■『炎神戦隊ゴーオンジャー』感想まとめ6■


“9つの光 正義の裁き
エンジンオーG9
さぁチューンナップ 派手に決まった!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『炎神戦隊ゴーオンジャー』 感想の、まとめ6(GP−26〜30)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆GP−26「恋愛カンケイ」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 前回、海なのにむさ苦しい男達の暑苦しいエピソードだったので、今回はキラキラ天使達のスイートでラブリーなエピソードをお届けします。
 ヨゴシュタイン、引き続き喪中。閃きさん編は確かにヨゴシュタイン目立ちまくりで他の二人の活躍が少なかったですが、 それにしても、梁田さんが都合により出られなかったのではないかというぐらい、2話続けて完全に無言(^^;
 そんなわけで、酷暑の野外活動に勤しむキタネイダスとケガレシアは、遂にアレルンブラ家の紋章を発見。 ケガレシアが汚れたオイルを注ぐと、ヒューマンワールドで眠っていた王子が復活する。
 「おお! なんとケガレシア姫、いつ見ても貴女は、なんて清らかで美しいんでしょう!」
 美しい、それは汚れを愛する蛮鬼族にとっては、最大の侮辱。
 「こやつは蛮鬼族のくせに、美しいもの、清潔なものを愛する変態でおじゃる」
 ケガレシアがニゴールを毛嫌いする理由、それは、自分にまとわりつく男が、変態だったから というやむにやまれぬ事情によるものだった。
 以前の範人×ケガレシア回(脚本は同じく會川昇)を拾う形で、ケガレシア様の過去のトラウマが発覚(笑)
 ニゴール王子役の野島健児というと、後に『海賊戦隊ゴーオンジャー』で、ダメス・ギル王子(なんか違う)やっていたっけ、 と思ったら、そちらは野島裕史でした。そして兄弟だった。というか(話ずれますが)、野島裕史って、ゲイナーくんか!  全然繋がっていなかった。
 ニゴール復活を阻止しようとしていたウイングスが一歩遅れて姿を見せ、戦闘開始。
 「キラキラと美しい。では、こちらも美しくお相手しましょう。ビューティウガッツで」
 謎のビューティパワーで強化されているらしく、腰巻きつけたビューティウガッツに思わぬ苦戦をするウイングス。 そこへジャーもやってくるが、王子は間抜けな見た目と頓狂な発言とは裏腹に、スピーディなレイピア捌きでジャーを圧倒。 追い詰められた赤の姿を見た銀は、愛玩動物を保護しなければ、と底力を発揮してビューティウガッツを蹴散らして、赤を救出。
 7人揃ったゴーオンセブンが害水騎士・ウズマキホーテを倒したと聞いたニゴールは、「ならば姫、ともに美しく戦いましょう」 「えーーーーー、あれをやるでおじゃるかぁ?!」と嫌がるケガレシアを説き伏せ、
 「害水合身・ミックス・ケガレゴール」
 で、いきなりの合体巨大化。
 対する炎神王G9は初撃でG9グランプリを炸裂させて大ダメージを与えるが倒し切るには至らず、 ケガレゴールが天候操作で呼び寄せた雷撃とサーベル攻撃のコンボで、大ダメージを受けたジェットラスが分離してしまう。
 …………なんかもう、炎神王G9が駄目そうだ!
 瓦礫に埋もれたジェットラスを助けるべく、自ら合体解除してジェットラスを助けようとするベアールV。 その姿に美しい愛を見てしまった王子は「美しいものは、汚す事はできない」と合体を解除して退却し、 九死に一生を得たゴーオンセブンの中、早輝はベアールの気持ちに気付く。
 …………うーむ……何が生まれるんだろう(おぃ)
 再戦に向けて、それぞれがキャストのメンテナンスなどを行う中、美羽の元を訪れる早輝。
 ここで最もキャラの薄いジェットラスをフィーチャーしてくる辺り、相変わらず今作は構成が巧み。
 にしても、緑→ケガレシアの後に、車同士のラブネタが来るとは思いませんでしたが(笑)
 「うち……あんたの牙から逃げられなくなってしもた。トラやん、好きやぁ!」
 早輝が通信機を差し出し、ベアールV、ジェットラスに告白。
 銀「え?!」
 黄「よしっ」
 ジ「え、いや……」
 決め台詞を面と向かって他人の口から聞かされるという羞恥プレイに、動揺するジェットラス。
 ベ「今度一緒に、タイガースの試合見にいかへん?! お願い!」
 ヒューマンワールドに来て半年、随分と現地の文化に馴染んでいた模様(笑)
 言われてみると、早輝、タイガース色。
 黄「お願いします!」
 ジ「君たち……」
 銀「お断りよ!」
 しかし何故か、美羽が断る(笑)
 「どうして美羽が断るの!」
 「ジェットラスは、私の大切なバディだから」
 食い下がる早輝に、恋心なんて、戦いの邪魔でしかない、と突っぱねる美羽。
 「好きな人を思えば、もっとパワー出る出る。美羽にも経験ない?」
 早輝の言葉に、ちょっとばかり、さっきの戦闘を思い出しちゃう美羽。
 「あーーー、なんでこんなの思い出すのよ?!」
 「何、やってるの……?」
 あれは動物、愛玩動物、ペットへの愛情。理想は兄。せめてクール系クール系。
 「おこちゃまには付き合ってられないわ!」
 「大人ぶってると、すぐおばさんになるわよ」
 「なんですって!」
 一応この二人は、美羽が若干年長ポジションになる模様。まあ散々、食事とか服とか、施されてますしね……。
 恋愛観の違いで揉める二人に、突如横から差し出される花束。
 「お嬢さん! どうぞ私の愛を受け止めて下さいませ」
 たぶん耐性が低い為、ストレートな告白に満更でも無さそうになる二人だったが……
 「美しい……ベアールV」
 何とその声の主は、ニゴール王子。
 「お目が高いのね。でも残念。ベアールにはとっくに」
 「めっちゃ最高や〜。うち嬉しいわ〜」
 「はぁ?!」
 王子の求愛を受け入れたベアールソウル、ニゴールの元へ走る(笑) 喜ぶ王子は二人を捨て置き、 雨雲を呼び出すと嫌がらせでずぶ濡れにして帰還。
 一方その頃、王子の天候操作に対抗すべく、馬鹿どもは、大量のてるてる坊主を作っていた。
 「……がんばれ」
 それを見た兄、視聴者の気持ちを代弁する。
 ベアールの行動は、本命のジェットラスをやきもきさせようという恋の駆け引きに違いないと断ずる美羽。 二人は乙女心についてまたも揉め、ケガレシアに見つかったら危ないとベアール救出への協力を早輝は頼むが、美羽はそれを拒否。
 しかし、
 「本当に自分を必要としてくれる者の為になら、戦士となれる。それが君だ。――行こう、バディ」
 ジェットラスの説得を受けた美羽は考えを改め、早輝と再合流。二人は美羽が探知可能なニゴールの気配の元へと向かう……と、 ジェットラスのエピソードに併せて、ここまで特に触れられていなかった、美羽がシルバーとして戦う理由にも言及。
 この兄妹は基本ひたすら、ノブレス・オブリージュが土台にある模様。
 特別蔑んでいるわけではなくて、そもそも階段の上と下に居るから仕方がないんですよ!
 結婚式の準備に盛り上がるニゴールはベアールのソウルを破壊しようとするケガレシアを止め、 アレルンブラ家の乱が中途半端に消滅したのは、ケガレシアにプロポーズを断られた傷心のニゴールがマシンワールドを飛び出した為だった、という事実が発覚。
 これがいわゆる、歴史の影に女あり。
 早輝と美羽はベアールVのキャストにジェットラスのソウルを入れ、大騒ぎさせる事でニゴールを誘き出すと、 ニゴールの手元の炎神ソウルが偽物だと惑わせる事に成功し、ベアールのソウルを無事に回収し、揃って変身。
 「おお〜、スマイルキラキラ、美しくってクラクラ!」
 新挿入歌がかかり、てるてる坊主装備でやってくる馬鹿メンズが(以下略)で、金兄も参戦。 野郎達がビューティウガッツの相手をしている中、華麗なツープラトン攻撃を王子に浴びせるラブリーエンジェルズ。
 左右で二人が同じアクションをして、連続攻撃を決める、というのが非常に格好いい。
 「美しい乙女の力」「甘く見ないで!」
 ダブルキックを受け、吹き飛び膝をつく王子。
 「馬鹿な……! かつて私は、マシンワールドを支配する寸前でした。炎神たちが、私にかなう筈は無い……」
 ただの変態ではなく、割と実力者だった模様。炎神王G9を弱体化させてしまったフォローもありそうですが。
 驚愕する王子の前に浮き上がる、ジェットラスとベアールVの炎神ソウル。
 ジ「その時無かったものが、今の私達にはある」
 ベ「頼もしい相棒」
 ジ「最高のバディ」
 黄「人間と炎神の友情が」
 銀「私達にしかない力を生み出したの!」
 あ、ちゃんとまとめた(笑)
 コメディ寄りの回だったので、正直、これはビックリ。この辺りの構造はお見事。
 「おぉ……あ、愛の力か……美しい」
 黄と銀の二人合体射撃技、フラワーキャノンボールの直撃で王子はお花畑に沈み、 最後はゴーオンセブンのダブル必殺技一斉射撃を受けて彼方へと吹き飛んでいく。荒野まで吹っ飛んだ弱ったニゴールの前に、 ビックリウムエナジーを手に姿を見せるケガレシア。
 「王子、ニゴール・ゾ・アレルンブラ。おまえは眠っているべきだったでおじゃる。ガイアークに、美しさなど不要」
 手を伸ばす王子の目の前でケガレシアはエナジーを踏み砕いて去って行き――
 「姫! そ、それでもあなたは、美しい……」
 王子、大爆死。
 炎神ソウルの破壊を拒否した時点でガイアークにとって裏切り者という理由が出来た事もあり、 王子を始末する事で久しぶりにケガレシア様の非情な所を出す事が出来ました。油断していると、 スタッフがすぐにケガレシア様を可愛くしすぎますし。惜しむらくは、ここは予告では隠しておいて欲しかったか。
 そして――改めてジェットラスの気持ちを聞く事になるベアールVだが「まずは友達から……」とあくまでお堅いジェットラスに対し、 「あの告白は無かった事に」と、いきなり黒歴史に葬り去るベアールV。 ニゴールを誘き出す為の物真似作戦が気持ち悪かった事を理由にフられる……と酷い目に遭うジェットラス(笑)  そしてベアールVの乙女のハートは人間のイケメン達も守備範囲に含め、慌てて逃げ出す男達。 真っ先にぎんじろうの中に逃げ込んだ大翔が、熊のぬいぐるみでバリアーしているのが秀逸(笑)
 終わってみると、ジェットラスのキャラクターそのものは相変わらず薄いのですが、美羽の背景も含めて、 このタイミングでスポットを当てたのは非常に良かったと思います。スピードルとか空気だったけど、 久々に炎神が話の中心に来たのも良し。
 この手のエピソードは「女は怖い」に流れがちですが、どちらかというと可愛げでまとめているのは、今作の特徴か。一番怖いのは、 ケガレシア様でも早輝でも美羽でもなく、恋の駆け引きの為に相棒を危険にさらす(変身不能にする)ベアールV。
 にしても、思わせぶりに色々やった割には、人間の方の関係は一つも動いていない、というのが凄い(笑)
 あとアレルンブラ家は新展開への布石かと思いきや、夏休みネタで消費されてしまい、恐ろしい。

◆GP−27「孫娘ハント!?」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武上純希)
 ヨゴシュタイン様、自分探しの旅に。
 引っ張るな……。
 その頃、ゴーオンジャーは別次元から降ってきた謎の物体を探していた。その途中、山で足を滑らせた範人は、 山奥でスクラップの山の中に暮らすお仙という老女に拾われ、治療を受ける。お礼としてお仙の手伝いをする事になった範人は、 亡くなった孫娘の話を聞き、恩返しの為に女装して一日孫娘になる事に。
 「孫娘だと思ってこきつかってください」
 ……て、なんかおかしい。
 その頃、残りの4人は山中でダウジングバンキ(CV:エド・はるみ)と遭遇、戦闘になるが割と苦戦。
 というかもう、ジャーが蛮鬼獣に全くかなわないのが、当たり前になりつつあるような(^^;
 キタネイダスの指示で、ジャンクワールドから送られてきた超兵器を探すダウジングバンキはジャーを適当に蹴散らすと逃走。 転落時に範人が落としたブレスを発見した4人はウイング族に協力を頼み、空からの捜索で、ピカピカ兄妹が女装範人を発見する。 4人も合流し、6人に事情を説明する範人。
 だがそこへ蛮鬼獣とウガッツ、そしてキタネイダスが現れ、スクラップの中にあった冷蔵庫と、 なぜかお仙をリヤカーに乗せてさらっていく。そう、その一見冷蔵庫こそが、広範囲のゴミを瞬間的に増殖させる、 恐るべき超兵器なのであった。
 緑と金銀はキタネイダスを追い、ダウジングバンキと再戦に挑む4人…………て、勝ち目ないぞ(笑)
 ダウジングロッドで満タンガンの銃弾をねじ曲げるなど、見た目の割に凶悪なダウジングバンキ、 ダウジングロッドをトンファーみたいに操る格闘は、新しい(笑)
 芸人声優シリーズは、持ちギャグが一種の時事ネタと化して今見るとよくわからなかったりするのですが、 エド・はるみは「ぐー!」が持ちネタなんでしたっけか……ほぼあらゆる締めを「○○イングー!」(ファイティング、シューティング、 など)とする台詞回しそのものは割と面白く、ネタ抜きでも面白みにしてはいるのですが。この辺り『ゴーオン』は、 繰り返してやりつつ、声だけに頼らないで台詞そのものもネタとしてこだわっているのはいい所。
 キタネイダスに追いつく金銀緑だったが、そこでお仙が、キタネイダスの要請に応えて装置を送った張本人、 ジャンクワールドの魔女博士・オーセンだった事が判明する。このスクラップ装置でジャンクワールドを荒廃させた張本人…… という超大物の登場にそれどころではなくなった為、連携攻撃からハイウェイバスターでざっくり始末されるダウジング。
 「お仙さんやめてくれ!」
 スクラップ装置を起動しようとするオーセンだったが、お仙を信じる緑は変身を解いてその元へ駆け寄る。
 その背景で、ピカピカ兄妹を圧倒するキタネイダス。今のところ三大臣はまだ、単体の戦闘能力でウイングスより上という設定の模様。 この人達、酔っ払っているから前線出ないだけで、実はかなり強力幹部なのだと思われます(^^;
 酒だ、酒が悪いんだ。
 ウガッツに取り押さえられながらもお仙に必死に呼びかける範人、その前でオーセンは装置を発動しするが―― 発動した装置はスクラップを増殖させるどころか、ゴミを花へと変えてしまう。
 「こんな子が居る世界の人間が、侵略なんか、するかいのう……」
 実はキタネイダスは、ヒューマンがジャンクワールドを侵略するつもりだ、と嘘をついてオーセンの協力を求めたのだが、 オーセンはオーセンで、自らの目でヒューマンを見定めようとしていたのだった。
 ……えー、ヒューマンはともかく、バックの炎神はあまり信用しない方がいいと思いますが!
 あとオーセンは、強大な力を持った上で自分の価値観が全てで善悪の観念には頓着しない、というタイプで、 決していい人というわけではないと思われます。
 花だらけの美しい環境で動きの鈍ったキタネイダスは撤退し、同じく動きの鈍った巨大ダウジングは、炎神王G9で撃破。 無茶苦茶だった孫娘はもちろん作り話で、オーセンは装置と共にジャンクワールドへと帰還していくのだった。
 「さらば、異次元の我が、孫娘よ」
 「ばいばい、お仙さん」
 範人の女装(メンバーにやたら大受け)を目玉にした、閑話休題いい話。 変則のメンバー分けの中で久々にガンパード炎神武装を見せた所は面白かったですが、そつはないけど目立って良くも悪くもなし。

◆GP−28「相棒グンペイ」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武上純希)
 衝撃の真実。
 「ガイアークは君も知っての通り、警察の管轄外」
 だったのか!!
 割と公然と活動するヒーローと、大規模な破壊活動を行う悪の組織は、なぜ公権力から存在を無視されているのか、 に理由を付けてみた結果、かえって意味不明になりました(笑)
 というかもう、マシンワールド上層部と、ヒューマンワールド上層部における、 どす黒い関係以外思い浮かばないのですが。
 マシンワールド「いやー、申し訳ない。我が次元の反乱者共がそちらの次元に行ってしまったようだ。 ついては我が次元の特殊部隊を派遣して対処にあたるので、ここは穏便に済ましてはいただけないだろうか。勿論、 例の件の技術供与に関しては最大限努力させていただくし、あの件についても(以下略)」
 魚心あれば水心!
 『相棒』パロディ回な為か、社会の暗黒面が浮き彫りに!
 というわけで続発する謎の失踪事件を捜査する刑事・柏木左京……という、「相棒」をキーワードにしている今作でドラマ『相棒』 (主演:水谷豊)をパロディするという運命的なエピソード。
 なお『相棒』は何となく知っているけど、真面目に見た事はない、というレベルです。
 失踪事件はガイアークの仕業に違いない、と軍平主導でパトロールするゴーオンジャーは、 悲鳴を聞きつけてマンホールバンキと遭遇するも逃亡を許した上に、誘拐犯と間違われて、 逮捕されてしまう。
 すっごく普通に素顔で収監されているのですが、変身解いた上に供述調書まで取られたとおぼしく、かつてここまで豪快に、 官憲に身元掴まれたヒーローが居ただろうか。しかも全員、住所:ぎんじろう 職業:無職だ。
 「犯人はガイアーク」を訴えるも、これは哀れ精神鑑定行きか……と思われた5人だが、左京によって誤解が解け、釈放される。
 「柏木……刑事。左京さん!」
 「軍平くん、お久しぶりですね」
 かつて警察時代、軍平の相棒であった左京はごく普通にガイアークについて問いかけ、そして一つの頼み事をする。
 「最後にもう一つ、よろしいですか。……軍平くん、もう一度私の相棒になってもらえませんか?」
 かくて軍平と左京はコンビ再結成、神出鬼没の蛮鬼獣を捕まえる為、被害者の共通点を洗い出そうとするのだった……。
 捜査中に左京に、「今の軍平の相棒は、このガンパードだ」とちょっと張り合ってみせるなど、炎神の存在もアピール。 そして2人と1体の捜査により、被害者は全員、ボールペンのペン回し競技会(凄く流行った時期があったけど、 この頃だったのか?)の上位入賞者達であった事が判明する。
 実はガイアークでは、キタネイダスがビルを破壊するほどの大騒音発生装置を完成させたが、 それを起動する為には棒状の超小型装置を高速回転させる必要があり、その回転要員として、 ペン回しの技術を持った人間達をさらっていたのである。敵側の作戦行動の因果関係が逆、というちょっとひねって面白い展開。
 ガイアークの技術力とヒューマンの器用さが一つになる時、世界は騒音にミタサレル!
 特別講師の何でもできる金兄の指導により、ペン回しを習得した面々はそれぞれ謎のコスプレ姿で街に散らばるが、狙われたのは、 一番ペン回しの巧くなった左京! 左京をかばった際にガンパードのブレスがマンホールに飲み込まれ、 それを追った軍平はマンホールの中に吸い込まれて消えてしまう……。
 「軍平くんは、昔から全然変わってないのですねぇ……」
 軍平なら相棒の為に体を張るのは当たり前、という仲間達の言葉に、軍平とコンビを組んでいた警察時代を思い返す左京。
 パトロール中に街でゴミをひっくり返すウガッツを目にした2人だが、
 「奴等を相手にすると、軍平くんが懲戒になります!」
 と手を出す事が出来ず、襲ってきたウガッツから軍平は身を挺して左京をかばう。
 ……て、悪事の現場を見ても手を出す事すら許されない、てどこまでタブー扱いなんだガイアーク。 どうやら多次元世界における高度に政治的なオトナの事情により、
 「ガイアークはヒューマンワールドに出現などしていない、よってガイアーク犯罪やガイアーク被害など存在しない」
 という事になっている模様。
 そんな2人の危機を救ったのは、3人だった頃のゴーオンジャー。
 「あいつら……かっこよすぎる……」
 それが、軍平とゴーオンジャーの出会いだったのだ。
 そして軍平は警察を退職し、ガイアークと戦う為にゴーオンジャーの一員となり、警官から刑事となった左京は警察に残ったまま、 タブーであるガイアーク犯罪の捜査を密かに行っていたのである。
 一部、筆者の妄想と曲解が含まれていますが、先日は「好きな事をやっているだけだ」と言っていた軍平が実は、 「腐敗した国家権力を見限り命を懸けて正義のヒーローになった男」だと思うと、えらく格好いいな!(笑)
 そんな軍平は先に捕まった人達と一緒にペンを回していたが、ブレスを取り戻して変身。 人々を解放すると騒音装置を破壊して仲間と合流。7人攻撃でマンホールを撃破すると、巨大化したマンホールに炎神王G9で立ち向かう。
 「軍平くん……今の君の力を見せて下さい」
 「やるぜ! ガイアークを倒せる正義は、俺たちだけだ!」
 この世界のダーティーな背景に気付いてしまった後だと、なんか、深い台詞だ(笑)
 マンホールバンキのフライングマンホール攻撃をガンパードガン連射で撃ち落とし、最後はG9グランプリでフィニッシュ。 炎神王G9が真っ当に活躍したのも、物凄く久しぶりのような。
 こうして事件は、刑事と元刑事のチームワークで解決したが……左京の回想で、軍平は「制服警官」であった事が判明し、 過去の「元刑事」発言を責められる軍平。……まあ散々、「元刑事」「元刑事」って偉そうにしていたから、仕方ない。 実際のところ階級が変わるわけではないので、外向けにはそれほど大法螺というわけではありませんが。あと間違いなく、 最初の設定では「刑事」だったと思う(笑)
 なお、留置場で軍平と左京が再会した時の台詞が「柏木……刑事。左京さん!」と意識的に間を置いていて、 ギャグネタなのにちゃんと伏線を張っていたり。
 基本、単発お祭りのパロディ回なのですが、軍平の過去と絡めて妙に整合性を取ろうとした結果、また一つ、 この世界の暗黒面が見えてしまいました。
 かつてこれだけ身内の背景が闇色だった戦隊があっただろうか。
 ……なかった、と断言は出来ない辺りが、困る。
 次回、ヨゴシュタイン様、傷心旅行から帰還。そして新ロボ?!

◆GP−29「大翔ヲトメロ」◆ (監督:竹本昇 脚本:會川昇)
 傷心旅行から帰還したヨゴシュタインは、キタネイダスとケガレシアの差し伸べる手を振り払い、 害地目のパワーを注ぎ込んだ蛮鬼獣を誕生させる。
 「我は悟ったナリ。他人の助けや協力、それが間違いだったナリぃ! 仲間と力を合わせるなど、炎神どもにやらせておくナリ。 我は! 己の力のみを信じる!」
 悪がヒーローに向ける定番の台詞に、きょとんと顔を見合わせるキタネイダスとケガレシア。
 なんかおかしい(笑)
 製造器から生まれたのは、これまでと全くノリの違う、機械的な反応の蛮鬼獣、ハンマーバンキ。
 「せこいギャグなど不要!」
 禁句とともにヨゴシュタインはハンマーを連れて出撃し、その一撃はビル街を瞬く間に更地に変える……!
 出撃したゴーオンジャーだが、圧倒的な強さを見せるハンマーバンキによって美羽が重傷を負い、激しく動揺する大翔。 余裕を失い目が据わり、「ふしゅるるる」とか効果音を出しそうな顔になった大翔は、自分で崩して転がってくる岩石を受け止める、 という謎の特訓を始める。
 ハンマーバンキを倒す新たな力の為……と無茶な特訓を繰り広げる大翔は、美羽の看病をさせようとする走輔をボディ一発でノックアウト。
 「大翔! 新たな力が何か知らないけど、君は、一番大切な事を忘れてるっス!」
 「おまえらに教えられる事など、ない」
 どちらかというと悪の幹部の勢いで、その場を立ち去る大翔。
 シスコン全開で、怒りを通り越して錯乱気味の大翔を、役者さんが熱演。
 一方、ヘルガイユ宮殿では、オーバーヒートで一時撤退していたハンマーバンキが再起動。
 「破壊! 破壊! 破壊!」
 遊びのない蛮鬼獣、我を失ったゴールド、同僚の思いやりを切り捨てるヨゴシュタイン、とそれぞれのこれまでに無かった姿を重ね合わせる、 という面白い構成。
 ガイアークの芸風を逆に利用する事で、兄のキレっぷりを補強する、というのが巧い。
 大翔を連れ戻せずにぎんじろうに帰還した野郎3人は、目を覚ました美羽とポエール教官から、大翔の考えについて聞く。
 「兄に、ゴローダーGTを、使わせないで」
 ゴローダーGT、それは、ジャン・ポエール教官が開発した、凄まじい力を持った新兵器。 大翔はそれを制御する為のパワーソウルの調整を進めていたが巧く行かず、現状では起動しても暴走してしまう。そこで、 ゴローダーGTを使ってハンマーバンキを倒した後で、暴走したそれを自分で止める力を得ようと、 岩石を受け止める特訓をしていたのである。
 「暴走したら止めればいいんだ!」って、兄、割とかっ飛んだ発想。
 連が美羽、ポエールと協力してパワーソウルを調整する事になり、ハンマーバンキ出現に4人は街へ。だが、 一足早くその前に立ちふさがった大翔は、制御できないのを承知で、ゴローダーGTを起動。 炎神キャスト並の大きさから人間大になったタイヤはハンマーを引きずり倒して吹き飛ばす!
 「見たかぁ……俺の、怒りの力ぁ……!」
 しかし、ゴローダーGTはそのまま暴走。止めようとしたゴールドも敢えなく吹き飛ばされ、 巨大なタイヤは街に大破壊をもたらしてしまう。
 「お前の怒りとやらは、人間共を傷つける力の事ナリか?」
 嘲笑うヨゴシュタインの前でタイヤの下敷きになりかけるゴールドだったが、寸前、駆けつけた4人のゴーオンジャーがそれを食い止める。
 「なにぼーっとしてんだ! さっさと手を貸せ!」
 4人が必死にタイヤを押さえ込んでいる間に、立ち上がったゴールド、側面からの体当たりでゴローダーGTをひっくり返し、停止に成功。
 「そうか……俺が忘れていたのは……」
 妹を傷つけられた怒りから我を忘れ、独りでの戦いにこだわって見失っていたものに気付くゴーオンゴールド。
 目の前で展開した熱い友情の力に同じく失っていたものを思い出すヨゴシュタイン。
 ゴローダーの攻撃から立ち直ったハンマーバンキの損傷を心配して止めようとするヨゴシュタインだったが、 破壊しか心に無いハンマーは上司を殴り飛ばして産業革命。そこへ青と銀が駆けつけ、炎神王G9チューンナップ。 青は調整を済ませた新たなパワーソウル――闘魂ソウルをゴールドへと渡す。
 ……その名称は何か嫌がらせか。
 「おまえの言う通り……俺は大切な事を忘れていた。武器が力になるわけじゃない。人と炎神、仲間との絆こそが本当の力になるという事を」
 「もうゴローダーはただの武器じゃないっス。人と炎神の、魂が注ぎ込めるっス」
 武器の力に溺れてはいけない・その力を道具としてだけ使うのではなくそこに魂を併せ持たせてこそ、という、どんな武器も使う者の心が大事、 というテーマを、繋がった2人のやり取りで、同時に二つのアプローチで描く、という見事な会話。
 一時期、個人的な諸々でちょっと會川昇にアレルギーが出ていた事があったのですが、今作・『アバレン』・ 『ブレイド』などの仕事ぶりを見ていると、『ボウケンジャー』抑えておけば良かった……とちょっと後悔。
 「皆との絆を力に変える……闘魂ソウル、セット」
 ゴローダーGTは巨大化すると、アクションモードを起動し、真の姿、人型ロボットへと変形する。 軽業系のタイヤロボは華麗な回避からの連続攻撃でハンマーを圧倒。最後は再びホイールモードに戻り、 G9からエネルギーを注ぎ込んで打ち出される合体必殺技・ゴローダーストライク、でハンマーバンキを滅殺。
 ……てこれ、ジャイアントローラー?!
 『超力戦隊オーレンジャー』(1995)に、レッドがタイヤに乗り込んで、敵マシン獣を轢き殺す、という必殺武器がありまして、 脈絡無くタイヤな上に、オーレッド1人で乗り込むため他の4人の存在理由が全く無い という凄い必殺武器だったのですが、そっくり(笑)
 まあ今作は基本車の戦隊なので、タイヤには説得力がありますが。あと、ロボット時のタイプや動きは、 タイタンボーイ(『超新星フラッシュマン』)、テトラボーイ(『超人戦隊ジェットマン』)の系譜か。
 「ハンマーバンキ……我が分身が負けた……」
 ヘルガイユ宮殿でがっくりと崩れ落ちるヨゴシュタインの肩に手を置く、キタネイダス。
 「1人だけの力で勝てるなど、驕りゾヨ」
 そしてケガレシア。
 「これからも三大臣の力を合わせて、ヒューマンワールドをきたなくよごして、けがれさせまくるでおじゃる」
 「我を許してくれるナリかぁ」
 微笑み合ってスクラムを組み、改めて心を一つにする三大臣。
 ……なんか、おかしい(笑)
 最近へたれてきた炎神王G9のテコ入れを主題にしつつ、ピカピカ兄妹の繋がりの深さを描き、 暴走したゴールドが仲間との絆を見つめ、改めて走輔ばかりでなく、ゴーオンジャー5人を認め直す、 というウイングスとジャーの関係をもう一度まとめ直したエピソード。また参加脚本家の中でも、 會川昇が最もこだわって書いている“人と炎神の絆”という要素もしっかりと盛り込まれています。
 その上で、ヒーロー側ばかりではなく、悪の組織が仲間の大切さを確かめ合うという 奇跡の展開。
 もう完全にこの路線で行くようですが、ガイアーク、面白すぎます。
 また、ガイアークが、炎神アレルギーはあるようですが、ただのへたれな駄目組織ではなく、割と蛮鬼獣の性能は高いし、 航空戦力も生きているし、三大臣は前線でまともに戦えばウイングスより強いし、とまだまだ侮れない、というのがいい所。
 ヒラメキメデス編では、ゴーオンジャー&ウイングスの怒濤の戦力増強に押され気味でしたが、そういう点で今回、 ハンマーバンキは意義のある活躍でした。
 ……ところで、今回急に物凄く強い蛮鬼獣をヨゴシュタイン様が作れたのは、放浪中に酒が抜けたからではないのか。

 酒だ! 酒がみんな悪いんだ!

◆GP−30「友情ノパンチ」◆ (監督:竹本昇 脚本:會川昇)
 大翔からゴローダーGTを預かる事になったゴーオンジャー、走輔がためしにスピードルの炎神ソウルをセットしてみると、 巨大化したタイヤが「気持ち悪いぃぃ」と大暴れ。実はゴローダーGTには炎神のパワーを吸い取る性質があり、これが原因で、 走輔とスピードルの関係が険悪になってしまう。
 街に特殊ドリンクを飲んで様々な能力を発揮するストローバンキが出現。 爆薬ドリンクによって放たれたシャボン玉爆弾によりビルが破壊され、 人気取りに「ウイングス」を強調しながら人々を救援する金銀。
 金銀が蛮鬼獣よりレスキューを優先する描写は恐らく劇中初だと思うのですが、(主に兄が)ランキングを気にしているのか、 ジャーとの共闘に伴う変化、という意図的な描写なのか。まあランキング、兄が気にしなくても、妹が範人みたいな感じで、 「兄のランキングを上げなきゃ!」とかやりそうだったりも。
 蛮鬼獣は更にストロー乱れ打ちで一般市民にストローをくわえさせると、ストローを加えた人々の口から毒の霧が吹き出すようになってしまう。 そこにジャーが駆けつけるが、満タンガンにチャージされるのを嫌がるスピードル(笑)
 「いいから入れって」
 「入って下さい、だろ」
 「なんだよまだ今朝の事怒ってんのか?!」
 「おまえを相棒に選んだことを後悔してるぜ!」
 結局、残り4人で一斉射撃。ケガレシア特性のドーピングドリンク・ガイアクアを落としたストローバンキは煙幕を張って逃亡し、 人々の口から毒霧ストローも外れる。皆で「大丈夫ですか?」と声かけをしている間、
 「おまえがついていながら」
 「すまない」
 と黒と金が小ネタを挟んでおり、関係性の変化が描かれています。
 走輔はたまたま現場に落ちていたガイアクアを拾い、成分を分析しようと連がキャップを開けた途端、炭酸入っていたのか、 噴き出したガイアクアが両者の顔にかかり、途端、豹変する2人。
 「やりますかー、香坂さん」
 「ああ、やろうぜ、走の字」
 急に乱暴になり、服装から安いチンピラ化した2人は、ガイアーク保険説明会を開催。 ブザーを鳴らすとゴーオンジャーが助けに来る、と偽り、集まった主婦層からお金をまきあげる。
 「ヒーローがお金を取るの?」に対する、「物価が上がって彼等も大変」という返しが、リアルネタで泣けます(笑)
 そう、ヒーローも、たまには肉が食べたいんだ!
 黒「正義の味方が、詐欺なんかやっていいと思ってんのか!」
 青「正義の味方なんか飽きたんだよ。俺たちは、悪い事がしたくなったの」
 赤「好きな事をやって、何が悪いのです。そこを、どきなさい」
 そう使うか(笑)
 2人を止めようとするスピードルとバスオンのブレスさえ投げ捨て、次の悪事へと向かう走輔と連。
 その頃、三大臣は心を一つに合わせてガイアクアを大量生産していた(笑)
 走輔と連は黒板を引っ掻いて宝石店から宝石を奪っていくが(強盗シーンはギャグ風味で誤魔化し)、 慌てて駆けつけた美羽がゴールドカードで支払ってフォロー。「これは何かの作戦なの?」と問う美羽に、 走輔は戦利品の中から指輪をプレゼントし、喜んでしまう美羽。
 「まー貰ってやってもいいかな、なんて」
 いやそれ、実質的に買ったの貴女(笑)
 ちょろい……。
 続けてやってきた大翔のパンチで連はノックダウンするが、走輔は華麗なスウェーバックからサマーソルトキックを放ち、 なんと大翔を撃退。
 「走輔、格好いい……」
 「美羽、どっちの味方だ……」
 打撃の影響か効果時間か連は正気に戻り、2人の豹変がガイアクアの影響であった事を知る面々。 ガイアクアには悪の心と力をパワーアップさせる効果があり、もともと正義一直線で悪への耐性が無い上に、 大量のガイアクアを浴びてしまった走輔は、暗黒パワー全開で強化されてしまったのだ。
 ス「走輔の野郎……簡単に悪に染まっちまいやがって。あいつの正義は、こんな簡単に裏返っちまうものだったのかよっ」
 金「人間はもともと、悪に惹かれやすい。正義も時に、簡単に悪に変わる」
 黒「だからこそ、正義を守るヒーローが必要なんだ!」
 「正義のヒーロー」「正義」を守るヒーローをさらっとかけて、何よりヒーロー自身こそが、 己の「正義」を守らなければいけない、という話で、相変わらず、ヒーロー論を小刻みに入れてきます。また、 それが作品総体としての押しつけではなく、キャラクター個々の信念と繋がっているのが、いい所。
 果たしてどうすれば走輔を止められるのか……思い悩む面々だが、ストローバンキの反応に出撃。立ち直った連に、 「殴ってでも止めたかった」と声をかけるバスオンの姿に、1人取り残されたスピードルは「走輔の、ばかやろう……」と力なく呟く。
 ヒラメキメデス編でウイングス登場の煽りを受けてスポットの外れていた炎神達を、人格変化ネタと絡めて改めて焦点を当てる、 と今作は本当に、スポットライトのバランス配分がよく出来ています。
 ビルの屋上(ここ後でポイント)から眼下の人々にまとめてストロー乱れ打ちを放とうとするストローバンキの前に、 走輔を欠きながら立ち塞がるゴーオンシックス。
 「あんたのお陰で走輔が格好良く……」
 「え?「え?「え?「え?」
 銀の衝撃発言に青が満タンガンを取り落とすなど、今回は小ネタがノリノリ(笑)
 「美羽……」
 はい訂正、やり直します。
 「変になっちゃったんだからね!」
 だが今回こそガイアクアを吸収したストローバンキはドーピングで超強化、6人の攻撃を軽々と受け止めて弾き返すと、 内側からは決して破壊不可能なバブル結界の中に6人を閉じ込める。
 黒「諦めるな! 走輔がきっと来る!」
 金「あいつの正義の心は消えない…………多分」
 その頃、噂の正義の男は、マッハでコショウを振りまいて、銀行強盗中だった(笑)
 走輔の熱い正義はこのまま失われ、今度こそ刑務所送りになってしまうのか……ぎんじろうでは相棒を失ったスピードルが後ろ向きになっていた。
 「走輔が居たって駄目だ。あいつは弱いんだ。簡単に悪の心に染まっちまった。あんな奴、俺の相棒じゃねぇ」
 「スピードルは、走輔が強いから相棒に選んだの?」
 黄昏れるスピードルに、痛烈な一言を浴びせるボンパー……てまさかここでボンパーさんまで拾ってくるとは!
 「そうじゃない……あいつの、熱い正義の心を感じたからだ!」
 「だったら、どうしてそれを信じられないんだ! ボンボン!」
 札束を手にほくそ笑む走輔の前に、走ってくるタイヤ。ゴローダーGTは人間大の大きさのまま、アクションモードに変形する。
 「江角走輔」
 「……喋った」
 「目を覚ませ、おまえの中にある、正義の炎を、もう一度燃え上がらせるんだ!」
 「ふん、正義など、知った事ですか」
 「この……馬鹿やろぉ!!」
 伝統の、ジャスティス鉄拳制裁!
 歯を食いしばる間もなくゴローダーパンチを受け、土手を凄い勢いで転がった走輔は、 自分の中に呼び覚まされる熱いものを感じて正気を取り戻す。同時に、苦しむゴローダーの姿に、その中身がスピードルである事に気付く。
 「スピードル……おまえ、スピードルだな!」
 そう、スピードルはエネルギーを吸収されて苦しいにも関わらず、自らの拳で走輔の心を取り戻す為、 敢えてゴローダーGTの中へと入ったのであった。殴って解決……というのは若干大雑把でしたが、前回の今回で、 文字通りに“魂のこもった拳”というのは面白い所。そして器(キャスト)の使用が限られる炎神が、 リスクを冒してでも直接相棒と触れあおうとする、というのは異種族間の友情の表現として巧い。あと細かい所では、 ゴローダーとスピードルをちょっとした声音の違いで演じ分けている、プロの技に感心。
 「走輔……俺もおまえも、弱い時がある。だけど弱いから、相棒が必要なんだぜ」
 これまで、“炎神の力を借りて戦う”事に対し、“ヒューマンの相棒が居るから炎神はこれまで以上に強くなれる” という事を描いてきた今作ですが、ここで、“そんなヒューマンを炎神が支える時もある、それが相棒だから”と、構造がもう半回転。
 怯える炎神たちを走輔たちが立ち直らせる15話(ヒラメキメデス初登場回)の合わせ鏡となりました。
 閉じ込めた6人をいたぶっていたストローバンキは、爆薬ドリンクでまとめて始末しようとするとが、その時、 風を切るJPカード! じゃなかった、走輔のコインがドリンクを吹き飛ばして破壊する!
 久々のコイン、ヒーロー演出に。
 そして、ビルの屋上に姿を見せたのは、空飛ぶタイヤの上に仁王立ちの走輔。
 流れ出すOP(インスト)。
 「みんな、待たせたな! 行こうぜ、相棒!」
 「ドルドル!」
 ストローを弾き飛ばし、そのまま空中でダブル変身し、地上へと降り立つ一人と一体。

 文句なく格好いい。

 「マッハ全開! ゴーオンレッド!」
 「「勇気満タン、ハイウェイスター! 炎神スピーーードル!」
 「「「真っ赤に燃えるスピードキング! 俺たち、ゴーオンマッハ組!!」」

 コンビ名は、微妙。

 にしても、あのタイヤの着ぐるみで、名乗りの回し蹴りが出来るとは。
 「行くぜ、スピードル!」
 「おうよ、走輔!」
 ゴーオンレッドとゴローダー:アクションはドーピングしたストローの元へ飛び降り、 この飛び降りるシーンでコーラスの「ゴーオン!」を入れて、2番からは歌詞が入る、と完璧。
 竹本監督、これは素晴らしい仕事。

おまえは右 俺は左
若さの十字路 喧嘩もするけど
同じ痛み 感じた時
同じ行き先を 地図に刻もう
涙のトンネル抜けたなら
チューンナップ 絆よ燃え上がれ

 マッハ組は見事な連携でストローに連続攻撃を浴びせ、最後はタイヤアタックをレッドが打ち込んで撃破。 6人は解放されるがストローは産業革命し、スピードルがエネルギーを使い果たした為、残りのキャストで戦闘に。 久々にそれぞれバラバラでの攻撃から、青空王と頑張王に繋ぎ、最後はW必殺攻撃で撃破。 ちゃんとバスオン怒りのアタックには他より尺を取り、『ゴーオン』のロボットは弱体化は早いけど、 忘れ去られないで継続使用されているのはいい所。
 また、6人がただ助けられるのではなく、最後に走輔とスピードルをフォローする、と構造的にも美しく着地しました。
 こうしてストローバンキは倒れ、二人のヒーローは正気に戻り、走輔と連はまずは保険詐欺への返金から、謝罪回り。 美羽が支払った宝石店はともかく、銀行強盗はどうか……という感じですが、高度に政治的な圧力が上からかかったのか、 或いは、これも間接的なガイアーク犯罪であり、そんな事件は公式には存在していないのか……。
 殴って解決、は若干どうかという思いがあったのか、オチはナレーションで「昔の学園ドラマみたい」と触れてややメタに(笑)
 今作、炎神にナレーションを持ち回りさせる事で、それぞれ炎神が埋没しないように調整しているのですが、 これもコンセプト的に非常に巧いところです。

 名・作・回。

 幾つもの要素を見事に組み合わせ、普段どうしても手の回しようがないボンパーさんにまで見せ場を用意した上で、 クライマックスを抜群に格好良く締める、と、シナリオと演出が噛み合い、お見事。 走輔だけではなく連もダーク化させる事で走輔1人を必要以上に馬鹿っぽくさせず、合わせて地味になりがちな連とバスオンの絆も描いた所など、 実に隙なし。また、少しギャグ寄りかと思われた演出が、Bパートのクライマックスであそこまで盛り上げてきたのは、やられました。
 今作、8話の壁、というのが長らくあったのですが、クライマックスバトルの格好良さと盛り上がりに関しては、今回、超えたかも。
 そして本当の最終盤のハードルが、また上がった(笑)
 次回、多分あの人が本気出す。

→〔その7へ続く〕

(2014年3月12日,2014年5月5日)
(2017年4月9日 改訂)
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