■『特捜戦隊デカレンジャー』感想まとめ3■


“いま斬りはらう いま打ちすてる
この星の上 悪ある限り
woo... デカマスター NEVER STOP”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜戦隊デカレンジャー』 感想の、まとめ3(Episode.11〜Episode.15)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕 ・  〔まとめ6〕
〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・  〔まとめ9〕 ・ 〔まとめ10〕 ・  〔総括&構成分析〕


◆Episode.11「プライド・スナイパー」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久)
 ボスが出張中で、書類に駄目出しをするホージーさん(署長代理)。バン、書類にも四字熟語が多いらしい(笑)
 そんな時、地球に未確認の巨大物体が落下。消火活動を行ったデカレンジャーロボは、 落下物がスペシャルポリスの宇宙船である事を確認し、現場で生命反応を発見する。
 「大丈夫か?」
 「ああ、街を破壊して申し訳ない」
 軽いな宇宙警察!!(笑)
 逃走中の凶悪犯の追跡中、犯人を何とかデリートしたが地球に墜落してしまったという宇宙刑事……それは、 ホージーの候補生時代の親友、ヴィーノであった。音信不通になっていた友人との再会ににこやかなホージー、 テンションあがって抱き合って、普段見せないフレンドリーな反応にぎょっとしたのか、やたらに驚く外野。だがどこか、 微妙な反応を見せるジャスミン。
 本部に連絡を取りたい、と言うヴィーノをデカベースに招くホージーだが、何故か惑星間通信が不能になってしまう。 仕方なく暇つぶしに、射撃訓練を始める二人。ホージー以上の射撃の腕を持つというヴィーノは、 格好つけて変な撃ち方で華麗に標的を撃墜コンプリート。
 「フッ、実戦では役に立たん遊びさ」
 あー、友達だわー(笑)
 スペシャルポリスになって2年後、突然姿を消していたのは、捜査中の事故で記憶を失っていた為というヴィーノは、 ホージー以外への態度はやたら冷淡。疲労の為か急に苦しみだし、ゲストルームに案内される事に。親友を気遣うホージーであったが、 捜査本部ではヴィーノに対する不審が大きくなっていた。
 「あの人、ちゃんと調べた方がいいかも」
 最初からヴィーノに対して警戒を見せるジャスミン……それはヴィーノから、冷たく研ぎ澄まされた野獣の気、しか感じない為であった。 スペシャルポリスとしてはあまりに不審。
 「そんな筈あるか。あいつは俺の」
 「――親友だからって事で、デカベースに入る時もチェックしなかったけど」
 割と厳しくツッコむセンちゃん。ここぞとばかりに、ホージーさん集中砲火。 1話の時はメンバーから結構信頼されている感じだったのになぁ!(遠い目)
 その時、デカベース内部に突如、アリエナイザーが出現する。監視カメラに写ったその姿は、正体不明の暗殺者、 宇宙各地で数々の要人を暗殺して指名手配を受けている凄腕の殺し屋・ギガンテスであった。駆けつけた5人を蹴散らし、 ギガンテスは逃亡。スキル《野生の勘:LV5》を発動させたバンはヴィーノが休んでいる筈のゲストルームへ向かうが、 そこは無人――。
 「やっぱあいつの仕業なんじゃないか……?」
 「奴の狙いはなんだろう」
 「そんな筈はない! そんな筈は……」
 親友を信じたいホージー、そこへそんなタイミングで出張からボスが帰還。事情を聞いて緊急対応を指示するボスを、 死角に潜んでいたギガンテスの凶弾が貫く――!
 「敵の狙いは……ボス……」
 夜間のデカマシン出撃→デカレンジャーロボのギミック見せに始まって、ここまで全体的に落とした照明での進行が、 シナリオに合わせて雰囲気の出た好演出。
 ボスが撃たれて駆け寄るバン・センちゃん・ウメコ、衝撃に佇むホージー、ぺたんとその場に座り込むジャスミン、 という見せ方もいい。
 現場から走り去るギガンテスの姿に気付き、追いかけるホージー。ここで舞台は外になり、夜が明けたという事でか、 対峙は青い空の下に。タイムテーブル的にはやや厳しいですが、野外で語り芝居だと明るい方がやりやすいというのと、 前後のシーンとギャップをつけて雰囲気を強調する為か。
 立ちふさがるホージーの前で、ギガンテスはヴィーノへと姿を変える。謎の殺し屋ギガンテスは、 ヴィーノが強化改造手術によって変貌した姿だったのだ!
 「ヴィーノ……おまえ、なぜボスを!」
 「金さ……金で雇われたからだ」
 「何故だ! あれほど正義に燃えていたおまえが」
 「おまえは納得しているのか……デカの仕事に? 命がけの任務をしても、警察官だから当然だ、という顔の奴がたくさん居る。 感謝されないどころか、わけもなく恐れたり憎んだりする奴等さえいる」
 後者に関しては、組織の問題な気もします。
 「デカなんて、割に合わない仕事だ」
 「そんな事、最初からわかっていた筈だろう!」
 感謝や報酬が目的ではない。
 人々の笑顔と平和を守る為、たとえ報われなくても全力を注いで非道な悪を裁く、それがデカ。
 だが、その理想を捨て、自分の欲望を選んだヴィーノは、聞く耳を持たない。
 「ある日悪魔が、俺に囁いた。――お前はその射撃の腕に見合う金を貰っているのか? 自分の幸せの為に力を使え。 それが賢い奴の常識だ。だから俺はこの腕で、最っ高に金が儲けられる仕事をする事にした」
 「それが殺し屋か!」
 「そうさ。世の中は全て金、金なんだよ」
 某妖魔一族みたいに(笑)
 「おまえは間違ってる、目を覚ませ!」
 「ふっ、ふふは、はっはっははは、ははははははは、ははははははは、……あ〜ぁ」
 交錯する二人の銃撃。ホージーのそれは外れ、ヴィーノの銃弾はホージーの腕にはまった思い出のリングを破壊する。
 「とっくに覚めてるさ」
 ヴィーノは右手を負傷して崩れるホージーを置いて歩み去り、残されたホージーの慟哭が響き渡る。
 「ヴィーノ……ヴィーノぉ!!」
 本性を現したヴィーノは抑えた喋りでの声質と悪役台詞がよくはまって好キャスティング。
 また、残念ロードを突き進むホージーの対比に、“デカの誇りを捨てて転落した親友”を持ってくる事で、 ホージーさんを人格的に持ち上げるのではなく、職業的意識の高さで持ち上げる(とりもなおさず、そこがホージーのポイントである)、 としたのも良し。
 暗殺任務を果たし悠々と歩み去るヴィーノに、今回の仕事を斡旋したエージェント・アブレラが接触する。
 「まだ終わりではない。ドギー・クルーガーは生きている」
 「なんだと?!」
 そう、その頃ボスは、デカベースの医務室で目を覚ましていた。
 「おはよう、ドギー」
 スワンさんが「ドギー」を「ドゥギー」みたいな感じで発音するのは、ときめきポイントです。
 「良かったでしょ、私の新型防弾チョッキ」
 「ああ、また命を救われたな」
 「新装備の開発が、私なりの戦いだもの。食べる?」
 一瞬、素の生命力で生きてたのかと思いましたが、スワンさんの新装備のお陰でした。「また」という台詞は、 過去ネタの伏線でしょうか?
 右にスワンさん、左にジャスミン、その他有象無象、愛されるボス(イケメン)。
 そして、候補生時代、正義の為に戦う事を誓い合ったリングの思い出を回想していたホージーは、道を踏み外した友に対し、 一つの決意を固める……その夜、ボスは現場復帰、ヴィーノに関する調査が進み、 2年前にビリーザ星の宇宙警察を退職していた事が判明する。ヴィーノはスペシャルポリスを装って地球署に入り込むと、 電波攪乱装置で通信を遮断。動力室を襲撃したのは、肉体改造の副作用で殺人衝動を抑えきれなかった為であった。
 ……て、けっこう困った暗殺者(笑)
 宇宙各地で要人を暗殺してきたヴィーノ/ギガンテスは既に宇宙最高裁判所でデリートが確定しており、発見次第、 抹殺する事が許可されている――その時、デカベースに強制通信してきたヴィーノが民間人を人質に取って、ボスへ呼び出しをかける。 囮になろうとするボスを制し、立ち上がるホージー。
 「あいつに射撃で対抗できるのは、俺しかいないんだ」
 呼び出しの場所に単独で向かうホージー。
 「ヴィーノ、俺と勝負だ。俺を倒せば、次はボスが来る。それは約束する」
 「いいだろう、だがその腕で、俺に勝てるか?」
 廃墟となった映画館で、回り出す映写機。
 光を映すスクリーンを背景に対峙した二人が、お互いの体を影にして変身する、という凝った演出。
 「エマージェンシー」
 「いつでも来い」
 映写機のフィルムが途切れた瞬間、示し合わせたかのように何故か回転して撃ち合う二人。
 二枚目なのにどこか残念な二人の対決は、一瞬の差でホージーが制し、外に待機していたとおぼしき4人が駆け込んできて人質を確保 (一応、決闘に負けた場合の保険をかけておいたものと思われます)。
 「なぜだ! その腕で、この俺に勝つなんて」
 「今のおまえにはわからないだろう。この腕を支えているものが、なんなのか。――デカの、誇りだ」
 「はは、はっ、ふはは、笑わせるな! 誇りだけで生きていけるか。金以外に、正義なんかないんだよぉ!!」
 ヴィーノさんはあれか、スペシャルポリスの安月給が原因でクリスマス前に彼女にフられるとか、 なにか絶望的なイベントでもあったのか。
 ギガンテスは薬物を飲んで巨大化。その際に、弾け飛ぶ思い出のリング。
 ちょっと泣かせの聞いたBGMでデカマシンが発進し、しんみりした曲調のまま夜戦での対決は、デカロボが圧倒。
 「グッバイ・フォーエバー。……アンエバー」
 ホージー覚悟のジャスティスフラッシャーがギガンテスを貫き、ギガンテス爆死。
 「これにて……一件……コンプリート」
 朝焼けに佇むデカロボ、その勝利をベースから見届けるボスとスワン。
 「辛い結末ね」
 「ああ」
 「それにしても、あなたの暗殺を依頼したのは、いったい誰なのかしら?」
 「……心当たりはある」
 色々、恨まれてそうですしね!!
 戦い終わり、デカロボを降りたホージーは、地面に落ちていた思い出のリングに気付き、それを自らの腕にはめる。
 未練だぜ。
 「スペシャルポリスの世界は、時として非情だ。
 それが、犯罪に立ち向かうプロフェッショナルの、ライセンスなのである。
 捜査せよ、デカレンジャー!
 戦え、特捜戦隊デカレンジャー!」
 夜→朝→夜→早朝、という時間帯による背景の変化が映像とシナリオで上手くはまり、特に夜戦は効果的になりました。
 前回が前回だったので、一安心の出来。今の所『デカレンジャー』は、出来不出来の波が激しい(^^;
 『五星戦隊ダイレンジャー』が露骨でしたが、山場以外のエピソードでも2話完結形式を許す構造にすると、 細かい要素を入れた話が出来る反面、それに甘えて割とどうでもいい内容をダラダラと前後編に引き延ばしてしまう事もあるので、 やはりまとめられる話は1話でまとめて欲しい(まあ全体の尺が違うので『ダイレンジャー』は事情は少々違いますが)。
 そこも良かった。
 次回、また変な生き物に好かれるウメコ。

◆Episode.12「ベビーシッター・シンドローム」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久)
 ウメコのバスタイム中、謎の物体が大気圏内に突入でデカレンジャー緊急出動。
 ……惑星保護バリア、全く役に立ってない。
 このまま、有名無実になってしまうのでしょうか(^^;
 シャンプーハットを被ったまま捜査本部へやってくるウメコ/ボスの顔に飛ぶ泡/そんなボスにシャンプーハット装着/くしゃみで飛ぶパトカー/ボスの怒声に轟く雷鳴
 と、前回から一転、激しくギャグ演出。
 緑「ここんところ、よくなんか落ちてくるよね〜」
 センちゃんがツッコんだので、意識はしている模様。伏線になるのかどうかはわかりませんが。
 桃「ボスの雷も落ちたし〜」
 黄「オチつけてないで」
 落下予測地点で物体を待ち受けたデカレンジャーロボは、今回は地表衝突前に空中で見事にキャッチ。その手にしたのは、 巨大な宇宙ゆりかごだった。見守る5人の前で、蓋が開いて中から出てきたのは、巨大な緑の生き物。それは、 オカーナ星人の赤ん坊(センちゃん大)であった。
 「どっから来た? 名前は?」
 「ホージー、相手は赤ちゃんよ」
 子供の相手とか出来そうにないホージー、前回の今回ですかさず自分から落ちに行く見事な仕事ぶり。
 目覚めた赤ん坊は5人を見回し……
 「まんまー」
 ウメコ、抱きつかれる。
 「「「「ママ?!」」」
 「ごめん。オカーナ星の言葉は、未習得」
 一斉に視線を向けられ、首を左右に振るジャスミン。番組初期から翻訳係みたいな事をしていたジャスミン、 SPライセンスの機能だとばかり思っていたのですが、本人が色々な惑星言語を学んでいたという事だった模様。 相手の言語が理解できないと、テレパシーで思考が読み取れないとか、そういう設定でもあるのかもしれない。
 或いはボスにスカウトされてスペシャルポリスになる為に特技として頑張ったとか妄想してみると、ちょっと可愛い。
 ボス「よっぽど気に入ったんだな、ウメコの事」
 揺り籠型宇宙ポットの情報から赤ん坊の名前はエイミーとわかったが、現在のところ捜索願いが出ておらず、 身元がハッキリするまでエイミーを預かる事になる地球署。
 頭からかぶりつかれてヨダレまみれになったウメコを見てさっとハンカチを出すボス、イケメン。
 ウメコがヨダレを拭いたボスのハンカチをさらっと頭に乗せるセンちゃん、一歩間違えるとヘンタイ。
 役者さんのアドリブかしら(笑)
 お約束通り、泣き出すと激しい高周波を放つエイミー。一番なつかれているウメコが面倒を見る事になり、 オカーナ星人の母乳に一番成分の似た豆乳を与える事で落ち着くが、豆乳を飲んだ瞬間、一瞬巨大化するエイミー。 飲み終わっておしゃぶりをくわえると、また元に戻る。その後は街で自由奔放に騒ぎを起こすエイミーにウメコが振り回されて…… と完全にマーフィーの時と同じパターン。
 育児に疲れるウメコ、公園で赤ん坊の面倒を見る母親とほんわか語り合うもエイミーを見て逃げ出されるなどあったものの、 その母親の言葉もあり、段々とエイミーへの情が湧いてくる。
 「あたしが守ってあげなきゃ」
 ところがそこで、宇宙警察の本部で預かって貰える事になったという連絡が。
 「やだ。この子はあたしが育てる」
 エイミーに押しつぶされながらも、心は母親。
 「ウメコ……。でも、ぱいぱい出ないでしょ?」
 ジャスミンの一言に男性陣がこけた所で、一行を襲う爆発。姿を見せたのは無駄に武人らしい事で有名な、イガグリ先生2号。 エイミーはその泣き声を利用した生体爆弾として扱われる予定の、エージェント・アブレラの商品であった。 しかし誘拐途中で事故が起こってエイミーは地球に落下、アブレラの命を受けてイガグリ先生がその回収に現れたのだった。
 イガグリ先生&メカ人間部隊と交戦するデカレンジャー。前回がアクション弱めだった為か、今回はスーツアクション強めで展開。 赤と桃はエイミーを連れて逃げ出し、途中で通りすがりの車を徴発。更にそれを盗んだバイクで追うイガグリ。
 追いすがるイガグリをオープンカーの後部座席からデカレッドが銃撃。それをよけながら剣を振るうなど、 敵ながらえらく格好良いバイクアクションを決めるイガグリ。白熱の追撃戦の末、 最後はレッドが必殺ムーンサルトショットでイガグリを撃破する。が、逃走中にくわえたおしゃぶりが落下した事で、 エイミーが巨大化。オカーナ星人はもともと巨大な生体を、抑制装置によって小型化していたのだ。50mに巨大化し、 自動車をおもちゃ代わりにするエイミーを相手にビルドアップするデカレンジャーロボ。 エイミーがおしゃぶりを失くしている事に気付くウメコだったが、そこへしぶとく生きていたイーガロイド操る怪重機・ デビルキャプチャー3が姿を見せる。
 「まずはこの、麻酔銃で眠れ」
 桃「うちの子に、何すんだよ!」
 格好いい「デカレンジャー・アクション」インストをBGMに、炸裂する飛び蹴り。
 「おのれ!」
 桃「あんたなんかに、かまってる暇はなぁい!」
 体当たりから、ひとりジャスティスフラッシャー発動(笑) 超速攻の空中コンボにより、デビルキャプチャー3、敢えなく滅殺。
 赤「すっげえなウメコ」
 青「凄すぎだ」
 緑「右に同じ」
 黄「がちょーん」
 ロボを降りたピンクはおしゃぶりを探しに行こうとするが、それに気付いた巨大エイミーが追いかけようとして、 滑って転んで泣き出してしまう。街を蹂躙する高周波に、レッドがおしゃぶりを探し、ピンクがエイミーをなだめる事に。 巨体の発する鳴き声によって巻き起こる強風の中、変身を解いて子守歌を歌うウメコ。
 一歩間違えると凄くつまらないシーンになってしまうのですが、強風のアクセントと、 吹き飛ばされそうになりながらも一歩一歩近づいて歌うウメコの姿をうまく描いて、いいシーンになりました。
 「エイミー、お休み、いい子だから」
 ウメコの歌は見事にエイミーに届き、泣くのを止めて落ち着くエイミー。
 青「やった!」
 黄「母よ、あなたは強かった」
 緑「右に同じ」
 バンが拾ってきたおしゃぶりでエイミーは元の大きさに戻り、事件は無事解決。すっかりエイミーと良好な関係を築くウメコだったが、 本当の両親が見つかって引き取りに来る事になる。
 「良かったねエイミー、パパとママに会えるよ!」
 悲しみを押し殺してウメコはエイミーを笑顔で送り出し、飛び去る宇宙船を見ながらかすかに目を潤ませるのであった……と、 基本コメディ調ながら、しっかりとまとめた良エピソード。
 前回今回と、対照的な雰囲気のエピソードで、脚本と演出がともにいい仕事をしました。 それぞれシナリオに合わせてリズムを変えながら、これぐらいしっかり演出して貰えると見ていて嬉しい。脚本と演出の呼吸の合った2本。
 次回、
 「俺を舐めるな。エマージェンシー・デカマスター!」
 おぉ、変身するのは知っていましたが、こんなに早かったのか。
 楽しみ。

◆Episode.13「ハイヌーン・ドッグファイト」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 前々回のボス暗殺の依頼人、カジメリ星人ベン・G(安定の檜山ごろつき怪人)が登場。
 「俺はあのデカが憎い……! 普通のやり方じゃ、絶対にすまさねえ! 無力さをとことん思い知らせてから、消してやるぅ!!」
 ギガンテスを斡旋して失敗に終わったアブレラは、ベン・Gに保険による補償を約束し、新たな戦力を提供する……。
 一方デカベースでは、自分を狙った暗殺計画で周辺に被害が及ぶ事を懸念するボスを、スワンが心配していた。
 「なに弱気になってるの、地獄の番犬、て呼ばれたあなたが」
 「「「「「地獄の番犬?!」」」」」
 「あれ? 知らなかった?」
 ドギーの過去に、興味津々で食いつく5人。
 「若い頃のドギーは、地獄の悪魔も震えて逃げる、って言われるほど、犯罪者達に恐れられていたのよ」
 「ホントっすか、ボス!」
 「ただのニックネームさ。それに昔の話だ」
 なんかこの会話の時、スワンさんの位置がボスに凄い近い。派手に動かないキャラのスーツアクターはベテランの方がやっている事は多いですが、 ボスの中の人はどれぐらいの方なのかなぁ。世代によっては、アイドル時代直撃で、物凄い役得だよなぁ、とかつい考えてしまう(笑)
 意気上がらないボスの為に茶葉の買い出しに出たスワンに迫る怪しい影、不穏な気配を感じて飛び出すマーフィーだったが、 時同じくして市街地に謎の巨大物体が出現し、デカレンジャーは緊急出動。メカ人間に拉致されそうになったスワンを救うマーフィーだったが、 そこへベン・Gが姿を見せる。そして巨大物体の前には、メカ人間操る怪重機テリブルテーラーが登場。
 テリブルテーラーはタワー型の巨大物体を地面に突き刺すと、逃亡。地中を高速移動して出没するテリブルテーラーにデカレンジャーは翻弄され、 次々とタワーを設置されてしまう。その正体は、地脈を刺激して大地震を発生させる、強力な地震兵器であった。 一度設置されたタワーは解除せずに引き抜くと周囲20kmを巻き込む大爆発を引き起こす為、この地震兵器の起動を阻止するには、 6本のタワーが配置された正六角形の中心に最後に設置されるメインタワーのセットを阻止する他ない。
 かつて同様の事件を担当した際、タワーを引き抜いた同僚が爆死した件をさらっと語るボス。そう、 宇宙警察ではこれぐらいは日常茶飯事なのです。まあ、周囲20kmが壊滅してもデカロボと中の人は無事だった、 という可能性も若干ありますが。
 メインタワー設置を食い止めるべく予定地点で待ち受ける――デカレンジャーは出動しようとするが、 そこへ力及ばずぼろぼろになったマーフィーが、ベン・Gの伝言映像を持って本部へ入ってくる。
 「てめえにやられた恨みは必ず晴らす、100倍にしてなぁ!」
 過去に惑星地上げ犯としてボスに逮捕されたベン・Gは復讐の為に新たな体を手に入れて甦り、 人質に取ったスワンに爆弾を仕掛けてボスを呼び出す。爆発までは残り2時間、だが先回りしてテリブルテーラーを待ち受けなければ、 地震兵器が発動してしまう。ボスに手の内を知られているのをわかった上での巧妙な二面作戦に、 スワンの救出を優先しようとするデカレンジャー。
 「ただちに救出に向かいます」
 「駄目だ、お前達は怪重機を阻止するんだ」
 「けどボス一人じゃ無理っすよ!」「そうですよ!」「ボス!」「俺が行きます」「ここは俺たちに任せて」 「とにかくボスはここに残ってください!」
 「俺を舐めるな」
 口々にボスを止める5人だったが、バンの首根っこを掴んで低く一喝の迫力に押され、 デカレンジャーは当初の作戦通りに地震兵器の阻止に向かう。そして怒りに唸るボスは、スワンを助けるべく、 呼び出しの場所へと赴くのであった。
 「一気に決めて、すぐボスの所へ駆けつけようぜみんな!」
 予測通りに出現したテリブルテーラーに立ち向かうデカロボだが、思わぬ苦戦。
 「ボスや、スワンさんの為にも、負けるかぁ!!」
 今回、上司と部下の関係という要素もあり、上司達のピンチに、5人の若者達が気合いを入れて奮闘する、のです、 が……しかしこの後、衝撃の展開が5人と視聴者を待つ……!
 呼び出しの場所でボスを待ち受けていたのは、ミサイルによる先制攻撃。 しかしボスを苦しめたくてたまらないベン・Gはそれをわざと外し、凝り固まった憎悪の念をボスへと向ける。
 「俺の人生を台無しにしやがってぇ!」
 「ふざけるな! 何千万もの人生を消してきたおまえに言う資格はない! 今度こそこの手でおまえに引導を渡してやる」
 「ほざくな! 俺が受けた苦しみを何倍にもして返すぜ。苦しめて苦しめて、その上でとどめをさしてやる!」
 「生憎だが、俺はそんなに暇じゃない」
 ひたすら格好いいボス。しかしその前に、かつてない大量の雑魚メカ軍団が現れる。
 その数……
 「ざっと数えて100体か……勘を取り戻すにはちょうどいいぜ。
  ――エマージェンシー・デカマスター!」
 なんと、ボス、変身!
 デカマスターは、犬っぽい感じをデザインに取り入れつつ、メタリックなダークブルーの落ち着いた色合いに、 胸に輝く血塗られた100マークが目立って、格好いい。
 「百鬼夜行をぶったぎる! 地獄の番犬、デカマスター!」
 なんかこう、名乗りの時点で何かおかしい。
 そして流れる、ささきいさおの渋い歌声。
 「Dソードベガ!」
 腰の刀を引き抜き、ささきいさおをBGMに、今、デカマスターがその力を解放する!
 「銀河一刀流の剣技、とくと味わうがいい」
 100人斬りカウントスタート(笑)
 『デカマスター無双』状態で、次々とメカ人間を切り倒すデカマスター。何体か、蹴り一発だけで倒しています(笑)
 デカマスターがメカ人間をばったばったとなぎ倒している一方、デカロボは怪重機を相手に奮戦、というか苦戦していた。
 「「「「「やられてたまるか! 俺たちは、俺たちは、ボスに選ばれたデカ! アリエナイザーと戦うプロなんだ!」」」」
 ボスがすっげーーーピンチに陥っている筈、と気合い全開で難敵に挑む5人。
 ……その頃デカマスターは、無傷で100人斬りを達成していた(笑)
 ベン・Gとぶつかり合うマスターだが、囚われのスワンの姿に動揺した所を押し込まれてしまう。
 「何も出来ず、仲間を見殺しにする悔しさの中で、くたばるがいい!」
 ミサイルが炸裂し吹き飛ぶデカマスターの姿に、見学していたアブレラさんは勝負あったと早合点して帰宅。
 「おまえは女一人助けられない、腰抜けだ! おまえが育てたつもりの5人も、まだ来ない! 自分の無力さを思い知ったかぁ……!?  はははははっ、おまえはその程度の、男なんだよぉ!!」
 激しい連続攻撃によろめくデカマスターだったが、その闘志の炎は消えはしない。
 「言いたい事はそれだけか? それだけ言うなら、一発でこの俺を倒してみろ!」
 挑発に乗ったベン・Gは、左腕を狙撃モードへと可変させ、弾丸を放つ!
 「動くなスワン!」
 ダッシュしたデカマスターはその弾丸を刀で受け止めると角度を付けて弾き、 スワンの体に巻き付けられたダイナマイトの導火線を断ち切る、という神業炸裂。
 ここから主題歌と共に、反撃スタート。
 「俺のハートに燃える火は!
  悪人どもには地獄の業火!
  燃やし尽くすぜ、平和のために!!」
 要するにリハビリ終わって胸のエンジンに火がついてきたのか、デカマスター、ベン・Gを滅多切り。
 くるくると攻撃しながら、合間合間に台詞を言うのが実に格好いい。途中で柄を叩く所がまた凄く格好いい。
 デカロボも剣技・ジャッジメントクラッシュを放ち、気合いで怪重機を撃破。駆けつけた5人が目にしたのは……
 「俺の育てた5人が来たぜ」
 「ボス?」「えぇ?」「うっそ」「まじで?」「ボスなんだ」
 画面手前にデカマスターの上半身で、奥にちっちゃーく5人、という完全な主役強奪カット(笑)
 デカマスターの姿に驚き固まる5人の前で、ジャッジメントタイム!
 「カジメリ星人ベン・G! 13の星における宇宙地上げに関する大量殺人。及び宇宙警察官略取の罪で、ジャッジメント!」
 もちろん、有罪。
 「デリート許可。――Dソードベガ! ベガスラァァァッシュ!!」
 光の刃が横一閃、ベン・G抹殺執行。
 「これにて一件コンプリート。悪が居るから、俺は斬る!」
 決め台詞まで準備してあった(笑)
 というか現役時代のやつか。

 圧倒的最強・デカマスター!

 なんかもー、滅茶苦茶です(笑)
 ビッグワン系というか、悪鬼羅刹の初代宇宙刑事っぽいというか(笑)
 そしてスワンさん、貫禄のお姫様だっこ救出で、ヒロイン力を見せつける。
 「大丈夫か、スワン」
 「平気よ、かすり傷だけだもん」
 「すまなかったな、俺のために」
 「ぜーんぜん。だってドギーのこと信じてたもの」
 上司の為に奮闘する部下、思われてるなボス(&スワンさん)、という要素全て、デカマスターが凄すぎて吹っ飛ぶ(笑)
 いやまあ、そこまで込みで予定通りの構成だとは思われますが、いちゃいちゃする上司カップルが凶悪すぎました。
 あなたも狼に 変わりますか
 あなたが狼なら 怖くない〜
 というわけで、驚愕の縦横無尽、地獄の番犬・デカマスター無双。 野太い悪役とがっしりとした美形を両方こなせるCV:稲田徹が実にはまりました。個人的にハリー・オード(『∀ガンダム』) の印象が強いというのはありますが、稲田さんの演技は、何というか、はったり力が強いな、と。演出と脚本もあいまって、 強い・凄い・格好いい! という原初的ヒーローの気配が濃厚に押し出され、犬だけど傍若無人系ヒーロー、 に見事な説得力を持たせた好キャスティング。
 なんかよくわからないけど、日本刀で100人斬り、という滅茶苦茶な展開も良し。
 稲田さんは現在、映画などで仮面ライダー一号の吹き替えもやっていますが、昭和ヒーロー属性の強い声なのだな、と(笑)
 話の都合でデカロボが急激に弱体化したのは少々気になりましたが、 アブレラさんもより強力な怪重機を仕込んできていると解釈しておくところか。
 撮影の手間の問題で必然的に出番が減りがちなマーフィーが久々に動いたのも良かったところ。
 おまけコーナーでは、そんなマーフィーに「結局役に立たなかったけど」と絡んだホージーさん、 マーフィーに襲われて悲鳴をあげるという、本編外でも見事な残念。

◆Episode.14「プリーズ・ボス」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 「闇に生まれ闇に生きる俺の宿命も今夜限り。俺は銀河最強の男に生まれ変わるんだ!」
 なんか、恥ずかしい宇宙人、出てきた。
 OPにデカ ビッグワン マスター追加。マーフィーも追加……? 居たような居なかったような。
 前回、昭和系鬼畜ヒーローであったボスの正体を知ったデカレンジャーの5人は、そのデカマスターを相手に特別訓練を行っていた。 様々なコンビネーション攻撃を仕掛ける5人を、子供扱いで圧倒するデカマスター。
 「いざって時はボスに任せれば、未来永劫・天下無敵!」
 その強さに、バンはすっかり人任せで大船に乗ったつもり。
 「いや、俺が変身するのは、あくまでおまえたちを補助するためだ。そんな大それたものじゃない」
 「またまたまたぁ、謙遜しちゃって! 憎いよこの地獄の番犬!」
 どこまで株価落とせば気が済むのかバンよ(^^;
 自分の存在にすっかりゆるんでしまった5人の姿に、考え込むボス。そんな中、 学園都市メガロポリス工科大学にアリエナイザーが侵入し、デカレンジャー出動。闇の中で5人の前に姿を現したのは、 19の星で大量殺人を行って逃亡中の凶悪犯、クリスト星人ファーリー。高い戦闘力を誇るファーリーは、 レッドのジュウクンドーを一蹴し、5人の一斉攻撃をも弾き返す。苦戦するレッドは、ボスにヘルプ要請。
 「そうだ! ボス、出番ですよ!」
 駄目すぎる(^^;
 ボス、これを無視(笑)
 なおもしつこく呼びかけるバンに、通信切断(笑)
 光線攻撃を受けて追い詰められる5人だったが、ファーリーは夜明けの太陽の光を浴びて苦しみだし、そこに咄嗟の攻撃を受けて撤退。 5人は何が狙われたのかを大学で調査するが、怪しいものばかりで絞り込めず、 ファーリーが落としたブレスレットをジャスミンが読み取る事になる。
 「おちる……かたい……光……?」
 桃「あ! 新幹線ひかり号!」
 全員、白い目でスルー。
 『デカレン』はナレーションでだいぶ端折ってますが、どうしても捜査シーンなどで会話のやり取りが増える事を気にしてか、 意識的にポイントポイントでちょっとした笑いを挟んでいる感じ。今のところ、アクセントとしてはうまく機能していると思います。
 青「どう思う、センちゃん?」
 シンキングタイムでセンちゃんが閃いたのは、隕石。研究室で教授に話を聞いたところ、 光を吸収する特性を持つルナメタルという隕石由来の鉱物が浮かび上がる。簡単に言えば、ルナメタルを身につける事で、 自分の体に光が当たらなくなるのだ。ファーリーの狙いはルナメタルを手に入れる事で、太陽光線に弱いという自分の弱点を克服する事。 大学の安全の為に、とさらっとルナメタルを徴発しようとするホージーだったが、進行中の研究成果が出るまであと半日、 という教授の懇願に、昼間は動きが無い筈とギリギリまで待つ事を承諾、現場の警戒にあたる事になる。
 捜査パートでちゃんとホージーさんが先導しているのは安心できる所です(笑)
 頭脳労働はセンちゃん任せだけど。
 ホージーさん、肉体派エリートだから仕方ない。
 4人が現場を警戒する中、昨夜の戦闘についてボスに文句を言いに戻るバン。
 「ひどいっすよボス! ボスが来てくれりゃスカッと解決だったのに」
 「本当にそう思うか?」
 「当然じゃないっスか! だいたい、部下のピンチに上司が知らん顔ってどういう事っスか!」
 嗚呼、宇宙警察の抹殺至上主義の弊害がこんな所に……。
 「俺はおまえ達のピンチに知らん顔などしないぞ」
 「したじゃないっスか!」
 「いや。俺はおまえ達がピンチなら必ず駆けつける」
 「本当っスね! 俺信じてますからね!」
 現場へ走って戻るバンは、まっすぐな熱血漢というより、どこまでも駄目な男に……。
 何がまずいって、ここまでバンの熱血と真っ直ぐさが物語上でプラスに働いたのが、2話の強引な合体と、 4話のドロップキックぐらいである事。しかも2話は個性以前の物語上の必然的流れという要素が強く、 個のキャラクター性としてはせいぜいホージーさんへのドロップキックぐらいのものです。
 上げて下げるならまだしも、下げて下げて下げっぱなしなので、バンを持ち上げるエピソードが急務だと思います!
 ホージーさんは今のままでもいいから!(おぃ)
 大学ではボスが助けに来てくれなかった事に、変身の疲労が激しいのかなど、4人がそれぞれ考えを巡らせていた。 4人は「ボスに助けてほしい」というより「ボスと一緒に戦ってみたい」という“強さを求める宇宙刑事の本能的願望”として、 憧れの存在、愛されているボスという方向性で描かれているのですが、そのフォローが一番必要なのは、バンだと思います(^^;
 その時、怪重機デビルキャプチャー4号が大学へ襲来。
 その手があったか!
 バンもデカマシンで駆けつけ、デカレンジャーロボ・ビルドアップ。
 「みんな! 今度はピンチになったらボスが来てくれる! だから、安心していいぜ!」
 ボスのヘルプの約束を取り付けたつもりのバンですが、いや、相手、怪重機……。
 まあ、勝ちそうだけど(笑)
 幾ら怪重機に乗り込もうと、コックピットを日光にさらしてしまえばこちらのもの、 とコックピットの場所をサーチするデカロボだったが、なんと怪重機を操っていたのはメカ人間である事が判明する。 怪重機を陽動につかったファーリーは、緊急避難により無人となった大学構内にフード姿で潜入し、まんまとルナメタルを入手。
 「俺は変わったぁ! これで太陽の下でも好き放題だぜ! おおぉ、前より力がみなぎりやがる!」
 デカロボはさくっとジャスティスフラッシャーで怪重機を撃破。
 この辺り、ロボットは見せ場があれば別にクライマックスでなくてもよい、というのは今作の徹底しているところ。
 急ぎ構内へ向かう5人だったが、その前に、太陽光線の克服によりテンション上がって色が黒くなったファーリーが姿を見せる。 飲み込んだルナメタルが体内のツボでも刺激したのか、以前よりパワーアップしたファーリーは、5人を圧倒。 いい所なしで倒れるデカレンジャーだが、その時、ボスが建物の上に姿を見せる。
 「ボスが来たからにはおまえなんか一発だ!」
 だがボスは、腕組みして戦闘の様子を見つめるだけで、動こうとしない。
 「ボス……なんでだよ……なんで何もしてくれないんだ」
 攻撃で吹き飛ばされる5人は、なおも動こうとしないボスの姿に動揺を隠せない。
 「なんだよそれ! ピンチに知らん顔しないって、ただ見てるだけなのかよ!」
 ファーリーに締め上げられるも気合いで振り払い、戦闘そっちのけで文句を言いに行くバン。
 「見損なったぜボス!」
 「勝手に見損なえ」
 ここの言い方が、実に格好いい。
 「なんだと!」
 「このままじゃ負けるぞ。――どうする」
 「ボスなんか……だいっっっきらいだぁぁぁ!!」
 小学生男子みたいな事を叫んだバンは、仲間達と合流。ボスの助けは期待できないと開き直る。というか正道に戻る。
 「みんな、俺たちだけでやっつけるぞ!」
 S.P.D! S.P.D!
 本当の全力を出した5人決意のフォーメーション攻撃が炸裂し、弱ったファーリーにジャッジメントタイム!
 「クリスト星人ファーリー、19の星における合計257件の強盗殺人の罪で、ジャッジメント!」
 毎度思うのですが、ジャッジメント空間が発動するとアリエナイザーが怯えながら無抵抗になるのが、恐ろしい。まあ、 抵抗せずに審理を受けさせる為に、ある程度のダメージを与える必要があるのでしょうけど。
 ここ最近、宇宙最高裁判所が考える時間がほとんど不要なレベルの大量殺人犯が続いており、当然の如く、デリート許可。 ファーリーはDバズーカにより、綺麗さっぱり滅殺される。
 「これにて一件コンプリート! ……と思ったけど、まだこっちがコンプリートしてない! ボス!」
 無言で立ち去っていくボスを追いかける5人。
 「どういうことっスかボス! ピンチになったら助けてくれるって言ったじゃないっスか!」
 「……ピンチだったのか?」
 平然と返すボス、スパルタ。
 「勝ったじゃないか、おまえ達。つまりピンチなんかじゃなかった、て事だ」
 方針は間違ってないけど、理屈は間違っている(笑)
 或いは真の宇宙刑事にとって、「ピンチ」とは、「死ぬ寸前の本当にギリギリ」を指し示すのか(笑)
 「悪を憎み、正義を愛し、それぞれの個性を組み合わせて勝つ。うちはそういうチームじゃなかったか? バン」
 ボスの言葉に、自分の間違いに気付くバン。
 「そういうチームでした!」
 残りの4人もそれぞれ頷き、ボスの考えを理解する。
 「そう、誰かの力を頼りにするチームじゃないんだ」
 「すいません、俺、甘えてました!」
 バン、珍しくちゃんと反省。
 ボスは確かに強い。だがボスに頼りきっていては、チームとして犯罪と戦う事はできない。一人一人が今の自分に出来る限りの事をする、 それがスペシャルポリスなのだ!
 「これにて一件、コンプリート」
 「んー、雨降って地固まる。ね」
 会話をモニターしていたらしいスワンさんもにっこり。
 昭和鬼畜系ヒーローであるボスが、あくまで指導者・育成者としての一線を引く、というエピソード。 幾つかの台詞で「そういう事だから」と済ませてもいい所を、若者達の甘えを敢えて描く事で、 バランスブレイカー系キャラの物語上のポジションをしっかりと落ち着け、上司と部下の関係を合わせて描く、と今作の構造として、 しっかり1話を費やす意味のあるエピソードとなりました。
 ただ、バンを筆頭に5人の株価は下がりまくりましたが、これはどうも内部でもキャスト陣から異論があったようで、 多少の修正をして、本編の形に落ち着いたとの事。……バンはフォローしきれていませんが。
 バランスブレイカーキャラが、師として敢えてスパルタで対すというと『世界忍者戦ジライヤ』の山地“えげつない”哲山など思い出すわけですが、 最強キャラが前線で暴れすぎない理由に、成長を促す為、というのを持ってくるのは、キャラクターの関係性さえしっかり描ければ、 時間制限とか体力的問題よりも綺麗であると思います。
 ただし以後、線引きの舵取りをしっかりとしないといけなくなる為、 色々難しい今作のバランス調整がまたちょっぴり難しくなった感じもありますが(^^;
 その辺り、親子にして師匠にしてえげつない、という哲山−闘破の関係性というのは改めて良く出来ていたなぁ、とも。
 デカレンジャーがボスとの関係を通じてまた一歩成長する中、闇の底ではエージェント・アブレラが蠢いていた。
 「ぬぅ……そろそろ本気で考える時かもしれんな……」
 果たしてその悪意はデカレンジャーに何をもたらすのか――。
 次回、なんか動いた!!

◆Episode.15「アンドロイド・ガール」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:武上純希)
 市街地で大規模なシステムダウンが発生し、地下50mにあるライフラインとネットワーク設備の確認に向かったデカレンジャーはそこで、 まるで食いちぎられたかのように破壊された施設と、謎の少女を発見する。ジャスミンがテレパシーで心を読もうとするが何も読み取れない、 空っぽの少女は果たして何者なのか……戸惑うデカレンジャーは突然の攻撃を受ける。
 「そいつを返してもらおう」
 現れたのは、自称「俺は宇宙の破壊王」ティタン星人メテウス。5人と交戦するメテウスだが、「ちっ、この場は不利だ」と潔く逃走。
 へたれなのか戦術眼があるのか自称がおかしいのか、さあ、どれだ!
 ひとまずベースに戻ったデカレンジャーが謎の少女をメディカルチェックすると、 彼女の正体が精巧に作られたアンドロイドである事が判明する。少女は基礎システム以外の情報が全くインプットされておらず、 文字通りに空っぽの存在であった。
 システムダウンと関係する可能性もあり、すぐに分解して詳しく調べるべきだと主張するホージーだが、戦闘に巻き込まれた少女の 「怖い……」という呟きを耳にしていたセンちゃんは、感情が芽生え始めている彼女を安易に分解するべきではなく、 コミュニケーションを取って話を聞き出した方がいい、と反論する。
 「センちゃん甘いぞ、だいたい凶悪犯の探していたアンドロイドだぞ。プロならもっとクールになるべきだろう」
 「充分に冷静なつもりだよ。どんな目的で作られたアンドロイドでも、プログラムさえ正しければ、危険はないからね」
 みんなホージーさんにきついよ!
 勿論、刑事物としてホージーさんのポジションは必要なのですが、ホージーさんの場合、 敢えて憎まれ役を買って出ているわけではなさそうだし、何よりここまでのそのクールさが今ひとつ事件解決に役立っていないのが困ったところ。 もうちょっと、“ホージーの視点”も役に立った! という展開は欲しい所です。
 「まあまあ二人とも」
 ウメコがホージーとセンちゃんの間に入ると、完全にリトルグ(以下略)。
 「センがそこまで言うのなら、やってみろ」
 そしてボスはなんのかんので、センちゃんに甘い。
 とはいえ危険性も考慮され、フォローの為にバンがセンちゃんにつく事になり、残りの3人はメテウスを追う事となる。
 そのメテウスは、密かにエージェント・アブレラと接触していた。メテウスの目的は、 地球に隠しておいたマシンモンスター・ギーガスの探索。ギーガスは活動を開始すると自ら部品を集め、 自己成長する強力な破壊兵器であったが、勝手に孵化して暴れだしてしまったのである。 そのコントロールに必要なある物を手に入れるべく、デカベースへの直接攻撃を計画するメテウスは、 アブレラに強力な怪重機を用意させる……。
 アブレラさんの出番が少しずつ増えていくというのは予定通りではありましょうが、珍しく割と長めの絡み芝居。そして最近、 デカレンジャーにイラッとしていた為か、今日は妙に食いつきがいい(笑) まあ、 割と偉そうなアブレラさんが格を認めているような扱いをする事で、自称“宇宙の破壊王”さんの大物ぶりを出す、 という意図もあるのでしょうが。
 アリエナイザーが暗躍する中、センちゃんはアンドロイドガールとコミュニケーション中。物の単語を教えていき、 自分の名前を教え、少女に名前をつける事に。
 「こんなのはどう? この花のように美しい、て意味で、フローラ」
 センちゃんは本当に、油断ならない。
 全く自覚無しに恥ずかしい台詞で攻略するという、危険なタイプだ。
 感情の源になる心は、記憶の積み重ねが作る――という研究に基づき、楽しい記憶を体験させれば、 きっと正しい心がフローラに宿るに違いない、とバンを交えた3人は、毎度お馴染みこうらくえん遊園地へ。
 ジェットコースターで無表情を貫く子役、ちょっと大変そう(笑)
 センちゃんはフローラに、感情を表に出すやり方、笑顔の魔法「1+1は、に」を教える。センちゃんに言われた通りに、 笑顔を浮かべるフローラ……だがそんな少女に、突如、風船配りのピエロが襲いかかる。
 ……どうでもいいけど、遊園地+ピエロというと、どうしても某王子を思い出してしまう残念脳。
 ピエロの正体は、メテウス。そしてフローラの正体は、破壊プログラムをインプットされてギーガスの頭脳となる為に制作されたアンドロイド・メリアであった。
 「違う、フローラ、君は悪魔の兵器なんかじゃない」
 「ああ、俺も可愛い笑顔を見たぜ」
 バン(少なくとも中学生まで守備範囲)が言うと危ない(おぃ)
 「どんな事があっても、君を守ってみせる」
 駆けつけた他の3人とともに、デカレンジャー変身。メカ人間をけしかけている内にフローラを連れ去ろうとするメテウスだったが、 グリーンがそれを食い止めると、フローラを保護してお姫様だっこで逃亡。デカベースに逃げ込んで保護を頼むが、 そこに怪重機キャノングラディエーターが姿を見せる。
 アブレラさん推奨の強力怪重機キャノングラディエーターは騎士風の外見に剣と盾装備で、如何にも強そう、 といったスマートなデザイン。中でメカ人間が操作しているのも、すっかりお馴染みになりました。
 「5人そろわぬデカレンジャーなど、敵ではないわ」
 4人を蹴散らしたメテウスは余裕綽々で怪重機へと指示を飛ばす。
 ……てあれ、さっきグリーンに叩きのめされていたような(笑)
 これでわかる事は、
 デカレンジャー4人 < ゲージ満タン時デカグリーン
 センちゃんは、デカゲージが溜まるのが他の4人より遅い代わりに、MAXまで溜まった時はメンバー最強なのだ!
 デカベースは怪重機の直接攻撃にさらされ、砲弾の嵐でデカマシンも発進不能。
 やはり秘密基地には、キラキラと砕けそうなバリア装備が必要である、という事がよくわかります。
 まあ、市街地ど真ん中ですし、これまでの地球の状況ならそこまでする必要はない、という事であったのでしょうが。 しかしボスとスワンは、刻々と悪化する地球の治安状況を鑑みて、デカベースにある調整を行っていた。今こそ、その備えが目を覚ます!
 「でも、またまた試運転無しで本番?」
 「戦いはいつでも突然始まるもんだ」
 「はぁ、私の忠告なんか聞いちゃくれないんだから」
 なんか今日のスワンさんは、ちょっと、おばさんくさい(笑)
 調整を完了したスワンは、スイッチをぽちっとな。
 「ベースビーム!」
 バリアよりビーム!
 攻撃は最大の防御!

 そうこれが、宇宙警察の前のめりスピリット!

 「慌てる事はねえ 標的は逃げられねぇ」
 まだまだ余裕のメテウス、だが……
 「行くわよー、みんな。びっくりしないでね! 特捜機動・デカベースクローラー!」
 スワンの操作により、なんとデカベースの上半分が前方に滑り降りるように変形し、デカベースは移動要塞モードへと姿を変える!
 なんか久々に、合体メカを搭載した要塞兵器を見た気がします。
 ……と思ったけど、順番としては前作の『アバレンジャー』もブラキオの中に爆竜を搭載していたか……あれはどうも、 要塞感がいまひとつ薄かったのですが。生き物だし。
 デカベースクローラーはビーム攻撃で怪重機がひるんだ隙に、デカマシン発進。 クローラーモードからのデカマシン発進もミニチュア撮影で展開し、こういうのは好きです。今作はこの辺り、 力入れてくれているのはいい所。古典的要塞兵器からの合体メカ発進→ロボット完成!  のシークエンスをこの時期の技術でがっちりやってくれたのは嬉しい。これで飛んだら最高なんですが(笑)
 全員がデカマシンに搭乗し、デカレンジャーロボ・ビルドアップ! デカロボは連続攻撃で怪重機を撃破……と思われたが、 突如地下から飛び出した巨大な触手が倒れた怪重機を食らって姿を消す。
 「ふん、ギーガス、こんな所に隠れていやがったのか」
 そう、それこそが自ら成長するマシンモンスター、ギーガスであった……。
 相変わらず、ボスに次ぐいい男ポジションのセンちゃんの交流話を軸に、これまで以上の脅威に対するパワーアップ展開。 定番ながらツボを押さえた構成で、前回やらかした武上純希が、今回は手堅くまとめてきました。これぐらい色々と要素があれば、 前後編でも展開がそれほど緩まない。
 次回、あれ、センちゃん回の筈なのに、なんか予告で、あの人が真ん中に……。

→〔その4へ続く〕

(2013年3月5日)
(2017年3月14日 改訂)
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