■『百獣戦隊ガオレンジャー』感想まとめ4■


“野獣の爪 野獣の牙 魂をたぎらせて
ガオキング! ガオキング! 撃てよ! 撃てよ!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『百獣戦隊ガオレンジャー』 感想の、まとめ4(25〜32話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕  ・ 〔まとめ3〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕  ・ 〔総括〕


◆Quest25「三代目鬼姫参上」◆ (監督:竹本昇 脚本:武上純希)
 今回もまだ、GAO SILVER。
 そして劇中で一度も名乗っていないのに、「大神月麿」だけ固定なのが謎。
 ウラ撃破を記念すると同時に、シルバーとの交流を深める為に祝勝カラオケパーティを企画するガオレンジャー。 だがそこに新たなハイネスデュークオルグ・鬼姫が現れ、カラオケオルグを誕生させる。人々が猫語で喋るようになった事件に駆けつけた5人は、 怪しいカラオケボックスを調査している内に、すっかりカラオケを楽しみ始めてしまう……。
 さすがに、オルグの被害を無視して調査の名目でカラオケに興じだすガオレンジャー、まで行くと、 どういう顔をして見ればいいのか悩みます。
 まあ過去にも、某バト○フィーバー隊みたいなのもありましたが、あの人達は、基本的に普段からやる気無いし。
 その為、5人の前ではクールを装っているけど、1人だと割と寂しがり屋でテトムとデュエットの妄想とかしてしまう麿、 とかもどうも素直に楽しめません。
 「テトムとカラオケか……もう一度誘ってくれたら、うんと言おう。そうだな。あまり拒むのも悪い」(独り言)
 5人に誘われた時点ではカラオケ=音曲、と言っていたのに、妄想ではカラオケマシンがはっきりと思い浮かんでいたり、 知識ギャップの演出もガタガタ。……まあ、5人と別れてからビリヤードバーへ入り込むまでに、 ネットカフェで現代の知識を詰め込んだのかもしれませんが。なお、金は無いので窓から逃げました。平安ニンジャだから!
 「お前達に会いに来たんじゃない。風が俺を呼んだだけだ」というハードボイルド発言に関しては、 実際にオルグの気配を風で感じ取れる事が判明し、ありのままの事実なら仕方ない。
 ガオウルフがバイクに変形してシルバーは1人だけ乗り物を手に入れ、カラオケオルグを撃破。 ガオレンジャーが破邪百獣剣でガオラオすると、鬼姫はツエツエがウラの力で強化されていた事がわかり、 5人と銀は巨大化したカラオケオルグを撃破。ツエツエに力を与えていたウラのパーツにその顔が浮かぶと、どこかへ消え去り、 ウラはまだ完全に死んでいなかった……というオチ。
 「オルグあるところ風が吹き、その風は必ず俺を呼ぶ」
 「あんた! あんた格好いいよ!」
 21話ぐらいからイエローのテンションがおかしいのですが、恥ずかしい過去を仲間に知られた事(第20話)で、 「俺達は戦士だ!」路線を諦めて、素が出ているという事なのか。もう、この方向性で行くのか。
 そして闇狼の面が復元され、不穏な気配が漂うのであった……演出も基本ギャグ寄りで、繋ぎのギャグ回という事になりましたが、 少々、笑えない所へ踏み越えすぎた感があります。
 玉山鉄二の顔はホント格好いいけど!
 ただ、顔は格好いいのだけど演技が役柄に全く追いついていないので、5人の前でクールに振る舞うシルバーと、 1人で寂しい時のシルバーと、戦闘中でテンション高い時のシルバーが、演じ分け、というレベルに達しておらず、 ただの別の人にしか見えないのは、作品として結構きつい。特に戦闘中はほぼレッドと同一人物と化しており、 演じ分けをさせるならさせるで、脚本と演出でもう少し、役者の演技をフォローしてほしい所です。

◆Quest26「狼鬼、ふたたび」◆ (監督:竹本昇 脚本:赤星政尚)
 今作もしかして、80年代戦隊の尺だったら面白いのではないか、と思う今日この頃。間違いなく意識してやってはいるのでしょうが、 シンプルにしすぎて、内容に対して尺が長いのだよなぁ……。で、その尺を埋める為のギャグシーンがどうも面白くない、という悪循環。
 まあこの辺り、時期的に《仮面ライダー》との差別化などの事情もあったのかなとは思う所ですが。
 ビリヤードバーでマスターに改めてビリヤードのルールを教わっていた麿は、風に呼ばれて、復活したロウキと出会う。実は、 麿が闇狼の面から解放されたのと同様に、闇狼の面とそこに宿っていた邪気も、シロガネという人間の体から解放されていたのであった。 魔獣に邪気を供給しなくてよくなったフルパワーのロウキはシルバーを追い詰め、咄嗟にトドメの一撃からかばったホワイトとシルバーは水落ち。
 ロウキ時代初期のホワイトの治療ネタが持ち出され、麿の心の隙間に忍び込もうとする白だが、麿は白の治療を拒否し、 変身するとウルフバイクに乗って走り去ってしまう。
 「どうして……?」
 ヒロイン力が足りないのだと思います!
 ロウキが白を助けたエピソードは拾わないよりは拾った方がいいのですが、やはり拾うなら、 ロウキの正体が判明する前に持ち出すべきだったよーな。治療に使った薬草から、今の時代にはない筈の物=シロガネと繋がったようですが、 これ自体がそもそも、ロウキが過去のガオの戦士であった、という伏線に使うつもりだったのではないのか。
 シルバーはロウキにバイクで特攻し、大爆発。ロウキの肉体は崩壊するがツエツエとヤバイバが面を奪って逃走し、それを追った麿は、 その夜、再び復活したロウキの襲撃を受ける。またも窮地に陥ったシルバーを助けて再起動したウルフバイクが単独で突撃。
 「乗りな」みたいに顔を向けるバイクが超イケメン(笑)
 今回一番格好いいのは、ここの、バイク!
 銀「……お前達! 俺に命を預けられるか」
 赤「ああ。ガオの戦士は、千年前も、今も6人だぜ!」
 白「シルバー……!」
 銀「勘違いするな。ガオウルフの頼みを聞き入れるだけだ。それに、今度傷を負われても、俺にはもうあの薬草はない」
 野宿だと、HP全快しないからね……!
 白「あたし達6人で闘えば、傷なんて負うわけないじゃない!」
 6人揃ったガオレンジャーは猛然とロウキに襲いかかり、赤の1人破邪百獣剣から、銀がブレイクショットで大ダメージを与えると、 ロウキは自ら巨大化。巨大ロウキはアルマジロシュートを跳ね返してキングとハンターを追い込むが、 銀がマスターに教わったマッセを利用し、高速スピンアルマジロショットによる反撃で、角を折る。 そこから邪気が漏れて弱った所にトドメのノコギリ突きを叩き込み、今度こそ闇狼の面は砕け散るのであった。
 ……アルマジロは最初こそ声があって少し特別扱いだったのに、 最近は黙って蹴られたり突かれたり打たれたりするだけで、その内脱走しそう。
 闇狼の面を砕いた事で千年の邪気が晴れ、とうとうシルバーがパワーアニマル教団に再入信しようかというその時、 不吉な風と共にウラがその姿を見せる。邪気を集めてロウキの肉体を復活させたのはウラであり、 ウラは未だ存在する千年の邪気を用いてシルバーへの復讐を宣言するのであった……。
 あまりに酷い退場劇と思われたウラが復活……ですが、そもそも面白みが薄いキャラクターだったので、 引っ張られてもそれはそれで盛り上がりません(^^; 追加戦士の正式加入を引っ張る展開があまり好きではないので (第三勢力的なポジションがしっかりしていれば別ですが)、そろそろ麿には恥ずかしい過去とか大きな声では言えない趣味をカミングアウトして、 覚悟を決めていただきたい。
 最近地味になっていた白のヒロイン力を上げに来たのは良かったと思います。……今もって、 一番ヒロイン力が高いのはムラサキですが! むしろ前回の回想に登場して上げに来ている上に、 役者さんが二役で済むので油断できない。

◆Quest27「雛がすねる」◆ (監督:松井昇 脚本:武上純希)
 ガオバイソンが復活し、久々に普通のガオキングを召喚するガオレンジャー。
 「特訓をするなら協力するぜ!」
 ガオハンター正義に乗って現れるシルバーは本当、変身すると性格が赤いのと一緒になります。
 ところが、ウラが千年の邪気を集めて生み出したツボオルグの特殊能力により、キングとハンターがツボの中に吸い込まれてしまう。
 ……ロウキ編で延々と目的になっていた行為が、3秒で果たされてしまった(笑)
 更にガオレンジャーの前には、邪気のおまけで強化され、着ぐるみが凶暴になったツエツエとヤバイバも姿を見せる。
 「ヤバいぐらいに、殺る気満々だぜぇ!」
 「こら! 人の座右の銘を!」
 それ、座右の銘だったのか……。
 やはり走先生の前の前の職は、外人傭兵部隊なのでは。
 残りの宝珠でもガオマッスル<ストライカー>なら召喚可能だが、ソウルバードが無くては力を発揮できない、 と悩むガオレンジャーの元へ、ツボの中のソウルバードが懸命に送り込んだ力が届き、第二のガオの卵から、 人相の悪い第二のぴよちゃんが誕生する。ところがどうやら悪の魂を分離して作られたらしいぴよちゃん2号は性格が悪く、 ガオレンジャーに協力しようとしない。再び現れたツボオルグが巨大化し、ロボット抜きで苦戦するガオレンジャーを傍観する2号に、 テトムは切々と6人の戦士の想いを語る。
 ……のですが、そもそも性格の悪いぴよちゃん2号が、物語の都合だけで脈絡なく出てきているので、 それに対してテトムが語りモードに入られても、何も盛り上がりが生まれません(^^;
 教団が2号を邪険に扱ったとかならまだともかく、生まれてきた時点で目つきが悪かったので、「すねる」も何も無いですし。
 まあともかく、テトムの説得がクリティカル成功し、ぴよちゃん2号はソウルバード2号になってガオマッスル<ストライカー>が誕生すると、 筋肉分身シュートでオルグを撃破。キングとハンター正義は無事に復活し、陰と陽のソウルバードも一つのソウルバードに戻るのであった。 だが一方で、ウラの手元には熟成されより強力になった邪気が集まっていた……。

◆Quest28「奥義、伝承!!」◆ (監督:松井昇 脚本:武上純希)
 見所は、凄く直立して宙を舞う市民の皆さん。
 ボウリングオルグのボウリング球攻撃を受けてなので、被害者をピンに見立てたという事なのでしょうか(^^;
 ウラが新たに千年の邪気を集めて生み出したボウリングオルグの攻撃により、高々と吹き飛ばされたガオレンジャーは、山中に着地。
 「あれ? 誰か足りなくない?」
 「「「「…………ブラック!」」」」
 犬神家状態で地面に突き刺さっているブラックを発見し、引き抜きながら「あ、生きてる」と呟くイエロー……と、 2クール目中盤ぐらいから、作品として“メンバーが常に変なテンションで、隙あらばギャグっぽい行動と発言を挟み込んでくる” という路線が確立してきたのですが、やはり、ガオズロックの中には嗅いでいると気持ちが高揚してくる甘い香りが常に漂っているのでしょうか。
 前回は調合ミスで一度に嗅ぎすぎたのか、テトムが脳をやられていましたし。
 オルグのボウリング攻撃を破るには、奥義トルネードスピンしかない、 とかつて働いていたボウリング場でその使い手であったプロボーラー・ドン片山を探すブルーだが、 片山はその奥義により手首を痛めて引退していた。そうとは知らず教えを乞う青を邪険に扱う片山に、一斉に胡麻をするガオレンジャー。
 ホワイトにドンの肩を揉むように指示を出すレッドは、やはり人間として信用出来ません。
 「おまえみたいな中途半端な気持ちの奴には、ものにならねぇ」
 「待って下さい。今の言葉……取り消して下さい。こいつの……どこが中途半端なんですか? 取り消して下さい」
 過去に自分の期待を裏切ったブルーに厳しい態度を取る片山に対し、レッドが仲間の為に言葉を作る、というここは良かったのですが、が……
 「レッド……」「やめとけ、レッド」「レッドの言う通りよ!」
 例の如く例のように、何も知らないおじさんの前で始まるスーパーカルトタイム!
 「俺の腕一本ぐらいで、地球が救えるなら!」
 片山さん視点だと、しばらく姿を見なかった知人が、どっぷりと変な組織にはまって帰ってきたという、 恐怖しか感じない光景。
 今作の、メンバーがコードネームで呼び合う、という設定自体は使い方次第だと思うのですが、 既に「過去も名前も捨てたハードな戦士」路線は崩壊しているのでこだわる必要性は薄いですし、 何より「一般人の前でコードネームで呼び合っていたら頭おかしいかふざけていると思われる、 という観念がメンバーの誰にも無い」というのが、非常に問題。
 ガオの戦士になるという事は、過去や名前を捨てるどころか、人間として大事な何かを失ってしまう事なのだと、 つくづく思い知らされます、
 千年の邪気への責任を感じ、単身ボウリングに挑んだシルバーはボウリング球をブレイクモードで打ち返そうとするも失敗(なお、 ビリヤード場のマスターが今回もちらっと出演)。そこへやってきたガオブルーは、 ドンから教わった奥義トルネードスピンによりボウリング対決に勝利する。
 だが巨大化したボウリングの攻撃により、キングとハンターが次々と合体分離してしまい、ワニ、サメ、トラが戦線離脱。 そこで赤が奇策を思いつき、ライオンを中心にウルフとハンマーヘッドを両腕にする新たなコンパチ合体、 ガオキング<バージョン違い>が誕生。バージョン違いはアルマジロを大回転魔球で投げつけ、 ボウリングの投球を上回って撃破するのであった。……ブルーの時はボウリング同士の対決でしたが、 今回は明らかに野球です。異種格闘技戦に持ち込みました。
 レギュレーションを、確認しない方が悪いのだ!
 千年の邪気を追った6人はウラと遭遇し、オルグを倒せば倒すほど、恨みの念で邪気の力が強まっていく事を知る。
 青「恨みの念より、友情の絆の方が、きっと強いに決まってる!」
 果たしてガオレンジャーは、邪気を払う事が出来るのか。そして次回、テトムは待望のヒロイン力を手に入れる事が出来るのか?!
 なお、前回特にこれといった転換点はなかったのですが、今回からシルバーが正式にOP参加。そしてしれっと、ゴッドも参加。 追加戦死がOPにバンク付きの正規メンバーとして登場するようになったのは、今作が初との事。

◆Quest29「鹿が癒す」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:赤星政尚)
 千年の邪気から墓石オルグが誕生。今作のデザイン傾向から、墓石まんまから手足が伸びているような姿かと思いきや、 墓石そのままは頭部だけで、意外と人型。墓石の強固な装甲に苦戦するガオレンジャーだったが、 シルバーの攻撃を陽動に用いた傭兵レッドが懐に飛び込んでライオン砲を零距離射撃し、墓石、壮絶な出オチで爆死。
 開始5分で巨大化した墓石に対し、ガオレンジャーは今回もバージョン違いを召喚。ナレーション、 勝手に<アナザーアーム>と命名し、無軌道な浸食が止まりません。
 忘れられていたキリンとゾウが援護攻撃をするも墓石ボディに跳ね返され危機に陥るガオキングだが、 突如現れたガオディアスが墓石の動きを封じ込める。ガオディアス……それは、癒しの力を持った鹿のパワーアニマル。 その能力はパワーアニマルには回復をもたらし、逆にオルグに対しては邪気を弱める力となる。
 ディアスを仲間に出来れば連戦で傷ついたアニマル達を治せる、と喜ぶガオレンジャーだが、 今日までディアスが姿を見せなかったのには一つの理由があった。 それは千年前――ムラサキの歌声を聞く事を何よりの喜びとしていたディアスだが、 ムラサキとシロガネがいちゃいちゃしていた所に赤いオルゲットが乱入。 シロガネをかばって喉に傷を負ったムラサキは以前のように歌う事が出来なくなり、それ以来、 ディアスは教団の前からその姿を消していたのであった。
 ……けっこう昔から、駄目男でしたシルバー!
 シルバーは笛を奏でてディアスを呼ぶと土下座を敢行するが、男の土下座に興味ないとスルーされる。 だがその時、ガオゴッドに導かれたテトムがそこに姿を見せる……。
 一方、ディアスの戒めを解いた墓石が再起動し、ガオレンジャーは筋肉ストライカーで挑むが、 アルマジロシュートすら弾き返されてしまう。5人の危機に、負傷をおして戦おうと申し出るパワーアニマルだが、 無理をさせる訳にはいかない、とそれを止める赤。
 イエローの「おまえがリーダーで良かったぜ」から、諦めずに逆転に賭けるガオレンジャー、そこに被るディアスに向けたテトムの歌、 という流れは良かった。……なお歌っているのはテトムですが、映像はほぼムラサキで、ムラサキ、圧倒的ヒロイン力。
 テトムの歌で機嫌を良くしたディアスは教団への協力を約束し、回復魔法で復活するアニマル軍団。一方、 筋肉ストライカーも一か八かの零距離射撃からの飯綱落としで墓石の撃破に成功する。
 いつもの今作だと、ディアスで回復→大逆転! と簡単に繋いでしまう所ですが、現場のガオレンジャーがガッツを見せて、 自力で逆転、という展開を挟んだのも良かった所。
 墓石から溢れ出る千年の邪気をどうすればいいのか……悩むガオレンジャーの元にシルバーとテトムが駆けつけ、 ディアスの宝珠をホワイトに託す…………女好き?
 ディアスは鹿になっているけど、つまり、ユニコーンのイメージなのかしら。
 回復魔法で復活したガオキングにディアスが百獣武装してガオキング<クロスホーン>が誕生し、 聖属性の必殺技で千年の邪気を泡の中へと封印。
 銀「さらば……千年の因縁よ」
 ……え、あれ、、これだけ引っ張って、こんなあっさり終わり?(^^;
 「ガオディアスの力で、ガオレンジャーは、千年の邪気を封印する事が出来ました」
 ナレーションさんまで追い打ちした?!
 千年の邪気の扱いと行く末は非常に不安ですが、墓石オルグを粉砕する流れがしっかり盛り上がって、 『ガオ』にしては割と面白かったです。テトムのヒロイン力が3上がったのに対して、 ムラサキのヒロイン力が30上がったのが気になりますが!

◆Quest30「満月が狼を殺す!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:酒井直行)
 前回、遂に千年の邪気を封印したガオレンジャー……だがそれは全て、ウラの計画であった!
 ロウキを復活させて千年の邪気を解放し、それを素材に生み出したオルグをガオレンジャーに倒させる事で熟成し、 より強大になった邪気を敢えて一度封印させる事で一つにまとめ、 捕らえたシルバーに再注入して最強最悪のロウキグレートスーパーデラックスを生み出す……と見せかけて、 シルバーがはね除けた邪気を自らに吸収し、ウラは、ウラ究極体へと変身。
 全てはこの日の為、だそうなのですが、途中で負けたフリは必要だったのかとか、 ディアスがガオレンジャーについたのはどう考えても計算外では、とか疑問が色々つきません。 仮に全てがウラの計画通りだったとすると……
 〔百鬼丸に故意に敗れる → 闇狼の面の存在を匂わせ、シロガネにオルグパワーの儀式を行わせる → (シロガネ、 ロウキに) → 先代ガオレンジャーにロウキを封印させる → 千年熟成してから復活させ手駒に → わざと放置して記憶を混乱させる → ここぞという所で、ロウキの正体をガオレンジャーにリーク → シルバー復活後、何も言わずにしばらく姿を消す → ガオディアスに教団への接近を促す → ディアスは女好き、という情報をテトムに流してディアスをガオレンジャー側につける〕
 シロガネ(ロウキ)に関わる全ての知識を持った上で、実に都合の良いタイミングでガオレンジャーに重要な情報を伝達しながら、 肝心な時には姿を見せないあの存在が浮かび上がります。

 ……そう、つまり、ガオゴッド=ウラ!

 不可能なものを消去していった時、最後に残ったものが如何に奇妙であっても、それこそが真実なのだよガオレンジャー!
 まあそんな感じで誕生したウラ究極体は、発酵されきった邪気による強大無比なオルグパワーでガオレンジャーのあらゆる攻撃を跳ね返し、 先陣を飾ってガオブルー、メット割れで死亡。信仰の力を超える圧倒的暴力の前に、ガオレンジャーは、 このまま壊滅してしまうのか?!
 どうにもこうにも、ウラの賞味期限が私の中で尽きてしまっている為に、今更ウラが何をやっても盛り上がりきれず(^^;  仕事しなかったり一度は死にそうになったウラが実は……という事なのでしょうが、3ヶ月以上かけている計画通りなので、 これなら一貫してウラが有能な策士であった方が、個人的には素直にノれました。
 また、物語の端々の要素で、千年の邪気で何をするのか、それでロウキを復活させてどうするのか、ウラ究極体になってどうするのか、 という「そしてどうするのか」の目的部分が一切語られない為、進行している事態に対して、それを止めなくてはいけない、 という脅威に対する煽りが存在せず、盛り上がり不足に拍車をかけています。仮に最終目的が「ウラが物凄く強くなる」事だとしても、 そこに至る経過の途中途中で「シルバーがスーパーロウキになったらこんな大変な事になる!」という視聴者に対する危機感の提示が必要だと思います。
 それがあってこそ、止めた!→だが! となるわけで、物語の構成がどうにも杜撰。
 トドメにナレーションが「ガオシルバーは、勝ったのです」「とんでもない事になってしまいました」と、 肝心の所でいつもの調子でいつにも増して緊迫感をジャーマンスープレックスで破壊しにくる場外乱闘で、 実に盛り上がらないエピソードになってしまいました(^^;

◆Quest31「百獣戦隊、全滅!!」◆ (監督:竹本昇 脚本:酒井直行)
 究極体と化したウラに特攻して返り討ちにあったブルー、いい死にっぷり。続けて、ブラック、イエロー、 ホワイトが次々に惨殺され、なんかちょっと、楽しくなってきました(おぃ)
 いや、話数的にも展開的にも生き返るの前提ならば、半端にやるよりも派手にやり切ってくれた方が面白くなるので、そういう点で、 今回の立て続けの4人死亡は、TVの前の子供を本気で泣かせに行く殺しっぷりがとても良かったです。
 あっという間に仲間を失い、窮地に立たされるレッドとシルバー。すわガオレンジャー全滅かと思われた時、 突然ガオゴッドが現れると神の電撃でウラを吹き飛ばし、死体と2人を回収して教団へと帰還する。
 前回、ガオゴッド=ウラ説を提唱しましたが、すぐさま否定されてしまいました。
 ……強大な敵に崖っぷちまで追い詰められた所を規格外の存在が助けてくれる、というおよそ考えられる最悪の登場の仕方で(^^;
 綺麗な十字に並べられた4人の死体はゴッドにより回収され、泣き叫ぶテトムを止める赤。
 「諦めろテトム! 4人はもう、死んじまったんだ!!」
 走先生(元傭兵疑惑)はホント、くぐってきた修羅場の数が違うから、割り切り早いな……!(笑)
 「パワーアニマルを召喚する事も……百獣合体も……もう……」
 そして早速、戦力の計算を始める、ハード&クール。
 神「決して諦めるな。戦い続けろ」
 どう足掻いても絶望的だ、と床に倒れ込む赤に対し、何の希望も方策も示さず、精神論だけ語って無責任に姿を消すゴッド。
 ガオラオガオラオと唱えていれば、たとえ戦場で死んでもアニマル極楽浄土に召されるので、 現世の痛みや苦しみなどものの数ではないのです。
 ガオラオガオラオ。
 矢玉尽き果て心折れ、降伏やむなし、と失意に沈む赤だが、その時、ウラが街中に姿を現し、 助けを求める子供達の声がガオズロックに響いてくる。
 「あの子達を放っておく事が、おまえには出来るのか?!」
 「………………出来るわけがねえ!! この世の全ての命を守る為に、俺は、ガオレンジャーになったんだ! 俺達は、 諦めちゃいけないんだ!」
 「決して諦めない!」
 「戦い続ける!」
 勇気と覚悟を取り戻し、飛び出していくレッドとシルバー。
 ここで再起のきっかけにストレートに子供の叫びを持ってきたのは今作らしくはあるのですが、 子供達が「助けてガオレンジャー!!」と叫んでおり、若干以上の、こうらくえん遊園地で僕と握手感。
 ――そしてその叫びは、アニマル極楽浄土に召されつつあった4人の魂にも届いていた。足を止めた4人は謎の少年の助言を受け、 溶岩の沼へ沈むのもいとわない勇気を見せると、一枚のレリーフを完成させる。 それは羽ばたく鳥の姿をした弓矢・ファルコンサモナーとなってレッドの元へと届き、レッドがその矢を放つと、ウラ究極体、 まさかの一撃で大爆発。
 自動的に巨大化したウラに対抗手段を持たないレッドだったが、1日3回朝昼晩にガオラオガオラオと唱えていれば、 もう心のくじける事は無い。
 「俺は、灼熱の獅子! 最後まで諦めてたまるかぁ!!」
 ファルコンサモナーに獣皇剣を合体させる事で召喚機能が発動し、天空島の火山の中で眠っていたガオファルコンが目覚めると、 それに応えるかのように、キリン、鹿、サイ、アルマジロが“奇跡の復活”。
 ナレーション「という事は、まさか――」
 まさか、死後15分で、4人、謎のリザレクション。
 何が「という事は」なのかは、まっっっっっっったくわかりませんが、黄青黒白、アニマル極楽浄土の一歩手前で原隊復帰。
 一切の前振りも、伏線も、根拠も無く、奇跡のお裾分けで死者が蘇生するという、凄く突き抜けた戦隊。
 ごくあっさりとレッドゾーンを振り切りすぎて、これはこれで面白くなってきてしまったかもしれません(笑)
 「ウラ究極体の力を見せる為に死ぬ」という展開が決まっていたら、 「どうやって生き返らせて逆転するか」の所に説得力を持たせて盛り上げる為に、仕込みをしておくと思うのですが、 一切無し。勢いや力技ですらなく、理由など何もいらない、という潔さが、これはこれで凄い(笑)
 ここまでやられると、面白い面白くないは別に、今作はこういう戦隊である、という世界観は受け入れざるを得ません(^^;
 復活を成し遂げた4人がガオアクセスし、ファルコン、キリン、鹿、サイ、アルマジロが合体した天空の王・ガオイカロス (飛行タイプ)が誕生。なお、黄色の担当アニマルは居ないのですが……黄色、どうやって甦ったのだろう(笑)
 あと、4人が死んだ時にそれぞれのガオの宝珠が砕けているのですが、 ファルコン登場時にキリンなどが「奇跡の復活」扱いになっているという事は、 ライオンとゴリラ以外は戦死扱いなのか。
 一気に、動物園の、経営がピンチ……!
 ガオイカロスはウラ究極体と空戦を演じ、翼の呪いで動きを封じた所を、オーバーヘッドシュートで蝶々サンバ。千年の邪気は霧散し、 元の姿に戻ったウラに切りかかるガオシルバー。トドメは走ってきた5人が破邪百獣剣で邪気退散。
 「無念でおじゃるーーーーー!!」
 かくしてあっさり爆死したかと思った後がしつこく長かったウラは今度こそ消滅し、ツエツエとヤバイバも元の姿に戻るのであった。 ……恐らく、ツエツエは皆が早く元に戻したかったに違いありません(笑)
 臨死体験から甦った4人によると、地球の大いなる命が甦らせてくれたそうですが、神秘体験を経て、 ますますカルト度が増しました(^^; そして事の成り行きを考えると、ガオゴッドはガオファルコンを目覚めさせる為に、 4人が死ぬのを待ってから手助けしたと思われます。まあ、神様から見れば人間などゾウリムシのようなものだから、 仕方ない……!
 長かったウラ編は、追加戦士の踏み台だと思ったら後期ロボの踏み台だった、という二段構えでしたが、 その後期ロボに追加戦士が全く関係しないという構成はまた、物凄い(笑) 最後に強引に出てきましたが、 ファルコンサモナーで盛り上がっている間、シルバーが完全に画面から消えていたり、今作は今作なりに、 商品展開と物語の噛み合わせにあちらこちらで苦慮も見える所。
 物語世界が「おお、ガオ○○よ、死んでしまうとは情けない!」というステージまで振り切れてしまいましたが、 普段なら2話構成でだらだらとしそうな所を、1話にぎゅっと詰め込み、面白い面白くないは別にして、 いつもの尺余り感が無かったのは良かったです。毎回これぐらいの内容量だったらなぁ……(^^;
 31話にして、予想を超える次元へ凄い脱皮を果たしてしまった今作ですが、さて後半戦、どう転がっていくのやら。次回、 第三のハイネス、現る――。

◆Quest32「三匹が喰う!!」◆ (監督:竹本昇 脚本:武上純希)
 公園で、巨大ワニを放し飼いにするシルバー。
 お巡りさん、こっちです。
 ガオズロックでは、文字通りの奇跡を体験した事でますます信仰の深まったガオレンジャーが薬物の効きすぎで浮かれていたが、 マトリックスにおいて第三のハイネスデュークオルグが、二体のデュークオルグをともなって誕生する。
 その名を、ラセツ。
 目(シュテン)、耳&鼻(ウラ)と来て、今度は口が登場。上の口が女声、下の口が男声で喋り、あしゅら男爵(笑)  (※男の声を担当する柴田秀勝は、実際にアニメ『マジンガーZ』の、あしゅら男爵役)
 ラセツは直属の配下であるプロペラ(戦闘機)とキュララ(戦車)を伴い(なお、キュララのデザイン元の無限軌道は一般に 「キャタピラー」と呼ばれますが、企業名&登録商標なので使えなかったと思われます)、街に繰り出すと大破壊を開始。
 夜明けの光に包まれていく街の遠景をイメージカットに近い形で使ったり、 駆けつけたガオレンジャーの背景で次々に打ち上がるロケット弾など、これまでにない大規模破壊を強調する為に面白いカットが幾つか。
 「ほほほほほほ、希望とは真昼に見る夢」 「ふはははは、人は夢なしには生きられない」
 「きらびやかな都会は夢の形」 「人間の夢、片っ端から食い尽くす」
 と、ポエミーなラセツは、恐怖などによって人間から生み出した絶望を食べるオルグなのかと思ったのですが、その後の台詞を聞く限り、 ただのコンクリート好きでした(笑)
 調理法(建造物破壊)が人類に大迷惑ですけど。
 それにしてもラセツは復活した途端にコンクリートソムリエぶりを発揮しているのですが、千年前は何を食べていたのか気になります。
 「貴様、何者だ?!」
 「五色団子が、何か聞いてるわ」 「ハイネスデューク・ラセツ、人は絶望の王子と呼ぶ」
 そして、見た目と声に反して、王子。
 予想外にスピーディな身のこなしのラセツに叩きのめされた5人は、ラセツ一味の破壊活動を防ぐべく、 次にラセツが狙いそうな開発中のニュータウンで待ち伏せるも、再び惨敗。
 黄「待てレッド。奴等、強すぎるぜ」
 青「ああ、このまま行っても……」
 赤「どうしたんだみんな……俺達は無敵じゃなかったのか? それとも、びびっちまったのか?」
 銀「一度あの世を見たら、死ぬのが怖くなったのか?」
 黄「誰がだ! 俺達は地球の命に呼び戻されたんだ。もう怖いものはねえ」
 珍しく敵の実力を認めた上で作戦でも練るのかと思いきや、何故かこの台詞でかかりだす盛り上がり音楽。
 青「奴等の勝ちがビギナーズラックだって事、教えてやる」
 白「あたし達だけで充分よ!」
 ……あれ?
 正面から突っ込んで強敵に惨敗 → ちょっと立ち止まって考えた方がいいのでは…… → 俺達は無敵じゃなかったのか?(煽る) → ……そうだ、俺達は無敵だ! → 無敵だ!!(連鎖) → ガオラオガオラオ! → ガオラオガオラオ!!

 洗脳、怖い

 いやぁ、『ガオレンジャー』、凄いなぁ……。
 何が凄いって、ここで、俺達は無敵だぁ! と強敵に特攻をかける根拠に、戦力や訓練はもとより(前半ちょっぴりしていたけど)、 「愛」も「勇気」も「正義」も持ち出さないのが凄い。
 よくある駄目な展開として、これらマジックワードを劇中で積み上げる事なく安易に理由にしてしまう事で白けたり物語が崩れたりしてしまうというのがありますが、 その領域を遙かに突き抜けています(笑)
 ロウキ編では、パワーアニマルに認められたから俺達が正義だ理論を口にしていましたが、その後特に補強されていないですし、 突き詰めれば「一度死んでいるから何も怖くない」というガオレンジャー無敵の根拠は、

 マ ヒ

 なお赤と銀は臨死体験をしていないわけですが、赤(戦場帰りなので極限状態を既に何度も経験している)、 銀(ロウキになって封印された時に死んだも同然)、という事で生死の境界を乗り越えているのかと思われます。
 ガオレンジャーは再び3匹に挑み、ウラを一撃で消し飛ばしたファルコンアローもラセツを倒しきる事は出来なかったものの、 3匹は一時退却。ひとまずの勝利で教団に帰還した5人は、調子に乗っていたけど油断大敵、と一応まとめるが、 突撃前の台詞と全く噛み合っていないので、どこに行きたいのかさっぱりわからないのであった。神経加速剤、怖い。
 レッドが出会った土地神っぽい少年・風太郎は、前回4人があの世の入り口で出会った少年と関係があるのか、 それとも新たな展開なのか。毎度お馴染み、テトムは忘れている何かを思い出す事が出来るのか……。そして、 デキる管理職の登場で窓際送りにされつつあるツエツエとヤバイバに明日はあるのか。

→〔その5へ続く〕

(2015年11月2日/11月23日)
(2019年7月28日 改訂)
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