■『魔法戦隊マジレンジャー』感想まとめ1■


“魔法、それは聖なる力
魔法、それは未知への冒険
魔法――そしてそれは、勇気の証”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『魔法戦隊マジレンジャー』 感想の、まとめ1(1〜7話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔総括〕


◆Stage.1「旅立ちの朝〜マージ・マジ・マジーロ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:前川淳)
 長いよサブタイトル!(不条理な文句)
 さて、恒例行事みたいなものではありますが……演技はきつめ。 全体的に兄妹が棒気味なのですが、 特に黄色い戦士がキャラの台詞回しの都合もあって強烈なので、みんな頑張れ。現在もオールアフレコなのかわかりませんが (『シンケンジャー』の時にシンクロ録音に変わったと聞いたけど、今どうなのかは知らない)、翻って『トッキュウ』はやはり、 レベル高いよなと。
 日曜朝、家族団らんの食卓を囲んでいた小津家がTVをつけると、末の弟がニュースになっていた。
 高い所に引っかかった風船を取ろうとしてポールに登る……と、赤い戦士の無鉄砲な熱さ見せなのですが、もともと、 街中でサッカーボールをドリブルしながら歩いていて、風船持っていた少女にぶつかる、 という120%赤い戦士に責任のある前方不注意なので、どんな顔で見るべきか悩みます。
 これ、普通に通りすがりで良かったと思うのですけど、どうして、主人公に体当たりさせたのか。ここまで顔を隠している演出も、 特に効果的にはなっていませんし。
 末弟は風船を手にして女の子に無事に渡し、調子に乗ってTVのインタビューに答えたりしないようにと、 慌ててやってきた兄達に回収される。その帰路、突如、一家の足下に魔法陣が浮かび上がり、そこから巨大な怪物が出現する。
 冥獣トロルは、人間よりは大きく、さりとて巨大ロボサイズではなく、二階建ての家ぐらい、というのは面白い。
 子供達を逃がした母は、いきなり変身。「チェックメイト!」と割とノリノリで怪物を撃破する。
 これまで秘密にしてきたが、実は母は、天空聖界マジトピアから魔力を授かった魔法戦士だったのだ。今また、 地底冥府インフェルシアの住人達が地上に侵攻してようとしている……と、母の正体に驚く間もなく、 強制的に魔法戦士にされる兄妹達。
 「母さんはより強敵と戦う為にMP溜めないといけないから、おまえら、ちょっと矢面に立ってこいや」(意訳)
 と戦場へ送り出される兄妹達は、さすがに嫌がるが、主に長男と次女が先導して出撃。ただ1人、 魔力を与えられなかった末弟だけが残される。
 「魁は高校生でしょ。戦士として戦うにはまだ早いわ」
 「なんだよそれ?!」
 うむ、なんだそれ。
 なんの説明もなく子供達をいきなり死地へ放り込んだ人と同一人物の台詞とは思えませんが、どうしてもう少し、 心の準備をさせておかないのか、母。まあ多分、インフェルシアの侵攻があるとは限らないから、 知らないままで済めばいっそ……的なものだとは思われますが、それにしても切り替えが早すぎて、色々と困った人です、母。
 というか、末弟以外は全て、こういう時の為に準備しておいた捨て駒の養子なのではないだろうか。
 さすがにあんまりだと思ったのか、一応、風船事件の無謀さを理由に。
 「俺は、勇気なら誰にも負けないんだ!」
 「魁、勇気と無茶とは違うの。恐れを知らない者に、本当の勇気はわからない。そして、本当の勇気が無ければ、魔法は使えない」
 魁が家を飛び出す一方、兄妹は森でインフェルシア戦闘員と遭遇し、魔法変身。
 「唸る大地のエレメント、緑の魔法使い、マジグリーン!」
 「吹きゆく風のエレメント、桃色の魔法使い、マジピンク!」
 「たゆたう水のエレメント、青の魔法使い、マジブルー!」
 「奔る雷のエレメント、黄色の魔法使い、マジイエロー!」
 各人それぞれの属性攻撃と、それにともなう個人武器を使用してのアクションで、これは、わかりやすい。
 「力がみなぎるー。魔法のパワーだ! チェックメイト!」
 って、母がノリノリだったわけでなく、天空ルールだったのか。
 雑魚を蹴散らす4人だったが、ここでインフェルシアの魔法使い、魔導騎士ウルザードが登場。あっという間に4人は追い詰められ、 物陰でそれを見ていた末弟は、助けたいと思いながらも恐怖に足がすくんで動けない。
 「魔法使いは俺一人でいい。まずはおまえから、血祭りだ。くたばれ」
 だが、緑が剣のサビになろうとした時、空き缶をぶつけてウルザードの動きを狂わせ、その前に飛び出す末弟。 その様子を何故かMP溜めながらモニターしていた母は、満足げに微笑む。
 「大事な人を守りたい。一途な気持ちで恐れを超える。――それが勇気」
 えぇーーーーーー?!
 いや、定番の台詞と展開なのですが、定番なのでもう少し巧くやってほしいというか、結局飛び出しただけで、 勇気と無謀は違うのだわさ、という点においては1ミリも進化していない気がするんですが。
 「俺はマジだぜぇーーー!!」
 ウルザードの剣を白刃取りしたら、何故か魔法のパワーが発動し、皆とお揃いの衣装に着替える末弟。
 「天空聖者よ、我に魔法の力を! 魔法変身、マージ・マジ・マジーロ! 燃える炎のエレメント、 赤の魔法使い、マジレッド!」
 マジレッドは、新たに出現した戦闘員をサッカーボールに変え、それを蹴り飛ばして攻撃するという、 残虐ファイトを披露。5人揃ったマジレンジャーに対し、ウルザードさんは、馬召喚→自身巨大化→合体、 といういきなりの満漢全席。
 とここで1話終了し、次回、巨大母。
 前作『特捜戦隊デカレンジャー』がやや小難しめ路線(なので、ロボ戦などで目を引くひく造りにしていた)だった反動からか、 かなり明確に低年齢層を意識したと思われる構成。少し意識しすぎな感じもありますが、わかりやすくはあるのか。 特にどこかが間延びしていたというわけではないのですが、ラストに凄くブツ切れ感があって、話の流れとしてはいまひとつ。
 今のところ敵の侵攻理由が「寝起きで機嫌が悪かったから」に見える、ウルザードさんが何をしに来たのかがわからない、 ウルザードさんが大馬神モードを発動した意味がもっとわからない、というのが話にメリハリを感じない特に問題な部分。 すべからく展開の為の展開になってしまっていたので、もう少しそれぞれ、理由を付けていって欲しかった所です。 別に事細かに語る必要はなくて、ウルザードさんに「んじゃあちょっと、地上の連中しめに言ってきますわ」 とワンシーン入れるだけでだいぶ違うのですが、そういったシーンが軒並みなくて、脚本・演出ともに、良くない仕事。

◆Stage.2「勇気を出して〜マージ・マジ・マジカ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:前川淳)
 一番やばい赤と黄が怒鳴り合っていると、とてもやばい。マジやばい。
 ところで、各人のマスクのモチーフを見るに
 赤:火の鳥?
 黄色:鳥っぽいし能力的にサンダーバード?
 青:よくわからないけど気持ち翼っぽい
 桃:蝶?
 緑:
 ……何だろうこの、兄者の差別っぷり。
 どうして、どうして兄者だけ飛べないの?!
 むさいから?! 暑苦しいから?! 老けているから?!
 兄者だってまだきっと、翼の欲しいお年頃ですよ?!
 喧嘩している間に馬に踏みつぶされそうになる赤と黄だったが、そこへ母が助けにやってきて、おもむろに巨大化。2話冒頭から、 ケンタウロス紫vs巨大母、という壮絶なバトル。が、いったい何の為にMPを溜めていたのか、あっさりとぶった切られて消滅する母。 一応、脇腹にダメージを受けてウルザードは一時撤退するが、この人も何をしに来たのか。
 続けてのインフェルシア反応に、母の仇討ちだ、と悲しみを振り払って立ち上がる赤・緑・青だったが、黄と桃は戦いを拒否。 母の形見となった魔法のステッキを持って家に戻った二人は、そこでステッキの光に導かれて、魔法の隠し部屋へ足を踏み入れる。
 「あなた達がこれを見ているという事は、インフェルシアが復活したという事ね」
 そこには、母からの魔法メッセージが残されていた………………て、あーこの人、一番迷惑なタイプだ(笑)
 例えるなら、何の説明もなくスーパーロボット造るだけ造って失踪した天才科学者のお父さん、とか、そういう系統。
 かつてこの世界では人知れず、マジトピアとインフェルシアの戦いがあった。その時、地上侵攻を目論むインフェルシアを、 自らの命と引き替えに封印した一人の天空聖者が居た。その天空聖者こそ、「冒険家として南極で死んだ」と聞かされていた、 兄妹の亡き父だったのだ!
 ちょっと待て。父は、インフェルシアと戦いながら、地上人との間に5人も子供作っていたのか。
 ……いや、5人作った後に戦いになったのかもしれませんが、そうすると、戦いがあったのは15年ぐらい前になるので……早かったな、復活。
 まあ別に、戦いながら子供作ってもいいのですが、いいのですが、ただでさえ締まらない展開が、よりいっそう締まらない感じに(^^;
 その頃、長兄と次女と末弟は、インフェルシアの斥候、ナイとメアと戦っていた。ナイとメアは、小悪魔系顔出しキャストが、 合体して着ぐるみ女怪人・バンキュリア(年増風味)になるという、なかなか面白い変化球。3人はバンキュリアによって、 巨大な冥獣ブロブの口の中に放り込まれてしまう。
 母のメッセージに戦う気力を取り戻した黄と桃が箒で駆けつけ、3人を救出。桃は属性の風に加えて、変身魔法の使い手の模様。 そして母に、「貴方達の武器は勇気だ」とそそのかされた黄色は、箒で巨大怪獣に突撃。
 ……色々駄目だ、この一家。
 「溢れる勇気を魔法に変える、魔法戦隊マジレンジャー!」
 新たな魔法がインストールされたマジレンジャーは、魔法大変身で、ロボットに巨大化。
 ここでそれぞれのモチーフが、
 タウロス(緑)・フェアリー(桃)・マーメイド(青)・ガルーダ(黄)・フェニックス(赤)
 と判明しました。
 飛べないのは、兄者だけじゃなかった! 兄者一人だけ、ファンタジー感は凄い薄いけど!!
 フェアリー長女が自らボールに変身すると、これを4人が次々とはたき蹴り飛ばし、ゴレンジャーハリケーン的 (デザイン上のマント繋がりから意識的なオマージュでしょうか)に姉ボールが巨大冥獣に炸裂して、大爆発。
 ……マジやばいよ、この一家。
 インフェルシアでは、本拠地の床にある覗き窓から、大ボスらしき冥獣帝ン・マ様が巨大な瞳だけ、ちらっと見せてお怒りをアピール。 はたして、地底冥府インフェルシアの地上お引っ越し大作戦は、どうなるのか!
 そして、桃と黄から母のメッセージを伝え聞いた3人は自分達の出自を知り、小津家の5人兄妹は、 改めてインフェルシアとの戦いを自分達の運命だと認め、覚悟を決めるのであった。
 ……えーとこれはあれか、特に事情は説明していなかったけど、例の睡眠学習装置で、密かに戦い方を教えたり、 不要な恐怖心は取り除いたりしてあるのか。
 半端に桃と黄が悩む姿を描いた為、振り切れ方がむしろ怖いんですが(笑)
 最後は「おまえは学生なんだから勉強頑張れ」と赤が言われてオチなのですが……えーと皆さん、お仕事は? まさかの、 全員ニートだったらどうしよう。
 立ち上げの1・2話としては、「勇気」というのは、しっかり積み上げないと、凄く雑になるよなー……という、 悪い見本市。
 “勇気の見せ方”という肝心の部分がなにか、いちいち間違っている気がします(^^;
 知恵と勇気で戦うしかない所まで追い詰められている状況なら知恵と勇気で良いと思うのですが、どう考えても、 備えを怠ってのんびりのほほんしていた挙げ句に、ろくな準備もせずに子供達を決死の最前線に送り込んでいる母が 超駄目人間。
 その為、物語全体が、“突然の侵攻に対して勇気で逆転”というよりも、“わかっていたのに事前に備えておかなかったから大変な事に” となってしまっており、本来盛り上がる部分として意図されたであろう所に、素直にノれません。
 インフェルシアの復活が完全に予想外だったらまだしも、1話の台詞や今回の諸々を見るに、 母の中でかなりの確度で復活前提だった割には、あまりにものんびりとしすぎです。
 結果、導入で物語として、物凄くボタンの掛け違いが発生している。
 今作、“インフェルシア復活は母も全く予想外で、最後の手段としてやむなく子供達を魔法戦士にする”か、 “予想されたインフェルシア復活に対して、一家揃って覚悟完了済みで魔法戦士として戦う”(※この場合、 末弟だけ若いから教えてなかったと省いておけば、充分にドラマは成立した)かのどちらかならまだしっくりしたと思うのですが、
 “母、なんとなくインフェルシア復活するかもしれないとは思っていたけど、子供達には全く事情は教えず、 のんびりしていたら本当に復活してしまったので、あっさり子供達を最前線へ送り出す”
 と、物凄く意味不明な事に。
 事情を教えていなかった事は感情的に納得できても、その後一切の躊躇なく最前線へ送り出すのはさっぱり理解できません。 母の行動/言動の前と後ろがさっぱり繋がっておらず、全編通して支離滅裂。幸いというか、早々に母はリタイアしたので、 今後落ち着いていってくれる事に期待。

◆Stage.3「魔竜に乗れ〜マージ・ジル・マジンガ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳)
 早朝ジョギング中、地底に飲み込まれる男。森で行方不明事件が続発しているという噂を耳にした次女が家に帰ると、 兄者主導で隠し部屋の大掃除が行われていた。
 魔空空間な扉とか、映ったものが中で勝手に動く鏡とか、前回に続いて、魔法部屋の不思議ギミック見せ。こういうのは素直に楽しく、 モチーフ的にも、引き続き色々やってほしい(まあ途中で消えていくとは思いますが)。そして赤が、 母が密かに飼っていた魔法植物……マンドラ坊やを発見する。
 駄目母から、万が一の時は兄妹の事を託されていたが、気まぐれなので今まで惰眠をむさぼっていた、 という飼い主にそっくりな駄目魔法植物は、マジトピアを築いた5色の魔法使いの伝説を、兄妹になぞらえるように歌い出す。
 ここのミュージカル風演出は、N教的ともいえますが、非常に秀逸。
 マンドラ坊やの声を務める比嘉久美子さんの歌も素晴らしい。
 伝説の魔法使い達の歌を聴き、末弟は赤の魔法使いが突撃役だった事に喜ぶが、兄者は緑の魔法使いが後衛の抑え役だったことに不満。 ……意外と、前のめりだった。長兄として魔法戦隊のリーダーは自分がふさわしい、と兄者は暑苦しく責任感を主張するが、 次女以外は冷たい反応。その時、森のインフェルシアが感知され、5人は出撃する。
 何かと前にしゃしゃり出ようとする赤に緑はイラっとし、怪人を狙う先駆け争いで揉めた挙げ句、 遂に怪人を前に本格的な喧嘩を始める赤と緑。
 ……魔法使いというか武士の家系な気がする、小津家。そう考えると、家の存続の為に、 戦いを前に一人だけ生き延びさせようとした事にも、そこはかとなく納得です。
 怪人と戦闘員のスクラム攻撃に、息の合わない赤と緑はピンチに陥るが、黄色がボウガン攻撃を浴びせ、怪人撤退。 しかし変身解除した長兄と末弟は、とうとう素で殴り合いを始めてしまう。
 一方、怪物から助けた少年に気付いて駆け寄った次女は、
 「お姉ちゃん達、魔法使いなの?」
 と問われ、相手の唇に人差し指をあてて、
 「秘密だよ」
 と、華麗に口封じ。
 割と怖いなこの娘。
 貴女今、確実に一人の少年の、人生の新しいルートを解放してしまいましたよ。
 初回から、姉の言う事ハイハイ聞いている大人しい優等生っぽい描写がされていましたが、まず間違いなく、 計算尽くでポジション確立しつつ内心で「モテない女は、これだからやーねー」ぐらいの事は考えていると見ました。
 責任感が空回りし、うまくいかない苛立ちをアニキ農場の開墾にぶつけていた兄者は、 長女が勝手に収穫してしまったイチゴを食べながら野菜を育てる苦労に思いを馳せ、末弟は我が儘なイチゴなので、 真っ赤に育てるのが畑(長兄)の役目、となんか悟る。
 赤と緑の喧嘩を軸にしつつ、自由人だけど一応みんな仲良くしてほしい桃、他人は他人の黄、細かく気を遣う役の青、 と他の兄妹もそれとなく色づけして、この辺りはうまく回りました。
 兄弟喧嘩の後、ぶらぶらしていて怪人を目にして変身するも、巨大ミミズに食われそうになっていた赤を助ける、緑と桃。
 「おまえは、真っ赤なイチゴだ!」
 「は?」
 「そして、兄ちゃんは、畑だぁーーーーー!!」
 悟りの一端に辿り着き、法悦の境地を垣間見た高揚で、歌いながら雑魚を薙ぎ倒していく緑。
 ……マジやばいよ、この一家。
 兄ちゃん、畑で何を育てているのか。
 再び戦闘員とスクラム攻撃を仕掛けてくる怪人だが、今度は緑が自ら弟の踏み台となり、赤のハイジャンプ攻撃で撃破。 そこから魔法で呼び出した空中ブランコによるマジレンジャー連続攻撃が炸裂し、怪人は爆死。
 いまいちよくわからなかったのですが、今回の怪人は、戦闘員強化版みたいな設定だったのでしょうか。
 空中ブランコ攻撃は、中の人達がひたすら凄い。
 だが、怪人を倒した事で、地下に潜んでいた巨大ミミズ・冥獣ワームの本体が地上に出現。その時、新たな呪文がダウンロードされる。
 「お兄ちゃんの勇気に、魔法が応えたんだよ」
 要するにレベルアップしたという事なのでしょうが、なかなかいやらしいなぁ、マジトピアサーバー。
 5人は魔人化(巨大化)、更に緑・桃・青・黄が魔竜合体によりマジドラゴンへと変形合体し、赤を乗せてワームへ剣と翼を向ける。
 人型でないワーム(ほぼ固定砲台・攻撃時は先端部分だけCG)とドラゴンライダーの戦いは、怪獣映画っぽくて、なかなかの迫力。 最後はドラゴンの吐き出した火球を赤が蹴り飛ばすマジカルドラゴンシュートで、チェックメイト。
 かくて事件は解決し……買い出し中に「森の化け物が退治されたらしい」という噂話を耳にした次女は、 インフェルシアの被害から出来る限り人々を助けるべく、魔法をみんなの役に立てられないか? と提案し、 インフェルシアの悪事に苦しむ人々の声が聞こえる(具体的にどうなるのかは、今回の範囲では不明)魔法110番が、 マンドラ坊やの手により設置される。
 「森に化け物が居るらしい」というのはともかく、「森の化け物が退治されたらしい」と近所の主婦が噂しているのはかなり苦しいですが、 まあそういう世界観という事で(^^; 次女が、冒頭−少年の口封じ−ラスト、と単独シーンを3点置く事で、 赤緑の話と二重構造でキャラ立てしつつ、今後への基礎構築が綺麗に繋がりました。
 注目点としては、冒頭の演出に加え、次女の「少しでも被害者を減らし」という台詞で、 インフェルシアにより一般人に被害が出ているのが、明確にされている事。よくよく考えると2話で母が消滅していますし (構成が悪かった為に、衝撃、というよりは、呆然、になってしまいましたが)、全体的に陽性の雰囲気の割には、 シビアな要素も挟み込まれています。
 というよりも、ライトな感じを前に押し出して扱っている魔法という設定(とにかく魔法のシーンは明るく楽しくやってください、 みたいな話があったのかと思われる)と、実際にそれを転がす物語のマッチングが巧く噛み合っておらず、 パイロット版の1−2話はそれが顕著だったのだなと。
 そういう点で、1−2話に比べるとだいぶ流れが改善され、魔法戦隊の基盤も確立。 出来ればここまでの要素を2話までに圧縮してほしかったところですが、正直1−2話の感触は底に近かったので、 希望の見える3話になりました。
 ちょっと気になる部分としては、喧嘩を乗り越えて成長したのが兄者だけだった事ですが、いずれ弟にもしっかり試練を与えてほしい。

◆Stage.4「魔人の王様〜マージ・ジルマ・マジ・ジンガ〜」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳)
 今となっては母の形見となった、次女の大切なコンパクト壊してしまった末弟、冒頭から平手打ちを浴びる。
 「もっと周りをよく見て行動しろって、いつも言ってるでしょ!」
 1話最初の、子供に体当たりに始まって、ひたすら、好感度の上がる余地の薄いレッドだなぁ……(^^;
 かくて、普段は優しい青がお怒りモードに入って小津家が全面核戦争間近の緊張感に包まれている頃、夜のガード下で怪物に襲われ、 石化、消滅するサラリーマン。娘からのメールを受けた携帯電話が地面に転がる、と3話に続いてやや怪奇をあおる演出。
 そんな事件は、またもスーパーで主婦の噂話になっており、毎度これを入れるならそれはそれで面白いと思ったら、 そこからカメラが横に流れて別の場所で女子学生達の噂話に切り替わり……

「ねえちょっと聞いて、また起きたみたいよ、摩訶不思議事件」
「えー、巻き込まれたどうしよう」

やばいよね」
「そんな時は、手の平に指で“M”って3回書いて、有明の月に向かって

有明の月に向かって呪文を唱えると、五人の魔法使いが助けてくれるそうじゃ」
「ありあけの月って

なに?」
「朝になっても出てる、月のことなんだって」
「ねえねえその呪文って、どんなんだっけ?」

「――マジカ・マジカ・マジカ」

 主婦→女子学生→老人と孫→小学生→そして呪文を唱える被害者の娘
 「お願い魔法使いさん達、お父さんを探して」
 これは、凄く良かった。
 前回用いた“街の噂話”をキーとして、魔法110番のおまじないへと繋げ、それらをあくまで都市伝説の領域に留める事で、 ファンタジーと現実の狭間にマジレンジャーの立ち位置を確立。
 中澤監督も、素晴らしい演出。
 魔法部屋の鏡に映るのは、インフェルシアがらみの願い事だけであり(下調べは、天空聖界マジトピアの方で、サービスしております)、 少女の父親を探す事になるマジレンジャー。とはいえ、このままで何の手がかりもない……と、 青の魔法使いの特殊魔法である占いでヒントを探す事に。母に強制的に着せられたローブには魔法力UPの効果がある事が判明し、 次女の占いにより、ざっくりと割れてしまう、父親の行方。水晶玉をじっと見つめる次女を残して出撃した4人は、 樹海で石化・転送された人々を発見するも、冥獣コカトリスの迎撃を受ける。
 石化といえば、コカトリスかバジリスクかメデューサというわけで、そんな感じではありましたが、今作の怪人は、 ファンタジー怪物列伝になるのか。
 硬質の皮膚を持つコカトリスに攻撃が通用せずマジレンジャーは苦戦し、赤が石化ビームを喰らいそうになるが、 後から駆けつけた青にかばわれ、次女、石化。範囲魔法を使って目くらましを行い、次女の石像を抱えた兄妹は一時撤退を余儀なくされる。
 深刻な喧嘩の真っ最中にも関わらず、自らの命を賭して弟を守った次女の優しさを、ここぞとばかりに持ち上げる兄妹達。 はまあいいのですが、
 「うらねえ、情が深いから」
 て、黄色、君は何歳だ(笑)
 20前後の男の言葉の選択としても、姉に対する弟の感想としても、だいぶおかしい(笑)
 前回の掃除中に、イヤホンで音楽に夢中という描写がありましたが、部屋に入ると、八代亜紀、小林幸子、石川さゆり、細川たかし、 五木ひろし、辺りのCDがずらりと並んでいたりするのか。
 赤はマンドラをしめあげ、自分の特殊魔法である錬成術(前回、空中ブランコを作っていたのはこれ?)を用いれば、 石となった次女を元の状態に錬成しなおす事で呪いが解けるかもしれない、と聞き出す。
 ……それ大丈夫ですか、魂の質量とか肉体の一部とか足りなくなったりしませんか。
 だが、幸か不幸か、赤の魔力は、人体を錬成し直す域には達していなかった。そこへ冥獣が街に出撃した反応が感知され、 必死に錬成術を唱え続ける赤を置いて、残り3人が出撃……あなた方そもそも、4人で先行したから酷い目に遭っている事を学習して下さい!
 このパーティには、致命的に参謀役が足りてない!!
 街へ向かった3人がナイとメアにあしらわれている頃、姉を助ける為に精神力と生命力を振り絞り、好感度上げをはかる赤。 その姿にマンドラは、呪いは、かけた相手を倒せば元に戻る事があるかもしれない、と口にする。
 「敵を倒したらバッドステータスが治りました」というのはパターンなのですが、それを治療する正当な手段を提示して試した後、 それでも駄目なら?マーク付きでこういう手段もある、と段階を踏んだのは良かった所。
 だがどうすれば、攻撃の通用しないコカトリスを倒す事が出来るのか……マンドラによれば、占いを続けていた次女は、 どうもその方法を掴んでから出撃したようなのだが……
 ――「だから言ったでしょ、周りをよく見なさい、って……」――
 その時、青の言葉を思い出した末弟は、石化した次女が戦いに向かうのに何故かコンパクトを手にしていた事から、お約束に気付く。 バンキュリアに3人が叩きのめされている所に姉の石像を抱えてやってきた赤は、 鏡を造り出すと石化ビームを反射してコカトリスを石に変え、ファイヤーアタックで撃破。これにより呪いが解け、 樹海の食事場に石化・転送されていた人々も、次女も、元の姿に戻る。
 コカトリスの敗北を受けてナイとメアは地下へ戻るが、ウルザードさん、地下から魔法でコカトリスを再生巨大化。対する5人は、 新たにダウンロードされた魔法を早速発動する。
 「「「「「我ら、魔人の王となれ、魔人合体、マージ・ジルマ・マジ・ジンガ!!」」」」」
 魔人化した5人は更に変形合体し、3段構えで4話にして遂に、巨大ロボット・マジキングが誕生。
 「マジキング・ナンバーワン!」
 魔法により5人そのものがパーツとなっているわけですが、マジキング状態では精神体がコックピットに集まり、 シリーズ通常と同じ形式に。ただ、下半身はなぜか壺の中(笑) そしてその壺が、チェス盤のような床の上を滑るように移動する、 というのは面白い。
 ロボ頭部は魔法使いの三角帽子のイメージのようで、登場時に、指先で目の上のひさし部をくいっと持ち上げるような仕草をするのが、 格好いい。また、最初から大きな翼がついているというのも珍しい上に格好いいのですが、折り畳んだりの動きはCGだけど、 どうも立っている時は実物に見え、翼広げた状態だと、動けるのかこれ(笑) 当然のように、アクション時は格納していましたが。
 マジキングはマジカルショータイムで剣を飛ばしてコカトリスの動きを封じ(これも格好いい)、 「キングカリバー魔法斬り」で一刀両断。
 「マジで決めたぜ、マジレンジャー!」
 その決め台詞は、どうなのか(笑)
 あと、色々やばい小津一家の場合、「マジでキメたぜ!」という感じで、マジやばい。
 脱法マジックハーブは、勇気と違う魔法だから。
 かくて冥獣は倒れ、姉弟喧嘩も収まり、お父さんも無事に帰宅。
 「魔法使いさん達、ありがとう」
 と、頭上の満月に向けて礼を言う少女、で美しくオチ。
 一方、遅々として進まない地上引っ越しにン・マ様はお怒りで、ブランケンもマジレンジャーに対する苛立ちを強くするのであった……。
 話の中心であった姉弟喧嘩に関しては、特に面白みはなく平凡な落着でしたが、 前回を受ける形で噂話から劇中におけるマジレンジャーの立ち位置を確立した展開は秀逸。また、 少々キザなマジレンジャーのアクション(ロボ戦含む)が、ファンタジーフィルターを通す事で素直に格好良く見えるという見せ方が、 物語の流れにきっちりと収まりました。
 極端に言えば、これを1話に持ってきて、どうしてこんな事になったのか……と巻き戻る、というような野心的な構成も見たかったぐらい。
 特に、据わりの悪かったマジレンジャーの在り方が確立したのはとても良く、リアルとオカルトの狭間の存在として認識されている、 というのは個人的に好みです。
 ところで、勇気と言う名の魔法=悪魔召喚プログラム、マジトピア=ロウ、インフェルシア=カオス、だと考えると、今作、 戦隊版《女神転生》的な部分があるな、と(笑) 怪人のモチーフはファンタジーな怪物ですし(そして怪人デザインの篠原保さんは、 特撮畑での活躍から、この後に『真・女神転生4』に悪魔デザインで参加していたり)。まあ両陣営、 天国と地獄をコンセプトに置いているのは間違いないでしょうから、いやが上にも重なるといえば、それまでですが(^^;
 後もう一つ、個人武器の中でえらくボウガンだけ使われるな、と思ったら、もしかして普通の飛び道具ないのか、マジレンジャー (魔法が飛び道具であるゆえに)。……勇気があれば(そして何かをキメていれば)、飛び道具なんていらない!!
 次回、ラブハンターvs末弟。

◆Stage.5「恋をしようよ〜マージ・マジーロ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:前川淳)
 街で行方不明事件が続発。麗の水晶玉占いにナナフシやコノハチョウの映像が浮かんだ事から、 蒔人は冥獣が何かに擬態しているのではと推測する、と……参謀分の不足している5兄弟、今回は兄者が頭を使いました。なお、 次女はナナフシの名前さえ出てこないというのは、兄者の畑属性の強調の為か。
 その頃、食事当番で買い物に出ていた芳香は、サッカー部のマネージャー・山崎由佳と部の買い物中の末弟を発見し、 ラブエキスパートとして弟の恋路を応援しようと、盛り上がる。
 奥手な弟を助けようと、変身魔法でミツバチに変わって由佳を驚かせようとするが、末弟が振り上げたメガホンは由佳の頭部を直撃し、 大失敗。
 ……しかし危うく、メガホンが直撃した所に追い打ちの踏みつけが入って、 桃色の魔法使いの轢死体が100円ショップの床に転がってしまう危機でした。
 今度は小型扇風機に変身し……うんもうそれ、オチ見えたよ姉さん!
 案の定、北風作戦どころか、スカートめくりで変態行為となり、男子高校生が紳士として振るまいきる事など出来よう筈もなく、 いい笑顔を浮かべて末弟は轟沈するのであった。
 一方、事件を追う3人は占いで見えた建物に向かっていた……あなた方、現有戦力で分散行動は危険だと、早く学習して下さい。 そして案の定、占いが少々、便利すぎるなぁ(^^; 一応、ヒントに限定はしているようですが。
 冥獣を探す3人はナイとメアに遭遇し、合体したバンキュリアの攻撃を受ける。小悪魔×小悪魔=年増、 というのがどういうアイデンティティで成立しているのか、とても気になります(笑)
 その頃、末弟と由佳が入った甘味屋に何故か流れ出すムーディな音楽。 怪しいピンクのラジカセを目にした末弟はここで姉のお節介に気付き、怒りのあまりその後を追う。
 「芳香姉ちゃんだろ?!」
 「いえ、私はただのポストです」
 「ふざけんな! バレバレなんだよ!」
 が、これにより甘味屋に放置を受ける事になった由佳は、先に店を出てしまい、 放課後デートイベントは無残なバッドエンド。 明日から学校で話しかけると、「噂になると困るから、話しかけてこないで」とか言われてしまう、 灰色の青春が待ち受けている事でしょう。
 「嫌われた。完璧に、嫌われた……」
 引っかき回すだけ引っかき回しておいて、「どうせ俺なんかじゃ山崎さんには釣り合わないんだ……」といじける弟に、 「そんな事を言わずに勇気を持って玉砕しろ」と焚き付ける姉のマッチポンプぶりが実に酷いのですが、 あの母の血を継いでいるのだと思うと、実に納得です。
 「勇気を出して! 貴方達の武器は、勇気。いつだって、勇気が魔法を教えてくれる」
 回想シーンで出てくる母親の、改めて修理が必要な感じ。
 戦いが怖かったけど、母の魔法メッセージと5人の魔法使いの歌を聞き、今は勇気と魔法でみんなに夢を運びたいと思っている、 という姉に対して末弟は「何も考えてないと思った」宣言。まあ間違いなく、この姉が、母の血を一番濃く受け継いでいるのでしょう(笑)
 その頃、大荷物を抱えてとぼとぼと帰路についていた由佳は怪しげなタクシーと遭遇し、そのタクシーがトランスフォーム。それこそが、 擬態して人を襲っている冥獣であった!
 人を襲うタクシー、ってどちらかというと妖怪寄りだよなぁ……と思ったら、それが変形してミミック、 というのは面白いアイデアと秀逸なデザイン。なお今回も冒頭で、酔っ払いがタクシーに襲われる描写が入っており、 マジレンジャーと繋げた都市伝説的な要素の強調かと思われますが、作品のラインを一つ作る事に、成功しています。 1−2話の出来は悪かったけど、渡辺勝也−中澤祥次郎−竹本昇は、00年代戦隊では一番信用出来るローテ。
 由佳の悲鳴を聞きつけた魁と芳香が駆けつけ、ミミックから由佳を救うマジレッド。そこにバンキュリアを追ってきた3人も合流するが、 バンキュリアとミミックには逃げられてしまう。果たしてどうやって広大な都市と膨大な車の中でミミックを見つけ出せばいいのか…… そこで芳香が一計を閃き、バンキュリアに変身する事で、ミミックを郊外へ誘き出す事に成功する。
 戦闘では、桃の変身した人間大砲で撃ち出された赤が必殺剣・レッドファイヤースラッシュでミミックを撃破するが、 ウルザードさんが今回も魔法で再生巨大化。前回で基本パターンが確立しましたが、敵の最強幹部が巨大化係なのか。……珍しい?  と思ったけど、遡ると『ダイナマン』とかもそうか。むしろ00年代に入ると、巨大化係が居るのが珍しいか?
 巨大戦では、合体前の人型形態を活かして、赤魔人がタクシーの上に捕まってのカースタント。 アイデアとしては面白かったのですがやはりどうしても、巨大ロボと巨大タクシーには見え辛い(^^;  最後はピンク球を赤魔人がオーバーヘッドキックしてダメージを与え、マジキングに合体して瞬殺。
 この顛末に、地底冥府では怒りのブランケンが大暴れして、剣をウルザードへと突き付ける。
 「もう我慢ならねえ! 限界だぜ!」
 この人達も組織的な動きの見えない困った人達ですが、そろそろ目的意識の見える行動をしてくれるのか。
 地上では、勇気を奮い起こした末弟が由佳に告白。姉に焚き付けられてとはいえ、玉砕覚悟でアタック仕掛けるのは、 男らしいといえば男らしい。
 「私も、小津くんの事が好き」
 まさかの、5話にしてカップル成立?!
 だがしかし。
 「だけど、他に、もっと好きな人が出来ちゃったの。私を怪物から助け出してくれたあの人……。 きっと、あの人が噂の魔法使いなのよ。私、その魔法使いさんに恋しちゃったの。だから……ごめん小津くん。じゃあね、さよなら。また明日ね」

 男の純情、もてあそびやがってぇぇぇぇぇぇ!!

 フリーズする末弟。
 マジトピア鉄の掟により、魔法使いは一般人にその正体を知られるわけにはいかない(やはり、バレると毛虫とかにされるのか)。 つまり、この恋、袋小路。マジレッドの姿でスカートめくりなどをして山崎さんに幻滅してもらう、という非常手段もありますが、 多分そんな事をした日には、マジトピアから刺客が送り込まれてくるに違いありません。
 「でもさぁ、マジレッドの姿なら、彼女も、付き合って、くれるんじゃーなぁい? いひ」
 戦隊では過去に『タイムレンジャー』の「タイムイエローの中身はきっとイケメン」という酷い誤解と擦れ違いがありましたが、 なかなか面白い仕込みをしてきました。メンバーに高校生を入れているという事を拾って、学生の青春ぽい要素を入れてきたのは良し。
 そして勇気を与えてくれる魔法の草とか茸とか色々キメてる疑惑のある小津家の中でも、長女はフルタイムでラリっている事がはっきりしました。 それは自ら、ボールにもなるわけです。
 ところで、告白の行方を隠れて見守る兄姉の中、黄色い魔法使いが気のない素振りをしながら、 弟がフられた途端に物凄い勢いで鼻で笑ったのは、さすがに酷いと思います(笑) あれ絶対、内心で(お、 俺より先に彼女だと!? ……ま、待て、早まるんじゃない…………けっ、やったぜ、ざまーみろ。セーフ、セーフ)という顔だ。
 ここまで、末弟と兄姉がそれぞれ揉めて和解、という構成で一回り。話の内容自体は良くも悪くも月並みなのですが、 支離滅裂だった1−2話からすると、悪くないレベルで落ち着きました。監督は実績あるし、 脚本家も3−5話のレベルぐらいは書けるなら、どうして1−2話はあそこまで破綻したのだろう(^^;
 前回書いたように、劇中におけるマジレンジャーの立ち位置設定は好みなので、これから、面白く転がってくれると嬉しい。あと、 黄色い魔法使いが早く色々レベルアップしてくれると嬉しい。
 次回、ウルザードさん再出張で、果たしてどうなる。

◆Stage.6「闇の覇王〜ウーザ・ドーザ・ウル・ザンガ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 引っ越しが遅々として進まず苛つくブランケンは、ウルザードと喧嘩。ナイとメアによると、どうやらインフェルシア→ 地上のエレベーターに搭載限界があり、現状、インフェルシアは大軍を地上に差し向けられない模様。また、バンキュリア (ないしナイとメア)は、単独でのマントル層突破能力を持っている事が判明しました。
 「すぐに策を講じろ! さもなくば、おまえを斬る」
 「焦るな。見苦しい」
 相手が落ち着いた所ですかさず反撃を入れるウルザードさん、割と根に持つタイプ。
 延長戦に突入するかと思われた喧嘩だが、「おまえらうるせーよ」と偉い人が出てきて水入り。 大統領命令でウルザードが再び地上に出張し、「喧嘩しようぜ」という声が、眠りこけていた末弟の脳裏に響き渡る……。
 が、5人の魔法使いに向けて発されたウルザードの言葉は、何故か末弟にしか聞こえなかった。
 「魁ちゃーん、寝ぼけるのは別に、恥ずかしい事じゃないよ」
 いつもふわふわ夢の中の長女にフォローになってないフォローをされ、兄姉から次々と、ちょっとキメすぎているのでは?  と小馬鹿にされた魁は1人で飛び出し、ウルザードと接触。
 「そうか、おまえだけが感じたか……」
 怒りの魁はウルザードに立ち向かうが、かなうべくなく一蹴される。まあ、 磯部勉さんといえば洋画吹き替えならまずボスクラスですから、当然です。だが、 母親を馬鹿にしたウルザードの言葉がその怒りに火を点け、赤はバースト。
 「なんだあの力は」
 燃える魔法力を身に纏ったマジレッドは、ハイパー魔法斬りでウルザードを吹き飛ばす。
 「フッ。赤の魔法使い。やはり貴様、意外な力を秘めているな。面白い」
 主役格の赤が、個々の特殊能力とは別に、明確に他のメンバーとは差別化された力を持っている、というのは、 戦隊ではなかなか珍しいでしょうか。少年マンガ的な基本設定というか、前回に続いて、ちょっと面白い仕込みを入れてきました。
 赤の思わぬ力に反撃を受けたものの、まだまだ余裕なウルザードはシールドから繰り出す魔犬ビームで赤を吹き飛ばし返し、 戦いに巻き込まれた少年をかばった赤に対し、何故かその剣を途中で止める。
 赤は足がすくんで動けない少年のランドセルをロケットパックに変えて逃がし、今回の魔法ギミック見せ。
 兄姉が駆けつけ、5人揃ったマジレンジャーに対し、ウルザードは巨大化。再び大馬神形態になると、VSドラゴンライダーで、 片や半人半馬、片や竜騎乗、となかなか凄い絵の巨大戦。『デカレン』は細かいギミックと瞬間的な動きに力を入れていましたが、 今作は画面を広く使って、人型形態から離れたデザインでの巨大感、怪獣感を見せる形で、前作と違う方向性を打ち出しているのは面白い。
 壮絶な戦いの末、ドラゴンファイヤーがウル馬神を消し飛ばし、母の仇を討ったと喜ぶ兄妹達。だが、ひとり魁は、 ウルザードに対して何かすっきりしないものを感じていた。
 ウルザードが、子供をかばった自分にトドメを刺さなかったのは、正々堂々とした戦いを望む、一つの勇気なのでは? 何故なら、 ウルザードも魔法使いの筈で、それなら何らかの勇気を力の源にしている筈……。もう少し、ウルザードと話をしたかったという魁に対し、 闇に落ちた魔法使いの事を「魔道士」と呼ぶ、といきなり説明を始めるマンドラ。
 ……なにか、ほぼ変わらない気もしますが、色々紙一重、という隠喩なのか(笑) 実際の所は、 「邪術士/ソーサラー」とかにしたかったけど、字ではともかく、台詞だとわかりにくい(上に言いにくい)とかあったのでしょうが。
 魔道士、或いは、黒の魔法使い。闇に作用する魔法は、勇気とは違う何かを力の源にしている、という。

 えーつまり……課金?

 ウルザードさんは、マジトピアで幾らガチャ回してもスーパーレア魔法が出ないので、インフェルシアに移籍したのか。
 そのインフェルシアでは、どうやら力が強すぎて地上に出る事が出来ないらしいブランケンが、ウルザードの敗北に荒れに荒れていた。 しかしそこに、消し飛んだかと思われたウルザードの声が響き渡る。
 「慌てるなブランケン。全ては計画通り。何もかも、これからだ」
 再び魁の脳裏に響く、ウルザードの声。兄妹はその呼びかけに応え、生きていたウルザードと相対する。
 「まず聞かせろ! どうしてあの時、俺に剣を振り下ろさなかったんだ」
 「フッ……武器を持たず、戦う意志の無い者に手は出さん。魔道騎士たる者の当然の心得だ」
 格好良く語っていますが、恐らく「魔道騎士」自体がこの世に1人ウルザードの自称っぽいので、一言でまとめると、俺ルール、 だと思われます。殴りかかってきた相手が冷静になって「よし、そろそろ話し合おうぜ」という時に不意打ちするのはアリみたいですし。
 「魔法は力。俺は力で、この地上界をインフェルシアのものにする」
 ウルザードはまたも巨大化し、対抗してドラゴンライダー形態になるマジレンジャー。もう一度倒してやる、と意気上がる5人だが、 ウルザードの先程の敗北は、実は計画されたものであった。
 「甘いな。俺はお前達のお陰で、闇の覇王になる力を得たのだ」
 ウルザードはドラゴンの攻撃を受けた際に、5色の魔法力を闇の力と融合させ、自らに吸収。 その力を馬に与え、新たな変形合体を成し遂げる――その名を、魔人合体・ウルカイザー! ……凄く、 格好悪いです。
 マジレンジャーが二段階変形合体なのに対し、敵方も2パターンの変形合体を繰り出してきました。 ドラゴンにざっくりやられたウル馬神形態に、この先出番があるのかは疑問ですが(^^;
 ウルカイザーにはドラゴン火炎が通用せず、さらにマジキングになる時の魔法力も吸われてしまう。ウルザードはその魔法力を用いて、 巨大ブランケンを地上に召喚。念願の穴蔵脱出でテンション高いブランケンはドラゴンを豪快に首投げし、赤魔人も圧倒。しかし、 ウルザードに虚仮にされた赤が、魔人状態でもNT−Dモードを発動。あふれ出るその魔法力により、ブランケンは強制送還されてしまう(笑)
 ブランケンはだいぶ可哀想な人になりましたが、まあ、勢いでいきなり退場よりマシか。今回、冥獣出てこなかったし、今回の冥獣扱いで、 SR魔法を手に入れたウルザードにざくっと刺し殺されたりしないか、少々ドキドキしていました。
 「面白いな、貴様の力は」
 魔力を使い過ぎて膝を付いた赤魔人に対し、ウルザードは余裕の台詞で退場。マジレンジャー5人は完膚なきまでに敗北を喫するが、 魁の秘めた力に興味を示したウルザードにより、見逃されるのであった……。
 敵方パワーアップ&主人公特性見せ回。また、ここまで言及の足りていなかったインフェルシアの輸送力不足が判明し、 大規模な軍事行動が取れない理由がわかりました。その上で、 単独で地上に出てマジレンジャーを撃破できる人が手抜きを決めてしまった為、組織としてのインフェルシアは、 1歩前進5歩後退(笑)
 当面せせこましく人間に嫌がらせするしか出来なさそうで、ブランケンの胃の調子が心配です。

◆Stage.7「夢の中へ〜ジンガ・マジーロ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)
 前回の今回で、暴れん坊大臣ブランケンと、独自のモラル騎士ウルザードの態度と言動が注目される所でしたが、
 「大興奮した赤の魔法使いの力で、大規模魔導陣を生み出す力は封じられちゃった、てへ」
 とウルさん言い訳。
 ブランケンロードはお預け、輸送力を気にせずに地上へ侵攻する為には、引き続き<門>の鍵を探索するしかない…… と7話にしてようやく、これまでのインフェルシアの活動が、ただの嫌がらせではなかった事が判明しました。
 闘う薬罐ブランケンは文字通りに湯気を出しながら去って行き、そこへ現れるバンキュリア。
 「何を企んでるの?」
 「なんの事だ?」
 「ふふふふふふ、見たのよ。何か素敵なものを持ってるのを」
 「目の錯覚だろ?」
 渋い声で、物凄く杜撰な言い訳をする紫の騎士であった。
 「魔法で隠せるもの……ブランケン様には、一応黙っててあげるわ」
 「一つ貸しね」「貸しね」
 バンキュリアはブランケンに「様」付けなのですが絶対の忠誠を誓っているというわけでもないらしい描写が入り、 はからずもブラさんの言う通り、強い者が偉いカオスな支配体制である様子。マジレンサイドで見せたいものが多かった為、 敵方は後回しでもいいだろうという判断になったようですが、インフェルシアの諸々が見えてきて、構造としてはやっとスッキリ。
 その頃地上の小津家では、黄色の特殊魔法である魔法薬作成により5人は前回の傷を癒すが、 何故か赤が深い眠りについたままだった。どうやらバーストモードで本来使えないレベルの魔法を使った副作用で、 魂が夢の中に囚われた状態らしい。そこでマンドラの指示により目覚ましき目覚まし薬を作る事になり、それぞれ、 得意分野の材料を魔法で集める事に。
 薬作成シーンに尺を使い、コミカルに魔法のギミック見せを挟むのは丁寧で楽しく、また、何故か英語の魔道書をすらすらと読む黄色が、 微妙にインテリアピール。……そうか、『ハリー・ポッター』に乗っかっている関係で、マジトピアはブリテン島系列なのか。
 無事に完成させた薬を飲んで黄色が赤を起こしに夢の世界へ入り、上3人は、110番通報を受けて、街へ。 何かと優しいアピールの多い次女ですが、上の弟には割とシビアという事が判明しました。 一方兄者は夢の世界への突入を黄色に任せた理由として、「黄色い魔法使いは知恵者だから未知の世界攻略に向いている筈」 と主張するのですが、それ、あくまで、伝説の歌の話で、貴方たちの事ではないから。
 5人とも伝説の5色の魔法使いの歌に影響を受けまくりなのですが、どう見ても、マンドラ坊やを利用した、 間接的な洗脳です。母、クズいけど身内には策士。或いはそもそも、 マンドラにそういう特殊スキル:《催眠》LV5とかあるのか。それはそれで、その上で用意しておいたのでしょうが。
 街へ出た3人が遭遇したのは、胞子を振りまいて人を溶かす冥獣マタンゴ……じゃなかった、ファンガス。 今回もざっくり一般市民が粉になっており、毎回割とハッキリした被害描写を入れてきます。
 一方、黄色が乗り込んだ夢の世界では、赤がウルさんと闘っていた。
 「あいつを倒すまでは、絶対帰るもんか!」
 とウルさんに立ち向かうも返り討ちに遭いまくる赤は、ここは夢の世界だという黄色の言葉に耳を貸さない。考えた黄色は、 ここはあくまで夢の中なので何でも出来る筈、とドリームマジカル兄の威厳パワーでウルさんを撃破し、 赤にここが夢の中だと納得させる事に成功する。
 「だいたいな、仇討ちは現実の世界で、兄妹5人でやるんだよ」
 クールを気取っているしこの局面でも直接口には出さないけど家族の事は想っている……と、まあ、マジ5人は、 キャラの色づけは非常にベタ。
 ところで5話・7話と、Aパートの最後で悩む(困る)→Bパート冒頭でいきなり解決する、という構成だったのはちょっと気になる所。 Aパートの最後に閃くシーンまで入れるか、Bパートでもう少し苦しむかしてからでないと、 「逆転!」という感じがどうしても弱くなってしまうのですが、監督も脚本も違うのに、どうして悪い所が重なったのか(実績考えると、 初歩的、といっていいミスですし)。
 夢の世界からの脱出を図る翼と魁だったが、夢の世界が急速に崩壊し始めてしまう。 マンドラいわく夢の世界は他人が入ると崩壊を始める……そうですが、えらく早かったのは、 弟の夢の中でいまいち尊敬されていない兄が勝手に活躍したからに違いありません。とうとう真っ暗闇の中に取り残される二人だが、 その時、聞こえてくるクズ母の声。
 「これからも、辛い事がたくさんあると思うけど、みんなで力を合わせて頑張るのよ」
 その“辛い事”の半分ぐらいは、母がしっかり事前に備えておけば防げたのではないかという気がして仕方がないのですが、 それはそれとして、母の導きで脱出に成功する二人。
 茸のスローモー胞子を浴びて苦戦していた上の3人だが、黄色が目覚まし薬の調合ミスで作った “寝返りが早くなる薬”を自ら振りかけるという青の機転でスローモー状態を脱し、反撃開始、そこに下の二人も合流する。
 一応、青が黄から薬を受け取っているシーンはあるのですが、そのままずっと持っているというのも無理があり、 ネタを面白く繋げようとしてみたけど、むしろ無理が出たパターン(^^; 助けに来た下の二人が力技で解決してしまった方が、 いっそ盛り上がったような気はします。
 5人揃ったマジレンジャーは、雑魚とアクロバティックに長尺で戦闘し、次作『ゲキレンジャー』にも繋がっていくのか、 軽業系アクションは、なかなか爽快。黄色は戦闘中に「少しは頭使ってるか!」と自ら頭脳派をアピールしだす。地下のウルさんが、 やられる前にファンガスを巨大化させ、マジキングになれない5人は、魔人化からマジレンジャーハリケーンでそれを撃破。
 改めて、前回を受けてマジキングにはなれない事がハッキリしました。4話かけて出てきた巨大ロボが6話にして封印、 というのはなかなか意欲的で面白いですが、マジキングが格好いい(そして魔人ロボが微妙)なので、正直、早く戻ってきてほしい(笑)  えー……どうでしょう、改めて課金したら、ダウンロード可能になるのではないだろうか。
 前回の始末をしつつ次男の立ち位置を固めるエピソードで、酷く悪くもないけど目立って良くもなく。ただ、 せっかくインフェルシアの行動目的がハッキリしたのに、冥獣は相も変わらず小規模に人間を襲っているだけ、だったのは勿体なかった所。 まあその人間襲撃自体が<門>の鍵と関係ある行為だった……と後々繋げはするのでしょうが、 人間溶かすとのスローモー胞子も繋がっていませんし、デザイン的に面白い冥獣の扱いがぞんざいでエピソードとも関わりない、 というのは残念でした。
 冥獣はここまで、声優をつけずにあくまで「獣」という路線ですが、これは今作の特徴として貫くのか。まあ、 声優で面白くなる部分はある反面、声優に引っ張られすぎる時もあるので、純粋にデザインと特殊能力で見せていこう、 という方向性は一つのやり方として面白い。

→〔その2へ続く〕

(2014年9月22日)
(2019年11月24日 改訂)
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