■『炎神戦隊ゴーオンジャー』感想まとめ3■


“エンジン・ジン・ジン 燃やせパワー
勇猛果敢に闘うのさ”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『炎神戦隊ゴーオンジャー』 感想の、まとめ3(GP−11〜15)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆GP−11「電波ジャック」◆ (監督:竹本昇 脚本:古怒田健志)
 突然、TVでそれぞれ大きく取り上げられるゴーオンジャーの面々。
 走輔……奇跡の江角、世界GP出場決定
 早輝……スマイルコンテストグランプリでアイドルデビュー
 連……クイズ王
 範人……大富豪から遺産相続
 それぞれが降って湧いたチャンスと成功を掴む中、軍平、一人蚊帳の外(笑)
 何これイジメ?
 もちろん現実がそうそう都合が良いわけがなく、全ては炎神王G6の脅威を封じるべく、 ゴーオンジャーを分裂させようというガイアークの陰謀であった。蛮鬼獣アンテナバンキが密かにニュース番組に催眠電波を送り込み、 それを見た人々がその内容の通りに行動するようになっていたのである。
 アンテナバンキは、顔が直接首に繋がっておらず発信部分の先端についており、目も左右非対称と、なかなかマッドなデザイン。 印象的なデザインの多い蛮鬼獣ですが、かなりの傑作。
 「だーが、奴等の楽しそうな顔を見るのは……」
 「なんだか癪でおじゃる」
 「そう思って一人だけ、趣向を変えてやったぞよ」
 やっぱりイジメだった。
 「犯人に告ぐ。無駄な抵抗はしないで、出てこい」
 ぎんじろうの外から聞こえてきた声に何か事件か、と顔を出した軍平は警官隊に取り囲まれる。なんと軍平は、 催眠ニュースにより銀行強盗犯に仕立て上げられてしまったのだ。
 「俺は元刑事だぞ! 強盗なんかするか!」
 過去の実例からいえば、そういう人が一番信用できないのです。
 警官隊の囲みを突破して逃げ出した軍平は、何かがおかしいとメンバーに接触を取るが……
 早輝はすっかりアイドルデビューを受け入れて盛り上がり中、ベアールVも盛り上がり中。
 連も「TV見てないんすか? 俺はクイズで、世界一を目指してるっす」とTVの設定に飲み込まれてクイズの道を突き進み中。
 範人は大富豪の孫扱いを受けてお小遣いに札束を貰って浮かれていた。
 「ゴーオンジャーより、お金持ちの方が、楽しいかも!」
 3人の仲間に次々と邪険にされ、警察の追っ手をゴミの山に隠れてやり過ごす元刑事。
 「なあ相棒……野良犬って、知ってるか?」
 「さあ……マシンワールドには居なかったな」
 それぞれの炎神もおかしい中、唯一まともなガンパードが、街のそこら中にゴミが溢れている事に気付く。 ゴーオンジャーの分断に成功したガイアークは作戦の第二段階として、家庭ゴミをどこに捨てても良い、 工場の排煙を10倍にする事、など世界を汚す無茶苦茶な法令を次々と催眠ニュースに乗せていたのだ。
 対ゴーオンジャーだけではなく、通常進行の汚染作戦にも繋げたのは、そろそろ敵組織が方向性を見失いがちになる時期に、 非常に良かったところ。
 人々をおかしくしているのはTVだと気付いた軍平は、ボンパーにその調査を頼むと、最後の一人、誰よりもヒーローである筈の男、 走輔の元へと向かう。
 「目を覚ませ! 俺にはおまえが必要なんだ!」
 しかし走輔もまた、催眠電波にすっかり自分を見失っていた。国内でも優勝していない奴が世界GPに出場できるか、 という軍平の至極真っ当なツッコミも無視して、ゴーオンジャーへ戻る事を拒否。やむなく軍平はひとり催眠電波の発信源へ向かい、 そこでアンテナバンキと対峙するが、ガイアーク出現の通信に、4人の仲間も炎神も、誰一人反応しようとはしない……。
 孤軍奮闘するもアンテナバンキの衛星ビームなどで叩き伏せられ変身の解けた軍平は、警官隊によって身柄を確保。
 「TVで言ってたぞ! おまえは死刑だ!」
 と、物語的楽しさに、風刺的な部分も入った好シナリオ。
 アンテナはその光景をウガッツに撮影させて電波に乗せて生中継。やむなく警官隊を蹴散らした軍平だが、 アンテナバンキに追い詰められる映像が、メンバーの元にも届く事になる。
 「往生際の悪いヤツ、おまえはもう、おしまいだっテナ」
 「黙れ! こんな事で、ゴーオンジャーは負けたりしない!」
 結構、軍平がやられているのを、じっと見ているみんな(笑)
 人徳か、人徳の問題なのか。
 絶体絶命の軍平は、それでも力を振り絞ってアンテナバンキへと立ち向かう。
 「俺は仲間を信じてる……俺が倒れても、走輔の熱いハートが、おまえ達を許さない!
  早輝の笑顔は、どんな時にも絶対くじけない!
  連の知恵が、おまえ達の悪巧みを、暴き出す!
  範人の自由な心を、おまえ達は絶対に縛れない!
  あいつらは、必ず目を覚まし、おまえ達を、倒す! この世界は絶対に、おまえ達の思い通りにはならねえ!」
 なんだかんだで走輔大好きで終わるかと思ったら(レッドだけ取り上げられる、というのはありがち)、 他のメンバーの分もあって良かった(笑)
 ここでいいのは、軍平が仲間が助けに来てくれる事を信じているのではなく、 自分がここで死んでもいつか必ず仲間がガイアークを倒してくれる、事を信じているという事。 “正義ノミカタ”に対する軍平の覚悟の決まり方がピンポイントでよく出ました。
 いよいよトドメの攻撃が軍平に迫る時、満タンガンの一斉射がアンテナバンキを貫く。 ギリギリの所で正気を取り戻した4人が駆けつけたのだ!
 「軍平の叫びが、俺たちの心のプラグに、火を着けてくれたんだ! お陰で、ばっちり目が覚めたぜ」
 「ふんっ、エンストは今回だけにしてくれよ」
 5→1という逆順の名乗りで、ゴーオンジャー揃い踏み。
 「五人揃った俺たちは、マッハで無敵、だぜ!」
 主題歌2番をチョイスというのも、エピソード内容に合わせていて、良し。 スーパーハイウェイバスターによる分身ガンパードソウルがアンテナを撃破し、産業革命。新曲でのロボ戦は、G6を発動するまでもなく、 軍平怒りのガンパードガンラッシュでアンテナ粉砕。そもそもG6封じの為の作戦だった筈なのに、G6が出ずに敗北、 というガイアーク側にとっては酷い結果となりました(笑)
 アンテナバンキが倒れた事で人々も催眠電波の影響から解放され、元の姿を取り戻す街。軍平の愛の叫びにメンバー感謝感激、で幕。
 (たぶん)初めて見る脚本家の方でしたが、非常に良い出来でした。映像的にも遊べる展開にした上で、通常の汚染作戦と繋げた所、 風刺要素を盛り込んだ点は、ポイント高し。また、ほぼ完璧にはまった悪の作戦が、間抜けな凡ミスなどではなく、 面白くないので軍平をイジメた事、そのピンチを生中継した事、という悪が悪という性質ゆえに足下をすくわれて負ける、 という流れを組んだのが非常に素晴らしい。最後も、8話とは別のアプローチでしっかり盛り上げました。 途中の思わせぶりな「野良犬」発言が終盤に活きるのかと思ったら特に何も無かったのは肩すかしでしたが、 そこが決まっていればほぼ満点の出来。

◆GP−12「走輔バンキ!?」◆ (監督:竹本昇 脚本:宮下隼一)
 4人でコンビネーション訓練中のゴーオンジャー……走輔は、風邪を引いていた。
 「ピットインするときはする。じゃないと、肝心なときに肝心な走りができないぜ。相棒」
 風邪で寝込んでいる走輔だったが、街で自称ガイアーク最強の蛮鬼獣・発電バンキ(安定の檜山チンピラ怪人)が暴れだし、 いち早く突撃。強烈な放電攻撃を防ぐ為に懐に飛び込むが、放電が暴発し、もろもとに落雷の直撃に巻き込まれる。この結果、 二人の人格が入れ替わってしまって……という入れ替わりトラブル回。
 走輔バンキはヨゴシュタインのアジトで放電能力を増幅される事になり、発電走輔はメンバーから代わる代わる風邪の治療法を強要される事に。 それぞれ敵の懐に飛び込むもさっぱり活かせないまま、遂にぎんじろうを逃げ出す発電走輔。 走輔バンキも放電増幅装置を破壊した事からヨゴシュタインに追われ、遭遇した両者は掴み合いに。
 その光景を見て、真相に気付くヨゴシュタイン(凄い)。
 そこにゴーオンジャー4人もやってきて、走輔バンキとゴーオンジャーをぶつからせようとするヨゴシュタインだったが、 4人は真相に気付いたスピードルから話を聞いており、ヨゴシュタインの策に乗ったフリで逆にヨゴシュタインを攻撃。 追い詰められた発電走輔は「レッツ・ゴーオン!」して発電レッドに変身するが、そんな自分の体を、躊躇なく叩きのめす走輔バンキ(笑)
 「姿形は変わっても、俺のソウルはここにある! この俺が、江角走輔、ゴーオンレッドだ!」
 やりたかった事はわかるのですが、ゴーオンジャー4人が真相に気付いた理由が 「いちはやく気付いたスピードルから情報を聞いた」だけなので、微妙に盛り上がらず。 走輔とスピードルの絆を協調するような展開になっていればまた別ですが、スピードルも何となく気付いただけですし(^^;
 蛮鬼獣の姿のままゴーオンジャーの名乗り、というのは絵的には当然面白いのですが、 次回予告でばっちり見せてしまっていた部分に物語の面白さを付加できず、絵が面白いだけ、に終わってしまいました。
 その後、5体の炎神ソウルが奇跡の力で走輔ソウルを蛮鬼獣の肉体から分離し、発電レッドのボディに打ち込む事で、 互いのソウルは元に(ここで、走輔ソウルが飛んでいく所は面白かった)。走輔に風邪をうつされた発電バンキは、 さしたる反撃もできないまま、哀れ瞬殺。巨大化後も新曲で登場した炎神王G6のG6グランプリを受けて、 あっさり滅殺されるのでありました。
 軽い単発エピソードですが、定番アイデアの時ほど、脚本家のスキルが出るなぁ、と。
 オチの見所は、
 「ズバリ、乾布摩擦は風邪を引く前にやるもんっす。アロマだって気の持ちようだし。民間療法も根拠なんてないっす」
 連はこういう感じで、彼女にフられれてきたのであろう(確信)。

◆GP−13「侠気マンタン」◆ (監督:諸田敏 脚本:荒川稔久)
 ピンクハウス系少女を襲う蛮鬼獣・ヒキガネバンキ(名古屋弁)。ぎんじろうで駆けつけたゴーオンジャーは彼女を助け出すが、 彼女はガイアークと取引した謎の侠客に狙われていた……。
 ヒキガネバンキの銃撃を全て空中で切り落とし、ガイアーク3大臣すら一目置かせる謎の侠客役は、魔王ビルゴルディもとい菅田俊。 凄いタイミングで凄いゲストの回が(笑)
 そして助けた少女は、
 「名前? ぶーこりんでーす」
 顔をしかめる黒、意外と順応する赤、ドライな黄色。
 助けた相手に本名ぐらい名乗れ、とからまれ、泣きながら走り去るぶーこりんを追いかけるオカン青。
 「ずばり……君、家出してきたんだろう?」
 子供達が幸せな笑顔になるテーマパークを作りたいという夢を持つぶーこりんだが、 頑固な父親は8代続く家の跡継ぎになる事を譲らないという。
 ここで連の実家が老舗の割烹料亭、と背景とともに料理上手の理由が判明。カーメカニックを目指す連は喧嘩もあったが、 誠心誠意の説得でわかってもらえたのだった……父さん、母さん、今は色々あって、立派な無職をしています。
 真っ正面から向き合って話し合えばきっとわかってもらえる……とぶーこりんを励ます連だったが、そこへ、 刀捌きに心服した引き金を弟分に連れたぶーこりんの父……謎の侠客がやってくる。事ここに至って、 相手がカタギの人ではない事を知る連。
 蛮鬼獣反応に駆けつけた4人の仲間が引き金と戦い、連はぶーこりんの代理として、8代目魔王と三番勝負に臨む事になる。
 1戦目:サイコロ賭博
 連、高速計算で出目を読み切るが、魔王の気迫にサイコロがびびって目を変え、逆転負け。
 2戦目:花札勝負……という名の隠し芸
 両者成功するも、魔王の気迫が花札を崩してしまい、逆転勝ち。
 3戦目:段平振り回しての真剣勝負。
 割と普通に戦ってしまう連(笑)
 なんか今回だけで、連の各ステータスが異常に上昇しました。
 奮戦するも8代目魔王に追い詰められる連だったが、ギリギリの瞬間、飛び込んだぶーこりんが真剣白刃取りを見せると、 気迫で父親を圧倒。連は仲間の元へ駆けつけ、スーパーハイウェイバスターで、引き金瞬殺。 巨大化後はスピードを活かした戦法で引き金の銃撃をかわし、G6グランプリで滅殺。
 「ドラゴンズの連続日本一、見たかったがねー!」

 荒川さーーーん。

 戦い終わり、親子の元へと戻ると、ぶーこりんは魔王9代目を襲名する事となっていた。 魔王の血に覚醒して父親を圧倒したぶーこりんは、9代目を継ぎつつも、テーマパークを作る道を選び、父親もそれを認めたのだ。
 「じゃ、ふるさとの星へ帰ります」
 飛んできたUFOに二人は回収され、なんと本当に宇宙人だった、というオチ。
 「じゃあ本名だったんだな……ぶーこりんって」
 「こういう展開、あり?」
 「なんでもありだろ!」
 「なんて星から来たのか、聞いておけば良かった……」
 多分、こ○ん星。
 ガイアークは地球人ではなく宇宙人と取引しようとしていたのだ、と世界観の整合性はオチでギリギリ付けました。ただ全体としては、 個別のネタありきでネタとネタを強引に繋いだような回で流れもテンポも悪し。
 ゲスト参加の単発ギャグ回で荒川稔久が好き放題。こんなに脚本家の煩悩しかまみれていない脚本は、久々に見ましたよ!
 あれから15年後の菅田俊が見られたのは、タイミング的には嬉しかったですが。
 なお「こりん星」っていつ頃が旬だったか、と思って調べたら、2002年頃から発生して、2009年末に公式に終了していたので、 ネタとしては時事ネタではなく、ブームが過ぎた事で出来るパロディ、という形であった模様。

◆GP−14「毎日ドキドキ」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇)
 朝の忙しい時間にヒューマンワールドを覆う謎のピンクの靄、それに飲み込まれた人々はカマバンキの頭部の温泉郷に飲み込まれ、 あらゆるやる気を無くして堕落してしまう。バイト帰りの範人もカマ温泉に飲み込まれ、釜と4人で戦う事になるゴーオンジャー。 その戦闘中、通りすがりの中年男が温泉に飲み込まれてしまうのだが……
 「なんだこのまやかしは……生ぬるい! かーつ!!」
 気合いで桃源郷を破壊。
 ゴーオンジャーは極楽気分の抜けない範人を欠いたまま必殺技を放つも釜を倒すには至らず、ケガレシアと釜は撤退。
 黒「いいか、俺たちは戦士だ! 喜びも悲しみも、楽しみも気持ちよさも、全部昨日に捨ててきたんだ!」
 て、え? そこまで?!という顔に青と黄がなった気がする。
 「情けない! こんなのが人々を守るヒーローとは、来い!」
 中年男は範人を引きずっていき、赤は意気揚々とその後を追いかけていく。男の名は、藤尾万旦。山奥で藤尾万旦ファイト自然塾を開く、 まあちょっとした 社会不適格者 超人であった。ヒーロー魂の共鳴する所があったのか、何故か弟子面の走輔も参加し、 精神を鍛え直されそうになる範人。当然逃げだそうとするが、入り口の所で眼鏡の美女(後頭部にバルブ)と遭遇し、方向転換、 急に張り切り出す。彼女の名は、汚石冷奈(けがれいしれな)。 ただの人間であるにもかかわらず蛮鬼獣の能力を破ったおっさんの強さの秘密を探りにやってきた、ケガレシアの変装であった。
 前回も壺振り役で登場しましたが、ケガレシア様が人間体で登場。
 顔出し女幹部コスプレ路線というのは非常に伝統的な流れですが、完全に今回、ケガレシア様を可愛くしようキャンペーン となっており、スタッフの心を掴んでいるのが窺えます。
 (あの人間は何を騒いでおるのだ……)
 範人の盛り上がりがさっぱり理解できないケガレシア様、修行体験を経て、一つの極意を知る。
 「極意は掴んだ。滝に打たれ、雑念を捨てるでおじゃる」
 カマバンキ、早朝の滝に打たれるの図、は悔しいけど面白かった(笑)
 昇る朝日を浴びて、
 「悟ったー! ……ような気がする」
 真理に到達してしまった釜は、範人の様子を見に来た青・黄・黒と山中で遭遇。満タンガンを跳ね返し、 悟りパワーであっさり3人を撃破。温泉に吸い込む事に成功する。ボンパーからの連絡でこれを知った走輔は範人の首根っこを掴んで救援に向かおうとするが、 範人は冷奈にドキドキ夢中。
 ぞんがい本気らしく、貴女みたいな強くて美しくて清らか人に初めて出会いました……と直接秋波を送るが、 途中で走輔に引きずられていってしまう。その姿を見ながら変装用の眼鏡を外したケガレシアは、相手が、 かつて自分が踏みつけにしたゴーオングリーンであった事に気付く。
 「妾をたばかっていたのでおじゃるなぁ。清らか、美しい、それはガイアークにとって死に勝る屈辱!」
 種族的美的感覚の差で範人の言葉は賛辞ではなく罵倒に。変装を解いた怒りのケガレシアとカマバンキに挟み撃ちを受ける走輔と範人だったが、 ドキドキフィーバー中の範人は自ら温泉に突撃。
 「おまえの好きな温泉だぞ?」
 「もー、僕は、冷奈さんとこに、早く戻りたいの!」
 内部で変身してアックスで桃源郷を破壊し、強引に脱出すると、唖然とする赤、ぼんやりした3人に強制的に決めポーズを取らせ、 ハイスピードで
 「正義のロードを突き進む、炎神戦隊ゴーオンジャー!」
 緑だけがやる気満タン、といういつもと逆パターン。緑は各自の武器を半強制で出現させると、 ひとりスーパーハイウェイバスターで釜を撃破。更に時間短縮で、
 「炎神ソウル、6体同時セット!」
 格好良く空中に6つのキャストとソウルを放り投げる、が、
 「バルバルーカ! あれ? 僕、スピードルだ! どるどるどる〜」
 混ざる(笑)
 そんな事になるのか。
 肉体と魂が拒絶反応を起こすとかは無いようで、別々のソウルとキャストで巨大化する炎神達。 ゴーオンジャーはソウル優先でそれぞれのキャストに乗り込み、強引にG6フォーメーションを発動。
 ナレーション(キャリゲーター)「炎神ソウルとキャストが入れ違っていても、相棒と結ぶ心は同じ。これも一興と、 お笑いくだされぇ〜」
 キャリゲーターが初のナレーションでしたが、この状況を一番それらしくまとめられるキャラではあり、 炎神持ち回りナレーションの特性も巧く活用。會川昇はここまで、サブライターとして絶好調だなぁ。
 相変わらず圧倒的なG6は釜バンキをあっさり葬り去り、チェッカーフラッグ。慌てて道場へ戻る範人だったが、 既に冷奈の姿は消え去っていた……。
 「清らかだと……?」
 最後は、水面に映った自分の顔を鞭で吹き飛ばすケガレシア、で幕。
 4話の際の生身での絡みを拾って、ゴーオンジャーサイドとガイアークサイドの、初の個人の因縁付けとなりました。 全員の初顔合わせが8話とちょっと遅かったのもありますが、そういえば3大臣はあまり前線に出てこないので、絡み自体が珍しい。 エピソード自体は単発ギャグ回の流れでしたが、こういう人間関係の綾は、今後も活かしてほしい所。主役そっちのけで、 最初に敵と因縁の生まれるキャラが緑というのは予想外もいい所でしたが(^^;
 ここに来て4話連続の単発エピソード(脚本もうち3人は初参加)を挟んで、次回、新たなる強敵?!
 この辺りの呼吸が実にまあ、読まれている?! みたいな作品ではあり(笑)

◆GP−15「炎神ストール」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武上純希)
 冒頭から、パンツ丸出しの走輔、無駄な吊りアクション。
 主人公として体を張る姿勢、素晴らしい。
 そんな折、ヒューマンワールドにガイアーク反応が迫り、巨大な飛行メカが街を襲撃する。
 「ごきげんよう、人間共」
 「やばい! ヤツだ!」
 それを操るのは、ガイアーク一の策士・ヒラメキメデス。炎神王G6で出撃するゴーオンジャーだったが、 炎神達にいつもの勢いが無い上に、ヒラメキメデスの高機動戦闘の前に手も足も出ない。
 「あいつ、いつものバンドーマより3倍速いっス!」
 「赤じゃなくて、緑なのに?!」
 イエロー、意外とマニアックなツッコミ(笑)
 「こうなりゃ、分離して空中戦だ! スピードル行くぜ!」
 「無理だ! 俺のジャンプ力じゃ、あいつには届かない」
 「なにぃ?! あれ、ジャンプだったのか?!」
 走輔どうやら、スピードルを飛べると思っていたらしい。……まあ、顔、鳥型だし。走輔を責めるわけにもいきますまい。むしろ、 スピードルがまぎらわしい。
 大苦戦の果てにG6は合体解除。
 ここまで圧倒的だったG6を冒頭の顔見せで完封駆逐して見せたヒラメキメデスは、余裕たっぷり、 上司であるヨゴシュタインに拝謁するべく、ガイアークの基地へとマシンを向かわせる。
 害地副大臣であるヒラメキメデスはヨゴシュタインに忠誠を誓っているらしく、有能な参謀役の復活に、ヨゴシュタイン、 めろめろ(笑) ただし他の二人からは、微妙に嫌われている様子。
 ヒラメキメデスが腹に一物あるかどうか(ヨゴシュタインに心底忠誠を誓っているのか)はわかりませんが、 これまで比較的仲良しトリオだった三大臣に、裏のありそうな策士系の新キャラが加わる事で、 ガイアーク内部の雰囲気にも少し変化が生じたのは、いいアクセント。
 一方、一時撤退したゴーオンジャーは、損傷したエンジンキャストの修理中。
 ぎんじろうのドアに「手術中」の張り紙が貼られ、その前で落ち着かなく歩く走輔、というのは面白い演出。
 冒頭の走輔大ジャンプも面白かったし、今回、中澤監督が冴えています。
 長引く手術(修理)に妄想をネガティブ方面に広げた走輔、お花畑の方に羽ばたいていくスピードルのソウルを想像。
 「また、エンジェルワールドで逢おうな〜」
 あるのか、エンジェルワールド(笑)
 そんな走輔の妄想は杞憂に終わり、無事に回復する炎神達。だがそのテンションは極めて低い。 炎神達はマシンワールドでの戦いにおいてヒラメキメデスに連戦連敗で酷い目に遭っており、強烈な苦手意識を持っているのであった。 そのヒラメキメデスが突如謎の失踪を遂げた事で形勢は逆転、炎神達は3大臣率いるガイアークをマシンワールドから追い出す事に成功したのだという。
 15話にして、物語の発端となった炎神達の勝利は、鬼の居ぬ間のなんとやら、であった事が発覚。 炎神達がいつになく弱気な中、ぎんじろうの前に、ヒラメキメデスが自ら立ちふさがる。
 赤「この……! おまえがヒラメスキデスとかいうヤツか?!」
 「は?」
 緑「ヒラ……キメキメデス!」
 「ふう……」
 黒「いや、違う! ヒラメキデスメ!」
 「うーん」
 黄「ヒラメキキスデス!」
 「んーんんん」
 青「ヒラメキメデス」
 「そう!」
 「「「「おおー」」」」
 閃きさんの名前ネタは今回ひたすら繰り返しており、それを徹底する事で面白くなりました。 ここまで知的クール系だったヒラメキメデスの反応も崩しすぎない範囲で面白くして秀逸。
 「私はガイアーク害地副大臣、ヒラメキメデス。あなたたちには興味ない。炎神どもを出しなさい」
 変身するゴーオンジャーだったが、炎神ソウルがヒラメキメデスへの恐怖心から逃げ出してしまい、満タンガン使用不能に。 閃きさんは格闘戦で5人を一蹴すると、雑魚を召喚。更に、「おまえたち……ネジが足りてないですね!」とウガッツを強化。 ゴーオンジャーは必殺攻撃連発で何とか雑魚は退けるが、連続攻撃を弾かれ、閃きさんの必殺技に吹き飛ばされる。
 「正三角形斬り!!」
 ……て、ここまで凄い格好良かったのに(笑)
 ヒラメキメデス役の中井和哉は、普段微妙に苦手な声質だったりするのですが、知的クール系演技を初めて聞いたけど、結構いいなぁ。 これは発見。
 変身の解けた5人は、ぎんじろうに乗り込んで逃亡。閃きメカに追われるが、トンネルに入ってギリギリ難を逃れる。 しかしその背後には、ゴーオンジャーと炎神にトドメを誘うと、ヒラメキメデスが手ぐすね引いて待ち構えていた。
 「どこに逃げようと……心に刻み込まれた恐怖から逃げる事は出来ません」
 これまで、どちらかというと戦いを主導していた炎神達が怯えて敵前逃亡、という新しい展開。
 走輔はソウルの中に引きこもるスピードルに呼びかける。
 「何してんだよスピードル! 悔しくねえのか! …………何とか言えよスピードル!」
 「すまない相棒……だが、俺達には勝てない」
 「俺たちが組んで、勝てない敵なんていねえ!」
 「でもな、あいつだけは特別だ」
 「俺だって特別だ!!」
 「え……」
 「俺だって一番だ! おまえだって一番だ!」
 「俺が……」
 「そうさ……思い出せよ! 俺たち、みんなで一緒に頑張ってきたじゃねえか!」
 キャリゲーターの回にあったように、そもそも炎神達がヒューマンの相棒を必要とするのはヒューマンワールドに入ってからであって、 ここで改めて、炎神達にヒューマンが相棒の意味を教える。構造上、 どうしても“炎神の力を借りて戦う”となってしまう所から、もう一歩進めて、本編の基本設定をくるっと丸めました。
 「俺たち相棒がついてるだろ……大丈夫だ」
 それぞれのソウルを呼び出すメンバー。
 そう、ヒューマンと炎神、互いの心が一つになる事で、ゴーオンジャーはどこまでも強くなれるのだ。
 「悪かったな……相棒。もう一度、俺と組んでくれるか?」
 「ああ、当然だぜ、相棒」
 だが、ヒラメキメデスはかつてない強敵。いったいどうすれば打ち破る事が出来るのか……その時、 走輔パンツで大ジャンプ事件を思い出した早輝が、対策を閃く。
 「名付けて、スマイル早輝ちゃんの、ニコニコ大作戦!」
 ここで気合いと根性と絆の力だけではなく、しっかりと作戦を練るのはいい所。
 準備を整えたゴーオンジャーは、夜明けとともに炎神王G6で出撃。閃きメカの銃撃を食らうと、自発的に合体を解除して分離。 キャリゲーターを踏み台として、赤<緑<黄の順で、大ジャンプ。黄が緑の尻尾に噛みつき、緑がその勢いで回転、 赤を強く弾き飛ばした所を、更に青と黒の銃撃で加速するというブーストフォーメーションにより、閃きメカへと迫る!
 「俺たちは、マッハ全開だぜぇ!!」
 「まさか……?! あの赤いの、私の3倍速い!」
 もはや元ネタ不問レベルになっているパロディを、ただの一発ネタにせずに拾ったのは良し。スピードルのジャンプなど、 前半の戦闘時の台詞がみな伏線になっている、というのも鮮やか。
 ゴッドスピードルアタックは見事に閃きメカを貫く――が、爆炎の中から5体に分裂して姿を見せる閃きメカ。 これでもまだ勝てないのか……しかしその時、ヘリのローター音とともに、二体の空飛ぶ炎神?が現れる。 その姿を見て焦って逃げ出す閃きさんと、それを追う二体のメカで、空中戦。珍しい長尺でのミニチュア空戦の末、 閃きメカが追い込まれて撃墜され、謎の飛行メカは去って行く……果たしてそれは、敵か、味方か?
 「空を飛ぶ炎神なんて……俺たち、知らないぜ」

→〔その4へ続く〕

(2013年12月11日,2014年3月12日)
(2017年4月9日 改訂)
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