■『魔法戦隊マジレンジャー』感想まとめ5■


“マージ・ジルマ・ジンガ
マージ・ジルマ・マジ・ジンガ
呪文が闇の扉をたたく”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『魔法戦隊マジレンジャー』 感想の、まとめ5(29〜35話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔総括〕


◆Stage.29「くり返す「あれ?」〜ジー・マジ・マジーロ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:横手美智子)
 注目は、すっかり窓際社員扱いのウルザード。
 同じシャインでも、ヒカル先生とは大違いだ!
 冥獣人四底王の1人、“地獄の賢者”コボルドのブルラテスの特殊攻撃を受けた芳香は、この1年分の記憶を奪われ、 更に何を教えても1時間で記憶がリセットされるようになってしまう。
 リセットの度に、同じ驚き演技を延々と繰り返す女優さんが大変そうですが、好演。
 教えれば変身は出来るが、マジレンジャーの事もインフェルシアの事も1時間でまた忘れてしまう為、 戦力にならない芳香の記憶を取り戻そうと、昨夜、シャインが芳香を助けた現場へ向かうマジレンジャー。
 そこにまさかの、テツヤ(スケルトンの呪いにかかり、芳香と結婚寸前まで行ったカメラマン)再登場。
 しかし、芳香はテツヤの事も忘れていた(どうやら、この1年の間に出会っていたらしい)。
 そして、2人のお付き合いは発展的解消していた(笑)
 こういった、正直どうでもいいサブキャラを、妙に大事にするのは今作の長所ですが、 兄者と江里子さんはなんだかんだで付き合いが続いていたのに、芳香の方はすっぱり別れていました(笑)  芳香がヒカル先生にべったりなので、その辺りへの配慮もあったか。
 テツヤが生気を吸い取られて倒れた事から、芳香を置いて周辺を探った4人+先生は、大量の生気を集めるブルラテスを発見。更に、 “四底王最強の男”イエティのズィーが姿を見せる。
 「俺は戦いには興味が無い。何故か。俺より強い奴がいないからだ」
 「ただ1人、天空聖者ブレイジェルを除いてはな」
 最強ゆえに戦いが虚しくなったクール系かと思いきや、即座に同輩から蹴落とされたので、何をしたいやり取りなのかわかりません(笑)
 ……いや勿論、ブレイジェルの名前を出して因縁を作りたかったのでしょうが。
 ブレイジェルに負けてから戦いに興味を失ったって、それただの、チキン野郎……(笑)
 「戦わなければ負けないからよって最強」理論を振りかざすズィーだが、意外やただのぼんくらではなく、 四底王最強の名に恥じない強さで、マジレンジャーを一蹴。スモーキーシャイニングアタックさえ打ち返すと、 ブルラテスが集めていたシチジューロウとネリエスの力で更に強化され、シャインを苦しめる。
 いよいよ立場の危なくなってきた先生は、記憶がリセットされてふらふらと現れた芳香をかばって大ダメージを受け、敗北。 作戦を進行中のズィーとブルラテスは、余裕綽々で引き上げていくのだった。
 遂に四底王に負けてしまったシャインですが、一応、芳香をかばって、という理由付けはされました。 今後のバランスがどう取られるかはわかりませんが、言い訳のきかない完敗でないのは、良かった。
 ズィーは、ややバランスを崩す形でやけに手が大きいデザインだと思ったら、途中で取り出した武器から、 ホッケー選手がモチーフの模様。
 ヒカル先生は戦闘不能になり、ズィーには全く魔法が通用しない。このままでは敵の計画を阻止する事など不可能……暗く沈む兄妹に、 無邪気に「お母さんに相談すればいい」と口にする芳香に、魁は母の形見のマジカルステッキを突き付ける。
 母は死んだ、と聞かされる芳香……だが。
 「勇気を出して。よくわかんないけど、芳香達には勇気があるじゃない。芳香達の武器は勇気。いつだって、 勇気が力を与えてくれる。それを忘れちゃいいけないよ」
 芳香の中で花開いていた勇気はしおれない。強く根付いた勇気が、まるで生前の母のような言葉を、 記憶を失った筈の芳香に口にさせる。
 つまり、
 父の残念な所を一番色濃く継いだのが翼で、母の頭のおかしい所を一番色濃く継いだのが芳香、と(え?)
 例え1年間の記憶を失っても、その間に蓄積された心の成長まではリセットされていなかったのだ……という事なのですが、 うーん……。
 芳香と兄妹の、母親の喪失に関する致命的なズレを突き付けた上で、芳香の口からそれを乗り越える言葉が出てくる、 というシチュエーションそのものは格好いい筈なのですが、母とシンクロさせすぎたのは良くなかったと思います。
 結局、これだと母親の手の中というか、いっそ、母親の仕掛けた強固な暗示が顔を出したようにさえ見えてしまう(笑)
 そして何より、作品として、「勇気」の定義づけが一番最初に戻ってしまっている。
 むしろ物語としては、意図的に原点に戻したのでしょうが、その原点には問題がある上に、 そこから20数話の蓄積が全く反映されていません。
 いみじくも芳香の台詞に織り込まれているように、30話ぐらいかかって結局、「よくわかんないけど勇気」に戻ってしまっている。
 ヒカル先生の登場後、徐々に改善しつつ修正してきていたのに、ここでまたまた、スタート地点の欠陥が、 致命的な形で顔を出してしまいました。
 物語の構成だけでいえば、ここで原点が顔を出す、というのはむしろ美しいのですが、 今作に関してはその土台にこそ問題の根っこがあったので、原点を塗り直す事こそが、求められていたと思います(^^;
 赤「俺たちだって前とは違う。諦めたり、びびったりしている場合じゃない。だって俺たち、 正義の魔法使い・マジレンジャーなんだから」
 黄「みんな……勇気出そうぜ」
 ここで、母のステッキにみんなで手を重ねるのは、良かった。
 (凄いよ。なんてことだろう。魔法使いとしての記憶はなくしても、希望を与える事が出来るなんて。芳香もまた、 新しい伝説の担い手なんだ)
 そして先生、ノルマ達成いたしました! おめでとう先生!!
 一気に大量の生気を集める為にブルラテスが巨大化し、芳香を含めてマジレンジャーはマジキングに。くじけない芳香の勇気に応え、 キングカリバーを強化する新魔法がDLされ、その一撃がステッキを破壊すると、ブルラテスは逃亡。 そして芳香は奪われた記憶――昨夜見たものを思い出す。
 それは、ブルラテスとズィーが人間の生気を集めて育てていた、悪魔の氷山。 覚醒すると人間の生気を自ら吸収して世界を冷気で閉ざしてしまう、恐るべき、イーブルアイスであった!
 サブタイトルから、もうちょっとトリッキーな展開があるのかと思って期待したのですが、割とストレート。そして引きネタでした。
 ところで、細かい使い方などから見るに(芳香の年齢詐称に真っ先に気付くとか)、 ライター陣の中で翼に一番愛がありそうなのは横手さんなのですが、翼回は芳香がらみの吸血鬼編しか書いていないので、 可哀想だと思っているだけで、別に愛は無いのだろうか(笑)

◆Stage.30「伝説の力〜マージ・マジ・マジ・マジーロ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:横手美智子)
 浮上したイーブルアイスを破壊しようとするマジレンジャーだが魔法を弾かれ、更にズィーによって叩きのめされる。
 「俺とおまえらでは、強さが違うのだ」
 「なんだと? 俺たちには勇気がある。勇気があれば……」
 「「「「「絶対負けない!!」」」」」
 「勇気? そんなものは力の前には無に等しい」
 5人の連続攻撃も無効化するズィー、なんか、正しいウルさん、みたいな人です(笑)
 ズィーに完敗した5人は、引き続きベッドの上のヒカル先生から情報を得、イーブルアイスを打ち砕く力を得る為、 クズ母に魔法を授けた存在でもある、マジトピア最長老の偉大な天空聖者・スノウジェルの助力を求め、 マルデヨーナ世界・嘆きの海へと向かう。
 「力はやがて、更なる力に敗れる。そなたらの母のようにな」
 なぜ力を求めるのか? 力があれば守れるのか? 力は自分自身を滅ぼすだけではないのか――長き生を過ごし、 多くの魔法使い達の悲劇を見てきたがゆえに、これ以上、力あるゆえの不幸を見たくないというスノウジェルは兄妹への助力を拒否するが、 食い下がる魁。
 「それでも俺たちを信じてくれ。俺たちは絶対大丈夫だ。だから!」
 「なぜそう言い切れる」
 「俺たちには……俺たちには、無限の勇気があるからだ!」

 あ、あれ?

 ここでスノウジェルを翻意させる為の、言葉や行為があって、“ただの「力」とは違う” 「勇気とは何か」が示されるのかと思ったのですが、 まさかの「勇気」ごり押し。
 作り手としては、これまで30話でたっぷり描いてきた小津兄妹の「勇気」がスノウジェルに認められた……という流れなのでしょうが、 繰り返し書いてきたように、実際の所、「勇気とは何か」という事がしっかり描かれた事がほとんど無い為、非常に空虚。
 「この光は、勇気の証。これは、誓いの指輪が、彼等の勇気に応えているのか」
 補強として、伝説の指輪も5人の勇気を認めている――としたのでしょうが、かえってスノウジェルが、 マジックアイテムに感心しているだけにしか見えません(^^;
 また、そもそもこの指輪はヒカル先生が「僕の家に先祖代々伝わっていた」と持ち出したものなのですが、 こんな超重要アイテムの登場が、それで良かったのか(重要度が高すぎて、さらっと出した巧い伏線、とは言い難い)。
 ヒカル先生が天空聖者の中でもかなりアッパークラスというなら、それはそれで良いのですが(光ってるし、金色だし)、 それならその説明は先に置いておかないと、超重要アイテムを持ち出すに足る納得力が足りないかと思われます。
 結局のところ世の無常に背を向けた隠者であったスノウジェルですが、 色々な問いへの回答は全て「勇気があるから大丈夫」で済まされてしまい、何も面白くない。
 未熟でも青臭くても正解がなくても、そこで問いかけを乗り越えてこそ、だと思うわけなのですが。
 今作の「勇気」テーマがどうしても便利用語の便利使いに見えるのは、今作全体のこの、命題から逃げている感じにも一因があります。
 その頃、ドーピングで強引に出撃したマジシャインは成長し続けるイーブルアイスに一撃を入れるが、 ズィーによって叩きのめされてしまう。
 大ダメージを負った先生に、わざわざコメントを送ってくれる窓際騎士。
 「弱さは悪だ。強さこそが絶対なのだ」
 その台詞は! 自分の力で勝った時に! 言って下さい!
 追い詰められたシャインにとどめの一撃が迫るその時、スノウジェルによって潜在能力を解放された5色の魔法使いが現れる――!
 「もうお前達の好きにはさせない! 本当の力は!」
「「「「「勇気が生み出す!」」」」」
「「「「「超魔法変身!!」」」」」
「「「「「マージ・マジ・マジ・マジーロ!」」」」」

 ここも、「ただの力」ではなく、「勇気を背景とした力」なんだ、という持っていき方そのものは良いのですが、肝心の勇気が空虚な為、 「よくわかんない」から一歩も前進しておらず、素晴らしく残念。
 最大限好意的に解釈しても、マジレンジャーの勇気って、「諦めずに何も考えずに突撃する事」なのですが、それでいいのか。
 マジトピアだから、それでいいのか。
 新たな変身呪文を唱えたマジレンジャーは、レジェンド化。
 マントが消えて外部装甲が追加され、頭の形がそれぞれのモチーフに則って変形。………………段々見慣れてくるかもしれませんが、 第一印象としては正直、言葉を選んで言うと、格好悪い。
 特にレッドは非常にやってしまった感じなのですが、どことなく見覚えがあるけど…………なんだろう、日輪仮面? (コメントいただいて気付きましたが、多分アポロガイスト)
 「本当にスノウジェルの心を溶かしたんだ」
 「にゃ〜んだよ。信じてにゃかったのか?」
 「――信じてたよ」
 スモーキーに助けられ、5人を見つめるヒカル先生、いい顔。
 レジェンドマジレンジャーはダイヤル式の新・魔法のステッキで次々と強化された呪文を炸裂させる……のですが、 背後で流れる水木一郎の挿入歌が気になって、いまいち映像に集中できない(笑)
 先生「ダイヤルロッド……あれこそ原始のマージフォンだ」
 て、そういう事かぁぁぁぁ!!!
 杖もデザインとしては微妙だと思ったのですが、このネタで、全て許せる気になりました(笑)
 それにしても2005年ともなると、幼年視聴者は何の事やらさっぱりわからなそう(^^;
 レジェンドの放つ凄まじい魔法に、ブルラテスは一目散に逃亡。合体魔法攻撃・レジェンドフィニッシュによって、 ズィーとイーブルアイスはまとめてチェックメイトされ、砕け散る。
 窓際「遂に、原始の魔法まで手に入れたか、五色の魔法使い。ふふふふふ、楽しみだ」
 発言だけは大物ぶって、今回も何の役にも立っていないウルさんは帰宅。会社のデスクに雑巾とか乗っているかもしれないけど、 心だけは太いのでたぶん通じない。
 そして駆け寄ってくる5人を、笑顔で迎えるヒカル先生。
 「間違いない。彼等こそが新しい伝説の担い手なんだ」
 そう、今ここに、新たなレジェンドが生まれようとしていた――。
 えー、ヒカル先生の登場後、地道に改善してきた今作ですが、肝心のパワーアップ編で一周回って台無しになるという、 まさかの大惨事。さすがにこの展開は予想外だった……!
 次回、年上の女再登場で、レジェンドのデメリット発表? 逃亡したブルラテスなどの要素もありますし、 少しでも面白そうな方向に転がってくれる事を期待。

◆Stage.31「凄まじき魔神〜マージ・ジルマ・ゴル・ジンガジン〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 レジェンド化の影響で精霊力が暴走気味になる5人。そこへルナジェルから「レジェンドパワーを使ってはいけない」という連絡が来るが、 魔法のお便りヤギを怒らせた為に、詳細が不明になってしまう。
 こういう、“面白いけど時に不条理な魔法”という小ネタのギミックを入れてくれるのは、好き。
 そんな時、メーミィの魔法で強化されたブルラテスが地上に現れて大暴れし、 5人は速攻でレジェンド化すると圧倒的なレジェンドパワーで瞬殺。引っ張った挙げ句に実に大雑把に始末されたブルラテスですが、 メーミィの真の狙いは、その魂を冥機ゴーレムに吸収させる事にあった。
 四底王の撃破とレジェンドパワーの獲得に盛り上がる5人だったが、徐々に精霊力が暴走し、そこへやってくるルナジェル。
 「いけないと書いたのに、ちゃんと伝わらなかったようね」
 心の底から申し訳ありません。
 「これ以上、レジェンドパワーを使い続ければ、貴方達は、天空聖者になってしまう。もしそうなれば、人間としての記憶は、 完全に失われる」
 レジェンドパワーの副作用……それは、強制的な羽化登仙であった!
 そして天空聖界へと昇天した者は人間であった時の記憶を全て失い、俗界との関わりを一度リセットされてしまう。
 「レジェンドパワーを使うと、俺たちが、俺たちでなくなる」
 「母さんの事も、忘れちまうのかよ……」
 レジェンド辞めますか? それとも、人間辞めますか? と突き付けられ、家族の絆を大事にしながら戦ってきた兄妹は意気消沈。 しかもそのリミットはあと1回……て、早い。
 スノウジェルさんがとても悪質な気がしてきましたが、天空聖者だから仕方ない。
 「……決めた。それでも俺は、ピンチになったら、レジェンドパワーで戦う」
 たとえ記憶を失っても、運命で結ばれた5人の絆は消える事なく、いつかまた巡り会える筈……魁がそれを真っ先に信じる決断をする、 というのは魁らしさがいい方向に出たところ。
 だが、これまでの人生全てを忘れる決断を、誰もが出来るわけではない……その時、空間の壁を破り、冥機ゴーレムと、 5人をリンに任せてそれと戦っていたトラベリオンが地上界へ姿を現す。
 ゴーレムは、人型の上半身+二輪の下半身、という一風変わったデザイン。
 太陽の塔バイク戦艦とでもいった見た目で、 長谷川裕一の香り漂うトンデモ系異形ロボ。
 凄まじい力を持つゴーレムにトラベリオンは危機に陥り、5人はまずはマジキングで挑むも、 あっという間に撃破されて合体解除してしまう。
 「姿形は変わっても、俺たち家族の絆は、変わらないさ」
 こうなってはレジェンドパワーを使うしかない、と覚悟を決めた5人は、超魔法変身……て、えらく早い。
 よくあるテーマなので敢えて踏み込まなかったという可能性もありますが、人間を取るか/ヒーローを取るか、 という幾らでも掘り下げられる要素なのに、ほとんど尺を割くことなく、ハイペース。
 そして超魔法変身を行った5人に、新たな魔法が配給される。
 「自分の身を顧みず、地上界を守ろうとした勇気に魔法が応えたんだ。言い伝えにある、更なる力を君たちは得た」
 勇気と魔法の配給システムって、マジトピアが運営しているのだとずっと思っていたのですが、 もしかしてもはやマジトピアの管理を離れ、独自の凄くねじくれ曲がった摂理として存在しているのでしょうか(^^;
 もはや、陰険とか鬼畜とか性格悪いとかそういうレベルではない気がしてきました。
 新たな魔法によりマジレッドはマジファイヤーバードに、残り4人はマジライオンへとレジェンド魔人化。 なぜか火の鳥がライオンに火の輪くぐりを要求し、両者は合体。ここに伝説に謳われた凄まじき魔神が再臨する。その名を――
 「伝説合身・マジレジェンド」
 これが格好いい。基本人型の中に、獣のテイストが残っているバランスが素敵。
 マジレジェンドは、トラベリオンを一方的に追い詰める難敵ゴーレムを圧倒。完全なワンサイドから、 スクリューカリバーファイヤートルネードでゴーレムを焼却し、伝説の力を見せつける。
 「兄ちゃん、姉ちゃん、とりあえず、お別れだね」
 「なんか、意識が薄れてきた……」
 「でもみんな、天空聖者になったら、またよろしくね」
 昇天に向けて気持ちを盛り上げる5人だが、その時空気を読まない着信音が鳴り響き、ヒカル先生の携帯に新たな魔法がDLされる。
 「これは! 君たちのための魔法だ。それだけ今回の君たちの勇気が素晴らしかったという事さ。そのご褒美で、 記憶を無くさずに済みそうだよ」
 ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ?!
 この新たな魔法によりレジェンドパワーが調整され、5人の精霊力の暴走と記憶の消去は食い止められて大団円……て、
 ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ?!
 〔レジェンドパワーを使うと人間では無くなってしまう→それを恐れず変身した勇気に応えて伝説合体→ そんな君たちの勇気が素晴らしかったから記憶が無くならないようにしてあげよう〕
 って、正気を疑う構成なのですが、どうしてこうなった。
 そもそも今回、「今までにないタイプの強敵」「記憶を失う事への葛藤と選択」など、 前後編にしてもいいような内容を強引に1話にまとめた節があり、描かれるべき苦悩などがざくざくすっ飛ばされながら物凄いペースで進むのですが (例えば魁なら山崎さん、兄者なら江里子さんの話が一言も出てこないが、本来そういった「日常」との関わりを含んだ要素の筈)、 何か急なスケジュールの変更でもあったのかと疑いたくなります(^^;
 異形ロボvs獣ロボは非常に良かったし、魁の真っ直ぐさと、ここぞで音頭を取る兄者のバランスなども良かったのですが、 あまりにも雑かつ、オチが酷すぎました。
 次回、逆襲の窓際。

◆Stage.32「父の言葉〜マージ・ジルマ・ゴル・ゴジカ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:大和屋暁)
 ここまで、前川淳−荒川稔久−横手美智子のトロイカ体制だった今作ですが、大和屋暁が参戦。この話数になって、 単発エピソードではなく大筋に絡む話で脚本家新加入は少々珍しい、か?
 メーミィが禁断の冥菌獣・モールドを持ち出してナイとメアに地上への散布を指示し、 レジェンドパワーを手に入れたマジレンジャーに対抗する為、ウルザードは奪われた魔法力もとい携帯電話を強制回収。
 …………えー、これまでの諸々、何の意味があったのか(^^;
 魔法力を失った間のウルザードが本気で何もしていない上に、何の物語的メリハリもなくあっさり回収して元に戻ってしまい、 単に一定期間バンキュリアが便利に闇魔法を使って話を転がす(その間、ウルザードが完全にお休みならまだわかりますが)為だけだった、 という物語の都合による物語の都合のみの展開。
 ヒカル先生の登場後だいぶ立て直してきていたのに、ここに来てトホホな展開が連発します。
 地上の小津家では、実りの秋でアニキ農場が大フィーバー。
 (収穫作業を)「結局てつだっちまった……」
 という黄色がいい味(笑)
 そこへ部活の試合を終えた魁が帰宅するが、途中交代に不満たらたら。
 「もう辞めちまおうかな……サッカー」
 「魁、強くなれ」
 そんな魁の頭を、急にくしゃっとする兄者。
 「実はこれって、父さんが言った事なんだ」
 これまで長らく、よくわからないがかなり残念なバトルジャンキー として描写が形成されてきた小津父/ブレイジェルに、兄妹側から初の言及。 「冒険に行く」と言っては家を空けていた為に芳香もあまり記憶が無い父だが、兄者だけはちょっぴり父の記憶があったのだ。
 前々回、芳香の年齢が22と言及されており、ブレイジェルが闇の扉からインフェルシアに突っ込んで姿を消したのが15年前なので、 まあ無理の無い範囲でしょうか。
 兄者が語る父の「強くなれ」という言葉を、「ヒャッハー、殺戮だぁ!」と捉えた魁は地上に現れたバンキュリアに単騎突撃を仕掛け、 毒ガスの餌食になりかけるが、それをかばった兄者がモールドの殺人カビを浴びてしまう。
 「やはり闇の力の前では、お前達は無力なようだな」
 後からのこのこ出てきた窓際、何が「やはり」なのかさっぱりわからないよ!
 駆けつけたマジシャインが魔法でカビの浸蝕を一時的に食い止め、一時撤退した4人は、 前回から地上で特別休暇もとい物見遊山でもしていたのか、連続登場のルナジェルにより、予防の魔法をかけられる。
 冥菌獣・モールドの殺人カビは感染者の体を浸蝕し、モールドの目覚めと共に、完全に食い殺す。 インフェルシアはモールドによる無差別細菌テロを敢行し、その発動タイムリミットまで、残り35分――。 カビの効果を消し去るには、魔力の源であるモールド本体を破壊するしかない。
 先生とリンは殺人カビの拡散を防ぐ為に細菌のばらまかれた街へ向かい、兄者を残した4人は、モールドの破壊の為にウルザードを探す。
 「蒔人兄ちゃん、待っててくれよ。俺、無茶苦茶強い新魔法を必ずゲットする。そいつでウルザードを倒してやるからな」
 「ふん、5人揃わぬお前達に興味は無い」
 呼ばれて飛び出て何となくじゃじゃじゃじゃーんなウルさん、それなら、5人揃うようにしてあげれば良いのではないでしょうか!  4人はレジェンド化するが、何故かえらく強いウルさんは、次々とレジェンド魔法を跳ね返す。
 ここまでの戦闘力描写の積み重ねから見ると極めて不自然ですが、 くどくど言い訳するとますます嘘っぽくなるので、理由付けを一切放棄したのは、むしろ潔くて良かったと思います(笑)
 「まだまだ……俺が奴より、強くなる! なんか出ろぉ! 魔法!!」
 マジレッド、なんか出す……が、やはり跳ね返される。
 なんだか、メタな嫌がらせみたいなネタを仕込んできました(笑)
 殺人カビに苦しみながらも目を覚ました蒔人は、苦戦の末レジェンド化も解除されてしまった4人の元へ駆けつけ、 力を振り絞って赤の危機を救う。
 「俺は俺に出来る事をやる為に来た!」
 自然の力を借り、巨大な旗を作り出した兄者、変身できなくても4人を応援。
 「みんな、頑張れーーーーー!」
 父が幼い兄者に告げた「強くなれ」という言葉の真の意味……それは、心の強い人間になれ、という事。 試合に出られないからと腐るのではなく、例えば応援する事で仲間の力になる、そんな強さを身につけろ、という教えだった。
 やたらに音楽で盛り上げる兄者の応援を受け、立ち上がる4人。
 窓際「応援? そんな事をしたところでなんになる」
 黄「ウルザード……おまえなんかには、わかんねえだろう!」
 ああわからないさ! ウルさん、友達とか仲間とか居ないから! 無理言うなよ!
 桃「あの応援が、どんなに力になるか!」
 青「私達の、支えになるか!」
 赤「俺たちに、勇気をくれるかをな!!」
 まさしく縁の下の力持ち、兄者の応援を受けた4人、再びレジェンド化。
 もはや「勇気とは何か?」が治療不可能なので、「本当の強さとは何か?」と側面から手を入れてきました。
 勇気フルチャージの4人の反撃を受け、「なんだと?!」とか「馬鹿な!」とか言いながらど派手に吹っ飛ぶウルさんは、 見事にモールドを破壊され、色々な意味で面目躍如(笑)
 これにより兄者から殺人カビが消え去り、レジェンドマジグリーンに変身。マジ伝説とウル皇帝が激突し、 伝説が押し気味の所にだめ押しの新魔法がダウンロード。 獅子の顔から放つ火の玉と共に槍を打ち込むスクリューカリバーファイヤースマッシュが炸裂し、倒れ込むウル皇帝。だが、 トドメを刺す寸前、いきなり苦しみ出すマジレンジャー……て、むしろ敵みたいな(笑)
 それは、メーミィが打ち込んだ、強化モールドのカビ菌によるものであった。
 ああ、窓際が失敗するのは織り込み済みだったのですね(笑)
 圧倒的優勢であったマジ伝説は崩れ落ち、立ち上がるウル皇帝。ウル皇帝は勿論、俺の騎士道精神を発揮して、 マジ伝説のカビを消し去るのだった(笑)
 「メーミィ、おまえのした事は騎士の戦いに水をさす、愚劣な行為。この俺に、助太刀など無用だ」
 ……うんホント、メーミィは、黙って窓際がずんばらりんされるのを見ているベキデシタヨネ。
 「邪魔が入った。今日の勝負預けるぞ。――五色の魔法使いよ、強くなれ」
 完敗寸前だった事など綺麗に忘れ去った窓際騎士@ニワトリは、力強い言葉と共に、インフェルシアに帰還するのであった。
 「父さんと、同じ言葉を……」
 「偶然だよ。偶然に決まってんだろ。あいつは仇だぞ、母さんの仇なんだよ!」
 ウルザードの最後の言葉に動揺する5人……お約束ではあるのですが、特に珍しい言い回しではないので、 無理矢理感強めは否めません(^^; 何より、母の仇とか抜きに、

 あんな父、絶対に嫌だ。

 インフェルシアに戻った窓際は、何故か急に膝を付き、蒼空の幻影を見る。
 「い、今のは……」
 「あ、あなた、まさか……」
 果たしてウルザードの身に何が起こったのか、そして、メーミィが気付いたものとは……?!
 四底王が片付き、思わせぶりだったあれやこれやが形となってウルザードに焦点が戻る新展開。 ここまでの成り行きとウルザードの駄目っぷりについては新規参加の大和屋さんには責任が無いので、むしろ、 ウルザードが実にウルザードだった事を評価するべきなのか(笑) 内容としては、今作の水準レベル。
 どの程度の参加かはわかりませんが、「父と子」というのは大和屋さんが個人的にこだわりの強いテーマだそうで、 続けて新味を加えてくれるのか。
 ところで、ヒカル先生はリンにはセクハラしないのですが、その理由を次から選びなさい。
−−−−−
1・セクハラは人間の女の子にだけすると決めている。
2・実は元カノ。
3・昔セクハラをして、血も凍るようなお仕置きを受けた。
−−−−−
 正解は、CMの後。
 個人的には3番で。

◆Stage.33「インフェルシアへ〜マージ・ゴル・マジカ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:横手美智子)
 ヒカルとリンに、今更ながら父について聞く魁。
 なんか洗脳されているのか、というぐらいブレイジェルの話題になるとべた褒めになる2人ですが、それによるとブレイジェルは、 決して自分の為に魔法を使わない本当の勇者だった…………というか回想シーン見る限り、狂戦士なので魔法いらなかったのでは(笑)
 回想シーンではブレイジェル本体とサンジェル体が登場し、ブレイジェルはなかなかの格好良さ。……ちょっと、悪魔っぽいですが。
 また、少し謎だったヒカル先生に天空聖者体がある事が判明し、ヒカル先生におけるマジシャインへの変身はどういう位置づけなのか、 やや謎が深まりました(あれ?)。
 15年前の回想は気がつくとブレイジェルの話題から逸れ、「ライジェルの豚野郎め!」という罵倒に。
 ルナジェルは明らかに裏切りとか関係なく、「生理的に無理」な感じでライジェルが嫌いだと思われます。
 一方、そんなライジェルもといメーミィは、ン・マ様復活大作戦を閃き、ウルザードがマジレンジャー5人を、 メーミィはヒカル先生とリンをそれぞれ呼び出す。特に人質を取られているわけでもないのに呼び出しに応え、 律儀に二手に分かれる7人(笑)
 レジェンドマジレンジャーVS窓際騎士、天空殺法コンビVS生理的に無理、がそれぞれ激突し、 着ぐるみが動きにくいので先制の一撃で離脱するルナジェルさん。
 まあそもそもルナジェル、支援キャラであって最前線に突っ込むスキルツリーでは無さそうな気がするのですが………… 天空聖者だから仕方ない。
 そして最近すっかりいい所のないマジシャインは、闇の力を振るうメーミィの前に大苦戦。 巨大化したメーミィにトラベリオンで立ち向かうも石炭の火力を吸収されてしまい、メーミィはその力を使って、儀式魔法を発動。 かつてブレイジェルに封印された冥獣人達の怨念と魂を寄り集め、合体冥獣人・キマイラを誕生させる!
 合体怪人、という事で三つの声で喋るキマイラですが、性格は全部一緒(笑)
 前のめりなキマイラの攻撃を受け、吹き飛ぶヒカル先生とリン。キマイラはそのまま、割と格好良く立ち回るも、 よそ見している間に思いっきり魔法を叩き込まれて、例のごとく苦戦しているウルザードを助けに駆けつける。 キマイラは圧倒的な力でマジボルトを反射し、ウルザードの魔法により5人はインフェルシアへと引きずり込まれる……。
 インフェルシアに招待された5人、ここで初めて、片目だけですが、ン・マ様とご対面。ン・マ様復活の為にレジェンドパワーを絞り出され、 苦しむその姿に、前回からの幻視に戸惑うウルザード。マジレンジャーはこのまま、ン・マ様復活の供物として煮干しにされてしまうのか……絶体絶命のその時、 魁がバーストモードを発動。かつてブレイジェルが用いた範囲攻撃魔法を放ち、それが、運命の扉をこじ開ける――。
 土壇場で魁の主人公力がバーニングして大逆転、という古典少年マンガ展開は今作としては一貫しており、許容範囲。 ただ私の魁への好感度がインフェルシアよりも更に地底深くを這いずっているので、あまり面白いとは感じませんが(^^;
 こういうのはやはり、丁寧に物語を積み上げるか、キャラクターへの好感あってこそだなぁ、と。
 反撃も束の間、迸る赤色ン・マ様光線によって窮地に陥る魁。その命の灯火が消滅するかと思われた寸前、 思いもかけない人物がビームを防ぎ、断ち切る! ン・マ様に向けて剣を振り下ろしたその人物は、窓際騎士ウルザード。 そしてその姿は、天空聖者ブレイジェルへと変貌する。
 「父さん、なのか……?」
 「そうだ。私は、お前達の、父だ」

◆Stage.34「勇気の絆〜ゴール・ゴル・ゴルド〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:横手美智子)
 衝撃の残念父(人間名:小津勇)復活! ……かというと難しい所ですが、延々うっすら匂わせてはいたけど、 露骨な伏線を見せていたわけでもないので、急展開といえば急展開。視聴者視点は別にして、 劇中で指標となる小津兄妹が「あれ……?」と思ったのが前々回ですし(しかもかなり強引に)。
 物語としては、もう数話、「どうなの?」展開が入るべき所を、3話ほど省略した感じに(笑)
 15年前――ン・マ封印の一歩手前まで行ったブレイジェルだったが、ライジェルの裏切りで負った手傷により生じた一瞬の隙を突かれ、 ン・マの呪法、呪縛転生によって全ての記憶を奪われ、魔導騎士ウルザードに変えられてしまったのだった。
 本人曰く、
 「魔導騎士ウルザードとして、ン・マへの絶対的忠誠心を刻み込まれた」
 そうなのですが、絶対的忠誠心、刻み込まれて、アレだったのか……!(笑)
 単に、仕事の出来ない人だ……!
 まあ、これまでの回想シーンと本人の自己申告を繋ぎ合わせると、 「実質単騎でインフェルシアにカチコミかけてあらゆる冥獣人を屠り去る大量虐殺の末にン・マ様の封印寸前まで行った」 という事になるので、細かい仕事が出来るとか出来ないとか小さい事すぎて、運用方法が間違っていた としか言いようがありませんが。
 ウルザードの正しい使用方法は、

 単独でマジトピアに突撃させる

 だった!!
 ライジェルの裏切りによりン・マに囚われる事になったブレイジェルだが、記憶を取り戻したのは、 ライジェルが作ったスーパーカビを除去した影響…………てどうして(笑)  何かそれらしい理由をつけないといけないと思ったのかもしれませんが、記憶とカビに何の関係もないので、 かえって意味不明になりました(^^; もう今更、特に全くこう、要らない理由だったような。
 「違う! こいつは父さんじゃない!! 父さんは……父さんは死んだんだ!」
 割とすんなり受け入れる4人の兄姉に対し、母の仇であるウルザードを許せない魁。

 というか、こんな残念な父、嫌だ。

 ……作中で初めて、魁に共感できた気がします(笑)
 『救急戦隊ゴーゴーファイブ』の1話ばりに気まずい空気になる中、未だ完全に呪縛転生を脱していなかった残念父はン・マ様に回収されてしまい、 5人に襲いかかるキマイラ。ファイヤーバードアタックも弾き返され、またも窮地に陥る5人だったが、 スモーキーに助けられていたヒカル先生とリンが、世界の壁を破って移動可能な謎の馬(映画ネタ?)にまたがって現れる。 5人は魔法の馬の力で地上界に戻され、それを追うキマイラ。
 「ライジェル、僕たちは決着をつけよう」
 ブレイジェルを師匠とする同門の弟子として、メーミィに挑むヒカル先生。両者はそれぞれ天空聖者の姿となると、 リンを立会人にマジトピア伝統の決闘を開始する。
 古くから伝わる決闘方法が、魔法を封じ剣によってのみ戦うチェーンデスマッチ、って どれだけ血に飢えているのか天空聖界。……一応まあ、範囲魔法で周辺に被害が及ばないように、 とかそういう事なのでしょうが(^^;
 ところで今更どうでもいい事なのかもしれませんが、そこの立会人を殺すと闇の門が開いてインフェルシア全力お引っ越しが可能という事実を、 みんな完全に忘れ去っていませんか。
 優勢に戦いを勧めるサンジェルだったが、トドメの瞬間にライジェルが反則の魔法を使い、逆に追い詰められてしまう。 だが変身が解除されてもなお、決闘にこだわるヒカル先生。
 「そんなにブレイジェルの教えが、大切? その教えのせいで、滅びるのに?!」
 「大切だとも。たとえ僕が滅びたとしても、想いは残り、勇気の絆は受け継がれていく!  自分1人の為にしか魔法を使わない者には、この絆の尊さがわからないだろうけどね!」
 師から弟子へ――、親から子へ――、正しい想いは受け継がれていくからこそ、個人の欲望に、正義は決して負けない。 本作のテーマを補強する台詞で、戦力的にはダウンしつつも、おいしい所でおいしい台詞を貰えるのが、ヒカル先生のいい所。
 「僕がおまえを終わらせる!」
 ヒカル先生はメーミィの魔法を剣の腹で反射すると、反撃で鮮やかに一刀両断。
 一方地上では、馬と合体してセイントカイザーとなったマジレッドが、ウル皇帝にあおられた勢いでキマイラを撃破。 キマイラは描写としてはかなり強かった筈なのですが、本当に勢いで、物凄くざっくりやられてしまいました(^^;
 セイントカイザーはファイヤーカイザーの色違いなのですが、赤+白+金という配色といい名前といい、そこはかとなく勇者ロボ系。 戦いはマジレッドとウルザードの一騎打ちとなるが、それを止めようとする兄妹達。
 「なんで……なんでだよウルザード!」
 剣を取り落とした自分を切ろうとしないウルザードに、感情をぶつけるマジレッド。
 「それは……ウルザードが、父さんだからだ」
 30数話に及ぶウルさんの出鱈目な言動と行動を、「心の奥にブレイジェルの魂が残っていたんだよ!」 という事で理由付けしましたが、ウルザードは理由が付けば許されるという限界を遙かに突破していたので、 初期から仕込むなら仕込むでもう少し何とかしたかったですね……と(^^;
 千々に乱れるマジレッドは素手でウルザードに食らいつくと、遂に押し倒しを敢行(笑) こぼれる魁の涙がン・マ様の呪縛を弱め、 ウルザードはとうとう、呪縛転生を打ち破る。今度こそ、天空聖者ブレイジェルとしての自分を取り戻した父と再会を果たす兄妹だったが、 地上に浮上するン・マ触手。
 「これは俺の戦いだ。15年前の片を付けに行く」
 ブレイジェルは5人の動きを封じると、ン・マの触手を押し返し、インフェルシアへと単身突撃を敢行。遂に全貌を現したン・マ様は、 なんというか旧支配者系。触手の形状を考えると、蛸というより、八岐大蛇のイメージかもしれませんが。
 「蒔人、芳香、麗、翼、魁……これが父に出来る、ただ一つの事。滅却せよ、殲滅すべし、冥獣帝ン・マ!」
 ブレイジェルは最大出力のハイパー魔法斬りを放ち、崩壊していくインフェルシア、 そしてン・マ――どさくさ紛れにバンキュリアも瓦礫の下に倒れ、ブレイジェルは放出したエネルギーとン・マの消滅に呑み込まれていく……。
 「子供達、聞こえているか、母さんは、い――」
 長らく片目だけのご出演だったン・マ様、全貌を現したかと思ったら、まさかの出オチ!
 大ボスクラスと思われた存在がこんな酷い扱いを受けたのは、『電磁戦隊メガレンジャー』のジャビウス1世陛下以来でしょうか(笑)  ジャビウス1世陛下に至っては、戦隊に認識すらされず、誰とも戦わずに身内に消されたので、たぶん、戦隊史上最低の扱いだけど!
 レジェンドパワーが戻るも、呆然と座り込み、或いは立ち尽くす小津兄妹。ここで、魁が手前側で立ちっぱなしなのと、 背後で座り込む4人の中で兄者が真っ先に立ち上がる、というのが良かった。
 桃「せっかく……会えたのに……」
 青「なにも言えなかった。ありがとうも、ごめんなさいも」
 緑「父さんだもの……伝わったはずさ」
 黄「きっと……そうだな」
 赤「俺……もっともっと強くなる。そして、父さんみたいになるんだ」
 そして勇気の絆は繋がっていく……と、色々ありましたが、ここは良かった。
 最後まで単騎特攻で天空聖者無双を貫いたブレイジェル決死の斬撃により、冥獣獣ン・マは倒れたのか……インフェルシアは完全に滅びたのか……?  サンジェルの一撃を受け砂となって消滅していきながら、メーミィ/ライジェルは不吉な予言を言い残す。
 「ふふははは、大いなる獣滅びる時、打ち鳴らされたる鐘、怒りと災厄の神々を呼び覚ます――インフェルシアの神々が甦るわよ」
 ン・マ様は駄目押しされた感じですが、その背後には更なる恐怖の存在があった! インフェルシアの神々とは何者なのか、 クズ母は本当に生きているのか、一つの再会と戦いを終えたマジレンジャー、次回、新展開。
 ン・マ様まさかの出オチから、新たな闇の出現へ。敵のボスを倒したと思ったらもっと凄いのが居た! というのは、 久しく見なかった構成のような気がしますが、作劇としては70年代から一周回った感じでしょうか(笑)

◆Stage.35「神々の谷〜マジ・マジ・ジジル〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:前川淳)
 神々、大挙登場で、OPの「○○の声」が大変な事に。
 「お父さんには、もう会えないけど、お母さんには、生きてるなら会える筈!」
 母存命がわかった途端、父生存の可能性とか考えもしない兄妹、割とクール(笑) だが、麗がどんなに母の事を占っても、 水晶玉は何も映さない……果たして母は本当に生きているのか?
 あの父親の言葉を信じていいのか?
 ヒカル先生は魁と翼の記憶を読み取り、過去のクズ母出現シーンにアクセスすると、クズ母が確かに生存しているという確証を得、 クズ母の思いが強く残っている場所へ行こうと提案。ウル馬と巨大母が戦った場所へ向かうと麗の記憶を読み、2話の戦いにおいて、 ウルザードは巨大マザーを倒したのではなく、そう見せかけてどこかへ転送していたという事が判明する。
 母の氷の矢を受けて、一瞬、呪縛転生が解けていたそうですが、どこまでも、困った父。 一瞬でも呪縛を脱して咄嗟にクズ母を救ったダメ父凄い! というよりも、一瞬目覚めたのにその後延々と迷走していたのか…… という方が強い(^^; これには、そもそも呪縛転生の元であるン・マ様の描写不足、という要因もありますが。
 ウルザード関係は、多少の揺らぎが出る可能性も入れつつ基本的な部分(正体と母との関係)は初期から仕込み通りだと思うのですが、 上記のような印象含め、伏線が綺麗に繋がっている感動が全く無いのが困り物。結局、ウルさんの使い方が悪すぎた、 という所に集約されるわけですが(^^;
 一度は諦めかけるも、ヒカル先生の励ましもあって勇気を取り戻した麗は、強化占い魔法をDL。遂に水晶玉に映った母は、 暗いオーロラと茨に囚われていた……。
 その頃、瓦礫の下から復活したナイとメアは、崩壊したインフェルシア本拠で、古ぼけた一冊の本を発見する。 そこに記されていたのは、これまでの戦いの記録……と、本編では未使用のものも含めて通り名とともに冥獣(人)の撃破シーンを振り返り、 ヒカル先生の記憶リーディングと合わせ、総集編というほどの尺は使っていないものの、ここまでのおさらい。
 冥獣(人)の撃破シーンは、数体かと思ったら全部やりきってしまい、非常に切ない事に(笑)
 まるで目にしたかのようにこれまでの戦いを綴ったこの本は、もしや預言書なのか? 先を読もうとしたナイとメアは、 突然勝手に動きだした本を追いかけている内に神々の谷へと入り込み、ン・マの封印により目覚めた、インフェルシアの冥府神と対面する。
 巨大な冥府神が次々と登場してバンキュリアを翻弄する、というのは面白い見せ方。
 また、壮絶な出オチを見せたン・マ様は冥獣体であり、完全体ではなかった、というようなフォローが入ったので、再登場の目もありでしょうか。
 獣→人と来て、遂に神が登場し、元々そういう傾向ではありましたが、一神教世界観で堕とされた神々との戦いという構造がより強くなりました。 最強ではないようですが、主導しているのがダゴンだったり、ン・マ様のデザインと合わせて、暗黒神話もハイブリッド。
 怒れる邪悪な神々は、ピラミッド(南米風)に乗って地上へと顕現。
 「我らは冥府10神。神々に背く罪深き者どもに、裁きを下さんと現れるなり」
 挨拶代わりに軽く地上を薙ぎ払う10神に対し、マジレンジャーはマジレジェンドとなって突撃するが、 たった一撃であっさりとやられてしまう。神託を下し終えたピラミッドは冥府へと帰還し、例の如く例のように、 実力差など関係なく勇気でぶちのめしてやるぜ! と意気上がるマジレンジャーだったが、それを止めるヒカル先生。
 「君たちはインフェルシアの神々と戦ってはいけない」
 果たして、ヒカル先生の真意とは――? 一気にグレードアップした敵に対してマジレンジャーの戦いはどうなるのか。そして突然、 囚われのヒロインポジションという予想外の攻撃を仕掛けてきた母の行方は!?
 これからが! 本当の! ヒロイン争奪戦だ!!

→〔その6へ続く〕

(2014年10月15日)
(2019年11月24日 改訂)
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