■『特捜戦隊デカレンジャー』感想・総括■


“ジャッジメント!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜戦隊デカレンジャー』 感想まとめの、総括です。

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☆総括☆

 Super cool に Perfect!

 以上(待て)

 悪い癖で、視聴完了して数年経ってからの総括になってしまったのですが、しばらく経って何が一番心に残ったかと問われると、 『特捜戦隊デカレンジャー』=「姿形は変わっても、戸増宝児は永遠に不滅なんだ!!」だな、と(おぃ)
 「ジャッジメント!」「百鬼夜行をぶったぎる! 地獄の番犬、デカマスター!」など、色々インパクトの強い作品ですが、 偉大なる残念ブルー・ホージーさんの破壊力は、戦隊史に燦然と光り輝くと思います。
 感想本文にも書きましたが、地球署の誇るエリートから一瞬で転落し、火の玉野郎と同じ駄目男フォルダに詰め込まれ、 事あるごとに粗雑な扱いを受け続け、「努力の天才」という切なすぎる居場所に落ち着いてから最終回直前、 全部キャラ作りだったという奇跡の着地。
 今作の武上脚本回にはどうも首をひねる出来のものが多いのですが、ホントこの、第47話だけでも、 武上さんは素晴らしい仕事でした(笑)

 そんなホージーさんを始めとして、やる時はやる地球署の頭脳センちゃん、クールで格好いいけどちょっとズレているジャスミン、 スタッフがひたすら推しまくるウメコ、真のヒロイン力とは何かを見せつけてくれた永遠のアイドル白鳥スワン、 ひとり80年代ヒーロー地獄の番犬ドギー・クルーガー、暗躍する宇宙商人アブレラ、とキャラクターの魅力が横溢。
 …………バン? テツ? 知らない子ですね(おぃ)
 本来ならホージーさんと対比して互いを引き立て合う筈だったバンは、初動の失敗で諸共に崖から転落、 エリート追加戦士だった筈のテツは、宇宙刑事イズムを体現する最強鬼畜キャラが既に赴任済みの超アウェーと、 どうもこの二人は不遇だった印象(^^;
 バンは横手美智子が参加した第20話でなんとか立て直された後、「正義は勝ぁつ!!」キャラへと移行。 それを「気持ちで勝てるなら、スペシャルポリスなんていらないですよね」と、 バッサリ袈裟懸けに切り捨てた立ち上がりは最高だったテツですが、オカルトにかぶれて転落。 その後、スワットモードに置き去りにされてしまって以降は涙無しでは見られません。思えば2010年代なら、 最終クール前の追加追加武装枠で、テツの強化アイテム入手の可能性もありましたので、こんな所も不運というか。

 特に好きなキャラを5人挙げるなら、ボス、センちゃん、スワンさん、ジャスミン、…………ホージー……さん?
 正直、デカマスターの投入で話に歪みが生じた部分もありますが、稲田徹さんが好きという事もあり、ボスには全面降伏。 ジョーカーキャラでありますが、デカレンジャーの戦いがあくまで“警察としての職務”なので、どうしようもない時を除いては、 育成の意味もあって部下の仕事に手を出さない、というのは理由付けとして収まったと思います。ジョーカーであると同時に、 師匠として弟子をスパルタで育てる、山地哲山(『世界忍者戦ジライヤ』)と近いポジションといえるでしょうか。
 センちゃんは閃きの天才にしてキレると強い昼行灯で、おまけに女性が絡むとパワーアップ、 とどうしてここまでおいしい設定が盛られたのか(笑) 個人回に恵まれた印象がありますが、フローラ回といい、 スケコマシ回といい、非常に格好いいヒーロー像を見せてくれました。
 スワンさんはなんというか……別格。今作、ところどころ開き直っている節が見え隠れしますが、 スワンさんの、石野真子だから仕方ない、は、うん、貫かれたので仕方ない。
 ジャスミンは、超能力が便利すぎるが故にそれに負けないキャラクター性を付けようとして、それが非常に成功したのかと思いますが、 格好良くてちょっとピンぼけ、というのが戦隊女性メンバー史上でも異彩を放ち、絶妙な塩梅で傑作キャラになったと思います。
 ホージーさんは……くしくも同期の『仮面ライダーブレイド』橘さんと同じく、好きと嫌いとか超越したカテゴリです(笑)

 感想本文でも触れましたが、幾つかオマージュもあるなど、恐らくはベースに《ウルトラ》シリーズ(特に『セブン』)への意識があって、 “悪の組織と戦う”というよりも“多彩な犯罪宇宙人と対決する”コンセプトで一話完結性が強く、 それを連続ストーリーとして見せる為にキャラクター重視、という手法は上手く行ったと思います。
 一方で、出来不出来の波が激しくなりましたが、これは作風として致し方ない面はあったでしょうか。個人的には、 複数のゲストライターを招くなどしてほしかった所。
 もう一つの不満点は、“プロフェッショナルチームの物語”だと思っていたら、“若く未熟な刑事達の成長物語”にすり替わってしまった事。 できればもっとハイレベルなプロとプロの戦いを見たかったのですが、メンバーのミスから事件を広げるなど話が作りやすいですし、 戦隊としてはその方がキャラへ感情移入してもらいやすいという意識だったのでしょうか。
 プロフェッショナルチームvs犯罪者×特撮ヒーロー、としては、過去に『特警ウインスペクター』(1990)という傑作がありましたので、 どうしても比較して物足りなく見えてしまう部分がありました(^^;
 『ウインスペクター』見ていなかったら、あまり気にならなかった部分かもしれませんが。

 作品の忘れられない要素としては、力の入ったメカ特撮。
 特に出撃シーンから始まっての、デカレンジャーロボ・ビルアドアップ! は素晴らしかったです。5体のマシンが、 がちゃこんがちゃこん繋がって立ち上がって人型のロボットになる! というプロセスをしっかりやってくれたのが素敵。 後半、デカウイングロボになるとCGになってしまって残念でしたが。
 メカ特撮には力を入れる前提だったのか、デカレンジャーロボは非常に格好良く、戦隊ロボの中でもお気に入りの一つ。……その後、 後に行くほどロボットの印象が薄くなっていくのも残念でしたが。
 何が悪いって、スーパーデカレンジャーロボが悪かったと思います。
 つまり、特凶が悪い(とばっちり)。

 見ているときは波の激しい印象だったのですが、振り返ってみると好印象が勝るのは、やはりキャラクターの力かな、と。 特撮刑事ドラマとしては物足りない点も多いのですが、一話の中での起承転結に出来る限りこだわった構成で、 印象深い一作となりました。


★構成分析★
 〔評〕は、大雑把な各エピソードの評価。◎……名作、○……それなりに面白かった、−……普通、×……駄目回。
 ただし、どこに基準を置くか、を考えるとややこしくなるので、相対的というよりは印象評価だと思ってください。 記憶と感想を読み返してのものなので、微妙にリアルタイムで見た時と、違っている所もあるかもしれません。

話数監督脚本メインキャラ備考
渡辺勝也荒川稔久―― 〔赤座伴番、宇宙警察地球署に赴任す〕
渡辺勝也荒川稔久――
辻野正人荒川稔久赤×青
辻野正人荒川稔久赤×青 ×
竹本昇荒川稔久桃×マーフィー 〔マーフィー(Dバズーカ)登場〕
竹本昇荒川稔久
渡辺勝也荒川稔久
渡辺勝也荒川稔久
坂本太郎武上純希 ×
10坂本太郎武上純希 ×
11中澤祥次郎荒川稔久
12中澤祥次郎荒川稔久
13竹本昇荒川稔久ボス 〔デカマスター登場〕
14竹本昇荒川稔久赤×ボス
15渡辺勝也武上純希 〔デカベースクローラー起動〕
16渡辺勝也武上純希 〔デカベースロボ起動〕
17渡辺勝也荒川稔久黄×桃
18坂本太郎荒川稔久 〔太秦回〕
19坂本太郎荒川稔久
20竹本昇横手美智子
21竹本昇武上純希
22中澤祥次郎荒川稔久テツ 〔デカブレイク&デカバイクロボ登場〕
23中澤祥次郎荒川稔久―― 〔ライディングデカレンジャーロボ登場〕
24辻野正人武上純希テツ×桃 ×
25辻野正人武上純希
26坂本太郎横手美智子青×赤×テツ 〔スーパーデカレンジャーロボ登場〕×
27坂本太郎荒川稔久テツ×黄
28竹本昇武上純希テツ
29竹本昇武上純希テツ ×
30中澤祥次郎荒川稔久
31中澤祥次郎荒川稔久
32辻野正人横手美智子
33辻野正人横手美智子 〔SWATモード登場〕
34鈴村展弘武上純希 〔デカウイングロボ登場〕×
35鈴村展弘武上純希 ×
36渡辺勝也横手美智子スワン×ボス
37渡辺勝也荒川稔久
38竹本昇武上純希
39竹本昇荒川稔久桃×黄
40中澤祥次郎横手美智子テツ
41中澤祥次郎武上純希緑×赤
42坂本太郎荒川稔久青×赤
43坂本太郎荒川稔久青×赤
44鈴村展弘武上純希ボス ×
45鈴村展弘横手美智子――
46中澤祥次郎荒川稔久桃×緑
47中澤祥次郎武上純希青×黄
48竹本昇横手美智子赤×テツ
49竹本昇荒川稔久――
50竹本昇荒川稔久―― 〔エージェント・アブレラ、デリート〕

(演出担当/竹本昇:13本 中澤祥次郎:10本 渡辺勝也:9本 坂本太郎:8本 辻野正人:6本 鈴村展弘:4本)
(脚本担当/荒川稔久:27本 武上純希:15本 横手美智子:8本)


 演出陣では前年まで主力だった諸田監督が『仮面ライダーブレイド』に回り、辻野監督が『ギンガマン』以来の戦隊参加。 この後、東映ヒーロー作品の主力監督になっていく中澤監督が完全にローテ入りし、中堅の竹本−渡辺を軸に、 ベテラン坂本、『仮面ライダーアギト』でデビューした鈴村、と新旧入り交じった陣容。
 脚本はメインライターの荒川稔久が全体の半分強を担当し、サブの武上純希が約3分の1。中盤からは横手美智子が加わり、 荒川、横手は引き続き翌年の『マジレンジャー』にも参加。特に荒川稔久は、『アバレ』『デカ』『マジ』で、 3年連続二桁の脚本を執筆。
 個人的には、もう少し脚本家の数を使って話のバリエーションを広げても良かったのではと思うのですが、 リアリティバランスの取り方が難しい世界観なので、過去にも荒川さんと一緒に仕事をしており、 『ウルトラ』シリーズに造詣のある武上さんがかなりの本数を担当したのかな、と思われます。
 途中参加の横手美智子はなんといっても第20話の出来が良く、それまでどうも不遇だったバンの魅力を上手く引き出した上で、 “チームとしてのデカレンジャー”を描く事でその後の物語全体に良い影響を及ぼしました。

 メイン回の配分は、
 〔赤:16(8) 青:9(3) 緑:7(5) 黄:8(4) 桃:7(2) テツ:8(4) ボス:4(2) スワン:1 マーフィー:1〕
 ※()内は単独メイン。
 上で不遇と書いたバンですが、メイン回が少ないのではなく、メイン回でも扱いが微妙、メインでないともっと微妙、 という不遇だったので、メイン回の数自体は標準むしろやや多めぐらい。
 他は大体平均的ですが、ボスが4回カウントされているのが、今作の一つ特徴といえるでしょうか(笑)
 もう一つ特徴的なのは、物語の大きく動くエピソード(新メカ登場など)でも、きっちりキャラクターエピソードになっており、 それも、何となく赤メイン、という造りにはなっていない事。結果として、 新ロボ登場とエピソード内容が分離してしまった第26話(スデカロボ初登場)などの例もありますが、 キャラクターの強さ、というのは今作の長所として徹底した構造だったといえます。
 これは敵が組織だっていない為に、敵サイドの退場劇などを描く必要が無かった為、デカレンジャー間の関係性に注力できたという要素があり、 コンセプトが上手く作品の魅力に繋がっていました。
 並べてみて一つ気付いたのは、“初期メンバー(青、緑、黄、桃)の関係性は完成している”という前提にのっとって、 女性コンビ回を除くと、これら4人の間のコンビメイン回というのが、最終回直前まで存在しない事。存在しない上で、 刑事部屋での会話シーンなどで4人の関係性を少しずつ見せていくという手法がしっかり機能していたと思います。
 この好き嫌いは人による所だとは思いますが、それにより、第47話の大どんでん返しが成立したので、 個人的にはアリ(笑)

 敵組織側の出入りが無い関係でイベントが比較的少ない今作では、後期ロボの登場に合わせて戦隊そのものがパワーアップ。 前作『アバレンジャー』のアバレマックスの発展系といえますが、以後シリーズにより、追加戦士とは別に強化展開がイベント化。
 メカ関係では、1号ロボと2号ロボが合体するのではなく、1号ロボと3号ロボが合体するというのが特徴的といえます。 そして、2号ロボはラスボスに(笑) 終わってみれば実質的な最強メカが第16話で登場、 というのは相当変わっているでしょうか(笑)

 星取りですが、×をつけたのは、ホージーの落とし方があまりにご都合過ぎて序盤の大きなつまづきとなった第4話・ バンが警官として最低になりすぎた第9−10話・ネゴシエイトの内容が無茶すぎる上に言葉遊びが面白くならなかった第24話・ ホージーの着地が面白くなかった上に新ロボ登場がおまけになってしまった第26話・ 天才的犯罪芸術家の筈のジェニオが蓋を開けたらチープでつまらない人だった第29話・ 今作ではキーにしてはいけない部分に踏み込んだ上で無駄にリアリティバランスを傷つけただけで終わった第34&35話・ 全編に渡って破綻しすぎの第44話。
 24と26はやや厳しめですが、他は純粋に酷い回。ワーストをあげるなら第44話か。
 逆に◎をつけたのは、傑作パイロット版の後編第2話・百鬼夜行をぶったぎる第14話・ 不遇レッドを引き上げつつ全キャラの活躍を見事に描いた第20話・煩悩とテクニックがハイレベルで融合した傑作第39話・ 見たかった『デカレンジャー』を見せてくれた最終回。
 ワンエピソードの出来、という点では、第39話は戦隊史上でもトップクラスの1本だと思います。また、最初と最後の出来が凄くいい、 というのは今作の大きな長所。
 流れで見ると、24−35話間が低調で、“追加戦士がもう一つしっくり来なかったパターン”だな、と。
 今作の短所として、「プロフェッショナルが描けなかった」というのがあるのですが、 その影響で序盤にホージーが路線変更の憂き目に遭い、真エリートとして降臨したテツも結局、 オカルトにはまってずぶずぶと蟻地獄にはまっていく事に。
 その為、既存メンバーとの対比がはまらず、かといって馴染ませると特色が薄く、とやや中途半端な扱いになってしまいました。 また、戦力的には既にデカマスターというジョーカーが存在する為、途中参加の強キャラとしても非常に微妙な位置づけに。
 作品自体が、単発エピソードをキャラクターの魅力で繋いでいく、という構造なので、 その辺りも途中参加のテツはやや不遇になった面はあるかと思いますが。
 総合的には、がくっと酷い回もあるものの、前半と終盤をしっかりまとめてきた作品。

(2017年3月17日)

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