■『非公認戦隊アキバレンジャー』感想まとめ3■


“バ! バ! 爆睡!
ヨダレがたれてた”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『非公認戦隊アキバレンジャー』 感想の、まとめ3(第9〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕


◆第9話「痛戦隊、解散。」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:香村純子)
 「只今をもって、アキバレンジャーは、解散します」
 前回ラスト、行方知れずの父親が何か良からぬ事を考えていると察知した葉加瀬は、萌え萌えズキューンの封印と、 アキバレンジャーの解散を宣言。
 納得の行かない赤木に対し、他にもやる事はあるし、と切り替えの早い青柳と萌黄だが、そこに再び塚Pからの電話が入り、 マルシーナの演じる塚Pは、なんで、胡散臭い記者風なのか……(笑)
 このチャンスを逃せないと飛びついたものの、変身アイテムはひみつきちの金庫の中……強盗にでも入るつもりか、 と青柳と萌黄から冷たい視線を向けられた赤木は、悩み抜いた末にボール紙で自作のスーツを作るが、 通りがかった小学生にも笑われてしまう出来で、膝をついて絶望。
 「このままじゃ塚Pに会えない……だからって、ヒーローが泥棒は出来ないし……」
 良識の一線を見せる赤木ですが、探せば「ヒーローが泥棒」の例はありそうな気がしてなりません(笑) ……というか、 軽く確認された限りでも、幾つかありました。
 大それた力を託してくれた某轟轟戦隊も限りなく、「ヒーローが説教強盗」でしたしね!!
 前回は、公認になりたいが故に正義を見失いがちになる赤木たちの姿がかなり危うげな印象でしたが、今回は、 倫理的な一線を自ら引いた事に加えて、赤木のお手製スーツから漂う悲壮感により、 千載一遇のチャンスをどうしても逃したくない涙ぐましいファン心理に見える部分が多少のフォローになっており、 そんな赤木の前に現れた救世主は、あの謎の長髪男。
 「これがあれば! 俺は再びアキバレッドになれる!」
 男は、葉加瀬が厳重にしまっていた筈の萌え萌えズキューンを赤木へと差し出し、 塚Pに会って公認への道を切り開きたい欲望に負けて手を伸ばしてしまう赤木、 徹夜でスーツを自作していた事で出来たクマ&台詞の合わせ技により、だいぶ病んだ感じなのは意図的な演出でしょうが、 なんだか、とうとう転売に屈してしまったみたいな印象(笑)
 妄想経由東映本社行きの為、秋葉原の街でステマ怪人を探し回る赤木は、月島アルパカの兄貴分、江戸っ子の浅草アルパカを発見。
 「出たーーーーー!!」
 係長を発見すると満面の笑みになり、本格的に、ダメな感じになっていた。
 「兄でも姉でもなんでもいい!」
 笑顔で重妄想した赤木が、キレキレの動きでハッピ姿の社畜を蹴散らす一方、青柳と萌黄は東映本社の前でばったり遭遇。 そこにマルシーナが現れると二人にズキューンを渡し、怪しげな思惑を感じながらも赤木を助ける為、 葉加瀬の制止を振り切って二人は妄想世界へと突入する。
 強敵・浅草アルパカと激闘を広げていた赤の元に青と黄が参戦すると、アキバレンジャーは個別爆発名乗りを決めて、 痛さは、強さーーー!!
 「目指すは11時に銀座ー!」
 一方、アキバレッドには通信を切られ、青柳には電話を切られた葉加瀬は、赤木本体を止めようと平手打ちを炸裂させるが、 もはやエゴの怪物と化し、妄想にどっぷりと浸かった赤木は目を覚まさず、妄想バトルの方はボーカル付きで大変盛り上がっていた。
 萌えマグナム発射寸前、電池切れだった妄想解除装置(ほぼTVのリモコンだった) がスイッチオンされて赤木たち3人は強制的に現実に引き戻されるが、現実と妄想の境界は既にギリギリまで揺らいでおり、 自らその壁を突破して現実世界へと飛び出してくる浅草アルパカ。
 「妄想世界と、現実世界の間の壁が壊れたから……これで奴らは、あちらからこちらに自由に来れる!」
 ひみつきちの店員と客は、もんじゃヘラ地獄攻撃を受けて、体のあちこちに熱々のもんじゃ焼きを押しつけられ、 とうとうステマ怪人により、「現実」の秋葉原に人的被害が発生してしまう。
 「これが、壁の壊れた世界?! 妄想なんかじゃすまない、全部が現実になった世界……。……俺のせいか……俺が、自分のエゴで、 勝手な事したから」
 赤木らは秋葉原の街で火傷に苦しむ人々を目の当たりにし、あ、ちゃんと反省した。
 ここは押さえてほしかった部分だったので、きちっとやってくれてホッとしました。
 3人はアルパカを倒す為、現実で重妄想……できず。
 「モエモエズキューンは、現実に変身する為の道具じゃない」
 葉加瀬が冷静に現実を突きつける中、路地裏からさやかの悲鳴が響き渡り、ダッシュする愛の戦士・赤木信夫。
 さやかを助けようとアルパカにぶつかっていく萌黄と青柳だが、現実化したステマ怪人の前には手も足も出ず、 赤木もまた蹴り一つで吹き飛ばされるが、それでも萌え萌えズキューンを握りしめ……
 「無理だよ信ピョン!」
 「現実じゃ変身できないんですよ!」
 「……出来る!!」
 「なにィ?!」
 「俺は……妄想と現実の壁を壊すほどの痛い男! 現実だろうがどこだろうが、変身して戦ってやるんだ!  ――じゅうもうそーう!!」
 痛さの壁さえ乗り越える絶叫に萌え萌えズキューンが反応すると、赤木はダッシュ変身を決め飛び蹴り一発でさやかを救出。
 「自分の妄想の責任は、自分で取る!」
 は普通に格好いい台詞で、散りばめた要素を集めていって綺麗な線でクライマックスの台詞に集約する香村さんの得意技が非公認でも炸裂。
 現実世界に“大それた力”まで喚び出したレッドは、主題歌ブーストも背に受けて怒濤の連続攻撃を決めると、 秋葉原アンダーグランドカルチャーアタックで浅草アルパカを撃破し、ア! ア! 愛を抱いて! キ! キ! 気力だァァッ!  バ! バ! 爆発!!
 妄想力を使いすぎたのか、直後に変身が解けると気を失って倒れる赤木だが、目覚めると仲間たちより手当を受けており、 3人に謝罪した葉加瀬が事情を説明……する前に姿を見せたマルシーナが、偽塚Pの種明かし。
 そして現れる、ひみつきちから萌え萌えズキューンを強奪して赤木たちに持たせた長髪の男――その正体は、 若干キャプテン・ハーロックのコスプレ気味ながら、総合的には完全に悪のマッドサイエンティスト衣装に身を包んだ、 銀髪の男――邪団法人ステマ乙代表・ドクターZ!
 「昭和っぽいラスボス来た〜〜〜」
 「お父さん! なんて姿に!」
 「「「お父さん?!」」」
 「……違う! 貴様はもう、私の娘ではない! 貴様が、『ズキューン葵』の主演声優を射止めた瞬間からな」
 「……は?」
 「え? な、なに? ……今、あまりにも場違いな新情報が聞こえたのは、気のせいか?」
 えー……見ているこちらも、一体どれが重要な情報かわからなくて、困惑しております(笑)
 「ははははは、今は精々はしゃいでいろ。我が侵略が始まれば、笑いも消える。ここからが本番だ。楽しみにしていたまえ。 はーっはははははは……!」
 困惑と衝撃のダイナマイトを投げ込むだけ投げ込み、高笑いしてマントを翻すドクターZ以下ステマ乙の面々は、 現実では瞬間退場できないのでゾロゾロ歩いて帰り、つづく。
 葉加瀬役の内田真礼さんが人気声優らしいというのはさすがに知っていましたが(※それ以上は知らないので確認してみたところ、 今作の出演は声優として売れ始める少し前ぐらいだった模様……そして、当時23歳にちょっと驚き)、 今作ではあくまで女優としての起用かと思っていたら、「劇中の職業が声優だった」という、一種メタな展開が放り込まれ、 これはまんまと騙されました(笑)
 どこまで想定した仕込みだったのかはさておき、ひみつきちのコスプレとして着ていた白衣も目くらましになって、そうだ、 葉加瀬は別に、博士じゃないんだ! という気付き。
 赤木の変身時、葉加瀬を襲った謎の苦痛の正体とは何か、ドクターZは何故『ズキューン葵』にこだわるのか、 妄想と現実の壁が崩れた時、紛うことなき駄メンターというかクズ父案件になってきた物語の行く末に待つものは…… 次回――ファイヤー爽やか・ニューカマー?!

◆第10話「悲痛なるZの呪い――そして新章へ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 葉加瀬は赤木たちに、マルシーナを始め父の描いたデザイン画を見せ、現在の葵とはだいぶ離れた、 リアル路線の葵のイラストを目の当たりにする3人。
 ドクターZとして娘の前に姿を現した葉加瀬父は、中学生にして博士号を取得した天才であり、 順調な研究生活と妻子に恵まれた人生を送っていたが、高校時代に目覚めたアニメーターへの夢を捨てきれず、研究の道を捨て、 イラスト制作に没頭。
 離婚も経験したものの、その努力と才能が認められて、『ズキューン葵』(旧企画)のキャラクターデザインに抜擢されるのだが、 あまりにも個人的煩悩をデザインワークにぶつけすぎた結果、制作会社と衝突して降板。 企画そのものもお蔵入りになった末、“使いにくいデザイナー”の烙印を押されて、業界から干されてしまったのだった。
 娘の養育費支払いの為にやむなく研究の道に戻った葉加瀬父は、その有り余る才能により幸か不幸か、 未知の素粒子が充満した並行世界と、そこに存在するイメージを実体化する素粒子・モエシニスキー粒子を発見。
 それこそが、赤木らが萌え萌えズキューンを通してアキバレンジャーを実体化させた世界の正体であり…… 現実と妄想の境目が崩れ始めた現状に説明をつける怒濤の辻褄合わせなのですが、 「物語に辻褄を合わせる為に持ち込まれるSFぽい造語」そのものが一種のパロディとして成立している、アクロバット飛行(笑)
 如何なる運命の悪戯か、大学卒業後、声優となるも鳴かず飛ばずだった葉加瀬博世は、 キャラクターデザインをリファインされた『ズキューン葵』(新企画バージョン)の主演の座を射止め、 その打ち上げパーティの日……葉加瀬への贈り物として届けられたのが、3基の萌え萌えズキューン。
 音信不通だった父親が自分を気に懸けてくれたと喜んだ葉加瀬は、添えられた手紙の言葉を信じ、 萌え萌えズキューンを用いて正義を為そうとしたのだが……
 「でも……実際は、自分のとんでもない妄想を、現実にしたいだけだった」
 自身の娘といえる葵のデザインを無断で変更された事に怒り狂った博士父は、『ズキューン葵』と、『ズキューン葵』を愛するファン、 そして『ズキューン葵』を尊ぶ世界の象徴としての秋葉原に怨念を向け……つまり、鬼頭はるか別ルートみたいな人だった。
 ――全世界に告げる。全世界に告げる。『ズキューン葵』に萌える、全ての者たちに告げる。今、 10年前の借りを返す時が来た。これは、ステマ乙の名の下に行う復讐である。私を切り捨てたアニメ界への復讐である! そして、 その鉄槌を下すのが、この大怪球ズキューーーーーーン!!
 制作会社の方針で覆面声優だった葉加瀬と『ズキューン葵』の関係、それにまつわるドクターZの悲しき誕生秘話を知った赤木らは、 割とドライな反応を示す青柳&萌黄と、この(妄想の)力で悪を倒さなければならない、 と盛り上がる赤木との間でまたも意見が割れていたところ、なんだか物凄く正統派ヒーローぽい好青年が、 トラックに轢かれそうになっていた子犬を助ける場面を目撃。
 見覚えのある顔と聞き覚えのある芸名だな……と思ったら、演じる高木心平さんは、 『獣拳戦隊ゲキレンジャー』で深見レツ/ゲキブルー役だった高木万平さんの双子の弟という事で、 『ゲキレン』にも、鏡の中のレツ役でゲスト出演(今回後半で指摘あり)。
 いちいち仕草がキザな昭和テイスト爽やかイケメンと出会った直後、赤木たちに襲いかかったのは、ドクターZが新たに招聘した、 ステマ乙の専務取締役・デリューナイト!
 「こいつの力なら、葵を信奉する、堕落した秋葉原の街を、地獄に変えてくれる」
 自らのデザインした、本当の『ズキューン葵』を取り戻すべくドクターZは妄想で現実を侵食していき、 《スーパー戦隊》で矢尾一樹さんといえば、個人的にはアシュ西の長・オウガ(『轟轟戦隊ボウケンジャー』)なのですが、 ペンダントを貰って(あいつ……俺のこと好きなんじゃねぇの?)と一人で盛り上がっていた幼なじみが異種族と結婚。 その息子に逆恨みを晴らす為、呪われた幻影の世界で愛する幼なじみの姿に扮し、むしゃぶりつくように息子を押し倒し、 手を繋いで砂漠を歩き、薔薇の花を生け、手料理を振る舞い、独りにしないでと腕の中に飛び込むなど数々の熱演を繰り広げ……うん、 大体、赤木とドクターZと同じフォルダでしたね!
 「私の指命は、妄想オタを抹殺する事!」
 「だったら、おまえのボスを真っ先に抹殺しろってんだ!」
 は、とても鮮やかな返し(笑)
 「社長の想いは妄想ではない。……崇高な理想だ」
 だがデリューナイトは動ぜず上司を擁護し、その言行がかんに障ったのか、劇場版『ズキューン葵』を守る為にも、 青柳と萌黄もステマ乙との戦いを決意すると、現実世界での重妄想に成功。
 しかし、既に赤木らの妄想の範囲を超え、普通に強いナイトは萌えマグナムさえ弾き返し、同時刻、 葉加瀬の首筋に浮かぶサソリ型のアザ。
 「モエモエズキューンを使えば葉加瀬博世は苦しみ、遂には重大な呪いに冒されるのだ」
 ラスボスの登場と共に葉加瀬のヒロイン力がズキューーーンと上昇していく一方、ドクターZはマルシーナに、 ステマ乙の係長たちのリストラを命令。
 その言葉に愕然とし、ドクターZを「お父様」と呼ぶ事を拒否されて唇を噛むマルシーナに、なにやら反抗と自立のフラグが立ち始め、 妄想から現実へと飛び出したマルシーナが、今度は“親の手を離れた作品”として造物主に対して「自己」を主張し始めるのではないか…… と随分と面白い立ち位置になって参りました。
 ダイソレタキャノンさえも破られて完敗を喫したアキバレンジャーは、悪役名物・「もっと苦しめてじわじわ殺せ!」により、 格下ーズ扱いを受けて壊滅は免れ、ひみつきちへ。
 激痛に襲われた葉加瀬は落ち着きを取り戻していたが、そこに現れた昭和テイスト爽やかイケメンにより、恐るべき真実が明らかになる。
 「わかりやすくいえば……呪い」
 『ズキューン葵』打ち上げパーティの日、父からの手紙に仕込まれていたサソリの呪いが葉加瀬にはかけられており、 萌え萌えズキューンを使えば使うほど、その呪いは葉加瀬を蝕んだ上に、遂にはその声を失わせてしまうのであった。
 堕落した『ズキューン葵』に憎しみを向け、思い描いた理想の葵の為なら、 実の娘の声さえ奪おうと陰湿な呪いをかけていた葉加瀬父が現時点では救いようのない外道になっておりますが(あまりに酷いので、 もう一ひねり入るのではないかと疑うレベル……悪徳業界人ぽい人主導による、覆面声優問題があるといえばありますし)、 ズキューンシステムには不備が……あった!
 Zの呪いについて語る爽やかイケメンの正体は、葉加瀬父を追っていたインターポールの特命刑事であり、 どさくさ紛れに、もはや元ネタがなんでもありになってきつつありませんか。
 CIAの開発した呪いメーターをひみつきちに持ち込んだ特命刑事――都筑タクマは続けて、 自分が葉加瀬にとって腹違いの弟となる事を明かし、前回に続き、怒濤の新情報が押し寄せる中、更に更に、 ペンタゴンが赤木をスカウト……?!
 …………いや、あなた方、ここ最近も、2回続けて電話で騙されてませんでしたか?!
 基本、思い込みの激しい人たちなので、嘘か真かペンタゴンからの電話を信じ切ると、スカウトに応えて今よりでっかい男になるべきか、 ステマ乙に狙われる秋葉原を守る為に戦い続けるべきなのか……悩める赤木だが、女性陣がひらめキング。
 背中にトランペットを背負ったタクマがひみつきちへと再び現れ……どさくさ紛れに、 もはや元ネタがなんでもありになってきつつありませんか。
 真っ赤なジャケットに身を包んだ爽やかイケメン様ご来店を待ちわびて、いそいそと支度する女性陣の姿に、29歳独身実家暮らし (ただし、庭付き一戸建てだった)で親に抱き枕を捨てられそうになる男が残酷な格差を見せつけられる中、 トランペットを吹き鳴らすタクマが新アキバレッドに指命されて、つづく。
 新章にふさわしく登場した新キャラ、昭和ヒーロー風味のカリカチュアにして、 ストレートな『キカイダー01』主人公イチロー兄さんのパロディを乗せてきたのですが、 そういえば『超光戦士シャンゼリオン』のヒーローパロディ回でも主人公にトランペットを吹かせていたので、 荒川さんの中の木下健さんは、イチロー兄さんがお好きなのでしょうか。……もしかすると2010年代、 ギターを背負ってバイクに乗せるのは、なにか法律に触れるのかもですが(笑)
 セオリーでいえば、如何にも胡散臭い都筑タクマ、穿った見方をすれば、 イチロー兄さんのパロディ=“作られた存在”を示す布石とも取れますが、果たしてこの赤い新星は、 経営難のひみつきち(※EDの葉加瀬談)を救う、勝利のフラグを立てる事は出来るのか?
 アキバレンジャーとステマ乙、両陣営が着々と新体制に移行していく中、次回――あぶれ加減の二人が急接近?!

◆第11話「二代目はサワヤカ無痛戦士」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 ナレーション「人類への復讐の為に、高度な科学力を駆使して、デリュージョンワールドから怪人を繰り出す、ドクターZ。 その野望を打ち砕き、子供達の未来を守る為、愛と勇気で立ち上がった、3人の戦士がいた」
 主人公入れ替えを契機に嘘前振りから始まり、流れるBGMがやたら格好いい(笑)
 ナレーションも本格的だと思ったら、公認では『ハリケンジャー』『シンケンジャー』で名調子を聞かせてくれた宮田浩徳さん!
 「事件は秋葉原を越えて拡大しそうな気配。赤木さん、今までどうもありがとう!」
 そして、追い打ちを決める葉加瀬が、酷い(笑)
 OPの歌詞も替わって新展開が強調されると、ひみつきちでは、初代から二代目への継承の儀式が行われ、 赤木は自転車で厚木へ……の前に、さやかに連絡すると、さやかもまた転職して渡米する事になっており……果たしていったい、 どこからどこまでが妄想なのか。
 さやかの言行があまりに赤木に都合が良い事を考えると、お礼の電話がかかってきた辺りからなのか!?
 「時は来た。これより我らは、真の野望の実現に向けて……新たな第一歩を踏み出す。ステマ乙は、本日只今をもって解散し、 並行次元より、デリュージョン帝国を、建設する!」
 「……帝国?」
 一方、ドクターZはステマ乙の発展的解散による新たな悪の組織の立ち上げを宣言。初耳のマルシーナが目を丸くする中、 社畜たちがまさかの戦闘服チェンジを見せると、これまでとは全く毛色が違う怪人、モウソボーグ・ドリルサイクロプスが姿を見せる。
 「破壊せよ。殺戮せよ。人間どもの社会を、我が帝国の支配下に」
 一つのアニメ企画への憎しみが、いつの間にやら人類社会全体まで拡大し、邪魔な奴らは皆殺しの命令を下され、 出撃するデリュージョン戦闘部隊。
 ひみつきちでは、タクマ・青柳・萌黄の3名が、色違いで揃いのジャンパーに身を包むと、葉加瀬は長官(多分、 小田切長官コスプレ)へとクラスチェンジ。
 「アキバレンジャー、出動よ!」
 基地にはいつの間にやら怪人反応を検知するシステムまで設置されており、レッド交代にともない、 もはや別の作品になっている勢い(笑)。
 赤木不在の状況で、新たなフル名乗りもばっちり決まると、如何にも公認様!  なカメラワークとポージングが随所に盛り込まれ…………ど、どういう視線で見ればいいのこの番組?!
 (……何かが違う。いったい何?)
 一方、作戦の中枢から外され、川沿いをフラフラ歩いていたマルシーナは、 厚木へと急ぐ赤木の自転車と激突すると違和感の正体解明を赤木の知識に求め、 思わず『サンバルカン』第23話を引き合いに出して解説している内に、現実と物語の奇妙な符合に気付いた赤木は、 アメリカ行きの切符ともいえる厚木基地の通行許可証を、わざと川へと投げ捨ててみる。
 「俺の予想が悪い方に当たれば、あの通行許可証は必ず俺の手元に戻ってくる」
 「は? ありえないでしょ、そんなの」
 せせら笑うマルシーナだが、たまたま警察が川をさらって遺留品の捜索中で、赤木の悪い予想通りに、許可証は赤木の元へ帰還。
 「そんな馬鹿な?!」
 「やっぱりそうだ……だからこんなあり得ない事が起こるんだ」
 「だからさっきからなに言ってるの?!
 「……この世界は、一つの番組で……俺達は……俺達は番組のキャラクターだとしたら?!」
 ……え、本当にそっち進むの?!
 音楽も演出もサスペンス調となり、自分が途中退場キャラの役割を割り振られているのでは、と考え込む赤木は、 今起きている不自然な状況の全てに説明を付ける、一つの言葉に辿り着く。
 そうつまりこれは、ジョーカーが栄転して新たに赴任した行動隊長が主役も宿敵の座も全てを強奪していったり、 超時空ヒーロー・ゴールドプラチナムが飛んできて主人公たちのパワーレベリングを始めたり、 誰とは言いませんがメインライターが交代したりする、テ コ 入 れ 新 展 開なのではないか、と。
 「俺はなぜ見逃したんだ……」
 一方、ひみつきちでは葉加瀬がドリルサイクロプスの分析をするとデータを赤に転送し、本格的にすっかり別の作品が始まっていた。 アキバレンジャーは、フォーメーションを組んだ赤青黄がコマのように高速回転して標的を弾き飛ばす心技体アタックで怪人を撃破し、 目指せ公認なのか、もはやここは公認された世界なのか。
 「そんな……この世界が、『非公認戦隊アキバレンジャー』という番組かもしれないなんて!」
 赤木とマルシーナは、なんとしてもこの物語から赤木信夫の存在を抹消しようとする力により、謎の外国人部隊の襲撃を受け、 二人をかばった社畜A、殉職……?
 「あたしはこれでも悪の幹部だから、マシンガンぐらいは平気だし」
 凄い事を言い出したマルシーナは、赤木を守って自らを盾にすると《ここは私に任せて先に行け》を発動し、 急速に上昇するヒロイン力(笑)
 秋葉原では、ボウケンレッドから“大それた力”を受け取ったアキバレッドがデリューナイトに必殺拳を浴びせると、
 「貴様は知らないだろうが、俺と貴様は宿命のライバルだ!」
 と一方的にフラグを立ててナイトは逃走。今のところ、今作で赤木の次にフラグを使いこなしているのはデリューナイトなのですが、 果たしてその正体は何者なのか……ナイトの後を追ったアキバレンジャーの前に現れたのは、秋葉原の地に戻り、 真実を突き止めようとする赤木信夫。
 赤木はこの世界が番組である事を証明しようと仲間たちを黙らせると周囲の様子を窺い……
 「……来た! テロップだ!」
 「「「え?!」」」
 衝撃の伏線だったテロップを、手で掴んで止めた(笑)
 「僕には……何も見えない」
 タクマが当惑する中、赤木は、青柳と萌黄のキャラ変も指摘。
 「『アキバレンジャー』はオタク風味の痛い番組から、ちゃんとした公認ぽい番組に変えようとする力が働いているんだ!  つまりこれは路線変更! テコ入れなんだ!」
 赤木はここまでの、如何にもテコ入れな要素を並べて指摘すると、 一切を無表情で聞いていたタクマはインターポールからの帰還命令を受け、 本来消される筈だった赤木に代わって急遽退場するゲストキャラへと格下げされる事に。
 「これは……テコ入れが中止された」
 タクマは、ナイトの粘着発言も無視してバイクで走り去っていき……タクマが「デリュージョン帝国、絶対許せねぇ!」と叫ぶと、 テーマBGMと共に光り輝く先輩が空から降ってきては“大それた力”を与えてくれるルートは無くなりました!
 「なに? この私が大いなる意思に操られている?」
 その頃、体のあちこちに傷を負いながらもアジトへと帰還したマルシーナは、赤木に説明された世界の歪みをドクターZへと伝え、 “大いなる意思”にまで本当に触れられてしまい、なんだか、 視聴者目線のメタなツッコミを全て呑み込んでいくモンスターみたいになってきました(笑)
 元々ドクターZの目的は、萌えに毒された人々を矯正し、理想のアニメを発信する事だったと判明し、一瞬、 正気を取り戻すZだが……謎のノイズが走ると、再び非情なる帝国の支配者・ドクターZに戻り、マルシーナを追放。
 葉加瀬の呪いは根本的に無かった事になるが、急激な変化を始めたシリーズの流れはどこに向かおうとしているのか…… 赤木が不安を胸に抱え、ラスボス候補に日笠Pが浮上する中、現実と虚構の境界がさらにねじくれ曲がって、つづく。
 《スーパー戦隊》パロディに始まった今作、 中盤以降の急展開が丸ごと「テコ入れ」という名のメタな力の作用だったとパロディの素材にされると、 作品全体がメタ構造作品のパロディへと風呂敷を広げ木枯らしに巻かれて東京上空を飛び回っておりますが、 一体全体どこに着地するのかさっぱりわからなくなってきたところで、次回、最終回……?!

◆第12話「最痛回 さらば妄想戦隊」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 「てか、おじさん、さっきからヤツヤツ言ってるけど、誰なのかわかってるの?」
 「察しは付いている。番組外現実の黒幕――それは、オープニングの一番最初に、名前がクレジットされる人物だ」

原作:八手三郎

 いやははははははははは!! ラスボス、そっちか(笑)
 《スーパー戦隊》の特質を存分に生かしつつ、“意外な真犯人”ではあるが視聴者に常にその存在が示されてきたフェアネスも満たした上で、 実在の人物に誰も被害が出なくて、これは完璧すぎる着地。
 遡れば第1話の感想で
 原作:八手三郎
 って、出てしまいました。
 と書いており、結果としては既にその時から術中にはまっていた事に(笑)
 犯人は読者だ、とか、犯人は作者だ、とか、個人的にはどちらかといえば白ける率が高いのですが、 名指しされた「八手三郎」そのものが虚構の存在であるのが絶妙で――つまり更にその外側の現実が示唆されているとも、 「八手三郎」自体、赤木らが作り出してしまった可能性があるともいえる――これは参りました(笑)
 「そうか! 原作者、八手三郎!」
 「そう。それが、黒幕の正体だ!」
 この世界の真実に辿り着いた赤木は更に、その恐るべき目的を指摘する。
 「八手三郎はこの世界は……この番組を打ち切りにする気だ!」
 帝国アジトでは、もはや文芸設定を無視した最終回フラグが進められており、デリューナイトは自らリミッターを外す強化改造を志願。
 「……よかろう。最終フォームに改造してやろう」
 最終決戦が途中経過を大幅にスキップして発生していく中、神ともいえる存在との戦いを覚悟した赤木が、 八手三郎の魔の手からこの世界を救う為に考えた対抗手段……それは
 「スポンサーだ」
 「「「スポンサー?」」」
 ……じゃなかった、
 「伏線だ」
 「「「伏線?」」」
 「みんなで伏線を張りまくるんだ。それもどう考えたって1回や2回じゃ回収できないような伏線をな! そうすれば、 ドラマ制作者として、すぐには終われない筈だ!」
 「すぐには終われない伏線って……なに?」
 一同悩める中、ゆめりあがひらめキーングすると、突然こずこずに愛の告白(笑)
 現実と非現実の境界が曖昧な世界観で、この“現実”とは何か? に切り込んでくるアプローチは好きな一方、 それが丸々虚構の世界でした、まで行くとちょっと好みから外れるところがあり前回はいまいちノれなかったのですが…… そこから明かされる黒幕の正体、そして対抗手段の一ひねりは面白く、またそれが、戦う敵は変わったが、 “物語のルール”で戦う赤木信夫として、『アキバレンジャー』の最初から最後まで一貫したのは、お見事。
 青柳は三ヶ月後の大会への決意を語り、作品世界の延命を図る面々だが、神の手の介入により、こずこずはゆめりあの告白を受け入れ、 青柳の前には負傷したライバルが現れて引退を宣言。
 「一気に伏線が回収されちゃった……」
 「恐ろしい……これが、八手三郎の力……」
 ……なんだか、制作スタッフが全ての罪を、架空原作者になすりつけているようにも見えます。
 赤木は、無理めのさやかさんとの恋愛ならどうだ、と自身の想いを番組延命に捧げてみるが、既にそれは神の手の中のフラグに過ぎず、 アメリカに向かう機内で見た劇場版『サンバルカン』にはまって特撮ヒーローに目覚めたさやかは日本に急遽帰国して赤木に戦隊ブートキャンプの教官就任を求め、 次々と歪められていく人々の運命。
 一方、「制作者の都合で、存在を左右されるのはもう嫌!」とドクターZを気絶させたマルシーナは、 改造手術台に横たわるデリューナイトを機能停止させる事で最終回フラグを回避しようとするが、 目覚めたナイトに反撃を受けてドクターZともども凶弾に倒れ、最終回フラグをますます進めてしまう。
 「……この番組の延命策、もうやめましょう」
 たとえ無情の打ち切りで最終回となり、ぐだぐだかつ非公認のまま終わる事になったとしても、 番組制作者に逆らい続けた末に歴史から抹消されるよりマシではないか? と提案する葉加瀬だが、赤木はそれを敢然と拒否。
 「……いいじゃないか、それでも。八手三郎は、いままでのどんな公認様のラスボスも絶対かなわない、超強力な敵だ。でも、 この世界が番組だっていうなら、見ている人間も居る筈だろ? もし俺みたいな痛いオタクがそんな番組見てたら、歴史から消されても、 絶対忘れる事は無い。だから怖くない」
 赤木は大変いい笑顔を浮かべ、たとえ歴史(数字)に残らなくても、誰かの記憶に残っているならそれは無意味な事ではない、 と第4の壁を越えて物語と受け手の双方が肯定されると同時に、「目指せ公認」を目標に戦ってきた赤木が、 その執着から解放される綺麗な着地点へと到達。
 「最後まで足掻き続けようぜ!」
 「赤木さん……!」
 「非公認は、非公認らしくニャ」
 そしてその「見ている人間」を劇中人物が自覚する事により「“自覚的に”見ている」視聴者に対して番組側から視線を向けると、 そんな視聴者の為に無軌道を貫く事をもってして非公認らしさと位置づけ、水面に浮かぶ泡沫のように、生まれては消え、 消えてはまた生まれる“物語”の一つからの感謝の気持ちを表わす事で、 良い子は見ちゃダメな戦隊パロディとして一定の落とし前をつけると、 ここから先はメタパロディをやれるところまでやってみようといった具合で、計算尽くのぐだぐだへと突入(笑)
 今作直近の公認戦隊『海賊戦隊ゴーカイジャー』は、子供時代のヒーローがいつか忘れられていく事を前提として、 「忘れられても構わない」と「忘れられてほしくない」、二つの相反するテーマを内包し続けていた物語―― このせめぎ合いこそが『ゴーカイ』の真骨頂であったと思うのですが、その辺りをまとめたいと考えて幾年月―― だと個人的には認識しているのですが、それに対して今作はストレートに「子供時代のヒーローを忘れていない人々」 へ向けた物語になっている辺りも、裏『ゴーカイジャー』だなと思ってみたり。
 正直前回、赤木が「番組の登場人物」の自覚をもってその証明を始めた辺りから、 今作のメタ度合いをどう受け止めるか当惑していたのですが、感想の分解作業を通して、 『アキバレンジャー』という作品に付けた落とし前のポイントは自分なりに納得できたので、この後は、宴の終わりに全員泥酔している、 みたいなものかなーと(笑)
 非公認らしい戦いを貫く事を決めたアキバレンジャーだが、最終回の足音はひたひたと迫り、さやかを人質に取ったデリューナイトが、 アキバレンジャーとの決着を要求。
 「……駄目だ。今行けば敵の、八手三郎の思うつぼだ」
 みすみす敵の最終回フラグには乗りたくない、が、かといって思い人も見捨てられない……悩んだ末に赤木は 「さやかを助けた上で真面目なライバルキャラをのらりくらりとかわして因縁の戦いの引き延ばしを狙うぞ」作戦を立て、 例の倉庫に向かったアキバレンジャーはシンボルカラーを背負っての名乗りを決め(皆それぞれ、延命ネタも用意)、
 「「「非公認戦隊! アキバレンジャー!!」」」
 格好いい名乗りとは裏腹に、ひたすら状況を有耶無耶にしようとするアキバレンジャーに対し、 ひたすら決着をつけようとするナイトは、必殺のフラグを連続投下。
 「これはハンデだ。ここを突けば俺を倒せるぞ?」
 「くそ〜〜〜、なんて挑発だ。乗りたい、乗って勝ちたぁい!」
 メンタル的に追い詰められながらも、決闘は6ヶ月後の約束で言い逃げしようとするアキバレンジャーだが、 怒りのデリューナイトが追いすがるその時、横からの銃弾でナイトを倒したのは……今度こそ正気を取り戻し甦ったドクターZ!
 「私は気付いた……大いなる意思に操られていた事を。だが、奴の思い通りには、ならない。……アキバレンジャー!  戦いはまだまだ、これからだ!!」
 「望むところだァ!」
 「またぬるい戦いの日々が、続きそうな予感にゃー」
 マルシーナと共に現れたドクターZの“わかってる”発言にアキバレンジャーは喝采を上げ、今作、 「既存のヒーロー作品を踏まえてひねりを加えたコミカルな作風」「序盤に泣かせの効いた話を入れてくる」 「終盤にメタ要素が盛り込まれる」構成には、『超光戦士シャンゼリオン』を思い起こしていたのですが (こちらは露骨なパロディ作品というわけではないですが)、「“戦い”もやがて愛すべき“日常”と化していく」 のもアプローチは違えども『シャンゼリオン』していて、『シャンゼリオン』と『ドンブラザーズ』の間に『アキバレンジャー』 があったのだな、と今更ながらに発見。
 番組打ち切りに対する完全逆転が果たされた……かと思ったその時、再び介入を受けたドクターZは、 帝国科学の粋を結集した巨大ロボの召喚を宣言し、出現する大怪球ズキューン……じゃなかった、ブーメランタイタン。
 機能停止した筈のデリューナイトも峰打ちだった事になって復活するとタイタンに乗り込み、とうとう始まってしまう、 これまでと規模の違いすぎる大破壊。
 なお、ブーメランタイタンには少々、今作キャラデザイナーさとうけいいちさんの参加していたアニメ『THE ビッグオー』のメガデウス風味を感じるのですが、 『ビッグオー』もメタ要素のある作品だったのは、偶然なのかどうなのか。
 ……だがしかし、アキバレンジャーには、巨大ロボが無いのだ!
 これではそもそも最終決戦が成立しない! かに思われたが、萌える……じゃなかった、燃える街に人々の悲鳴が響き渡る時、 それに応えるかのように現れた痛車が、凄く不自然に……巨大化した。
 50メートルクラスの巨大ロボに搭乗し、背後で流れるテーマ曲。
 夢のシチュエーションと最終回の狭間で揺れ動くアキバレッドだが、覚悟を決めるとアキバミサイルで…… 自爆するところで流れ出す主題歌(笑)
 「すまない、イタッシャーロボ!」
 衝撃の最期を遂げる巨大ロボだが、それはそれとしてブーメランタイタンの脅威の前にアキバレッドが一足先に個人的な最終回を迎えそうになったその時、 イエローが投げた空き缶がラッキーヒットすると、それを起点に奇跡のような連続コンボが発生してタイタンとナイトは大爆発に沈んでしまい、 出鱈目なシーンなのですが、自身の放ったブーメランが次々とボディに突き刺さったタイタンが崩れ落ち、 最後に首がポーンと飛ぶCGが、割と格好いい(笑) 
 飛んできた頭に潰されそうになったドクターZはなんとか助ける赤だが、 感動的な音楽とスローモーションで駆け寄ってきた人々に囲まれてしまい、その輪から一人歩み去る、ドクターZ……。
 感動のラストシーンを回避する為に逃げ出した赤木たちがひみつきちに戻ると、そこでは改心したドクターZが葉加瀬に謝罪し、 父娘の和解が描かれようとしていたが、番組存続の為、自身を押し殺して父背中を向ける葉加瀬に対し、
 「葉加瀬、ここは抱き合おうよ」
 と促す赤木は格好良かったです。
 まあ葉加瀬には、父と抱き合う前に平手打ちの一発ぐらいは決めて欲しかったですが(笑)
 「まだ、戦いは続くんだ……あいつが残ってる」
 そして赤木たちは、ステマ乙を再建して代表に就任したマルシーナとの戦いに赴き、 あと6ヶ月ぐらいはぬるーく戦おうと正義と悪の談合バトルが始まって、激しい格闘アクションをバックに流れ出すスタッフロール。
 かくして妄想の海に浮かぶ街・秋葉原を巡る戦いはまだまだ続くのだ……と思われたがしかし、突如として、 浮上してくるエンドマーク。
 浮かかび上がるオワリの三文字を破壊しようと、アキバレンジャーとステマ乙は呉越同舟・一致団結して抵抗を見せるが、 何者かの巨大な手が伸びると、番組を強・制・終・了。
 最終的には辻褄合わせもご都合主義もパロディの素材とすると、 カオスが全てを呑み込んでの幕となり――妄想の海に生まれる原初の混沌、それは終わり、けれど始まり……かもしれない。
 次回――『アキバレンジャー』反省会で待つのは何か?!
 いやホント何。

◆最終話「反省会!痛くなければザッツオーライ!」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:香村純子)
 ナレーション「妄想の海に浮かぶ街・秋葉原。痛さを強さと勘違いし、徒花のごとき物語を紡いだ若者たち。かつて彼等はこう名乗った――」
 第11話に続いてナレーションに宮田浩徳さんを迎え、八手三郎から「第2シーズンをやりたいのなら、 これを見て自分たちの何が悪かったか反省しなさい。」と送られてきたDVDを見ながら、 赤木・青柳・萌黄・葉加瀬が喋り散らす体裁の実質総集編で、見所は、 やけっぱち気味に『ズキューン葵』の主題歌を熱唱して場を繋ぐ葉加瀬博世。
 基本、普通の総集編として進みつつ、編集された映像により、自分たちの目では初めて見る変身バンクや、 ミニコーナーの台本について
 ナレーション「八手先生、なんか、デカブルーとブラックコンドル推してます? 気のせい? ああ、ハイ」
 といった小ネタが挟まれ、一同テコ入れ展開をくさしている内に、辿り着いてしまう――究極の真実。
 「俺がテコ入れフラグに気付かなかったら今頃なぁ……」
 「今頃……そっかぁ! 番組続いてたんじゃない?」
 「そう、そうですよね! 交代させられそうになったの、おじさんだけだもんね」
 実は原作者によるテコ入れだった、で中盤以降の新要素を全て無意味化してみせた今作、最終話にして、 真相に気付いた後の延命行為を無意味化してみせ、ここまでやりきってくれると、面白いの領域(笑)
 だがそれもこれも、
 「反省しなきゃなんねぇのは、八手三郎本人じゃねぇ?!」
 と、初期設定の問題を無視して登場人物に反省を押しつける原作者に抗議する赤木ですが……うん、まあ、 初期設定の問題と路線修正は東映特撮では珍しくない話すぎて、触れてはいけないダークに近いグレーゾーン……みたいな。
 映像そっちのけで脱線している内に、送られてきたDVDの真の狙いは、シーズン2を餌に赤木たちに反省を促すのではなく、 キャストコメンタリー付き総集編により低予算で1話分をでっちあげて穴埋めする為だったと、更なる秘められた真相に気付く赤木(笑)
 「なにか、なにか爪痕を残して、第2シーズンに繋げたいぞ……!」
 このままでは八手三郎の思惑に乗せられたまま、なし崩し的に総集編で番組が終了してしまう…… 慌てる赤木たちが最後の足掻きを見せようとすると、またもゆめりあが妙案をひらめキング。
 一度スタッフルームに引っ込んだ赤青黄は、ゆめりあ制作のアキバレンジャーコスプレスーツに身を包むと、 顔出し名乗りから揃い踏みを決め、
 「痛さは、強さーーー!! ハイ」
 「「「非公認戦隊! アキバレンジャー!!」」」
 ……大概滅茶苦茶な作品だったのに、最終回で顔出し名乗りから視聴者への挨拶をやって締め、こだわりの様式美に白旗(笑)
 最後はオフショット集でのスタッフロールとなり、普段、EDでオフショットやNGシーンを流されるのが物凄く嫌いなのですが、 原作者:八手三郎まで引きずり出してみせた今作のメタ度合いでは、物語世界の破壊については、 もはや気にするようなものではなくなった事もあり、EDの曲調ともピッタリはまって、祭の終わりを告げる思わぬ爽やかなEDでありました。

 特に好きなエピソードは、第5話「イタイタ☆イエローママ」(監督:鈴村展弘 脚本:香村純子)と、 第7話「妄走イタッシャー限界突破せよ!」(監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)。
 第5話は、作品コンセプトを十全に生かし切り、とにかく出来の良かった一本。
 第7話は、後にテコ入れの始まりと判明するシリアスな縦軸が入ってパロディ控えめになりながら、 それまでの今作らしさも上手く残したバランスの光る一本でした。
 好き……というわけではないですが、特に印象に残ったキャラとしては、マルシーナ。
 ヒーロー側との接点が生まれる内に……というのも一種のお約束でありますが、役者さんの演技が中盤ぐらいからはまってきたのも含めて、 一番、“化けた”キャラだったな、と。
 後、荒川さんへの刺客、門前仲町ハシビロコウ(笑)
 第1−2話の感想で書いたように、恐らくはリアルタイムだったら早々に脱落するかここまで楽しくは見られず、 「時間が適度に色々な要素を薄めた今だからこそ、適度な距離感で笑って見られるタイプの作品」でありましたが、 パロディに始まりSFからメタミステリに飛翔して乱痴気騒ぎで終わって様式美で締める…… 前に視聴者の喜怒哀楽に対して一定の落とし前は付ける構成により、気持ちよくエンドマークを迎える事が出来て、良かったです。
 高いが、安い!!

(2024年2月5日)

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