■『炎神戦隊ゴーオンジャー』感想まとめ10■


“オレたち旅立ち 新たなこの道
行くぜ相棒 どこまでも GO−ON!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『炎神戦隊ゴーオンジャー』 感想の、まとめ9(GP−46〜FINAL)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆GP−46「家出ボンパー」◆ (監督:竹本昇 脚本:吉本聡子)
 ここに来て2話連続で、新規の脚本家。前回は総集編だからまだわかるとして、ちょっとビックリ。内容的にも、 内部で脚本コンペでもあったのだろうか。
 自ら運動して二酸化炭素を吐きまくる蛮鬼獣・ダンベルバンキが街に出現。ウイングスが現れて戦いになるが、重すぎる腕を動かせず、 ウガッツを呼んでもやって来ず、飛び道具を撃って撤退。
 「何しに来たんだ」
 「そういえば来なかったね、ゴーオンジャー」
 「あいつら……」
 ぎんじろうへクレームに行くピカピカ兄妹だが、当のゴーオンジャーもこれに驚き、 ガイアーク反応を見逃したというボンパーに凄む赤と黒。黄色、緑、青はボンパーをフォローするが、ボンパーさん、変な方向へ爆発。
 「本当は、僕なんか居ない方がいいって思ってるんでしょ」
 赤「今、なんつった?」
 「僕なんか、居ない方がいいよね! どうせ僕はポンコツで、何の役にも立たないよね!」
 いやいや、ボンパーさんを「ポンコツ」呼ばわりしたら、世の中にはもっと立ち直れない人達がうずたかく……!
 そんな東映ヒーローの残念な歴史を知るよしもなく、あまりに活躍の場が少ないからか、急にキレたボンパー、 ぎんじろうを飛び出し、まさかの家出。
 最終章を前に、物量的都合でどうしてもスポットの当たりきらなかったナビゲーションロボット、ボンパーに焦点を当てる展開に。
 このままではガイアークが出現した時に困ると、走輔と軍平は強引に範人を連れて、第六感を持つピカピカ兄妹の元へ。 最近どことなく様子のおかしかったボンパーを心配していた早輝と連は、家出したボンパーを探しに行く。
 実はボンパーが突然やさぐれたのには、小耳に挟んだ連と走輔の
 「なんか、うまく働かないみたいなんスよ」
 「使えねえなぁ。ポンコツだし、もう駄目なのかな」
 という会話を自分の事だと勘違いしたという事情があったのだが、ベアールVとバスオンから、 最近元気の無いボンパーが夜中にこっそり自分で自分を修理していたという話を聞き、早輝と連は慌てる。 ボンパーの部品は特別製であり、もし壊れた場合はマシンワールドに戻らない限りは、完全に修復は出来ないのだ……。
 一方、ヘルガイユ宮殿にすごすご退散してきたダンベルバンキ。 実はダンベルには重すぎる両腕を動かす操縦役として選抜されたウガッツLとRが付けられていたのだが、 業務に不満を持って退職していた事が判明。急遽、操縦係を再選抜するガイアークだったが、なかなか適任者が現れない。
 「よし! こうなったら、妾達で操縦するしかないでおじゃる」
 「ええっ?!」
 ケガレシアとキタネイダスのリモコン操作(それぞれ、片腕ずつを担当)により再び街で暴れ回るダンベルは、 駆けつけた赤・緑・黒・金・銀を薙ぎ倒す強さを見せつけるが、宮殿から遠隔操作の電波が届かず、撤退(^^; 脱力系のネタですが、 一応、強敵が力を出し切れない理由としては、なかなか面白くまとまっています。
 ガイアークのセルフ追い詰められ感が、凄い勢いで上昇していますが!
 なんだろうこのガイアークの、未だにおふざけレベルで強力蛮鬼獣を繰り出せるのに、明後日の方向で駄目な感じ。
 その頃寂しく彷徨っていたボンパーは、海辺で黄昏れているウガッツL・Rと出会っていた(笑)  自らの意志で職場を捨ててはきたものの、どこか胸に空虚を感じる3体。ボンパーの「言いたい事をちゃんと言えば良かった……」 という呟きを聞いたLRはヘルガイユ宮殿に帰っていくと、上司に待遇改善を訴える(笑)
 ゴーオンジャーでは走輔と軍平が、ボンパーを気にして戦闘に集中できなかった事を認め、 “居て当たり前”だったボンパーの存在を改めて噛みしめる5人。
 うーん今回、主題自体は好きなのですけど。さすがにどうにも、唐突すぎた感は否めません(^^;
 以前にボンパーが少し目立った21話(フーセンバンキ回)は、「今更、そのネタ?」というシリーズ通してもかなり駄目な回でしたが、 なにぶん、普段あまりにもボンパーに焦点を当ててないので、何をやるにも積み重ねが足りません。
 またボンパーって実は、“役に立たなかった事がない”、ごく普通にゴーオンジャーの生命線なので、 あくまで本人の意識の問題とはいえ、急にやさぐれるのはさすがに無理を感じます。せめて、 ボンパーの不調を何話か伏線として敷いておければ、終盤にやる意味も出てきたと思うのですが、特にそういう描写があったわけでなく、 元々ドジキャラなわけでなく、やさぐれ展開のトリガーが、小耳に挟んだ連と走輔の会話、だけなのはどうにも厳しい。
 というかむしろ、未だにそれで誤解する程度の関係なのか?! みたいな(という所に走輔は怒った、という展開にはなるのですが、 ボンパー側が家出に至る心理としては、どうしても厳しい)。
 そこを“そういうボンパーの性格”で理由付けしているのですが、肝心のその“ボンパーの性格”がさして描写されてきていない、 というありがちにして致命的な矛盾(^^; これは今回の脚本の問題というより、シリーズ全体の問題でありますが。 改めて1回ぐらいボンパーをフィーチャーしようと思ったけど、やっぱりなんか無理があった、という。
 全体の構成で言えば、フーセンバンキの時のようなネタを1クールの内にやっておいて、今回は2クール後、 中盤の新展開前に挟んでおくような内容。とはいえ、今作に関しては、炎神優先が圧倒的に正しいので、 ボンパー回があっただけマシ、と見るべきではあるかもしれませんが(^^;
 ただ最終盤に持ってくるエピソードには、なるべくここまでの物語的積み重ねを活かしてほしいので、活きているようで活きておらず、 ちょっと勿体ない。
 労使交渉に勝利したLとRの再就職により、ダンベル、三度、街へ。
 「ようやく僕ちゃんの本当の力が戻ったベル!」
 背後の高層ビル屋上でリモコンを操るLとRの華麗なスティック捌きにより暴れ回るダンベルは、駆けつけた赤・緑・黒・金・銀を、 軽々と圧倒する。その戦いを見つめるヘルガイユ宮殿に響く、重く低い声……
 「ウガッツに屈するとは、情けないナリナ……」
 「今、なにか言ったでおじゃるか……?」
 「いや……。なんか、聞いたような声ゾヨ」
 ダンベルがゴーオンキャノンボールさえ弾き返す恐るべき強さを見せている頃、早輝と連はようやくボンパーを見つけ出していた。 走輔が怒っているのはボンパーが役に立たないからではなく、仲間である筈のボンパーが自分達の関係を信じていないからだ、と諭す連。 そして早輝は、ゴーオンジャーとして最初の戦いの後、ボンパーがゴーフォンにつけてくれたストラップを見せる。
 「私、これのお陰で笑顔になれた。みんなも同じ、ボンちゃんが居るから、笑顔になれるんだよ」
 「僕も、僕も同じだよ。だから僕、本当はみんなに言いたかったんだ。一緒に居てくれて、ありがとうって。僕、 直らないかもしれないから。最後ににみんなに、ちゃんと……」
 「大丈夫。俺が絶対直す。これからも、ずーっと一緒だ」
 連、真面目モード。
 最初の3人だった頃の回想が入ったり、今回、最終章を前に原点を見つめ直す、という要素も含んで青と黄のコンビ行動だった模様。 赤い人は居ませんが!
 「でも……」
 「うん。だから帰ろう、ボンちゃん」
 「ボンパー」
 「連、早輝……」
 手を伸ばす2人、それを握り返したボンパーは、ダンベルバンキのガイアーク反応に気付く。
 真の力を発揮するダンベルの攻撃に追い詰められていた5人を助けに入る青と黄だが、強靱無比な両腕の前に、やはり手も足も出ない。 更に超ダンベルミサイルが炸裂し、吹き飛ぶ7人。倒れた7人にとどめの攻撃が迫ったその時、 追いかけてきたボンパーが赤の満タンガンを構えて、その前に立ちはだかる。
 「やめないよ、ボンボン! 僕は、みんなと一緒に居たいから。みんなは、僕の大切な仲間だから。 僕がみんなを守るんだ!」
 色々、物語としての積み重ね不足に不満は言いましたが、ここは格好良くなりました。一つ前の連と早輝とのシーンも含め、 地味な役回りながらしっかりボンパーに可愛げを与えていた、中川亜紀子さんの声優力による面が大きいですが、お見事。
 ボンパーは満タンガンを構え、迫り来るダンベル……ではなく、背後のビルからその両腕を操るウガッツLとRを、 超精密狙撃で無慈悲に抹殺。
 …………え、あれ? …………えーと……先程なんとなく、“心の交流”とかしていませんでしったけ……?

 ボンパーさん、マジ鬼畜

 俺は涙を流さない ダダダ!
 ロボットだから マシーンだから ダダダ!
 ここからOPかかって全員の名乗りで反撃開始。ジャーとウイングスが完全合体ではないものの、そこはかとなく混ぜて、 最後の揃い踏み立ちポーズは、7人+ボンパーさんで。
 リモコン操縦の電波に気付いたボンパーさんの必殺の一撃により、文字通りに両腕をもがれたダンベルバンキはもはや7人の敵ではなく、 合体攻撃で滅殺。
 「ビックリウムが満ちるゾヨ……腕は上がらんが」
 産業革命に対し、ぎんじろうに誰も居ない為にキャストが転送できない……となるが、ゴローダーGTが久々に大活躍。 腕の上がらないダンベルバンキをハイスピードアクションで叩き伏せ、ピカピカ兄妹が青空王をテイクオフ。 腕の上がらないダンベルバンキを青空インパルスで射殺してタッチダウン、とここに来てもロボットを使い切り、 敵の弱体化理由も含めここは流れが綺麗に収まりました。
 こうして改めて、絆を取り戻した、ゴーオンジャーとボンパー。連と走輔がポンコツ扱いしていたのはぎんじろうであった事が判明して誤解も解け、 ボンパーさんの故障は思いこんでいただけ、ガイアーク反応に気付かなかったのは気にしすぎてそれどころでは無かった為、 とざっくり一件落着。
 ……次回多分、心を持ったぎんじろうが大脱走。
 序盤に悪魔ぶりを見せつけた後、どうしてもスポットを当てられなかったボンパー回。1エピソードとしては悪くなかったのですが、 物語全体で見ると、どうにも勿体ないという思いが先行してしまいます。作品コンセプトとして手が回らないのは仕方ない (そしてその路線で上手く行っている)のですが、もう幾つか途中途中で踏み込んでおけばもっと盛り上がったのにとは思われます。
 まあ、終わってみれば仕込んでどうこう、というよりは、一回ぐらいボンパー回やっておくか的な単発エピソードではあったわけですが。 単発エピソードとしてしか成立しなかったのは勿体なかったな、と(この辺りよく引き合いに出しますが 『タイムレンジャー』最終盤のタック話はサポートメカ回として素晴らしかった)。
 その辺り、物語の積み重ね不足をねじ伏せて、最後を盛り上げた中川亜紀子さんの声優力には、感嘆。
 今頃気付いたけど、思うにゴーオンゼミナールって、ボンパーさんの出番をさりげなく確保する重要なコーナーだったんですね……。
 ウガッツLとRに関しては、しょせん欲得で悪の道に戻ったという事でフィクションの因果応報としては踏み外していないのですが、 結局は機械生命体のドライな繋がりであり、ボンパーさん、 マジ悪魔マジ外道マジ鬼畜という、 最終的に何もかも真っ黒になるところが、物凄い今作らしい(笑)
 そして――またも作戦に失敗し、キタネイダスとケガレシアがやけ酒をあおるヘルガイユ宮殿に、不気味な声が響いていた……。
 「いったい何をしておるナリナ」
 2話引っ張った末、遂にゴミ箱の中から登場する、もやもやした漆黒の影!
 次回、大臣ズ解任?!
 いよいよヒューマンと炎神とガイアークの戦い、最終章へ。
 の割には予告見るとどうも、軍平と範人のコンビ話も交えるようですが、これも一つの原点振り返りか。 ここまで充分に楽しませてもらった作品なので、後はどうまとめるか、楽しみです。

◆GP−47「内閣カイゾウ」◆ (監督:諸田敏 脚本:武上純希)
 「我が名は、ヨゴシマクリタイン、ナリナ」
 ヘルガイユ宮殿に放置されていた無限ゴミ箱から現れた黒い影、それは声と口癖がそっくりなヨゴシュタインの父親にして、 ガイアーク総裏大臣・ヨゴシマクリタイン。
 「ガイアークに総裏大臣が?!」
 「知らなかったゾヨ……」

 おい

 そして同じくゴミ箱から登場し、それを紹介したのは、総裏大臣の女房役、危官房長官・チラカソーネ。
 2人はサウンド、マジック、プリズムの3ワールドをちらかし、今、ヒューマンワールドへやってきたのである。 3ワールドを滅ぼしたと噂になっていたも殉職したキレイズキーは、あくまでヨゴシマクリタインの配下の1人に過ぎなかった。
 ガイアーク的に考えると、「滅ぼす」より「散らかす」の方が正道なので、改めてキレイズキーさんは、 噂に尾ひれがついたのをいい事に、ふかしていた疑惑(笑) まあ、総理と官房長官と面識はあったようなので、 ガイアークの一員ではあったようですが。
 で、どうもこうなると、どうやらガイアーク本体はとっくの昔(恐らく数百年単位) に安住の地を求めてマシンワールドを捨て他のワールドに移っており、何らかの事情で後に残った一部が、 そういった歴史も忘れ去られた頃、炎神の迫害に耐えかねて武装蜂起するも失敗してヒューマンワールドへ……という流れが推測されます。
 この辺り、最終的に筋の通る説明は今後の本編で入るかもですが。
 その頃ぎんじろうでは、何故か軍平が範人を女装させようとしていた。
 「な? いいだろ?」
 どこへ行こうとしているのか。
 軍平によると、母親がお見合いを勧めてきてうるさいので、女装範人の写真を送って誤魔化そうとしているという事なのですが、 そこに生物学的に女の子座ってますよ?!
 まあ、軍平と早輝がカップルを称すると、若干、犯罪の臭いが漂うのは確かだけど。
 そして天使、ツッコミもしなければ、協力の意志も示さくて怖い(笑)
 そこへボンパー曰く「いつもの大臣よりずっと強いガイアーク反応」が感知される。
 ……や、いつもの大臣も、戦うと、強いよ?
 「我らが総裏大臣、ヨゴシマクリタイン様の登場なのーね」
 高層ビルに浮かび上がる、ヨゴシマクリタインの顔。
 ヒューマンワールドに改めて宣戦布告――と思ったら、いきなりの大爆破。自分の顔を映したビルを最初に粉微塵にするとか、 凄い大物感が漂います(笑)
 「内閣改造! ガイアークはChangeする時なのーね! 世界中の空を、海を、陸を、汚しまくり、散らかしまくるのーね」
 「Yes,We can」
 この局面で某国大統領ネタを放り込んでくるとか、どこまでもブレません。
 ゴーオン7人が登場してとりあえず名乗り返し、チラカソーネの命令でウガッツと一緒に突撃してくる大臣ズ(笑)
 ただやっぱり、まともに戦うと強い。
 ウガッツを蹴散らした緑と黒はヨゴシマクリタインに挑もうとするが、その時、 興奮状態のキャリゲーターが強引に満タンガンの中に入り込み、ビームを乱射。
 「ヨゴシマクリタイン、ここであったが百万年目でござーる!」
 予告から緑と黒の話だとは思われましたが、ここでまさかの、キャリゲーターにもスポット。正直、 キャリゲーターはこのままの扱いで終わると思っていました、すみません。
 「秘技・天地逆転!」
 だが、チラカソーネが満タンガンのエネルギーを飲み込んで増幅反射し、吹っ飛ぶ2人。更に残り5人も、 チラカソーネの使う散らかし拳法の前に叩きのめされていく。チラカソーネは小太り体型からは予想外の拳法使いで、 ここのアクションは面白くなりました(『vsゲキレン』を意識したネタか)。
 下へ吹っ飛ばされた緑と黒は、ジャイアン族が希少種族となったのは、過去にヨゴシマクリタインによる大殺戮があった為だった、 とキャリゲーターから聞かされる。キャリゲーターが我を失った事情を知った2人は戦列復帰し、 不意打ちでチラカソーネにダメージを与える事に成功。
 「天気がいいナリナ」
 どこか鷹揚な感じのヨゴシマクリタインの攻撃を弾き、総理に必殺武器を向ける7人。
 「総裏、危ない! お任せをー!」
 だが壁となったチラカソーネが天地逆転を発動し、自分達の必殺攻撃で大ダメージを受ける7人。 マニフェスト発表を終えたガイアーク新首脳部は、ゴーオンジャー恐るるに足らず、と7人を捨て置いて帰宅するのであった。
 炎神達にとって伝説の種族となっているジャイアン族が、かつてヨゴシマクリタインに大殺戮を受けて希少になったという事は、 むしろマシンワールドはかつてガイアークの支配下であり、その後なんらかの事情で炎神がそれに取って代わり、 差別と被差別の関係が逆転した、という事でしょうか。
 そしてみんな、そんな暗い歴史は忘れてしまっているというのが、 今作の実は真っ黒でシニカルな所だなぁ。
 それぞれ怪我の手当をするゴーオンジャー。何故か2人で銭湯へ行っている、軍平と範人。朝は女装問題を発端に喧嘩もしたけど、 なんだかんだで仲のいい2人、そしてお気楽でお調子者に見えるけど、範人もけっこう傷だらけ。そんな不在の2人を、 居ないのをいい事に急にけなし始める、走輔達。
 赤「あの厄介なでこぼこコンビと、うまくやるのって、大変だったよな」
 黄「軍平は堅物で、融通が利かなくて、口うるさいし」
 青「範人は、調子が良くて、気まぐれ……どこか軟弱っスね」
 銀「なんか2人とも、いいとこないみたいじゃない?」
 金「だがあの2人が居ないと、さみしいだろ……なぁ、走輔?」
 赤「な、ちょっと、馬鹿言うな! あんな押しかけ参加の2人がいなくたって」
 黄「でも確かに……5人で居るのが普通になってたよね」
 まあ、しれっと場に混ざっていますが、走輔達視点ではピカピカ兄妹の方がよほど途中参加(笑)
 そしてピカピカ兄妹視点で見ると、5人とも後から出てきてヒーロー気取りの廉価版集団で十把一絡げという(笑)
 ヘルガイユ宮殿では、ヨゴシマクリタインが無限ゴミ箱から何か赤い鉱石のような物を取り出して食べていた。 大臣ズは微妙にチラカソーネが気に入らない様子ですが、強い味方なのはいいけれど、偉い人が出てきて職場で飲酒出来なくなったからか。
 「このチラカソーネが、ヒューマンワールドの全てを、散らかしてみせるのーね」
 圧倒的な技と自信を持つチラカソーネは単身出撃していき、どうすればチラカソーネを打ち破る事が出来るのか、 銭湯で悩んでいる2人と3体。
 同様に考え込んでいたぎんじろう組5人の方では、連が「天地逆転」は反撃のエネルギーを放っている間は新たに飲み込む事が出来ない、 という弱点を指摘する。
 「それだ! 誰かが砲撃を受けている間に、横から攻撃すれば、倒せる筈だ」
 「でも誰が犠牲になって攻撃を受けるの?」
 タイヤでいいのでは。
 もう一度、あのエネルギー波を浴びたらただでは済まない……打開策を見つけられずに居る中、街へチラカソーネが出現。 「秘技・天地無用」でビルを次々と破壊して行くその前に、軍平と範人がいち早く立ちはだかる。

「ダッシュ豪快・ゴーオンブラック!」
「ドキドキ愉快・ゴーオングリーン!」
「「正義のロードを突き進む」」
「頑張る!」
「押しかけ!」
「「参加組!!」」

 …………えー、いつもおかずが一つ少ないとか、洗濯物が日陰に干してあるとか、 見えない所で陰湿なイジメとかあるのでしょうか(笑)
 緑と黒は華麗なコンビネーション攻撃を駆使し、それとぶつかり合う散らかし拳法。遅れて5人が到着し、 緑と黒は必殺武器のジャンクションライフルを構える。そう、銭湯で対チラカソーネの作戦を考えていた2人は5人と同じ結論に思い至り、 自発的に囮になる為に先行していたのである。
 緑と黒はジャンクションライフルを放ち、それを飲み込むチラカソーネ。天地逆転が発動し2人はエネルギー波に飲み込まれるが、 その隙にハイウェイブバスターとウイングブースターが横から突き刺さり、チラカソーネ大爆発。
 「あの2人、なかなかやるじゃない、兄」
 「無茶だ。……が、だからゴーオンジャー、だな」
 今回ここまで、視聴者が思ってもいないレベルで、初期メンバー3人と追加2人(と言っても2話からなんですが)を区切って置いて、 ここでデタラメデス回を踏まえて「ゴーオンジャー」をまとめる、というこの台詞はお見事。兄の立ち位置も活きました。
 チラカソーネはドッキリウムで超産業革命し、ダメージの大きい緑と黒を気遣った5人は炎神王と青空王で別個に出撃するが、 巨大化しても健在なチラカソーネの散らかし拳法を受けて大苦戦、両ロボとも分離してしまう。
 ここで負けるわけにはいかない、と立ち上がった緑と黒は炎神キャスト転送、 キャリゲーターにガンパードとバルカを乗せる懐かしのキャリー状態から連続攻撃を浴びせ、頑張王チューンナップ。
 「2人の心と3体の魂が一つになり、とことん頑張る炎神の王が、今、降臨するんでい!」
 あんまりだと思ったのか、バスオンさんが考えてくれたよ!
 頑張王はチラカソーネを気合いのラッシュで押し切り、頑張グランプリ発動。
 「なんの、これしきのエネルギぃ!」
 「「うおりゃあ、剛力無制限!!」」
 で押し込む、という使い方は格好良かった。
 頑張王の大奮闘によりチラカソーネは散るが、邪悪な意志を感じるピカピカ兄妹。
 「なにこの強い殺気……」
 姿を見せたのは、総裏大臣ヨゴシマクリタイン。怒りのキャリゲーターは総理を踏みに行くが弾かれ、ヨゴシマクリタインの体から、 凄まじい光が迸る。
 「必殺・正義解散!」
 総理の放つ黄金の閃光を浴び、キャスト状態に強制分離される頑張王。
 ……バカヤロー解散、みたいな技?
 「貴様……何をした!」
 「ふん……見るナリナ」
 頑張王から弾き出された緑と黒が目にしたもの……それは、奇妙な光に包まれ、金色の粒子となって消滅する3体の炎神であった!
 「俺が、消える……あいぼぉ!」
 「せ、拙者も……む、無念でござる」
 「あ、アディオス・アミーゴぉ……」
 無残に消滅する3体の炎神。そして、緑と黒の体にも異変が……。
 「こんなので、消えてたまるか……!」
 「世界を、守らなきゃ……」
 「無理ナリナ。おまえ達、最期ナリナ」
 立ち上がった2人は総理へ向けて足を進めるが、変身が解除されて倒れ、そして――消滅する。
 「軍平! 範人! 行くなぁ!!」
 走輔の絶叫が響き渡るが、それは空しく木霊するだけ……。
 ここで、範人、軍平、バルカ、ガンパード、キャリゲーターがまさかの戦線離脱。比較的ライトな作風を逆手にとった予想外の展開で、 これは油断していただけに意表を突かれました。
 そして、この衝撃のラストをもって3人と2人を妙に分けていた真の理由が判明する、という巧みな構成。 前回がボンパー回に合わせて何となく初期3人の頃を振り返っていたのも、見事な目くらましになりました。前回、 内容はともかくタイミングの微妙なボンパー回と書きましたが、ボンパー回という事そのものが、 この展開の布石であると同時にステルスだったというのは、なかなか凄い。
 流れとしてはごく自然に、前回、ボンパーと3人の話だっから、今回は範人と軍平と相棒達の話で、 これまでを総括しながらクライマックスへ向かうのだろうなぁ……と思っていたら、ここまでやってくるとは、これは、やられました。
 またこう持っていく事で今作の構造上、最強最大問答無用の炎神王G12を、出しも下げもせずにごく自然な成り行きの中で封じている、 というのも巧い。
 基本的に、武上脚本それほど評価していないのですが、『ゴーオン』の武上さんは、実にいい仕事。今作は、 サブメンバーとのバランスもいいけど。

◆GP−48「正義カイサン」◆ (監督:諸田敏 脚本:古怒田健志)
 「我が伝家の宝刀、正義解散によって、奴等は無になったナリナ」
 ヨゴシマクリタインの放った、正義解散。それは触れたものを無へと還元する文字通りの必殺技であった。
 「我から見ればおまえ達など、虫けらのような存在ナリナ」
 ガラガラポン、で国会議事堂崩壊(笑)
 ヨゴシマクリタインのハンマーのほんの一撃で、かつてない大破壊に見舞われるヒューマンワールド。
 「この世界はもう終わりナリナ」
 「許さねぇ」
 激怒して生身で総理に突撃しようとする走輔を何とか抑えるピカピカ兄妹。ヨゴシマクリタインは再び正義解散を放とうとするが、 空腹で帰宅。前回から何かと食べているのはやはり、伏線だった模様。強大な敵があまりあっさり出たり帰ったりを繰り返すと白けがちですが、 あれだけの大技だと、燃費が悪くても納得です。
 帰ってきたヨゴシマクリタインの機嫌を取ろうとヨゴシュタインの名前を出してみる大臣ズだが、ヨゴシマクリタインはかえって激怒。
 「ヨゴシュタイン……ゴーオンジャーごときに負けた役立たずの名前など、聞きたくないナリナ!」
 ガイアーク陣営においてかつてない冷酷な悪ぶりを見せつけるヨゴシマクリタインに対し、2人は役立つ所を見せようと、 蛮鬼獣作成部屋へ。
 「ふん、腹が減っては解散ができぬ。我は食うナリナ」
 ぎんじろうに戻った5人は、範人と軍平の反応を探すが……
 「範人達の反応は……どこにも無いっス」
 「別の次元へ飛ばされた形跡もないよ……」
 ヨゴシマクリタインの言う通り、2人と3体は、無になってしまったのか? 激高する走輔は、 クールに努めようとする大翔に掴みかかり、美羽に止められる。
 「兄、走輔達に冷静でいろって言ったって、無理だよ」
 「わかってる。だからこそ、いまは誰かがあいつらを支えてやらなきゃいけないんだ」
 一度、須塔家へ戻る兄妹だったが、そこでは何故か、2人の預かり知らぬ所で引っ越し作業が進められていた……。
 「大翔のやつ……他人事みたいに言いやがって、うぉぉ!!」
 荒れる走輔、沈み込む連と早輝。
 「あいつは俺が倒す……そうすれば、2人は戻ってくる筈だ! そうだろう?! なぁ、そうだろう?!」
 敵を倒せば万事解決する筈だ、という点に関してある種の意図的なメタ要素も感じさせる台詞ですが、 それを絶対に信じているわけではなく、無理矢理な笑顔で絞り出す、という走輔の表情がいい。
 「じい……?」
 須塔家の引っ越しを進めていたのは、スイスに居る須塔両親の元からやってきた執事だった。 スイスに来るようにという両親からの言葉を伝える執事だが、兄妹はそれを拒否。それに賛同し、 執事の周囲を飛び回るウイング族の炎神ソウル。
 「何を言っているのです、この、クジラめ!」
 執事、教官蹴った(笑)
 「ここには、支えを必要としている者が居る。それが出来るのは、俺たちだけなんだ」
 「じい、私は巻き込まれてなんかいない。これは、私が自分で選んだ戦いなの」
 邪悪の意志を感じ、執事を振り払って兄妹は出撃。そこでは、全ての蛮鬼獣の能力を備えた今度こそ最強の蛮鬼獣・ケッテイバンキが暴れていた。
 ケッテイバンキは、いちいち、能力元の蛮鬼獣の名前を言いながら攻撃するのが、丁寧で敗者へのリスペクトを感じます(笑)
 「総裏に会いたければ、ケッテイバンキを倒してみるゾヨ」
 3人もやってくるが、走輔は引き続き暴走状態。チームワークもへったくれもない攻撃でケッテイバンキにペースを握られてしまい、 能力全発動の総攻撃を受け、5人はバラバラに吹き飛ばされてしまう。ケッテイバンキは産業革命し、 その凄まじい攻撃力で街を破壊していく。
 ……仮にガイアークを排除する事に成功しても、政治と経済の中枢をやられ、なんか日本はもう駄目かもしれない。
 「これ以上戦っても、勝ち目はないっス……」
 「軍平と範人もいなくて、それに、もしあいつを倒しても、また総裏大臣が現れて……あたし達も、消されちゃうかも」
 すっかり戦意喪失してしまった連と早輝を励ます美羽。
 「ほら、スマイル」
 「え?」
 「スマイルスマイル、でしょう」
 一方、大翔は瓦礫に挟まれていた走輔を助け出す。
 「やめろ、おまえの力は借りねえ」
 「なぜそう頑なになる」
 「おまえは平気なんだよな。ゴーオンジャーじゃなくて、ゴーオンウイングスだから。軍平や範人が、どうなったって」
 「馬鹿野郎」
 「なんだと?」
 「俺がどうしてゴーオンゴールドになったか、わかるか?」
 「合体好きなんだろ……美羽が言ってた」
 拾った(笑)
 「違う。俺にしか、俺と美羽にしかできない、オンリーワンを探していたからだ」
 「……オンリーワン」
 「世界を守って戦う事が出来るのは、俺と美羽にしか出来ない事だと思っていた。だが、そこにお前達が居た」
 ウイング族に選ばれ、厳しい訓練を経てゴーオンウイングスとなった大翔と美羽。 ヒラメキメデスを追って戦い続けた彼等がヒューマンワールドに戻ってきて目にしたのは、 無能で貧乏で足手まといでどうしようもなく駄目なヒーロー気取りのアマチュア連中だった。
 だが――その中にある無茶な真っ直ぐさ、それは2人の持たない力であり、共に戦う事で2人をより高みへ飛ばしてくれる熱さであった。
 「早輝のスマイルには、何度も勇気を貰ったわ」
 「美羽……」
 「出会った頃はね、毎日卵料理ばかり食べてる人達なんて、信じられなかった」
 それ、戦いとは関係ない話ですよね(笑)
 「でも今は、連の作る卵料理は、世界一だと思う」
 「……世界一は……言い過ぎっス」
 「ううん。貴方達は、世界一頼もしい、私の仲間」
 美羽の言葉に再び立ち上がる連と早輝。
 そして――
 「走輔、おまえはこの世界を守るんだ。おまえと一緒に戦っている限り俺は、俺たちはどんな敵にも負けない」
 「……たっりめえだろ!」
 再起した5人は、暴れ回るケッテイバンキに向けて名乗りをあげる。
 「5人揃った俺たちは、マッハで無敵だぜ、覚悟しやがれ!」
 合身する、強烈王、炎神王、青空王。もう完全に、周辺が廃墟で戦っているのがなかなか凄い。
 ケッテイバンキの多彩な攻撃に苦戦する3体だったが、粘着攻撃を青空王が上空に回避し、 ウイングスのテーマ曲と共に分離して反撃スタート。と、前回を思わせる消滅フラグを立てる(笑)
 空中戦でケッテイバンキを翻弄した青空王が組み付いて動きを止めた所で、強烈エクスプレスと炎神グランプリが次々と炸裂。 最後は青空インパルスの矢が貫き、ケッテイバンキ大爆発。大臣ズは撤退するが、腹ごしらえを終えた総理、出馬。
 「総裏大臣、おまえは俺が倒す!」
 強烈王を降りて突撃するレッドだが、圧倒的なヨゴシマクリタインの力の前に一蹴されてしまう。
 「そこで大人しく、仲間が消えるのを見ているがいい」
 発動した正義解散により、強烈王、分離消滅。
 「美羽、覚悟はいいか」
 「勿論。私達にしか出来ない、オンリーワンの仕事ね」
 続けて炎神王が狙われるが、割って入った青空王が正義解散の光を浴びて分離。総理は伝家の宝刀を2回使った空腹で帰宅し、 投げ出されるゴールドとシルバー。
 「ボンパー! 感度最大で、この現象のデータを取れ!」
 ノブレス・オブリージュ――力ある者の義務と誇りとして、自ら身代わりとなる事で、正義解散を分析するチャンスを作るゴーオンウイングス。
 「兄貴……俺っちここまでみたいだ」
 「力尽きるとは、残念だぜ、バディ」
 「諸君……さらばであーる」
 だが、その代償はあまりに大きく、消滅する3体の炎神達。そして……
 「大丈夫だ…………お前達なら、この世界を救える」
 「信じてる……から」
 勝利を3人に託し、須塔兄妹も、消滅する。
 劇場版『仮面ライダー電王〜俺、誕生〜』のクライマックスで使っていた場所だと思いますが、 ロケ地が広いと画面に前後左右の広がりが出て、そこを金色の粒子が舞っているのが良い映像。特に、 3体のウイング族が消滅するシーンは非常に奥行きのあるいいシーンになりました。
 総裏大臣ヨゴシマクリタインの正義解散、無情にして圧倒的……!
 遂に、3人と3体とボンパーとぎんじろうだけになってしまったゴーオンジャー。
 果たして勝利への活路はあるのか。
 座り込む連と早輝だったが、1人立ち上がった走輔は、決然と顔を上げる!
 いよいよ、最終決戦の刻。
 いやいやきっちり、盛り上げてきました。
 前回が予想外の消滅展開だとしたら、今回は予告からも流れからも想定通りの展開の中、しっかりと話を作ってきました。 特にいいのは、もう一度、ジャーとウイングスの立ち位置を分け、ここまでの総決算展開をなぞった上で兄妹が本音を告げる事。 その上で、全体の中では、主に走輔の台詞で、“心にもない事”を言わせている。
 本音と建て前を敢えて交錯させる事で、その中の真実がより際だって浮かび上がる。
 古怒田脚本のセンスが光りました。
 前回、ライトな作風ゆえに予想外の消滅展開と書きましたが、逆に言えば、何らかの形で戻ってくるのだろう、 という安心感があるのは一ついい所であります(そう思わせた上でなお、盛り上げているのも見事)。ただその安心感は、 うまく捌かないと物凄く白けるのと紙一重なので、ここがスタッフ、最後の腕の見せ所。鮮やかな大団円を期待したい。

 次回…………あ、酒飲んだ。

◆GP−49「最終ケッセン」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:武上純希)

 飲んでしまった。

 正義解散によりゴーオンジャー4人と炎神9体を消滅させ、もはやヒューマンワールドに敵は無し、 と乾杯するヨゴシマクリタインと大臣ズ。
 「「「るねっさーんす!」」」
 どうして髭男爵(笑)
 「いよいよ、ヒューマンワールド殲滅作戦の始まりナリナ」
 街をバンドーマの大軍団が襲い、今は4人と9体の事は胸の内に収めて世界を守る為に戦う時、と走輔達は出撃。 次々とバンドーマを撃破していくが、その猛威は倒しても倒しても尽きる事がなく、炎神王を起動する事に。
 無限に湧き出るバンドーマ軍団……その秘密は、ヘルガイユ宮殿にあった。ヨゴシマクリタインの設計に基づき、 ヨゴシュタインが作成してヘルガイユ宮殿に飾ってあった歯車、それこそが、無限力にアクセスする事で、 バンドーマを無限に生み出すエネルギーを生み出す、デウス・ハグル・マギアだったのである。
 OPで大臣達の背景にあった紋様オブジェが、ガイアーク究極のマジックアイテムであった事が判明。
 特にこれまで強調された事は無かったので、唐突といえばえらい唐突。最後の最後だけに、 出来ればもうちょっと伏線は欲しかった所です。合わせて、ヨゴシマクリタインとヨゴシュタインの繋がりに触れられましたが、 これも強引に言い訳した感じ(^^; 両方とも、それほど気にする箇所では無いにしても。
 まあそもそも「デウス・ハグル・マギア」が、「デウス・エクス・マキナ」のもじりでしょうから、 メタ的にはこれでいいのかもしれませんが(笑)
 デウス・ハグル・マギア、という名前は非常に格好いい。
 炎神キャストの時間切れまであと20秒。なんとかバンドーマ軍団を掃討したゴーオンジャーだったが、合体強制解除で、 投げ出されてしまう。
 「これで終わりではないナリナ」
 その前に現れる、ヨゴシマクリタイン、キタネイダス、ケガレシア。
 ここで3vs3の一騎打ち展開となり、最近すっかり三下要員となっていたキタネイダスとケガレシアに、戦闘見せ場。ケガレシア様、 吊りを体験。やっぱり、直接戦うと強いガイアーク大臣……とりあえず普通に戦っておけば良かったのに、酒だ!  みんな酒が悪いんだ!
 レッドもサーベルストレートを総理に弾かれ、叩き伏せられる3人。
 「いいざまでおじゃる。そろそろ終わりでおじゃるなあ」
 「遂にガイアークの、勝利の時が来たゾヨ」
 「しょせん3人で抵抗など無理ナリナ」
 圧倒的な総裏大臣の力に、3人となったゴーオンジャーはこのまま屈してしまうのか――いや。
 「俺たちは……俺たちは3人だけじゃねえ! 大翔も、美羽も、軍平も範人も、みんなここにいる! 俺たちは、 みんな一緒に戦ってるんだ!」
 例え世界から居なくなったのだとしても、共に戦ってきた仲間達との繋がりが消える事はない。3人は再び立ち上がると、 消えていった仲間達の武器を装備する。
 「範人、あなたの思いをぶつけて!」
 「軍平、君の根性を見せてやるっス!」
 「大翔、美羽、おまえたちのオンリーワン、借りるぜ!」
 「「「ゴーオン必殺スピリッツ!!」」」
 仲間達の魂を借りたゴーオンジャーの合体攻撃に対し、ヨゴシマクリタインは両脇の大臣ズを盾にして防御。 更に「傀儡傀儡政権」によって洗脳した二人を砲弾にして放つ(笑) ゴーオンジャーはバーニング大臣ズミサイルを受けて吹き飛び、 追い打ちの「砕けろ。必殺・定額給付弾!」により撤退。圧倒的な力の差を見せつけたヨゴシマクリタインは、 無限バンドーマ軍団を再出撃させるべく、ヘルガイユ宮殿へと帰還する。
 「ふん、おまえ達を使い捨てのウガッツ以上に思った事はないナリナ」
 砲弾攻撃への抗議を、バッサリ切り捨てるヨゴシマクリタイン。
 「我一人居れば、この世界をゴミの山に出来るナリナ!」
 「あ、あれが、我らの総裏大臣ゾヨ……情けの深いヨゴシュタインとは、正反対ゾヨ」
 「我らを捨て駒としか思わぬ、冷酷な方でおじゃるとは」
 「むぅぅ……」
 ここに来てようやく、ちょっとムッとする二人、どこまで暢気なのか(笑)
 「回れ回れデウス・ハグル・マギアよ。無限バンドーマ軍団、再出撃ナリナ!」
 ぎんじろうでは、ゴーオンジャーが反撃の一手を閃いていた。ヨゴシマクリタインが無限バンドーマ軍団を出撃させるという事は、 裏を返せば、大量のバンドーマが短時間の内にまとめて出現するという事。それを逆手にとって、 ガイアーク探知機を最大出力・最大エリアで作動させる事を連が思いつく。通常なら負荷が大きすぎて短時間で使用不能になってしまうが、 大量のバンドーマ軍団が出撃してくる事がわかっている今ならば、その短時間の内に、 バンドーマの出撃地点――すなわち敵の本拠地を発見する事が出来る筈。
 そしてデウス・ハグル・マギアの力により無限バンドーマが出撃を開始し……最大出力のガイアーク探知機は、 その中心を捉える事に成功する!
 「これ、片道切符の出撃にならないよね」
 49話にして遂に判明したガイアーク本拠地・ヘルガイユ宮殿へ乗り込むべく、海の向こうを見つめる3人。
 「怖いんなら、残ったっていいんだぜ」
 「行くわ。ヒューマンワールドを守るために、3人で頑張るのよ」
 「俺たちの命は、あのサーキットで炎神に助けられなきゃ、無くなってた命っス」
 ここで浮上する、悪魔の契約(笑)
 「みんな、正義の味方になってほしいんだけど」
 回想シーンのボンパーさんが超軽い(笑)
 「そう、あの時から、連と、走輔と、生きるも死ぬも、一緒なんだから」
 「俺たち、ずっと、最高の仲間だぜ!」
 すっかり鬼畜ボンパーさんに洗脳され尽くした3人は、揃って変身。炎神王を起動し、乾坤一擲の大勝負、 一発逆転を狙ってヘルガイユ宮殿を目指す…………泳いで。
 ここでまさか、あのダメだった22話のネタが生きるとは(笑)
 飛び交うバンドーマ軍団をやり過ごし、本拠地強襲作戦で上陸に成功したゴーオンジャーは宮殿内部でウガッツ達を蹴散らしていくが、 その前に再び、ヨゴシマクリタイン、キタネイダス、ケガレシアが立ちはだかる。
 色々面倒くさくなってきたのか、ヨゴシマクリタインは早速大臣ズシールドを発動。
 「盾としてゴーオンジャーと共に散るなら、おまえらも本望ナリナ!」
 満タンガンの斉射を大臣の盾で防ぐと、そのまま大臣ズごとハンマーからの極太ビームで撃ち貫き、吹き飛ぶゴーオンジャーと大臣ズ。 いよいよ、正義、完全に解散の時、とメットが外れて倒れるゴーオンジャーの前で、 ヨゴシマクリタインはエネルギー源であるゴミ箱に手を伸ばす。
 無限ゴミ箱から取り出されるのは、ヨゴシマクリタインが滅ぼした三つのワールドのゴミ――そこに込められた次元パワー。 すなわち、ブレーンワールドそのものの力であった。
 「あと一口で、撃てるナリナ」
 その時、度重なる盾扱いで満身創痍となったケガレシアの鞭が一閃してヨゴシマクリタインの手からゴミ箱を奪い取ると、 それを受け取ったキタネイダスが、ゴミ箱を破壊する!
 「馬鹿な!」
 「これで、正義解散のパワー源は断ったゾヨ」
 権力争いとは縁遠く、みんな仲良く世界を汚し、後から出てきたよく知らない偉い人にも素直に従ってきた大臣ズ、最後の最後で、 まさかの反乱。
 「おまえ達どういうつもりナリナ?!」
 「ガイアークに、独裁者はいらないゾヨ!」
 「妾達が目指したのは、蛮鬼族全員が気持ちよく暮らす理想のゴミ世界。仲間を踏みにじるお前に、そんな世界は」
 「作れないでおじゃる!」「作れないゾヨ!」
 嗚呼
 この人達はやはり
 差別と戦っていたのだなぁ。
 「死に損ないが世迷い言を!」
 ヨゴシマクリタインはハンマー攻撃で大臣ズを倒すと、「我が本当の力を見せてやるナリナ」と奥の部屋へと去って行く。 思わず宿敵であった大臣ズへ駆け寄った3人は、瀕死の2人から宮殿の奥にあるデウス・ハグル・マギアが、 無限バンドーマ軍団のエネルギー源である事を教えられる。
 「ボンボン! それだ! その装置を壊せば、範人やみんなが、戻ってくるかもしれない」
 そこへ入るボンパーからの通信。
 「あいつら……死んじまったんじゃねえのか?!」
 大翔と美羽の決死の行為により、正義解散の分析を進めていたボンパーは、4人と炎神達が完全に消滅したわけではなく、 世界を構成する究極の“揺らぎ”の状態になって、波動レベルでヒューマンワールド内に存在している事を突き止めていた。 そしてその状態を維持しているのがデウス・ハグル・マギアから供給される無限のエネルギー。故に、 それを破壊してエネルギーの供給を断てば、4人や炎神達は、揺らぎから実体化して復活する筈。
 無限エネルギーとか次元パワーとか究極の揺らぎとか色々出てきましたが、書いている方も勢いでないかと(笑)  本当はもうちょっと伏線があれば万全な所でしたが、まあ、よくわからないけど凄い感は伝わってきます。
 また、「正義解散」が大がかりかつ強力だけど、揺らぎに変えた状態をわざわざ維持しているとか、 割と遠回りな必殺技である事が判明しましたが(ヨゴシマクリタインの戦闘力なら正面から倒した方が早い)、 これはたまたまゴーオンジャー相手に使ってみただけで、もっと究極の目的の為の、 無限エネルギーや次元パワーに関する実験過程の一産物なのかと思われます。
 「仲間と、再会できるの、良かったでおじゃるね……」
 「ありがとう。でも、あなた達……」
 「我らも、仲間の……ヨゴシュタインの、待つ世界へ……」
 「ともに、手をたずさえ、旅立つで……おじゃ……る……」
 キタネイダスとケガレシアは互いに手を伸ばし合うが、重なり合う寸前、二人は同時に力尽きる。
 地面に落ちた二人の手を取り、重ねる早輝。
 ここに名悪役だったガイアーク3大臣、全員殉職。
 いや、素晴らしい幹部キャラ達でした。
 そして最後の最後まで、異常に愛されたなぁ(笑)
 ヨゴシュタインのリタイア後、どんどん迷走していたキタネイダスとケガレシアでしたが、 最終的なヨゴシマクリタインへの反乱の理由が、権力欲でもなければ正義のヒーローにほだされたのでもなく、 自分達の理想の為には目的の障害であるゴーオンジャーよりもむしろ、身内の危険思想の方が敵である、 という認識でそれを打ち倒そうとした、というのが凄く素敵。
 「悪の美学」ではなく、「棄民である蛮鬼族の夢」の為に散る、と、非常にらしくまとまりました。
 先のヨゴシマクリタインへの叛意の芽生えも、「自分達が使い捨てのウガッツ同様の扱い」を受けた事に憤っていたのではなく、 「捨て駒という考え方」そのものへの怒りだった……と、怪人に優しく福利厚生の厚い悪の組織ガイアーク、を崩さず通しました。
 情けないまま踏み潰されて終わるのも、善意に流れてゴーオンジャーに手を貸す展開も、どちらも嫌だなぁと思っていたので、 最後までガイアーク大臣として格好良く散ってくれて(大きな意味では内ゲバは内ゲバなのだけど、個人の美学ではなく、 あくまで組織が先に立った上でというのがポイント)、ラスト2話は、ここだけでも大満足です(笑)
 「ガイアークに、独裁者はいらないゾヨ!」
 は超名台詞。
 宿敵達の思わぬ最期を看取ったゴーオンジャーは、ヨゴシマクリタインとの最終決戦に向けて奥へと進む。
 ここで、キタネイダスとケガレシアの手を重ね合わせた早輝が、すぱっと立ち上がって走輔と連にメットを投げるのは良かった。
 「走輔、連!」
 「ずばり、エネルギー源を破壊するっス!」
 「よーし、マッハで行くぜ!」
 衣装の都合で、メットはそのまま被れない為、角度が変なのはご愛敬(笑)
 「デウス・ハグル・マギアのエネルギーが満ちるこの部屋で、我は3倍の強さになるナリナ」
 ヘルガイユ宮殿最奥で待ち受けるのは、青白い光を纏う、ヨゴシマクリタイン。
 「それがどうしたっていうの!」
 「その歯車は何がなんでも破壊するっス!」
 「俺たちが居るかぎり、てめえの好きにはさせないぜ!」
 今、最後の戦いが始まる――!
 一足早く最終回のゴーオンゼミナールは、ぎんじろうの名前の秘密。早輝の実家の犬の名前でした、とまあ、 比較的どうでもいい感じでこのコーナーらしく締めました(笑)

◆GP−FINAL「正義ノロード」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:武上純希)
 デウス・ハグル・マギアから無限力を引き出してゴーオンジャーを叩きのめすヨゴシマクリタインだったが、 3人はコンビネーション攻撃から総理を蛮鬼獣作成部屋へ閉じ込める(笑)
 まさかこの局面で、そのギミックが使われるとは。
 レッドがスピードル、バスオン、ベアールVの3つのソウルでカンカンエクスプレスを放ってデウス・ハグル・マギアを破壊…… とさすがに無理矢理なねじ込み感の強かったカンカンバーも一応使用。
 デウス・ハグル・マギアが破壊された事で無限力が逆流し、吠えるヨゴシマクリタイン、崩れてゆくヘルガイユ宮殿。
 「ガイアークの、最期っすね」
 「俺たち……勝ったのか?」
 「これで、範人達も帰ってくるんだよね」
 炎神王によって脱出した3人は完全に崩れ去った宮殿を見つめるが、突如、数千数万の漆黒の歯車が空中で重なり合い、 巨大なヨゴシマクリタインの影となる。
 「ふっふっふ、総裏大臣は永遠に不滅ナリナ」
 巨大ヨゴシマクリタインは炎神王を捨て置くと、日本上陸。破壊光線を放って世界を崩壊させていく。
 「全てはゴミより生まれ、ゴミに還るナリナ。ゴーオンジャーが追いつく頃には、既にヒューマンワールドは滅んでいるナリナ」
 だがその時、ぎんじろうの中で、机の上から消える4つの武器。
 「え……? そうか、これは!」
 「最後の仕上げと行くナリナ……なにっ?!」
 何故か人間大に戻ったヨゴシマクリタインに突き刺さる、4つの閃光。
 そこに立っていたのは、無の世界から舞い戻った、ゴーオンゴールド、シルバー、ブラック、グリーン!
 「地上がやたらうるさくて、ゆっくり死んでいられなかったんだ」
 「兄、やっぱり地上はキラキラ輝いてるね」
 「この世界を守る為なら、俺たちはいつでも戻ってくる!」
 「今度は、おまえが消える番だ!」
 なお、4人を見たヨゴシマクリタインが「死んだ筈では?!」と驚いてるので、ヨゴシマクリタイン自身も、 正義解散の特性を完全に把握していなかった模様。この後の台詞も合わせて考えると、 やはり十一次元制覇の為の次元エネルギー研究過程で生まれた副産物だったのではと思われます。
 4人はヨゴシマクリタインに連続で必殺攻撃を浴びせ、足止めに成功している間に3人が合流し、 3話ぶりに揃い踏みするゴーオンセブン。
 「我を倒すとは笑止……我は全てに君臨する。十一次元の全てを、我が物とするのだ。必殺・強行採決!!」
 いちいち技名の面白いヨゴシマクリタインの放つ無限力ビームの電光に打たれ、倒れる7人。一撃で7人の変身は解除され、 吹き飛ぶメット。足下まで転がってきた赤のメットを、ヨゴシマクリタインは哄笑と共に踏み潰す。
 「ふふふははははははははは、雑魚も遂に終わりナリナ!」
 ここで大翔の顔アップにかかって、OPが流れ出すのが、超格好いい。
 今作の主題歌はかなりお気に入りなのですが、ヒーロー物主題歌は、本編でイントロかかった時に「来た!」と思わせるのが命であるな、 と。改めて今OPのイントロの盛り上げは素晴らしい。
 金「わかってないようだな」
 銀「あなたに、私達を倒す事は出来ない!」
 赤「心と心で、結ばれた仲間たちを!」
 青「ゴーオンジャーと呼ぶっス!」
 黄「この世界に、仲間が居る限り!」
 緑「僕たちは、何度でも!」
 黒「何度でも、立ち上がる!」
 OPをバックに、それぞれ、倒れながらも変身アイテムを構えた顔アップに台詞を乗せて、立ち上がる7人。

「「「「「「「レッツ・ゴーーーオン!!」」」」」」」

 当然計算づくでしょうが、OPの「ゴーオン!」の後に、変身の叫び、とタイミングもバッチリ。
 そして変身した7人、メット無しで名乗り。
 メット外し(スーツ+役者顔出し)を多用していた今作ですが、最後はこうまとめてきました。 ジャー+ウイングス合体名乗りは無かったものの、揃い踏みは7人並び。
 スピードルソウルでスーパーハイウェイバスターを、バスオンとベアールVのソウルでウイングブースターを、 と7人の心と3体の炎神の魂による合体攻撃が、ヨゴシマクリタインに炸裂。
 これも当然計算づくでしょうが必殺武器は最後まで炎神ソウルと絡めて、巧く使い切りました。
 「おのれ……仲間などと下らぬものに、負けるナリナ! 偉大なる……第三次産業革命!!」
 巨大化するヨゴシマクリタインだったが……その時、復活した炎神達が駆けつける。スピードル達も巨大化し、 全員が乗り込んでヨゴシマクリタインに向けて疾駆する12体の熱き炎神達!
 「バタバタ、また組めて嬉しいぜ、兄貴!」 「俺もだ、トリプター」
 「また一緒ね、ジェットラス」 「ギィーン、バディ、最後まで美しく、戦おう!」
 「吾輩の教えの集大成を見せるであーる」
 「百万年の仇、今度こそ、討つでござーる」
 「ガンパード、待ちかね過ぎだぜ」 「ファイナルターゲットは、外さないぜ、相棒」
 「アミーゴ、明るい明日を掴むーチョ!」 「うん、ドキドキの明日をね」
 「早輝、最高の女の度胸、見せるんや!」 「うちに任せんね!」
 「連、今までの分、たっぷりお返しでぃ」 「ズバリ、やるしかないっス!」
 「相棒、マッハで行くぜ!」 「OK! みんな、いいな!」

 さすがに古代炎神の字幕は抜きも、最終最後のG12フォーメーション、今ここに発動。
 「ヒューマンワールドの人間と、マシンワールドの炎神の心が、絆で繋がれる時、炎神王G12が、降臨するんだぜぇ!  ドルドル!」
 伝説巨神G12は、合体するや否や、いきなり先制のG12グランプリでヨゴシマクリタインを轢き潰し、 大量の歯車となって砕け散るヨゴシマクリタイン。
 「やったか?!」
 今回やたらフラグを立てる走輔だったが、ご期待に応えてヨゴシマクリタインは再生復活。
 「ふふははははははは、今の我は無限のパワーを取り込んで、無敵。我は十一次元の覇者! 我を倒すは、 いかなる神でもなせぬ業ナリナ」
 特大の火球を喰らい、4回目の登場にして初のダメージを受けるG12。だが……
 「覇者とは、いつかは敗れるもの!」
 「無敵なんて存在しない!」
 「俺たちの正義の炎は!」
 「ずっと燃えているよ!」
 「みんな、あたし達の力を、見せてやろうよ!」
 「ああ。人間も炎神も、心を一つにするっス!」
 「俺たちの絆は、どんな力よりもはるかに強く、大きいぜ! 行くぞみんな!」
 一つになった19の魂は燃え上がり、怯まない。
 「無駄ナリナ。最終独裁宣言、ヨゴシマニフェストブレイク!!」
 ヨゴシマクリタインの放つ特大のビームに対し、炎神王G12、飛ぶ。
 「G12・ファイナルグランプリ!!」
 空中で炎の鳥と化した(スピードルのイメージ?)炎神王12は、ビームの連射を高速機動で回避すると、 科学忍法的なファイアーバードアタックで突撃、ヨゴシマクリタインの体を貫く。
 ここでヨゴシマクリタインに空いた大穴の中で、内部機構がひくひく動いているというのは、いい演出。
 「ばーかなぁ……我が負ける、だと? 決してあってはならぬナリナ……我は十一次元の覇者……ガイアークの総裏……大臣……アイムソーリーー!!」
 最後まで、作品として芸風を貫きました(笑)
 「「「「「「「チェッカーーーフラッグ!!」」」」」」」
 復活から火の鳥から撃破まで、ラストバトルは敵も味方もひたすら勢いオンリー(笑)
 結果としては、クリスマス回にロボットオールスターをやっておいた事により、 ロボと炎神に関してはG12発動前の台詞のやり取りだけで済み、尺を割きすぎず、かといって不足という事もなく、 と丁度いいバランスでまとまりました。
 人間大での必殺武器も合わせてほぼ使いきった中、唯一、タイヤの出番がありませんでしたが、しょせんタイヤは道具という事か。 ラストのG12グランプリの前にタイヤ使ったけど尺の都合でカットされた可能性がありそうですけど。
 そして戦いは終わり……別れの時が来る。
 次元の安定の為、むやみに別のワールドへ居てはいけない決まりがある為、炎神達はマシンワールドへと帰っていく事に。
 「元気でな、バディ。お嬢さんがよくここまで成長した」
 「あなたのお陰よ。忘れないよ、ジェットラス」
 道中いくつか振りはありましたが、美羽は結局、ジェットラスとのフラグが一番進んだなぁ(笑) まあ戦隊の場合、 メンバー間恋愛はメインライターなりが本気で主軸に据える気がない限りは、 一部ライターが趣味で散りばめる以上のものにはなりにくいわけですし、そういうものだと思ってこちらも見てますが。
 そして自分が役に立った言質を取るボンパーさん(笑)
 「どこまでいっても未練は尽きないが、そろそろ頼むぜ、相棒」
 スピードルはすっかり、たまに芝居がかる癖がついてしまいました(笑)
 7人は炎神ソウルを取り外し、消えるゴーフォン、炎神化するキャスト達。炎神達は空を飛び、 次元の穴からマシンワールドへと帰っていく……。
 「じゃあ、あーばよ!」
 「さようなら、炎神達! さようなら、俺たちの相棒!」
 ドライってわけでもないけど、思いの外さばさばと帰って行く炎神達(笑)
 この後に重点を置く構成の都合でしょうが。
 ・
 ・
 ・
 それから数ヶ月後――警視庁、特犯係。
 まさかの左京さん再登場……と思ったら、警察に復帰して特犯係に配属された軍兵が、左京さんの物真似をしていた、 と『相棒』パロディ再び。ここで軍兵に話しかける美空警部補役は、キタネイダス役・真殿光昭。隣の刑事部屋は恐らく、 本物の『相棒』の映像の合成、となんか物凄いシーン(笑)
 軍兵は何故か手錠をはめられた範人を連れて、ケーキ屋へ。そこでは早輝が、ベアールV声の店主(井上美紀) の元で夢に向かって働いていた。給料をお姉さんが持っていたという話を聞かされ(これは正直、いらないネタだった)、 驚いて持っていたケーキをぶつけたのは……ケガレシア、ならぬ、清水奈央。
 と、敵幹部から炎神声優まで、次々と特別出演。
 早輝と、ピザの配達に来て手錠をイタズラしている内に手錠がはまってしまたという範人を乗せ、 軍平の運転するぎんじろう号は須塔兄妹の元へ。
 車内に、7人の集合写真はともかく、軍平一人の写真が飾ってあるのですが、ぎんじろうは軍平が引き取ったという設定なのでしょうか。 それにしても、ポーズ取った自分の写真をダッシュボードの上に置いているのはどうかという感じですが(笑)
 上流階級のパーティでコネクション作りを行っている大翔は、浄土頭取(梁田清之)とるねっさーんすしていた。
 この2年後に、『天装戦隊ゴセイジャー』で山田ルイ53世が長官ポジジョンを演じる事になりますが、 東映内部で流行っていたのか髭男爵。
 「さすが、須塔グループのパーティは豪華なり」
 「どうぞ、楽しむなりよ」
 「ん、なーりなー」
 ここはもう完全に、2人が遊んでいます(笑)
 面白くなさそうな兄をたしなめる、おめかしドレス姿の美羽のイヤリングが床に落ち、 2人の感じる不吉な予感……パーティ会場の入り口で騒ぐ庶民が3人。
 「そういえば、今日は……」
 ピカピカ兄妹を加えた5人が向かったのは、ツインリング茂木。
 そこでは、バスオン声の運転手(江川央生)と話していた連が5人を出迎える。
 そう、今日は
 「見にきたぜ、走輔のレース再デビュー」
 連は見事にメカニックとなり、走輔は早々とレーサー復帰、したのだが……
 「夢はでっかくグレード1だけど、あはは、1年半のブランクの後で、今はこつこつと」
 「「「「カート?」」」
 2人が参加しているのはカートレースであった。
 走輔とやりあう先輩メカニックは、浪川大輔。
 皆が微妙な顔になる中、ようやく外れる範人の手錠。
 何はともあれ、久しぶりの再会を喜び、炎神達に思いを馳せる走輔達。
 「あいつらも、平和ボケしてんだろうな……」
 ところがその時、突然サーキット上空に次元の穴が開くと、そこからスピードルとボンパーが現れる。
 「おーい、あいぼーう!」
 「スピードル?! ……スピードル! 俺夢見てんじゃねえよなぁ?!」
 「ドルドル! また手を貸してほしいんだ!」
 「ボンボン、行方不明とされてた蛮鬼族の害統領が、グラスワールドを滅ぼして、ガンマンワールドに攻め込んだんだよ」
 「みんな、もう一度、正義の味方になってくれないか? おまえ達の相棒も待ってる」
 ガイアークとの戦いを終え、それぞれの夢に向かって再び日常を歩み出した7人だったが……
 「もちろん行くぜ、スピードル」
 「走輔、いいっすね?」
 「へっ、世界が危ねえんだろ。ほうっとけっかよ。そうだろう、みんな?」
 「OK!」「OK☆」「OK」「OK」「OK」「OK♪」
 世界の危機を前に、黙ってはいられない。

「マッハで出発だ!」
「「「「「「「ゴーオン!!」」」」」」」

 こうして7人はまた、立派な無職になるのであった。
 須塔兄妹はいいけど。
 というか最終的には、須藤兄妹がレーシングチームとケーキ屋のパトロンになるしかありません(笑)  軍平と範人は……そこで雇ってもらうか。
 実は誰も触れないけど、ちゃっかり私服刑事になった軍平が一番、社会復帰に成功しているのですが、たぶん、 ボエール教官あたりを通して政治的圧力がかかった。
 Bパートを完全に割いたラストは、明るく楽しくお祭りで締め。
 声優陣特別出演はメインで絡んだ人しかわかりませんでしたが、もしかしたら他にも出ていたかもしれません。
 そしてヒーローは前向きにフォーエバー、というのは、後の『ゴーカイジャー』に通じるといえるか。
 それにしても、それにしても、結局、マシンワールドにおける炎神とガイアーク(蛮鬼族)の細かい背景は劇中で語られませんでしたが、 どうしても炎神が諸悪の根源としか思えません(笑)
 劇中台詞によると、11次元中、4つ(マジック、プリズム、サウンド、グラス)がガイアークによって滅ぼされている事になるのですが、 そもそもの問題はマシンワールドの権力闘争ではないのか。
 元々の元凶と言って良さそうなヨゴシマクリタインと害統領に関しては筋金入りの「悪」なのかもしれませんが、劇中描写を見る限り、 その後のガイアークもとい蛮鬼族は根っからの悪というわけではなく、真摯に歴史を見つめて互いに許し合えば、 マシンワールドでもう少し平和的に炎神達と共存可能だった気がしてなりません。
 たぶん、ガイアーク特区とかあって、そこで機能していた政府が差別に耐えかねて決起したのでしょうけど。
 勿論、手法にもろもろ問題はありますし、ヒューマンワールドからすると生存競争としての敵なのは確かなのですが、 蛮鬼族そのものは絶対悪というわけではなく、追い詰められた末の暴走であり、マシンワールドの根深い闇を感じます。
 でこれ恐らく、ガイアークによって滅ぼされた次元に対して、“お詫びとして復興活動に協力”という名目で、 マシンワールドから人や物が大手を振って乗り込んでいって、気がつくと乗っ取るという筋書きなんだろうなぁ(待て)
 今回の件でヒューマンワールド――少なくとも日本は政治経済に深刻なダメージを受けていますし、誠意を見せると言いながら、 色々と潜り込ませるには、実に都合がいい筈。
 「グラスワールドが滅ぼされました」
 「かまわんさ別に。いずれにせよ、ブレーンワールドは全て、滅びなければならない。生き残るのは、究極のワールドただ一つ。 そして私は、神の声を聞くのだ」
 という人が炎神上層部に居ても、全く驚かない(笑)
 ……とまあ与太はさておき、何度か触れましたが、年間構成の綺麗なシリーズでした。
 キャラエピソードのバランスとタイミングの良さ、お約束イベントをきっちりこなして転がす流れ、 ある程度声優頼りの相棒キャラ・炎神との絆を描きながら、組み替えロボットも存分に活用。戦隊シリーズの歴史を巧く踏まえながら、 特に00年代戦隊の総決算といえる作品かな、と。
 サブライターとしては『デカ』『ボウケン』に参加しているものの、メインライターとしては『ガオ』以来という事で、 武上純希にもその辺りの意識はあったのでは、と思われます。
 正直、初めて評価できると思ったメインの武上さん他、00年代戦隊に多数参加の會川昇、ベテラン宮下隼一、 アイドル回の大御所・荒川稔久、戦隊初参加でテクニカルな脚本を見せてくれた古怒田健志と、ライター陣に恵まれた作品となりました。
 演出陣も、渡辺勝也、諸田敏、竹本昇、中澤祥次郎、と00年代を支えてきたメンバーが油の乗った好演出。
 また、モチーフをわかりやすく押し出しコミカル要素の強い怪人、恐怖とユーモアの混じった敵幹部、ストレートなヒーロー達、 親しみやすい炎神のキャラクター性、繰り返し描かれる相棒の絆、と、00年代に改めて、 戦隊のニュースタンダードを志向していた節がありますが、それに一定の成功を収めたといっていいと思います。その上で、 随所に「ヒーロー論」が盛り込まれていたのも、面白い所。
 難を言えば、終盤空気になっていたスピードルにもう一押しあっても良かったとは思いますが、前半の見せ場で我慢しようという事で。
 メインライター武上純希、CGの相棒キャラ、玩具玩具した印象、と正直全く期待しないで見始めたのですが、アベレージ高く、 望外に面白く、楽しい作品でした。良かった。

→〔総括&構成分析へ続く〕

(2014年12月31日)
(2017年4月9日 改訂)
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