■『百獣戦隊ガオレンジャー』感想まとめ5■
“開け! EYES OF JUSTICE!
今こそ羽ばたけ 誇らしく”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『百獣戦隊ガオレンジャー』
感想の、まとめ5(33〜40話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ6〕
・ 〔総括〕
- ◆Quest33「少年が祈る。」◆ (監督:舞原賢三 脚本:武上純希)
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ラセツ一味を待ち受けたガオレンジャーは、それぞれ2対1の状況を作っての戦闘に持ち込むが、結局合流。「強い!」……て、
わかってましたよね(^^; ところがその戦闘中、風太郎を餌付けしようとしていたテトムの弁当の匂いにつられてラセツが戦線を離れ、
ガオレンジャーはその隙にプロペラとキュララを撃破。
巨大化した両デュークに対してパワーアニマルを召喚しようとするガオレンジャーだが何故か宝珠が反応せず、窮地に。
その光景を目にした風太郎は、テトムとシルバーを“動物石”へと案内する……それはなんと、忘れられて土の下に埋もれていた、
かつてのガオの戦士達の鎮魂の碑であった。
風太郎によると、人間達の身勝手な開発に怒れる魂の作用で、この土地ではパワーアニマルが召喚できなくなっているとかうんたらかんたらなのですが、
正直、よくわかりません(^^;
いや、説明としてはわかるのですが、今作これまで割と無条件に人間の存在を認めていたので、突然入り込んできた要素が、
ここまでの物語と全く噛み合っていません。
大体、先代ガオレンジャーの魂が人間に怒ってパワーアニマルの召喚を妨害しているってそれ、
怨霊になっているのですが、それでいいのか。
テトムとシルバーが祈りを捧げると鎮魂の碑が元の姿を取り戻し、結界が解除。宝珠の使用が可能になり、
ガオレンジャーはガオキングを召喚する……て、あれ、結局、パワーアニマルは全て復活したという事でいいのか。……もう、
色々よくわかりません(^^;
だがガオキングはプロペラとキュララの攻撃でさくっと分解してしまい、改めて弓矢でファルコンを呼ぶレッド。
……ここまでの展開全てに意味が……。
いや、ファルコンサモナーも宝珠を穴に填めないと使用できないのかもしれませんが、
パワーアニマルが召喚できない!→召喚できるようになった!→ガオキング召喚だ! という流れを作ったのに、
それを粉微塵にしてしまったので、盛り上がりのポイントが全くズレてしまいました。
「こんな所に……おまえ達が眠っていたなんて」
「千年の間に、忘れ去られてしまったのね……」
↑他人事みたいに言ってますが、直系の子孫です。
「人は夢のような世界を作り上げた。……でもその代わりに、色々な大事なものを、壊してしまったのかもしれない」
テトム、シルバー、5人は、移設した鎮魂の碑に改めて祈りを捧げ、これまた急にシルバーが説教オチ。
何故か怨霊になっている先代ガオの戦士、特に盛り上がりのないまま祈ったら結界解除、ガオキング瞬殺、
物語と繋がっていない説教で何か語ったつもりで落とす……と盛り込んだ要素が全く連動しておらず、
本来繋げるべき流れがいちいちせき止められて小さな水たまりになって分断されているという、1から10まで酷い、
今作ここまででワーストクラスのエピソード。
支流を整理して、うまく川の流れにするのが脚本と演出の仕事だと思うのですが、全く出来ていません。
とりあえずテトムの物忘れが激しいのは、記憶操作されている可能性が高い事が浮上しましたが、
テトムの認識と現実のギャップに、実は千年前の戦いに関する大きな謎が隠れている……というような展開があったりするのか。
その辺りの雰囲気を作っておいてくれれば、あれこれは、意外とミステリアスな急展開なのか……という期待感も湧くのですが、
仕掛けが弱いので、単なる事故の気配の方が強いのが困った所。
風太郎は謎のまま引っ張りましたが、色々な事に誰も疑問を抱かない戦隊なので、実は……的な展開と凄まじく相性が悪く、
あまり期待は抱かないでおこうと思います。
ガオズロックの中を舞台風に撮ったり、街の違和感を背景のビルをエフェクトで歪めて表現したり、
これまでとちょっと違った演出ラインだなーと思ったら、舞原監督が参戦。渡辺監督がアナザアギト(『仮面ライダーアギト』)
撮りに出張していたタイミングでしょうか。
全く余談ですが、アナザアギト超格好良くて大好きです。《平成ライダー》でデザイン的に好きなライダーは、
アナザアギトとオルタナティブ・ゼロです、ハイ。
- ◆Quest34「鉄人鬼(オルグ)、泣く!?」◆ (監督:舞原賢三 脚本:武上純希)
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東映特撮ではお馴染みの名バイプレイヤー・諏訪太朗ゲスト回。
オルグに生まれながら人間の為に食べ物を焼く喜びに目覚めてしまい、人間に変身して屋台のオヤジとして生きてきた炭火焼オルグだったが、
短気を起こすと本性が出てしまうのを治せず、ガオレンジャーに反応をキャッチされてしまう。更に、
腹心2人を失って落ち込むラセツの命令で、腕利きシェフである炭火焼をスカウトしにツエツエとヤバイバが現れ、一騒動に。
絶品の串焼きを出す屋台のオヤジが炭火焼の正体だと気付いたブラックは、
炭火焼が人間の心を持っている事を知ると情に厚い所を見せて見逃そうとするが、ツエツエに洗脳された炭火焼は街で暴れ出してしまう。
……そもそもマトリックスのシェフに迎えようとしていたのに、暴れさせてどうするのか。
今作、人間と自然(動物)は地球の仲間、オルグはそれらに対する純粋悪意、というのが基本構造なので、人間と自然の対立、
善意を持ったオルグ、という要素を入れるとかなりややこしくなるのですが、ここに来てそういったエピソードが2話続いたのは、
意図的に基本設定に手を入れようとしているのか、話のバリエーションの都合による勢いなのかは、少々気になる所です。
まあ、人の心に目覚めた怪人、というのはお約束のイレギュラーとして設定云々と別に年1の許容範囲で良いとは思いますが、元々、
オルグにも心がある筈だ、と和平交渉を試みようとした経験を持つレッドが、「駄目だ! 殺るしかない!」
と相変わらず一番割り切り早いのは、それで本当に良かったのか。
走先生、マジドライ。
……歴代シリーズを思い返すと、リーダー型レッドは決断力の高さから割り切りの早い部分は見受けられがちなので、
リーダータイプの正統といえば正統とは言えますが(^^;
一方で、むしろガチガチのオルグ殲滅主義者である筈のイエローが、
「世の中に、いいオルグなんていねぇ。…………だけど、人間に害をなすわけじゃねぇらしい。俺はオルグなんて見なかったぜ。
後の事はおまえに任せる」
と、自分に言い訳して炭火焼を見逃すのは、久々にイエローのキャラが活きて悪くなかったです。
黒と黄の決死の説得により正気を取り戻す炭火焼だが、直後、いつの間にかやってきていたラセツによって殺されてしまう。
巨大化した炭火焼に対して、イカロスが初の地上戦を行い、ウイングがシールドになる事が判明。今回も呪いの目玉で動きを止めてから、
オーバーヘッドシュートで、ジグザグサンバ。
強力ロボの必殺技を割と時事ネタにしてしまった為に、15年後に見るとサッカーへのこだわりがとても謎に見えます(笑)
まあ割とこういう、「実は当時、流行っていた」ネタは、気付かずに通り過ぎていたりするのでしょうが。
ラストは、生まれ変わって屋台のオヤジになりたいなぁ……と散っていった炭火焼そっくりのおっちゃんが、
屋台で風太郎に串焼きを食べさせていた……で、オチ。好みとしては、ガオレンジャーからカメラを動かした所で、
消えた筈のおっちゃんの屋台だけが映る(中を見せない)方が好みですが、今作としてはこういう、わかりやすい路線か。
そういえば:シルバー休暇。
- ◆Quest35「獣皇剣、強奪」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希)
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見所は、空中で後方一回転しながら投げられた4本の剣を両手でキャッチするヤバイバ。
割と凄い気がします。
オルグ反応を感知したガオレンジャーはツバクロ市へと向かい、レッドはそこで風太郎と遭遇する。
「風太郎、随分探したんだぞ」
何故?
レッドが風太郎を気にしている事自体は描写されているのですが、常識の範疇で本気で流浪しているとは思っていない筈なので、
まずこの街で出会った事に疑問を抱いてしかるべき筈なのですが、とにかくガオレンジャーの思考からは「疑う」
という発想が消去されてしまっています。薬が効きすぎです。
「ガオレッドだからって、偉そうに」
「声が大きいよ」
そして急に、正体を隠そうとするレッド。
今まで一度もそんな素振りを見せた事が無いどころか、先日は凄く普通に屋台のオヤジを前に変身を解除していたのですが、
何もかも脈絡がなさ過ぎてどういう顔をすればいいのか悩みます。
一応2001年の作品なのに、開始5分の意味不明さが『超神ビビューン』(1976)と同レベルってどういう事だ。
ラセツの命を受けて食器セットを作ろうとしていた鍛冶屋オルグに、うってつけの素材としてホワイトの獣皇剣が奪われてしまい、
ホワイトを小馬鹿にして出撃した黄・青・黒も、同じく獣皇剣を奪われてしまう。
この戦闘と並行して、ふてくされてガオレンジャー辞める宣言をした白の機嫌を赤が必死に取る、というシーンが入るのですが、
ホントこう、尺が無駄だなぁ……。なお、この様子を呆れた表情で見ていたテトムは、途中で動物園に帰って今週の出番はそれっきり。
登場人物個々の行動にも、何のフォローもありません。
で、今更の白だって年頃の女の子だし話から、皆でフォローし合って頑張ろうぜ、に繋がるのですが、
白の辞める宣言とその後があまりにギャグ扱いだった為、仲間の絆でいい話っぽくされても軽くなりすぎてまとまりが悪く、
どうにも歯車が噛み合いません。
今日もお休みかと思われたシルバー突然の不意打ちから破邪百獣剣で鍛冶屋を邪気退散するも、
ナイフやフォークに打ち直されてしまった獣皇剣ではパワーアニマルを召喚できず、単身戦いを挑んで苦戦するガオハンター正義。
だがその時、ファルコンの声がレッドの胸に響き、レッドはファルコンサモナーに宝珠を填めてガオイカロスを召喚する!
…………「そうか!」って、今気付いたみたいな言動と行動なのですが、
いつもそれ単独で普通に呼んでましたよねガオイカロス……。薬が効きすぎて、遂に短期の記憶障害を起こしているのか。
イカロスオーバーヘッドで鍛冶屋をガオラオすると獣皇剣は元に戻って一件落着。今更ながら、風太郎ってちょっと不思議だよなーとか、
ホワイトが以前に風太郎に会った気がする、とか風太郎関係の伏線を強調して、次回へ続く。
『ガオレンジャー』にしても酷いというか、文芸部仕事しろ、みたいな話が続くのですが、製作資料の大量紛失でもあったのだろうか、
と疑いたくなるレベル(^^;
今回から、アイキャッチとEDが変更。EDは肌色ポエムから、星になったパワーアニマル、みたいに。なお、
青だけ引き続き脱いでいるのは、海の男アピールかと思われます。愛、海への愛。
- ◆Quest36「戦士踊る」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希)
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色々と記憶が飛んだり消えたりしがちなパワーアニマル教団の生活だが、ガオディアスとの約束は忘れていなかったようで、
鹿に歌うテトムとシルバー。
(なぜ、なぜ涙が出るんだろう……)
そして地上でそれに耳をすます風太郎。
だがそんな時に生まれた魔笛オルグの演奏でシルバーの笛の音程が外れた事から、売り言葉に買い言葉で二人は揉めてしまう。
「もうシルバーとはユニット組まない!」
はちょっと面白かった(笑)
テトムとシルバーを「同じ平安時代生まれ」でくくり、仲を取り持とうとするレッドだが、街に魔笛オルグが出現。
初めは笛の音色で子供を踊らせるだけの力しか持たなかった魔笛オルグだが、ラセツの力で強化され、
大人やガオレンジャーも踊ってしまうように。
魔笛の調べを打ち破るにはテトムの歌が必要だと、「テトムにはテトムのいい所がある」と赤に言われた通りの言葉で、
テトムに謝るシルバー(笑) 赤も割と大概ですが、シルバーの不器用さがいい形で出て面白くなりました。
機嫌を直したテトムは「アカペラじゃ歌えないもん!」とシルバーを引きずって現場に急ぎ、なんだかんだ、
テトムをヒロイン位置に収めておくと話がうまく回るので、キャラクターのポジショニングって重要だと思う次第。逆に言うと、
テトムってヒロイン属性を与えないと都合のいい情報バンクにしかならないので、どうしてもっときちんとヒロインにしないのか、
という話なのですけど。
テトムの歌声は見事にオルグの魔曲をかき消すもラセツに妨害されてしまうが、そこに鹿が飛んできてさらっと解決し、
毎度ながらの台無し展開。今作のコンセプトなので致し方ない面はあるものの、Aパート悪くなかっただけに、
もう少し盛り上げられなかったか(^^;
意外と肉弾戦でも強い魔笛オルグを何とか邪気退散するが、巨大化したオルグの広範囲の笛の音に召喚のメロディがかき消されてしまう。
だがその時、突然ゴッドパワーアニマルが登場すると、ガオゴッドが降臨。ゴッド弓矢の一撃が笛を砕いてイカロス召喚が可能となり、
鹿の角で捕まえてからの回転投げ落としという新必殺技でガオラオ。ゴッドは無言のまま姿を消してしまうのであった。
ウラ編の終盤が結構シリアスだった事を考慮してか、軽い感じの単発エピソードの中で少しずつ風太郎の秘密に触れていく流れなのですが、
結果として、話が進むにつれてハイネスデュークオルグが仕事しない印象になっていくのが、困った所(^^; もう少し、
無頓着な邪悪の恐怖、みたいなものが描かれていればまた違うのですが、そういった雰囲気の見せ方はあまり巧く行かない作品です。
今となっては、シュテンは、物凄く真面目な重役だったのだなぁ……。
- ◆Quest37「ヤバイバ燃える」◆ (監督:竹本昇 脚本:武上純希)
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ガオズロックの外壁をよじ登っていた風太郎、青に拾われて岩の中へ。
「亀が僕を呼んでたような気がしたんだ」
か、亀……気力……ううっ、頭が……。
そこはかとなく、カルト繋がりを感じる戦隊です(笑)
記憶喪失で身元不明を自称する風太郎はパワーアニマル教団に居候する事になり、精神年齢が近い為に意気投合した青と、
家族を探す事に。合流した黄色と共に各地を回るが手がかりが掴めず、3人は風太郎に引きずられて遊園地へ。だがそこには、
弟分のジャグリングオルグとチームを組み、手柄を得ようとするヤバイバの影が迫っていた。
注目は、苦戦する巨大ジャグリングオルグを助ける為に自ら巨大化し、ジャグリングが久々のアニマルハートでガオラオされた後も、
キング&ジャスティスに単身立ち向かおうとする、兄弟盃への仁義を見せるヤバイバ。
結局、時間切れで縮んで撤退しましたが、仲間同士での、思わぬ情の厚さを見せました。
戦い終わり、シルバーの素顔を見た風太郎は、どこかで知っているような気がする……と呟くのであった。
- ◆Quest38「精霊王頂上決戦」◆ (監督:竹本昇 脚本:武上純希)
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あらゆる猛獣を自在に操る力を持つ、猛獣使いオルグが登場。今作のこの、最後に「オルグ」ってつけておけば何でもいい、
という姿勢は嫌いではありません(笑)
猛獣使いオルグの力はパワーアニマルさえ従わせてしまい、ガオレンジャーに牙を剥くガオキング。ガオハンター正義が割って入り、
一匹狼の集まりだから調教なんてされないぜ! というロールプレイ回避を発動するがキングに殴り返され、
ガオレンジャーは残ったアニマルでガオマッスルストライカーを召喚する。
猛獣使いとガオレンジャーは互いにパワーアニマルを呼び寄せ合い、ガオキング<キリン&ゾウ>、ガオマッスル<鹿>など、
これまで用いられていない換装合体が次々と登場しての激しい戦いに。
なおガオハンター正義は、背後で猛獣使いに叩きのめされていた(最近、何の役にも立たない……)。
激闘の末、マッスルが大ダメージを受けて倒れ、ガオレンジャーが叩き出された事により、マッスルも猛獣使いの支配下に入ってしまう。
ガオレンジャーの必死の叫びも虚しく、キングとマッスルがガオレンジャーをぷちっと潰そうとしたその時、
駆け込んできた風太郎が呼びかけると、その声がパワーアニマルに届き、キングとマッスルの洗脳が解除される。
終盤戦へ向けた重要な要素という事なのでしょうが、風太郎の謎の力を強調しようとするあまり、
ガオレンジャーの言葉は完全無視だったのに、全く交流の無い少年の呼びかけで正気に戻るという、ある種の地獄絵図に。
勿論そこがポイントなわけですが、少々やりすぎた感があり、もう少しガオレンジャーの声にも意味を持たせて3クール分の積み重ねを盛り込んで欲しかった所です。
しょせん、獣は獣。動物との間の心の絆なんて、幻想に過ぎなかったんだ!
そして、レッドの「俺は動物と話せる」発言は、ほぼ完全に妄想である事が確定。
キングとマッスルは自主的に猛獣使いオルグを攻撃して能力の要である鞭が壊れ、イカロス召喚からオーバーヘッドアルマジロシュートでガオラオ。
「あの小僧の、あの力は……!」
窮地を脱したガオレンジャーだが、風太郎の姿を見て、ラセツは何かに気付くのであった――。
今回、風太郎が謎の力を発揮する時に風を巻き起こすエフェクトがかかるのですが、風太郎の名前は、
初期のガオシルバーが口走っていた「風が教えてくれた」と掛かっていたのは気付いていませんでした。最近、口走ってなかったから、
その路線は気の迷いという事にして忘れたのだとばかり思っていましたよ……!
今作の特性を活かし、これでもかと合体バリエーションを注ぎ込んだ巨大バトルは終盤のロボ回として割と良かったのですが、
パワーアニマル総登場のエピソードで、ガオレンジャーとパワーアニマルの絆は陽炎のようなものに過ぎなかったと判明する、
というアクロバット過ぎてサーカスの床が抜けるエピソード。
次回、東映恒例、忘れた頃の環境破壊ネタ、なのか?!
- ◆Quest39「神が連れ去る」◆ (監督:舞原賢三 脚本:武上純希)
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「そもそも人間に地球を守る資格なんか無いんじゃないの」
突然繰り出される忘れた頃の環境破壊ネタ!
ラセツはガオズロックを飛び出した風太郎と接触すると、ゴミの山からオルグが生まれる姿を見せ、「この千年、
星を壊してきたのは人間だ」、とチーム・オルグへの移籍を持ちかける。ガオレンジャーの前にラセツらと一緒に姿を現し、
凄まじい念動力を見せつける風太郎……その正体はなんと、ガオゴッドであった!
ナ、ナンダッテーーー?!
「私は、オルグには味方しない。だが、人間に味方する事もしない」
ゴッドはさすがにラセツに取り込まれる事はなかったが、人間との訣別を宣言。
「地球を護る者として、人間を選んだのは間違っていた。ガオの戦士として、人間はふさわしい存在ではない」
急に目覚めたと思ったら好き放題言うだけ言うと、ガオゴッドはガオキングを回収、空の彼方へ消え去ってしまうのだった……。
「神は――人間を、ガオレンジャーを……見限られた」
と、ガオレンジャーは大ショックを受けるのですが、パワーアニマル教団としては神様でも、
外から見ると“得体の知れないロボット”でしかないので、物語として効果を期待した程のインパクトには欠けます。
しかも戦力ヒエラルキーとしては、〔ガオゴッド<百鬼丸<ガオハンター+闇狼の邪気〕なので、絶対的な力を持っている、
というわけでもありません。
ゴッドの真価は直接戦闘力にはないのかもしれませんが、ロウキの出自の為の設定であった、ゴッド<百鬼丸という戦力ヒエラルキーは、
どうも延々と、足を引っ張っている気がします。
これらの要素が相まって、「神」の存在がかえって世界観をパワーアニマル教団の内輪の価値観の中に閉じ込めてしまい、
本来は地球規模の筈の物語が、狭い箱庭の中に囲われてしまいました。
後そもそも、ガオレンジャーは拉致った一般市民を洗脳し薬漬けにして半強制的に戦わせてきた戦隊なので、
「おまえらの戦いに巻き込まれたせいで、可愛い動物たちが傷ついた、ぷんぷん」とか言われても、
120%意味不明のキレ方です。気まぐれな超越者の言動といえばまさしくではありますが、
人間社会全体はともかく、少なくともガオレンジャーはガオゴッドの被害者だと思うのですが。
- ◆Quest40「天空島、滅ぶ」◆ (監督:舞原賢三 脚本:武上純希)
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ゴッドを説得してくる、と亀島へ向かったテトムだが、そこは見渡す限りの荒野と化しており、テトムはショックで引きこもってしまう。
これにより薬物の効果が減退し、覇気を失っていくガオレンジャーだが、人々を見捨てるわけにはいかない、
とパワーアニマルの力なしでブリキオルグへと挑む(なお、何故か変身は出来る)。
ブリキに破壊された工場で、瓦礫に挟まれた仲間を見捨てて工員達が我先に逃げ出す姿に、
「見たか、これがお前達が護ろうとしている人間どもの正体だ!」
とラセツが突然言い出すのですが、人間に対する純粋悪意であるオルグにとって“人間どもの正体”も何も無い筈な上に、
ガオレンジャー達の精神を揺さぶろうとする意義もあまり見えず(戦力で圧倒的に優位に立っているので)、物凄く意味不明な台詞に。
だが、逃げ出したと思われた工員達は、手に手につっかえ棒などを持って、仲間を助けに戻ってくる。
「見たかラセツ! 今のみんなの姿を!」
ラセツがこれに、悔しそうな反応をするのも、“よくある約束事”でしかなく、今作においては意味不明。
「人間は過ちを犯す。でも、自分が傷付く事も恐れず、子犬を助け、仲間を救いに走るのも人間だ! 人間は、その手で、
地球を護る事も出来るんだ!」
そして、物凄い論理の飛躍を見せるガオレッド(笑)
根本的な所では、それを伝えるべき相手はガオゴッドなのですが、
終始ラセツがゴッドの代理人を務めるというちぐはぐかつ悪質な展開。ラセツがラセツの思想と関係無い所で、
ゴッドの代わりにガオレンジャーの矢面に立たされてダシにされるという、酷い扱いを受けました。
「たとえどんな過ちを冒しても、人間はそれを改める事が出来る。俺は、そんな人間が大好きだ!」
そして、神に見捨てられても戦い続ける、という決意表明として台詞だけ抜き出すと格好いいのですが、色々な作品で度々書くように、
こういった台詞は、それまでの物語の積み重ねがあってこそ活きるのであり、
今作においてこれまで“過ち”と“それを改める人間”の姿が積み重ねられてきたのかというと、甚だ疑問です。
ヒーローが理想論や希望を語るのは構わないのです(むしろヒーローはその為に居る)。しかし序盤ならともかく、
終盤まで話が進んできたら、それを支える中身がここまでの物語の中で描かれていなければなりません。ですが、それが無い。
結果ただ、まとまりのいい台詞を言わせているだけになっており、大きな山場で3クール分の物語をまとめる言葉としては、
あまりにも中身が空虚。
その頃、千年の友・ガオゴッドに、現代の人間達と一緒くたにされて落ち込んでいたシルバーは、「やっぱりおまえは千年の友だから、
儂と一緒にアニマルパラダイスでいちゃいちゃしないか?」とゴッドから誘いを受けていたが、ブレスから響いてきたレッドの言葉に、
自分も今に生きるガオレンジャーの仲間、とゴッドをフって5人の元へ駆けつける。
「みんな、俺もお前達の言う、希望ってやつを信じたくなった」
一匹狼属性のウルフ達も戻ってきて、巨大化したブリキに立ち向かうが、一方的にぼこられるガオハンタージャスティス(役立たず)。
だがそこにテトムが復活し、皆のアニマルエネルギーを送る事で青い月の力により、ガオハンターブルームーンにパワーアップ。
更にそこに、ガオゴッドも現れるとハンターの戦いに協力する。
「成長したな、シルバー」
なんか言い出した。
ゴッドとハンターブルームーンは、合体攻撃でブリキをガオラオ。ゴッド風太郎は白い服に着替えて7人の前に姿を現し、
臨死体験した4人があの世の入り口で出会った謎の少年が、ゴッド風太郎であったと判明する。
「皆、よくぞ悟ったな。人は、過ちも犯すが、正しく導けば、この星を救う素晴らしき力を持つ。それを知ってこそ、
戦士としての資格を持つ事ができる。此度の試練、お前達にそれを知ってもらいたかったのだ」
全ては! パワーアニマル教団の信徒が! 新たな階梯に進む為の! 神の試練だったのだ!!
ナ、ナンダッテーーー?!
「つまり、我々パワーアニマル教団こそが、愚かな人間達を正しく導く存在なのだ」
……とは続きませんでしたが、えー、いったい誰が、“正しく導く”のでしょうか。
「正しく導けば」部分は無くても成立したと思うのですが、実は今作、自覚的に宗教戦隊やっているのか。
試練を終えたゴッドは天空に消えていき、信仰の力を更に増したガオレンジャー達は、更に強い結束を得るのであった!
えー……あー……色々と問題が多いのですが、特に大きいのが、全体の構成として、ゴッドが風太郎だった意味がほとんど無い。
長々と風太郎を引っ張っていたわけですが、ゴッドが覚醒した途端に風太郎の人格が完全に消滅しているので、
覚醒後に風太郎であった要素が全く活用されていません。つまり、32話からの風太郎の存在意味が単なるミステリを引っ張る為だけの道具扱い。
例えるなら指紋の無い凶器のナイフや現場の謎の遺留品のような扱いで、
仮にも人格を持たせたキャラクターの用い方としては誉められたものではありません。
元々ゴッドが31話の時点から風太郎モードを持っていて、32話以降は全て演技だったとすると、
ゴッドが最低すぎますし。
また仮にそうだったとしても、32〜38話の間で“風太郎として見たもの”が、39−40話の展開に活かされてこそ、
記憶喪失の少年のフリをしていた意味が物語として出るのですが、それも無かったので、どちらに転んでも、
風太郎の意味が無かった(極めて薄かった)事に変わりはありません。
また、39話で風太郎が持ち出した環境破壊などの問題は、現実的な問題であり、ガオレンジャーが地球の命全てを護る戦隊だとすると、
現在進行形の問題に対して「後で改めるからいいよね」というのは、実は問いに対する答を全く出しておりません。
人間であるガオレンジャー達はともかく、ゴッドまで「過ちも犯すが、正しく導けば、この星を救う素晴らしき力を持つ」
と後回しOKで人間中心主義になってしまっており、今作で本来押し出すべきパワーアニマルの要素(自然や動物との繋がり)
が吹っ飛んでしまっています。
工場の被害に犬を混ぜて、物凄く強引に動物アピールしましたけど。
未来への希望・可能性を語るなら、それを否定するものに納得させる展開が必要なのですが、ガオレンジャーが何も証明しないまま、
ゴッドが「うん、儂も最初から知ってた」と言ってしまう為、そもそもテーマめいて持ち込んだ問題提起自体が、
なんちゃってだった事に。これは非常に、物語として不誠実で疑問を感じます。
せめて、これまで拉致から半強制で戦っていたガオレンジャーが、自ら戦う意志を見つめ直して神を乗り越えるというような、
戦士としての明確な成長要素が描かれれば良かったのですが、ゴッドの「いや、今までのは試練だったからのっぴょろぴょーん」
に皆で納得してしまうので、盲信だけが増しました。そもそもガオレンジャーの5人はゴッドを信仰する理由が非常に薄いのですが
(ほとんど会っていないし、助けられたかも微妙)、いつの間にかすっかり取り込まれていて、カルト怖い。
→〔その6へ続く〕
(2015年11月23日)
(2019年7月28日 改訂)
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