ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『爆竜戦隊アバレンジャー』 感想まとめの、総括です。
- ☆総括☆
本文でも何度か触れましたが、幾つか目立つ欠点のある作品。
最大の欠点は、
爆竜達のキャラクターを立てきれなかった事。
どだい物語に絡めるには爆竜が多すぎる、というのもあるのですが、言ってしまえば、企画と物語の摺り合わせがうまくいきませんでした。 シナリオ側でも全ての爆竜を目立たせるのは無理、というのは最初から織り込み済みではあったようで、各爆竜はそれなりの性格付けと 台詞の語尾で色分けする、という手法が取られましたが、それにしてもキャラクター性が薄いままでした。
せめてメインの3匹だけでも、もう少し個性を出せれば良かったのですが、全爆竜通して、個性が出ていたと言えるのはせいぜい、 心優しい子供キャラとしてのトリケラトプス程度。ダイノアースでの戦いで妻子を失ったという重い過去を持ち、舞ちゃんの“第二の父” としての面を見せたティラノでさえ、そういった個性が物語に活かされたのは序盤だけで、中盤以降の話の中でその設定が活きる ような事がありませんでした。
これはキラー側にも言え、トップゲイラーは結局「緑川光声なのに語尾がゲラ」以上の存在にはならず、強さ故の孤独が、 やがて仲代先生との共感につながるくだりは、やりたかった事はわかるけれど充分に表現されていたとは言いがたく、 後半を盛り上げきれない一因となってしまいました。
最後の最後で呼称を「人間」から「壬琴」にあらためる、というのはベタとはいえ良かったので、もう少し物語の中で関係性を 積み上げて欲しかったです。
また、まがりなりにも人格を持って会話をする爆竜が居る事が、結果的に人間キャラクターの描写も薄めてしまったかと思います。 正直、らんる&プテラはちょっと可哀想だったレベル。らんるは後半に、女の友情からマホロとアスカの為に奮闘する…… という形でどうにか立ち位置を確保しますが、中盤は便利博士キャラ以上の存在感がなくてしばらく危険でした。
日記に連載時に、コメント欄で少し話題になりましたが、荒川さんの中で、らんる→アスカ、があったのかは少々気になります(笑)
らんるは途中からアスカを妙に気にかけるし、色々、距離感も近いんですよねー。勿論アスカに全くその気はないし、 らんるもそれがわかった上で、という描き方なのですが。正月夢オチ回では、らんる×アスカ、が婚約していたしなぁ(笑)
次の大きな欠点は、
とにかく伝説の鎧が、
出てくる→圧倒的な力で暴れる→頭痛で早退する
のパターンが、あまりにも多すぎる事。
多少は構わないと思いますが、幾ら何でも、最初から最後まで繰り返しすぎました。この鎧と、アスカとマホロ/ジャンヌのメロドラマは、 終わってみれば作品の中核だったわけですが、脱いだと思ったらまた出てくる、中身を変えてまた暴れる、戻ってきたと思ったら帰る、 などさすがにやりすぎだったかと思います。
アスカ×マホロ自体は好きですけど。正直、ラブネタ好きな私が、「さすがにもうしつこくないですか?」と思ったレベル。結果として、 マホロさんが“囚われのヒロイン”という役割に終わってしまったのも、少々つまらなかったなぁとは。
この早退パターンはアバレキラーにも波及しており、全く似たような
出てくる→圧倒的な力で暴れる→腹痛で早退する
を何度かやってしまった為、二重に良くない形となってしまいました。
アバレキラー自体は、作中で最も力の入っただろうキャラクターですし、面白かったですが。仲代先生の顔が、 もうちょっと好みだったらなぁ……!(笑)
そういえば本文でアバレキラーについて、「ダーク涼村暁?」と触れましたが、シンプルに「ブラックコンドルへのオマージュ」 と見た方が素直だったかしら。
もう一つ、後半のガン、スティラコサウルス。
よくわからない内に登場し、よくわからないけど電波を飛ばし、終盤まで全ての事象を解決してしまう……そして結局なんなのか謎。 まあ多分、<旧き神>ですが。
とにかく全くよくわからなすぎました。
最強の助っ人にしてヒントキャラなのですけれど、そのものは物語に関わらない、という非常にタチの悪い便利キャラ。
また、スティラコがらみの全てが強すぎた結果、“どんなに苦戦していてもアバレマックスになれば瞬殺”という展開が固定されてしまい、 作劇にも非常に悪影響を与えました。前半戦がやたらに対トリノイド/ギガノイドの作戦にこだわっていたのに対し、 後半はアバレマックスになれば瞬殺、アバレマックスにならない時はどうしてすぐならないのか理由がわからない、という構成が続き、 非常に戦闘の面白みを殺いでしまいました。アバレマックスのメリット/デメリット、劇中における戦力とデメリットのバランス、 それら全てが悪すぎました。
そういったパワーアップ展開の失敗、爆竜のキャラクター性の薄さ、全てひっくるめて、構成的に失敗した作品 というのが正直な感想です。
5人の戦隊メンバーが最後の最後で揃う、約1名は行ったり来たりフラフラしている、社会に潜伏しているトリノイド、 など意欲的で面白い部分もあったのですが様々な要素がうまく絡みませんでした。
特に、本編を貫くテーマであった筈の“親子の物語”という部分が、どうにも弱くなってしまったのは非常に残念。
様々な親子の関係を絡め、クライマックスへ持って行く筈だったのに、どうにも描ききれず、アスカ×マホロのメロドラマと仲代先生の 物語がメインとなってしまいました。作品の軸が動く事自体は否定するわけではありませんが、その結果として、 幾つかの要素がうまく機能せず、全体としては物足りない感じに。特に、幸人さんの親子問題などは終盤に間違いなく拾わないと いけなかったと思うのですけど、全く触れられずに終わってしまいましたし。ティラノの設定が終盤に活きなかったのもこの辺り。 凌駕の子連れキャラも、シンプルな「舞ちゃんのために!」以上のものにならず、1年間の総決算という形に全くならなかったのは残念。
さて、だいぶ欠点の羅列になってしまいましたが、良かった所を挙げると……舞ちゃんは、終始好演でした。他、介さん、エミポン、 横ちゃん、そしてヤツデンワニ……レギュラー、セミレギュラークラスだと、むしろ、周辺キャラの描き方が面白かったです。
たぶん、一番成長し、一番いいキャラになったのは、エミポン。
そして津久井教生は、ある意味でこの作品を救ったと思います(笑)
ヤツデンワニは、ほんとーに凄かった。
総評としては、
もうちょっと、ときめきたかった。
(2013年3月3日)
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