■『動物戦隊ジュウオウジャー』感想まとめ・劇場版■


“この星を、なめるなよ!”


 ブログ「ものかきの繰り言」に書いた、 『動物戦隊ジュウオウジャー』感想、劇場版その他のHTML版まとめ。

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◆『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!』◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 夏の劇場版。

 サーカスがやってきた! マリオおじさんが街で貰ったサーカス団のチラシを飾るのは、どう見てもジューマン?!  勇んでサーカスへ向かった大和とジューマン4人は、思わぬ形でのジューランドの仲間達との再会に胸躍らせ、 幻想的な演技の数々に喝采を送るが、突如現れた宇宙大大大大大サーカスの団長ドミドルが、ジューマンと子供達をさらってしまう!
 子供達の悲鳴を破壊エネルギーに変換し、宇宙大空中ブランコの邪魔になる地球を破壊する、という某暴走皇帝を思い出す 『銀河ヒッチハイクガイド』案件再び、を阻止しようとするジュウオウジャーだが、洗脳したキューブコンドルを操るドミドルに完敗。 セラ、レオ、タスク、アム、が捕まってしまい、壮絶な海中ダイブを体験した大和は、サバイバル生活中のさわおに釣り上げられる事に……。
 「ふふふ、メーバメダルが盗まれたとは聞いていたが、成る程、その男の仕業か」
 「始末しますか?」
 「いいや。折角のサーカスだ。楽しませてもらうよ。ふふふふふ……」
 宇宙の惑星を使って自分好みのサーカスを行う敵のスケール感と、それを余裕を持って見物するジニス様、というのは良かったですが、 ジニス様、メダルの管理まで適当なんですかジニス様!
 恐らく公募エキストラの大量動員が企画の目玉だったのかと思われ、サーカスの観客〜EDダンスまで、 さらわれる子供達とその親の姿が繰り返し強調され、ジュウオウジャーに声援を送る子供達と声を合わせての「この星を舐めるなよ!」 はそれなりに熱かったのですが、その逆転に至るとわかっていても、大量の子供達の泣きのシーンは、少し長すぎた印象。
 再会する親子のシーンにもたっぷりの尺が採られて主要な観客とのシンクロを狙った構成となっており、 いってみればステージショーの要素を逆輸入したといえるのですが、そこに同調する要素の薄い身としては、 メタ要素を省いた時の物語的積み上げの不足は感じました。これは、映画としての狙いがハッキリしていて、その狙いの層ではなかった、 という事ではあるのですが。
 映画として、という点では、映画館にいざ劇場版だ、と見に行くとまた心構えの時点で変わるのかとは思いますが、 劇場版的いきなりスペクタクルな展開と、キャラクターの個性を尊重しながら丁寧に段取りを積み上げていく『ジュウオウジャー』の作風は、 どうも相性が悪かったのかな、と。この辺り、香村さんの経験値の問題もあるかもしれませんが、 TV本編ではあれだけ手堅く鮮やかだったキャラ描写も、これといって光る所がなくのっぺりとしてしまい、この点は正直、物足りない出来。
 またタイミング的にサワオのキャラクターがまだ出来上がっていなかったのか、とにかく不自然なほどサワオが出てこないのですが、 冒頭の巨大戦は釣りをしていて気付かなかったはまだともかく、役割分担とはいえ、 単騎特攻した大和くんが中で血まみれになっている間、外で待機は、さすがに酷すぎます。
 その癖、最終決戦ではしれっとワイルドトウサイキングが出てくる為、色々ちぐはぐ。
 総じて、“戦隊夏映画の都合”がまとめて悪い方向に転がってしまった感。
 一番面白かったのは、EDの劇場版ジュウオウダンスで、せっかく新撮なのだから少し本気出す、 みたいな感じでキレを見せるセラの横で、相変わらず振り付け通りに動くだけでいっぱいいっぱい感が迸るタスク。 とにかく、笑顔だけ頑張りました!!

◆『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージfromスーパー戦隊』◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
 冬の劇場版。

 「そんな……ニンニンジャーとジュウオウジャーが全滅した……。スーパー戦隊の歴史が終わっちゃった……」
 忍者装束の少年の前に無惨に倒れ伏す12人の戦士達……果たして、スーパー戦隊の運命や如何に、 で始まる《スーパー戦隊》シリーズ、40周年記念作品。
 時間は少し遡り、セラ・レオ・タスク・アムがジューマンの姿に戻り、山奥でキャンプを楽しもうとしていたジュウオウジャーだが、 そこに手裏剣が投げつけられ、周囲を取り囲んだのは、5人の――ニンジャ。
 「ようやく見つけたぞ!」
 「……忍者?」
 「ニンジャってなに?」
 「ワルもんか?」
 「ワルもんは、そっちでしょ!」
 「悪い妖怪ジュウオウジャーめ! 覚悟しろ!」
 あ、ちょっと、見た目的に反論しづらい……!
 「「「「妖怪?」」」」
 「……しまった! みんな、ぱっと見妖怪っぽい!」
 劇場版でも冒頭から炸裂する、大和くんの真人間ツッコミ!(身内に)
 一斉に顔を人間に戻すジューマンだが、むしろますます妖怪ぽくなった気はしないでもなく、もちろん事態は悪化。 なにやらスーパー戦隊に化けて悪事を働いている事になっているらしいジュウオウジャーを取り囲みながらニンジャ達は変身し、 戦隊が別の戦隊に出会った時の困惑を、ジューマンの異文化への困惑を重ねる事で物語の中に取り込むという仕掛け。
 「忍びなれども忍ばない!」
 「……忍ばないの?」
 繰り返し炸裂する真人間ツッコミ!
 「「「「「手裏剣戦隊・ニンニンジャー!!」」」」」
 いきなり撃たれたジュウオウジャーはやむなく変身し、二つの戦隊が睨み合い、戦闘の火ぶたが切って落とされた所で、 大変長いタイトルコール。
 ……長い。
 妖怪なので人権は存在しないと殺意を向けるニンニンジャーと、割と殴られたら殴り返す方なジューマン達の間で結構な真剣勝負が展開し、 一計を案じたジュウオウ赤は、ジュウオウホエールにフォームチェンジすると番長キャノンを地面に撃って、目くらましにする事で逃亡。
 「なに今の攻撃?!」
 「あいつらやっぱヤバいよ!」
 改めて、ニンニンサイドから、クジラ大王どうなの? という疑問が間接的に提出されます(笑)
 それに対して、盛り上がってきた赤ニンジャは掟破りの巨大ロボ召喚で足止めを図り、 動物戦隊もジュウオウ&ワイルドキングを持ちだして戦いはヒートアップ。
 巨大戦ではシノビマルが分離して軽妙なアクションで引っかき回す、というのがアクセントになって面白く、 まさかのUFO丸発動に動物大合体で対抗の末、必殺技の撃ち合いで互いのロボットが強制合体解除で両戦隊はバラバラに……と、 本気のバトルが驚くほど続きます。
 ロボから投げ出された大和は執拗に追いかけてくる天晴から逃げ回る羽目になり、一方、八雲達が一時帰還したニンジャ屋敷では、 ジュウオウジャーに一族を虐殺されたと吹き込んだ花の妖精が帰りを待っていた。
 忍者……虐殺……戸隠流……音忍……ううっ、頭が……。
 ニンニンジャー視点ではジューマンは妖怪の一種に見えてしまう、というのが掴みの誤解としてスムーズに機能している一方、 虐殺の疑いをかけられるのがニンニンジャー側だったら、それはそれで面白かったなと思ってしまう『ジライヤ』ファン(笑)
 大和とはぐれたセラ達4人が、オープンカフェで「そもそもニンジャって何?」と呟いたところを、通りすがりのゴールド寿司、 じゃなかった、ゴールドおでんに過剰反応で絡まれていた頃、互いに疲労困憊ながらも追いかけっこは続いており、 大和くんは天晴にズボンを脱がされそうになっていた(尻尾を確認する為です)。
 だがその時――
 「やめろ父ちゃん!」
 割って入った忍者装束の少年の言葉に、二人はフリーズ。
 「「……とうちゃん?」」
 一方、マリオ家に忍び込んだ忍者白黄は、遅れてキャンプに参加する筈が誰も居ない、 と混乱したままマリオ家を訪れていたさわおを拉致。
 「誰だおまえら? その恰好、もしかしてスーパー戦隊か?」
 「そう、あんたと違って、本物のね」
 「……! そうだ……俺は……みんなと違って……本物のジュウオウジャーじゃない」
 トラウマスイッチを押してしまい、体育座りをはじめるさわおを、面倒くさいので気絶させる桃忍者は、相変わらず邪悪だった。
 気絶したさわおは花の妖精によって拘束され、少年忍者に突き飛ばされ手作りお弁当を台無しにされる冒頭に始まり、 ここまで不幸しか起きていません。
 「未来から来た俺の息子か……すげぇぇ! 熱いなこれ!!」
 W赤サイドでは、未来から来たと語る少年・伊賀崎快晴(よしはる)をあっさり受け入れ、タカ兄は、こういう時、 凄くいい方向に転がるなぁ(笑)
 「いや、いやいやいやいやいやいや……」
 そして大和くんは、あくまで真人間だった。
 快晴に対するこの二人の反応の差が、今作で一番面白かったシーンかも(笑)
 「未来だよ? 軽く受け入れすぎじゃない?」
 「え、だって、そう言ってんじゃん」
 「……言ってるけど」
 ニンジャのノリについていけない大和くんだが、手裏剣忍法で未来からやってきた快晴は、明日、 ジュウオウジャーとニンニンジャーが同士討ちの末に全滅し、この世界からスーパー戦隊が消滅してしまう……という危機を告げ、 急・展・開。
 妖怪ハンター時代の事はメモリから消去されたおでん屋に「ニンジャ」の説明を受けていたセラ達の元には、さわおを人質に預かった、 という手紙が届き……卑劣! 桃色の策士、卑劣!
 ニンニンジャー、という言葉に反応したおでん屋は、空気を読まずに変身した事でジュウオウジャーに身柄を拘束され、 追加戦士二人が双方で人質にされる、というのは面白い展開。
 そして弓矢基地では、花の妖精の正体は、ナリアに雇われて地球にやってきたヒーロー始末人であると判明。
 「仕上げにもう少し、正義の怒りを煽ってやれば……くっくくくくく」
 忍者屋敷で尋問を受けるさわおは、ルンルン拘束具の影響で「最悪の妖怪か。最っ高の褒め言葉だぜ」 と台詞が悪役に自動変換されていたが、ここでまさかの、妄想フレンズ投入!(大歓喜)
 「操、気持ちを伝える手段は、一つじゃないよ」
 そのアドバイスを受けたさわおは、なにやら床で藻掻きだし……そして訪れる、運命の日。
 花の妖精の特殊な花粉(冒頭の映像が伏線に)により通信が分断されたまま、八雲達とセラ達による人質交換の交渉は不発に終わり、 激突するダブル戦隊。駆けつけた大和と天晴の声も届かず、両者の戦いは過熱していき、拘束をほどいたさわおとキンジの二人まで、 次々と参戦してしまう。力尽くで言う事を聞かせようとアカニンジャーも変身し、 いよいよキレた大和くんが全員まとめて番長キャノンで生き埋めにして戦隊の歴史終了 かと思って大変ドキドキしましたが、大和はなんとか冷静さを保つ事に成功。 だが両戦隊の戦いは止められないまま互いの一斉攻撃がぶつかりあい……快晴の知る歴史が再現されてしまったのかと思われたが、 全ては示し合わせの末の芝居だった!
 前夜、さわおは決死の尻文字によりルンルン拘束具の秘密をニンニンジャーに伝える事に成功。 誤解が解けた両者は一計をめぐらす事で花の妖精の本性を引きずり出したのだった、というのはストレートな展開ですが、 両赤だけが真相を知らずに振り回される側だった、というのは戦隊の作劇としてはなかなか珍しいでしょうか。
 まんまと乗せられた花の妖精は花の悪魔の正体を現すとお約束の再生幹部軍団を繰り出し、その前に並ぶ12人の戦士達。
 「スーパー戦隊の未来は、俺達が繋ぐ!」

「「忍ぶどころか!」」
「「「「「「「「「「本能覚醒!」」」」」」」」」」

 Wレッドが体を入れ替えながら、12人の揃い踏みに繋げる動きが、妙に格好いい。

「忍者と」「王者を」
「「「「「「「「「「「「なめるなよ!!」」」」」」」」」」」」

 大人数バトルに突入し、見所は、スターニンジャーとのツーショット写真の喜びで野生大解放するサワオ。
 各メンバーが順調に戦いを進める中(妙に、強敵扱いで活躍する蛾眉さん……蛾眉さん……)、Wレッドは幻月コピーに苦戦。 快晴が忍術で支援したその時、<終わりの手裏剣>(呪いのアイテムなので、本編終了後に再生した?) が飛んでくると快晴用の変身手裏剣が生み出され、更に<終わりの手裏剣>を追いかけてきた旋風父さんが顔を見せる。
 という事で3世代アカニンジャー再び、というのはファンサービスかつ『ニンニンジャー』本編の丁寧な継承となっており、 『ニンニン』本編が上手く処理しきれなかった「父と子」という要素を改めて強調してもいるのですが……個人的にはちょっと、 心の傷を抉る展開。
 旋風・天晴・快晴がアカニンジャーへと変身し、“かつてヒーローに夢見た大人が、今またヒーローになってもいい” というテーゼ自体は嫌いではないのですが……本編感想の繰り返しになりますが、旋風が“かつて夢見たヒーローにはなれなかったけど、 別の道をちゃんと生きている大人”ではなく、“かつて夢見たヒーローになれなかった事を引きずり続けている大人未満”なのが、 どうにもこうにも辛い。
 3アカニンジャーが幻月コピーと戦っている間にジュウオウゴリラは花の悪魔に挑み、 加勢に入ろうとするナリア・アザルド・クバルの前に立ちはだかったのはバド! と思いきや、 そこに通りすがりのキュウレンジャーが現れて冬の劇場版恒例の先行出演タイムとなり、物凄く蚊帳の外に追いやられるバド(笑)
 今作、なんと後半約30分ずっと戦っているので一つ一つの戦闘の体感時間がかなり長いのですが、 キュウレンジャーも9人揃ってメーバ軍団を蹴散らすと必殺技でアザルドバリアー(便利)を粉砕する大暴れで、 毎度毎度このゲスト登場は扱いの難しいところですが、ナリア・アザルド・クバルに完全勝利を収めてしまうのは、 サービスとしてもやり過ぎた印象。
 究極の救世主達は去って行き、花の悪魔に挑み続けるジュウオウゴリラ。
 「倒す……絶対! 天晴と快晴くんの未来を……みんなが繋げた未来を……俺は守る!」
 ジュウオウゴリラは漲るマッスルで花の悪魔の射撃を弾き落とすと、ジュウオウ番長に変身。片手にキャノン、 片手に鞭剣を持っての連続攻撃から零距離番長キャノンを放ち、今回! 物凄く溜まっているストレスを!  全力で叩きつける!!
 ブチ切れ大和くんの砲撃にギリギリで耐え抜く花の悪魔だったが、そこに再生幹部軍団を壊滅させた仲間達が集い、 ジューマンパワーと忍タリティを結集した合体砲撃で遂に滅殺。だが、花の悪魔はナリアから拝借していたコンティニューメダル×3を使うと、 下半身が巨大な植物と化したお花の大魔神へと変貌。
 「星ごとぶっ潰しちまえば、貴様等も終わりだ!」
 二大最強ロボも打ち砕かれW戦隊の消し炭寸前、<終わりの手裏剣>を介して40大スーパー戦隊パワーが発動し、 絶体絶命の危機を免れる12人。
 「今のが、先輩達の……」
 「スーパー戦隊の、繋がりの力……」
 「行くぞ! おまえら! 先代達にばっか、甘えてらんねぇぜ!」
 「ジュウオウジャーとニンニンジャーの繋がり、見せてやろう!」
 歴代スーパー戦隊の力を受けた動物手裏剣大合体により、ワイルドトウサイキングの胸に巨大な手裏剣が付いた、 割とぞんざいなワイルドトウサイシュリケンキングが誕生すると、一つになった野生と忍者の力で、花の大魔神を圧倒。
 「馬鹿な……この俺が、こんなちっぽけな奴らに!」
 「私たちをバラバラに襲えば、倒せたかもしれません」
 「あんたの卑怯な作戦が、逆に私たちを繋げたのよ!」
 というのは、『ジュウオウジャー』本編のテーマを活かして、好きな台詞。
 「最後の最後に覚えとけ!」
 「スーパー戦隊を――舐めるなよ!!」
 お花の大魔神はスーパー戦隊ビッグバンを受けて塵となり、ここにナリアプレゼンツ、正義のヒーロー始末作戦は失敗に終わったのであった。 なお、ジニス様は“一切登場しない”という裏技により、格を保ちました。
 戦い終わり、スーパー戦隊の存在しない未来を変えた快晴は手裏剣忍法によって自分の時代へ戻り…… そもそも今日死ぬ筈だった天晴に子供がいるのはどうしてだ? と至極もっともな疑問を口にするタスク。
 その答は……
 「新婚だ!」
 身内が誰一人知らない内に天晴は結婚しており、近々子供も生まれる予定だったという清々しいまでの正面突破に、 ところどころの無茶な部分の大半が、どうでも良くなりました(笑) (一応、 途中で天晴が快晴をあっさり受け入れた理由の補強にはなっている)
 良くも悪くもこれで話が成立してしまうのは、長い戦隊史の中でもタカ兄他数名程度に絞られると思いますが、 天然ホスト気質の疑いがあるタカ兄の、TVでは話題にしにくい子供とかではなくて本当に良かった……!
 天晴の「え……結婚って家族に知らせるものなの?」レベルの反応に一同騒然とする中、伊賀崎一家にげしげし踏まれる大和くん。
 「あー……最初から最後まで散々だ……」
 両戦隊入り乱れて天晴を追いかけたり勝利を祝う中で、一部スタッフ(?)が強硬に主張するも『ニンニン』 本編途中で派閥が粛正されて消滅した霞×八雲がなんとなく拾われたり、キンジとさわおに友情が芽生えたり、 凪がLV.Xの女にロックオンされたり、色々とありつつ、ドタバタ騒ぎ。
 「散々だったけど……まあいっか」
 と、なんだか少々、『ジュウオウ』本編ラストにも繋がる気配を漂わせるオチで、これにて一件落着。
 ……ただし凪、その女の「責任取ってくれるよね?」は、「全部弁償してくれた上に相応の誠意を見せてくれるよね?」 の意味なので、将来にわたってありとあらゆる預貯金貴金属から有価証券の類いが凪ーーーーー!
 戦隊冬映画恒例のVSコラボですが、前年作品であるニンニンジャーが全編に渡ってがっつり登場し、 ゲスト出演というより共演といった方がふさわしい形になっている、というのが一つ特徴。
 合わせて、物語のキーになる人物もニンニンジャーの関係者であり、 《スーパー戦隊》の“繋がり”という形で『ジュウオウジャー』本編のキーワードと絡めてはいるものの、 どちらかというと『ニンニンジャー』本編における“世代の継承”というテーゼを拡張する構成で、 『ジュウオウジャー』にとっては番外編で、『ニンニンジャー』にとってのエクストラエンド、といった内容。
 この辺り、TV本編が佳境に迫る中で、香村さんが劇場版とのバランスをどう考えたか、というのがありそうですが、 渾身の「変わるんだ」編に近いタイミングという事もあったのか、爆発力の高いキャラであるさわおの扱いも終始控え目であり (一応、さわおの尻文字が状況逆転の契機になっているのが“コミュニケーションの戦隊”の面目躍如ではありますが、 そう考えると……歴史の分岐点は快晴がさわおを突き飛ばしてキャンプへの合流が遅れた所なのか)、主客逆転まではいかないものの、 “たまたま40周年目の作品であった『ジュウオウジャー』”とでもいったバランスになっているのは、 VSシリーズとしても変則的な印象です。
 そんなわけで『ジュウオウジャー』としては物足りない面がありましたし、さすがに少々、戦闘シーンが長すぎたのでは、 と思う所はありましたが、40周年記念作品である事を第一とした娯楽作品としては楽しい一本でした。

◆『帰ってきた動物戦隊ジュウオウジャー お命頂戴!地球王者決定戦』◆ (監督:竹本昇 脚本:田中仁)
 本編終了後のVシネマ。

 「人間とジューマンと、多くの動物たちが共に生きる星、地球。人間の世界とジューランドが融合し、大きな変化を遂げたこの星で、 大和達は新しい日々を送っていた……」
 新たな世界でそれぞれの道(セラ:養護施設?の先生、レオ:本編第8話で出会ったミュージシャンと改めて友人に、 タスク:大学生、アム:ファッションモデル)を歩んでいた元ジュウオウジャーの6人の元に、地球王者決定戦の招待状が届き、 人間とジューマンの絆を深める為の催しなら、と参加を決める大和達。
 だがバトルロイヤル型式の予選真っ最中にバドにさらわれた大和が目にしたのは、大会主催者・ポカネは影で闇カジノを運営し、 他者の命を宝石に変えてしまう能力を持つ、デスガリアン残党という真実であった――。
 ・レオとセラの激突
 ・妄想フレンズの秘密
 ・バドと大和の共闘再び
 ・相撲
 などなど、本編の要素を拾い上げながらサービス満載で送るボーナストラック的作品で、 ヒロインはサイ(CV:釘宮理恵)、そして、謎のコンドル推し。
 細かい成り行きよりもサービス重視の『帰ってきた……』らしい作りなのですが、「手堅い目配り」と「丁寧な段取り」 を大きな武器としていた『ジュウオウジャー』本編とのギャップはどうしても大きく、短距離走向けの作品ではないな、と改めて。
 これを機会に今度こそレオと本気の勝負をする、と意気込むセラに対し、 「勝ち進むと勝負する事になる」事そのものを考えていなかったレオ、とかはらくして面白かったですが(笑)
 レオとセラが格闘大会で雌雄を決する一方、見物に回っていたタスクとアム、途中離脱の大和くんはコスプレで闇カジノに潜入し、 やけに自身満々だと思ったら鋭敏視覚を駆使してルーレットで荒稼ぎする大和くん、妙に手慣れているのですが、 本編でジューマンに配られていた“お小遣い”の財源について、大きな疑念が浮上してしまいました(笑)
 タスクは麻雀で役満を連発し、本人「頭を使うゲーム」と主張しているのですが、上がっている役や捨て牌の数を見る限り、 縦横無尽にイカサマを駆使しており、大学で何を学んでいるんだタスク。
 ……これがアムだったら、天然のラック値で手が揃っても納得がいくのですが、そのアムはツボ振りのコスプレに興じていました。
 闇カジノをまるごと沈めたダーティージュウオウジャーは、命の宝石を賭けた勝負を挑み、 卑怯な罠を乗り越えたサワオが地球王者決定戦に見事優勝。ダブルノックアウトで倒れていたレオとセラが復帰して宝石を取り戻し、 宝石にされていたバドも元に戻っていよいよ決戦へ……のところで、コピー幹部のジャグド(第1話で倒されたチームリーダー)を 「誰?」と弄るのは、物語の勢いを削いだ上に悪ふざけ感も出てしまい、大失策。
 また、なんの理由付けもなく突然ポカネから生み出されるコピー幹部自体はサービス要素&戦闘の数合わせして許容するとしても、 どういうわけか揃って「自分が死んだ後の記憶」を持っていたのは、不思議な上に不可解が重なってしまい、余計な要素に。
 一つの壁を越えた黄&青が強敵アザルドをタッグで撃破するのはともかく、ジニスの復讐の念に燃えるナリアを、 本編で特に絡みのなかった白が単純にしばき倒すという全く噛み合わない状況も発生し、 記憶の所持そのものがこれといって効果的にならず(台詞を作る都合としか思えず)、今作単独としても劇的さに欠ける上で、 本編のキャラクター性も無駄に損ねる残念な事になってしまいました。
 “軽めのVシネマ一本で倒される丁度良い新たなる敵”そのものが、 本編が綺麗に落着した作品ほど“本質的な蛇足”になってしまう事情はありますが、 黒幕ポカネも大物として描きたいのか小物として描きたいのか話の都合で腰が据わらず(最終的にだいぶ小物に落ち着くのですが、 その割にはやたら強い上にコピー幹部を繰り出してくるので見ていて戸惑う)、ヒーローを引き立たせる悪役として全く魅力的にならず。
 特に、人間体(演:林家たい平)の演技が破滅的に稚拙で、登場シーンが端から茶番劇になってしまい、 中盤以降の物語が、緊張感や切迫感皆無という惨状を招く大きな要因に。
 夏冬の劇場版でよく見られる、お笑い芸人(など)のゲスト悪役出演と同じ流れでしょうが、 そういった起用の中でも今まで見た作品で最悪レベル。
 葉巻になぞらえて扇子をふかすのがメタネタ(落語家だから)なのはキャストクレジット見てようやく理解できましたが、 特に面白くない上に劇中だと全く意味不明の行動なので演出による肉付けも巧くいっておらず、いくら『帰ってきた……』とはいっても、 作品一本の悪役を張らせるには無理のあったキャスティングで、キャストした方が悪いのですが、 作品の出来、という点においては致命傷になってしまいました。
 『帰ってきた……』そのものは、戦隊サイドのサービス要素こそが中心のボーナストラック、 と思えば割り引いて考えるべき要素ではありましょうが、最新作を引き合いに出すならば、 スーパー戦隊が「極めて本気だ」を構築する為には悪役こそが肝心要であって、そこを構築できなかった事により、 物語上のサービスは充実していたが、スーパー戦隊としてのヒロイックな盛り上がりには欠けてしまう事に。
 クライマックスバトル、愛の力でレーザーブレードを発動するサワオ、はちょっと面白かったですが(笑)
 今作最大のサービス要素は、本編で度々「ニンゲンのメスに粉を掛けるレオをゴミのような目で見るタスク」の描写から、 アブノーマルな性癖なのではと疑われていたニンゲンとジューマンの異種族恋愛についての一つの解答。
 サイの意見を、採用した!
 最後は、今作必殺ダンスを始めればオチがつくメソッドにより、レッツレッツダンス。
 そもそもあまり期待値は高く持たないで見ましたが、物語云々という以上に、ゲスト悪役の演技・演出・キャラ造形、 の出来の悪さが足を引っ張り、全体の質を大きく下げてしまったのが惜しまれます。
 ED後にメンバーがメタ気味な挨拶をする場面とか、そういうもの、としては嫌いではないだけに、悪役が水準レベルなら、 ボーナストラックとしてもう少し素直に楽しめたかな、という一作でした。

(2021年8月15日)

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