■『魔法戦隊マジレンジャー』感想まとめ7■


“君が超えたいものは何?
大空 逆風 昨日の自分”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『魔法戦隊マジレンジャー』 感想の、まとめ7(43〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・  〔総括〕


◆Stage.43「茨の園〜マジ・マジ・ゴジカ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 大和屋さんと入れ替わりでもしたのかと思った荒川稔久が、悪夢の31話 (レジェンドパワーを使い続けると人間としての記憶を失って天空聖者化する筈だったけど、新しい魔法でそれが防げたよ!)以来の登板。
 裁きの石版に選ばれた冥府神トードは、地上を無数の冥府カエルで埋め尽くすという神罰執行の準備を始め、 爬虫類や両生類が苦手な麗は恐慌状態に。直接戦闘を好まないトードは5人を自らのテリトリーであるマルデヨーナ世界へ引きずり込み――その地こそ、 トードがコレクションした魂を飾る、茨の園であった。冥府神と戦い続け、遂に茨の園へと辿り着いた5人だが、 カエルへの恐怖で戦意喪失する麗を、かつて自分が姉にそうしてもらった、母親のおまじないで励ます翼。
 これまでの描写を見るに、兄妹の中でも翼が一番マザコンでシスコンなのですが、駄目な末弟に皆の甘やかしが行く前の、 自分が優しくされていた頃の思い出を輝かしく美化しているのだと思うと、切なくて泣けてきます。
 暑苦しくて口うるさい長兄、自由すぎる長姉、自分にはあまり優しくしてくれなくなった次姉、 我が儘放題甘やかされ放題の弟……に挟まれていたらそれは、ちょっと粋がってワルっぽく生きようとしたのも、 「お、俺はクールだから放っておかれても寂しくなんかないぜ! クールだからな!」となってしまったのも、 全てわかるような気がします。
 地上に取り残されたマジシャインは冥府カエルの孵化を阻むためにトラベリオンで卵を吸い続け、 マジレンジャーはトードの仕掛けた魔法の双六へ挑む事に。偽マジレンジャーとの戦いで赤・緑・桃がフィギュア化されて戦闘力を失い、 巨大カエルに睨まれた青は絶体絶命のピンチに陥るが、勇気のおまじないを思いだして立ち直ると、 高水圧ドリルの新魔法により危機を脱出。
 ……なんか最近、青は攻撃魔法ばかり追加される気がする(笑)
 黄色も強化ボウガンを持ち出して、残る偽マジレンジャーを撃破。従来から最も使われていた個人武器ではあるのですが、 結局ダイヤルロッドの変形は今のところこのギミックだけで、黄色は何故か武器だけ優遇されています。
 その頃、ダゴンの鱗の力により、ナイとメアは結界を張って冥府の闇に潜んでいたウルザードを発見。 ダゴンはワイバーンとティターンを伴うと、結界を破壊してウルザードを引きずり出す。
 「冥府神が3人か。光栄な話だな」
 追い込まれるウルザードだが、その姿はあくまで不敵。そう……
 ――逆境とは?!
 思うようにならない境遇や、不運な境遇の事をいう!!
 だが男とは、イザという時には、やらなければならない!!
 「残念だが、ン・マの復活は二度と無い!」
 逆境でみなぎるウルザードは、冥府10神の曲者ワイバーンと対峙する……そして茨の園では、 水流ドリル魔法でサイコロを削る事で9の目を作り出すというイカサマで、マジレンジャーは双六のゴールに辿り着くと、 フィギュア化していた3人の状態異常も回復。5人はそこで、囚われた母の魂をその目にする――。
 …………なんかですね、その場その場の適当な発言、妙なカリスマ、追い込まれるとスパークする、熱い、根っこは割と駄目人間、 とブレイジェルはもしかして、島本和彦キャラなのではないか、という気がしてきたわけです、ハイ。

◆Stage.44「母さんの匂い〜ジルマ・ジルマ・ゴンガ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 スピードを活かした戦法でウルザードといい勝負をするワイバーンだったが、必殺技による反撃を食らい、ティターンと選手交代。 これまでせいぜいトードとお喋りするぐらいで地味な扱いだったティターンは、雷撃をまとった双刀でウルザードを追い詰めていく…… と陰の実力者設定だった模様。
 「こいつ……できる」
 ……た、たぶん(ウルさんの実力評価は全く当てにならない事に定評があります)。
 一方、母を取り戻すべくフルパワーを発揮する5人はマジレジェンドとなってトードを一気に追い詰めていたが、 窮地に陥ったトードは母の魂を爆破して逃亡してしまう。もう、母を取り戻す事は出来ないのか……絶望に陥る5人だったが、 母との思い出を胸に何かを閃いた翼が立ち上がる。
 「俺はあきらめねえ!」
 鋭敏感覚の呪文で、母の匂いを追う翼。
 「俺が信じてる通りだとしたら、きっと何とかなる。可能性は、自分で作るもんだろ」
 サブタイトルはアレですが(誰がつけたかわからないけど)、従来の呪文の応用、ブレイジェル(父)の言葉に繋げる、 とこの辺りやはり、荒川さんは巧い。巧い筈なだけに、前回担当した31話は本当に何だったのか(^^;
 翼の言葉に励まされた4人は揃って鋭敏感覚の魔法を発動し、麗が母の魂の光を発見。そう、母の魂は父の魔法によりガードされており、 トードの攻撃を受けても爆散する事なく無事だったのである。安定の適当さでマジトピアが新魔法を配信し、 それにより母が肉体をともなって完全復活。
 ここは今作のお約束を処理する為にはこうするしかなかったのでしょうが、「バラバラになったものをくっつける魔法」だそうで、 マジトピアがいつでも都合良く魔法を配信可能なところ含め、今作のコンセプト自体がドラマ的深みを失わせがちな事を裏打ちしてしまいました。 楽と言えば楽ですが、脚本陣も歯がゆい思いはあったのではないか、と思います。
 「やっと会えたね」
 復活した母を抱え、かつて自分が麗と廃車置き場で閉じ込められた時、助けに来てくれた母の言葉をそのまま返す翼。
 翼はこの土壇場で、いい回を貰えました。翼に対する好感度は高くないですが、これは良かった。良かったけど、 この戦隊は本当にクール要らなかったな……!
 麗と翼が共に見て、助けを求める母のメッセージだと感じた幼い日の夢……そして母もまた闇の中に囚われながら、同じ夢を見ていた。
 「嘘みたい。凄いね、凄いよね」
 クズいで定評のある母ですが、ここで落ち着いて状況を受け止めてしまうのではなく、感極まって言葉にならない言葉、 一般市民の感想のような、言うなれば芝居っぽくない台詞を敢えて言わせる事で、魔法戦士ではなく、 人間・小津美雪の部分を引っ張り出したのはお見事。
 また、子供達が母を取り戻す為に戦っている裏で、父が父の戦いをしているというのも、今作としては珍しく、 父の貫禄がしっかりと出る構成になりました。
 地上では卵の吸い込み過ぎで故障したトラベリオンがトードに倒され、神罰執行まであと僅かとなっていたが、その時、 降り注ぐ冥府カエルの雨を、白い光が凍り付かせ、砕き去る。
 それこそが復活したマジマザー・小津美雪にマジトピアから与えられたら、新たな凍結呪文であった。そして今、 6人の魔法使いが揃い踏む。
 「煌めく氷のエレメント、白の魔法使い・マジマザー!」
 母と兄妹の合体攻撃「ファミリーレジェンドフィニッシュ」を受けたトードは、改めての巨大戦もなく、消滅。 戦闘力には劣るものの、実力勝負ではなく厭らしく立ち回ってくる、と個性は出て面白かったです。
 そして一皮剥けた次のエピソードで、物凄く立場の無くなるヒカル先生であった。
 追 い 出 さ れ そ う。
 ぶぶ漬けでも出されながら、「ヒカルさんは、そろそろ、里帰りしなくていいのかしら?(にっこり)」とか母に言われそう。
 再会した家族が笑顔を取り戻す中、クズ母は夫の魔力を僅かに感じる。
 「勇さん?!」
 冥府で激闘を続けていたウルザードは、ティターンに苦戦の末、ダゴンの不意打ちにより、ン・マの魂を奪われてしまう。 深傷を負ったウルザードはブレイジェルの姿に戻ると、冥府の地割れへと呑み込まれていく――。
 ダゴンの台詞によると、ン・マの魂を抱えている為にブレイジェルは弱体化していたとの事なので、 ブレイジェルが闇の力に触れて弱体化するとウルザードになるという事が公式に認められました(笑)
 そんなウルザードに虚仮にされたスレイプニルの事は……そっとしておいてあげて下さい。
 トードが倒れ、冥府神はいよいよ残り5体。ダゴンは己のもくろみを進め、 スフィンクスは魔法使い達が「母親」が絡むと異常な力を発揮する事に興味を得て分析し、 とダゴンとの仲が険悪になった事で更なる独自路線へ。ティターンに陰の実力者ポジションを持っていかれたワイバーンはどこへ行くのか、 残り話数でスレイプニルに活躍の場は残っているのか。次回、おいしいポジションに急浮上したティターン、 こうらくえん遊園地で芳香と握手?
 ……それにしてもマンドラはすっかりおまけコーナー専用だなぁ。美雪との再会というドラマ部分すら、 おまけコーナーで処理されるという(笑)

◆Stage.45「二人はともだち〜ジー・ゴル・マジュナ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:大和屋暁)
 遂にブレイジェルが押さえ込んでいたン・マの魂を手に入れる冥府神。後は冥府神の誰かがン・マの魂に選ばれて依り代となり、 その命を捧げる事で、絶対神ン・マは転生する。
 「この僕とした事が、魔法使いごときに手傷を負わされるなんて」
 前回の敗北に1人苛立つワイバーンだが、まあ、ブレイジェル、神も悪魔も越えた70年代ヒーロー属性なので、 ちょっと規格外だから……。
 一方、復活した母親を囲み、賑やかな朝食を楽しむ小津家。
 目玉焼きの焼き加減程度で、母親を大絶賛する兄妹の洗脳は深刻です。
 そして母の目玉焼きを誉めて、麗に思いっきり口をつねられる先生、厳しい立場だな……。
 そこへ、どう見ても粗大ゴミのイスを拾って、散歩から帰ってくる芳香。ボロボロのイスを「可愛い」とレストアしようとし、 母が「芳香には芳香の見えているものがある」とフォローするのですが、どう見てもキマりすぎです。 用法・用量を守って使用しましょう。
 朝食を終えた母は、父を探すと言って、魔法部屋の更に隠し部屋へ姿を消す。
 「でも父さんを探しに行くって、どういう事だ?」
 ……君ら、ホント、父には冷たいな。
 気持ちは分かりますが(笑)
 母が部屋にこもってすぐ、神罰執行係に選ばれたティターンが出現すると、地上の電気を吸収し、 それが一定量溜まると落下して世界を消滅させる神の雷と化す雷雲を召喚。 マジキングとトラベリオンはティターンのほんの一撃で瞬殺されるが、「無益な殺生は好きでは無い」とティターンは姿を消す。
 世界を壊滅させようというのに「無益な殺生は好きでは無い」と言われても反応に困るのですが、 神罰執行を阻止するべく6人は手分けしてティターンを探し、芳香は子犬と戯れるティターンを発見する。
 「アフロくん。あなた、いい人でしょ?」
 ティターンの発言と子犬に触れる姿に、友好的な相手という判断をする芳香。
 どう見てもキマりすぎです。用法・用量を守って使用しましょう。
 一応、どうやらティターンの中で「神罰執行」と「命を奪う」事が繋がっていなかったらしい事は窺え、 冥府の神として地上の命と直接触れた事が無い為にその存在がよくわかっていなかった、という辺りのニュアンスもわかりはするのですが、 色々省略しすぎて、厳しくなりました(^^; まあ芳香の方は、一日24時間中23時間はラリってるから仕方ない。
 芳香のこの、天真爛漫で奔放、というより、マジカルな薬草のキメすぎというキャラクターは最初から最後まで貫かれたのが凄いといえば凄い。
 「握手すると、友達になれるんだよ?」
 芳香の猛攻にたじろくティターンだったが、そこへ兄者が乱入。しかし芳香はハリセンに変身して兄者を止め、 芳香の姿と言葉にティターンは神罰を解除。だがその直後、命を慈しむ心を知ったティターンは、ン・マの依り代に選ばれてしまう。
 てっきりもはや役立たずのスレイプニルが選ばれるのかと思ったのですが、これはちょっと面白い展開。
 ワイバーンとスフィンクスが地上に現れるが、ティターンはン・マ転生の為に命を捧げる事を拒否。
 「俺は、死なない。やるべき事が、見つかった」
 (命の献上を拒否する……? いったいティターンに何があったというのです)
 女の色香に、引っかかりました!
 ワイバーンはティターンを裏切り者として処刑しようとし、相性が悪いのか、魂が重いのか、苦戦するティターン。 ピンクは駆けつけたシャインからチケットを奪ってトラベリオンを呼び出すと、ワイバーンを轢いてティターンと愛の逃避行。 咄嗟に兄者も取り付いて乗り込み、3人は電車の中に入り込んだワイバーンを新魔法でなんとか電車の外に放り出す……。
 状況がわからないまま取り残された4人の前には、これも置いてけぼりにされたスフィンクス。
 そしてン・マの依り代となったティターンは、やるべき事を、なそうとしていた。
 「絶対神ン・マを転生させない方法が、一つだけある」

◆Stage.46「湖へ向かえ〜ゴール・ゴル・ゴル・ゴルディーロ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:大和屋暁)
 絶対神ン・マの転生を止める手段――それは、マルデヨーナ世界・永遠の樹海にある眠りの湖。 あらゆる時間の静止した湖の中には冥府神でさえ手を出す事が出来ず、そこでティターンが眠りにつけば、 ン・マの魂を静止した時間の中で永遠に封じる事が出来る。不審をぬぐえない兄者も加え、 芳香とティターンはトラベリオンで永遠の樹海へと向かう……。
 一方、精神を飛ばしてインフェルシアを探索していた母は奈落に落ちた駄目夫を発見し、遠隔で魔法力を注いで傷を癒そうとする。 そしてスフィンクスから事情の説明を受けた4人は、スフィンクスの世界・賢者の庵に呑み込まれ、 脆弱な人間がなぜ冥府神を次々と打ち破れたのか、について問いかけられる。
 スフィンクスだけに質問、と神のモチーフと行動が巧く繋がりました。いつもの調子で喧嘩腰に答えた魁は闇の底に落とされそうになるが、 翼と先生が咄嗟に包帯を口でくわえて魁を支える。
 「支え合う絆と勇気!」
 「これが俺たちの力なんだ!」
 「面白い。いいでしょう。約束通り、貴方達をティターンのもとへと送ってさしあげます」
 その頃、永遠の樹海の3人はワイバーンの追撃を受け、ティターンが緑をかばって手傷を負うも辛くも逃走に成功する。
 「俺も、2人を真似てみたいと思った。俺も、誰かを支えてみたい、そう思ったんだ」
 支え合う兄妹の姿に感銘を受け、絆というものを学ぶティターン。この言葉に、 インフェルシアにも話し合える存在が居るという事を認められず、意固地になっていた兄者もティターンへの態度を改める。
 「ティターンは体を張って地上界を支えようとしてるんだ。今度は俺たちが、ティターンを支えるべきだ。そうだな」
 「ありがとう芳香。お兄ちゃん」
 手を差し出すティターンは蒔人の名前を知らないので(芳香が「お兄ちゃん」呼びなので)他意は全く無いという事になっていますが、 脚本としては意図的に“ご挨拶”という事かと思われます(笑)
 (貴様に「お兄ちゃん」と呼ぶ事を許した覚えはなぁぁぁぁぁぁい!)
 「知らないのか? 握手をすると友達になれるんだ」
 「……ああ。知ってるとも!」
 我に返った蒔人はティターンと握手を交わし、芳香もそこに手を重ねる。互いが互いを支え合う為…… 芳香は魔法でティターンの姿に変身すると、緑と一緒に逃げる事でワイバーンを引きつける囮に。 まんまとしてやられたワイバーンは凶暴化し、スフィンクスによって樹海に送り込まれた4人が合流するも、 6人まとめて薙ぎ払われてしまう。
 変身の解けた6人に向けてワイバーンはトドメの一撃を放ち、舞い上がる爆炎――が、その爆炎は、 6人の前に降り立った男によって吸収される。
 「ここまでよく頑張ったな、みんな」
 そこに立っていたのは、美雪の魔法力によって回復した、5人の父にして最強の魔法使い――小津勇。
 なんだか父が、初めて格好良かった。
 「超天空変身! ゴール・ゴル・ゴル・ゴルディーロ! 猛る烈火のエレメント!  天空勇者ウルザードファイヤー!!」
 勇はマジトピアの呪文により、真っ赤なウルザードへと変身。これはつまり、先生/サンジェル/マジシャインと同じで、 勇/ブレイジェル/ウルザードファイヤー、という事になるのか。デザイン格好いいのに、名前が微妙ですが(笑)  マジブレイブとかでは駄目だったのか(^^;
 「お父さんが、私達を支えてくれて……そのお父さんを、お母さんが支えてる」
 「繋がってるんだ。俺も、芳香も、魁も、翼も、麗も、ヒカル先生も! そしてティターンも!」
 「「みんなが支え合ってる!」」
 前後編、話の筋としては結構雑なのですが(特にティターン周り)、ここで改めて「勇気の背景」を立ててきたのは面白かったところ。 前年『デカレンジャー』において、途中参加の横手美智子がバン(とホージー)を立て直しましたが、途中参加だからこそ入れられた部分、 であるのかもしれません。今回、魁の扱いがかなり小さいのもポイント。
 雪辱を期して赤ウルに突撃するワイバーンであったが、攻撃をあっさり受け止められ、カウンターの連続斬りから必殺技のコンボで、 瞬殺。ほとんどギャグレベルの滅殺でしたが……まあ、相手の世界観がちょっと違ったので、シカタガナイ。
 魔力の使いすぎで気を失っていた母も目を覚まし、ここに再生する小津一家。 後はティターンが湖で眠りにつけばインフェルシアのもくろみは崩れ去る……筈だった。
 「芳香……お兄ちゃん……最後に会えたのが彼等で良かった。お陰でぐっすりと眠れそうだ」
 ティターンが湖に足を踏み入れようとしたその時、先回りしていたダゴンの槍がその体を貫く。
 「時は来た! 絶対神ン・マ転生の時だ!」
 巨大化したティターンの体を食い破るようにして、絶対神ン・マが遂に転生。 出オチだった冥獣帝ン・マが如何にも旧支配者然としつつ触手の形状などは八岐大蛇なイメージも入っているのかと思えましたが、 絶対神は完全にタコ。つまり、インフェルシアはムー大陸だったんだ!
 「我は絶対神。我が内に宿るは、虚無と、飢餓」
 ン・マはいずこかへと飛び去っていくが、ヒカル先生はン・マに重なる形で、自分が倒れる不吉なイメージを目にする。 果たしてン・マは如何なる災厄を地上と天界にもたらすのか、ようやく揃った小津一家はこの最強最大の闇に打ち勝つ事が出来るのか。 次回、ますます要らない子になったヒカル先生、旅へ――。

◆Stage.47「君にかける魔法〜ルルド・ゴルディーロ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:横手美智子)
 絶対神ン・マへの対抗策を見いだす為、父と母はスノウジェルに助言を求め、ヒカル先生はマジトピアへ帰国する事に。 帰国したら二度と人間界に戻ってくる事はないだろう、というヒカルの言葉に衝撃を受ける麗…… とそこはかとなく進めていた2人のロマンスがヒートアップ。
 一方、インフェルシアでは人間の未知なる力に興味を感じるスフィンクスが地上を残す事を提案するが却下され、 ン・マによって神罰執行係に任命されていた。
 スモーキーとマンドラが気を遣ってトラベリオンが夕方まで整備中だと偽り、最後にゆっくり人間界を見てほしい、という誘いに応え、 麗とヒカル先生は動物園デート。
 様子を窺っていた兄妹は、それを後ろから出歯亀する事に。
 「ヒカル先生とうらねえが好き同士なんて、最初からわかってたよな」
 後付けで、俺はわかってたぜ? みたいな事言うと、格好悪いぞ、翼。
 麗の歌をBGMにしたデートシーンはごくごく正統派ながら、この動物が○○に似ている、と看板の前でポーズを取る兄妹それぞれ、 のシーンを挟んだりは4人を話に絡めつつ、楽しかった所。
 そんなデートにも少しずつ終わりが近づく中、思い出になるような写真を残す事を拒否するヒカル先生。
 「絶対に忘れられない。……だって、ヒカル先生の事が好きだから」
 「……駄目だ! そんな事言っちゃ、僕は……」
 煮え切らないヒカル先生の態度に思わず飛び出すピーピング兄妹だが、そこにスフィンクスが出現。 マジレジェンドとトラベリオンはスフィンクスに一撃粉砕されるが、それでもマジレンジャーは絶対神との戦いを諦めない。
 「私達には、守りたい大切なものがあるもの! その想いがある限り、私達はぜったい負けない!」
 「想い……それがお前達の絆の、そして、勇気の元になるものか。しかし、なんと不確定な。だが、冥府神には持ち得ないもの。もし、 想いが運命を左右するなら……或いは、奇跡が……」
 人間の未知なる力に揺さぶられるスフィンクスは神罰執行を中断して退場し、この後、ダゴンとスレイプニルに粛清されてリタイア。
 前回のティターンもなのですが、冥府神の情報レベルが一定せず、人間に感化を受けるタイミングがわかりづらいのは、難点。 トードが「母親」「母さん」というのものを理解できていなかったり、知識に偏りがある描写は存在していたので、冥府神そのものが、 冥獣帝ン・マの死とともに起動してバージョンアップによる再起動(絶対神化)を目的とするプログラム的存在 (ゆえに必要な事以外の知識に乏しい)とか、そーいう事かもしれませんが。
 その割には、絶対神転生を最大の目的としないドレイクなどもいたのですが、あれは、バグか。
 いい所で入った邪魔が退き、修羅場続行。
 やむを得ずヒカル先生は、自分が見たビジョンを元に、既に死ぬ覚悟がある事を告げる。
 「僕はもう、君たちに何一つしてあげられない。約束をしても守れないし、嘘をつくことになる。だから――」
 号泣する麗を置いて海辺で黄昏れていた先生、母ののろけを聞かされる。
 思い人の母親から自分の師匠との若い日のあははうふふな日々を聞かされるとか、どういう拷問ですか……!
 何この、責任取らないと凍らされた上で燃やされそうな雰囲気!
 母の語りは、脚本家気合い入っていたのかもしれませんが、個人的には、やや長すぎ。総じて、色恋がらみの部分を、 台詞で語りすぎた感はあります。
 色々と覚悟を決めたヒカル先生は、小津家へと戻る。隠し部屋では麗が哀しみを鍋磨きで紛らわし、それを見つめる兄妹、 の中に無言の父が混ざっていて怖い。
 「麗、僕の妻になってほしい」
 麗の強さを信じず、自分1人で傷つける事を怖がっていた、と謝った先生は、「好き」とか「嫌い」とか通り越して、いきなりの求婚。
 無言のお父さんが怖い。
 「君のレジェンドパワーが哀しみで暴走する事がないよう、僕が特別な魔法をかける。幸せという名前の」
 泣きじゃくる麗を、抱きしめる先生。
 教え子である事に加えて、未来の義兄、義姉、義弟1、義弟2、そして義父が見守る中、マジ告白とか、 凄い、凄すぎるよ先生……! 今までの顛末が全て吹っ飛ぶ勢いで、男らしすぎるよ……!!
 歓声をあげて兄妹4人がはしゃぐ一方、父が無言で超怖い。
 「……5歳だった麗が、我に返れば、花嫁か」
 ……父、怖い通り越して、なんだか可哀想な人に。
 後それとなく、この15年の記憶はほとんどなく、ウルザードの迷走ぶりは自分の責任ではない、 と主張を入れてきました。
 父は魔法で教会を作り出すと、舞台は結婚式に。スモーキーが神父となって結婚式はつつがなく進み、最後に近いのキスを、 という所で、教会に飛び込んでくる影。
 すわ昔の女?!
 いやそれは、傷つきながらもマジトピアの急を知らせにやってきた、天空聖者ルナジェルことリンであった。 地上でサンジェルが教え子ときゃっきゃうふふしている間に、絶対神ン・マの襲撃を受け、 天空聖界マジトピア壊滅!!
 いよいよ迫る最終決戦を控え、劇中で戦隊メンバー同士が結婚式に至る、というのはかなり珍しいでしょうか (とりあえず思いついた例が『鳥人戦隊ジェットマン』で困る)。序盤から恋愛ネタを多く組み込んできた今作ですが、後日談ではなく、 あえてクライマックスの前に結婚式を入れてきたというのは、「家族」テーマの戦隊として、貫いたものを感じます。
 ヒカル先生×麗は最初のカエルセクハラに始まって、アップルパイ事件などそれとなく距離は近く、 初期から織り込み済みのカップリングでしょうし違和感は無いのですが、ここまで持ってくるなら、途中にもう一つ、 露骨なフラグ回があっても良かったかなーとは思ってみたり。ヒカル→麗はともかく、麗→ヒカルはワンパンチ不足という気はしますし、 もう少しニヤニヤしたかったという、全くもって、個人的な趣味ですが(もしかしたらこの2人も、劇場版で進展があったのかもですが)。
 せっかく荒川稔久が参加しているわけですし、ラブコメ回に一度投入していただきたかった(笑)
 セクハラ行為に始まり、名実ともに教え子に手を付けたヒカル先生は、数え役満達成で、 次回死んでも不可抗力で仕方がありません(おぃ) まあ、ン・マと遭遇する前にブレイジェルに呼び出されて、 「ヒカルくん。君を一発殴らせてくれるかな?(にっこり)」で、死ぬかもしれないけど! 生き残っても、 兄者の婿いびりが始まりそうだ!
 次回、伝説のあの人登場、そして世界の運命はどうなるのか?!

◆Stage.48「決戦〜マジ・マジュール・ゴゴール・ジンガジン〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:横手美智子)
 色々な意味で、面白かったです(笑)
 いや割と普通に盛り上がったのですけど、まさかあんな隠し球があるとは。
 夢に出そう。
 前回ラスト、結婚式に飛び込んできたリンによる、マジトピア崩壊の知らせから。
 天空大聖者マジエル(大きい)−リン(小さい)−絶対神ン・マ(超大きい)
 と並べて横から見せた映像が、面白い。
 もともと劇場版の特別出演だったようですが、マジトピアを統べるマジエルは、女王・曽我町子のインパクトが絶大。 だがそのマジエルの至高魔法もン・マには通じず、マジエルはルナジェルを地上へ逃がして消滅、 マジトピアはン・マの攻撃によって壊滅してしまう。
 負傷しているリンはスノウジェルの元へ連絡に向かい、父とヒカル先生が急ぎマジトピアに向かおうとするが、 それに同行を申し出る魁。
 「今の俺は、父さんと同じ力を持ってるんだぜ」
 ……え? いつ?
 …………同じ(属性の)力、て事?
 父は自分の意志を曲げようとしない魁を別の空間へ連れて行き、フェイタルブレードの構えで手合わせをする事に。 フェイタルブレード――それは、戦士として最大の戦いに際し、自分にある伝説の力を確かめ、 更なる奇跡を呼び込む為の型……ていきなり過ぎて何を言っているかよくわかりませんが、 クライマックスへの伏線の為の秘伝の伝授と思われます。さすがにラストぐらい前振りをしようと思ったのかもしれませんが、 こういった前振りが基本的にない作品だっただけに、唐突感は否めません(^^;
 「おまえの全ての力をぶつけてこい!」
 二刀を構えるブレイジェルを前に、切りかかる隙を見つけられないマジレッド。
 (なんでだ? ウルザードの父さんを、凌いだ事だってあるのに! 体が……動かない)
 ……あ、やっぱり、思い込みなのか。
 …………というかそうか、魁の立場からすると、父は、口と態度だけ大きくて残念な奴扱いなのかッ!  これは、仕方ありません。魁ではなく、ウルザードが悪い(笑)
 自棄になった赤は火の鳥で突撃するが一撃の下に粉砕され、魁は父の真の実力を知る。
 「魁……勇気とはなんだ?」
 「それは……」
 「勇気とは、己を知り、信じる事。俺はそう考えている。その究極の境地に達した時、フェイタルブレードは、きっと奇跡を呼ぶ。 おまえは、おまえの勇気を見つけろ。その時、おまえは本当に強くなれる」
 溜めに溜めただけに、父がここで息子の壁となり、改めて今作のキーを問う、というのは、決まりました。 特に「己を知る」事にひたすら欠けていた作品なので、今更ながら父からそこに言及があったのはとても良かったです。
 ……つくづく、誰か早く魁を殴っておけば良かったと思わずにはいられませんが(笑)
 (厳密には先生が一度魁を殴っているけど、冥府神復活で先生も動揺していた為、むしろ状況をこじらせる無駄なパンチになった)
 ヒカルは麗の為にスモーキーを地上に残し、麗は帰ってきたら特製アップルパイを焼くと念入りにフラグを立て、 ヒカル先生は(一応結婚したけど、「ヒカル先生」呼びなのがなんか背徳的でいいなぁ……)とか考えていた。
 「父さん母さん、みんな……ここが俺たちの、うちだよな。だから絶対! 全員無事で、ここに戻ってこようぜ。 そんでその日を……新しい、特別な記念日にしようぜ」
 翼、いい台詞をもらう。
 台詞の途中で家を映すカメラワークも素敵。
 家族戦隊にふさわしく、また、イベント好きの小津家という劇中設定ともしっかり繋がる一言となりました。 ティターン編が蒔人・芳香の担当で、前回が麗、今回後半は魁なので、バランス配分としてはここで翼に見せ場を与える必要があったのでしょうが、 最後の最後で、作品を一つ象徴する、非常にいい台詞が回ってきました。
 また、まがりなりにも前回、ヒカル先生が家族の一員となった事で(魔法による戸籍の偽造などはこれからですが)、 この台詞からのけ者にされなかったのも、巧く機能しました。
 この期に及んで拗ねていた魁も母に促され、8人の家族は手を重ね、未来に希望を掴む為、インフェルシアとの最後の戦いに赴く。 地上にはスフィンクスに代わってスレイプニルが神罰執行に現れ、それに挑むマジレジェンド。 そしてそれを見つめるダゴンに挑むマジマザーは、この戦いの意味を問う。
 「絶対神ン・マの世界は完全なる闇。そこに曖昧なものはいらぬ。排除するだけだ!」
 マジシャインとウルザードファイヤーは崩壊したマジトピアで絶対神ン・マと遭遇し、最強対決勃発、と戦いは三つの局面に。
 師弟合体攻撃すら軽く反射した絶対神ン・マはシャインとウルザードの魔力を喰らい、2人は天空体に。 魔法そのものを食べてしまう……それこそが、虚無と飢餓を司る絶対神ン・マの秘密の力だったのだ。
 前回からちょっと気になっていたのですが、「絶対神ン・マの秘密の力」という言い回しがこの局面において微妙に間抜けなのですが、 これは『秘密の部屋』的な何かだったのか(^^; 別にそこを「秘密」で強調しなくても、普通にン・マの能力、ン・マ強い、 で良かったよーなというか。
 ン・マの触手攻撃によってビジョン通りにサンジェルが倒れ、フラグ達成。裏ドラまで積んだので仕方がない。
 地上では全くいい所なくマジレジェンドがスレイプニルに粉砕され、5人+マザーはダゴンの攻撃で追い詰められる。 麗をかばったスモーキーが爆死し、更に母も吹っ飛び大ピンチに。
 「あなた達は、私とお父さんの子。お父さんに出来た事なら、あなた達にだって出来る筈よ。あなた達には、無限の勇気と、 可能性があるのだから」
 駆け寄る子供達に、この土壇場で、母、また滅茶苦茶言い出す。
 ……まあ、この最終盤にして、小津兄妹が無謀・無茶・無策の3無し勇気主義でここまで勝ち残ってこられたのは、 父が規格外の超魔法勇者だったという、血統的背景によって理由付けられたので、 『マジレンジャー』世界においては、当然の帰結といえる理屈なのかもしれません。
 今回、その超魔法勇者である父が、「勇気とは、己を知り、信じる事」と、自分なりの勇気について提示する事で、 前回の「「みんなが支え合ってる!」」と合わせて、最後の最後でヒーローの力の背景を再構築してきましたが、 これを2クール目の終わりぐらいでやってくれていればなーというのは正直思うところ(^^;
 そして父が存外まともな事(というか戦士としての基本の基本)を言った為、 やっぱり母がクズいという結論に改めて。
 まあ母はフィーリングの人で、父は戦闘関係だけえらく理屈が通ってるタイプなのかもしれない(笑)
 ダゴンは絶望の生き証人として、深雪をインフェルシアに拉致。
 母は論理も倫理も崩壊しているけど、この溢れるヒロイン体質のお陰で、世の中おいしく渡ってきたのだろうなぁ……。
 実の娘にも、女子高生にも、真ヒロインの座は渡さない!
 残された5人には小型化したスレイプニルが迫り、兄姉が絶望に沈む中、1人スレイプニルに強いまなざしを向ける魁。
 「なんだ? おまえは負けたのだ」
 「俺は――父さんの子だ」
 魁がスレイプニルへ向けて歩き出し、上から炎の魔法陣が降りてきて変身、というシーンは音楽(挿入歌のイントロ) も合わせて非常に格好良かった。
 そして天空では――
 「ン・マよ――俺を倒しても、地上に俺の子供達が居る限り、世界はおまえのものにはならん! 可能性、未来、そして勇気。 おまえにはないものだ。光の前に闇は滅びる!」
 フェイタルブレードの型を取り、オーラに包まれるブレイジェルも格好良く、 ここまでひたすらウルザードで無駄遣いされていた磯部ボイスが炸裂。これだ! これが本当の父の姿だ!!
 ……で、末弟の歌唱力は残念だった。

ふぁいやーー ふぁいやーー

 「俺は戦う! 父さんの子である俺を、俺の力を信じる!」
 なんか結局、「己を知る」ってそういう意味? とちょっと違う所へ着地してしまうのが『マジレンジャー』クオリティですが (今の自分の力を把握するとかではないのか)、この世界では、血統が正義! 一応、世界観としてはズレていないのでもはや良しとします。

あーかーい まじあかいー まほうのほのおー
あーつーい まじあついー おをひいてー

 バーニング魁は、スレイプニルに猛反撃。その姿を見て、勇気を取り戻す兄姉達。
 「そうだ……やろうぜ! 俺たちなら、やれる!」
 「この世界の、家族みんなの為に!」
 「地上を、守るのよ!」
 「魁に続け!」
 「「「「魔法変身!!」」」」

ゆーうきはー ふしぎなー ふぇーにっくすー
きずつくたーび つよくなるー

 なんだろうこの、70年代感(笑)
 「「「「「溢れる勇気が魔法に変わる! マジ・マジュール・ゴゴール・ジンガジン!  ファイブ・ファンタスティック・(なんとか)!!」」」」」
 ただでさえ5人で声を合わせている上に、後ろで強烈な挿入歌がかかっている為、何と言っているかさっぱり聞き取れず(^^;
 5人の力を合わせた空中反転合体キックにより、スレイプニル、撃破。
 まあここまで色々ありましたが、『マジレンジャー』的なるものの集約としては綺麗に出来ており、ここは熱かった。
 最強の冥府神を撃破する5人だったが、その時、地上に絶対神ン・マが降臨し、サンジェルをポイ捨て。ブレイジェルもポイ捨て。
 「お前達が私の最後の贄だ。味わわせてくれ。極上の恐怖と苦悶を」
 地球の時間を喰らったン・マは、荒廃した未来の世界を見せつけ、更なる絶望をマジレンジャーに与える。果たして、 世界はこのまま漆黒の虚無に塗りつぶされてしまうのか。勇気と言う名の魔法は世界を救う光になるのか。次回、最・終・回。

あーかーい まじあかいー せいぎのほのおー
あーつーい まじあついー おーもいこめー
おぅおぅおぅ おぅおぅおぅ きめるぜー

 かつてなく格好良い魁の変身シーン、天空で戦う親父の本領、非常にいい流れの中で、弾ける凄まじい困惑。
 ?! ?! ?!
 ここで入る本人歌唱のテーマソング「勇気はフェニックス」は歌い方といい、メロディラインといい、 70年代を激しく彷彿とさせるのですが、なんとも言えない癖になる味わい。 使われたシーンの良さと合わせて、ただの残念挿入歌を超えた、夢幻の境地に到達してしまいました。 この歌をここで突っ込んできたスタッフは凄い(笑)
 ところで「おもいこめ」は魁だけに、「思い込め」すなわち「熱いと思い込む」の意だと思ったのですが、 よくよく考えると「想い込め」……「熱い想いを込めて」の意か(^^;
 途中でも触れましたが、父による微修正も含め、『マジレンジャー』的なるものの集約としては、綺麗にまとまったエピソード。
 ヒカル先生の登場時にも思いましたが、今作は、“失った家族を取り戻す”というコンセプトと一体化した、 “欠けたピースを埋めていく物語”であったのだな、と。ゆえに、必要なピースを埋める事で出来上がる完成形が見えている一方で、 そこに至るまでが不安定になってしまった。そして時々、強引に合わないピースを填めていた(^^;
 母の消滅に始まり、幾多の戦いを乗り越えてルナジェルと出会い、先生が来て、スノウジェルよりレジェンドパワーを手に入れ、 母が甦り、そして父の復活によりマジレンジャーが完成する、という構成は、こうして見ると、面白い作劇だったとは思います。
 ルナジェル、サンジェル、スノウジェルとの出会いと教えを経て「変化」と「成長」が描かれればまた違ったと思うのですが、 肝心のキーワードである「勇気」がゼロ地点から全く動かず、ボタンを掛け違った便利ワードのままひたすら使われてしまったのが残念でしたが(^^;
 神すら屠ってきた戦隊にふさわしく、最後の敵は時間をも喰らう絶対神。果てしない虚無と絶望に、 勇気と魔法は如何にして立ち向かうのか、この盛り上がりが巧く繋がって着地してくれる事に、期待。

◆Final Stage「伝説への帰還〜マージ・マジ・マジェンド〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:前川淳)
 最終回、OPはいつも通り。
 絶望の未来でン・マに立ち向かうマジレジェンド(やられ役)だが、必殺技を吸われ、槍を壊され、散々に殴り蹴飛ばされて、 あえなく分解。デザインは好きなのですが、終盤、一切役に立たなかったなぁ……。
 前年の『デカレンジャー』がロボットの比重が高めだったので、今作は生身推し路線だったのかとは思われますが、 キングにしろレジェンドにしろ、デザインは良いのに終盤にこれといった見せ場が与えられなかったのは、残念。 まあ突き詰めると5人が変身合体した姿なので、そもそものロボ分が薄いのですが。あと、中身空っぽのトラベリオンは、 キングかレジェンドと合体すると信じていたのに、しなかった!
 魔力が吸われ、スーツに顔出しの姿となった5人は、絶望に打ちひしがれながら、一時身を隠す。そんな中、 出撃前に父としていた事を問われ、フェイタルブレードについて語る魁。
 「魁、父さんは自分だけじゃない。お前の事も信じてたんじゃないのか?」
 それを聞き、魁を励ます4人、割と立ち直り早い。
 「さあ、奇跡を起こそうよ」
 「奇跡は起こらん」
 だが、わざわざ小さくなったン・マがそこへ現れ、闇の中に咲いていた花を踏みつぶす。末弟の力を信じ、 魁の前に立つと赤色ン・マ光線をバリアで必死に防ぐ4人。

――おまえは、おまえの勇気を見つけろ。その時、おまえは本当に強くなれる――

 兄姉の姿、父の言葉を胸に、剣とダイヤルスティックでフェイタルブレードの構えを取る魁。
 「わかった。わかったよ父さん。俺の勇気が何なのか。勇気が何の為にあるのか。俺の勇気は、未来を掴む為にある!  自分で自分の未来を手に入れる。そう願って、前に進む事が勇気なんだ!」
 最強勇気の剣に覚醒した魁は、連続攻撃でン・マの頭を割ると、炎の剣を突き立てて呑み込んだ時間を吐き出させる。 それによって現在への帰還に成功した5人にン・マの反撃が迫るが、砕け散る触手。それは、ン・マに魂を喰らわれる寸前、 体を粒子化させて魂の花園に身を逃した、天空大聖者マジエルの魔法の効果であった。
 「私を誰と心得る。天空大聖者にはこれしき、当たり前じゃ」
 リンとスノウジェルが得意満面でマジエルの力を解説し、更にそこへ帰還する母。その背後には、何故かスフィンクスの姿が!  粛清された筈のスフィンクスは、バンキュリアの不死身の力で生き返り、インフェルシアに帰還。説得に応じぬダゴンを始末し、 勇気に希望を見いだし、新たな可能性を探る者として、インフェルシアの実権を握ったのだった。
 ……ダゴン、マジレンジャーとまともに戦う事が無いまま、内ゲバでリタイア。
 「インフェルシアは、あなたが望む闇の世界ではありません」
 「私達が変えてみせます」
 ここに来て、まさかのクーデター。
 ナイとメアはクイーンバンパイアの力でサンジェルとブレイジェルを生き返らせ、ついでにスモーキーも甦り、もう、 大団円の為には何でもあり展開(笑)
 一応、スフィンクスが粛清された時に、吹っ飛んできた巨大な眼鏡の後ろでナイとメアが悲痛な表情をしているという描写があり、 心境の変化は読み取れない事もありません……が、まあ、かなり無理はあります(^^; 何が一番無理があるって、 天空聖者はともかく、神まで甦らせるクイーンバンパイアの不死身の力がどれだけ強力なのかという事ですが。
 ただ、これまでかなり無理矢理にでも出番を作っていたバンキュリア(ナイとメア)が前回は全く出番がなく、 ステルスになっていたのは、ちょっと巧い所。
 「真の闇の力を味わわせてくれる。叫べ、苦しめ、恐れるがいい……!」
 巨大化したン・マに対し、家族の力をぶつけろ、というマジエルの助言に従い、一堂に介した8人は揃い踏みで変身し、 OPをバックに、8人、次々と名乗り。

「勇気の絆が未来を開く! 我ら、魔法家族! 魔法戦隊・マジレンジャー!!」

 8人の絆の力はン・マの光線すら跳ね返し、合体魔法・大家族光線は、ン・マの胃の容量を凌駕していく……!
 「な、なんだ……この私が喰らい尽くせぬとは? なんだこの光は?! なんなのだ、魔法とは……!」
 「教えてやろう! 魔法、それは――」
 「「「聖なる力!」」」
 「魔法、それは――」
 「「「未知への冒険!」」」
 「魔法、そしてそれは――」
 「「「勇気の証!」」」
 「溢れる勇気がある限り、魔法も無限! いくら吸われようが、決して尽きる事はないんだ!」
 それにしても今作、結局、インフェルシアはインフェルシアで魔法使いの事をよく分かっておらず、 誰も「己を知り」「敵を知り」していない事が判明してしまいました(笑) 登場人物が全員、力に溺れすぎだ……!
 都市上空で展開する魔法使いの戦いは人々の目にとまり、魁を応援する山崎さん。結局ほんの序盤しか使われませんでしたが、 ここでモブから「有明の月」に触れてくれたのは嬉しかった。
 「これが満たされるという事か……満ちていく、満ちていくぞぉぉぉっ!!」
 大家族光線を喰らい尽くそうとした絶対神ン・マは、無限の光を吸収しきれず、満腹になって爆死。
 「「「「「「「「チェックメイト!!」」」」」」」」
 究極の虚無と飢餓はここに消え去り、絶望の未来は打ち砕かれた。
 「家族の愛が、三つの世界に降り注いでおる。これは、生きとし生けるもの全ては、家族であるという、魔法のメッセージじゃ」
 マジエル様が、カメラ目線で締めて、決着。
 最後のカメラ目線は、ラストでメタにメッセージを送るという、ここで曽我町子だから許される芝居。
 ――1年後。
 今日はインフェルシア戦勝記念日、という事で食卓を囲む小津家。
 サラダを並べる兄者は……江里子さんとは、続かなかったのか。
 ヒカルと麗は、人間界ではなくマジトピアで暮らしている事が判明。そう来たか、とちょっと驚きましたが、よくよく考えると麗、 女優になってちやほやされるのもいいかもと夢見ている家事手伝い、なので、いっそ、その方がいいのか(笑)  天空聖者と地上人の寿命の問題もあるので、もしかすると天空聖者アクアジェルとかに昇仙済みなのかもしれません。
 麗が嫁に出た事で少しは家事をするようになったのか芳香は卵焼きを机に並べ、 ボクシング界に復帰した翼は試合を控えてトレーニングに余念が無かった。そして魁は――
 記念日なのになかなか戻ってこない、と家族はインフェルシアに連絡を取り、スフィンクスの指導の下、 何やら再建工事中のインフェルシアの様子がちらっと。……まあインフェルシア、どこかの誰かの手で、冥獣人大殺戮されましたし、 どこかの誰かの手で、ン・マ様の一部ごと国会が大崩壊したしなぁ。
 その時、ドタバタとした物音と共に、父親のコスプレ姿に身を包んだ魁がようやく帰宅する。そう魁は、 地上界とインフェルシアの架け橋になる、と地上親善大使としてインフェルシアで生活をしていたのだ。可能性に溢れた、 みんなの未来を、掴む為に――。

 ……山崎さんには、捨てられたのか。

 最後は、家族写真をぱちりでエンド。おまけコーナーの所だけメイン6人の顔カットで、EDは普段通りそのまま。 90年代でも既に最終回のEDは後日談特別仕様にしている場合が見られるので、00年代ではかなり珍しいでしょうか?
 とにかく大団円、という最終回。
 フェイタルブレードの話を聞いた途端に勇気を取り戻す4人とか、 インフェルシアが離脱した途端にやたら狼狽して物凄く小物と化すン・マ様とか、色々と唐突感は否めないのですが、とにかく大団円。
 前回がテーマ的に『マジレンジャー』なるものの集大成だったとしたら、今回は人物や用語的な要素をまとめました、という感じ。 丁寧な展開とは言いにくいですが、やる事は大体やり尽くしました。
 インフェルシアとの和解(というかハト派クーデターによる全面降伏)という要素は必要だったのか少々疑問ですが、 “陽性の戦隊”として明るくまとめた、という所か。バンキュリアの収め所が無かったし。
 最終回にばたばたっと敵味方が手を取り合う、というのは(一応、伏線があったといえばあったけど)良くも悪くも、 キッズアニメの最終回のような雰囲気(あくまでイメージの話)。部分的な共闘などはあっても、敵対勢力を叩きつぶさずに終わる、 というのは戦隊としてはかなり珍しいでしょうか。
 全体として、明るいカタルシスを第一とした作品としては、収まる所に収まりました。
 テーマや構成に関する不満は途中でだいたい語ったので、改めては特に無し。キャラクターの話や、他に思いついた事があれば、 後でまとめた際に総括で触れようと思います。
 これにて、魔法家族の戦いは決着。
 感想、お付き合いありがとうございました。

 …………あ、馬。

→〔総括へ続く〕

(2015年5月1日)
(2019年11月24日 改訂)
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