■『非公認戦隊アキバレンジャー』感想まとめ2■


“キ! キ! キーボードに”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『非公認戦隊アキバレンジャー』 感想の、まとめ2(第5〜8話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕


◆第5話「イタイタ☆イエローママ」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:香村純子)
 ある日、赤木がひみつきちを訪れると、萌黄が宇宙と交信していた。
 「今日は、ママが地球に降臨するピピ」
 これは、上京してきた親に素性を隠さねばならないパターンだ!  と一人で盛り上がる赤木は青柳と共に萌黄の住まいへ突撃した結果、 29歳独身実家ぐらしで親に抱き枕を捨てられそうになる男として更なるスティグマを刻まれた末、 デリカシー皆無のゴミ男として部屋から叩き出されてしまう。
 「ゆめりあの好きな人は、次元の向こうにしか、存在しないピピ」
 「2次元や2.5次元か。やはりな」
 めげない懲りない多分根本的な問題点がわかっていない赤木は、これは見合い話パターンだと再び一人で盛り上がり、 内容は奇天烈ながら、思い込みの激しいキャラクターが空回りして騒動を引き起こすパターンとして、 ある種の入れ子構造――「パターン」を語るキャラが別の「パターン」を演じている――になっているのが、メタパロディとして上手い作り。
 助平心は持つが純情でもある赤木は、偽装彼氏役はさやかさんに申し訳が立たない、と一人勝手に苦悩するが、 そうこうしている内に萌黄宅に現れた母・山田雅子は……完全に、萌黄ゆめりあのグレードアップ版だった。
 萌黄の本名は「山田優子」であり、個人的にずっと首をひねっていた「(CN)」=「コスプレネーム」と判明すると、 元有名コスプレイヤーの萌黄母を加えた一同はアキバ巡りに繰り出し、割とディープな世界に連れ込まれるが、意外と順応する青柳。
 母子に気を遣い、思い出の店の前でそっと別れた赤木と青柳は、秋葉原の裏通りにひしめく大量のホストクラブを目撃すると、 飛び込んだ店内には、マルシーナにより再生された歌舞伎町チョウの姿が!
 「秋葉原に店舗を増やし、歌舞伎町のようにするのが、俺達の新しい シノギ 野望だ」
 再生怪人など二人で充分! と戦いを挑む赤と青だが、予想外の強さを見せる歌舞伎町チョウに苦戦。 途中参戦した黄も変身解除級のダメージを受け、絶体絶命のその時――飛び込んできた山田雅子が体当たりで娘を守ると、 萌黄の落としたもえもえずっきゅーんを用いてイエローに変身する、凄まじい展開(笑)
 「魅惑の、熟女レイヤー・アキバイエロー!」
 キレキレの名乗りを見せた母イエローは、ミス・アメリカ仕込みのダンスと、“バブルを知っている女”の貫禄を見せて、 歌舞伎町チョウを圧倒。
 つまりこれは、親への手紙に出鱈目書いていたメンバーが仲間を巻き込んで右往左往する話でも、 親から見合いを強制されて大大混乱が巻き起こる話でもなく、悪の存在を知った親が「肥後バッテン流弓術・岬与一郎、天に代わって、 成敗いたぁす!」してしまうパターンだ、と赤木が納得すると、歌舞伎町チョウに大打撃を与えた山田雅子のパスを受けて、 萌黄は再びイエローに変身。
 主題歌をバックにヒーロー反撃のターンとなり、黄のキックを皮切りにして、 赤と青が“大それた力”を用いて歌舞伎町チョウを拘束すると、 イエローを合体バズーカ代わりにするメイン回スペシャルフォーメーションの必殺ショットにより、 物凄い綺麗な形でフィニッシュ(笑)
 これを見ると、当時『ゴーバス』に不満を抱いた層が今作に盛り上がっていたという話も納得です……(『ゴーバス』特に序盤は、 “新しい事”をやろうとする試みはともかく、それが既存シリーズの持つ“面白さ”以外や以上を引き出すのにだいぶ苦戦していたので)。
 「私、ママの子供で良かった。生んでくれて、ありがとう」
 戦いが終わると3人は萌黄の部屋から一歩も外に出ておらず……実は萌黄母が5年前に事故で他界していた事が明らかに。
 萌黄は毎年、自身の誕生日には、亡き母親と約束していた秋葉原巡りの空想にふけっていたのだが、その想いと、 萌黄母を出迎えようとする赤木と青柳の気持ちが同調した結果、チャイムの音をトリガーにして、 母親が部屋を訪れたところから重妄想が展開していたのだった。
 母親の性格を知っている筈の萌黄が母の姿に「なんで」と口にしてしばらく静かだったのも、 赤木も知らない間にホスト関係の店が増殖しているのも、萌黄母について検索をかけた後の葉加瀬の態度も、 母親がイエローに変身できるのも、全ては重妄想世界の出来事であったとして筋が通ると共に、 「私、ママの子供で良かった。生んでくれて、ありがとう」と、幾分唐突で綺麗するぎイエローの言葉は、 生前に伝えられなかった言葉だったからこそ、とまとめて、ちょっとずつの違和感を一本の線で美しく整えてみせる、 鮮やかな着地。
 誕生日エピソードとしても綺麗に収まり、そう、「誕生日っていうのは改めて命の大切さを考える為にある」 (ジン/『超新星フラッシュマン』)のです!
 今作の基本構造の孕む、“信用しきれない語り手”の引き起こす“虚実の転換”は、 受け手を「騙す」事だけを目的化した安易な叙述トリックに陥ってしまう危険性を常に抱えているのですが、 エピソードの大半を「実は妄想でした」とオとす大技を、 パワフル母のトンデモエピソードと見せて“ちょっといい話”に着地させるアクロバットによって叙述トリックの悪印象を和らげる用い方も、 落とし穴回避の技術に長けた香村さんらしい目配りで、総合的に、ぐうの音も出ない出来映え。
 鬼畜責め → コスプレ妄想 → からのツイストも効果的で、いやこれは参りました。
 また、何を見せて、何を見せないのか、の取捨選択が巧みで種明かしを効果的にする演出も冴え、 これまで見た鈴村展弘監督の演出作品では、一番好きかも。
 加えて、山田雅子を演じた松本梨香さんがやたらなはまり具合で好演を見せて、キャスティングも上手く噛み合った一本でした。
 ……あと、そこはかとなく葉加瀬にフォローが入っているというか、てっきり「人の心が無い」枠だと思っていたのですが、 親子の情を解す心は持っているのだな、と(笑)
 皆の想いが重なり合ったからこそ生まれた“ささやかな奇跡”の後味も良く、この作品コンセプトでここまで出してくるか!  と唸らされる、お見事な秀逸回でした。
 次回――新堀和男、登場。

◆第6話「はばたけ大御所! 妄想撮影所の痛い罠」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 公認様との共演、声優ネタ、に続いて、スーツアクターにスポットを当ててくるのがファン心のくすぐり方を心得た作りですが、 サブタイトルの「大御所」には新堀さんだけではなく、荒川さん(上原正三フォロワー)がしれっと、 上原正三大先生も含めている気がしてなりません。
 葉加瀬と店員が萌黄の同人誌のネタ出しに協力する一方、東映東京撮影所宛の荷物を配達できると大喜びの赤木は、 聖地巡礼に青柳を巻き込むが、気分転換中にぼったくりダフ屋を見かけた萌黄が重妄想してしまい、 配達に向かおうとしていた赤木と青柳も参戦する事に。
 「舞台で演出家がそこにあると言ったら、無くてもあるのよ」
 ステマ怪人・下北沢ホヤの得意とする舞台空間に引きずり込まれたアキバレンジャーは、舞台演劇の作法にペースを狂わされ、 《スーパー戦隊》の文脈で戦ってきたアキバレンジャーが、勝手の違う舞台演劇のルールに主導権を奪われて苦戦するのは、 今作ならではになりつつ、見せ方含めて実に面白いアイデア。
 ……灰皿が飛んできたり、若干、演劇界のグレーゾーンに触れるネタが入っていそうでドキドキしますが(笑)
 アキバレンジャーは完敗を喫して重妄想が解除され、仕事を再開する赤木。東映東京撮影所にカーレン主題歌でフルアクセル到着すると、 青柳を丸め込んだ赤木は撮影所内部を勝手に見学し始め……よく見るカーブ&傾斜のある場所は「大森坂」というそうで、 そこで興奮するのは、ちょっとわかります(笑)
 下北沢ホヤへの敗北に屈辱やるかたない青柳は、殺陣の練習をしていた新堀和男を目撃するとアクション指導を頼み込み、 赤木そっちのけの修行編。
 萌黄が再び重妄想を展開すると、新堀からの教えを胸に、高みを目指して学び、変わる、とアキバブルーが凝った開脚名乗りを決め、 下北沢ホヤとの再戦に挑むアキバレンジャーは、舞台の上でカチンコを鳴らす事で、戦いのルールを強制変更。
 「もー、なんなのよこれ〜」
 「ここは東映妄想撮影所だ」
 「馬鹿な! テストの答案であんなこと出来る筈が!」
 「ばーか。公認様の話には、撮影所編てのがあり、リミットのない妄想力が炸裂する事が! よく、ある」
 ……あ、ある?(笑)
 怪人の能力により、不条理な場所移動や、悪夢的な襲撃が繰り返されるエピソードは確かにしばしばありますが、 それが特に「撮影所」に絡められるパターンはあまり覚えが無いのですが……撮影所を扱ったエピソードではなく、 東映撮影所内部のセットなどを多用する、という意味合いで「○○回(パターン)」よりも更にメタ的な「撮影所編」 という言い回しがあるのでしょうか。
 『タイムレンジャー』にトンデモ映画撮影回があり、探せば他にもあるでしょうが赤木も実例を出しませんし……どちらかというと荒川さんが、 上原大先生(及び《宇宙刑事》)オマージュをねじ込もうとしているような(笑)
 下北沢ホヤが教室の窓から飛び出そうとすると場所移動から虚無僧装束のアキバレンジャーが登場。更に、新堀キャラ代表として、 主題歌に乗ってレッドホークが応援に駆けつけ、公式の素材の使い方が、ひたすら豪華。
 スクリーン越しに飛んでくる銃弾のお約束を浴びたホヤとの雪辱戦に挑む青の、必殺・カメラワークで当たったように見える攻撃!  が炸裂すると、照明を破壊して得意の暗がりでの戦いに持ち込もうとするホヤであったが、 新堀和男との修行で心眼を身につけていた青の敵ではなく、敗走。
 空を飛んで逃げるホヤは、レッドホークから託された“大それた力”によって宙を舞うアキバレッドが空中で轢き殺し、 ここにアキバレンジャーは勝利を収めるのであった。
 一方、身を隠していたロッカーから出てきたマルシーナが、教室に掲示されていた、子供たちの描いた(という設定の)絵の中に、 「はかせひろよ」のものを見つけると背後になにやら不思議な時空の扉が開き……。
 「私、決めました。頑張って、公認目指します」
 現実では、新堀和男との出会いにより、《スーパー戦隊》の中にある武の心を知った青柳が、 目指せ公認活動に対して前向きになり……よし、まずは目の前のその男の口を封じよう。
 ところが、そこになんと主に赤木の生んだ妄想である筈のステマ乙幹部マルシーナが姿を現すと、 挨拶から瞬間退場……は出来ずにタクシーを止めて亀有へと走り去り、一同愕然。
 私利私欲から勝手に荷物を持ち出していた赤木は同僚にはたかれて妄想継続中は一応否定され、思わぬ大きな謎を残して、つづく。
 次回――現実の秋葉原は妄想の秋葉原に侵食されてしまうのか?  この世はいずれパチンと弾けて消えるあぶくのような夢でしかないのか? 真実を求め、戦え! 僕らの、イタッシャーロボ!!

◆第7話「妄走イタッシャー限界突破せよ!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:荒川稔久)
 赤木ナレーションによる前回の振り返りの締め、
 「やあみんな! 元気か? 俺達は――愕然としてる」
 の言い回しがとても面白かったです(笑)
 マルシーナがタクシーで亀有へと去った後、3人はひみつきちで葉加瀬に事の次第を報告し、葉加瀬のモニタ−、 別に妄想世界の映像は見えていなかったあまりにも衝撃の真実。
 というわけで葉加瀬にアキバレンジャーのビジュアルを伝える事になり……身内に、腕の立つ絵描きが居て余計なトラブルは回避されました。
 「……ありえないよね」
 マルシーナのイラストを見た葉加瀬はなにやら憂いげな表情でこぼし、一同から怪訝な視線を向けられると
 「やっぱりあなた達……疲れてるのよ」
 と話を打ち切り、つまりこれは、<炎の黙示録>が始まってしまうのか、それともズキューンシステムの深刻な副作用なのか。
 赤木信夫29歳にお薬風呂の危機が迫る中、一同をひみつきちから帰した葉加瀬が奥の金庫から取り出したのは、 赤木が妄想した筈のマルシーナそっくりのイラストと、萌え萌えずきゅーんのデザイン画であり、記されたサインは共に、 T・TSUZUKI。
 「どうして私にこれ託したの…………パパ」
 らしからぬシリアスな描写が続き、え、これはあれ? 暗黒駄メンター案件なの?!
 一方、秋葉原に空きテナントを見つけたマルシーナは、悪のメイド喫茶をオープン予定、とひみつきちに花束を送りつけ、 赤木らのカチコミを待ち受ける。
 「なんなんだおまえは……なんで俺の妄想から生まれたおまえが……」
 「なにそれ? ふざけないで! あんたなんか、私の生みの親じゃないわ」
 「なんだと?」
 赤木の妄想の産物である事を敢然と否定したマルシーナは、秋葉原の人間を吸血鬼にする作戦が進行中……と窓の外に意識を向けさせると、 そこではいつの間にやら吸血鬼パニックが発生中。これはもう、献血詐欺の現場でも見ていつの間にやら妄想が始まっているパターンなのでは?!  と勢いで止めに向かった3人は重妄想で変身するが、妄想転位した先には何故か、マルシーナの姿は不在。
 現実では、壁に向かって重妄想に突入した3人の背後で笑顔のマルシーナが弁当を配っており、 吸血鬼パニックはエキストラを雇った芝居だった、というのは、思わず唸らされる見事な説得力でした(笑)
 アキバレンジャーが妄想の中で、寄生した戦闘員に超運動能力を与える代々木クモ怪人と戦闘を開始する一方、 マルシーナはひみつきちにカチコミリターンを仕掛け、突然の立ち回りを見せる店員さんだが、マルシーナに敗北。
 マルシーナは葉加瀬の前で葉加瀬父の名前を出し、え、これはもしかして、娘を連れて出て行った妻に代わる、 理想の俺の嫁の姿なの?!
 葉加瀬はマルシーナのガス攻撃を浴びて気を失い、非公認らしく痛々しいタイプの暗黒駄メンター誕生の可能性に激震が走る中、 本家でもちょっと見ないような無重力アクションを見せる代々木クモにより、萌え萌えずきゅーんを奪われてしまうアキバレンジャー。 このままでは3人はずっと、重妄想世界から抜け出せないまま秋葉原名物・動く痛いオブジェと化してしまう…… アスリートダッシュで逃げる代々木クモを追いかけ、敵が鍛え上げた神秘の肉体なら、こちらは科学の力だ!  とマシン痛車を召喚して追跡する3人だが、それもまたマルシーナの罠であり、ステマ乙、アイキャッチを侵略。
 「何が起こるか、楽しみにしてなさい、アキバレンジャー」
 通信機を奪い、葉加瀬の声真似でアキバレンジャーを誘導するマルシーナが、急に凄く貫禄と存在感を出してきて、 ちょっとビックリです(笑)
 どこまで狙ったものかはわかりませんが、これまではあくまでアキバレンジャーの妄想世界において「悪の女幹部役」 を演じているだけだったマルシーナが、妄想世界を飛び出した事でその役割を外れ、 「マルシーナ」という自立した個人と化していっているように見えてくるのは、面白いところ。
 「目的はただ一つ。あいつらに壁を破ってもらうのよ! そこから何かが起きると信じてね!」
 マルシーナは、自転車に乗って加速する代々木クモに追いつく事に妄想を集中しろ、と偽のアドバイスを送り、 己のレゾンデートルを得る為に、第4の壁ならぬ第3.5ぐらいの壁の破壊を画策。
 すっかり乗せられているアキバレンジャーは、周辺世界の妄想を簡略化する事によって妄想を巨大クモとのチェイスに絞り、 緑のフレームの中で展開する巨大クモvsイタッシャーロボの図は、ちょっと『ドンブラザーズ』になってきていた(笑)
 代々木クモの火球攻撃を受けて本格的な危機に陥った3人は、緊急事態を切り抜けようとして、妄想世界の壁に、ずきゅーんパンチ。 その結果、巨大な次元の扉が開くと、「現実」の秋葉原に痛車ロボが出現する驚天動地の展開で、巨大クモとそのまま激突。
 「歯止めのない妄想力! どこまで行くかしらねぇ!」
 拾った看板ガンで代々木クモは撃破するが、状況は大大混乱大大混沌で、 前回今回とここまでの作品のルールを真っ正面から揺さぶった流れからクライマックスは派手な花火でまとめ、 なにやら劇場版もしくはラスト2話のような展開(基地も襲撃されましたし)。
 パロディやギャグは控えめでしたが、アスリート怪人と痛車の追いかけっこなど、 公認で飛び出してもおかしくはない状況設定だが非公認らしい画の面白さは間違いなく『アキバレンジャー』で、 内包する温度差のバランスの取り方に、田崎監督の巧さが光る一本でした。
 葉加瀬を捕まえたマルシーナを追う3人は、壁に向かって妄想に励む自分たちを見た事で変身が解除されて本来への姿と戻り、 それを見たマルシーナは葉加瀬を解放。
 「また会いましょ。……ありがとう、アキバレンジャー」
 果たしてその狙いはなんなのか? アキバレンジャーやステマ怪人の実体化は、世界に何をもたらすのか? 父は色々と大丈夫なのか?!
 図らずも「現実」でヒーロー活動をした感動でそれどころではない赤木たちに代わり考え込む葉加瀬だが、 答の見えないままマルシーナもなりを潜めてしばらく平穏が続いたある日の事、ひみつきちの電話が鳴ると、 何故か店員のごとく対応する萌黄。
 「葉加瀬、お電話でござる」
 「誰から? ……まさかマルシーナ?!」
 「……もっと凄い人でござる」
 け、警察?!
 先日の爆発事件に関してちょっと窺いたい事が……あ、でも、警察なら、直接店に来るか……ではなく、
 「東映のプロデューサーの、塚田さんでござる」
 日笠Pに肩を叩かれたのか、塚田Pが非公認世界に巻き込まれ、次回――果たして非公認は、 社内コンプライアンスの観点から封印作品になってしまうのか?!

◆第8話「痛き特訓の絆は公認ロードの陰謀交差点」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:香村純子)
 前回ラストに赤木たちが見ていた映像、の体裁で青柳と萌黄のコスプレも投入されたアニメ『にじよめ学園 ズキューン葵』のOPから始まり、 劇中劇へのフォーカスとしては定番中の定番ですが、どうしてもやっておきたかったのでしょうか(笑)
 ……公認様は公認様で、かつて「浜ちゃんさんのダイノガッツが奇跡を起こした」案件 (『爆竜戦隊アバレンジャー』第26話「釣りバカアバレ日誌、どもども」(監督:中澤祥次郎 脚本:前川淳))があるので、 そうかマルシーナも、ダイノガッツに目覚めていたのか……。
 塚田P(CV:高戸靖広が、後の煌めきを考えるとちょっと面白い事に)からの電話は、ひみつきちへの取材申し込みだったが、 それを断った葉加瀬はどこかに出かけ、公認ロードが通行止めを受けた事に不満たらたらの赤木たち3人(青柳、 すっかり染まってしまって、青柳……)は、こうなったら、先日のロボット出現の関係者です! と東映に直接名乗り出ようぜ、 と大変迷惑な方向にひらめキングし、当然、守衛に追い返されていた。
 「ふぅ……まったく、これだから痛いファンは」
 返す言葉もございません。
 葉加瀬父はアニメにはまって研究の道から離れた人物だったと判明する一方、神田明神の階段でたそがれていた3人は、 路地裏でもんじゃ焼きを作るステマ怪人・月島アルパカの姿を発見。
 「秋葉原もんじゃタウン計画はおいらの夢! 邪魔する野郎は、ぎたぎたのめっためったにしてやるパカ!」
 「黙れ係長! おまえこそ俺達の夢の踏み台になれ!」
 あ、酷いこと言った。
 目指せ公認! と重妄想する赤木たちだが、塚田Pを名乗る人物からの電話もマルシーナの声帯模写による偽物であり、3人は、 全く気にも留めていない人から気にされていると勘違いしたまま、戦闘に突入。
 「さあ、早く壁を壊して、こちらの世界へいらっしゃい」
 背後に立ったマルシーナに気付かぬまま、妄想世界でアルパカを圧倒するアキバレンジャーだが、急遽レッドが必殺技にストップをかけ、 塚Pに認めてもらう為には、アルパカごと現実世界へ飛び出さなければいけない、とだいぶ本末転倒な気もする目的を主張。
 「困るよ〜、もっと粘ってくんないとさー」
 だが、月島アルパカは、いまいち、弱かった。
 「おまえとギリギリの激戦にならなきゃ、俺達は現実世界に出て、おまえを倒せないだろ!」
 あ、酷いこと言った。
 「ここはやはり……特訓のパターンでござるな」
 イエローがスイッチをポチッとなすると、過去作品の特訓再現が地獄の電撃キャンプからスタートし、前回とのバランスも意識したのか、 今回はストレートなパロディネタが多め。
 「何をぐずぐずしている! 前進するんだ! もたもたするな!」
 アキバレッドがすっかり鬼軍曹気分な一方、二次元に没頭してイラストを描きまくり、 アニメ会社にデザインを売り込んでいた父の足跡を追う葉加瀬は、『にじよめ学園 ズキューン葵』の制作元であるスタジオベルビレッジ (鈴村……)に辿り着き、そこで父が『ズキューン葵』の制作に関わっていた事を知る。
 番組の企画当初、『ズキューン葵』にキャラクターデザインとして参加していた葉加瀬父だが、 方向性の違いや人間関係における度重なる問題から作品を外されており……妙な要素が繋がってきましたが、ここに来て、 こんなに『ズキューン葵』と書く事になるとは思いもよりませんでした!(笑)
 その頃、赤木たちの妄想の中では、厳しい特訓を乗り越えた月島アルパカとの間に心の繋がりが芽生えており、イエローが戦闘を拒否。
 「これは、一体どこへ繋がるフラグなんだ……?」
 考え込むレッドだが、月島アルパカは実は性悪で、特訓で得た力により殺意の揺らぐアキバレンジャーを始末しようと目論んでおり、 結局、怪人を倒して公認になりたい! という欲望が勝っています(笑)
 表向きはフェアでフレンドリーな姿勢を貫いて、アキバレンジャーの心を迷わせようとするアルパカだったが、逆にそれが、そうか、 そうだよな、全力で殺し合ってこそ、俺達の絆は永遠になるんだよな! とアキバレンジャーの闘争心に火を付けてしまい、 第8話にして、爆発を背負っての名乗り、初成功。
 開き直ったアルパカのもんじゃヘラシュートと、アキバレンジャーの萌えマグナムがぶつかり合った衝撃で、妄想と現実の壁は再び崩れ、 戦いはまたも現実の秋葉原へ。
 (妄想に入った場所とは異なる座標から出現。ふふふ……事は着実に進行しているわ)
 マルシーナがほくそえむ中、スマホを構える市民にアピールしたアキバレンジャーは公認様の“大それた力”を召喚し、 なんかそれっぽいバンクが入った(笑)  そしてまさかの、三つの力が合体武器に……!
 「完成!」
 「「「ダイソレタキャノン!!!」」」
 ……名前は、だいぶ酷かった(笑)
 そこまでやるのかと、これはとても予想外だった合体武器が火を噴き、ダイソレタファイヤーで天高く打ち上げられた月島アルパカは、 汚い花火としてアキバレンジャーの踏み台にされ、大爆死。
 「目的達成まであと一歩、てところね」
 イエローは集まった人々に萌黄ゆめりあの名刺を配り歩き、それを受け取った怪しすぎる長髪の男がマルシーナに近づくと不気味な笑みを浮かべ、 塚Pより前に警官に見つかって慌てて逃げ出すアキバレンジャー。
 元より、公認になりたい、という気持ちは持っていたにしても、たとえ妄想とはいえ(間接的に) 「悪」を倒すヒーローだった赤木たちが、自分たちが公認される為ならば、現実に「悪」が飛び出してきても(すぐに倒すから?) 問題ない、と戦いを盛り上げる為に悪の強化に荷担し、いわば、
 〔公認化 > 現実への悪の出現〕
 になっているのは、だいぶ行動原理がねじれてきているのですが、気がつけば現状、 アキバレンジャーこそが「妄想の怪人を実体化する悪」の立場になりつつある点がきっちり拾われてくれると、 個人的には嬉しいポイント。
 ここには、“「悪」へのカウンターとして存在できる「ヒーロー」”への意識が入っていそうでありますが、 妄想のヒーローが公認されるよりも先に、妄想の怪人が現実を侵食しつつある大いなる皮肉の行く先に、果 たして大それた英雄の魂は残っているのか。
 行方の知れない父親に関する情報を脳裏に並べ、脳細胞をトップギアにした葉加瀬は何かに気付き、次回――もしも妄想が弱ければ、 ステマがたちまち攻めてくる。

→〔まとめ3へ続く〕

(2023年12月29日)

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