■『百獣戦隊ガオレンジャー』感想まとめ1■


“ガオー! 飛びかかれ! ガオー! 食らいつけ!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『百獣戦隊ガオレンジャー』 感想の、まとめ1(1〜8話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆Quest1「獅子、吼える!!」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希)
 OP、赤・黄・青の紹介→敵などのキャスティング→黒・白の紹介
 という、変則的な構成。
 黄が2番手というのも、歴代シリーズでも相当珍しいか。
 平和な世界を影で乱す邪悪に人知れず挑む、白、黒、青、そして黄の戦士。
 子供に絵本や昔話を読み聞かす声が幾つも重なる……という暗示的なシーンから始まる入りは面白いのですが、
 「ゾウが逃げたぞー」
 い・き・な・り(笑)
 群衆がパニックになる中、そこへ現れた獣医の青年がゾウと心を通じ合わせて落ち着かせ、それを謎の女が感知していた。
 「みなさん、見つかりました。ガオレンジャー、5人目の戦士が」
 翌日……
 「私達と、一緒に来て下さい」「悪いな」「ちょっと、確かめたいだけなんだ」
 不審な4人組に、問答無用で拉致される獣医。
 ナレーション「人生の転機というものは、本人も、思いもしない形で、突然、訪れます。この青年にも、それが、起ころうとしています」
 そして、誘拐を軽い調子で流し、やたらに劇中世界に入り込むナレーションさん(笑)
 緑が生い茂り、巨大な動物が走り回る妙な場所で目を覚ました獣医は、巨大な赤いライオンを目にして近づこうと崖を登り、 そこが空中に浮かぶ島だと知る…………て、どう見ても、獣医がしがみついている崖の位置から島の外縁が見えないので、 ここはもう少し説得力のある映像にして欲しかった所です(^^;
 巨大な亀っぽい形状の島の名を――天空島・アニマリウム。
 崖から落ちた所をライオンに助けられた獣医の腕の中から スーパーボール ガオの宝珠が生じ、 獣医はライオンにより下界のガオズロックへと吹っ飛ばされる。そこでは彼を拉致した4人と、謎の女が待ち構えていた。
 「私はテトム。貴方が会った、パワーアニマル達の意志を伝える為の巫女です。パワーアニマルは、この星を護る為の聖なる力」
 「は?」
 「貴方は、彼等と共に戦う戦士、ガオレンジャーなんです」
 「ガオレンジャー?」
 「オルグと戦う為の、5人の戦士です」

 逃げろ!

 拉致パターンでは過去にも「悪魔の犬が見ていた」とか「ロボット鷲掴み」とかありましたが、なまじ相手が人間の姿をしている分、 こちらの話を聞く気が無い感じが倍増している上に、危ないカルトの匂いがガンガンします!
 人生の転機というより崖っぷちで困惑する獣医だが、その時、冒頭で4人が戦っていた怪物の姿が水鏡に映る。それは、地球を蝕み、 あらゆる生命体を絶滅に追いやる怪物――オルグ。
 獣医は変身アイテムGフォンを手渡されて強制連行され、タービンオルグとプラグマオルグがダムで大暴れしているのを目にする。
 「みんな……怯えてる……」
 その破壊による、動物や自然の被害を見て、やる気を出す獣医。
 「俺は獣医だ! 救いを求める命を、黙って見ているわけにはいかない!」
 獣医は4人を真似て変身し、ここに5人揃ったガオレンジャーは、2体のオルグに立ち向かう!
 5人それぞれのキャッチフレーズと担当アニマルは以下。
 「孤高の荒鷲・ガオイエロー」/イーグル
 「怒濤の鮫・ガオブルー」/シャーク
 「鋼の猛牛・ガオブラック」/バイソン
 「麗しの白虎・ガオホワイト」/タイガー
 「灼熱の獅子・ガオレッド」/ライオン
 自分で、麗しって、言っちゃった……。
 ガオレンジャーは獣の戦士という事でか、両手両足をついた低い姿勢を取り、爪で攻撃を仕掛ける、というのが特徴的なアクション。 奮戦する5人だがオルグの合体攻撃に苦戦し、その時、赤の胸にライオンの声が響き、5人のパワーを一つにするべく、 それぞれの個人武器を合体させる。
 ライオンファング・イーグルソード・シャークカッター・バイソンアックス・タイガーバトン――五つの武器と心を重ねた合体武器、 その名を、破邪百獣剣。
 ナレーション「5人の気持ちが重なり合い、彼等の剣に、邪なるものを破る、聖なる力が、集まるのです」
 ガオレンジャーは破邪百獣剣の一撃でプラグマオルグをずんばらりん。逃げ出したタービンの前に、 オルグの神・オルグマスターに仕える一本角のデュークオルグ、ヤバイバ(着ぐるみ)とツエツエ(女性顔出し)が現れ、 タービン巨大化。
 ガオレンジャーが共通武器である短剣・獣皇剣にそれぞれのガオの宝珠をはめるとパワーアニマルが島から出撃し、 主題歌と共にアニマル軍団が巨大タービンへと襲いかかる…………5人はそれに、声援を送っていた(笑)
 「命あるところ――正義の雄叫びあり! 百獣戦隊・ガオレンジャー!」
 トドメはアニマル合体光線が炸裂し、タービンオルグは爆発四散。こうして5人となったガオレンジャーは初陣を飾り、 2体のオルグを撃破。しかしその一方で、これまで個別でテロ行為を行ってきたオルグに、組織化の影がちらつくのであった……。
 うーん……なんだろう……個々の要素としてはそれほどおかしなわけではなく、 旧来作品において成り行きで誤魔化していた部分に理由付けを入れながら、オーソドックスな戦隊像を踏まえた上で新しく進化させよう、 という意図は見えるのですが、いざ出来上がってみた物が今ひとつ面白くない(^^;
 例えば、選ばれた戦士を拉致、という形を取りつつ、メンバー中4人は既に選抜・戦闘経験済み、 とする事で物語の焦点をレッドに合わせ、レッドの目を通した“驚き”を視聴者とシンクロさせつつ、 とりあえず初回においてはレッドの動機付けをしっかり描く、 と旧来フォーマットから一歩進めつつ全体をすっきりさせようとした構成そのものは悪くないと思うのですが、 肝心のレッドが戦士以前においては「いきなりゾウと心を通わせる男」で、戦士以後は(4人を真似て変身する、 というプロセスまで描いたのに)いきなり「灼熱の獅子・ガオレッド!」とか言い出してしまうので、 もう一つその構成が物語としての面白さになっていません。
 2000年の『仮面ライダークウガ』によるブレイクスルーを受けた後の2001年という事で、過渡期という事はあったのでしょうが、 詰めが足らず、惜しい。
 もう少し、獣医としての赤、をしっかり描写してからなら
 「俺は獣医だ! 救いを求める命を、黙って見ているわけにはいかない!」
 もより活きたと思うのですが(この台詞自体は、背景として悪くない)、せっかく焦点を1人に絞ってヒーローの動機付けを描いたのに、 その背景と物語の繋がりが弱くてやや空転。
 また、全体通して字幕を多用しており、“子供向けのわかりやすさ”を重視した意図はわかるのですが、さすがに、 迫り来る敵の前で1人ずつ武器を構える(字幕が出る)×5→武器合体(説明ナレーション)、はテンポが悪くなりすぎました(^^;
 破邪百獣剣のくだりが最も露骨ですが、全体的にこの、事あるごとに物語の動きが止まる (前年がやや複雑かつハード路線の『未来戦隊タイムレンジャー』であった反動もあるのか)関係で、話の流れが非常にぶつ切れ。
 結果として、説明過多の上に独特なもっさり感を生じさせてしまっています。
 以後の戦隊で定例にならなかった所を見ると、やってはみたけどあまり感触が良くなかったようではありますが(^^;
 この辺りの演出面は改善されていくかとは思われますが、色々と不安な滑り出し……そして、 更にそれを煽る妙にリリカルな半裸ED! ……そういえば、そうだった。

◆Quest2「精霊王、起つ!!」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希)
 とりあえず、OPで5人の名前をチェック。
 赤/獅子走、黄/鷲尾岳、青/鮫津海、黒/牛込草太郎、白/大河冴
 ………………1人だけあからさまな差別を受けているのですが、苛めなのか。
 或いは、実は偽物の超人で、途中で死んでリタイアして、本物のアストロ超人と交代するのか。
 ガオブラックの明日はどっちだ!
 とは言うものの、感想書きからすると「草太郎」はかなり有り難い名前です。「走」とか「海」とか、 一文字な上に一般名詞や動詞は文章に埋もれて読み取りづらくなるので厄介。まあ一番書きにくくて困るのは、ひらがな名前、 その中でも最悪なのが「は」とか「の」とか「と」とか入ってる名前なのですが。
 横道に逸れました。
 冒頭、オルグとは、世界に漂う邪悪な念や衝動のパワーが、物の姿を真似て具現化したものとナレーションで説明。 それに合わせて、漂う陰の気がハリガネオルグと化してタクシーを襲い、それを猫だけが見ていた……と、 こういったスリラー調の演出は、ヒーロー物の原点オマージュとして、なんだかんだ好きです。
 「戦士になるつもりなら、今までの名前を捨てろ。俺はガオイエロー、おまえはガオレッド」
 ガオズロックにやってきたレッドは仲間のプロフィールを知ろうとするが、4人の主導格であったイエローにばっさりと
 「人間やめますか? 戦士やめますか?」
 という2択を突き付けられる。
 世俗との関わりを断ち、ただガオレンジャーとしてのみ生きるべし……やはり、カルトの匂いがガンガンします!
 一緒に戦う仲間なのだし名前はともかく最低限の自己紹介ぐらいしろよ、とは思う所ですが、ヒーロー性と社会性の相克の問題に対し、 「ヒーローになる事」=「社会を捨てる事」とし、二律背反そのものを最初に排除してきた、 というのはなかなか面白い。
 また同時に、戦隊における「変身後にコードネームで呼ぶか/名前で呼ぶか」という問題に、 「名前を廃する」というアプローチを用いる事で、意識的に80年代っぽさを与えるとともに、 「コードネームで呼ぶ」事へのリアリティを生み出そうとしています。
 武上純希というと、戦隊初参加にしてメインライターを務めた『電磁戦隊メガレンジャー』(1997)でも、 (結果的に)「メンバーがコードネームを呼び合い素性を秘密にする」という作劇が取られましたが、 こだわりのあるテーマ性なのかもしれません。
 今作の用い方だと、どこかでコードネーム→名前、になるという展開が予想はされますが。
 赤が持ち込んだTVに映ったニュースから、ハリガネオルグが活動する街へと飛ぶガオズロック。
 ナレーション「もし君が、巨大な山が飛んでいるのを見たなら、それは、ガオレンジャーが、事件の現場へ向かっているのです」
 出しゃばり気味のナレーションさんですが、こういう、仮想と現実をちょっとした遊び心でリンクさせる、 というのは嫌いではありません。
 これは武上さんが、初期《ウルトラ》シリーズ辺りを意識しているのかなー。完全に外側からではない、 微妙に近い距離感から語りかけるようなナレーションは、何となくそれっぽい。
 事件の街へ辿り着いた5人は手分けしてハリガネオルグを探し、ここで、黄がガオレンジャーになって1年、白と青が半年、 黒は2ヶ月、とそれぞれの入信歴が判明し、割と経験値に差がある事もわかりました。
 最も古株だと判明したイエローですが…………ん? という事は、「戦士になるつもりなら、 今までの名前を捨てろ」というのはもしかして、俺ルール?
 まあ、黄色の事情は今後語られていくのでしょうが。
 露出はさほどでもないがやたら色っぽく喋るツエツエと、 今のところ危ないナイフマニアぐらいの雰囲気のヤバイバから力を得たオルグの針金が街で暴れ回るシーンはCGと実写を合わせてなかなか面白く、 戦闘員オルゲットも登場。
 「何の目的で、こんな事をするんだ」
 理由無く他者を害する生き物は居ない筈、と赤はオルグとの和平交渉を試み、動物扱いで感応を図ってみるが……
 「聞こえねぇ……こいつには、心がないのか」
 ここの、赤の愕然とした表情は良かった。
 オルグの攻撃からレッドをかばってホワイトが負傷し、そこに駆けつける残り3人。……黄色と黒が同じ画面の中で2人並ぶと、 大学の相撲部か柔道部かアメフト部のようです(笑)
 「どんな動物の声でも、聞く自信があった。でもヤツの心の中には何も無かった」
 「オルグはおまえの好きな動物たちとは違う。……理屈抜きに叩きつぶすしかないんだ。どうする? おまえがリーダーだ。 …………おまえが決めろ!」
 「それしかないのかぁっ!!」
 赤は立ち上がり、ガオレンジャー揃って変身。
 赤が自分を拉致したパワーアニマル教団の言い分を鵜呑みにせず、オルグと話し合いを試みる、という展開は面白かったのですが、 人語を解するから交渉可能と判断したのかと思ったら、 いきなりの動物扱い→こいつには心がねえ!→攻撃を受ける→殺るしかない!、 と全て赤の自分ワールド内部で処理してしまった為、赤の発言をどこまで信じていいのだろうか、 という問題が発生してしまいました(笑)
 ここは赤の脳内電波世界で片付けずに、誰にでも納得できる形で交渉不可能、を描いた方が「世界(人間)とオルグ」 の関係性を見せるにあたっては良かったと思うのですが、赤の特殊能力を強調しようとした結果、虻蜂取らずになった感。
 今作、立ち上がりで色々と面白いシュートは撃っているのに、すべからくゴールポストに直撃していて勿体ない(^^;
 ガオレンジャーは針金と戦闘になり、破邪百獣剣でずんばらりん。1話−2話は、 個人の能力と個人武器を派手に見せるのが概ねお約束ですが、2話続けて、 合体武器のアピールを優先して個人武器の使用シーンがほとんど無いというのはかなり珍しいか。第1話自体、 アニマリウムとパワーアニマルの描写にかなり時間を割いており、恐らく戦隊の初回としては戦闘シーンが短めだとも思われ、 ちょくちょくアプローチを変えている事がそういった部分にも窺えます。
 ここで5人は、ヤバイバとツエツエと遭遇し、針金はツエツエの「鬼は内、福は外」の魔法で巨大化。赤が再びライオンの声を聞き、 5人は宝珠の力でパワーアニマルを百獣合体させ、巨大なる精霊の王、ガオキングが誕生する!
 今作のもう一つ勿体ない所は、ごく単純にそこまで手が回らなかったのでしょうが、 立ち上がりの基礎部分で色々と面白いアプローチを入れているのに、武器の合体やロボットの合体は「ライオンが教えてくれた」 で凄く杜撰に始まってしまう事(笑) そこでもう一つ二つ手を入れられると物語に重厚さが出たと思うのですが、 何とも痒い所に手が届き切りません(^^;
 ガオキングはノーガードで針金の攻撃を受け止めると、連続攻撃から必殺のアニマル光線「天地轟明・アニマルハート」で撃破、 という圧倒的強さを見せつける。……しかし、合体したのに必殺技が第1話と同じなのはどうなのか(笑)
 こうして赤はオルグとの戦いの決意を固め、ガオレンジャーはガオキングという新たな力を得るが、 その一方で地下深くの闇の吹き溜まり・マトリックスでは、強力なオルグ、ハイネスデュークが目覚めようとしていた……。

◆Quest3「荒鷲が消える!!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:武上純希)
 オルグの聖域マトリックスにおいて、ハイネスデュークオルグの1柱、シュテン(CV:稲田徹)が復活。 手と目がモチーフ?でグロめのデザインの割には、稲田さんが美形キャラ演技していて、私が得。
 その頃ガオズロックでは、オルグ殲滅すべし、というパワーアニマル教団の教えにすっかり染まったレッドが、 「ガオレンジャーであるための注意事項」をレポートにまとめて、皆に読ませていた。
 リーダーである自分に報告・連絡・相談を怠るな、など、前回の今回で物凄い勢いで上から目線なのですが、 調子に乗せたら駄目なタイプなのか……。
 そもそも赤がリーダーである根拠が「巫女の神託」なわけですが、 1年間ガオレンジャーやっていた黄が不満は見せながらもそれに従うのはまだわかるとして、 前回の今回で赤がそれをあっさり受け入れて好き放題でリーダー気取りな所に、カルトの闇の深さを感じます。
 いいか赤よ、君の立場は背後でのほほんとしている女の、「あ、やっぱりリーダー、黒みたい」の一言で、 一気に底辺まで落下する事を忘れるな!
 前回、赤に気を遣っていた白は、今回は出ていった黄を追いかけたり、仲間の間を取り持とうとする姿が重ねて描かれており、 今のところ純粋いい子路線ですが、これはこれで割と珍しいか。
 街には、カメラで写した人間の生命エネルギーを吸い取ってしまうカメラオルグが出現。撮影された人間は透明になってしまい、 見えない人間に引っ張られたり押されたり、というのは映像的に面白い演出。
 赤のリーダー気取りにやってられないと街をフラフラしていた黄色はこの現象に遭遇し、怪しげなカメラを手にした少年を追いかける。 「どうして逃げるんだ……」って、道でいきなりヤンキー丸出しのガタイのいい男に「そのカメラを見せてくれ」って言われたからだと思います!(笑)
 カメラオルグに脅されて嫌々シャッターを押していた少年は逃げ出し、放り捨てられて本性を現したカメラオルグと戦うイエローだが、 そこにヤバイバが現れ、ナイフ二刀流で苦戦した所をカメラに写されてしまう。イエローは生命エネルギーを吸われて変身が解けてしまい透明に。 シュテンによる強化を受けたカメラオルグは、自分でシャッターを押せるようになり、街で大暴れを開始する。
 オルグ側は基本、オルグが自然発生→ツエツエとヤバイバが回収→強化されて暴れる、という構造になる模様。この為、 1本角のオルグは偉いオルグ、と怪人が素直にデュークオルグに従う上下関係がデザインに織り込まれています。
 イエローを救う為カメラオルグに立ち向かったレッドは、機転を利かして不意打ちで逆転し、 生命エネルギーを封じたフィルムの回収に成功すると、それを感光させる。
 「みんなの命、返してもらうぜ!」
 …………下手すると、大量虐殺になっていたような(^^;
 単純に、壊して(倒して)治す、からもう一ひねりしたかったのでしょうが、結局根拠は無いので、 あまり変わらなくなってしまいました。……まあ戦隊はこの辺り、「怪人の撃破」と「問題の解決」をプロット上で直接繋げないといけない、 というのが約束事として縛りがあるのかな、とも思われる所ではありますが。そういう点では、 シナリオ展開の硬直化の一因となっているという自覚をした上で、一工夫凝らそうとした、という意識は窺えます。
 イエローが復活して戦線復帰するもガオレンジャーはカメラの猛攻にピンチになり、苦しむレッド、今回もライオンと交信。
 「ガオライオン……わかってるさ。負けられねぇ。俺はリーダーなんだ。みんなを助けられなきゃリーダーなんて言えない!  俺にはまだ、戦う力がある!」
 ライオンファングが、銃形態であるガオメインバスターに変形し、窮地を脱して反撃スタート。
 レッドのリーダーとしての責任感――引いてはその気持ちが強さになる、という姿――を描きたかったのはわかるのですが、 そもそも「赤がリーダーである事を自覚する」というプロセスが抜け落ちている為、赤の1−2話までの描写と、 冒頭いきなりレポートを配り出す姿からして繋がっておらず、ここまでの物語との連動性が弱い為、 酷く唐突な逆転劇という印象になってしまいました。
 一応、第2話のイエローの「どうする? おまえがリーダーだ。…………おまえが決めろ!」」という台詞で、 赤がリーダーである事を自覚した、という事なのかもしれませんが、第2話のテーマがそこに全く無かったのと、 黄が赤に対して「やる気無いのなら辞めればいいんじゃね」という態度だったのと、 どう考えても赤が戦わないという選択肢を採ったら残りの4人はそれに従わずに戦うよね、という流れだった為に、全面的にちぐはぐ。
 度々書きますが、「勢いで逆転する」のが悪いのではなく、「勢いに物語として説得力を持たせる為の積み重ねが足りていない」のが問題。
 そんなこんなでガオレンジャーはカメラを邪気退散。巨大化後は、零距離アニマルハート、更に駄目押し、で滅却。
 オルグの巨大化はシステム上、常にツエツエが前線に居る(少なくとも今回、ヤバイバと一緒に現場に居る筈なのに観戦モード) というのは結構厳しいと思うのですが、手を入れてくるのかどうか。
 シュテンがちらっと顔見せして宣戦布告し、赤と黄はなんとなく意気投合。
 黄色に「おまえも単独行動してんじゃん」とツッコまれて「時と場合によってはありにしようか」と赤が返したり、最後一斉に「おまえ、 慎重、無理」とダメ出しを受けたりする姿には、寄せ集めのメンバーが徐々にチームとして一つになっていく姿を描きたい、 という意図が見え、後に同じくメインライターを務めた『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008)でも盛り込まれますが、 ライトスタッフ論というのは武上さんの持っている一つのテーマ性なのかな、と思う所。

◆Quest4「二人でネバギバ!!」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:武上純希)
 心霊騒動で話題になっている寺に、オルグの仕業かもと乗り込むブルーと、それに付き合わされるブラックだが、 住職に見つかったり突然の地震が起きたりで騒ぎになり、這々の体で逃げ出す羽目に。
 頭を打って気絶し、ブラックに抱えられて帰ってきたブルーを「子供だ」と小馬鹿にするレッドとイエローが 物凄く嫌な感じなのですが、君たちあれか、そう見えて35歳とかなのか。
 ガオレンジャーとしては先輩とはいえ、ブラックが年下のブルーに対してやたら従順で腰が低い事が気に掛かるレッドだが、 実はそれには理由があった。
 鈍くさい上に高所恐怖症のブラックは、ガオレンジャーになりたての頃にオルグを追跡中、 大ジャンプに失敗して転落死しそうになった所をブルーに助けられ、その時、諦めない心を教えられ、 戦士としての自覚を持つ事が出来た……全てはその恩返しという思いだったのである。
 赤と黄には気を遣っていた白ですが、黒の事はどうでもいいのな……(笑)
 或いはやはり、変身中は麗しに性格が変わるのか。
 そして黄色は、新入りの赤に突っかかっていただけではなく、誰の事もどうでもいいのだな(笑)
 危うく、結成前から「死因:ビルの間に転落」のヒーローを輩出しかけた百獣戦隊、想像を超える、 冷徹な人間関係……! ……いやこれこそが、野生の掟、そう、弱肉強食の世界……!
 一方、問題の寺では釣り鐘オルグが誕生。更に、謎の波動を感知したシュテンが自ら出陣し、 それを知らずに単独で寺へ向かっていた青は大量のオルグ兵と一人で遭遇する羽目になってしまう。
 「鮫津海(かい)19歳をなめんじゃねえ!」
 と、本人から、19歳と申告がありました。…………青で19歳という事は、より年下に見える白い子が半年前 (ガオレンジャーになる前)にどんな身分だったのか気に掛かる所ですが、教団生まれの教団育ちとかだったらどうしよう。
 青を助けに急ぐ4人の前にシュテン等が現れ、白vsツエツエ、黄vsヤバイバ、赤vsシュテン、黒vs釣り鐘、というマッチアップ。
 「おまえ達の真の目的はいったい何なんだ?!」
 「我らオルグは、人間が苦しめば苦しむほど愉しいのさ!」
 と、オルグはとにかく人間の敵、と重ねて言及。基本、“そういう風に生まれた存在”という設定のようですが、 ガオレンジャーに見えない所&ナレーション発言が主だったので、敵幹部から補強したのは良かった。
 そして青は、釣り鐘オルグの召喚した釣り鐘の中に閉じ込められていた。
 「酸素も無くなり、もう間も無く、息絶える頃だろう」
 いきなり虚空から釣り鐘が落ちてくるというギャグっぽい描写の特殊能力なのに、想像を超えてえぐい(笑)
 それを聞いた黒は釣り鐘オルグを退けて必死に青の元へと崖を駆け上がり、閉じ込められていた青はその声に、 自分が黒の面倒を見ているつもりで実は支えられていた事に気付く。
 青&黒「「ネバギバだーーー!!」」
 ……なんだこの、嬉しくない展開(笑) 心と心が通じ合うなら、もっとイケメンと、髭ダンディとかにして下さい!(待て)
 ……えー、この4話までで、赤と黄、青と黒、がそれぞれセットになり、白い子が取り残されるというのは、 少々予想外の事態です(^^; ……これはあれか、運動系の部活マンガだと思えばいいのか。
 野球だったら
季節外れに転校してきた灼熱のエース・獅子走
ホームランを打つ事にしか興味が無い孤高のスラッガー(元ヤンキー)・鷲尾岳
無謀な走塁を繰り返す一年生レギュラー怒濤のショート・鮫津海
気は弱いけど力持ちな鋼鉄のキャッチャー・牛込草太郎
いっけんヒロインだがドンドン影が薄くなる麗しの女子マネ・大河冴
にこにこしているだけだが何となく揉め事が解決してしまう素人監督・テトム
 サッカーだったら
暑苦しいがハートの強い灼熱のキャプテン・獅子走
ゴールしか興味が無い孤高のストライカー(元ヤンキー)・鷲尾岳
前に行ったら帰ってこない怒濤の左サイドバック・鮫津海
動きは鈍いが体格で守り勝つ鋼鉄のセンターバック・牛込草太郎、
いっけんヒロインだがドンドン影が薄くなる麗しの女子マネ・大河冴
にこにこしているだけだが何となく揉め事が解決してしまう素人監督・テトム
 みたいな。
 黒は無事に青を助け出し、5人揃ったガオレンジャーは、青と黒の肉弾連携攻撃から、破邪百獣剣で邪気退散。 ツエツエがいつもの呪文で釣り鐘を巨大化させ、この際、ツエツエの杖から豆(オルグシード)が飛ぶ、という描写が追加。 ガオキングでも黒と青が息の合った連続攻撃を見せ、トドメはアニマルハート。
 今回、手持ち剣(フィンブレード:鮫担当)が登場しましたが単発攻撃のみ。初期必殺技が光線というのは、かなり珍しいかガオキング。 最初に要塞っぽいモードになって、そこから更にロボットへ、という二段階変形は結構好き。
 ガオレンジャーに激しく反応した謎の波動を辿って、寺の近くのほこらに隠されていた石と巻物を手にするシュテンだが、 邪気を嫌うかのように炎に包まれた石と巻物を取り落とし、それをガオレンジャーに回収されてしまう。……結局、余計な手を出して、 ガオレンジャーに魔法のアイテムを渡しただけに(笑)
 ――次回、早くも追加アニマル登場。

◆Quest5「山が動く!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:武上純希)
 見所は、テトムを助けに飛んできたガオイエローの
 「しょぁぁっ!!」
 音を入れ間違えたのかと思うぐらい、ヤバイバか戦闘員っぽい叫び(笑)
 ガオレンジャーは前回拾った虫食いの巻物の解読を試み、石の中にはガオエレファントの宝珠が入っている事がわかる。 テトムによると1000年以上前にもオルグとパワーアニマルの大きな戦いがあり、 その時に天空島に帰れなかったアニマルが地上で眠っているのだという。
 一方、マトリックスではシュテンがぷるぷるしていた。
 「この火傷の痛み、決して忘れぬぞ」
 「シュテン様が苛立っておられる!」
 「一刻も早く、新しいオルグを見つけガオレンジャーを倒し、ご機嫌を取り戻していただかないと」
 シュテン様は、思ったより、器が小さい人だった。
 街にタイヤオルグが出現し、小鼻をぴくぴくさせたテトムは、ガオレンジャーを強引にオルグ対策に向かわせると、 自らは宝珠を頼りにエレファントの本体を見つけ出そうと単独行動を開始する。
 普段落ち着いたテトムの小鼻がぴくぴくする時、その性格が変わるのだ……と、テトムに焦点を合わせるのですが、 それほどテトムの性格が描かれていないので「性格変わる」と言われても、どうにも困惑します(^^; 更に、 赤と白がテトムの見張りに残され、1人で街に出たテトムが絡んできたチンピラを蹴散らしてドタバタ、とかやっている内に、 割と普通に黄・青・黒がタイヤに苦戦して死にかけており、さすがにバランスが悪い。
 石の波動を感じたシュテンの指示でオルグ達は矛先を変え、石ごとテトムをさらうタイヤ。合流したガオレンジャーはそれを追い、 青、空を泳げる事が判明。黄は飛行、青は空中平泳ぎ、残り3人は四つ足走行、と、 それぞれのシンボルアニマルに合わせているというのは、細かい。
 5話にして初めての個人武器を用いての集団戦を経て、タイヤの弾力ボディに苦戦する5人だが、 赤が熱線銃撃からファイナルモードで撃破。リーダーとしてのクローズアップという事なのでしょうが、赤が一応、 戦況を読んで機転を効かせて敵を撃破する、という描写が続きます。
 巨大化したタイヤの弾力ボディにガオキングも苦戦するが、テトムの祈りに応えて山の中からガオエレファントが目覚め、 百獣武装・ガオキング<ソード&シールド>が発動。ゾウの顔が盾、鼻が剣となり、タイヤの攻撃を弾き返すと、 タイヤを見事にずんばらりんするのであった…………て、斬撃無効だったのでは(^^;
 ロボ戦において「新装備のゾウで倒す」というのは動かせないので、そこに向けて話を組まないといけない筈なのに、 赤がタイヤを倒した手段が「斬撃は無効だけど熱が有効」だった為、物凄いちぐはぐな事に。テトムの事は置いておくにしても、 新アイテム入手回としてもなんだか中途半端な出来。
 良かった探しをすると、戦闘中にブラックに、
 「あんなのが怖くて、横綱の突っ張りは止められないぜ! どすこい!」
 という台詞があり、過去の経歴を行動や言動の端々で匂わせる、みたいな描写は、メイン回で一気に明かしてしまうよりも、 メンバーの前歴を隠しているという特色を面白く活かせると思うので、今後も出来れば継続してほしい部分です。

◆Quest6「牛、焦がれる!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:武上純希)
 サブタイトルが、「牛、焦がされる!!」とか「牛、焼かれる!!」みたいで、 なんか酷い。
 ビーフ。
 女性を次々とさらうウェディングドレスオルグを追い、結婚式場に潜入するガオレンジャーの5人。多分、 囮作戦を行おうとするくだりがカットされたのだと思うのですが、突然、黒が女装しているという謎の展開。 ドレスオルグは花嫁の身に纏うドレスに偽装しており、式場から花嫁をさらうと、更に女装した黒までもさらってしまう。
 式場の一室をアジトにして潜んでいたドレスオルグの目的は、女性を次々とさらってフィギュア化して観賞する事。 性癖の変態ぶりに加え、紫色のけばけばしい配色に、ドレスの胸部分に顔があり、その上に角が生えているというデザインが秀逸で、 ちょっと女っぽい顔デザインなのに、声は野太く江川央生、というアンバランスもはまって印象深い怪人となりました。
 ドレスオルグに密かに協力していたのは、ブラックが一目惚れした式場の職員、 島田佐織(演じるは『鳥人戦隊ジェットマン』でアコ役の内田さゆり)。 島田はドレスオルグの集めた生体エネルギーによって若返る事と引き換えに協力していたのだが、若返りすぎて赤ん坊になってしまう。
 その光景に怒りに燃えた黒は四股を踏むと、猛然と張り手を浴びせてオルグを吹き飛ばし、揃ったガオレンジャー、反撃開始。 黒は他に島田の事を「金星」と表現するなど、引き続き、相撲にゆかりがあったと思われる言動。
 今回は破邪百獣剣で邪気退散すると、ドレスが生命エネルギーを奪うのに使っていたステッキを回収し、 ガオキングのテーマ曲をバックにしたロボ戦では、特に苦戦する事なくゾウで両断。
 早め(Bパート7分目程度)に怪人を倒すと、ステッキを使って人々を元に戻すシーンが入るという構成で、3話同様、 状態異常からの回復手段、を意識したのが窺えます。島田を若返らせるのに(そして元に戻すのに)消費した分、 微妙にエネルギーが足りないような気がしたのですけど、攫われた人々は皆無事に戻ったので、大したエネルギー量では無かったのか、 全員がちょっとずつ風邪をひきやすくなったり胃弱になっているのか、オルグのみぞ知る。
 「ドレスオルグに協力したのは、島田さん、あなたですね」
 その後、更に後始末シーンが続き、4人が島田を責め、島田に恋する黒が土下座してフォローするのですが……えー……「はい、 そうです」とか言われたら、どうするつもりだったのかガオレンジャー。オルグの協力者には、天誅とかしてしまうのか。
 ガオレンジャーが天誅しても問題ですし、一方で島田のやっていた事はかなり悪質ですし、 踏まなくてもいい地雷を盛大に踏んでしまった感じに。
 『鳥人戦隊ジェットマン』から10年後の内田さゆりさんをゲストに迎えたという事で、もう少し登場シーンをという事になったのかもしれませんが、 戦士として自分達の過去さえ消しているガオレンジャーとしてはオルグが片付いたら黙って姿を消す方が後腐れがないですし、 作風として面倒くさい部分はスルーした方が良かったと思うのですが、二重に困ったシーンになってしまいました(^^;
 それとも、4人が島田を責める→黒が島田をかばう→島田さんのときめきゲージが上がる筈! という、 計画的犯行だったのか。……それはそれで、本名も名乗れず日本各地を飛び回る戦士の恋愛を仲間が応援しても良いのか、 という別の問題が生じるわけですが(^^;
 仲間の支援射撃とは知るよしもなく、黒は真っ直ぐな気持ちで島田の美しさは心にある、と褒め称え、 その言葉に自分に自信を失った事から悪鬼の誘惑に乗ってしまった事を反省した島田は、今の自分を受け入れ、 恋人と結婚する事を決めるのだった……で、黒が見事に玉砕してエンド。
 次回、更なるパワーアニマル登場の予感……というか、5話はやはり白回の扱いなのか。 成り行きでエレファントの飼い主になっただけで、なんだか不憫だ、白。

◆Quest7「夢が語る!!」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希)
 「海はブルーの出番だな」と、某科学戦隊の海を愛する男みたいな扱いを受けるブルー、私室の壁には操舵輪とか浮き輪とか釣り竿とか、 とりあえず“海っぽいもの”が手当たり次第に並べられており、そのわざとらしさと取り留めの無さが若干サイコ風味で不気味です。
 テトムがオルグの気配を感じ、港町へ向かったガオレンジャーは、ライオンキャノンすら防ぐ強敵、帆船オルグに苦戦する。 漁師である父の帰りを待つ少年と仲良くなったブルー、
 「兄ちゃんの名前は?」
 「怒濤の鮫だ」
 ……そろそろ、苦しくなっていないか(笑)
 そして、
 「ガンバレ、怒濤の鮫!」
 と、素直に応援する健気な少年(笑)
 圧倒的なパワーでオルゲットごとガオレンジャーを吹き飛ばす帆船オルグを、青の奇襲攻撃から何とか倒す5人だが、 巨大化した帆船はここまで破竹の快進撃だったゾウソードを跳ね返し、ガオキングを追い詰める。だがその時、 夢で繋がった青の呼びかけにより、“まだらのやり”――パワーアニマル・ガオジュラフが復活。 ガオキングは百獣武装でガオキング<スピアー>となると、必殺キリンヘッドストライクにより、帆船を倒すのであった。
 冒頭から青の悪夢で“まだらのやり”を強調しておきながら、実際にガオキングが追い詰められるまで全く調べが進まない為おいおいと思っていたら、 実は港町で青を撲殺しようとしたり、逆転の助けになってくれたクレーン車が、ジュラフの仮の姿だった、 というのはちょっと面白かったです。
 そして終わってみると、サブタイトルはなんの比喩表現でもなく、ド直球でありました。
 率直に、今の所どうもノリきれないのですが、色々な動物が次々と出てきてロボットの武装になる、 というのはワクワク感は確かにあるなぁ、とは思う所。その点において、最初に古文書を拾った時点で 「地上で眠るパワーアニマルが4体居るみたい」と提示したのは、良かった部分。

◆Quest8「犬、走る!!」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希)
 オルグの気配にガオレンジャーが向かった街は、かつて獣医として赤が働いていた街だった。 信号機に擬態して交通事故を引き起こすシグナルオルグの記憶喪失光線を受けたレッドは、 ここ数ヶ月の(ガオレンジャーになってからの)記憶を失った上で川流れし、かつての就職先に拾われる。
 元の勤め先の動物病院で「二ヶ月も行方をくらましおって」扱いを受ける赤ですが…………あれ、赤、 拉致されてそのまま強制的に入信させられたわけではなく、一度自由の身になった後、 第2話で手荷物をまとめてガオズロックに本人曰く「就職」しに来ていたのですが…… 元の職場には何の連絡もしないまま姿を消していたという、とんでもない駄目社会人であった事が発覚。
 軽いギャグが大惨事になってしまいました。
 ガオレッドとしての記憶を失い、街の人々に親しまれる「かける先生」の姿を見たホワイトは、 レッドはガオレンジャーに戻ってこない方が幸せなのでは、と考えるが、イエローがそれを許さない。
 「レッドはあの時、自分で人生を選んだんだ」
 そう、パワーアニマル教団は、背教者を許さないィィィ!!
 裏切り者は地の果てまで追い詰めて必ず滅するべし、それが、野生の掟なのです。
 走が再び戦士の道を選ぶまでの話、というよりは、日常に戻った赤はそのままでいいのではと白が考える話、なのですが、 同僚の恋人と一緒にいるべきだと白が勘違いしている、という要素を加えてしまった為に、どうも焦点がぼやけてしまいました。
 白をいい子路線で突き進めるなら、「かける先生」である事を大事にして欲しい、という所に焦点を絞った方が良かったと思うのですが、 まあそれだと、黄と青と黒が可哀想か(笑)
 走自身は記憶を失っている為に、獣医として働いていた「過去」と、ガオレッドとして戦う「現在」の間で揺れるわけでもなく、 「記憶喪失」「日常」「恋愛」という三つの要素をまとめて放り込んでシェイクしてみた所、巧く混ざらずに分解してしまったという感じ。
 「一緒に来てくれ。必ず、お前の記憶を、取り戻してみせる」
 犬と散歩に出た走を取り囲んだ4人はいきなり両脇を掴んで総本山へ引きずっていこうとするが、思い悩んだ白がそれを止め、 更にそこへシグナルオルグが現れる。自分をかばって傷つき倒れる4人を見た走は協力を申し出、再びガオアクセス。
 記憶を失っても走は走、どんな時でも傷つく者を見捨てられずにガオレッドを選ぶのだ……と、改めて走の背景を見せた上で、 1話と重ねたのでしょうが、“ガオレッドになる重さ”というのを特に走に提示していない為、成り行きのいい人、 という以上のものになりませんでした(^^;
 ガオレッドは記憶がないまま、破邪百獣剣でシグナルオルグにダイレクトアタック。
 「思い知ったか!」
 ……そして、ただの喧嘩好きに。
 その後真っ当に破邪百獣剣で邪気退散し(赤が記憶が無いので黄色が言うのは小ネタで良かった)、それにより赤は記憶を取り戻し、 ジュラフ発動で巨大シグナルは瞬殺。
 赤はガオレッドの姿のまま「獅子くんの友人の、ガオレッドです」を名乗って病院を訪れると、 必ず戻ってくると告げてその場を去るのであった。…………うんまあ、結婚式回の時にガオブラックさんも普通に受け入れられていたので、 この世界は、全身スーツがお洒落セレブのファッショントレンドなのです。
 なお4人が誤解していた同僚の女性は、赤の恋人ではなく院長の妻(見た目は親子)であった、というオチ。
 基本、純粋良い子路線の白ですが、教団の使命よりも赤の恋路(勘違い)を応援しようとする姿を強調しようとするあまり、 「恋人になる人は、白いお馬に乗って、バラのお花を抱えてやってくるんだもん」とか「2人の恋を邪魔したら、 絶対地獄に落ちちゃうんだから」とか、恋に夢見るメルヘン乙女を通り越して、ちょっと頭の不自由な感じに(^^;
 ……前回は黄色のウクレレ弾き語りをニコニコしながら聴いていましたが、この娘はやはり、 生まれた時から教団に育てられたとかそんな感じなのでしょうか。テトムよりよほど、社会とズレている感じがなくもない。

→〔その2へ続く〕

(2015年10月31日)
(2019年7月28日 改訂)
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