■『特捜戦隊デカレンジャー』感想まとめ7■


“SWAT! DEKARANGER SWAT MODE!
どんな奇跡も起こせるぜ キメちまうぜ
SWAT ON デカレンジャー”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜戦隊デカレンジャー』 感想の、まとめ7(Episode.31〜Episode.35)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕 ・  〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ8〕 ・  〔まとめ9〕 ・ 〔まとめ10〕 ・  〔総括&構成分析〕


◆Episode.31「プリンセス・トレーニング」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久)
 バンとジャスミンは、パトロール中にウメコに瓜二つなお姫様を助ける。彼女は、トカーサ星のプリンセス、イオ。 ある伝統行事の為に極秘裏に地球を訪問中、侍従達の元を逃げ出してきたのであった。
 引っ込み思案ではっきりしないイオから断片的に事情を聞き出したデカレンジャーは、 どうやら内部で暗殺計画が進行しているらしいと盛り上がり、そっくりのウメコがプリンセスになりすまし、囮捜査を行う事に。 イオに成り代わっての憧れのプリンセスライフ……を期待していたウメコだが、彼女を待っていたのは、 遙か昔に地球を訪れた先祖が地球で感銘を受けた様々な出来事をミックスした、王家の伝統行事であった。
 いきなり犬がぐいぐい顔を近づけてきたり、目の前でチンピラもといバンがすごんでいたり、 背の高いの(ホージー&センちゃん)が背後を囲んでいたり、 お姫様に対する事情聴取が友好的とはほど遠いのですが、それが宇宙警察スピリット。
 何故か頭の上に奇妙な壺を載せ、荒縄で縛られた状態で4時間の正座という荒行に挑む事になるウメコ。 それを物陰から見つめるデカレンジャー、とウメコの制服姿のイオ。
 「本当なら、あれをわたくしが……良かった……」
 ひたすら続く謎の儀式……どうも王家の先祖は、地球で少林寺辺りに滞在していた模様。
 「では、次に、ここから飛び降りていただきます」
 「嘘でしょ? しかも、なんでまた壺?!」
 「決まりですから」
 老執事に押し切られ、壺を片手に吊り橋からバンジーするウメコ。一昔前なら素で落とされた気がしますが、 CG処理された所に文明の進歩と優しさを見ます。
 「……よく弾みますね」
 「どうして笑ってられるんですか?」
 「……え?」
 命がけで囮捜査を行っているウメコの様子に微笑を見せるイオの態度を訝しんだバンが問い詰めた結果、 実は暗殺計画など無かった事が判明する。儀式が嫌で逃げ出したイオは、デカレンジャーが早合点しているのを幸い、 気の弱さもあってすり替わりに同意してしまったのである。すり替わりを中止しようとウメコ達の元へと向かう6人だが、 その目の前で、火の輪くぐりをさせられそうになっていたウメコが凶弾に倒れる。
 「本当に居たのか、暗殺者が!」
 これぞまさしく、嘘から出た真……男達は狙撃地点に向かい、まさかの事態に膝をつくイオ姫だったが、その前で、 むっくり起き上がるウメコ。暗殺に備えて防弾チョッキを着ていたウメコは、狙撃手に指示を出していた女侍従を逮捕。その勢いで、 「決まりですから」と無茶な儀式を押しつける老執事にダメ出し。
 「凄いです……あの爺やが、たじろいでいるなんて」
 更に、気の弱い姫にもダメ出し。
 「理不尽な要求には、断固抵抗するべきよ!」
 ウメコはジャスミンと共に宇宙の殺し屋プコス星人ジャッキルに苦戦する男達の元へ駆けつけ、 「防弾チョッキ着てたって痛かったんだからキィッッック!」が炸裂。ジャッキルは怪重機キャノングラディエーター3を呼び出すが、 即座にスデカロボが起動。
 「プコス星人ジャッキル、57の星における殺人、および王女様の殺人未遂の罪で、ジャッジメント!」
 哀れ怪重機はガトリングパンチで星となり、デリート完了。
 「これにて一件コンプリート。今日はほんとに、疲れたびー」
 「まねっこだ」
 「へへー」
 最後は、
 「わたくし、ウメコさんから学びました。本当に言いたいことは、勇気を持って、きちんと言うべきなのだと」
 と、お姫様が成長して、めでたしめでたし。
 定番の二役エピソードで可も無く不可も無く。ウメコ話は毎度の事ながら、ウメコ可愛いからいいよね?  というスタッフの魂の声が画面から溢れてきます。
 ところで、もはや戦闘で取り立てて役に立たないブレイクは、そろそろ修行の旅に出るべきだと思う。

◆Episode.32「ディシプリン・マーチ」◆ (監督:辻野正人 脚本:横手美智子)
 ディシプリンって何だろう、と思ったら「訓練」とか「鍛錬」の意との事。
 大量破壊兵器のエネルギー源となる鉱石ギュータニウムを密貿易しようとした宇宙マフィア・ズンダーズファミリーのドン、 カラカズ星人サノーアの逮捕に成功したデカレンジャー。だが、地球へ運び込まれた筈のギュータニウムは押収した証拠品の中からは発見されず、 特凶扱いのサノーアの捜査の為、ブレイクは一度、宇宙警察本部へ。
 必ず取り調べで口を割らせてやる、と意気込むバン、本日は気合い全開。
 「なんたって俺は、宇宙一のスペシャルポリスにならないといけないからな」
 「宇宙一?」
 「昨日手紙をもらったんだ。あの子のお母さんから」
 1−2話でバンの背景補強として使われた、逃走中のドン・モヤイダによって殺害された少年がここで拾われ、 少年のかなえられなかった「宇宙一のスペシャルポリスになる」という夢を、代わりに果たす、と決意を新たに燃えているバン。 当時の感想でも書きましたが、これは“盛り上がりを作るために殺した責任”を取って、その場限りで終わらせてほしくない部分だったので、 だいぶ間が空きましたが、流されなかったのは非常に嬉しい。
 その頃、居眠りしていてドンのピンチに間に合わなかったサノーアの部下、ボッツ星人ゾータクがエージェント・アブレラと接触。 最新型強化服になるマッスルギアを購入し、装着する。サノーアの自白に基づきデカレンジャーはギュータニウムの保管場所へと向かうが、 道中、余裕でバンとホージーに軽口を叩くサノーア。
 「2人は、どっちが親分で、どっちが子分なんだい?」
 「親分子分なんてない」
 「仲間で、相棒だ!」
 「甘いねぇ。戦いの場で大事なのは強力な指揮官と、それに従う兵隊だ。仲良しじゃない」
 ちょっと前の回から気になっていたのですが(メモするの忘れたのですが、26話ぐらいか?)、ホージーさんの「相棒って言うな」は、 どうも意識的に止めたっぽい。
 しかしそれにしても改めて、司法取引も情状酌量の余地もほぼ存在しない宇宙警察の法の下では、 白状した途端にデリートされているのが目に見えているので重犯罪者が取り調べにまともに付き合う必要性が限りなく薄いわけですが (故に大抵の場合、即時滅殺するという血のスパイラル)、そんなデリートの時が間近に迫っているにもかかわらず、 余裕の態度を崩さないサノーア。その時、サノーアを乗せたパトカーが、見えない何者かの襲撃を受ける!
 それはマッスルスーツを身に纏い、光学迷彩でステルスしたゾータクの奇襲であった。圧倒的な強化服の力の前に5人は叩きのめされ、 サノーアの身柄を奪われてしまう。
 「おやおや。新商品の性能は、上々のようだな。デカレンジャーが手も足も出ないとあっては、これは売れるだろう」
 アブレラさん、わざわざ厭味を言いに登場(笑)
 相変わらず、手先の演技がダンディズム。
 かくて最新型強化服の前に惨敗を喫したデカレンジャー……最近、弱体化が激しい、というか、 地球署の現状装備では幾らスワンさんがグレーゾーンな改造を行っても過激化するアリエナイザー犯罪に対して分が悪いと判断したボスは、 5人に特殊カリキュラムの受講を命じる。
 その名を、SWATモード。
 pecial eapons nd actics――特殊装備SWATベストとDリボルバーを使いこなす、 スペシャルポリスの特殊任務形態である。
 「スワット参上、スワット解決」
 ボスは血気に逸り渋るバンを説き伏せ、5人は地球の治安をマスターとブレイクに任せ、SWATカリキュラムを受ける為に、 惑星カダへと向かう……。
 宇宙船の中で姿を見せたSWATカリキュラムの教官は、トート星人ブンター。
 アヌビス、ホルス、トート、と宇宙警察の上官はエジプト神話の神様がモチーフになっていますが、ブンターはトート神という事で、 ヒヒの顔。
 「俺を宇宙一のスペシャルポリスにしてくれるなら、どんな教官だって構わない」
 手紙と、少年の形見のペンダントを手に、真剣モードのバン。
 ところが惑星カダを目前に、宇宙船が何者かの奇襲を受け、緊急着陸。酸素濃度は地球の半分、夜になれば気温は零下30度、 というカダの荒野に放り出された6人は、敵襲を避けながら訓練所へ向かおうとするが、途中で教官がはぐれてしまう。 教官を探しに戻ろうとするバンを、まずは訓練所へ向かう事を優先し、それから援軍を呼ぶべきだ、と説得するホージー。 一度は納得したバンだったが、訓練所までもう少しという所で負傷した教官から連絡が入り、 バンは教官を助けに謎の敵の元へ乗り込む事を選択する。
 「宇宙一のスペシャルポリスなら、見捨てたりしない」
 「今やられたら、宇宙一にも何にもなれないだろうが!」
 「今助けにいかなきゃ、宇宙一最低だ!」
 今更ですが、非常に今更ですが、どちらが完全な正解、というのが無い状況で、バンとホージーをうまく対比。
 無謀と隣り合わせの熱血、冷血と隣り合わせの慎重。
 外から見ていたからこそ穴が見えたという部分はあるかと思いますが、現状、途中参加の横手脚本が最も、 当初に想定されていたとおぼしきバンとホージーの関係を上手く描いています。まあ、 凸凹コンビがコンビで完成されすぎると他の3人が外野になってしまうので、戦隊では、 あまり綺麗にはめすぎるわけにもいかないのですが(そういう意味では、ホージーさんのキャラ付けはテンプレにこだわりすぎて、 コンセプトから戦隊向きではなかった、とも言えます)。
 バンは変身して教官から連絡のあった森へと走り、それを追う4人。だが鬱蒼と茂る森の中で二手に分かれた4人は、 次々と何者かの襲撃を受けて行動不能に陥る――。
 「この近さで味方か敵かもわからないのか?」
 そして教官を発見したと思ったレッドだが、それはダミー。武器のエネルギー切れを起こしたレッドは、背中に銃を突き付けられる……
 「この程度でスペシャルポリスとはよく言ったもんだ。なっちゃいないな」
 その背後に立っていたのは、ブンター教官……そう、全ては最初から、SWATカリキュラムのテストだったのである。
 見えていたネタではありますが、このために宇宙船一隻をあっさり破壊する宇宙警察が怖い。
 「宇宙船が不時着した時からテストは始まっていたのさ。おまえらの評価は簡単だ。グズでノロマなウスラトンカチ、 それが全てだ」
 「抜き打ちテストなんて汚いっすよ!」
 「汚いだと?」
 いつもの調子でつっかかってきたバンを、殴り飛ばす教官。
 「じゃあ何か? 毎回敵が予告して、ハッタリも嘘も無しで、襲ってきてくれると思うのか!」
 鬼軍曹モードに入ったブンターは、立ち尽くす5人を容赦なく罵倒する。
 「5人も居ながら、クラレンスの遊び相手も務まらんとはな」
 森で4人を戦闘不能にしたのは、マーフィー似の犬型ロボット、クラレンスK9。最近すっかり存在意義を失っているマーフィーですが、 これは勿体ないので造形物流用なのか。
 「中でも、グズノロ一等賞はおまえだ。戦列を乱し、見事チームを全滅に導いた。第一、サノーアに逃げられたのは、 相手の強化服のせいじゃない。おまえたちが、どうしようもないクズだからだ」
 た の し い (笑)
 「そんなクズが、SWATモードの特訓をやるだけ無駄なんだよ。おまえ達には、百万年早い。やめちまえ!」
 「やめません」
 皆が言葉をなくす中、即答するバン。
 「なんだと? 聞こえなかったのか?」
 「訓練をお願いします。俺は、宇宙一のスペシャルポリスになるんです!」
 「宇宙一のスペシャルポリスか……一つだけ予告してやる。無 理 だ」
 SWATカリキュラムに赴いたデカレンジャーの前に立ちふさがった巨大な壁、鬼軍曹ブンター教官。果たして5人は、 無事にSWATモードを習得する事が出来るのか?! 一方、地球ではサノーアもマッスルギアを入手。 地球署が押収した証拠品の中に隠されたギュータニウムを取り戻すべく、デカベース強襲を企てていた……。
 惑星カダに入ってからの映像は、異邦の惑星の雰囲気を出す為に、地平線を上手く使って画面に広がりを持たせた演出。 ロケ地はお馴染み、浜松・中田島砂丘でしょうか? ……というか、それで惑星「カダ」なのかもしかして。
 そしてデカレンジャーのひみつ☆コーナーは、まさかのアブレラさん、通販乗っ取り。
 「このマッスルブレスで、君もいますぐ装着だ!」
 「「マッスル・マッスル!!」」
 フォーメーションアタックなどで誤魔化していたものの、明らかに弱体化の目立っていたデカレンジャーのパワーアップ編。 強化ネタも、警察に絡めてきました。なお日本の警察もSAT(Special Assault Team) という特殊部隊があるのですが、「SWATモード」と「SATモード」だったら、まあ、前者の方が音の据わりはいいか。
 にしても、何かと使い勝手がよく遂やってしまう『フルメタル・ジャケット』ネタは『デカレン』では使わないでおこうと封印していたのですが、 まさか公式に本編の方で突っ込んでくるとは(笑)
 「腐った性根を叩き直してやる!」
 「「「「「ロジャー!」」」」」
 「サー・イエッサーだ!」
 「「「「「サー・イエッサー!」」」」」
 次回、逃げるヤツはアリエナイザーだ! 逃げないヤツは訓練されたアリエナイザーだ!
 ホント、辺境は地獄だぜ!

◆Episode.33「スワットモード・オン」◆ (監督:辻野正人 脚本:横手美智子)
 「おまえたちはただの訓練生だ。腐った性根をたたき直してやる」
 「「「「「ロジャー!」」」」」
 「ロジャーじゃない。サー・イエッサーだ!」
 「「「「「サー・イエッサー!」」」」」
 「聞こえん」
 「「「「「サー・イエッサー!」」」」」
 「もう一度!」
 「「「「「サー・イエッサー!」」」」」
 「なぜスペシャルポリスになった?」
 「犯罪者を捕まえる為です!」
 「戦闘の顔をしろ」
 「サー……」
 「デリートする時の顔だ!」
 「サー・イエッサー!」
 「これがデリートする時の顔だ。やってみろ!」
 「サー・イエッサー!」
 「それでデリートできるか! 気合いを入れろ!」
 「サー・イエッサー!」
 「貴様らグズノロは宇宙警察を愛しているか?」
 「「「「「生涯忠誠! 命懸けて! ガンホー! ガンホー! ガンホー!」」」」」
 「草を育てるものは?」
 「「「「「「熱き血だ! 血だ! 血だ!」」」」」
 「俺たちの商売は何だ、ウスラトンカチ?」
 「「「「「デリートだ! デリートだ! デリートだ!」」」」」
 そんな感じでバン達がSWATカリキュラムを受けている頃、地球署にテツが帰還。 押収品を本部で精査したところ隠されていたギュータニウムが無事に発見されるが、 それを知らないサノーアとゾータクがデカベースを直接攻撃してくるかもしれないと、警戒レベルを引き上げて待ち受ける事になる。 だがアブレラが、ギュータニウムが本部へ移動済みだという情報を両者へと流し、 宇宙警察との交換取引を持ちかければいい……と悪魔の微笑を浮かべる。
 一方カダでは、走り込みを中心としたハードなしごきに、ぐったりとして食事も喉を通らないセンちゃん、ジャスミン、ウメコ。
 体力馬鹿のバンはともかく、しっかりついていけている辺り、やはりホージーさんは肉体派エリート。
 訓練中、SWATモードの習得に気が逸るあまり、ウメコとジャスミンが倒れたのにも気付かず1人で走るバンは、 制限時間に間に合うも、教官から他の4人がやってくるまでの腕立て伏せを課される。絶対に宇宙一のスペシャルポリスになってみせる、 というバンに教官は問う。
 「なら、宇宙一のスペシャルポリスとは、なんだ?」
 「サー・イエ……」
 「一つだけ教えてやろう。答はおまえが進む先には、ない。答があるとしたら、おまえのようなヤツには決して見えないところだ。 わかったか?」
 「わかりません! サー!」
 「わからなければ、おまえは宇宙一のスペシャルポリスなどには、なれん。未来永劫、金輪際な!」
 一方地球では、アブレラから情報を得たサノーアとゾータクがデカベースではなく街を無差別攻撃し、出動するデカマスター&ブレイク。 2人が名乗って揃い踏みはここまでにない取り合わせであり格好良く、ちょっと前までなら文字通りの最凶コンビだったわけですが………… わけですが……あれ、おかしいな、最近どうも、夜明けが……霞んで、見えにくい……な…………なんか前が暗いけどこれは涙?  涙なの? エリートだから、涙が出ちゃうの?
 光速拳ライトニングフィストがあっさり止められているのは何者かの幻術攻撃でありこれはきっと現実じゃないんだ多分そうだスタンド攻撃なんだ嘘だと言ってよ特凶!
 マッスルゾータクはデカブレイクを軽くひねり、Dソードベガの攻撃さえ受け止める。更に、 潜んでいたマッスルサノーアの銃撃により変身の解けたテツが人質にされてしまい、マスターも変身解除。 2人はその身柄を抑えられてしまう……。
 その頃、訓練中の5人は大量のトラップの仕掛けてある洞窟へと向かっていたが、相変わらずバンは暴走気味。 そしてホージーをかばったセンちゃんが足を負傷してしまう。制限時間に間に合わなければカリキュラムは不合格で地球へ強制送還されてしまう……
 「おまえだけでも先に行け。宇宙一の、スペシャルポリスになるんだろ」
 ホージーに促されたバンは独り洞窟の奥へと向かうが、落とし穴に落下。ギリギリで縁に捕まって助かるが、 たった独りで先行したバンを助けてくれる仲間は、誰もいない……。
 「そうだよな、俺だけ先に来たんだから……」
 (答はおまえの進む先にはない。おまえのようなヤツには決して見えないところだ)
 「そうか、俺は見ようとしてなかったんだ……」
 宇宙一のスペシャルポリスになるとは、どういう事なのか。
 バンはタイムオーバーを覚悟で仲間達の所へ駆け戻り、制限時間には45分オーバーするものの、 ミッションを終えた5人は揃って教官の前に並ぶ。
 「1人なら間に合った筈だ。なぜ戻った?」
 「答が見つかったからです。サー!」
 「ほーう。では聞こう。宇宙一のスペシャルポリスとは、なんだ?」
 言葉と意識だけが先行して、その本質を考えようとしていなかった自分に気付くバン。
 「宇宙一のスペシャルポリスとは、宇宙一のチームの一員になることです、サー!」
 たった1人で出来る事には限界がある。スペシャルポリスの真の力とは、ずば抜けた個人ではない。悪を憎み、正義を愛する心を持ち、 メンバーそれぞれの個性で補い合う事でこそ、どこまでも強くなれるのだ。
 「只今を持って訓練を終了とする! ――SWATモードを認めるということだ。もはや、教える事はなにもない」
 折角の特訓展開だったのですが、バンに焦点を合わせすぎた為に、“バンが真のチームプレイを身につけた”ら、 それでSWATモードに合格してしまい…………主な問題はバンだった? みたいになってしまったのは、少々残念。 出来れば各人が自分の弱点を見つめ直し、チームの連携によって難関を乗り越える、ような展開が欲しかったですが、 それやるともう1話増えてしまうので、そこまでは出来なかったか。
 端折られた数日間に色々あった、という事にしておきたい。
 苦難の末、SWATカリキュラムに合格した5人だったが、そこへ地球のスワンから緊急通信が入る。 なんとサノーアがボスとテツを人質に取り、宇宙警察本部にギュータニウムとの交換を要求してきたのである。
 「おまえたちのライセンスにSWATモードのデータを転送しておいた。全員速やかに地球に戻り、敵のケツを吹っ飛ばしてこい!」
 「「「「「サー・イエッサー!」」」」」
 「違う! ロジャーだ」
 「「「「「ロジャー!」」」」」
 ここは冒頭のパロディをもう一回転させて、面白く使いました。
 地球では、囚われの2人が時限爆弾を仕掛けられていた。
 ……なんだろうこの、テツの絶望的足手まとい感(笑)
 にしてもサノーアさんは、鉱石一つのために宇宙警察全てを敵に回すとか、 いい度胸すぎます(^^; 仮にこの取引に成功しても、絶対に文字通り宇宙の果てまで追い詰められて、 犯罪史に名を残すような悲惨な最期を迎える事になると思うのですが。
 ――しかし勿論、宇宙警察は犯罪者の要求になど応じはしない!
 大量のメカ人間と共に待ち受けるゾータクの元へ、正面から壁をぶち破り、今、デカレンジャーSWATモードが突入する……!

SWAT参上! SWAT解決!
人呼んで、殺戮の、ヒーロー!!

デカレンジャーSWAaaaaaaT!!


 デカレンジャーSWATモードは、演出といい、見た目といい、殺意しか感じません。
 テーマ曲も、女声コーラスからメタルに繋がるという、ゲームだったら間違いなく、ボス敵との戦闘BGMですし。
 SWATモードだけで使用を許可される、スペシャルポリスの誇る強力かつ高性能兵器Dリボルバーで、 メカ人間に鉛玉の雨を降らせるデカレンジャー。
 ……リボルバーではなくて、アサルトライフルですよね、それ。
 SWATモードは圧倒的な火力と追加装備の性能で、瞬く間に ベトコン 敵戦力をジャスティスしていく。
 ヒャッハー、テロリストどもは消毒だ!
 逃げるヤツはアリエナイザーだ!
 逃げないヤツは訓練されたアリエナイザーだ!
 メカ人間どもは動きがのろくさいから殺しやすいぜ!
 HAHAHA!!
 SWATモードは、通常のスーツの上からSWATベストを身につけ、マスク周りにも装備が追加されるのですが、 インカム好きとしては、ほぼ意味も無くインカムがついているのがときめきます。
 圧倒的火力、そして暗視や透視装置で次々と敵アジト内部を制圧したデカレンシャーは、ボスとテツが囚われている部屋に突入。 先行した赤を青と黄がフォローする形で、見事にマッスルスーツの光学迷彩を打ち破る。
 「SWAT、S、W、A、TのTはタクティクス! 戦術だぜ」
 更に逃げようとしたサノーアとゾータクの後方から緑と桃が窓を突き破るという両面作戦も展開。 今回は惑星カダのミッションなどでもロープアクションを入れるなど、溜まっていた鬱憤を解消する編でもあるので、 アクションも派手かつ凝っています。
 「チームは命令したりされたりじゃねえ! 全員で動くからこそ、凄い事ができるんだ!」
 ……まあ、指揮系統も大事ですけどね(笑)
 「宇宙マフィア、ズンダーズファミリーのドン、サノーア、ならびにその一味ゾータク。組織犯罪による大量殺人、 及び宇宙警察官略取の罪で、ジャッジメント!」
 判決:もうギュータニウムも回収したし、さくっと消し炭にしちゃってOK☆
 Dリボルバーマックスパワーによる一斉射撃で、両者まとめて塵殺。デカレンジャーを子供扱いだったマッスルスーツをものともしない事で、 SWATモードのひたすら凶悪なお披露目となりました。
 マーフィー? 知らない犬ですね……。
 「これにて一件……」
 「「「「「コンプリート! いぇい!」」」」」
 一つのチームとして更なる進化を遂げ、拳を打ちあわせる5人。
 テツ? 知らない子ですね……。
 「おのれデカレンジャーSWATモード!」
 その姿を苦々しげに見つめ、飛び去るエージェント。わざわざ正式名称を言う所が、割と丁寧(笑)
 案の定、旧知の仲だったらしいブンター教官からは、ボスに通信。
 「俺とおまえは犬猿の仲だ。スワンならともかく、おまえに礼など言われたくない。だが、なかなか面白いクズどもだったよ」
 そのネタがやりたかったのか!
 でも相棒は犬型ロボット・クラレンスK9という、微妙な距離感。
 そして、先輩達のパワーアップを遠くから見つめる真エリート。
 「格好いいなぁ、SWATモード……」

 切ない……(笑)

 次回、マーフィーと一緒に自分探しの旅とか出そうな勢いです。
 大惨敗から特訓を経て超強化という、正統派のパワーアップ編。尺の都合で特訓部分が物足りない所は鉄板の 『フルメタル・ジャケット』ネタで誤魔化しましたが、装備品の強化とチームとしてのレベルアップを繋げ、 あくまで警察官としてのスキルアップである、という今作らしい構造となりました。
 個人的には、もう少し物語として特訓と成長に力点を置いて欲しかった所はありますが、後半のSWAT無双は必要な部分なので、 バランスとしてはまあ、仕方ないところか。
 緑「やったね」
 桃「これで、あの子との約束に一歩近づいた、って感じ?」
 黄「宇宙一のスペシャルポリスに、なれそう?」
 赤「ああ。だけど俺1人じゃない。みんなで、宇宙一のチームになろうぜ! なあ、相棒」
 青「ふん……相棒って言うな」
 ホージーさん、火力を手に入れ、やっぱり相棒を解消する。
 「本日をもって貴様らはウジ虫を卒業する。本日から貴様らはスペシャルポリスである。 兄弟の絆に結ばれる貴様らのくたばるその日まで、どこにいようと宇宙警察は貴様らの兄弟だ。多くは辺境の治安維持へ向かう。 ある者は二度と戻らない。だが肝に銘じておけ。スペシャルポリスは死ぬ。死ぬために我々は存在する。だが宇宙警察は永遠である。 つまり―――貴様らも永遠である!」
 次回、テツ&マーフィー、路線バスの旅へ。(予告には妄想が含まれる場合があります)

◆Episode.34「セレブ・ゲーム」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:武上純希)
 夜の街を練り歩く怪重機軍団を止めに入るスデカロボ。3対1でも強いと思われたスデカロボだが、 変形して空を飛ぶ怪重機ミリオンミサイルの高速機動攻撃を受けて倒れてしまう。
 折角強かったのにスデカ……短い、栄華だった……。
 危うしと思われたスデカロボだったが、ミリオンミサイルは何故か、市街地の一角を攻撃すると退却していく。
 「あいつら、何をやってたんだ? 目的は、なんなんだ……?」
 謎の怪重機軍団の破壊行為による被害は、エイリアンの一般市民1人の死亡。センちゃんとウメコは、 正体不明の飛行物体が目撃されたポイント231――エイリアンの高級居住区へと捜査に向かう。
 なぜかUFOの正式名称をcoolな発音で口にするホージーさんは、何がしたかったのか。 前回のSWAT特訓編でちょっとまとめ役みたいな活躍をしてしまったので、上げた分は下げないと気が済まないのか。
 「プアーな香りがするかと思ったら」
 別荘地で聞き込みを開始したセンちゃんとウメコは、レジャーで地球に逗留しているという、 イヤミ王子系デザインのサウザン星人ギネーカとその取り巻き、ハンドレ星人デーチョ、テンテ星人シロガーと遭遇。
 「セレブのみなさんはどんな遊びをなさるんですか?」
 「ゲームさ。一種の宝探しといってもいいだろう」
 だが、野暮な邪魔が入って見つかっていないと言うギネーカは、星間評議会議長であるパパの権力をちらつかせ、2人を追い払う。 ゲーム……野暮な邪魔……考え込むセンちゃんは、街で何故か地球に滞在していたハクタクと遭遇。 ハクタクの店から薬箱を盗んだチャンベーナ星人ギンという、猫型もふもふ宇宙人を捕まえる。
 ハクタク、まさかの再登場。地球滞在の理由は、「集めた宇宙漢方でセンちゃんとの結婚資金を稼いでからと思ってな」と、 モテスキルが効果を発揮しすぎた模様。
 「金は無くたって、心さえ豊かなら、恥ずかしい事はないんだぞ」
 センちゃんはお腹を減らしたギンにもんじゃ焼きをおごりながら諭し、それに心打たれるギン。貧しい宇宙移民であるギンは、 病気の母親の薬を買う為に拾った宝玉を換金しようとしたのだが、ハクタクにそれを拒否され、 思いあまって薬箱を盗んだのであった……ところが突然、その宝玉がブレスレットとなってギンの腕にはまってしまう。
 「次のゲームのキックオフのようだ」
 もんじゃ屋に迫る怪重機。「どうやら狙われてるのは、俺たちらしいぞ」とセンちゃんとギンは地下に逃げ込み、 センちゃんシンキング。
 「わかったぞ……ハンティングだ。ギネーカの言っていたゲームとは、狩りの事だ」
 そう、宝玉を身につけたものを狩り、それを回収する……それこそ、人を人とも思わぬ、極悪非道のセレブ・ゲームの正体であった。 そして地下道に直接入ってきたギネーカの銃弾に、倒れるギン。
 「おまえ達……自分達が何をしたのか、わかっているのか」
 「ゲームだろ」
 「なぁ、いつもやってることだよ。ははははは」
 「堅いこと言うなよ。たかが遊びじゃないか」
 「貴様らは……金持ちの皮をかぶった、悪魔だぁ!」
 人の命を弄んでいる自覚すらないどら息子達に、センちゃん、怒りの変身。
 しかし、「金持ち」って二人称としてはあまり好意的なニュアンスを感じないので、「金持ちの皮をかぶった悪魔」って、 皮の被り方が微妙で台詞としては少々決まらない感じに(^^;
 「サウザン星人ギネーカ及び、その一味デーチョとシロガー。ゲームと称して、数多くのエイリアンを殺害した罪は、 あまりに大きい。ジャッジメント!」
 宇宙最高裁判所は抹殺執行を許可するが、余裕を見せるギネーカ。
 「宇宙最高裁判所だって、僕たちには手が出せないさ」
 「デリート許可!」
 「ありえない判決だな。パパに取り消してもらおう。はっはははははは」
 うん、こう、下手すると、パパごとデリートなキガスル。
 「ふざけるなぁ!!」
 激怒するグリーンは3人に掴みかかるが、そこへ背後からイガグリ先生が強襲。 アブレラさん大盤振る舞いでまさかのイガグリ先生3体に輪っかメカ人間まで加わり、その間に3人は逃亡。 多勢に無勢のグリーンだったが、そこへ仲間達が駆けつける。
 「テツ、マシンボクサーが一番早い。ギンをメディカルセンターに運んでくれ」
 足手まとい、華麗に追い払われる。
 「奴等、絶対許さない。SWATモード・オン!」
 前回は装着済みで参上したので、初のSWATモードへの換装シーン。デカスーツ同様に、SPライセンスからコールして、 デカベースから強化装備が送られる宇宙警察の伝統的な電送システムである事が判明しました。頭部装備は、マスクの耳っぽい所が開いて、 そこから生えてくる感じに。
 圧倒的な火力で、対する悪にジャスティスを執行するSWATモードにより、イガグリ先生、とうとう雑魚扱い。
 変なキャラ立ちしていたのに、もう駄目そうだ……!
 怪重機に乗り込み逃亡をはかる坊ちゃんズだったが、その前に高速機動戦闘も可能な、SWATモード対応の新メカが出撃する……その名を、 パトウイング!
 「生けとし生ける者の命を、遊びで奪うなんて、絶対許せない!」
 「みんな、合体するのよ」
 事件の内容と関係なく、新メカのお披露目に今日は凄く楽しそうなスワンさん。これまでと違って、 心ゆくまで調整完了した上での出撃だからか。
 「ロジャー! 特捜合体!」
 「「「「「ビルドアップ・デカウイングロボ!」」」」」
 5体の飛行メカが空中合体、二丁拳銃パトマグナムを構えた、高機動メカ・デカウイングロボが、ここに誕生。
 前半実写ミニチュアにこだわっていた今作なので、ミニチュア合体を見たかったのですが、 ウイングロボは変形から着地からアクションから、CG多量で、好みとしては残念。あと、基地が変形とか白バイロボと比べると、 いきなりの飛行メカに物凄く脈絡がないので、出来ればもうちょっと本編世界と絡めたネタにして欲しかった所ではあります。 ボリューム的には最強ロボという感じはまだちょっとしないけど、デカレンジャーロボ+デカバイクロボ+デカベースロボ+デカウイングロボによる、 抹消王D12とかあるのでしょうか。
 惑星規模で、ジャッジメント!
 デカウイングロボは二丁拳銃でデーチョとシロガーを怪重機ごと爆殺。
 「デーチョ! シロガー! 遊びなのになんて酷い事するんだ!」
 「いつまでお遊び気分なんだ、ギネーカ!」
 この期に及んで自分達の行為を顧みないギネーカは高空に逃亡を図るが、デカウロボはそれを追撃し、空中戦に。 ミサイルを回し蹴りで撃墜し、怪重機を地面にはたき落とすと、ミリオンミサイルに積み込まれた反重力エンジンの暴走を防ぐ為に、 掴み上げて急速上昇し、大気圏を離脱。
 「特捜変形・デカウイングキャノン!」
 デカウロボは、宇宙空間で一度分離すると、自ら巨大な銃形態へと変形。どちらかというと、こちらがやりたかったのか、 となんか納得。デカウイングキャノンはDリボルバーと連動しており、コックピットでDリボルバーを構えるデカレンジャー。
 「標的になった人の気持ちを、思い知れ!」
 強力な必殺砲が宇宙を走り、ミリオンミサイル、成層圏で大爆殺。
 かくして一件コンプリート、だが……悲痛な思いを胸にセンちゃんがデカベースに戻ると、死んだと思いこんでいたギンが、 スワンに懐いていた。なんと、手癖の悪いギンが記念に懐に失敬してきたもんじゃ焼きのコテが銃弾を受け止め、 幸運にもギンの命を守っていたのだった。ハクタクに事情を話してギンの母親の薬も調合して貰える事になり、これにて本当に、 めでたく一件コンプリート。
 テツ? そろそろ本部が恋しくありませんか?
 ……真面目な話、ロボ戦ですら存在意義を失ったブレイクのパワーアップ編はあるのか、本気で心配です。 さすがにこのまま放置プレイは無いかと思いますが…………はっ?! 今気付いたのですが、 スワンさんですら一回しか経験した事のない人質既に2回も体験しているテツは、 今一番、地球署でヒロインゲージが高いのでは?!

 そっちか!(待て)

 権力者のどら息子が反省なく遊びで犯罪を重ねる、という人間でやると気分悪くなりがちなエピソード(とはいえ、 フィクションとしてはそこまで含んで敢えてやるテーマではある)なのですが、着ぐるみでやるとコミカルになりすぎた感じ。
 また逆に、倫理観を失っているドラ息子達に、アリエナイザーの連続殺人犯との差異が感じられなかったのは残念な所。例えば、 貧乏人の命を軽んじている事を台詞で示すなど、それらしい差別化をもう少し意識的に表現して欲しかった所です。
 加えて、対する宇宙警察が、弁護人も情状酌量も認めずその場で死刑の組織なので、 むしろより邪悪に見えてしまうという(^^;
 一般的には、
 遊びで人を殺すんじゃない! → 命を大事に!
 なのですが、『デカレンジャー』世界では、
 遊びで人を殺すんじゃない! → 殺す時は本気で殺せ!
 なので、ネタと作品世界の食い合わせが悪かった感じ(^^;
 このシナリオを成立させるには、坊ちゃんズをもっと非道に描くしかなかったと思うのですが(行為は充分に非道ですが、 全体的に描写はかなり甘い)、児童向け特撮刑事ドラマのバランスとしてそれが出来なかったので、視聴者の感情移入による (センちゃんとの)同期を狙って、貧乏で見た目可愛い宇宙人が被害に遭う、という一点突破を図った形に。 素直にそれに乗れたらアリかもしれませんが、センちゃんの貧乏告白などは、あからさまにあざとくなってしまいました (非行少年の心を解きほぐすためにその場ででっちあげた可能性もありますが)。
 逆に、坊ちゃんズ3人が凄い悲惨な追い詰められ方をした末にデリートされる事でカタルシスを生むという方向もあったかと思いますが、 そちらにも振れませんでしたし。
 今作はあくまで、デリート対象はアリエナイザー(人間ではなく怪人)として描かなければならず、 中途半端な小悪党を出してはいけない、という構造的問題点が浮き上がってしまいました。
 戦隊だから、という意識も強いのかもしれませんが、武上さんは、良くも悪くも真っ当なんだよなぁ、と改めて思うエピソード。 また監督もそれを受けてマイルドにしすぎたかな、と。
 あと、繰り返し名前を出していたのでパパが途中で介入してくる展開があるかと思ったのですが、全く出てこなかったので……あー、 これは……既にパパにも手が回ったな…………ジャッジメント!

◆Episode.35「アンソルブド・ケース」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:武上純希)
 夜の街に響く銃声、被害者はエイリアン、降りしきる雨の中、被害者から記憶を読み取ったジャスミンは、 悲しげな笛のような音を聞く……。
 と、久々に意識的な刑事ドラマ演出でスタート。
 捜査の結果、被害者はテンカオ星人ヤム・トムクンと判明。13年前に地球で発生した、 アリエナイザーによる連続強盗殺人事件の容疑者の1人であった。当時、捜査は難航し、 容疑者は3人まで絞られたが決定的な証拠は発見されず、容疑不十分で釈放。事件は未解決のまま迷宮入りとなっていた。
 その容疑者が、なぜ今になって殺害されたのか? 13年前の事件を担当していたベテラン刑事チョウ・サンが地球へと派遣され、 ジャスミンとバンが迎えに行く事に。チョウは地球に着くや否や3人の容疑者の1人だったテンカオ星ゴレン・ナシと接触。 逃げたゴレンを追ったバンはメカ人間に阻まれ、ジャスミンはチョウが死んだ娘の事を想う時に、悲しい汽笛のような音を鳴らす事を知る――それは、 ヤムの記憶の中で響いていた、あの笛の音であった。
 チョウ・サンのCVは加藤精三で、非常にいい味。台詞回しだけで、食えないベテラン刑事を表現して、さすが。
 実はチョウの娘は、13年前の被害者の1人であった。そしてヤム殺しの凶器が弾丸の線条痕から、 13年前の凶器と同じ拳銃である事が判明する。宇宙警察で証拠品として保管されていた筈の銃が行方不明となっていた事から、 ジャスミンはチョウへと疑いを抱く。
 「遺留品の銃が盗まれています。貴方ですか? 定年前に、事件の決着をつけようとした。違いますか?」
 デカベースの病室を抜けだし、13年前、娘が殺された現場へ花を供えるチョウに、問いかけるジャスミン。チョウの種族は、 本当に悲しい時にエラで泣くという習性があり、被害者の記憶に残っていた悲しげな音は、チョウが娘を想う泣き声と酷似していた。
 「貴方が泣いたんでしょう?」
 「悪いが、信じないほうでね。エスパー捜査なんてね」
 しらを切るチョウに向け、殺害現場をサイコメトリしたジャスミンは、チョウの娘の残留思念を読み取る。
 「お父さん、私の為に事件を解決して。でも復讐はいけない。復讐は正義じゃない。刑事は、 真実を突き止めるのが仕事だっていう信念を、曲げないで」
 「娘が、娘がそう言ったっていうのか。……詰めが甘いよ、お嬢ちゃん。うちの娘は、儂をよぶ時……ふっ、パパっていうんだよ」
 そんな都合よくは……と思ったらジャスミンの騙りだったわけですが、よく考えなくても、けっこう酷い。
 チョウは立ちふさがるジャスミンをしびれさせると、ゴレンがマッチを持っていたクラブへと向かう。そこではゴレンと、 3人組のリーダーであったラジャ・ナムナンがチョウを警戒していた。
 「久しぶりだな、ラジャ」
 「笑わせるぜ。おめえ1人で俺たちを、逮捕する気か?」
 「俺はお前達を逮捕する気なんかないよ。俺は、娘の復讐のために、戻ってきたんだ」
 銃を抜いたゴレンを、チョウは鮮やかに銃殺。その手に握っていたのは、彼の娘の命を奪った銃。
 「ふん、皮肉だな。13年前、おまえ達の唯一の遺留品だ」
 「お、おいよせよ、重要事件の容疑者を、本当に撃つ気じゃねえだろうな?」
 両手をあげるラジャを前に、ジャスミンの言葉が甦り、チョウの銃口は揺れる。
 復讐は正義ではなく、自分の行動は刑事としては間違っている……本当に、これでいいのか?
 その時、テンカオ星人の特殊能力により、ラジャの腹から拳銃を握った3本目の腕が突き出し、撃たれるチョウ。 ラジャは13年前にチョウの娘を射殺したのは自分だと、倒れたチョウを嘲り、駆け込んできたデカレンジャーから逃亡。 ジャスミンはチョウに駆け寄り、5人はラジャの後を追う。
 波止場にラジャを追い詰め、真っ先に変身したブレイク、トルネードフィストを放つが……かわされる。
 はい、そうですね。
 誰も、最初から期待していませんでした。
 先輩4人はスワットモードを発動して熱源感知し、ラジャの潜む工場の壁にDリボルバーで一斉射撃。だが、弾け飛んだ壁の向こうから、 新型のマッスルギアに身を包んだラジャが姿を見せる。
 ……えーこれ、順序が逆でないと、まずかったような(^^; マッスルギア装着→SWAT発動、ならわかりますが、 この流れだとどう見ても、いきなりオーバーキル武装で殺りにいったようにしか見えません。
 「ふふふふ、そうだ。マッスルギアもバージョンアップしているのだ。簡単に破る事はできんぞ」
 マッスルラジャはSWATモードと互角の戦いを演じ、それだけ言いに、背景に立っているアブレラさん(笑)
 だがそこへ、チョウをボスに託したジャスミンが駆けつけ、怒りの変身。
 「成敗!」
 SWATモードになるや否や、デリート許可不許可気にする事なく鉛玉の雨を注ぎ込み、 泡を食ったラジャは怪重機ナイトチェイサー2へと逃げ込む。
 私情で復讐に走った刑事を止めようとするエピソードなのに、それでいいのか。
 (快・感)
 おーい(^^;
 色々びみょーーーな気持ちになるエピソードでしたが、ここへ来て、明後日の方向に破綻。もしかしたら、 エピソードのトーンが暗いので、アクションシーンは派手めにしないと、と思ったのかもしれませんが、 結果として筋の統一性を著しく欠く事に。
 というかこれは、チョウさんも平刑事なんかではなくスペシャルポリスだったら、 心の赴くままにデリートし放題で道を誤る事も無かったのに……とか、そういうテーマなのでしょうか?!
 つまり、適性試験・大事。
 パトウイングは逃げるナイトチェイサー2を撃墜し、デカウイングロボ・ビルドアップ。怪重機を持ち上げると、またも大気圏を離脱。 やはりそうしないと、銃に変形できないのか。
 「テンカオ星人ラジャ! 103件の連続強盗殺人罪に、殺人未遂事件を追加し、ジャッジメント!」
 宇宙最高裁判所からデリート許可が下り、ファイナルバスター炸裂。ラジャは宇宙の塵となる。
 「これにて、一件コンプリート。この世に止まない、雨は無い」
 ラジャの銃撃を受けたチョウだが命に別状はなく、2人の容疑者を殺害した罪で、逮捕される事となる。
 「世話になったな、お嬢ちゃん」
 「罪を償ったら、また、地球に来て下さい。みんな、名刑事のお話を、伺いたがってます」
 「ありがとよ。しかしもう、この歳だ。刑期を務め終える日まで、命が、保つかどうか。まあいいさ。誰か待ってる家族が、 いるわけじゃないし」
 寂しげに呟くチョウに、ジャスミンは“家族”の言葉を告げる――。
 「……待ってるわ、パパ」
 「リルル……」
 かつての名刑事は、悲しみの笛の音とともに、去って行くのだった……。
 えー、あー、うーん、一応、証拠を洗った末に容疑を固められなかったら無罪で釈放になるのはわかったのですが、 ぺろっと自白した途端に裏も取らずにデリートOKなので、どうもやはり、 こういうエピソードと『デカレン』世界の相性が悪いとしか言いようがありません(^^;
 復讐は正義ではないけどデリートは正義で、復讐を生まない為には根絶やしだ! という世界観だから。
 話の流れとしては、普段の速攻デリートはとりあえず置いておいて、怒りを押し殺してあくまでラジャを逮捕する、 でないと綺麗に収まらないわけなのですが……「証拠がないからデリートしてはいけない」(これはいい)と、 「自白一つでデリートしてOK」というのが致命的に噛み合っていません。
 しかもラジャが自白したのは1件だけ(チョウの娘殺し)なのに、自動的にその前の102件も罪状に積まれてしまっており、 今回のエピソードの内容と、ジャッジメントの判決が矛盾してしまっています。 殺人1件で充分にデリート許可で、102件は証拠不十分のままのジャッジメントという可能性もありますが、そうすると、 その102件についての“真実”は闇に沈められた事になり、「刑事は、真実を突き止めるのが仕事」というのは何だったのか。
 刑事は「真実を突き止めるのが仕事」だけど、SPDは「犯罪者を消毒するのが仕事」だから、それでいいのか。
 要するに前回同様、普段約束事として流している今作ではキーにしてはいけない部分を話のキーにしてしまっている。 そして敢えてそこに踏み込んでスペシャルポリスの在り方を問う意欲作とか、そういうわけでは全然ない。
 前回もそうでしたが、つまり武上純希が、刑事ドラマのフォーマットをそのまま持ち込んでみたパターン回(遡ると9−10話とかも) が、概ね出来がよろしくありません。刑事ドラマフォーマットを持ち込むのが悪いのではなく(そういうコンセプトの作品ですし)、 作品世界と噛み合わせる為のアレンジが足りていない。
 これならば、普通の刑事ドラマでやると悩ましいしもどかしかったりする展開が、 『デカレン』世界だとデリート一発で片付いて万事解決八方丸く収まってしまう、みたいな逆のパロディ展開の方がいっそ面白い。
 最後、チョウがきっちり逮捕されていく所は、『特警ウインスペクター』辺りのテイストを思わせ、 ジャスミンのキーワードである雨を最初と最後で繋げた所や、チョウの泣き声を汽笛イメージで使う所などは凝っていたのですが、 間の戦闘シーンとのバランスがちぐはぐすぎて、統一感を欠いたのも残念。
 今作は作品世界のリアリティバランスが難しい為か、シナリオの大半をメインの荒川稔久と、繋がりの深い武上純希で担当し、 中盤からたまに横手美智子、という体制なのですが、正直、武上脚本が今ひとつ首をひねる回が多い。 むしろもう少し脚本家を増やしてエピソードのバラエティをつけた方が良かったように思うのですが、 それこそ、《レスキューポリス》シリーズに関わっていた宮下隼一とか、恐らくその流れで『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002) に参加していた酒井直行とか、呼べなかったのかなぁ。
 もともと刑事ドラマが好きなので、「定年直前のベテラン刑事の心にかかった未解決事件……」 という予告のあおりで期待値上がっていた事もあり、もやもやの深く残るエピソードになってしまいました(^^;  筋は王道フォーマットままなので悪くはないのですが、それを『デカレン』世界で展開する為のアレンジが、とにかく中途半端。 そこに技巧を凝らしてこそなのに。
 おまけコーナーは、すげーつまんなそうに、Dリボルバーを解説するテツ(笑)
 次回、かつてない衝撃の変身を、君は見たか!

→〔その8へ続く〕

(2015年7月12日)
(2017年3月14日 改訂)
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