■『特捜戦隊デカレンジャー』感想まとめ10■


“デカ! デカ! デカ! デカ! デカレンジャー
ジャッジメントタイム! デカレンジャー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜戦隊デカレンジャー』 感想の、まとめ10(Episode.46〜Episode.50)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆Episode.46「プロポーズ・パニック」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久)
 パトロール中のセンちゃんとウメコだが、夜勤明けだというのにウメコは不気味なぐらいのハイテンション。
 「実はこの後、デートなんだ! もしかするとあたし、近々、寿退社するかも」
 寿退社について解説するナレーション(笑)
 ウメコ、いつの間にやらIT系に勤める5個上の彼氏と交際中。仕事が忙しくていつも1時間しか会えない彼氏・ヒロノブだが、 ウメコの気持ちを常に理解してくれるイケメンなのだという。
 比べられたセンちゃんは、「地味で変」扱い。
 勤務が終わったらデートだ、と張り切るウメコだったが、そんなタイミングで、大気圏を突破した密輸犯が発見され、 デカウイングロボで緊急出動する事に。デカバイクロボ(テツ、無事だった!)が追っていた怪重機・ハンタージェット2号を補足したデカウロボ、 デートに急ぐピンクの恋の魔法により、機動力で上回る筈の怪重機を撃墜。
 「また見てしまった……理論を越えた戦い」
 チーフ、テツはもう、特凶に帰っても使い物にならないかもしれません……。
 操縦しているのはメカ人間だと判明し、ウメコ、怒濤のロケットキック。5号機のコックピットを怪重機のコックピットにぶつけて、 直接、内部に突入。怪重機を確保すると、急いでお洒落してデートへと向かうのであった。
 今日もきっかり1時間限定、というウルトラマンみたいな彼氏と、歌までつけて水族館デート。ウメコは本当に、 最初のメイン回から延々、スタッフに愛されすぎています(笑) ヒロインポジションという扱いが多めなピンクですが、 それにしても年間通してメイン回がここまで「ウメコ可愛いよウメコ」で貫かれているというピンクも、 なかなか居ないような。
 まあその、ウメコとジャスミンへの愛のしわ寄せが、中盤ぐらいまでバンとホージーに行っているのが今作の特徴ですが(^^;
 「君と結婚したいんだ。受けてくれる?」
 バラの花の中に潜ませて、とキザに指輪を渡されるウメコだが、さすがに即答を躊躇う。
 「少しだけ、待って……まさか本当に、結婚なんて」
 ウルトラ彼氏はそこで時間切れ。お別れは抱きしめておでこにキス、とスタッフ、やや暴走気味(笑)
 一方デカベースでは、どうやらウメコに結婚を意識する彼氏が出来たらしい、と口を滑らせたセンちゃんが、 何故かバンにヘッドロックを受けていた。
 バン、男とか女とか関係なく、とにかく他人に恋人が居るのがねたましくて仕方がないらしい(笑)
 よーし、そこで余裕で構えている犬に、無制限一本勝負を挑むのはどうだろう。
 そこへ鹵獲した怪重機の中に積まれていた密輸品の分析を終え、スワンが入ってくる。地球へ密輸されそうになっていたのは、 怪しげな青いキノコ、通称・サイコマッシュ。食べると1時間だけ、他人の心を見通して理想の姿に変身できるという特性を持ち、 それを利用した詐欺事件が多発した事から、宇宙法で栽培禁止になっているキノコであった。
 このサイコマッシュを、とある宇宙人の為に密輸していたのは、エージェント・アブレラ。 宇宙警察に復讐する為のビッグプロジェクトに着手しているから、こんな細かい仕事どうでもいいなー、と、最終章への伏線を張りに、 ちらっとだけ登場。
 サイコマッシュの輸入者を探し出そうと、匂いを追うべく久々にマーフィーに役割が振られるが、そのマーフィーは、 指輪をはめて出勤してきたウメコに飛びかかる。
 「サイコマッシュの効き目は1時間……」
 1時間だけの王子様、地球産ではない宝石のついた指輪、マーフィーの行動……噛み合っていく符号に、待機組となったセンちゃんは、 ウメコに敢えて厳しい問いをぶつける。
 「三ヶ月前に知り合うなり、まるで魔法みたいに君の気持ちがわかる、1時間だけの王子様。悪いけど、そんな話、 上手すぎる気がするんだ」
 「私が騙されてるっていうの!?」
 一瞬、おでこに妙な痣が浮かび上がったウメコはセンを振り払って走り去ってしまい、センはその痣について署のデータベースで調査。 そこで関係が判明したのは、騙した女性のピュアなハートを吸い取る宇宙の結婚詐欺師、スケコ星人マシュー(笑)
 名前、名前が酷すぎる!
 女性を食い物にするマシューだが、その最悪の性質は、マシューから贈られた指輪を受け取り結婚にOKすると、 被害者はピュアハートを吸い尽くされ、体が砂となって死亡してしまう事であった。
 …………えー、結婚詐欺では済まないような(^^;
 やむを得ない種族の性質ではなく(さすがにそんな食性の宇宙人は、この世界観では容赦なく滅ぼされる気がする) 趣味でやっているのだとしたら、かなり猟奇的なシリアルキラーだと思うのですが、どうして犯罪ファイルの登録、結婚詐欺師なのか(笑)
 慌ててウメコに連絡を取るセンちゃんだったが一足遅く、ウメコはヒロノブから呼び出しを受け、センちゃんからの着信を拒否。 ウメコより先にマシューの元へ辿り着かなければならないが、頼りになりそうなマーフィーと4人の仲間達は、 サイコマッシュの探索中にメカ人間の襲撃を受けて囲まれていた。
 ここではマーフィーにも戦闘シーンが入り、ウメコ回に合わせてか今回は大活躍。 撮影の手間というのが最大のネックだったのかとは思いますが、ブレイク登場以降、しばらく消えていた存在をこの最終盤、 帳尻を合わせてきました。
 シンキングに入ったセンちゃんは、サイコマッシュを押収されてマシューが焦っているに違いないと一計を案じ、 デカベースから捕獲した怪重機で出撃。それを目にして、 アブレラが再びサイコマッシュを手配してくれたのだと思いこんだマシューは怪重機のもとにまんまと誘き出されるが、 その前に立ったのは、センちゃん。
 「スケコ星人マシュー、結婚詐欺及びピュアハート吸引における、273の殺人の罪で、ジャッジメント」
 かなりデカゲージが溜まってきているようで、ここで静かに言うのが格好いい。
 「待てよ。俺は悪い事なんかしちゃいねえ。あいつら、俺に騙されている間、いい思いしてんだ。ピュアハートはその料金代わりさ」
 デカにはめられた事を悟るマシューだが、テンプレートな台詞で全く悪びれない。ここはストレートによくある台詞を持ってくる事で、 マシューの性格の悪さと、デリートへの期待を高めるという構成。
 ヒロノブの元へと向かっていたウメコは、怪重機の姿に不審を抱いてその後を追っていた所、2人が向き合う姿を目撃してしまう。
 「ヒロノブさん……センさん?」
 「デリート許可」
 よくわからない状況にウメコが思わず身を隠した柱で、左側にヒロノブ、右側にセンちゃんと分割して見せるのは、 細かく上手い演出です。
 「おまえのターゲットの中に、ポニーテールで、背の低いデカが居ただろう?」
 銃を抜いたセンちゃんがウメコの事を聞くのはセンちゃんの優しさからなのだけど、これにより、 自分が詐欺師に騙されていたという真相をはっきり知ってしまうウメコ。
 しかしまあこの局面で凄くどうでもいい事なんですけど、ウメコのアイデンティティはやはり「背の低い」所にあるのか。
 「どうしてわざわざ、三ヶ月も付き合ったんだ?」
 マシューが時間をかけて標的と付き合うのは、自分に本気で惚れさせないと、質の良いピュアハートを吸い取れないから。 ……なんかちょっと、某黒岩都知事閣下を思い出します(笑)
 「それが裏切られた時、どれだけ傷つくか、わかってるのか?」
 「どうせプロポーズを受けたが最後、砂になって消えちまうんだ。どんだけ傷つこうが問題ねえだろ。つーか、傷つくようなたまか?  こんなもんいそいそ作ってきやがって。この星の言葉でいやぁ……うぜーんだよ」
 マシューはウメコにプレゼントされた手作りの人形を踏みにじり、蹴り飛ばす。
 一度は構えていた銃をホルスターに収め、人形を拾うセンちゃん。
 「ウメコはなぁ…………ウメコはなぁ……いつも元気で、ひたすら明るいけど、 だからっていつも強いわけじゃないんだ。繊細で、傷つきやすいとこだって、あるんだ。――その気持ちを土足で踏みにじるなんて、 許さない。俺は絶対に! 許さない!!」
 コンピューター少女から宇宙漢方医まで、女が絡むと格好良さ7割増しのセンちゃん。
 というかこんなの聞かされたら、物陰のウメコが撃墜されませんか?!
 怒れるセンちゃんは突撃し、素手でマシューを殴り飛ばすと、マウントから打撃のラッシュ。
 どうせデリートしたが最後、細胞一つ残さず消えちまうので、どれだけ傷つけようが無問題。
 珍しく犯人との生身での殴り合いを交え、ボディ一発から顎に蹴りを浴びせるが、倒れたマシューはアリエナイザーの正体を現し、 ビーム攻撃。
 しかしとうとう、素でビームを受けても耐えました(笑)

 途中だが言っておく! バーニングセンちゃんは、無敵だ!!

 「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 変身したデカミドリはマシューに飛び蹴りを食らわせ、更に連続バック転からの脳転かかと落とし。相変わらず、キレるとよく回ります。
 「ウメコが何も知らない内に、おまえには消えてもらう」
 緑はSWATモードでDリボルバーを構えるが、その銃口の前に立つウメコ。
 「ウメコ……」
 「エマージェンシー」
 顔を見せぬまま変身したウメコは、切りかかってくるマシューを蹴り飛ばし「さよなら」と、自らDリボルバーで滅殺。
 これウメコでやるから「愛/哀」という感じだけど、ジャスミンでやると多分「憎/怒」という感じになるので、 ウメコの話だったな、と(おぃ)
 ここでメカ人間を撃破した仲間達がやってくるが、終わってみればクライマックスバトルは2人で処理、というかなり変則パターン。 考えてみるとロボ戦は前半でやって、4人も途中で軽く戦って、と一応ノルマは消化している、というのも細かく上手い(本当に、 消化、という感じではありますが、やるとやらないでは大違い)。
 「ウメコ……」
 「とゆーわけで、あたし、寿退社しませんから! 残念!」
 「いいよ……無理しなくて」
 ここで、後ろのジャスミンの方に飛び込んだらどうしよう、とちらっと思いましたが、センちゃんの胸で泣くウメコ。 バンとかホージーさんとは、持って生まれたモテエネルギーの違いを見せつけます。
 数日後…………
 雑誌による今月の運勢は「新しい恋の予感」に、はしゃぐウメコ。
 ボス「ふぅ……ウメコも、すっかり元通りだな」
 「ウメコー、そろそろパトロール行くよ?」
 声をかけられたウメコは、妙にセンちゃんを意識する自分に気付く。
 「どうしたんだウメコ?」
 「いやーーーーー」
 飛び出していくウメコ、慌てて追いかけるセンちゃん、微笑ましいといった感じに視線を送るジャスミンとホージー、 よくわかっていない様子のバンとテツ、笑顔を向け合うボスとスワン。
 占いのラッキーナンバーは……3。
 「ん。あれは……あれ、かな」
 「あれは、あれね?」
 この夫婦、ある意味で最終回だった第36話の公開カミングアウト以来、すっかり部下にかこつけてのろけるようになりました。
 そろそろ、ヌマ・O長官がキレそうです。
 というか、キレていいと思う。
 喰らえ必殺! 大回転・辞令アタック!!
 「クルーガーおまえ、いい加減にしないと本部資料室に配属して朝から晩まで書類整理させるよ?」
 おまけコーナーは、着物姿でのお正月の挨拶。
 宇宙警察ものにそぐわないという判断だったのか、年末年始も季節ネタは本編にはほぼ組み込まず、番外で処理。 クリスマスも全く意味なくアリエナイザーが「メリークリスマス!」と叫んでいるだけでしたし (序盤はプレゼントと引っかけて洒落た感じだったけど、途中から何の意味も無くなった上に、 怪人の性格が別に洒落ていないというまとまりの悪さ)。夏場も男衆が立て続けに半裸を見せつけただけで、 特に海が出てくるわけでもなく、年間通して季節感は薄め。
 定例のウメコ可愛いよウメコ回と、センちゃんバーニング回を融合した結果、急に進行するフラグ(笑)
 センちゃんは、モテアクションが常にナチュラルで恐ろしい。
 結婚詐欺師に騙されて……という大筋は、刑事ものなどのテンプレートな筋を持ち込んで『デカレンジャー』として調理したエピソード、 という意味で第34話「セレブ・ゲーム」(監督:鈴村展弘 脚本:武上純希)、第35話「アンソルブド・ケース」(同じ)、 と大枠で同じカテゴリなのですが、第34話がくしくもバーニングセンちゃん回だった事も含め、ちょうど対照的。
 第34・35話は結果として『デカレンジャー』として暗黙のタブーになっているデリート周りに無駄に触れた上に、犯人の描写や、 デリートのカタルシス不足など、全体が中途半端になってしまい、 率直に言って王道フォーマットを『デカレンジャー』として調理するのに失敗していました。
 それに対し今回は、ウメコは徹底的に騙されている、犯人はどうしようもない悪党(ここで結婚詐欺だけだとデリートに繋げるのが弱いので、 猟奇殺人鬼要素を加えているのがポイント)、バーニングセンちゃんによる容赦ない制裁、とそれぞれの要素を描ききる事で、 本当は人権とか人命とか色々あるけど『デカレン』世界だからデリート一発ですっきり! という構造で綺麗なカタルシスを生みました。
 ここで例えば第34話のように、悪側の悪っぷりの描写が不足していると、逆にセンちゃんが鬼畜に見えてしまうのですが、 マシューを徹底的に酷い奴として描く(そしてウメコには可哀想な目にあってもらう)事で、 『デカレンジャー』としての構造を成立させています。
 前半のデートシーンを暴走気味にいっそ「阿呆か」みたいな勢いでやる事で、実は騙されていた事に対する酷さが増し、 視聴者の感情とシンクロしてセンちゃんのバーニングに繋がる。“自分の事を何でもわかってくれる王子様”に夢中だったウメコが、 普段は口には出さないけど自分の事をよく見てくれている人の事を知ったら、それは転がっても仕方ない。またオチをそうする事により、 冒頭でウメコがセンちゃんに、「地味に変」と、かつてなくストレートに酷い発言をぶつけていた事ともバランスが取れ、 物語全体が収まる。
 とまあ、荒川稔久はさすがの技量だし、中澤監督もよく脚本を汲んでいて、全体が噛み合っている。 “この話を成立させるには何をどう描写すればいいか”という部分が外れていない。
 思うに大破綻していた44話も、鈴村×武上という組み合わせでしたが、そこが読めてない、と思わざるを得ない所はあるなーと。 鈴村監督は前回45話は、普段と毛色の違う総集編風味を何とか映像で面白くしようと頑張っていましたが。

◆Episode.47「ワイルドハート・クールブレイン」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:武上純希)
 連続行方不明事件が発生し、現場で稲光が目撃されたという情報に率先して捜査に乗り出す、ホージーとジャスミン。
 その様子に、嫉妬に狂うバン(笑)
 「あの2人のコンビって珍しいよねぇ」
 首をひねるウメコだが、実は地球署が出来た当初は、ホージーとジャスミンが主にコンビを組んでいたのだった。 聞き込みを行う2人は、11人の被害者が全てエスパーである事を確認。前夜の被害現場で、 ヒーリング能力の持ち主だった被害者が治療した花をジャスミンがリーディングし、浮かび上がる犯人の姿……それは2人の予測通り、 2人にとって因縁浅からぬアリエナイザーであった。
 「やっぱり奴か」
 「デリートされた筈なのに」
 そこを強襲する、ダイナモ星人テリーX。
 「おまえ達も、あいつみたいに再起不能になりたいか?」
 頭に血が上った2人はテリーXにあしらわれて危機に陥るが、仲間達が駆けつけ、テリーは退散、事なきを得る。だが、 完全に冷静さを失っているホージーとジャスミンは2人だけでテリーXを追ってしまう。
 ――事の起こりは数年前、まだウメコもバンも配属されておらず、デカスーツも配備されていなかった頃の地球署。
 テリーXにより今回と同じくエスパーをプラズマ化して乾電池に変える事件が発生し、 それを追っていたホージーとジャスミンが捕まってしまう。その2人を助けたのが、 当時の地球署のエースにしてデカレッド候補だった刑事、ギョク・ロウ。見た目ライオン丸のギョク・ロウは2人の救出に成功するが、 アジト大爆発の際に2人をかばって足に大けがを負い、デカを引退。その事に責任を感じている2人は、 爆死したと思われたテリーXの再来に、我を失っているのであった。
 ここまで特に触れられてこなかった地球署の過去が語られ、デカレッドの配属が遅かった理由は、先代候補のリタイアの為と判明。 最終盤という事もあり、幾つかの要素を繋げてきました。
 テリーXが造り出す高出力のエスパー乾電池・プラズマXを買い取っていたのは、 宇宙警察に復讐しちゃうぞビッグイベント準備中のエージェント・アブレラ。 アブレラはエスパーだけではなく普通の人間もテリーXの能力で乾電池に変えてしまえるフィルターを渡し、 それを手に街に繰り出したテリーXは次々と人間を乾電池へ変えていく、と、割と大殺戮?でこれも最終盤ぽい展開に。
 連絡を受けて現場へ急行した青と黄は、今度は最初からSWAT変身、バン以外の仲間も到着するが、 気持ちばかり逸る2人はチームワークを乱し、逆にテリーXに追い詰められてしまう。
 その時、響く叫び声。
 「だらしないぞ、ホージー! ジャスミン!」
 そこに立っていたのは、地球署を離れて以来、全く連絡の取れなくなっていた松葉杖姿のライオン丸であった。
 「2人ともなんてザマだ! ハートは熱く持て! しかし頭は常に冷静沈着に保てと教えたのを忘れたのか!」
 怒りのあまり自分を見失っているホージーとジャスミンの為、ヌマ・O長官に詰め寄ったバンが、 ギョク・ロウを地球へと連れてきたのである。尊敬する先輩刑事の叱責に、落ち着きを取り戻すホージーとジャスミン。
 「そうだ、俺達あの日からどんな時も、クールで居ようと決めたんだ」
 ……て、

 作ってたのか、ホージーぃ?!(笑)

 あー、なんか今、全ての謎が解けた気分です。
 そうか、ホージー、スーパークールは、一生懸命、キャラ作り、だったのか。

 47話目にして、ホージーに関して、かつてない納得。
 これは武上純希が素晴らしい仕事をしました(笑)
 完全に後付けですが、今、ホージーに関するほぼあらゆるもやもやが解消された(笑)
 度々、ホージーの発言に対してジャスミンとセンちゃんが生暖かい視線を送っていたけど、 あれは小馬鹿にしているわけでも何でもなくて、心からの優しいまなざしだったのかッ!
 「燃えるハートでクールに戦う……それが私達のやりかた」
 そして更に、OPナレーションの

「S.P.D――スペシャルポリス・デカレンジャー。燃えるハートでクールに戦う5人の刑事達」

 に繋げる形に。
 「久しぶりに怒鳴られて、目が覚めましたよ」
 冷静さを取り戻した2人は、鮮やかなコンビネーションで反撃を開始し、その逆転に快哉を叫ぶバン。
 「よっしゃあ! いつもの感じを取り戻したぜ! ね!」
 「それより2代目。こんな所でぼんやりしてていいのか?」
 「あーーーっ、ロジャー!」
 バンもSWAT変身し、その突撃を見つめるライオン丸、と、過去と未来を鉄砲玉がその熱血ゆえに繋ぐ事に成功する、 という良いコンセプトの話。
 6人の一致団結したコンビネーションが決まり、追い詰められたテリーXは、プラズマXの力で巨大化。するが、ここまでが苦戦展開だった為、デカウロボが圧倒。
 「ダイナモ星人テリーX、あなたは既にデリート許可が下りてるわ!」
 というわけで、ざっくりファイナルバスターで宇宙の塵となるのであった。
 「これにて一件コンプリート」
 「ホットなハートで、クールに決めたぜ」
 実は玉露さんに長い間連絡が取れなかったのは、落ちぶれて引きこもっていたわけでも電話料金を滞納していたわけでもなく、 ある秘密任務についていた為だった。それは、全宇宙のスペシャルポリスから選抜した、新たな特殊部隊の設立。
 「名付けて、SPDファイヤースクワッド――いわば、赤い特凶です」
 ヌマ・O長官、使えない特凶に見切りをつけ、どうやら密かに組織再編を目論んでいた様子で、 長官の肩書きは伊達ではありませんでした。
 「クルーガー先輩、二代目デカレッドを俺に預けてくれませんか」
 そしてその新設部隊に、バンがスカウトされる……と、アブレラさんのビッグイベント以外の引きネタも入れて、今回は良かった。

◆Episode.48「ファイヤーボール・サクセション」◆ (監督:竹本昇 脚本:横手美智子)
 ファイヤースクワッドへの異動が正式に決定したバンは、自分が抜けた後の地球署を心配する。
 「あいつらには、俺みたいな、火の玉が側にいないと駄目なんだ」
 言いたい事はわかるのですが、どうして凄い上から目線(笑)
 「俺が居るじゃないですか!」
 「は? おまえが?」
 すっかり地球署に居残るつもりのテツに、物凄い馬鹿にした顔を向けるバン。
 「任せてください。先輩の代わりに、俺が火の玉になります!」
 チーフ、やっぱり早く回収してください、チーフ……。
 「テツはでかい事言ってたけど、やっぱまだ、任せられないよなぁ」
 栄転で気が大きくなっているのか、ひたすら上から目線のバン。……いや、計算しなくなってから確かにぽんこつ化が進んでいるけど、 一応テツ、エリートだから忘れないであげて!
 バンが地球署が好きだという感情的なものに建前で理屈をつけているというのも、 地球署のデカレンジャーにおける自分のポジションの必要性を自覚しているというのもわかるのですが、 今回になってやたらに自分の存在を過大評価しているのは引っかかるところ。
 ファイヤースクワッド栄転も、玉露さん肝煎りの引き抜きで、対外的に大きな実績をあげたというわけではないですし。 パターンと言えばパターンになってしまいますが、全宇宙的な大きな事件の解決に貢献するとか、 間に一つぐらいあっても良かったかもしれません。或いは、解決した事件がそういう扱いだったと、 客観的に描写するか(鏡の人の事件などは、かなり大きかったわけではありますが、特に描写の後押しはない)。
 中盤までのバンの粗雑な扱いが、年間としてはやはり、響いた感じ。
 そんなこんなで気持ちを持てあましながら休憩中、車泥棒に遭遇したバンは犯人を追い詰めるが、犯人は何故か「俺じゃない!  やったのは俺じゃないんだ!」と叫びながら、自分に銃を撃って死亡してしまう。
 死体の脇に転がり落ちた赤いカプセルを手に取ったバンに、死体から伸びる青白い触手――遅れてやってきた仲間達が見たのは、 赤いカプセルを手に無言でストレッチをするバンの姿だった。
 カプセルの正体は、大量破壊兵器用圧縮エネルギーの詰まった違法危険物、ココ・カプセル。 それを持ったままバンはパトカーで走り出し、後を追ったバンとテツに銃撃を浴びせる。実は死亡した宇宙人、そしてバンは、 他者に神経接続する事でその肉体を操る、クラーン星人ジェリフィスに乗っ取られていたのであった。
 この連絡を受け、テツ、バイクに乗ったままデカブレイクに変身。停止したバイクがCGから実体化していますが、 実物は初でしょうか。このシーンの為だけに作ったとは考えにくいし、サンプル的な大道具があったのか。停車中の全体像映ると、 明らかに置物っぽい(笑)
 「俺を撃てばこいつも苦しむ。おれを殺ればこいつも殺られる」
 バンの首筋に顔を出すジェリフィスだが、その触手などに与えたダメージは、バンにも痛みを与えてしまう事が判明。 バンの肉体そのものを乗り物かつ人質としたジェリフィスは、デカレッドに変身すると、5人を撃って逃走する。その目的は、 ココ・カプセルのエネルギーを用いて大陸を沈め、地球を自分の住みやすい水の惑星に改造してしまう事。
 「アブレラがポイント512の灯台に、起爆装置を用意してくれているんだよ、相棒」
 「相棒って言うな」
 「じゃあ、先輩かな」
 「あいにく俺の相棒と後輩は1人しかいない」
 「つれないじゃねえか。おまえが死ぬまで、一心同体だってのによぉ」
 デカレッドはバイクで灯台へと向かい、その阻止に追いすがる5人だが、洗脳バンに軽く蹴散らされてしまう(いわゆる、 肉体能力を自制なしに限界まで引き出している状態か)。Dマグナムで吹き飛ばされた5人は変身が解けて地面に転がり、 灯台へ向けて歩むデカレッドの背中を、遂に撃つホージー。
 「そうだ相棒、俺を撃て!」
 地球水没を阻止する為には、それしかない。覚悟を決めたバンの言動に、ジェリフィスは敢えて足を止め、変身を解除。バンの生身を、 仲間達の前に曝す。
 「おまえ達に、仲間は撃てねえよな」
 時々、塩屋浩三さんの凄く下品な小悪党演技を聞くと、妙にホッとします(笑) 物語に必要な下品さというか、実に、素晴らしい。
 一度は引き金を引いたホージーだが、生身のバンを目の前にして、結局は銃を撃つ事が出来ない。
 「おまえらそれでもデカか! そんな事だから俺は、ファイヤースクワッドにいけないんじゃないか。……馬鹿野郎」
 まあここは本来ならホージーさんがシビアな判断を下せなくてはいけない所ですし、バンの言っている事は間違っていないのですが、 どうして今日はそんなに激しく上から目線なのか。出世はかくも人を変えるのか。
 その時――バンの覚悟に1人の男が応える。進み出たテツはデカブレイクに変身すると、 ジェリフィス操るバンの射撃をものともせずに懐に飛び込み、ハイパーエレクトロフィストを心臓に直撃させる!
 「やったなテツ…………後はお前に、まかせ……」
 「心臓停止――信じらんねえ。こいつ、本当に撃ちやがった」
 ジェリフィスはテツの体を奪おうとするがファイヤーフィストに焼かれて消え去り、 息絶えたバンの周囲で悲しみにくれる仲間達……だが、テツは考え無しにハイパーエレクトロフィストを打ちこんだわけではなかった。 バンの死体に歩み寄ったテツは、その体に電撃心臓マッサージを施す。
 「先輩、起きて下さい! 正義は必ず勝つんでしょう?! 弾けてくださいよ先輩!!」
 テツの叫びと必死の心臓マッサージが功を奏し、バン、蘇生。一か八かだったが、 テツは電撃を調整してバンを仮死状態に置く事に成功していたのだった。
 「俺以上に、火の玉野郎だぜ」
 ……テツ、到達点はそこでいいのか(笑)
 展開としては、計算でやっても良かった気はしますが、火の玉2代目にされてしまいました。あと、 テツの 洗脳 成長物語の着地点として悪くはないのですが、 本人の台詞通り本来なら物語の大きな流れとしてもホージーがやるべき仕事であり、結局、 テツとホージーは役割を分担する形になってしまった、というのは少し残念。
 テツの見事な活躍でココカプセルによる大陸大爆破は阻止されバンも復活するが、 焼け死んだかと思われたジェリフィスはまだ生きていた。海に隠れていた怪重機が出現し、バンはデカマシンの出動を要請。
 久々にデカベースからマシンとバイクの出動シーン……と思ったら、それを見つめるエージェント・アブレラ。
 「案の定失敗だったな。ま、ジェリフィスならこの程度だろう。だが、ここからだ」
 ポイント512では、ジェリフィスをジャッジメントするスデカロボ。
 「クラーン星人ジェリフィス! 八つの惑星を水没させた罪! 並びに人の体を操って犯した、673件の窃盗!  及び214件の殺人の罪で、ジャッジメント!」
 ジャッジメントタイムが発動する一方……
 「ふふふふふふ……私の本来の目的をジェリフィスは果たしてくれた。今、地球署はからっぽだ」
 アブレラ自らが操る巨大ドリルがデカベースに突撃し、沈黙するデカベース1階。デカレンジャーとデカマシンをベースから引き離し、 その間に地球署に強行突入を仕掛ける……それこそが、顧客そっちのけで復讐に走るアブレラの真の目的であった。
 デカマシン出動時にスワンさんから「ちょっと遠い」という発言があったり、やたらに「ポイント512」が強調されるのが、 ジェリフィスが知らずにアブレラの陽動作戦に利用されていた伏線として機能。
 アブレラはベース内部に大量のメカ人間を放ち、署員との銃撃戦など、大盤振る舞いの多人数アクション。しかし、 本丸に控えるのは100人斬りのデカマスター。果たしてアブレラは、如何にしてこの地球署の切り札を止めるのか?!
 一方、ガトリングパンチでジャッジメント寸前だったスデカロボも、緊急事態の連絡に動揺した隙を突かれ、 怪重機の反撃を受けてしまう。
 アブレラの罠により最大の危機に陥る宇宙警察地球署。採算度外視、エージェント・アブレラ史上最大の作戦が、今始まる――。
 おまけコーナーはさすがになく、ボスとアブレラの対峙で、次回への引き。
 次回、儲けを捨てた商人の本気を、君は見たか!
 センちゃん×ウメコ、ジャスミン&ホージーと来て、バン&テツ回から、物語は地球署最大の戦いへ。 テツは追加戦士として大きな破綻こそ呼びませんでしたが、独自の立ち位置も完全に確保しきれなかったのは、残念な所。 戦闘能力ではバブル崩壊が激しく(描写のブレも大きく)、オカルトにかぶれてからはエリート部分はあまり表に出ず、 最終的に二代目バンでは、配属先が悪かったとしか思えません(笑)
 早々に地球署に馴染んだのは面倒くさくなくて良かったのですが、こうなるのならもう少し尖っていても良かったか。 逆に後輩キャラで突き進むなら、もう少しバン以外のメンバーの影響を受けても良かったと思います。 初期メンバー5人のメイン回をしっかり回しているしわ寄せで、メイン回が少なかったのも、不幸。登場編後、 最もスポットの当たった過去の因縁話が、かなり出来が悪かったのも不幸。
 ノーマルデカよりは強いけどマスターよりは弱くてSWATより強くないといけない気がするけど弱く見える、という、 物語の都合で戦力ヒエラルキー上の位置が見失われたのも、少し可哀想でした。 せめてチーフが追加装備ぐらいくれたらもう少し格好がついた気がするのですが、特凶は生粋の殺人拳集団なので、 装備一つでデリートの極みを目指さなくてはならないのでありました。

 破!

◆Episode.49「デビルズ・デカベース」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 デカベースを強襲し、制圧していくアブレラ率いるメカ人間軍団。スワン部屋にもイガグリ先生が侵入し、
 マーフィー・殉職。
 デカスワンに変身する前に気絶させられてしまったスワンだが、その寸前、あるスイッチを押す事に成功する。
 一方、メカ人間をフィーバー中のボスだったが、その前に遂にアブレラが姿を見せる。
 「もうお疲れかな、ドギー・クルーガー」
 あまりにも鮮やかな、アブレラのデカベース強襲。それは、デカベースの外壁が特殊合金アルビシウムで出来ている事など、 これまで地球で犯罪を行った数々のアリエナイザーから、様々な機密情報を手に入れていたが故であった。
 後付けではありますが、初動の圧倒的優位を、アブレラさんらしく理由付け。
 とはいえ、最初からいずれ地球署を襲撃しようなどと考えていたわけではなく……アブレラさんが地球署を攻撃する理由、 それはひとえに、地球での累計損失額が100億宇宙円を超えた為であった!
 やはり、儲かってなかった…………!(血涙)
 全宇宙の犯罪マーケットを仕切っていると、急に大きな事を自称し始めたアブレラさんは、その宇宙商人の誇りに賭けて、 地球署に意趣返しせずにはいられなかったのである。
 ラスボスの最終作戦の動機:商売で損したから(逆恨み)
 というのは、なかなか斬新でしょうか(笑)
 「闇に潜んで悪を蔓延らす貴様のような奴は、絶対に許さん!」
 「現実を見ろクルーガー。宇宙には正義などという見えないものより、ずっしり重い札束が大好きという奴等が、 まだ掃いて捨てるほど居る」
 「宇宙警察がある限り、悪が蔓延ることはない!」
 勿論、「ボス」と呼ぶわけにはいかないのですが、アブレラさんがボスを「クルーガー」と呼ぶのは、なんか好き。
 アブレラを成敗しようとするボスだが、構えた剣が撃ち落とされる。その前に姿を現したのは、 アブレラ特製ハイパーマッスルギアを装着した、凶悪犯罪者、魚類四天王。
 ドラグ星人ガニメデ(カニ)、ギモ星人アンゴール(アンコウ)、ジャーゴ星人スキーラ(シャコ)、 ゲド星人ウニーガ(ウニ)……かつてマスターに特殊刑務所送りにされた4人が今、脱獄と引き替えにアブレラと傭兵契約をして、 地球へ降り立ったのであった。なお、ウニーガはイガグリ先生のモデルだそうで、声は同じく中井和哉。
 変身したマスターと魚類四天王の戦いになるが、4対1でも、マスター強し。だが、人質にされたスワンを助けに行動して、 背後から集中攻撃を受けてしまう。
 「まともにやってすんなり勝てるとは思ってねえさ」
 強化マジックアイテム付き4対1の上で最初から人質作戦予定とか、どれだけバケモノ前提なのか、デカマスター。
 劇中端々の台詞から全盛期ではない扱いのようなのですが、やはり全盛期は、1人で宇宙的犯罪結社とか壊滅させていたのだと思われます。
 マスターは抱えたスワンさんを何とかダストシュートで外へ脱出させるが、自身は大ダメージを受けてしまう、一方、 ジュリフィスと怪重機をなんとかデリートし、ライディングデカレンジャーロボが戻ってくるが、 その前に怪重機アブトレックスが立ちはだかる。前回、デカベース1階に突っ込んだ巨大ドリルが「チェーンジ・アブトレーラー!」 (ゲッターな発音で)のかけ声でドリルから人型に変形。その一撃を受け、折れてしまうジャッジメントソード。
 デカロボもデカバロボも怪重機に圧倒される中、デカベースクローラーが起動するが――その砲撃は2体のデカロボへと向けられる!
 スワンを救うも魚類軍団の集中攻撃を受けたマスターは遂に倒れ、今やデカベースは完全にアブレラの手に落ちてしまったのだ。 アブレラはデカベロボを起動し、味方のやり過ぎた最大戦力が、とうとうラスボスに(笑)
 大概なんでもありなアブレラさんですが、いきなり最終兵器を持ち出すよりも、今あるものを利用するという展開は、 緊迫感+らしくて、いいと思います。
 「市民の味方、正義のデカベースロボが、平和な街を攻撃し、破壊の限りを尽くすのだ」
 アブレラはデカベースロボを用い、ランダムに選んだポイントを破壊して回る事を宣言。 アブトレックスビームの直撃を受けてデカロボも木っ端微塵となり、遮る存在の無くなったデカベロボは、 平和な街をヴォルカニックバスターで蹂躙していく……。
 ここまで怒濤のAパート、マーフィー、スワン、ボス、デカベース(ロボ)、デカレンジャーロボ、 と片っ端から戦力を失っていくという展開。
 6人勢揃いのアイキャッチからBパートで夜が明けて、何とか合流する6人。ボスへの通信に成功するが、 通信機の向こうからは息も絶え絶えな声が流れてくる。
 「みんな……無事か……俺の事は……もう忘れろ……」
 スペシャルポリス 心得の条
 我が命我が物と思わず
 ジャッジメント、あくまで陰にて
 己の器量伏し、デリート如何にても果たすべし
 なお 死して屍拾う者なし 死して屍拾う者なし 死して屍拾う者なし
 悲鳴をあげてすがろうとする部下を一喝するボスだったが、「良く聞け、デカベースの……」と何かを告げようとした所で、リタイア。 ……リタイア。多分リタイアだと思う。リタイアじゃないかな。まちょっと覚悟はしておけ。正直、どのタイミングで復活するのだろう、 という気しかしませんが(笑) まあさすがに、最終回のおいしい所を持ってはいかないとは思いますが……それ故の、 今回の見せ場でしょうし……多分……たぶん……まちょっと覚悟はしておけ。
 ボスとの通信が途絶え、悲嘆にくれる6人の元へ、アブレラの正体が判明したとヌマ・O長官からの緊急連絡が入る。
 レイン星人アブレラ。
 その正体は、かつて7つの銀河に跨がる惑星間戦争を引き起こし、金儲けの為だけに第12銀河を消滅させた経歴を持つ、 宇宙犯罪史上最悪の武器商人であった。
 その正体が判明し、時既に遅く地球署が壊滅状態に陥った事から、宇宙警察はその主力部隊を地球に向けて発進。地球を守り、 アブレラを葬り去る為に、宇宙警察の大戦力を持ってデカベースロボを撃破するという決断を下す。 主力艦隊の地球到着まで約2時間――デカベースの中にはボス、スワン、その他職員が生き残っている可能性、 みんなの貴重な私物などもあったが、このままデカベロボに地球を焼き尽くさせるわけにはいかない、断腸の選択であった。
 ……というか、宇宙警察の主力艦隊を投入しないと、止められないのかデカベロボ(笑)

 気を付けよう、甘い言葉と最終兵器。

 あと、デカベースロボを撃破する、だけにしては6人の反応が凄く深刻なのですが、やはりあれですか、宇宙警察の主力艦隊とか来ると、 ちょっと熱線砲の威力が過剰設定気味だったりで、デカベロボごと半島の一つや二つ消し飛ぶ程度のオーバーキルは日常茶飯事だったりするのでしょうか。
 このままでは、別の角度で地球が危ないかもしれない……しかしもはや、自分達には何も出来ないのか……その時、まさかのあの男が喝を入れる。

「――俺たちは何だ?」

 赤「…………俺たちは……ボスに選ばれたデカだ!」
 黄「そうよ! ボスが、選んでくれたチーム」
 桃「悪を憎み……」
 緑「正義を愛し……」
 鉄「それぞれの個性を組み合わせて勝つ!」
 青「俺たちは、そういうチームだ!」
 懐かしの14話を受ける形で、最終回を前に改めて、“チーム”を強調。ホージーさんが格好いい所を貰ったのも含め、これは良かった。
 センちゃんがシンキングし、デカベースの跡地へ向かう6人。その地下格納庫には、 デカベースに格納されたままだと思われたパトウイングが、スワンの手によって緊急退避させられていた。 6人はデカベースロボを食い止める為、デカウイングロボによる、反攻作戦を決断する。
 「俺たちはぜっったい勝ぁつ!」
 先の台詞をホージーが主導した代わりに、バンがこちらでバランス取り。
 街を蹂躙するデカベロボに向けて、突撃を敢行するデカウロボとデカバロボ。
 「プロは同じ手を、二度は食わない!」
 その前に立ちふさがったアブトレックスのビーム攻撃をかわし、二体のロボは、怪重機に連続攻撃。 そしてデカバロボのエネルギーを使った零距離射撃・アルティメットバスターで一気にアブトレックスを撃破する (操縦していたアンコウ、いち早くリタイア)。デカウイングロボは続けてデカベロボへと挑みかかり、 面倒くさいのでいきなりヴォルカニックバスターを撃とうとするアブレラだが、射撃体勢に入ったその隙をついて、 デカウロボの背後に隠れていたデカバロボからSWAT5人がデカベース内部へと直接入り込む!
 互いのロボットを乗り替えた、巧妙なフェイント……1人でデカウロボを操るテツが、なんかエリートぽいぞ……!
 SWAT5人はコックピットへ突入するが、余裕で待ち受けるアブレラ。
 「追い詰めたつもりかい……笑えるね」
 アブレラが傍らのスイッチを押すと、5人の変身が解除されてしまう。デカベースの機能を完全に制御した今、 アブレラにとっては変身システムもその意のままだったのだ!
 そういえば、基地からデカメタルを飛ばして変身しているのでした……と忘れがちな基本設定を上手く組み込んだピンチ。
 アンコウを失い、魚類四天王改め三羽がらすの攻撃を生身で受け、追い詰められていくデカレンジャー。 外ではデカベロボの自動反撃を回避し続けるブレイクもまた、変身が解除されて苦戦を強いられていた。
 もはや宇宙警察艦隊によるデカベロボ(ごと地球の一部)消滅しか手はないのか……だが、
 「宇宙警察そのものが、もう間もなく消滅するのだ」
 エージェント・アブレラは当然のごとく、宇宙警察本体の増援を計算に入れていた。 既に衛星軌道上には艦隊を待ち受ける罠が張り巡らされており、このまま地球に近づけば主力艦隊は逆に宇宙の藻屑となる。 そして大規模な戦力を失えば、力で力に勝ってきた宇宙警察は、もはや瓦解を待つのみ。
 「私の理想の世界が訪れるのだ。邪魔な宇宙警察の居ない、金だけが全ての素晴らしい犯罪の世界がな!」
 地球署への意趣返しどころか、それを撒き餌に宇宙警察本体にも壊滅的損害を与え、宇宙を混沌の犯罪帝国へと変える――それこそが、 エージェント・アブレラ渾身のビッグイベントの真の目的であった!
 ナレーション「遂に明かされたアブレラの野望」…………ていやでもアブレラさん、 2ヶ月ぐらい前まではそんな事全く考えていなかった気がするんですよ(笑)
 「ふふふ、辺境は宇宙警察の監視もゆるいし、たまには小商いもいいものだな。どれ今のうちに、 積んでいた大作RPGでも片付けるとするか」ぐらいのバカンス気分だったと思うのですが……なんかこう、 変なスイッチを入れてしまった気がします。
 思わぬ勢いで迫り来る宇宙警察最大のピンチ! 果たして地球は、デカレンジャーは、宇宙の平和はどうなるのか?!  というか前のめりに自ら艦隊率いてしまう長官はどうなのか! 宇宙警察はどこまで血に飢えた野獣の巣窟なのか!
 おまけコーナーでは、ギンとハクタク、そして市民がデカレンジャーを応援するシーン。 こういう広がりを挟む所がここしか無かった、という言い方もできますが、アブレラが終始、宇宙警察に憎しみを向けようとしている中で、 いやいや宇宙警察地球署はこれまでの活躍で市民に根付いているんだ、というのを隙無く抑えて上手に描写。次回――最終回。

◆Episode.50「フォーエバー・デカレンジャー」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 「負けるもんか……闇に潜んで悪を蔓延らすおまえらなんか、絶対に滅びる。正義は絶対勝つんだぁぁぁぁぁ!!」
 バンの咆吼→ドアップからいつものナレーションに各人のアップを合わせる、省略OPが格好いい入り。
 ヌマ・O長官にアブレラの罠を伝えようとするホージーだったが、強力な通信妨害により連絡を取る事ができない。 生身で魚類たちに追い詰められていく5人だったが、その時、空気を裂く鋼鉄の牙!
 マーフィー、生きてたーーー!!
 途中、存在が消失していた事など忘れ去るような、マーフィー奇跡の大活躍に魚類がひるんだ隙に、5人は一時撤退して分散。 外ではテツが、必死な顔でデカウロボを操りデカベロボと交戦中。テツの必死な顔は、必死感が物凄く伝わってきて、 正直少し笑えます(おぃ)
 一方、カプセルで脱出したスワンは、デカベースが占拠されたという状況を知る。
 「完成したばかりのあのシステム……ドギーだけは知ってる筈なんだけど……」
 死地を逃れたとはいえ、変身も出来ず、外部との連絡も取れず、迫り来る魚類とメカ人間に追い詰められていくデカレンジャー。 そしてこのままでは、宇宙警察の主力艦隊がアブレラの罠によって宇宙の藻屑と消えてしまう。
 この状況を打開する方法は無いのか……ボスの最後の言葉を思い出し、 ボスが伝えようとしていた事に活路を見いだそうとするジャスミンは、落ちていたDソードベガを発見。 それをエスパー能力で読み取る事で、スワン部屋のマーフィーの小屋に、 デカベースの全コントロール権をスワン部屋へ移し替える隠しシステムのスイッチが設置されている事を知る。
 Dソードベガを読み取ると、

 血なまぐさいジェノサイドヒストリー精神を破壊される

 のろけのスイートメモリー全く役に立たない

 を危惧したのですが、そんな事はありませんでした。
 ここで、5人の中ではボスと最も関係の深いジャスミンが関わる、というのは良かった所。また、 前回ピンチ演出だったDソードベガの落下が、逆転へのキーになるというのも、鮮やかに繋がりました。
 センちゃんと合流したジャスミンはスワン部屋を目指そうとするがスキーラに見つかってしまい、逃亡中にセンちゃんシンキング。 2人は配電室へ向かうと停電を起こし状況を混乱させ……ではなく、照明の明滅を用いて仲間達にSPDシグナル (モールス信号的な暗号通信)でスワン部屋の秘密を伝える。
 特殊技能−特殊性癖と来て、特殊チームらしい通信。
 そして外では、アブレラ操るデカベースロボ相手に、テツが奮闘を続けていた。
 「諦めろ、勝敗は見えている」
 「ナンセンス!」
 スーツ無しなので、Gで肋骨の2、3本折れていると妄想してみると、かつてなく格好いいぞテツ!
 勝手に色々フラグ立ててみたけど、
 死ぬな!
 ベース内部では、SPDシグナルを読み取った、バン、ホージー、ウメコがスワン部屋へ向かっていたが、 通路を警戒するガニメデに行く手を阻まれてしまう。ここでウメコ、必殺のバスタイムでガニメデを眩惑(笑)
 「宇宙警察地球署、胡堂小梅ちゃんは、早替わりもだーい得意って、知らなかった?」
 3話の台詞と重ねているのですが、まあそもそも、変装もあまりしなかったという(笑)  ウメコがガニメデを足止めしている間に奥へ向かうバンとホージーだったがウニーガがその前に立ちふさがり、 ホージーは射撃で弾いた小石でリフトのスイッチを入れるという超曲打ちを披露すると、ウニーガを引きつけて食い止める。 スワン部屋へ向けてリフトを上昇していくバンに向けて、渾身の思いを込めて叫ぶホージー。
 「後は頼んだぞ、相棒!!」
 「へ? この野郎……相棒って言うな!」
 スワン→ボス→ジャスミン→セン→ウメコ→ホージー……そしてバン。チームの絆とプロフェッショナルのスキルとお約束の裏返しが繋がり、 今、バンを起死回生の一手へと近づけていく。
 各人の特技を生かしながら話を転がしていく、鮮やかなAパート。いや良かった。
 誤解を招きそうな表現を敢えて使いますが、

 こういう『デカレンジャー』が見たかったんだ!!

 という展開。
 『デカレン』はもっと敵のハードルを高く設定して、それをプロフェッショナル達が鮮やかに突破していく姿を描いていく展開で良かったのではないか、 と思うところ。その辺り、全体としてはかなり意欲的な構成を組みつつ、戦隊シリーズとしてのお約束を突き破りきれなかったのかな、 と(戦隊はロボ戦などノルマも厳しいのですが)。
 最終回に至る流れとしては、それぞれが成長しているからこその究極のチームワーク……という描かれ方になっていますが、 序盤の各キャラの台詞などを鑑みるに、『デカレン』って本来はもう少し初期から完成度の高いチームを描くコンセプトだったのではないかなぁ、 とは、勝手に期待していた部分も含めて思う所です。
 落ち着いた能力を発揮するプロフェッショナルのチームに、バンという刺激物が加わり、刑事としての能力は少々劣るけど、 その熱い魂と行動力で周囲の人々を動かし、チームを変えていく……という感じだったのではないかと思うのですが、 3−4話でバンとホージーの対比に失敗、デカマスター事変、真エリート登場、と色々あって、「正義は勝ぁつ!」に軌道修正。
 結果として、バンの半人前扱いが基本設定から消え去り、チームとしては、 全員がフラットな5人+1の若き刑事達の成長物にシフトした感があります。
 そう考えると、48話のバンのやたらな上から発言は、“作品の中でのバンの立ち位置がいつの間にか変化していた”のだろうな、と。 初期のバンの立ち位置を考えると急に階段の上から見下ろしている感じなのですが、 途中でバンがもっとフラットな関係に置かれている(劇中の関係性ではなく、作中の存在として)と思うと、 性格的にあの発言は納得のいく範疇のものとなります。そのシフトが視聴者に伝わっていたかというと、少し微妙な感じはありますが。
 「正義は勝ぁつ!」以後の『デカレンジャー』が悪いというわけでは全くなく、ただ、 私が今作に対してどこか引っかかっていたもやもやの正体が、この最終回でようやく判明しました。私はつまり、 こういうプロフェッショナルな『デカレンジャー』の幻影、をどこかで追っていたのだなぁと。
 ……つまり、プロフェッショナルについて過剰な期待を抱かせたスーパークールでパーフェクトな人が悪い(笑)
 しかしあの人は、キャラ作りだった事が判明したので、あまり責められない(笑)
 作品としては、最終回だからこそ、という構成になりましたが、見たかったものが見られた、というのも含め、 この展開自体は非常に良く、ホージーさんのネタも含め、軽い軌道修正を物語として凄く上手く収めた、と思います。
 外部では決死の奮闘でデカベロボの破壊活動を食い止めていたテツが、デカバロボをオートモードで特攻させ、デカバイク、遂に殉職。 だが、デカバロボの大爆発もデカベロボに傷を負わせる事は出来ず、宇宙警察主力部隊がアブレラの罠にはまる時間が、 刻一刻と近づいていた――タイムリミットは、残り1分!
 「俺がきっちりアンカー務めさせてもらうぜ!」
 チームの仲間達を思い浮かべながら、スワン部屋へ向けて通路をひた走るバン。
 ちゃんとマーフィーの事も思い出してくれました(笑)
 だがその前に、イガグリ先生率いるメカ人間軍団が立ちふさがる。魚類三羽がらすに追い詰められていく仲間達、超必死のテツ(笑)  闇に潜む悪を砕き、宇宙に正義を吠える為、バンはメカ人間を蹴散らすと、 イガグリ先生の体を踏み台にした反動蹴りでスワン部屋のガラスを突き破って突入。遂に隠しスイッチの起動に成功し、 デカベロボのコントロールを取り戻す。
 バンは長官に通信を送って宇宙警察艦隊の制止に成功し、意気上がる4人は反撃開始。ホージーさん、 決め技となったアッパーでウニを吹き飛ばす。あわや成仏寸前だったテツの前でデカベロボは変形を解除、デカベース状態へと戻り、 コックピットのアブレラの元へと飛び込むバン。
 「見たかエージェントアブレラ!」
 「おのれぇ! 変身も出来ない状態で、この私を出し抜いたというのか!」
 「変身できなくたって、みんなバラバラだって、俺たちの心は一つだ!! エマージェンシー!!」
 ラストで分割展開を行うと、別にひねらないで良かった……と割となりがちなのですが、かなり上手い展開。この辺り、 前年の『爆竜戦隊アバレンジャー』がパーティ分割クライマックスとしては正直大失敗レベルだったのは、いい肥やしになったか。
 流れとしてバンのファイヤースクワッドへの異動ネタが入っていた事で、それぞれのスキルがチームワークとなって繋がるという展開から、 バンの決めの台詞が、より盛り上がる事にもなりました。正直、繋ぎにくいテツを、割り切って外で孤軍奮闘させる事により、 “本当は優秀だったテツ(が更に計算を越えた力を出す)”を描写する事も出来、そこもうまく転がりました。
 デカレッドはラッシュ攻撃からアブレラを飛び蹴りで外に叩き出し、同様に転がってくる魚類三羽がらす。 このまま分割したままでも充分盛り上がったかと思いますが、ここでの収束も綺麗。
 テツも合流し、勢揃いする6人のデカ。
 「エージェントアブレラ、おまえの野望もここまでだ!」

「ひとつ、非道な悪事を、憎み!」
「ふたつ、不思議な事件を、追って!」
「みっつ、未来の科学で、捜査!」
「よっつ、良からぬ宇宙の悪を!」
「いつつ、一気にスピード退治!」
「むっつ、無敵がなんかいい!」
「S.P.D!」
「デカレッド!」「デカブルー!」「デカグリーン!」「デカイエロー!」「デカピンク!」「デカブレイク!」
「「「「「「特捜戦隊・デカレンジャー!!」」」」」」

 ここで流れるOP。
 そう、静かな地球を取り戻すため、悪の匂いを逃がしはしない。熱い拳を握りしめ、闇の力の息の根を止める!  燃えるハートでクールに戦う、それが、スペシャルポリス・デカレンジャー!!
 「私は幾つもの銀河を滅ぼしてきた。こんな辺境で、やられはしない!」
 「そいつはどうかな。みんな行くぜ!」
 「「「「「ロジャー!」」」」」
 ここではそれぞれ、黄・桃vsスキーラ、青・緑vsガニメデ、ブレイクvsウニーガ、赤vsアブレラ、とマッチアップ。
 「お金の為に人の人生を奪う奴等に!」
 「私達は、絶対に負けない!」
 イエローとピンクのステッキ捌きがスキーラを切り裂き、
 「生きる為に、一番大事な事がなんなのか!」
 「おまえらには、わからないだろう!」
 ブルーとグリーンの怒れる打撃がガニメデを砕き、
 「それは勇気と! 愛と!」
 ブレイクの拳がウニーガを吹き飛ばし、
 「正義を信じる心なんだぁーーー!!」
 レッドのジュウクンドーがアブレラを貫く!
 ツインカムシュート、ブルーフィニッシュ&グリーンクロス(珍しい、青と緑のコンビ攻撃)、ソニックハンマー(テツ、 まさかの1人でウニ撃破)が次々と魚類軍団を葬り去り、ハイブリッドマグナムがアブレラを追い詰める。
 「レイン星人アブレラ、銀河消滅及び、惑星間戦争における大量殺人の罪で、ジャッジメント!」
 お約束のジャッジメントタイムなわけですが、ここで○が出たらいっそ笑えるなぁ、とちょっとドキドキ。
 そして宇宙最高裁判所の判決は……デリート許可。
 「私を倒して終わりと思うな。この宇宙に人類がある限り、絶対に犯罪はなくならない! 誰の中にも、私と同じ欲望があるのだ!」
 「それでも俺たち信じてる。宇宙に生きているみんなの中に、正義の心だって永遠に燃え続けてるってな。それが有る限り、 悪の栄える未来はないんだ!」
 途中、完全にスクラップ置き場行きだった事など無かったかのようにこの最終盤に活躍を見せたマーフィーが召喚され、アブレラさん、 まさかのDバズーカでデリート執行、ここに、宇宙犯罪史上に名を残す稀代の武器商人は、辺境の地で灼き尽くされるのであった。
 辞世の句 浜の真砂は尽きるとも 世に犯罪の種は尽きまじ
 ごっちゅう!
 ラスボスになるとはさすがに思いもよりませんでしたが、それほど際だって格好いいわけでも貫禄があるわけでもないデザインを、 台詞回しと指先の動きのダンディズムなどで魅せ、一風変わった面白い悪役でした。 金儲けを目的にしていた悪の組織/ラスボスというのはこれまでも存在しましたが、あえて組織を持たず、黒子に徹するというのも、 面白く機能。
 敗因は、表に出て挑発しすぎた事……引いては、プライドを取ってしまった事でしょうか。やはり、金にこだわるなら、 誇りなど1円にもならないと最初から切り捨て、常に生き延びる事を優先しないといけないのです。
 アブレラをデリートした喜びで、思わずボスへと通信してしまうウメコ。だが、そこから聞こえる声はない……。
 「そうだ、ボスは……もう……」
 「ボス……」
 「泣くなよジャスミン、ウメコ。泣いたら……天国のボスだって……悲し……」
 だがその時、
 「誰が天国だって……?」
 もはやなんの説明もなく、スワンさんに肩を借りながらであるものの、ボス、しれっと復活(笑)
 「みんな……よくやってくれた。おまえ達6人が、宇宙最大のピンチを救ってくれたんだ」
 「俺たちだけじゃないっすよ。ボスや、スワンさんや、みんなが居てくれたからです」
 ここで調子に乗らないで、さらっと周囲への感謝を述べられるのは、バンの成長がすぱっと描写されました。
 「ねえドギー。この子たち……とうとう宇宙一のチームになったわねぇ」
 「そうだな。俺は、おまえ達を誇りに思う」
 全員を順々に抱擁していくボス……ウメコ、ホント小さい(笑)
 かくて一つの悪は滅びた。この世に犯罪の尽きる事は無いかもしれない、だが、正義の心もまた、永遠に燃え続ける。 宇宙の平和と人々の暮らしを守る為、熱いハートでクールに戦えデカレンジャー!

「これにて一件コンプリート」
「メガロポリスはぁ……」
「「「「「「「「日本晴れぇ!」」」」」」」」

 ここから、OPテーマをバックに、後日談。
 テツ、正式に 特凶を追放 地球署に配属。
 「気取らない性格ですので、相棒、って呼んで下さい」
 「「「「ナンセンス」」」」
 から、メンバーそれぞれの、活躍シーン。
 ウメコの尺がやや長め?でマーフィーまで出ているのは多分、竹本監督の、愛(笑)
 そしてバンは、宇宙のどこかでファイヤースクワッドとしての任務についていた。
 ……嫌だなぁ、この赤い軍団(笑)
 「一気に行くぜぇぇぇ、エマージェンシー!」
 と、警察ものなので、彼等の任務は続く……というエンド。
 大雑把に言うと、『ウルトラマン(セブン)』+《レスキューシリーズ》+戦隊、といった感じの作風でしたが、 キャラクターが魅力的で楽しい作品でした。当初はキャラクターの出来上がりに対して、物語面でのもたつきもありましたが、 なるべく前後編を止めてすぱっと1話完結で収めるようにしたり、横手美智子の参加などで締まり、若干の路線修正を感じさせつつも、 綺麗にまとまったと思います。
 個人的にはもうちょっと、色々な脚本家を試してみてほしかった作品ではありますが、その辺りどうしても、 リアリティバランスの難しさがネックになったか。
 最終回は、見たかったものが見られて、非常に大満足。その他、構成面の話や、思いついたことなどあれば、まとめで。

〔総括&構成分析へ〕

(2016年5月25日)
(2017年3月14日 改訂)
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