■『天装戦隊ゴセイジャー』感想・総括&構成分析■


“私が護星の切り札だ!!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『天装戦隊ゴセイジャー』 感想の、まとめ総括。


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☆総括☆

 ゴセイナイト万歳。

 個人的には、「ゴセイナイトと出会えて良かった」に集約されます(笑)
 格好いいは正義。

 比較的ハイターゲット向けになった作品の翌年は意識してターゲットを下げる、というのは戦隊シリーズでは繰り返されていますが、 そこから更に、児童向け作品としての原点回帰を志向したと思われる造り。
 出来る限り一話完結にする・毎回のメッセージ性を少々しつこいぐらいに重視する、という2点が特に重視され、 80年代的な作風への回帰を狙ったと思われる一話完結に対するこだわりは、00年代では実験的とさえいえます。
 本文でも触れましたが、狙った方向性自体は嫌いではないのですが、結果としては物語の流れの中で緩急がうまく付けられず、 ラブコメ回→お菓子回→ゴセイナイトと共闘回→夏のドカンギャグ回→新アイテムでパワーアップ回、 の全てが似たようなウェイトになってしまい、一話完結しながら緩急をつけるという構成の難しさを乗り越えられずに終わってしまいました。
 構成と言えば、4部構成による悪の組織の交代劇とそれらを統合するブラジラ、というのが表向き最大の特徴なのですが (作劇的には一話完結の徹底が最も野心的だと思っています)、企画段階から存在したアイデア、という割には上手く話の流れが組めませんでした。
 最初の敵組織ウォースター壊滅のインパクトを優先したのでしょうが、1年間の流れで見た場合、敵組織のスケールがまちまちになってしまい、 自然なエスカレートとそれにともなう盛り上がりが発生しませんでした。一話完結の徹底による緩急の付けにくさ、 構成の難しさが、そのエスカレーション不足に拍車をかけていたともいえます。
 また、敵組織が交代していくという構想なら、それに対するゴセイジャーの成長や物語のテーマも、 順々に積み重なって最終章に収束する、という1年間トータルでのホップステップジャンプの大まかな設計図が必要だったと思うのですが、 基本的にどんな敵が相手でも最初から最後までゴセイジャーの言動と行動がほぼ変わらない為、 定期的に山場が来るという構造をほとんど活かせませんでした。
 具体的に言うと、第15話のクライマックスも第32話のクライマックスも第44話のクライマックスも、 “大して差が無い”というのが、『ゴセイジャー』作劇最大の問題点であったと思います。
 メッセージ性重視を掲げるあまり、序盤からテーマ的にゴセイジャーを完成させすぎてしまい、 護星天使見習いの未熟な若者達の成長ストーリーではあるが、「護星の使命」だけはやたらめったら強固で揺るぎなく、 その繰り返しが最終話直前まで続いてしまったのも減点。
 トドメに、年間の物語を一つの線に繋げる筈だった肝心のブレドランが、途中で明らかに爆死し、 たまたまた甦ったのに、何事もなかったかのように自己肯定するというわけのわからない事になっており、 基本構想の詰め不足であったように思えます(^^;

 「護星の使命」に関してはゴセイナイトの登場で多少揺らしてくるのですが、折角ナイトを丁寧に描いていたのに、 解決編となる第34話が、「護星天使はどうして人間を信じられるのか?」→「護星天使だからだ!」という無限ループで大惨事に。
 マトリンティス編では、人間至上主義の護星天使達に最大級のアンチテーゼをぶつけてくるのですが、 まさかの完全スルー。スルーするぐらいなら、100%入れない方が良い要素だったのですが、 どうして入れたのか(^^;
 人間では無い護星天使だからこそ、「人間の力とは何か」というテーゼを、人間でない視点から語れるという作品としての強みがあった筈なのですが、 それを自ら放り捨ててしまったのは、非常に勿体ない所でした。
 今作において、護星天使という設定ならでは、という物語を展開するならそこだと思ったのですが、 むしろ「護星の使命」という無思考の理由付けにされてしまったのが残念。この点は最終話直前に何とか、 アラタの言葉で修正して着地しましたが、途中経過が悪すぎました(^^;
 アラタといえば、ぐいぐい引っ張っていくリーダーでもなく、熱血バカ系でもない、 周囲をよく見るバランサー系レッド、というのも今作における実験的要素の一つだろうと思うのですが、 最後までどうも好きになれませんでした(^^;
 アラタ自身が嫌い、というよりも、周囲をよく見て調整/行動できるアラタの二面性というのが、 あまりに話の都合で使い分けられていたからなのですが、動いたり動かなかったりわかったりわからなかったりが、 どうにも都合が良すぎました。
 そういうアラタの共感力の高さ、というのをラストで物語に繋げたのは悪くなかったのですが。

 ストーリー面での総合評価をすると駄目出しばかりになってしまいましたが、作品として良かった所を挙げると、 個人武装の前衛後衛がハッキリしており、メンバー間で明確に戦闘の役割分担がある所などは面白かったです。
 ゴセイナイトの強さを表現する、“滅多に直撃弾を食らわない”“劇中でほぼ膝を付かない”というアクション演出の徹底も秀逸。
 天装術がなかなか馴染みませんでしたが、アクション面のアイデアはそれなりに面白かったと思います。

 総評としては、狙いはそれほど嫌いではないけど、それならもう少し計算が欲しかった。せっかく面白く広げられそうなテーマを、 片っ端から無味無臭に調理して放り投げてしまったのはとても残念。ゴセイナイト最高。
 という所。
 子供向けにシンプルなメッセージ性重視、というこだわりが、物語のブレによる広がりを切り捨てすぎてしまったのではないか、 そんな気がします。


★構成分析★
 〔評〕は、大雑把な各エピソードの評価。◎……名作、○……それなりに面白かった、−……普通、×……駄目回。
 ただし、どこに基準を置くか、を考えるとややこしくなるので、相対的というよりは印象評価だと思ってください。 記憶と感想を読み返してのものなので、微妙にリアルタイムで見た時と、違っている所もあるかもしれません。

話数監督脚本メインキャラ備考
長石多可男横手美智子―― 〔ウォースター侵攻、天の塔崩壊〕
長石多可男横手美智子 〔ゴセイグレート登場〕×
諸田敏横手美智子黒×黄 〔天知家に居候スタート〕
諸田敏横手美智子赤×桃 〔データス登場〕
竹本昇荒川稔久青×黒 〔シーイックゴセイグレート誕生〕
竹本昇荒川稔久赤×望 〔ランディックゴセイグレート誕生〕
渡辺勝也大和屋暁黒×桃
渡辺勝也大和屋暁 〔エキゾチックゴセイグレート誕生〕×
中澤祥次郎横手美智子黄×桃 〔スカイックゴセイグレート誕生〕
10中澤祥次郎横手美智子
11加藤弘之荒川稔久黄×データス 〔データスハイパー誕生〕×
12加藤弘之荒川稔久―― 〔ハイパーゴセイグレート誕生〕
13竹本昇大和屋暁桃×赤 〔ミスティックゴセイグレート誕生〕
14竹本昇大和屋暁黄×青
15中澤祥次郎横手美智子―― 〔ウォースター壊滅〕×
16中澤祥次郎横手美智子
17加藤弘之荒川稔久断罪 〔幽魔獣登場・ゴセイナイト登場〕
18加藤弘之荒川稔久断罪
19竹本昇八手三郎断罪 〔ゴセイグランド登場〕
20竹本昇下山健人――
21長石多可男横手美智子桃×青
22長石多可男横手美智子―― 〔グランドゴセイグレート誕生〕
23中澤祥次郎荒川稔久赤×黒×青
24中澤祥次郎荒川稔久 〔スーパーゴセイジャー誕生〕×
25加藤弘之下山健人黄×断罪
26加藤弘之下山健人青×断罪
27竹本昇横手美智子黒×断罪
28竹本昇横手美智子望×博士
29中澤祥次郎横手美智子―― 〔チュパカブラのブレドラン死亡〕×
30中澤祥次郎香村純子桃×断罪
31加藤弘之荒川稔久――
32加藤弘之荒川稔久―― 〔ゴセイアルティメット登場・幽魔獣壊滅〕
33渡辺勝也八手三郎―― 〔マトリンティス帝国登場〕
34渡辺勝也横手美智子断罪×望 ×
35中澤祥次郎香村純子―― 〔アルティメットグレートストライク発動〕
36中澤祥次郎石橋大助
37加藤弘之横手美智子
38加藤弘之横手美智子断罪 〔ワンダーゴセイグレート誕生〕×
39渡辺勝也横手美智子―― 〔サイボーグのブレドRUN登場〕
40渡辺勝也横手美智子
41鈴村展弘下山健人
42鈴村展弘香村純子青×データス
43加藤弘之下山健人――
44加藤弘之下山健人―― 〔マトリンティス帝国壊滅〕×
45加藤弘之横手美智子―― 〔救星主のブラジラ登場〕
46渡辺勝也横手美智子黒×黄 ×
47渡辺勝也横手美智子
48渡辺勝也横手美智子 ×
49竹本昇横手美智子――
50竹本昇横手美智子―― 〔スカイランドシーゴセイグレート誕生・救星主のブラジラ死亡〕


(演出担当/加藤弘之:13本 竹本昇:10本 中澤祥次郎:10本 渡辺勝也:9本 長石多可男:4本 諸田敏:2本 鈴村展弘:2本)
(脚本担当/横手美智子:24本 荒川稔久:10本 下山健人:6本 大和屋暁:4本 香村純子:3本 八手三郎:2本 石橋大助:1本)


 近年のように劇場版が夏冬2回体制になると、どうしてもそちらに回った監督のブランクが大きくなるのですが、ローテーションに最後に入り、 パイロット版も最終回も担当していない加藤監督が最多演出。
 以下、竹本、中澤、渡辺、と00年代中盤以降の戦隊の常連メンバーですが、渡辺監督は夏映画担当で中盤2クール程度抜け、 竹本監督は冬映画担当で後半20話程度抜け、中澤監督は次作のパイロット版担当でラスト1クールは抜け、 加藤監督にしても初参加は11話、と演出陣の出入りが多いのが特徴。
 パイロット版に長石監督を迎えたのはシリーズ功労者への記念的意味合いがあったかと思われるのですが、 その後も次々と別の監督を投入した結果、1クールに6人の監督が参加する事になったのは、 滑り出しの不安定さを助長してしまった部分が否めません。諸田監督はこの頃、戦隊とライダーを行ったり来たり。
 戦隊シリーズの劇場版2回体制が『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)からであり、諸々、 監督ローテにおける模索期の作品とはいえそうです。

 脚本はメインライター横手美智子が約半分を担当。本人があまりオリジナルが得意ではないと発言しているそうで、 その関係もあってか、5−6を荒川、7−8を大和屋、と早めにサブライターが参加。その後も、 〔横手−横手・荒川−荒川・大和屋−大和屋 / 横手−横手・荒川−荒川・八手三郎(?)・下山(大和屋の弟弟子) / 横手−横手・荒川−荒川・下山−下山〕 という2話ずつローテが第26話まで続くので、横手美智子をシリーズ構成と置いた上での脚本ローテ制を意図していたのかと思われます。
 大和屋暁と入れ替わる形で参加した下山健人は、冬の劇場版、マトリンティス壊滅前後編を担当し、それなりに買われていた模様。 また、2年前に『ゴーオンジャー』で戦隊デビューした香村純子が、これも荒川稔久と入れ替わりに近い形で参加。 この年は『仮面ライダーオーズ』に毛利亘宏が参加しており、新世代の東映ヒーローを担う脚本家達の存在が目立ち始めた時期、 という言い方は出来そうです。
 八手三郎名義の脚本が2本あるのは、ミステリー。

 メイン回配分は、
 〔赤:9(5) 桃:7(1) 黒:7(1) 黄:6(1) 青:9(3) 断罪:9(4) データス:2 望:3 博士:1〕
 ※()内は、単独メイン回。
 コンビで回すエピソードが多く、単独メイン回が少ないのが特徴的。まあモネみたいに、単独エピソードだと思ったらデータスが出しゃばってきた、 みたいなパターンもありますが(笑)
 メイン5人の組み合わせが一通り網羅されているのも珍しいかも……と思ったら、赤×黄だけなかった!

 全体が4部構成で、悪の組織入れ代わりが最大の特徴といえますが、 15話までに一発ネタ含めゴセイグレート6バージョンを出した上で悪の組織を一つ壊滅させる、というは今見ても明らかに無茶。 強化ギミック登場のやっつけ加減は前後を見渡しても極まっている感がありますが、4部構成・ギミック大量投入・12話で監督6人、 という諸々の噛み合わせがとにかく悪く、立ち上がりの物足りなさの要因になったと思えます。
 その後は追加戦士→追加ロボ→合体ロボ→戦隊強化→3号ロボ、と敵組織の交代を挟みつつオーソドックスに進行しますが、 玩具展開の都合だったのか、1号ロボの敗北がなく最後まで普通に現役だったというのは特徴的でしょうか。その為、 3号ロボ(ゴセイアルティメット)の登場がかなり強引になりましたが、 1号ロボが3号ロボの上に乗る(アルティメットグレートストライク)という、3号ロボのギミックを活かした強化必殺技は、 個性的なものになったと思います。

 個人的な年間のピークは、ゴセイナイト登場編の17−19話。これを飛び道具とすると、単発エピソードで特に面白かったのは、 「もう、お兄ちゃんなんていらない」第27話と、夢というキーを綺麗に3段活用した第30話。 天知親子の愛情エピソードである第28話も悪くなく、この辺り固まっているのは、ゴセイナイト関連が一段落し、 ナイトとメンバーの対比を描きながらキャラを掘り下げていくタームという事で、 一番落ち着いて単発エピソードの内容に力を入れられた時期という事なのだと思います。
 その後、悪の組織入れ替わりから「ゴセイナイト・ジャスティス」で大惨事を引き起こし、ブレドランの正体は超がっくり(^^;  「ゴセイナイト・ジャスティス」で一跳ねしていれば終盤の大逆襲もありえたかと思うのですが、儚い夢となりました。
 同じメッセージの繰り返しと、スケール感拡大の失敗で、要所要所が盛り上がらず、上昇曲線を描き損ねた、 というのが全体の構成における短所だと思います。
 満足できる絵を見せてくれてくれたので、最終回はなんだかんだ、嫌いではありません。

 以上、『ゴセイジャー』マラソン(全50話を2週間で視聴)総括&構成分析でした。 視聴当時、どうしてこんなにパワーがあったのか、自分でも思い出せない(笑)

 断罪! 迷いもなく 粉砕!

(2016年5月29日)

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