■『魔法戦隊マジレンジャー』感想まとめ3■


“神秘のちから 身にまとい
謎めく夜へ 羽ばたいて行け”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『魔法戦隊マジレンジャー』 感想の、まとめ3(15〜21話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔総括〕


◆Stage.15「花嫁の兄〜ジルマ・マジ・マジュナ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:横手美智子)
 「だーい発表! わたくし、小津芳香は、結婚いたします」
 芳香の突然の宣言と、やってきた派手でノリの軽い彼氏・テツヤに、兄者、大激怒。
 「帰ってくれ! 君に食わすアニキサラダはない!」
 兄者の反対を押し切って、どんどん進んでいく結婚式の準備だが、実はその裏には一つの事情があった。 テツヤが蟲毒房三冥獣最後の1体スケルトンによる赤いドクロの呪いを受けており、生命力を失って消滅してしまう運命にあったのだ。 消滅の前にせめて最高の幸せを……と結婚式の準備を進めながら、同時にスケルトンを探して街を走り回る芳香。結婚式当日、 事情を知った蒔人は、妹に幸せな結婚式を挙げさせる為、1人、スケルトンへと立ち向かう。
 意固地になった兄者が話を聞かないのは仕方ないとして、 人ひとりの命がかかっているのに芳香が下3人に事情を説明しないのは極めて不自然。 また全てを知った兄者が人ひとりの命がかかっているのにこれもまた単独でスケルトンに挑もうとするのも激しく不自然。 上2人の絆を描こうとするあまり、「人的被害」に対する劇中人物のリアリティがずれ、「物語を転がすギミック」としてのみ使ってしまうという、 典型的なやってはいけない展開になってしまいました。
 特に今作の場合、序盤から一貫して被害描写を描いており、今回も冒頭で呪いで消滅する人間を描いてわざわざ強調しているので、 言い訳がききません。
 今作の抱えている危うい部分を、思いっきり踏み抜いてしまった形に。
 シナリオ、演出、ともに配慮不足。
 クライマックスではマンドラから連絡を受けた芳香が兄者の元に駆けつけるのですが、ただ芳香にウェディングドレスを着せてみただけで、 コスプレものとしても面白さは今ひとつ。“家族”テーマの戦隊として、“恋”や“結婚”という要素の仕込みはやはり意図的のようですが。
 高い再生能力を持つスケルトンを、兄者を弾丸にした人間大砲・ハッピーウェディングボンバーで撃破し、巨大戦に突入。 マジキングの攻撃を受けても再生するスケルトンに対し、魔法配給センター、「絶対ぶっ殺すぞぉ!」に反応する(笑)
 スケルトンは新魔法・マジカルシャワーにより、上空から核の炎で再生不能なレベルまで灼き尽くされ、焼却処理。 ……名前ファンシーですが、今までで最も殺意の高い魔法です。
 スケルトンが倒れた事でテツヤの痣は消え、幸せな結婚……よりはまだしばらくバカップルのままでいいか、でオチ。 演技でもなんでもなく、芳香×テツヤは、本物のバカップルというのは、凄いといえば凄い(笑)
 かくして、さしたる脅威という描写もないまま壊滅してしまった蟲毒房三冥獣だったが、スケルトンが大暴れしている最中に、 インフェルシアは遂に<門>の鍵を発見していた――次回、急展開。

◆Stage.16「門の鍵〜ウザーラ・ウガロ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:前川淳)
 思春期、年上の女に引っかかる。
 インフェルシアが見つけだした<門>の鍵――それは記憶を失った、うら若き女性であった。 ナイとメアに襲われる鍵の女を助けたマジレンジャー。魁は彼女が、母の子守歌――すなわちマジトピアの音楽を歌っているのを目撃。 とりあえず小津家に招かれた女は、ブレスレットの鈴から「リン」と名付けられるが、 黄色の薬で記憶を取り戻すのを拒否して飛び出していってしまう。
 記憶を取り戻すのを嫌がった……というよりも、連れ込まれた家で目つきの悪い男手製の薬を飲まされるのを怖がった、 に見えなくもない。
 リンの涙にころっと転がされた末弟は、自分達の都合ばかりで取り戻したくない辛い記憶を甦らせようとしていた事を反省し、 リンが見つめる空――雲の上へと魔法の箒に乗せて連れて行く。
 末弟は、上に姉が2人居る割には、女性への幻想を抱えている辺りが、純粋な心の持ち主という事で良いのでしょうか。
 次兄はそんなもの、10年以上前に捨てていそうなのに(笑)
 黄色の作った薬を、勇気を出して改めて口にするリン。だがそこへ、リンを逃がしてヤカン男から制裁を受けるも、 ウルザードの魔法で強化されたナイとメアが襲撃する。いつも台詞もナイの後追いのメアが、巨大なガトリングガンで大暴れ。
 ゴスロリ+ガトリングガンというのは、実に趣味的ですが、開き直った格好良さはあります(笑)
 「クイーンバンパイアに同じ技は二度と通用しない」理論により、バンキュリアは暁の結晶さえ無効化し、 銃弾の雨を浴びて倒れ伏すマジレンジャー。バンキュリアの銃撃はリンを捉えるが……記憶を取り戻したリンは青白い光に包まれ、 銃弾を無効化する!
 そして夜の闇の訪れとともに、アラビア風衣装に早き替えするリン。
 「冴える月影のエレメント、天空聖者・ルナジェル!」
 その正体はマジトピアの関係者も関係者、これまで姿を見せなかった、天空聖者そのものであった!
 ルナジェルの杖の一振りでバンキュリアは大ダメージを受け、マジレンジャーのFFキックで撤退。強力な魔法使いの登場に、 共に戦おうと手を差し伸べる魁だったが……
 「貴方は、魔法使いの戦士としては甘すぎる。そんな事では、インフェルシアには、勝てない」
 すちゃらか母によって半強制的に魔法戦士にされたマジカル5兄妹の前に、ハードモードの鬼軍曹・降臨。次回、 地獄の教練が始まるのか?! そしてルナジェルの覚醒に激しく反応を示したン・マ様は何を思うのか――。
 なお今回、これまでのインフェルシアの嫌がらせ活動は全て、「ン・マ様の直観」に従い鍵の反応がありそうな所に行われていたという事が明かされました。 麗の占いより遙かに精度悪いぞ直観……。
 6番目の戦士というよりイベントキャラっぽいですが、母といいルナジェルといい、女性戦士の存在が強調されているというのは、 作品として面白い。果たしてルナジェルは、母よりまともな性格なのか、それとも伝統に則り、マジトピア関係者はみんなアレなのか。
 「口で呪文たれる前と後に『アイ マム』と言え! 分かったかウジ虫ども!」
 「「「「「イエス アイ マム!」」」」」
 「声が小さい!」
 「「「「「イエス アイ マム!!」」」」」
 次回、どん底に落ちた株価を取り戻すべく、ウルザード、久々の地上出張。

◆Stage.17「優しさはいらない〜ウーザ・ドーザ・ウル・ウガロ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 ルナジェルさんにより、5兄妹の父の天空聖者としての名が、ブレイジェルと判明。
 どうもフィルターかかりまくった感じのあるルナさんの回想によると、 ブレイジェルは優しさを捨てた戦鬼で極めて優秀な魔法使いという、パーフェクト・ソルジャーだったとの事。
 そして15年前――冥獣帝ン・マが地上への大規模進行を企て、冥府門を作成。
 「勇敢なブレイジェルはたった1人でその冥府門に飛び込み……」
 いやそれ単に、頭空っぽで前のめりなだけでは……。
 そしてブレイジェルの命令で、外から鍵魔法で冥府門を封じたのが、ルナジェルであった。
 「最後まで、厳しい人だった。常に冷静で、戦いに優しさなど持ち込まない。あなた方のような甘さは、微塵もなかった!」
 …………いやですからえーと……ルナさんの好意フィルターが三重ぐらいにかかっているだけで、 ただのバトルジャンキーのような……(笑)
 鍵魔法は、自らの命を鍵とする、強力な封印魔法。後はルナがマジトピアに引きこもってしまえば封印が破られる心配は無い筈だったが、 ルナは天空聖者の裏切り者ライジェルの襲撃を受け、気がつけば記憶を失って地上を彷徨っていたのだった……。
 そこへ闇の力を蓄えたウルさんから校舎裏への呼び出しがかかり、インフェルシアに魔法使いが居るならばライジェルに違いない、 と出撃するルナ。共に戦おうと同行を申し出る5人だが、「勝てない。優しさを捨てない限り」と、 ルナの作り出した結界の中に吸い込まれてしまう。
 結界の中に吸われる時、なんか兄者が凄い側転している(笑)
 「噛みしめなさい、お父様の思いを」
 ルナさん曰く、そこは戦いに優しさを持ち込みすぎる5人の厳しさを試す場所だそうですが…… 5人に必要なのは優しさを捨てる事ではなく、頭を使う事のような気がしてなりません。
 ウルザードとルナジェルは激突し、戦いは巨大ルナジェル(天空体)と、ウル皇帝の巨大戦へ。 巨大ルナジェルは拘束魔法から必殺のムーン八つ裂き光輪を放つが、ウル皇帝はそれを弾き返す。
 「なかなかやるな。大いなる力を得る前の俺なら、やられていたかもしれん」
 と恥ずかしい告白が入るのですが、ウルさんの、「闇の力が! 大胸筋に!  溜まってきたぞぉぉぉぉぉ!!」本人の自己申告だけなので、 どうにも物語の説得力が足りないのが困ったところ(^^;
 そんな大いなるダークパワージャベリン暗黒魔法斬りが炸裂し、人間の姿に戻ったルナジェルに迫るウルザードの刃。
 どう言いつくろっても、わざわざ戦力を削ったルナジェルの戦術ミスで弁護のしようがありません。だがその時、 結界を脱出した5人が駆けつけ、危機一髪の所でウルザードを吹き飛ばす!
 一見、誰か1人が犠牲にならなければ脱出できないような結界……だがそれは、勇気を持って挑めば、 全員が脱出できるという仕掛けであった。……この結界部屋の目的が戦士としての勇気や覚悟を試す為、 というならまあわかるのですが、ルナさんは「どうせあいつらでは脱出できないだろう」と思っているし、 魁が突破した根拠が「優しいリンがこんな非道な事をするわけがないからブラフだ」というものな為、微妙がピントがずれた感じに。
 優しさを否定しているけどリンは本当は優しいし、父ブレイジェルも優しさを捨てたわけではない、 と末弟が年上の女にぐいぐい攻めていき、なんかもう、勇気と無謀と優しさがミンチ状態で、 魔法のメンチカツが出来そうです。
 「ブレイジェルに、優しさが……?」
 「うん。リンの未来を守ってやりたいっていう、優しさだよ。だから、自分は門と一緒に封印されても、 リンが生きられるやり方を選んだんだ」
 えええええええええええ?!

 鍵魔法、かけた本人の命がけだったのでは。
 ……いやまあ、無事にマジトピアに帰れれば、一生VIP扱いで豪遊生活が待っていたのかもしれませんが。
 泣きの入るルナさんの手を魁が取ったその時、ブレスレットの鈴が犬ビームで砕け散り、浮上する冥府門。 ウルザードはルナをさらって消え、マジレンジャーの前には、門についていた冥獣ガーゴイルが立ちはだかる。
 巨大な冥府門を背景にしての、ガーゴイルの高速移動の演出は格好良かった。
 そして待ちきれないヤカン様、門の隙間から無理矢理マジキングに攻撃(笑)
 前後を挟まれ、窮地に陥るマジキング。果たしてこのまま、冥府門は開いてしまうのか。今、地上に最大の危機が迫る!
 一気に事態が大きく動きだしましたが、改めて今作の構造的問題点は、最初に「勇気」と「無謀」の違いに言及したのに、 その後の劇中で何をもって「勇気」とするかの基準がすべからく適当な事。そしてその適当な「勇気」をキーに物語を転がしてしまうので、 果てしなく芯がしっかりしないままである事。結果、登場人物の言動と行動がどうしてもふわふわしてしまいます。 何とかここの芯を入れて欲しいものなのですが。
 次回、白熱するブランケンとウルザードの、どっちが先にリタイアするかチキンレースの行方や如何に?!

◆Stage.18「力を合わせて〜マージ・ジルマ・ジー・ジンガ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 自らの命に防御魔法をかけていたルナジェルの息の根を止める為、解除魔法をかけるウルザード。一方、 何だか自力で出てきそうだなぁと思ったら、本当に無理矢理、扉の隙間をこじあけて地上に出現するブランケン。
 ブランケンはマジキングの天空魔法斬りを弾き返すという凄まじい力を見せ、その必殺剣を受けたマジキングは合体・巨大化が解除されてしまう。 ルナジェルの生命力が失われていくに従って冥府門から溢れた闇が地上を包み、ン・マ様のエネルギーを得たブランケンは大暴れ。 その光景を見て打ちひしがれる弟妹達を、奮い立たせようとする兄者。
 「馬鹿やろぉ!! ……兄ちゃんだって怖い。でもこんな時こそ頑張るんだ。頑張れば、これが絶対最後の戦いになる。 母さんや父さんが守ろうとした平和は、もう、すぐそこなんだ。
 ――俺たちの武器はなんだ!
 母さんが教えてくれた、俺たちの一番の武器はなんだ!」

 「……俺たちの武器は……勇気」
 「俺たちが信じ合えば、家族が、兄妹が、力を合わせれば、出来ない事なんて何もない!!」
 ここで兄妹を鼓舞する役が、主人公属性の末弟ではなく、兄者だったのは良かった所。
 ストレートな燃え展開なのですが、改めて気付かされるのは、今作は要所要所でこれをやるのではなく、毎度根っこはこれなので、 見ていてどんどん、冷めていってしまうという点(^^;
 「俺たちの武器は勇気だ!」というのは本来、1クールに1回程度が限界だなぁと。
 兄姉はマジドラゴンとなってガーゴイルを瞬殺するが、ヤカン様の攻撃で魔人に分離してしまう。 その間にリンの救出に向かった末弟は解除魔法の完成を阻止し、異空間で決闘に望む、赤とウルザード。
 ボクシンググローブで決闘に臨むのはどうなのかと思ったのですが、ここはなかなか、アクションに気合いの入った一騎打ち。 背後から組み付かれたウルさんが、敢えて打撃から首投げに行く辺りとか、好き。
 カウンターでマジパンチを破壊された赤は剣を取り出してちゃんばらに移行し、魔法忍法火の鳥でアタック。 直撃を受けてよろめくウルさんだったが、爆炎が張れると平然として、赤を嘲弄する。
 ……前回、ルナジェルの攻撃でも結構よろめいたり呻いたりしていましたが、 本当は痛いけどやせ我慢しているのか、相手の打撃を敢えて受け止めるプロレス主義なのか。
 「言った筈。魔法は力。そして真の力は闇からこそ生まれる。闇の力に勝るものなど、どこにもないのだ」
 必殺攻撃を放ち、赤を追い詰めるウルザード。
 前半戦のまとめのような前後編なのでついでに言及しておくと、ウルさんのこの「闇の力がぁ、上腕二頭筋に溜まってきてるぞぉ!」は、 概ね自己申告なのも問題なのですが、「勇気」と「闇」が特に対抗関係に無いというのも困ったところ。言葉としてもそうですが、 劇中で「勇気」と「闇」の対立が特に描かれていないので、どうしてウルさんが「勇気」に対して「闇」を持ち出しているのか、 さっぱりわからないまま18話まで来てしまいました。
 とにかく今作は、キーワードの劇中における定義付けと、キャラクターへの紐付けがおざなり。逆に言えば、 劇中での定義と意味がしっかり描かれていれば、多少変な物でも、物語を動かすキーワードになりえるのですが。 最初にマジックワードを持ち出しすぎて、その辺りが凄く杜撰になってしまいました。「勇気」というキーワードが悪いのではなく、 劇中における「勇気」の定義づけが曖昧なのが悪い。
 「そんな事ない。俺の力は勇気だ。兄ちゃんや姉ちゃん、それに、母さん父さんが、家族のみんながくれる勇気だ。 溢れる勇気があれば、魔法は無限大になるんだ!」
 その為、決め台詞としては悪くないのだけれど、盛り上がり切れない。
 「戯れ言を言うな! くたばれぇ!」
 「勇気の爆発だ!! マジ・マジ・マジカ!!」
 赤は文字通りの爆発でウルザードを後ずさりさせると、大上段からの特攻火炎斬り・レッドファイヤーミラクルフィニッシュを炸裂させ、 ウルさん大爆発。ルナジェルの解放に成功するが、ウルさんは復活して帰宅。
 「いずれ必ず、おまえのその炎の力を、闇の力に変えてやる」
 「あの男の、潔い戦いぶり……ライジェルではないのか。だとしたら、いったい……」
 天空聖界では「逃げ足が早い」のを「潔い」と言う模様。戦士の世界なので、「退却」→「転進」とか、 複雑な言い換えが色々あるのです。
 前半のヒーロー再起に続き、燃え展開なのですが、ヒーロー大逆転というより、 ウルザードが相変わらず役に立たないように見えるのが、何とも困った所です(^^; どうしてウルザードは、 もっと大事に使わなかったのか。
 ウルさんの馬が2人を決闘空間から脱出させ、マジトピアへ帰国するルナジェル。これにより冥府門が沈んでしまい、 ヤカン様、帰宅困難者に。
 闇の力の供給が途絶えた事で弱体化したのか、ファイアー皇帝のちょんまげアタックを受けてよろめくヤカン。 強引に出番の作られたファイアー皇帝でしたが、直後にマジキングに合体してしまった為、本当に一瞬の見せ場でした。この世界では、 家族の愛情 >>> 友情なので、仕方がないのです。
 新たな魔法がダウンロードされ、マジキングが母の凍結魔法の力を得る。ここでマジマザーのイメージ映像がマジキングに重なるのは良かった。
 「キングカリバー・魔法家族斬り!」
 心を一つにした5人の兄妹と母の魔法力が重なって、氷の魔法剣がブランケンを両断。暴れん坊将軍ブランケンは、 一番槍で敵陣に突っ込んで敢えなく討ち死にという、時々いる中世の偉い人のような最期を迎えるのであった。
 ヤカン様が……ろくに役に立たないまま……本当にお陀仏してしまった……(^^;
 再び冥府門は閉ざされ、地上最大の脅威はひとまず去った。凱旋した兄妹は、隠し部屋に母の幻覚を見る。 それは クスリ 魔法の奇跡の為せる技だったのか……。
 一方、ウルさんはヤカンの剣を回収。
 「さらばだブランケン。ン・マ様の牙、ヘルファング、俺が引き継ごう」
 ああ、そういう事だったのか。
 冥府門からブランケンの剣にン・マ様のダークパワーが注がれる描写が何度かあったのですが、面白いネタだし、 もっと早くからアピールすれば良かったのに(^^; やられ間際に急に背景設定を語り出したり、存在の全く活かされない、 可哀想な幹部キャラでした。……それはそれとして、その剣、盾に収まるのか。
 物語が大きく動き、大ピンチ、大逆転、幹部退場と、ストレートな盛り上げ展開で映像的にはかなり頑張り、 シナリオも抑えるツボはさすがに抑え、一山の前後編としては及第点。一方で、そのストレートな展開ゆえに、 今作の芯の弱さが浮き彫りになるエピソードとなりました。
 今作ここまでの3大ガンだった「勇気(母親の悪影響)」「ウルザード」「ブランケン」の内、ブランケンが切除されたので、 ここから少しでも立ち直ってくる事を期待。

◆Stage.19「魔法のランプ〜メーザ・ザザレ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:横手美智子)
 “最高に大切で貴重な宝物”が、
 「どんな男も魅了するビーナスミスト」
 とか
 「飲んでも飲んでも酒が減らないバッカスのツボ」
 って、

 それでいいのかマジトピア。

 ……いや、それでこそマジトピア感も凄くしますが。
 そんな、色々ダメなマジトピアお宝大図鑑に芳香と魁がギラギラした視線を向ける中、麗は水晶玉占いで、暗く禍々しい気配と、 太陽みたいな光の二つを感じていた。
 そこへ強力な冥獣反応が感知され、ナイとメアの山中ライブに誘導された5人は、洞窟に張られたマジトピアの結界を破ってしまう。 バンキュリアは洞窟の奥に眠っていたミイラを、5人は砂に埋もれていた魔法のランプを回収。魔法のランプから出てきたのは、 何でも一つだけ願いを叶える魔法猫・スモーキー。
 3話以来のミュージカル調演出で、歌って踊るスモーキー。5人は「インフェルシアをやっつけたい」と告げるが、帰ってきた答は、 「無理!」。
 これはいわゆる、魔神の力を越える望みは叶えられないというやつかと思われますが、 労働に対する対価としての報酬を求めるスモーキーを、もてなす兄妹。アニキ農場特製最高級マタタビ……って怪しすぎますが、 本当にマタタビなのか、それ。
 「インフェルシアがどんだけ強いか知ってんのかぁ?」
 「どれだけ強かろうが、俺たちには勇気って武器がある。だから絶対勝つ!」
 彼我の戦力の検討と、それに基づいた戦略の構築ぐらいしような!
 まあ兄妹に関しては、何の前情報も無しに気がつくと最前線に立っていたので、概ね、

 クズ母が悪い

 のですが。……色々境遇を考えると、戦略とか戦術とか考えている場合ではなく、 マジでハイになるものをキメながら、「勇気があれば絶対勝てる!」とか言い続けていないと正気など保っていられない、 というかむしろ正気では無理だと、同情すべきであるのかもしれません。
 「俺たちの武器は勇気だ!」とか言い出すのも、その「勇気」が何なのかよくわからないのも、 フロントラインで興奮剤投入しまくりな人々の発言と思考だと思うと、納得できない事も無い気がしてきました(おぃ)
 ……多分、作り手の意図とは違うけど(笑)
 で、作劇論で言えば、スモーキーの台詞に説得力が無いと、返す魁の台詞も活きないのですが、今作、 実は全体的に苦戦描写がゆるめの上に、多少苦戦しても大体その回の内に勇気承認による新魔法配信で適当に片付けてしまう為、 あまりインフェルシアの脅威には説得力がありません(^^;
 まあ、ここまでインフェルシアは戦力を小出しにせざるを得ない事情があったので、総合力では遙かに強いという事なのでしょうが、 それを言い出すと魔法の配給元は何をしているのかという話にもなってしまいますし、この辺りは今作の、 総合的な戦力ヒエラルキーの見せ方の下手さがまた出てしまった所。
 「勝てにゃいケンカは最初からするにゃ」と、インフェルシアとの戦いに及び腰でやる気の無いスモーキーだが、 そこでかつてない強力な冥獣反応が検知される。
 嫌がるスモーキー入りランプを強引に連れて反応の元へ向かった5人の前に現れたのは、インフェルシアの新たな幹部、 魔導神官メーミィ。その正体は、15年前の戦いでマジトピアを裏切り、 ある天空聖者によってミイラの姿で封印されるもバンキュリアによって回収され、ン・マの魔力によって甦った元天空聖者ライジェルであった。
 「魔法は欲望をかなえる為のもの。欲望が強ければ強いほど、ン・マ様はお力を分けてくださる。で、あれば、 我はこの地上界を、ン・マ様に差し出しましょう」
 メーミィはベースデザインは包帯巻いたミイラながら、扇やマントは派手という、アンバランスを狙ったデザインで、 口調が若干おかまっぽいのが特徴。口が両頬の辺りまで、裂けた様に歯が並んでいるのが格好いい。
 元天空聖者であるメーミィは、圧倒的な魔法力を振るい、マジレンジャーを叩きのめす。
 新幹部のお披露目なので前幹部比2倍ぐらいに強いのですが、そういえば自力で地上に出ているし、騒ぐだけ騒ぎ、 自力では地上に出られず、挙げ句先走って帰らぬ人となったヤカンとは、本当に何だったのか……。
 5人は巨大化したメーミィにマジキングで立ち向かうが、何と巨大メーミィの大きさはマジキングの十数倍で、 マジキングは軽く足蹴にされ、天空魔法斬りも指先一つで弾き返されてしまう。
 冥獣トロルや5人の魔人化に始まって、スケールをずらした戦いを随所で盛り込んでいるのは、今作の面白い所の一つ。
 巨大メーミィの攻撃に絶体絶命の危機に陥るマジキングだが、5人は勝利の為に、勇気を振り絞る!
 「そうだ、勇気を持って、諦めない限り!」
 「「「「「負けじゃないんだ!!!」」」」」
 繰り返しになりますが、しっかりと物語の流れを組んでさえいれば土壇場で勇気で踏みとどまったり大逆転するのは構わないのですが、 今作の場合、1から10まで勇気なので、どうしても安っぽくなってしまいます(^^;
 ちょうど前年の『特捜戦隊デカレンジャー』も、中盤以降に若干の軌道修正で「正義は勝つ」理論が猛威を振るった事がありましたが、 それでも、フォーメーション訓練の成果を見せるなど「正義は勝つ」以前の手段を描いていたのに対し、 今作は「勇気は勝つ」以外の手段を全く講じないので、パワープレイ、パワープレイ、更に、 パワープレイ。
 折角色々出来る「魔法」というギミックを持ち込みながら、むしろその魔法の存在ゆえに構成が単調になるという、 非常な悪循環に陥っています。
 まあ、企画的には、前年よりシンプルにしよう、という流れがあったのかとは思いますが、 シンプル通り越して大雑把になってしまったという(^^;
 「たく、しょうがねーにゃー。おまえらの勇気、受け取ったぜぇ!」
 強大な敵に屈しないマジレンジャーの勇気に感じるものがあったのか、スモーキーが巨大化。 スモーキーの猫騙しからの天空魔法斬りでマジキングは一太刀を浴びせ、ミイラにされた体が完調ではないメーミィは一時撤退するのであった。
 スモーキーは「インフェルシアをやっつけたい」という5人の願いを叶える為に協力する事を約束し、敵方に新幹部、 味方に魔法猫が参戦。――そしてカエルが、5人を見ていた。
 どうやら誰かの飼い猫らしいスモーキー。流れと予告を見る限り、どうやらその飼い主が追加戦士のようですが、とりあえず、 スモーキーの使われ方次第で、マンドラ坊やが大ピンチだ! 気まぐれで情報の出し惜しみとか、 している場合ではない!
 なお今回、残念騎士は前回の戦いの後に帰ってきていない、という事で、出社拒否によりお休み。多分今頃、 ニンジン持って馬を探している。

◆Stage.20「キスしてケロ〜ゴール・ゴル・ゴルディーロ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳)
 OP、ブランケンの所がメーミィと交替。真ん中に立っている残念騎士は、今回もお休み。
 明らかに銃っぽいデザインだったスモーキーのランプが、やはり銃になる事が発覚。 魔法力を込めて弾丸として打ち出せるマジランプバスターだが、赤は全く使いこなす事ができない。
 その頃、魔導神官メーミィは封印されていた冥獣人グレムリンのガリムを召喚していた。
 幹部交代とともに敵戦力も強化という事か、これまであくまで獣だった冥獣に「人」が付き、怪人が喋るように。 名称もグレムリン一族のガリムという事で、種族名に個体名が付く形に。恐らく予定通りのバージョンアップかとは思いますが、 これまで毎度バンキュリア(ないしナイとメア)が一緒に地上に出て作戦を説明しなければいけなかったので、 物語は転がしやすくなったかと思われます。
 そしてメーミィの当面の目的は、大勢の人間を生け贄にしてン・マ様の完全復活を成し遂げる事、 とここはさすがにこれまでを反省したのか、最初に所信表明(笑)
 かくて悪戯好きの冥獣人グレムリンが地上へと派遣され、集めた不幸をインクに変えるペンで、地面に謎の記号を描いていく。
 「喋るぞこの冥獣!」
 と、敵の変化への反応を入れたのは、良かった。
 これまでの冥獣と違う、トリッキーなグレムリンの攻撃に翻弄される5人は、トラップに引っかかって鉄骨の下敷きになりかけるが、 道端のカエルが放ったガラスの光に救われる。そして突然、麗の脳裏に響く
 (キスしてケロ)
 というセクハラ発言。
 「今日から家族の一員となった、カエルのヒカルくんでーす」
 命の恩人、と家でそのカエルを飼う事にする芳香だが、カエル嫌いの麗は大パニックに。子供の頃、 魁の悪戯で服にカエルを入れられて以来カエルがどうしようもなく嫌いな麗は暗黒モードに入り、カエルを捨てに行く(笑)  しかし粘るカエル、再び響くセクハラ発言。本当にカエルが喋っているのか、それとも濫用による幻聴か。混乱する麗は、 カエルを池に追い払おうと地面を棒で引っ掻いた事で、グレムリンが描く謎の記号の正体に気付く。グレムリンは地上に、 大規模な魔導陣を作成しようとしていたのだ。
 これまでと一風変わった、喋る敵の知性に弄ばれる5人。カエルへのストレスから「ぜっったいに許さない!」 と暗黒モードで突撃した青は逆にピンチに陥るが、命の危機を救ったのは、そこへダイブしてきたカエル(笑)
 前回今回と、もっと適当に済ませそうなカエルに、しっかりと尺を取った使い方は秀逸。
 カエルは麗を救うも地面に叩きつけられ、皆が背景で一生懸命戦っている中、カエルを手に涙を浮かべる麗。カエルは大嫌い、しかし、 このカエルは命がけで自分を救ってくれた……。
 (キスして……ケロ……)
 この期に及んで、しつこく響くセクハラ発言に覚悟を決めた麗は、カエルにそっと口づける――すると溢れる金色の光、 それが晴れると立っていたのは王子様……ではなく、
 「君のキス、しっかり受け止めたよ」
 髪をふぁさぁっとかきあげる、軽くない変質者であった。
 兄者、今回は、顔面パンチでも世間はきっと許してくれます。
 桃「え?! カエルが、イケメンに?!」
 「僕は天空聖者サンジェル」
 兄妹を救い麗に付きまとっていたカエルの正体、それは15年前、裏切り者のライジェルをミイラにして封印するも、 ライジェルの魔法を受けてカエルにされてしまった天空聖者であった。
 「僕が変えられた魔法を解くには、青の魔法使いにキスしてもらうしかなかったのさ」
 ……人格とかの問題ではなく、色の問題なのか。
 という事は、もし兄者が青(以下略)
 (或いは、最初から麗狙いだったのに青でないといけなかった、ともっともらしい理由を付けた疑惑)
 「カエルの姿で見ていたが……例え完璧でなくても、今持てる力の全てを出し切り戦う。その勇気には好感が持てた。でも、 正直言って君たちの攻撃には無駄が多いね。力みすぎて魔法力が正しく発揮されていない。――まあ見ていたまえ。こういう戦い方もある」
 雑魚を呼び出したグレムリンに対し、5人の前に進み出るサンジェル。
 遂に、真っ当な(?)、指導者が?!
 「天空変身! ゴール・ゴル・ゴルディーロ! 輝く太陽のエレメント、天空勇者マジシャイン」
 サンジェルは、おまけコーナーの解説によると、「天空携帯グリップフォンで変身のマジチケットを改札」して変身。 確かにカードに穴が空いていますが、使い切りなのでしょうか。そして色々、アイテムが悪魔合体しすぎ(笑)
 CGの太陽を鷲掴みにしたり、派手なエフェクトの変身シーンで誕生したマジシャインは、 青いボディに黄金の装甲を被せたような金メインの色彩に、裏地が赤の黄金マントという、ど派手なデザイン。
 『ジュウレンジャー』以降、追加戦士のデザインで金のあしらいが入っているのは割と多いですが、ベースが金、というのは多分初。 中途半端にせず、やりきった感じが、なかなか格好いい。
 何故か「天空勇者」とやらを名乗っていますが、これは、「魔導騎士」みたいな自称なのでしょうか。 メーミィも「魔導神官」を自称していますが、「勇者的にセクハラはありだ」みたいな自分ルールを発動するのか。
 刑法的に不安の募るシャインは、マジランプバスターを使いこなし、群がる敵を粉砕。立ち回りしながらノールックで誘導弾を放ち、 次々と雑魚を蹴散らしていくのは非常に格好良かったです。エネルギーのチャージの為にランプをこするのは、 効果音も含めて間抜けでしたが(笑) 仕草そのものより、効果音が間抜けなのですが、もう少し格好いいSEは無かったのか、ランプ。
 最後はグレムリンの逃亡を阻止し、マジランプバスターからスモーキーを打ち出すスモーキーシャイニングアタックで撃破。
 名前といい、輝くスモーキーが敵に突っ込んでいく絵といい、凄くシャンゼリオンですが、なぜシャンゼリオン(笑)  (※『超光戦士シャンゼリオン』(1996)の主役シャンゼリオンの基本必殺技が、光になって敵に体当たりをする「シャイニングアタック」)
 90年代の怪作はさておき、マジシャインのあまりの強さに、呆然とする5人。
 「「「「「まじ?!」」」」」
 「今日の授業は、これまで」
 地底冥府では、厚底神官が、仇敵の復活を確認。
 「おのれサンジェル……いやマジシャイン。貴様だけは許しておけぬ。我が八つ裂きにしてくれます」
 ……実力はあるのに、復讐にこだわって失敗するパターンが目の前にちらついてきたけど大丈夫か(笑)
 そして――
 「今日から僕が君たちの魔法の先生だ」
 小津家の魔法部屋で、にこやかに宣言するマジシャイン。
 「インフェルシアと戦う為には、正式に魔法の使い方を学んだ方がいい」
 20話にして、ようやくそこなのか(笑)
 カエル時代の芳香の「今日から家族の一員」発言を根拠に、住み込みで魔法を教えるというシャインに、 青はともかく赤が凄く不満顔なのですが、どうして。ルナジェルにはにこやかに手を差し出して「今日から一緒に戦おうぜ!」 とか発言していた記憶があるのですが、結局、山崎さんとかリンとか、ああいう感じの女子が好みのタイプという、 思春期の溢れるパトスの産物に過ぎなかったという認識でいいのか、いいのか。
 セクハラ発言を重ねるサンジェルもといヒカルに、暗黒麗は凄い顔で平手打ちを放つが、兄者に誤爆。かくてアブない家庭教師が、 小津家に住み着く事になるのであった。
 戦略的には必要な存在だけど、地上界には、警察があるので気を付けてください。
 「――逮捕された男は、“魔法使いのヒカル”を自称し、「僕は勇者だから他人の家のタンスを漁っても許されるんだ」 などの意味不明の供述を繰り返しており、警察では同様の事件との関連について慎重に捜査を進めています」
 という未来がそこはかとなく心配です。
 前回の、新幹部、新アイテム(&キャラ)登場に続いて、新戦士、新武装、敵怪人バージョンアップ、とドドっと新展開。 いっけん真面目系ポジションですが、飄々とセクハラ発言を繰り返す、キザでど派手な変質者サンジェルもといヒカルは、 駄目な方へ駄目な方へと邁進していた今作に、新風を吹かす存在として期待。特に、魔法使いの先達ということで、 マジレンジャーのおクスリキメてパワープレイ体質が少しでも改善されてくれると有り難い。あと、 今作の事なのでいつ崩れるのか不安ですが、マジシャインは格好いい。パワーバランスがややこしくならないように、当面、 ウルさんはお馬探しの旅でいいのでは。
 そしてシャインの呪文を知らず、情報提供キャラとしても存在価値を失いつつある、マンドラ坊やに明日はあるのか!
 ところで、天空聖者の名前はここまで、属性+ジェルなので、サンジェルは単純に太陽のジェルという事なのでしょうが、 「魔法」の絡む世界観でこの名前だと、どうしても「サン・ジェルマン伯爵」を想起するところです。むしろ、 サン・ジェルマンのイメージが先で、そこから天空聖者の名前が属性+ジェルになったのか。

◆Stage.21「魔法特急で行こう〜ゴー・ゴー・ゴルディーロ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:横手美智子)
 マジシャイン参加で、OPマイナーチェンジ。メインキャラの紹介シーンを完全に新規にするのは、ちょっと珍しいか。 映像が最初のバージョンままだと、時々、劇中では上手くなっているのにOPの表情が延々と強張ったまま、という事もあったりするので、 こういった撮り直しは嬉しい所です。
 魔法の実力で兄妹の敬意を勝ち得る犯罪者一歩手前でお馴染み変態家庭教師ヒカル先生。
 センスの良さを誉められた赤とか物凄い食いつきでべったりなのですが、前回の今回でこう繋げるなら、 前回ラストの兄妹の不満げな態度は全く必要なかったような(そもそも兄妹が天空聖者を嫌がる理由が無いですし)。一応、 青だけは他の3人(赤・黄・桃)より距離を置いた感じになっていますが、末弟の適当さがまた強調されてしまいました。
 一方、訓練で魔法センスの未熟さが露呈した兄者は、家庭内ヒエラルキーの下落に落ち込んでいた。
 兄者、「長男の責任感」に物凄くアイデンティティを依存しているので、相変わらず足下が崩れると打たれ弱い。 そういった軸がしっかりしているので、作中でのキャラクターの立ち方は一番なのですが。
 そんな兄者の様子を気にしたヒカルは、5人に課外授業を行う事に。それは、魔法で別次元にそれらしく作られた原始の世界で、 自分力(じぶんぢから)――人間の本来持っている力を鍛える事。
 別次元(マルデヨーナ世界)へ向かう手段として、魔法特急トラベリオンエクスプレスが登場。電車ギミックは、 アレの関係で盛り込むのは前提だったと思われますが、シャインがどうして改札で変身するのかは電車繋がりだった事が判明しました。 この人、自称:勇者で、本業:車掌なのでは……!
 5人はヒカルの魔法で皮の腰巻き一丁みたいなわかりやすい原始人ルックにされ、原始の世界でマジカルチケットを探す事になる。 なぜ原始人ルックかといえば勿論、ヒカル先生が麗に変なコスプレさせて楽しむ為です(断言)。
 マルデヨーナ世界の麗の活動は常時、変態カメラで録画されています。
 「頑張って、お兄ちゃん」
 ヒカルに声援を送られる蒔人だが、へたれモード一直線でさっぱり役に立たない。 チケットを探して彷徨う5人はややてきとーな感じのマンモスに襲われたり、食事もままならない状態でボロボロになっていき、 遂に麗が熱を出して倒れてしまう。マンドラの叱咤、パニック状態の文明人達、危険な状態に陥る妹……原始の世界で追い込まれたその時、 兄者の中に熱く脈打つ、ダイノガッツが目を覚ます!!
 「落ち着けぇぇぇ!!」
 覚醒した兄者は弟妹に手早く指示を出すと、そのサバイバル能力を遺憾なく発揮。麗を安静にする環境を整え、 水と食料の確保にも成功する。
 (センスが無くても、ださくても、それでも俺は俺だ。小津蒔人だ。兄ちゃんだ!)
 ところで、燃えないゴミ状態の蒔人をマンドラ坊やが叱咤する時にマンドラ坊やがまた例の「伝説の5色の魔法使いの歌」 を持ち出すのですが、それで少し気力が回復していた辺り、やはり何らかの条件付けが施された、マジトピア洗脳ソング疑惑。 マンドラ(燃えるゴミ)が蒔人を励ます所自体はいいシーンなのに、この歌の為に素直に受け止められない(笑)
 麗が回復したのも束の間、再びマンモスに追い詰められる5人だが、兄者、野生の咆吼でマンモスを仲間に。 マンモスの体毛の中に埋もれていたチケットを発見した5人は、元の世界へと帰還する。
 地上界では、冥獣人ベヒモスのベルダンがインフェルシアから送り込まれ、大地のツボに牙を打ち込んで地殻変動を起こそうとするが、 シャインがそれを阻止。そこにようやく馬に帰ってきてもらえたらしいウルさんが現れ、初顔合わせ。
 ウルさん曰く「元ヤカン将軍の剣を自分用に鍛え直していた」そうですが、一応、今後を見越した強化の理由付けか。また、 「5色の魔法使いを闇色に堕落させたい」的な事を言っており、何やら思わせぶりに語っておりますが、要するに、 正面から戦うと勝てないので路線変更したという事の模様です!
 またこれは、教師であるマジシャインとの対比にもなっていくのか。
 一度は逃亡するも再び現れたベルダンの前に立ちはだかるシャイン、そしてそこへ帰還する5人。
 「やっぱり自分力なら蒔人、君が一番だ」
 なんか、別の戦隊に入れそうな感じになりましたが。
 荒ぶるダイノガッツに目覚めた蒔人は、新たに配信された筋力増強の魔法でマッスル化。弟妹を怪力で投げつけ、 最後は肉弾攻撃でベルダンを撃破する。相変わらず、自分達の肉体を弾丸の代わりにするのが好きな兄妹ですが、 色々と感覚が鈍くなっているので、そうやって痛みを感じる瞬間が大切なのです。
 特殊能力をまるで発揮できないまま倒されたベルダンはメーミィの魔法で巨大化。それに対して、 マジシャインはトラベリオンエクスプレスを変形させる!
 「魔法変形ゴー・ゴー・ゴルディーロ――連結完了、魔法鉄人・トラベリオン!!」
 胴体内部が思いっきり空なのが気になるトラベリオンですが、鉄人の名にふさわしい、重量級タイプ。
 相手を蒸気で吹き飛ばす「スチームバズーカ」、脛から小型の列車を放ち線路で拘束する「リモートライナー」、 などの武装でベルダンを圧倒すると、最後は必殺の「デストラクションファイヤー」発動。
 胸からビームを出すのかと思ったら、火室(蒸気機関車の石炭を燃やす所) に吸い込んで焼死させるという、物凄く惨たらしい必殺技。性格が滲み出ています……。
 ただの変質者ではなかったヒカルの、出来る男の気配りに感銘を受ける兄者。ヒカルもまた、自分の師であったブレイジェルのように、 5人に魔法を教える事を改めて約束するのであった。そこにまさかの江里子さんが再登場して、蒔人の前でヒカルをナンパして、 というドタバタでオチ。一応、まだ付き合っていて、ホッとしました(笑)
 すんなりと教師ポジションに落ち着いてくれたヒカルが、今作に欠けていたパーツを埋めてくれた事で、物語がだいぶ落ち着きました。 今回も、なんやかやあって勇気承認→新魔法DLで敵を撃破、という構造自体は普段通りなのですが、 「問題点」「課題」「成長」という要素がはっきりとした事で、すんなりと納得行く形で収まりました。
 ただ基本、兄者回はあまり外れないので、他のキャラと絡んでも巧く流れるかが今後の課題。 兄者は一番キャラクターが立っているのに加え、他のキャラクターとの関係性も一番ハッキリしており、明らかに、 脚本のノリは兄者回が一番良いので。
 次回、そうだ、京都行こう。

→〔その4へ続く〕

(2014年10月13日)
(2019年11月24日 改訂)
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