用意していた辺り、さすがラストニンジャ(笑)
 というわけで、オチまで見ると今回はまだ途中経過で、極端に言えばギャグ回だった、と判明するわけですが、 途中の盛り上げの雑さが、そういうオチだったから、という構造になっているのは残念な所。
 どうも、盛り上げ自体がフェイクなので、最初からハードルを下げているように見えるのですが、 少なくとも途中までは如何にも節目のエピソードという展開だったわけで、個人的な好みとしては、 今回こんなに盛り上げたけどオチがこれで、本当に盛り上がる時はどこまでやるんだ?!  と思わせてくれる作品を見たいなーと思うわけであります。
 その辺り今作の、目先の計算に堅実、な点が悪い方に出てしまいました。
 概ね計算していないよりは計算している方が良いのですが、少々守りに入りすぎというか、安全運転による爆発力不足、 という今作の特徴が如実に。
 後、天晴がスターとの距離が縮まった表現として、「キンちゃん」とあだ名で呼び出すのですが、 そもそも天晴が他人をあだ名で呼ぶキャラではないので、なんだか凄く、明後日。キンジだけ、 舎弟ではなく友人扱いという事なのかもしれませんが、その辺りの関係性もこれといって巧く描けているわけではないので、 どうしてそうなった。
 さて次回、太平洋ひとりぼっちのキンジはハワイ駐留米国海軍の包囲を抜けて無事に帰国できるのか、 秘密交渉が空振りした九衛門はタライで後を追いかけるのか、そしてスター単独を狙った晦正影の真の狙いとは。…………え? 八雲回??

◆忍びの18「八雲が愛した妖怪」◆ (監督:加藤弘之 脚本:毛利亘宏)
 ハワイから伊賀崎家へ届く、キンジからのエアメール。……撃沈されずにハワイまで辿り着いたのか……というか本当に素直に帰国中なんだ……(笑)
 街に妖怪オトロシが出現。洗脳ビームに苦戦するニンニンジャーは、囮作戦を発案。八雲が囮を買って出るが、 短時間で効力が切れる筈の洗脳ビームが何故か長時間効果を発揮し、八雲は妖怪と共に姿を消してしまう。
 洗脳ネタは前後のギャップが面白みになるのですが、八雲だと、ビーム受ける前と後の演技がほとんど変わらないのは、 ちょっと残念だった所。
 戦士の勘で八雲の攻撃が本気で無かった事を天晴が見抜き、八雲の様子がおかしかったのは、 妖怪の素体が八雲の大事な芝刈り機であった為、と判明。八雲は洗脳されたふりをして、 何とか愛機を元に戻せないかと妖怪の身辺を探っていたのだった。
 桃「あの芝刈り機は、八雲くんにとって、とても大切なものなんですね」
 青「ああ。あれは俺がハイスクールに入学した時に……マミーからプレゼントされたものだ」
 赤「たかが芝刈り機にそこまで?」
 青「されど芝刈り機! タカにぃにはわかるまい!」
 うん、天晴さん、父親愛用の万年筆を素体にした妖怪を大粉砕した後、 その前から準備済みだった万年筆を父の日にプレゼントして「無くしちゃったから、丁度いいだろ」って笑顔で言う人だからネ!
 父の日回のオチの、天晴さんの“妖怪だから仕方ない”というざっくりぶりが実はちょっと気になっていたのですが、 同一脚本家における今回の伏線だったのか(笑)
 母親からの思い出のプレゼント、という背景を聞いた上でなお、「え? 芝刈り機でしょ?」で済ます天晴さんが、一周回って格好いいよ!
 青「芝刈り機は――イギリス人の誇りだ!」
 白「……やっくんイギリス人じゃないし」
 後ろでは白と黄がこそこそ話しており、ツッコミ役として定着させていく模様。
 2人揃ってヒエラルキー低い(ただし白は時々キレる)のでツッコミの攻撃力がいまいち低いですが、無色透明よりは遙かにマシなので、 この路線で行くならしっかりこの路線で押していって欲しい所です。
 今回、冒頭でほぼネタ割れした上で転がすエピソードにしてはちょっと展開が大人しかったのですが、この辺りでやっとギアが上がってきました。
 霞から公開恥辱プレイを受けて4人に真相が明かされた事により、覚悟を決めた八雲はニンニンジャーとして“妖怪”に挑む。
 全貌を把握した所で頭脳プレイに持ち込むのではなく、敢えて全員(含む妖怪)の前で事情を暴露し、 心から心配している風を見せながら八雲の精神と背中にげしげしと蹴りを入れる邪悪策士がえぐい、えぐすぎる。
 八雲は洗脳ビームを手裏剣忍法・鏡花水月で反射すると、必殺剣でオトロシを撃破。 何故か自力で巨大化したオトロシに立ち向かうシュリケンジンだが、ドラゴ丸とUFO丸が次々と洗脳ビームを受けて行動不能になってしまう。 ビームをかわすには、動きの素早いサーファー丸しかない、とアカ、渡し忘れていた手裏剣で、ハワイ沖に潜伏中だった潜水艦を召喚。
 ハワイで現実逃避していたのか、麦わら帽子にアロハシャツ姿のキンジを乗せて、サーファー丸、日本帰国。 サーファーシュリケンジンは素早い動きでビームをかわすと、スターの助言もあり、封印の手裏剣をピンポイント攻撃する事で、 妖怪を撃破すると同時に八雲愛しの芝刈り機を取り戻す事に成功するのであった。
 スターの帰還は予定調和ではありますが、素直に帰国の途上にあった→5人に説得されて翻意する、と、 心ぐにゃぐにゃ(笑)
 前回、心が弱いのは過去のトラウマのせい→何となくトラウマ乗り越えた(とりあえず幻術は打ち破った)、筈なのですが、やはり、 トラウマで心が揺らぎやすいのではなく、「揺らぎやすい」「揺らぎやすい」って言われている内にその気になっているだけではないのか。
 弟子入りの為には手段を選ばず、マシンガンを振り回していたあの頃の君はどこへ行ってしまったのか。
 作風としてのライトタッチはライトタッチで構わないのですが、「執念」という要素をキャラクターの芯に置いている以上は、 それはしっかりと描いてほしい所です。
 次回――天空のオトモ忍と……孫悟空?

→〔まとめ4へ続く〕

(2017年3月22日)

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