■『魔法戦隊マジレンジャー』感想まとめ2■


“魔神合体! マジキング
無限の魔法 怒濤のパワー”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『魔法戦隊マジレンジャー』 感想の、まとめ2(8〜14話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔総括〕


◆Stage.8「君こそヒロイン〜マジュナ・マジュナ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:横手美智子)
 呪いの踊りによって捕らえた人間を餌にする冥獣マンティコアが出没。 (マンティコアに食われて)失踪した映画ヒロインの代役を探すオーディションに応募した芳香は、 魔法を利用して麗に特技と偽ったバトントワリングを手伝わせるが、途中でバレてしまう。しかし、イメージにぴったりだ、 と麗の方を気に入る監督。
 「君こそ、ヒロインだ!」
 予告からまた荒川さんの陰謀かと思ったら、横手さんでした。関係各位にお詫び申し上げます。
 どちらかといえばシャイで、芸能界には興味など無かった麗だが、マンティコアから助けた人々の魔法使いへの感謝の声を聞き、 「嗚呼、大衆に囲まれて、ちやほやされて、賛美の声を浴びるのって気持ちいいかも……!」と妄想にふけってしまい、 戦闘中にミスを連発。マンティコアに逃げられてしまう。
 女優に挑戦してみたいと思う気持ちと、自分には向いていないと思う気持ち、 監督に呼ばれた最終オーディションに行くべきか行かざるべきか……悩む麗が割れたコンパクトを手にしているのはいい所で、 横手さんは割と小道具を大切にするタイプの様子。そんな麗に芳香は自分の気持ちに正直になってオーディションに行くべきだと勧め、 最後は車に変身して麗を会場へと連れて行く。会場に辿り着いた所でマンティコア再出現の報告が入り、 麗を会場へ押し込んだ芳香は戦いへと向かう……。
 で、4人は苦戦、オーディションに合格内定し最終カメラテストを受ける麗は“自分が本当にやりたい事”を見つけて、 女優デビューを蹴って4人を助けに向かう、という定番の展開になるのですが、オーディションを振り切る麗の女優へのドリームが、 あまりに弱すぎます(^^; 定番なのが悪いのではなくて、定番を成立させる為の積み上げが全く足りていない。定番であるからこそ、 そこは丁寧にやらなくてはいけない所。
 しっかり者の妹に対して ラリってる ふわふわしているクラゲのような姉だけど、妹の事はしっかり見ているよ、 という要素に加え、本当は自分が目指している女優へのチャンスで嫉妬もせずに妹の背中を押す芳香の強さと優しさ、 という姉妹愛を重ね、敢えて芳香ではなく麗をオーディションの側にする事でミスマッチによる面白さも出そうとしているのでしょうが、 そもそもミスマッチの面白さが出るほどキャラクターが描写されていない(話数の積み重ねがない)ので、 意図だけ先行して内実がともないませんでした。
 姉妹の勇気に応えるかのように新しい魔法がダウンロードされ、マジカルポンポンを手にする桃と青。 二人はマンティコアの踊りに対抗し、エンディングに合わせたダンスを披露。
 今きっと、マジトピア上層部が天空からビデオカメラ回しています。

 さいて−、天空聖者、さいてー。

 マジカルシスターズの踊りがマンティコアを打ち破り、巨大化後は、ドラゴン起動でざっくり秒殺。
 大人の階段を一つ上った麗は、少し自分に正直になってみる事にし、 オーディション雑誌を手にしながらブラザーズに次々と打撃を加えるのであった。
 「先月の収入少なかったわよ。今月はアニキ農場頑張ってね」
 「クールぶるんだったら、ニンジン嫌いは直さないとね」
 「ベッドの下に、雑誌隠すのは駄目だからね」
 正直というか単純に、辛辣(笑)
 特に末弟のダメージが計り知れません。
 さて、2話ラストで末弟に向けて「おまえは学生だから成績落ちたらマジレンジャー脱退な」と言ってしまったが為に、 では残り4人は何をしているのか、という疑問が生じてしまった今作ですが(言わなければフィクションの作用によって無視できた)
 長男:農業
 長女:女優とか目指している夢追い人
 次女:女優とか目指している夢追い人 ←NEW!
 次男:クールを気取るフリーター或いはニート
 である事がだいたい見えてきました。兄者はどうやら、農協の直売所とか道の駅とかに出荷している模様。下3人は大学生、 という可能性もありますが、それだと末弟と同じ条件を付けられるべきですし。 かといってフルタイムで働いているようには全く見えないので、まず無職に限りなく近いと見て良さそうです。
 一家唯一の収入源……にしては兄者の存在感が軽すぎるので、持ち家で土地持ちっぽいし、 付近の不動産所有していて家賃収入とかありそうな感じだなぁ。そういう不労所得が豊富にあると考えると、 母を筆頭として家族の仲が良いというよりは“ゆるい”雰囲気に、なんとなく納得が出来ます(笑)
 地主戦隊マジレンジャー!
 次回……う、馬?!

◆Stage.9「炎の友情合体〜ジルマ・マージ・マジ・ジンガ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳)
 次兄が作っていたボトルシップを横からちゃっちゃっと錬成魔法で作ってしまうという、 人間として最低レベルの行為で、今日も好感度下げに余念が無い末弟。
 黄色の激怒を止めて代わりに軽く小突く兄者に長兄の優しさを見ますが、そこは顔面に全力ストレートでも良かったと思います。
 赤が特に何かあったわけでもないのに調子に乗り出したり、ウルザードが唐突に「やっぱり魔法使いどもシメてくるわ」 と地上に再出張したり、なんだか急な展開。というか、地底のブラさんが2話とじっとしていられない為、 インフェルシアの職場の雰囲気が悪すぎます。基本設定が出来た所でキャラ話をもう少し回しても良かったと思うのですが落ち着く事が出来ず、 偉い人が気が短い、という設定は失敗だったのでは(笑)
 バンキュリアからウルザードの虚言を聞いて背後から呪いの矢を撃たせるも、 帰ってきたウルさんと喧嘩になったと思ったらン・マ様に止められて引き下がるしでいい所も見せられず、ブラさんは正直現状、 何の為に居るのかわかりません(^^;
 そしてウルさんはマジキングの力を何故かトロルに与え、マジレンジャーのファイブファンタスティックキック(凄いネーミング) で撃破されたトロルがストーントロルとして強化・巨大化。
 その頃、ウルザードの愛馬である魔導馬バリキオンと異次元空間へ飛ばされていた魁は、 バリキオンの背に突き刺さった呪いの矢に気付いてそれを抜き取ろうとしていた。
 「バリキオンって言ったっけな! 勘違いすんなよ! おまえを助ける気なんてないんだからな! ただ俺、 自分だけ助かればいいヤツとか、思われたくないからさ!」
 だ れ に (笑)
 母の仇の片割れを救おうとしてしまう自分への言い訳なのでしょうが、どうしても凄くメタに聞こえます……まあ、 思春期の少年として、常に山崎さんにどう思われている気にしている可能性もありますが!
 あと、好感度上げないと立場が危ないからな!
 敵味方を越えた、「命を助けたい」という純粋な想いが魔法の力となり、魁は錬成魔法で呪いの矢を抜き取る事に成功。 バリキオンは魁を背に乗せて異次元空間を抜け出すと、石トロルに追い詰められていた兄妹達を助け、赤魔人と馬、まさかの合体。
 「友情合体! ファイヤーカイザー!」
 構造としては、ウルさんと赤魔人がコンパチで、馬の中にウルさんの代わりに赤魔人が入る事で、 赤き炎の覇王・ファイヤーカイザーが誕生。下半身は同じなのでフォルムのバランスはやはり微妙ですが、 顔はファイヤーの方が格好いい。
 手持ち武器のファイランサーは、両サイドの穂先が燃えている槍で、どうもこれCGでは無い感じで、大胆な迫力が出ました。 最後はちょんまげファイヤー(こちらはCG)で、石トロルを撃破。これによりマジキングの力はマジレンジャーに戻り、 借りを返した馬は元の飼い主の元へ帰還。最初から最後まで何をしたいのか全くわからなかったウルザードは、 お馬と一緒に雰囲気最悪の職場へと帰って行くのだった。
 えー、ウルさんが完全に、
 〔自分ルールを発動して見逃す→突然「なかなかやるな」とか持ち上げ出す→貴重な力を計画性なく無駄遣いする→ すべからく先延ばしにして帰る→短期的にも長期的にもやっている事が意味不明〕
 という、一番駄目な敵のパターンに入ってしまいました。
 3話前で完膚なきまでに叩きのめしたのに、トロル蹴り倒した程度で「ただの一撃で倒すとは。また腕を上げたな、 魔法使いども」とか言っても説得力が皆無の上に、言っている当人の株も下がるという、一番最悪の台詞です。どうしてこうなった。

◆Stage.10「花が咲いたら〜ジルマ・マジカ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳)
 朝からハッスルして、弟2人を巻き込んで、乾布摩擦にはげむ兄者。
 農家よりもサッカー部よりも、いっけんインドア派っぽい黄色が引き締まった体しているのですが、貧弱で笑われるのが嫌で、 部屋でこっそりブル○ーカーとかしているのか。
 「ところでみんな……姉さん、欲しくないか?」
 「姉ちゃんなら2人も居るじゃん」
 「そうか! 欲しいかぁ!」
 兄者は、野菜の卸先である喫茶店の店主?・池田江里子に片思い中。
 ……て、アニキ農場、有機無農薬野菜を売りに高値で卸してお金稼いでいるのかと思ったら、 虫食いだらけの野菜をきっぱり拒絶されていた。
 「なんか、すっげーやな感じなんだけど」
 「とんでもねえ女だな」
 と、窓の外から覗く妹弟の感想ですが、これむしろ、相手のニーズに合わない野菜を兄者が押し売りしているのでは(笑)
 そして、アニキ農場の有機無農薬野菜は表の看板で、裏ルートで魔法の茸(違法ではありません)や魔法の香草(違法ではありません) を捌いているのでは疑惑がますます募ります。
 冷たい江里子の反応に構わず、暑苦しく突き進む兄者。
 「げ、口説いてるし」
 「しかも、バレてるし」
 「誤魔化してるし」
 内と外のやり取りは、テンポ良く展開。兄者と江里子のやり取りに外野の妹弟が反応を挟む形にする事で、 それぞれの個性を巧く出せました。
 男が自分に言い寄るのは当たり前、という態度の江里子は「このサボテンに花を咲かせたら、 付き合ってあげる」とサボテンの鉢を蒔人に渡し、喜んでそれを受け取る兄者。
 「あれ絶対やべえって」
 4人の江里子への印象は最悪ですが……うん兄者ちょっと、Mなんじゃないかな。或いは、SとかMとかを越えた、 鈍感。
 変なツボを手にしたインフェルシアが出現し、ハイテンションの緑の魔法使いは、サボテンを手にしたまま雑魚を蹴散らす、 サボテン格闘術を披露。兄者は、普段地味だけど、テンション上がると無駄に超人になるタイプか。
 マジレンジャーはファイブファンタスティックキックで雑魚指揮官を撃破するが、 その間にツボの中に潜んでいたスペクターがサボテンに憑依。しかしそれに気付かず家に持ち帰った蒔人は、 意気揚々とサボテンをマンドラ坊やの鉢に植え替え、哀れマンドラ坊やはバケツの中に放り込まれるのであった。
 その夜、スペクターの憑依したサボテンはパックンフラワーのような見た目となり、部屋の魔道書や燭台を食べて巨大化。翌朝、 5人にご注進するマンドラ坊やであったが、四六時中ラリっている小津兄妹は、この証言をきっぱりと無視(笑)  そして5人の気付かない背景で朝食を平らげていたサボテンは更に巨大化し、遂に花を咲かせる。
 喜び勇んでサボテンを喫茶店に持ち込む兄者だったが、あまりに大きくなりすぎて、同じサボテンだと認めて貰えない。更に、 渡したサボテンは「花が咲かないサボテン」であったと江里子が口を滑らせ、ようやく、 最初から相手にされていなかった事に気付いてしまう。
 赤「離せよ! 一言いってくる!」
 青「生ぬるい。――一発殴ってくる」
 当初から色々と疑わしかった青、暗黒面発動。
 しかしこれ、江里子は酷い女として書かれているし実際に酷い女ではあるのですが、兄者も大概迷惑というか、 鈍感すぎて自覚のないストーカー気質というか。
 完膚なきまでにフられた兄者はサボテンの鉢植えを抱えて川辺で黄昏れ、それを慰める末弟(フられ仲間)。次兄が、 「どうして花が咲いたんだ?」とツッコんだのはポイント高い。そのサボテンは鉢植えから抜け出すと、 呆然と見つめる兄妹の前で兄者の自転車を丸呑みにし、とうとう人間大の怪物へと変貌する。ここの、 ギャグ演出の間合いも面白かったところ。
 本来は憑依した人間を化け物に変える冥獣スペクターにより、怪奇生物と化したサボテンは走って逃げ、 それを追う5人の前にナイとメアが現れる。江里子の悲鳴を聞いた兄者はインフェルシアを無視して猛ダッシュし、 道に落ちていた江里子の鞄を発見。
 「森よ、教えてくれ、江里子さんは、どこだ!」
 と、周囲の自然に語りかけるのは、ここまで明確になっていなかった緑の特殊魔法でしょうか? 森の木々に導かれた蒔人は、 サボテン獣から逃げ惑う江里子の元に辿り着き間一髪で助けるが、 マジトピア鉄の掟により一般人に正体を知られると多分ボウフラとかに変えられてしまう為、変身する事が出来ない。
 蒔人は生身でサボテン獣に叩き伏せられながら、なんとか江里子を逃がそうと奮闘。
 「俺はやられない。江里子さんが、好きだから!」
 「何言ってるのよ、今関係ないでしょ」
 「江里子さんが、好きだから!」
 「そんなこと言ってる場合じゃなくて」
 「好きだから!」
 「あたし、あんたに酷い事したのよ」
 「それでも、江里子さんが好きだから」


− − − 只今審議中 − − −


 確定:兄者は、Mというよりストーカー気質。

 虐げられて悦びを感じているのではなく、いつか自分の想いが相手に届くと信じ込んでしまっている人だ。
 叩かれても叩かれても曲がらない愛のパワーに目の前の怪物への恐怖が吹き飛んだのか、ようやく足腰のしゃんとした江里子が逃げだし、 兄者、満を持して変身。
 「唸る大地のエレメント、緑の魔法使い、マジグリーン!」
 良く言えば一途、率直に言えばサイコ気味のラブが垣間見えたりしましたが、真っ当な個人回という事で、 久々の名乗りはかちっと格好良くなりました。
 緑の魔法使いは森の力を集め、グリーングランドボンバーでサボテン獣を粉砕。さっそくウルさんが巨大化させるが、 取り戻した魔法力により、マジキング復活。更に、愛を貫いた兄者の勇気に応えて新しい魔法がダウンロードされ、 緑を中心にした陣形(マジキングのコックピットのアイデアは実に秀逸)により新魔法が発動、サボテンからスペクターを分離させる。
 今回の兄者のは、勇気とは別の何かだった気がするのですが、 愛と勇気と狂気は紙一重という深い哲学なのか。
 キングカリバー魔法斬りが炸裂し、マジキングは冥獣を撃破。スペクターだけを斬った事で愛の証のサボテンも取り戻すのであった…… という意図で分離させたのかと思うのですが、その辺りは特に会話が無かった為、新魔法は深い意味のない感じになってしまいました。 まあ、わからなくても困らない部分なので、カットされたにせよ最初から無かったにせよ、省略箇所としては適切ですが。
 後日、江里子はアニキ農場を訪れ、なんとなくいい雰囲気になる2人。
 「どーしてこういう展開なんだ?」
 可哀想な黄色い魔法使いは、絶賛、愛の手を募集中です!!
 「男と女は、わかんないものなのねぇ」
 そしてラブハンターの批評は、何の役にも立たなかった(笑)
 ここ数話低調でしたが、キャラクターが活き活きと動いて、今回は秀作。なんだかんだで慕われている兄者を中心に、 妹弟の反応を描き分ける事でそれぞれの性格を出せたのは良かった。特に、 ひっじょーになんとなーくだったクールイエローがようやく、まあクールキャラと認めるのもやぶさかではない、 程度に成立してくれました。また、基本的に便利な情報提供キャラであるマンドラ坊やが、粗雑な扱いを受けて感情的になる、 というのもアクセントとして良かった所。
 前川さんは、こういう軽いノリの単発エピソードの方が得意なのか。……思えば『アバレンジャー』の前川脚本で一番面白かったのは、 『釣りバカ』コラボ回だったなぁ(笑)
 作品としては、再登場があるかどうかはさておき(途中で急に兄者をフっても困らないキャラ付けではある)、 前半にしてメンバーとゲストキャラのカップルが成立する、というのは相当珍しいでしょうか。 末弟の青春いちご白書も盛り込まれていますが、父が居て母が居て5人が居る、という“家族の物語”として、 恋愛要素はかなり意識していくのか。

◆Stage.11「吸血鬼の夜〜マジーロ・マジカ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:横手美智子)
 「ちょっと校舎裏までツラ貸せや」的なウルさんの声を魁が聞き、呼び出された場所に赴いた5人。 魔法戦隊会議をすっぽかしてデートから帰って以来様子のおかしい芳香は、生身で次々と戦闘員を撃破する、謎のパワーを見せる。
 「ふっ、見違えたぞ、桃色の魔法使い」
 ウルさん、目が節穴疑惑。
 巨大化したウルさんに対し、5人も魔人化し、珍しい、魔人状態での格闘戦。大きさの違いなども表現しており面白かったのですが、 ウルさんは夜中に地上に繰り出して喧嘩ふっかけてきて、ますます迷走の度合いを高めます。
 ウルさんはウル皇帝を発動し、マジレンジャーはマジキングになろうとするが、日光を浴びた芳香が苦しみだして変身が解けてしまう。
 「話にもならんな。俺が戦いたかったのは腑抜けの集まりではない!」
 芳香を心配する5人に存在を完全にスルーされたウルさん、腹いせに緑魔人にダメージを与えて、帰宅。
 一番駄目な宿敵パターンまっしぐら。
 職場に帰ると当然ブラさんに因縁をつけられるが、手を抜いているのではなく、成長して強くなっていくマジレンジャーが、 最も大きな力を得た時に潰すのだ、と言い訳。
 とりあえずこの、何となく喧嘩しにきては思わせぶりな発言などをしながら帰って行くウルさん、 とにかくむしゃくしゃしてストレスを溜めているブラさん、というのが噛み合わせが異常に悪い上にウルさんが物語都合だけで動かされすぎで、 インフェルシアのシーンが全く面白くないのが非常にマイナス。
 せめて<門>がらみの話を組み込んでくれればいいのですが、全く出てこないので、 相変わらずインフェルシアが適当に人間に嫌がらせしているだけにしか見えないのも、極めて困りものです。
 ウルさんを印象づけたいのか、<門>については詳しく決まっていないかのどちらか(或いは両方)だと思うのですが、現状、 ウルさんは出せば出すほど株価が下がっていくので、見事に逆効果。
 夜になって再び元気になった芳香の姿を見た翼は、様々な症状から芳香が「吸血鬼」になったのだと指摘する。
 黄色が、頭使った!
 兄者の説教回避の為に他の3人には秘密にしてほしいと頼まれた翼は、芳香の昨夜の行動から、怪しいライブハウスへと向かう事に。 そこではなんと、ナイとメアが洗脳音楽を歌い、冥獣リーチ(直球でヒル)に人々の血を吸わせていた。 リーチに血を吸われた人間は吸血鬼となり、完全な吸血鬼と化した人間は、日光を浴びただけで灰になってしまうのだ。
 またも洗脳されかけた芳香だが、マジレンジャーとして人々を必死に救おうとする翼の姿に感銘を受け、これまでの自分の態度を反省。
 「芳香、やるべきときはやるんだから! やるべき時はやる人に、なる!」
 バージョンアップした芳香には新しい呪文がダウンロードされ、鋭敏感覚で逃げた冥獣の臭跡を追うと、全員合流。 心を入れ替えた桃と、普段粗雑に扱われている姉に頼られて内心テンション上がっている黄色はノリノリで、 謎の5人合体回転攻撃(映像的には、ジャッカーコバックとかに似ている)を発動。マジキングはその圧倒的な力で、 自力で巨大化したリーチを撃破する。
 復活したマジキングのアピール期間という事でか、2話続けて、キングが冥獣瞬殺。ウルさんの台詞(思い込み)に合わせて、 マジレンジャーの魔法力の強化もイメージしているのかもしれませんが、そちらに関しては、階段3段飛ばしぐらいのペースの為、 そう言われても納得は出来ません(^^;
 人々は元に戻ってこれにて一件落着、かと思われたが、何故か芳香は元に戻らず、陽光を浴びて苦しみだすと兄妹へと襲いかかる。 不敵に笑うバンキュリア……果たして、5色の魔法使い達の運命や如何に?!
 2話でリタイアしかけた2人に焦点を合わせ、「マジレンジャーとしての戦い」への覚悟を改めて描いているのですが、 今作に関しては正直、そこをつつき直すと傷口が広がるだけなので、見ないふりをした方が良かったと思います。 かなり強制的かつ酷い成り行きで戦隊になった5人ですが、どう縫合しようとしても、 あの1−2話というか母はあまりに酷すぎて、手術不能。しかも結局、 黄色の戦う理由に母を持ってきてしまった為、単純に、黄色の方がマザコンにしか見えません(^^;
 そこがキーなのはわかるのですが、キーの形が明らかにおかしい場合、それを振り捨てるのも勇気という気がします。
 単発のエピソードとしては、翼が洗脳音楽に耐えた理由が全く言及されないのがマイナス。 魔法使いである芳香もあっさり引っかかっているので、魔法使いだから、は理由になりませんし。 末弟なら謎の力と主人公力でぎりぎり通らない事はありませんが、逆転に関わる肝心な部分なので、 何かしらの理由付けは必要な部分だったかと思います。……あれか、ロックは悪魔の音楽だから、 演歌しか許さない翼には通じなかったのか!

◆Stage.12「決意のしるし〜マージ・ジルマ・マジ・マジカ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:横手美智子)
 桃色の魔法使いの吸血鬼化に不満顔のウルザード。
 「俺が求めるのは、そんな勝利ではない」
 ……うーん、堂々バトルマニアなら、それはそれでいいのですが、それならもっと初登場時からそう描いておくべきで、 どうしてもウルさんはその時々の物語展開に都合のいい自分ルールを発動する人になってしまっている為、発言に説得力がともないません。
 何言っても説得力の無い人、というポジションならそれはそれで有りですが。
 で、横に居るのが喧嘩大好きヤカン男なので、バトルマニアの役割はヤカンでいいじゃないか、というか、何故、 3人中2人が喧嘩大好きなのか、と幹部の構成に甚だ疑問が。
 それで面白くなっているのならいいのですが、今の所、全く面白くなっていないし(^^;
 芳香を隠し部屋の結界に閉じ込める4人だったが、そこへまたもウルさんから呼び出しがかかり、激高して突撃する黄色。
 「ほぅ、黄色の魔法使いよ。おまえがこれほどの力を隠し持っていたとはな。意外な喜びではないか」
 口を開く度に株価が下がって、もはや凄いの領域。
 一当たりして体脂肪率を下げたウルザードは、芳香の血を吸ったのはバンキュリアだと教えて去って行く。バンキュリアの正体は、 不死にして絶大な力を持つクイーンバンパイア。4人がウルザードと戦っている内に芳香はバンキュリアの呼び出しで姿を消してしまい、 翼はマンドラの指示により、クイーンバンパイアに対抗するマジックアイテムを作成する事に。
 無事に薬の完成した翌朝……何故か元気な姿で帰ってくる芳香。だが芳香は未だバンキュリアに洗脳されており、 兄妹に毒リンゴを食べさせようとしていたのだった。
 「やっぱり……芳香ちゃんは、みんなにお土産なんか買ってきたりしないし、そんなに上手く、 リンゴを剥ける筈がないわ」
 またも暗黒面を発動する青、皮剥きはともかく、お土産すらあり得ないレベルなのか!
 逃げ出した芳香を追った4人は、バンキュリアと遭遇。妙に格好いい音楽をバックに、 4人vs洗脳ピンク&バンキュリアはぶつかりあう。バンキュリアの盾になる桃色の前に、 マジックアイテムを打ち込めない黄色だったが、その必死の叫びが届き、一瞬だけ、きらっ☆ポーズを取った桃色が、 ボウガンを寸前回避。マジックアイテムの直撃で弱った所にマジクロスブーメランを叩き込み、バンキュリアの撃破に成功するのであった (当然ラストで復活)。
 マジクロスブーメランが凄くペンタフォースなのですが、魔人の時の必殺技はゴレンジャーハリケーンだし、 前回がジャッカーコバックぽかった事を合わせて考えると、これは意図的なセルフパロディか。
 バンキュリアの撃破を見て満足したウルさんが巨大化し、ウル皇帝とマジキングが激突。追い詰められるマジキングだったが、 諦めない勇気に応えて新たな魔法がマジキングにダウンロードされ、 大ジャンプから五つの魔法力を解き放って切りつけるキングカリバー天空魔法斬りが炸裂。 ウルさんに皇帝モード解除レベルのダメージを与える事に成功する。
 「そうか。これがお前達の真の力か。今日の所は去るとしよう。次の戦いを、楽しみにしているぞ」
 もはやウルさんは、この短期間に、よくもこれだけダメな宿敵の台詞を連発できるな、と感心するレベル。
 悲惨。
 ウルさんはウルさんで長期的視野の目的はあるのでしょうが、それが全く劇中で提示されない為、 ひたすらてきとーな自分ルールにしか見えません。こういうのは、「実は理由があった」から許されるわけではなく、 「表向きの納得できる理由」が必要なのです。巧い構成はそこを落とさないのだけど、今作では丸っきり抜け落ちています。
 前後編でようやく黄色が頭脳派ポジションに収まりましたが、 赤緑と同じフォルダに入れるわけにはいかなかった青姉にもアピールポイントを作ってしまった結果、それほど、突出はしませんでした。 そして、幼年期の桃との思い出とか強い絆とかあるのかと思ったらそういったものは描かれず、黄色は、 ただ純粋にお姉ちゃん子に。
 まあ、仲良きことは美しきかな、で良いのですが、もはや、この戦隊にクールポジションは必要あったのか(笑)

◆Stage.13「お母さんなら〜ジンガ・マジュナ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:前川淳)
 兄者が今月の集金袋を落とし、経済危機に陥るマジレンジャー。一家の母親代わりを自認する麗は、 小津家節約大作戦の指揮を執る事に。芳香が麗から美容院代を貰おうとするのですが、この家は、 個人の財布は存在しないのか。
 芳香は如何にも無職オーラ全開にしても。
 一方インフェルシアではヤカン男が、戦い続ける事で強化を遂げた蟲毒房三冥獣の一体、オーガを地上へと派遣する。 バンキュリアと同じく、単独で地上へ移動可能なオーガは高速回転でビルを薙ぎ倒して大暴れ。冥獣反応に出撃する兄妹だったが、 買い物へ出ていた麗と連絡が取れない。麗は1人……福引きと戦っていた。
 1ヶ月1万円やりくり計画に悩み商店街の福引きの特賞・お米1年分に目がくらんだ麗は、 1万円を全て買い物に費やして10枚の福引き券を手に入れるが、気合い全開で挑んだものの、 手に入れたのは10個のポケットティッシュのみという凄惨なエンディングを迎えてしまう。
 そこでコールに気付いて5人揃うが、オーガに蹴散らされるマジレンジャー。生存報告に現れたバンキュリアが<門>の鍵に言及し、 鍵は地上の人間に紛れ込んでいる事が判明。これまでインフェルシアが場当たり的に人間を襲っていた事と鍵の捜索が、 これで一応、繋がりました。
 このタイミングでこの内容なら、もっと早くて良かった気はどうしてもしますが(^^;
 <門>の鍵を手に入れる事によりインフェルシア全軍を総動員できる……というバンキュリアの話が長かったのか、オーガは帰社。 特殊な冥獣なので「扱いにくい」と理由はつけましたが、これは悪い意味でご都合。
 青が“みんがのお母さん”にこだわっていた理由……それは、母との、 この家はダメな子ばかりなのでよろしくという約束によるものだった。だが麗は麗、お母さんではなく、 麗として兄妹を支えればいい……兄者、5人それぞれの役割をまとめ、皆を超持ち上げ、5人は改めて結束する。
 ギャグっぽい筋で始まって、思わぬ流れで1クールの切れ目として兄妹の関係をまとめてきましたが、 凄く持ち上げすぎだと思うよ兄者!(笑)
 そして、誉められてへへーんみたいな顔になっている黄色、ホント駄目な子。
 再びオーガが出現し、出撃する5人。ここで5人が走っていった後、魔法部屋の壁の5色のタペストリーにズームする、 というのは良かった。結束を新たに、絆を勇気にした5人は強敵オーガへと立ち向かい、新魔法・マジカルカーテンで回転攻撃を打破。
 5人の絆の力という流れは悪くなかったのですが、結局さっくり新魔法ダウンロードで片付けるというのは、今ひとつ勿体ない所。 いやそれがコンセプトであるのですが、どうしても、マジトピアに弄ばれている感じがつきまといます(^^;  強化が“内側”からではなく常に“外側”からで、その形が見えない、というのは今作の個人的にどうもノリにくいところ。
 たまにはこれまでの魔法の応用から5人のコンビネーションで撃破、とかでもいいのになぁと。
 自力で巨大化したオーガは回転攻撃でマジキングに突っ込んでくるが、カウンターの魔法斬りで瞬殺。マジキング、強し。そして、 オーガ……弱い。
 兄妹の絆を描く方を重視した結果、苦戦から逆転への描写が雑になり、もう一つメリハリの弱い展開に。また、 蟲毒房三冥獣もとりあえず、「単独で地上に出張できる」特異体質、の理由付けにしかなりませんでした。 今回はウルさんと喧嘩したブランケンからマジレンジャーへの刺客、という事なのでしょうが、 個々のエピソードにおけるインフェルシアの「目的」の明示がおざなりで動機付けが弱いので、 敵方の行動が物語と繋がるダイナミズムが薄いのは、今作の欠点の一つ。 善玉サイドさえしっかり描いておけば悪玉サイドの物語は後付けでどうにでもなる(と思っている)、という構成なのですが、 あまりに偏りが過ぎて物語展開のバランスが悪い。
 なお小津家崩壊の危機は、黄色が福引き外れ10回のダブルチャンス・1回おまけで特賞のお米を獲得、 そして集金袋も発見されて無事に回避。……黄色が強運の持ち主、というのは設定になるのかどうなのか (お米を担いで帰ってくる演出の都合があったのでしょうが、軽い気持ちで特賞当てて違和感ないのは、どちらかといえば芳香)。

◆Stage.14「燃えろパンチ〜ジー・ジー・ジジル〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)
 三冥獣の2体目、グールが地上へ出張。ヤカン男から解雇通告を受けたウルさんは荒野で何かをし、末弟は、 今日も前を見ないでドリブルしていた。
 反省しない男が浮かれ騒ぐ理由は……赤の魔法使いと再会できずに落ち込みモードの山崎さんの心の隙間に、 ケチな手品で忍び込んでデートの約束にこぎつけた為だった。
 かたや、当然、赤の魔法使いとして山崎さんの前に顔を出すのは極力避けるつもりの中の人(魁)、かたや、 本命は赤の魔法使いだけど映画ぐらいなら付き合ってボトルキープぐらいはしてやらんでもない、という山崎さん。
 割と、どっちもどっちで駄目な感じです(笑)
 デートを翌日に控えて心ここにあらずの魁だったが、グールが地上に出現。 ボクシングスタイルで戦うグールの強烈なパンチで兄者が足を負傷。高校時代、 ボクシングで全国大会出場経験のある黄色は同じくボクシングスタイルでインファイトに持ち込むが、ナイとメアの横槍もあり、 拳の打ち合いの末に右手を骨折してしまう。
 前回の回想でボクサーグローブを探しているシーンが入りましたが、割と引き締まった体をしていた黄色、 ボクシング経験者であった事が判明。
 そして拳の打ち合いの末に撤退したグールは、高校インターハイレベルであった事が発覚。
 駄目すぎるぞ三冥獣!!
 グールを打ち破るにはボクシングスタイルしかない、と魁を特訓する翼だが、 肝心の魁は溢れ出る思春期のストロベリー妄想でそれどころではなく、怒りの翼は特訓を諦め、負傷をおして自分で戦う決意をする事に。
 ……なお魁は、前回お米の為に福引きに夢中だった姉に対して、後付けの情報からかなり身勝手に激怒していたのですが、 青春真っ盛りなのでそんな事はすっかり忘れ去っている模様。
 一方インフェルシアではブラさんが、オーガの無念の思いがこもった金棒で1000回叩けばその念がチャージされて弱点のボディが強化される!  とグールを叩いていた。

 て、精 神 注 入 棒 !!(笑)

 駄目だ、インフェルシアはみんな駄目すぎて、ン・マ様は早く、新しい幹部を探した方がいい……!
 もう怪我は大丈夫、という翼の言葉を信じていそいそと精一杯のお洒落をしてデートへ向かおうとする出来の悪い苺男。 マンドラにそんな筈はない、と言われるのを振り切ってデートへと向かうが、その気持ちは乱れだす。
 ちょっとこう、脚本間の連携が取れてないというか、前回の福引き激怒が無ければ赤がデートか特訓かで悩んでも良いのですが、 前回の今回で赤が自分のデートを少しでも優先では、あまりに身勝手すぎます。 もろもろ反省の足りない赤が後で大きなしっぺ返しを喰らう、とまで意図的な仕込みには見えないしなぁ……。
 「あの馬鹿……女にうつつぬかしやがって」
 兄姉に負傷を隠して対グールの調整をしていた翼だが、そこへ、魁が戻ってくる。
 「デートなんかいつでも出来る! けど……ちい兄が俺に期待するなんて、滅多にねえだろ!」
 「なんだとこいつぅ!」
 デートなんて、デートなんて、

 いつでも出来るだとぉッ?!(血涙)

 「覚悟しろ! びしびしいくからな!」
 特訓を終える魁、そして精神注入を終えるグール、両者は何故かウェスタン村で向かい合う(笑) この何故か決闘ノリは、 たぶん渡辺監督の趣味。
 ナイとメアがラウンドガール調でノリノリでゴングを鳴らし、激突する両者。 特訓の成果を見せた赤のパンチがグールのボディを砕くかと思われたが、精神注入を受けたグールは立ち直り、 反撃の拳が赤に突き刺さる。ボディの強化されたグールには勝てないのか……だが赤は特訓を信じて立ち上がり、 黄色の携帯に新たな魔法がダウンロードされる!
 「おまえの勇気だ。初デートを断って、戦おうと決めた勇気に、応えて与えられた、奇跡の拳。マジパンチだ!」
 悲しい、悲しい勇気だ……マジトピア、非道すぎる。
 両手に魔法のグローブを装着した赤はグールとの殴り合いを制し、最後はファイヤースクリューアッパーで撃破。勇気が、精神注入を、 打ち破った瞬間であった。
 アンパイの男にデートを直前キャンセルされ、失意の帰宅中の山崎さんが、たまたまこの、勝利シーンを目撃。
 「山崎さん、来てくれたの?!」
 勝利に浮かれて色々忘れている赤の魔法使いは、つい親しげに呼びかけた上に、抱き合って回転してしまう。
 「魔法使い様!」
 (――俺今、マジレッドじゃん!)
 「運命の再会」
 ぴたっと抱き付く山崎さん、「命を助ける」イベントで大幅に好感度上昇しているにしても、えぐい(笑)
 ところで、兄姉、魔法使いと素顔で一緒に居る所を目撃されているけど、大丈夫なのでしょうか。マジトピア鉄の掟により、 ミジンコとかに変えられてしまわないか、少々、心配です。恋する乙女モードの山崎さんの眼中に入ってない可能性もあるけど。
 黄色、クールにしつつもそこはかとなく弟を応援して帰宅。
 割と強引にロボ戦を入れる今作としては珍しく、巨大戦は潔く無しで落着し、真っ白になった魁、でエンド。
 ……まあこれは少々、しっぺ返しを受けたと言えるのか(笑) 一応、このエピソード上での因果応報は成立しているのがミソ。

→〔その3へ続く〕

(2014年9月22日/10月13日)
(2019年11月24日 改訂)
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