■『動物戦隊ジュウオウジャー』感想まとめ7■


“世界の王者、ジュウオウザワールド!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『動物戦隊ジュウオウジャー』 感想の、まとめ7(37話〜42話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ8〕


◆第37話「天空の王者」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 アバンタイトルから鳥男、そして、鳩男(違う)が登場。
 マリオおじさんが家に飛び込んできた鳩を保護し、大和達はそれが伝書鳩である事に気付く。その送り主は、 ゴリラのジューマン・ラリー。6人は、ラリーが新たなキューブを発見したという海岸へと向い、さわお、ラリーと初対面なので、 背・広(笑)
 久々に鳥男とラリーが登場し、そしてここからラスト1クールへ向けて最終章に入っていきます、という事でか、 必要な説明を交えつつ、相変わらず他人との距離感が測れないさわお、サイ・ワニ・オオカミの事を引きずるさわおを暖かく励ますラリー、 鳥男についての諸々、生き物は同じじゃないから支え合えると語る大和、バンクシーンありでのジュウオウキング単独出撃、など、 これまでのおさらいをしつつ、序盤の雰囲気も入れてみました、という構成。
 6人の話を聞くラリーさんは多分、その、「鳥男」ってのやめてやれよ……と思っている(笑)
 なおOPクレジットでは、一足先にめでたく「鳥男」→「バド」に変更になりました。まあまだ本編で大和達に名乗っていないのですが、 ここまで引っ張ると、一体どのタイミングで名乗るのか。
 「鳥男……!」
 「…………すまん大和、いい加減名乗ろうと思うが、バドって言うんだよ俺……」
 「……やっぱり鳥?!」
 もういっそ、ラリーさんから本名を伝えてあげた方が、恥ずかしくない気がする!!
 ラリーと旧交を暖める大和達だったが、街にチーム・アザルドのプレイヤー、うざい縄跳びブラザーズが登場。 触れると衝撃ダメージが発生する縄跳びを操るブラザースのコンビネーション攻撃により、大縄飛びをする羽目になったジュウオウジャーは、 サワオが引っかかった影響でイーグルが足首を負傷。迫り来るブラザー2を至近距離の番長キャノンで大爆殺するというエグいフィニッシュで辛うじて始末するも、 ブラザー1には逃亡されてしまう。
 「この星にはいろんな生き物が居て、支え合って生きてる。同じじゃないからこそ、支え合えるんだ。俺達もみんな違うニンゲン。 違うジューマン。いろんな奴が集まってる。だから、みっちゃんもみっちゃんの出来る事で、頑張ればいいんじゃない?」
 「俺の……出来る事で……」
 ラリーと再合流し、崖に埋まった巨大なキューブをどう取り出すか検討中、落ち込むさわおを励ます大和だが、 デスガリアン反応が感知されて向かうと、そこにはまたも縄跳びブラザーズが。
 (跳べない俺に、出来る事!)
 ジャグリング攻撃に続いて襲い来る縄跳びに対し、進み出たサワオは、ロープをワシ掴み。
 「みっちゃん!」
 「それは……跳ばない事だぁ……!!」
 そのままロープごとブラザーズを振り回して投げ飛ばし、サワオらしいといえば実にサワオらしいのですが、 小学生の体育でも行われそうなモチーフに対し、皆で協力して克服するのではなく、個人の暴力で突破してしまうという解決法は、 どうなのだろう……(笑)
 “出来ないからいっそ輪に入らない”というのは、個性で頑張る、とはちょっと違うと思うのですが。
 「操!」
 「手、大丈夫?!」
 「痛い……でも、痛快だぁ!」
 5人が一斉射撃で銃を構えている間、何故か後ろでダメージのくすぶる両手を見つめているサワオは、心身両面でイける口のようで、 もう、取り返しのつかないほど、そっちに覚醒している模様です。この調子で経験値を積み重ねていけば、 マシンガンで撃たれた気持ちから変身できるようになる日も近いかもしれない。
 一斉射撃でブラザー3を撃破し、逃亡したブラザー1を追う6人だが、今度は3がコンティニューで巨大化し、 赤青黄はジュウオウキングを召還。久々の単独戦闘で勝手を忘れていたのか、剣を取り落としたキングは海岸線に追い詰められて切羽詰まり、 ライオン、崖に埋まっていたキューブを強引に抜き取ると、振りかぶって頭上から怪人に叩きつける(笑)
 ……レオ的には、クマサカリみたいになるつもりだったのか?
 ところが瓢箪から駒、怪人の頭部に叩きつけられた勢いでキューブは〔?〕マークの巨大な動物キューブとして目覚め、 そのまま力一杯放り投げるとキューブオクトパスへと覚醒。ジュウオウキングの頭部と背中に合体してジュウオウキングオクトパスになると、 背中に風車のように展開した脚部からタコ焼きを飛ばして攻撃し、最後は飛翔斬りで勝利。
 14体合体を決めた後に更なる追加で動物武装が出てきましたが、武装アニマルは毎度少々強引にしても、 これまで以上に雑な扱いとなり、スタッフが四角い鈍器で殴りたいのは、怪人なのか財団Bなのか、みたいな謎のタイミング。 ……まあこの後、大きな意味を持つ事になる可能性も無いではないですが、ギミック・色合い・強引さと、 なんだか『天装戦隊ゴセイジャー』のダチョウを思い出してしまいました(笑)
 巨大ブラザー3を撃破した赤青黄だが、ブラザー1を追い詰めていた緑白サワオが突如背後からブラザー4の奇襲を受け、 大ダメージで変身解除という窮地に。駆けつけた赤青黄もコンビネーション攻撃に苦戦を強いられ、 赤と青黄に別れてブラザーズを引き離して戦うが、負傷した足首を突かれたイーグルが苦戦してしまう……と、 普段何も考えずに暴れ回るだけのチームアザルドが、結果としてジュウオウジャーを戦力分断。
 大王者の資格を蹴り飛ばされて番長への変身にも失敗した大和は、帽子ブーメランを喰らって変身解除。 思わぬ展開で命の危機に陥ったその時、飛び込んできた影がブラザーに組み付いて大和を救う。 その影の正体は――姿を消していた鳥男!
 「俺はいいです、逃げて下さい!」
 「おまえは……俺が守る!」
 「……え?」
 危地を救われること都合3回目(幼年時代・ギフト戦・今回)にして、鳥男の言葉に微妙な違和感を覚える大和。
 「頼む……今だけでいい。俺に、大和を守る力を。――力を、貸してくれ!」
 以前はジューマンズ相手に格闘で渡り合っていた鳥男ですが、強敵ブラザー怪人に追い詰められ、手にしたキューブに懇願したその時、 大地から溢れだした金色の光がキューブに集まり、第6の王者の資格が覚醒する!
 皆が動揺する描写が入るのですが、これは、太古にクジラ大王を初代ジュウオウ番長へと変えた、地球パワーという事でしょうか。 ここで印象的に見せてきたという事は、王者の資格、そして地球パワーとは何か、というのがここから物語の中に組み込まれてきそう。
 『バード!』
 「本能覚醒!」
 鳥男が王者の資格を用いると、フォルクローレ風のBGMでコンドルが飛んできて、鳥男は第7のジュウオウジャーへと変身!
 「天空の王者――ジュウオウバード!」
 金も銀も黒もまとめて使われてしまったのでオレンジだ! そして、バード、てありなの?! でつづく。
 ……色々仕方ないのでしょうが、次回予告で最初のカットが、本編ラストカット、というのはさすがにどうにかならなかったのか(^^;  そこに不満を述べるならもはや予告を見るなレベルなのでしょうが、次回予告好きとしては、もう一ひねりを期待してしまいます( 今回に関しては、1週休む影響もあったのかもですが)。
 で、そんな予告によると次回、いよいよ鳥男の過去と目的が明かされるようですが、 大和を守る事にこだわっている――他の連中はかなりどうでも良さそう――事を考えると、 予告に出ている黄色ジャケットのニンゲンは大和父? 墓参り回の大和くんの態度だと、大和父は存命で仲は険悪、 という雰囲気でしたが、無言の芝居にしたのでどうとでもなる事はなりますし、果たしてどうなる。

◆第38話「空高く、翼舞う」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 注目は、誰も一言も触れないキューブオクトパス。
 敢えて言うなら冒頭でナレーションが触れましたが、「しかし、強敵サグイルブラザーズの罠にはまり」って、 あのブラザーズは何も考えていないような……(笑)
 鳥男が変身したジュウオウバードは、空中連続キックからの必殺バード剣により凄い勢いでブラザー4を木っ端微塵にし、 青黄と戦っていたブラザー1は逃走。
 「助けられたな……」
 キューブを見つめ、立ち去ろうとした鳥男を呼び止める大和。
 「鳥男……やっとちゃんと会えた」
 「…………バド。俺の名前だ」
 いい加減なんとかしてほしかったので、つい立ち止まってしまいました。
 その頃、弓矢基地。
 「まさか、ジュウオウジャーがもう一匹居たとは」
 「アザルド、あなた何か、余計な事をしたのではないですか?」
 「なんだと?!」
 「誰がどれだけ抵抗しようが構わないよ。私を楽しませてさえくれればね」
 というかジニス様が一番、敵味方ともに面倒くさい奴を作りましたからね!
 クバルは言葉に詰まり、ジニスはパワハラ最高と愉悦にひたり、地上では大和が本人から直接、ジューマンズ&さわおがラリーから、 それぞれバドの過去を聞かされていた――
 「俺達は、交わるべきじゃない。だから俺は、王者の資格を盗んだ」
 20年以上前、バドは、リンクキューブの番人であった。
 番人として外の世界に興味を持ったバドは、ニンゲンを研究しているラリーの話を聞きに来るなどしていたが、ある日、 ジューランドに迷い込んだニンゲンの男を見つけ、これを保護。男の衰弱が酷かった事から神殿に報告せずに密かに匿い、 二人は少しずつ打ち解けていく。
 「ジューマンは、ニンゲンともうまくやれるんじゃないか。そう思った。だが…………見つかった彼は拘束された」
 保守的なジューランド上層部は、「我々には、ジューランドを守る責任がある」と、秘密を守る為に男を牢屋へ。そしてある夜、 牢を抜け出した男は逃走中に衛士に追われ、足を滑らせて切り立った崖から転落してしまう……。
 「あの日の事件は、そのまま闇に葬り去られた」
 「そんな……」
 「恐らく昔から、似たような事件は度々あったのさ。それをジューランドは、隠し続けてきたんだろうねぇ」
 クジラ大王の自己PR辺りから不穏な気配のあったジューランドですが、今回の描写で、因習に縛られた山奥の隠れ里、 のような位置づけに。その上で、偶発的な悲劇が一度あっただけではなく、一度あったという事は過去にもあったのだろう、 と裏書きしてくるのが、かなり際どい表現。
 これまでも、マシンワールドなり、志葉家なり、背後にわだかまる闇が透けて見える戦隊というのはありましたが、 現時点で変身パワーの源とされている世界が、与太妄想抜きで、“正義の背景となる理想的な世界”ではなく、 “美徳もあれば悪徳もある我々と同じ世界”と明示されたというのが、なかなか踏み込んだ展開。
 一方で前回のバード誕生において、ジュウオウジャーへの変身が必ずしもジューランドのジューマンパワーに拠らない事が描かれましたが、 この辺りの要素も全体のテーマを繋げてくれそうで、どうまとめてくるかは楽しみです。
 そして、リンクキューブから王者の資格を抜き取る事で二つの世界の繋がりを切ったバド (ニンゲン界側の資格を抜き取る必要がある=抜いた本人はジューランドに帰れない、のでそれまで世界はリンクしたままだった?) の行為は、「世界を変えようとする」のではなく「物理的に閉ざしてしまう」という一種の逃避といえますが、 後々この点と向き合ってくれる事にも期待。
 「なら……どうして俺にくれたんですか?! きっとこいつが、俺を守ってくれるって」
 「……なんでも良かったんだ。おまえを励ましてやれるなら。……ただ、手放してしまえば全て断ち切れる。そう思ったのかもしれない」
 「じゃあ……」
 「俺にとって王者の資格は、繋がりを切る為の道具でしかない」
 「そんな……子供の頃からずっとお守りにしてたんだ。一人じゃない。生き物はみんな、どっかで誰かと繋がってるって。 俺も繋がった誰かを助けられるようにって! なのに……」
 バドは大和の思い入れを否定し、ここで、大和の重要なオリジンですら、簡単に他のキャラクターを同調させてしまわない、 一つの物品を巡る思いは立っている場所によって全く違う、というのは実に今作らしい展開。
 「王者の資格を取り返せばいいという、単純な話じゃないのかもしれないな」
 バドの過去、王者の資格が盗まれた理由、隠されていた歴史……それらを知ったジューマン達は世界と世界の在り方ついて考え始め、 ジューマンズ4人がただのジューランドの一般市民ではなく、恐らく形骸化していたのだろうとはいえ、 リンクキューブに近い位置に居た――歴史の真実に近い場所に居た――というのが意味を持ってきたのも巧い。
 一通りの回想が終わった所でデスガリアン反応が感知され、ブラザー1とブラザー5が登場。「兄弟の多さなら負けねぇぞ」と、 レオが初めて自分の家族に言及するのですが、ライオンって多産なんだっけと思って調べたら、 出産頭数はだいたい一度に2、3頭らしいので、多産というより、一夫多妻制だったりするのでしょうか。
 ジューマンが元の動物の性質をどれぐらい受け継いでいるのかというのはあまり踏み込まれていない点ですが、ニンゲン視点で見ると、 これもまた闇といえば闇。
 サワオを真ん中に置いての5人名乗りから戦闘になり、バドを連れてきた大和が途中からゴリラで参戦。
 「一緒に来て下さい」
 「なんだ」
 「見て欲しいものがあるんです。貴方にとっては、繋がりを切る道具だったかもしれない。でも、俺は今この星を守る為に戦ってる。 ニンゲンの俺が、ジューマンと一緒に!」
 バドの見つめる中、連携攻撃でブラザー5を撃破するジュウオウジャーだが、 追い詰められたブラザー1はその場で分裂してブラザー6を生み出すと、更にロケットブラザーズにクラスチェンジ。
 バーディ!
 ブラザーズの航空爆撃を浴びた6人は変身が解けてしまうものの、諦める事なく頭上を睨み、その姿に大和の言葉を思い出すバド。
 「貴方がくれたこの王者の資格が、俺達を繋いでくれたんです!」
 先にバドが、資格に対する大和の想いを自分には無関係な感情と切り捨てましたが、しかしそれは、 大和が手に入れた絆が無意味という事ではない――誰かにとっては無価値な物でも、他の誰かにとっては大切な物になる事がある、 と同じテーゼを逆側からひっくり返して見せているのが秀逸。
 「ここは俺が……」
 「俺も居る」
 そして、立ち上がった大和の横に進み出るバド。
 「お前達の繋がりまで、断つ事はない」
 「バドさん……」
 「行くぞ、大和」
 「はい!」
 「「本能覚醒!!」」
 揃って変身した天空と大空の王者が一緒に並ぶと、スマートなイーグルと比べて、どことなく中年体型のバードが妙にリアル(笑)
 両者は空中攻撃からダブル鞭剣で分裂を許さぬ同時フィニッシュを決め、縄跳びブラザーズを撃破。 有るのか無いのか期待させて引っ張ってきた共闘が遂に実現しましたが、見た目同じすぎると、 意外とシンクロ戦闘が栄えない事がわかりました。
 デザインほぼ同じの上に色調まで重なっていると、体型の違いが凄く気になります(笑)
 それもこれも、金と銀と黒をまとめて使ったサワオが悪い(流れ弾)。
 チェンジャーは金色なのに。
 ブラザーは巨大化し、前略キング出撃。
 「相手は一体」「俺達二体」「楽に勝ちたい」「「レッツゴー!」」
 迫力のある映像でビル街を切り裂く縄跳びブラザーズが数の論理を持ち出してきたので、
 「ふん、こっちはジュウオウジャー6人と、ジュウオウキューブ14体のシンクロ攻撃だ!」
 それを上回る圧倒的な数の暴力で滅殺!
 「一人じゃない。生き物は皆、どこかで誰かと繋がっている、か。……段々あの人に似てきた」
 戦いの決着を見届けたバドはしんみりと呟いて立ち去り、大和を助けた理由は「通りすがりのジューマンだ!」と誤魔化しましたが、 実際は個人的な因縁がある事を改めて示唆。台詞からすれば十中八九、大和の父親か母親でしょうが、 過去にこちらの世界で行き倒れていた所を助けられたとかその辺りになるのか……。
 回想に出てきた黄色ジャンパーは無関係そうという事で、未だ姿の見えない大和父のハードルがどんどん上がっていきますが、 出てくるとすれば、過去作レギュラー俳優とかになりそうか。…………あー……内輪受けっぽくなる危険があるけど、 年齢的にも風貌的にも鳥戦士的にも、若松俊秀とか、ドンピシャ? という電波を今受信。
 「きっと僕たちには、まだ知らない事がある」
 「うん。自分たちの世界の事なのにね……」
 「ああ……その為にも、もう一度世界を繋げないとなぁ!」
 姿を消したバドに再会する希望を胸に、果たしてその時、彼らはどんな答を出すのか――ラストに、世界には知らない事が沢山ある、 というのを普遍的なニュアンスも込めて、さらっと入れてきたのも好き。
 鳥男の過去とジューランドの秘密が明かされて大きく盛り上がるというよりは、 いい加減引っ張っている事情を説明しつつ突然の追加動物をねじ込みながら最終盤へ向けた期待を拡大させる、 という繋ぎの回でしたが(まあ先日盛り上げすぎましたし)、今回提示された諸々の要素を最終章でどこまでまとめてくれるのか、 素直に楽しみ。広げた風呂敷が綺麗に畳まれる事を祈りたい。
 次回、セラに驚きの恋愛ネタ。
 最終章手前でキャラエピソードを一回しする余裕があるのか心配だったのですが、一旦流れを切った所に詰めてきてくれそうで一安心。 クリスマスに前後編で一山と考えると、セラ・レオ・さわおまでで終わってしまいそうですが、タスクとアムはハロウィンでラストなのか、 レオかさわおに絡めてくるか、或いは年明け一回目を活用してくるのか。
 カレンダー的には25→(1)→8なので、正月はアバンタイトルで終了かなぁ……とまあ、構成の綺麗な作品なので、 カレンダーとにらめっこして妄想するのも楽しい。私の先読み妄想は、大概、外れますが!
 ……ところで、顔認識能力が低いので自信が無いのですが、次回のゲストはもしかして、ヒゲ剃ってさっぱりしたあの人?! (実年齢ダブルスコア?!)

◆第39話「カロリーとネックレス」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:田中仁)
 杉原監督デビュー2本目。
 前回のクイズ総集編だけでは何とも言えない感じでしたが、今回と合わせて考えると、諸田監督の影響が強いのかなぁ……。 実際に誰の弟子筋にあたるのかはわかりませんが、『オーズ』−『フォーゼ』頃からの諸田演出風味をかなり感じました (この時期に助監督で入っているのは確か)。
 その諸田監督がよく用いるような、CG加工による過剰なデコレート演出は個人的にはあまり好きではないのですが、 児童層にわかりやすくて面白がってもらえるならそれで良いのだろうとは思いつつ、それにしても、工事現場での爽やかスプラッシュは、 意味不明の領域。演出効果だけならまだともかく、セラがそれを手で弾くので、マンガの世界になってしまってましたし。
 今回クライマックスで一つ、致命的な事をやってしまうのですが、面白かろうというノリ優先で、 作品の中で積み重ねてきたリアリティラインをあっさり踏み越えてしまう傾向が見え隠れして、正直、この先けっこう不安。
 作品にもよるわけですが、少なくとも、比較的堅実な『ジュウオウジャー』のラインからは少々外れているという印象 (制作サイドとしては、将来を見据えてプラス敢えて不純物を入れて幅を持たせる意図はあるのかもですが)。
 チームクバルのプレイヤーが、久々にブラッドゲームに参戦。
 「チームクバル、天丼やで」
 と最初聞こえて何事かと思ったのですが、シェフードンでした。
 シェフ怪人はカロリー1000倍フードを強制的に人々に食べさせ、 それを口にした人々は巨大なボールのような体型になって地面を転がってしまう。途中でアザルドが「おい、クバル? 地球人太らせて、 どうするつもりだ?」とツッコむのですが、今回クバルの目的がブラッドゲームから逸れてしまう為にそこが説明されず、 私もどうするつもりだったのか知りたかったです(笑)
 そんなクバルは、自らに移植したバングレイの右手の性能を実地試験。「自分の記憶は具現化不能」 「具現化した存在の記憶を重ねて読み取る事は出来ない」と、基本出鱈目だった右手の能力に、改めてある程度のルールを設定。
 若干、実験まで間が空きすぎてしまった感がありますが、恐らくタコを挟んだ事情なので、 物語としては移植した右手が馴染むまで時間がかかった、と思っておけば良いでしょうか。
 クバルが通りすがりのカップルの記憶から何者かを具現化し……逃げた怪人を手分けして追っていたセラとアムは、 気取った男(ゲスト:岩永洋昭)にいきなりのプレゼント攻撃を受ける。
 「……どうなってんの?」
 「……任せて」
 男が購入して差し出してきたネックレスを受け取るだけ受け取って、連絡先の交換をにこやかに拒否するアム。
 「……今の何?」
 「ナンパじゃない? 顔はまあまあだし、お金も持ってそうだけど、ちょっーと軽すぎるかな」
 そのままネックレスだけいただいてしまおうとするアムに対し、ネックレスを返そうと1人で追いかけたセラは、 男が工事現場でバイトしている姿を目撃。そこに天丼が出現し、男にかばわれた事もあって何となく好印象を抱いたセラは、 ナンパ男に名前を教える事に。だがその男――零(れい)は、ジュウオウジャーをかき乱そうと、 クバルが記憶から具現化した結婚詐欺師であった。
 定番のフォーマットの中で、
 「借りを作りたくないからネックレスを返す」(倫理観では無い)
 「自分は強くて守られる女ではない」(侮られたくない)
 と、セラらしさが出ている部分があったのは、今回の良かった所1。
 セラと零は、なんか勢いで東京ドームシティデートを敢行し……そういえば、今季はまだやっていなかった気がする遊園地回。 アムから事情を聞いた面々はそれを尾行し……
 「大人だ……」
 「なんだあいつ。俺がデートに誘っても、無視する癖に」
 「それはレオがいつでも誰でも見境ないからだろ」
 「あぁん? それの、何が悪い」
 久しぶりに、レオのナンパ癖に対してタスクが吐き捨てるように言及するのですが、やはり、 レオの性癖はジューマン的にはアブノーマルなのか。
 「ええと……あの男がそうなの?」
 一方、同行している大和くんが妙にネガティブな反応を見せている理由がさっぱりわからないのですが、 そもそもニンゲンとジューマンに恋愛関係が成立するかどうか、何かあった場合に事情を全部説明するの俺……? と、 ひとり真剣に悩んでいるのか。
 ここは今作の欠点(ファンタジーとして突っ込んでいない部分)なのですが、ニンゲンとジューマンの種族差、 ジューマン同士の種別差について一切踏み込んでいない為、「よく考えろ! 相手は本気なのか」と前のめりに突っかかってくるタスクが、 どこを一番の問題点にしているのかなどが、わかりにくくなってしまいました。
 基本的には、耐性の低いセラが悪い男に引っかけられているのではと心配している、と描きたかったのだと思うのですが、 アム(と大和?)以外の男連中のピントがズレているというギャグを入れてしまったがために、物語全体のピントも合わなくなってしまいました。
 こっそり尾行してきた仲間達の反応に激怒したセラはレオに正中線突きを決めると零と一緒に立ち去ってしまい、 零が案内した海をバックにいい笑顔のセラを可愛く撮ったのは、今回の良かった所2。
 改めてネックレスを受け取ったセラは零から告白を受けるが、そのタイミングで遊園地に天丼が登場。
 「私、行かなきゃ」
 「さっきは、友達よりも俺を選んでくれたよな?」
 「ごめんなさい! 気持ちは嬉しいけど、私、みんなをほっとけない」
 「純粋すぎるんだよ……」
 零はセラが返してきたネックレスを海に投げ捨てると、自分は結婚詐欺師であり、化け物に命令されてセラに近づいたと告白。 零をひっぱたこう……として結局ひっぱたかなかったセラは苦戦する仲間達の元に復帰し、天丼に怒りの連続攻撃を浴びせるが、 カロリー1000倍寿司の直撃を受けそうになってしまう。だがその時、シャークをかばって寿司を食べたのは、 水もしたたるいい男モードの零。
 「零! あなたいったい」
 「今頃になって、おまえの事、可愛く思えてきてな」
 「はぁ?! …………嘘つき」
 「やっぱりこれ、貰っておいてくれないか」
 「……うん」
 攻撃からかばった点よりも、捨てたネックレスを海に潜って捜してきた、というのが割といいシーンなのですが、 太った零の表現として、台詞をこもったもごもご音にしたのが、大失敗。
 ここは面白くする所ではないですし、台詞が聞き取りにくくて無駄なストレスになっただけ。
 そして続けて、球体になった零が天丼にホームランされて空の彼方へ吹っ飛んでいくというのが、致命的失敗。
 一応シャークが吹っ飛んでいった先を気にしてはいるのですが、今作ここまでの被害描写のリアリティラインでいうとギャグでは済まず、 必死に捜しに行かないといけないレベル。前半ならともかく、第39話にもなってこれは極めていただけません。
 天丼はファイナル番長キャノンで撃破し、コンティニュー。
 「一時の感情で私に逆らうとは。なぜ自分が詐欺師だと、ばらす必要があるのです?」
 「この星の人間の考える事は、おまえにはわからないさ」
 その戦いを見つめていた零はひっそりとクバルに消され、それを知らぬまま、ジュウオウジャーは天丼を百獣乱舞で倒すのであった。 ……まあ零に関してはあくまで記憶具現化なので、本人はどこかで生きているのでしょうが。というか、冒頭のカップル女性は、 零に騙された過去があったのだろうか、というのが割と闇。
 「どっかで、また女の子騙してんのかな……」
 セラはケーキをドカ食いし、遠巻きにそれを見つめる男衆だが、セラの胸元には零から受け取ったペンダントが光っているのであった……でオチ。
 コミュニケーションの物語である今作のコンセプトから言うと、セラ×ナンパ男、という題材は面白かったと思うのですが、 そこに記憶具現化を絡めてしまった為に、セラとの交流で変化する零は偽りの存在に過ぎないしその事をセラが最後まで知らないまま、 というのが何やら中途半端に混線してしまいました。
 クイズ回を踏まえて、たとえ記憶から生まれた偽の存在でもそこに人格を認めるんだというならば、 最後にセラがそれを知ってこそだと思いますし、クバルがバングレイの能力を手に入れた事を隠さないといけない都合に加えて、 種族を越えた恋愛感情をどこまでシビアに描くのか、という踏み込み加減を見定められなかった感。
 基本設定や脚本にも隙があったとは思いますが、この、ところどころギャグに逃げている内にエピソード全体のバランスを見失う、 というのがクイズ総集編の失敗ままなので、監督の見極めの甘さが出たのかなという印象。
 根本的な所では、ジューマンとニンゲンの色恋話は避けておいた方が無難だったかなと思うのですが、やるのだったら、 ニンゲンの男がサメ顔のセラを見ても好意を持ち続ける事が出来るのか、という所まで覚悟を決めてやるべきだったのではないかな、 と(遡れば、ラリーさんのトラウマとかもあったわけで)。
 やろうと思えばそういう話も組めただろうに(いい雰囲気になったセラがやむなくジューマンの姿をさらして怪人と戦うとか)、 デリケートな要素を取り上げたにも関わらず、デリケートさに配慮しないまま作品として“逃げてしまった”感があって残念でした。
 次回、タコに出番が。

◆第40話「男の美学」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:田中仁)
 見所は、「ボンタン」の説明に悩んだ挙げ句、「ヤンチャな学生」という言葉をひねりだす大和くん。
 ボンタン狩りをするヤンキー怪人をタイマンで退けたレオはその帰り道、不良学生に絡まれていた少年を助ける。 取られた財布を取り返す強さを身につけたい、という少年に肩入れしたレオは、さっそく少年とトレーニングする事に。
 最初こそ千尋の谷に突き落とそうとするなど無茶をやろうとするものの、地道にやるように言われてからはランニングや筋トレに付き合い、 腕っ節で簡単に勝てるわけがないからまずは怖じ気づかない気合いを持て、と勧めるなど、レオが面倒見のいいお兄さんぶりを発揮。 これは以前にあった「兄弟が多い」発言を拾った部分でしょうか。
 レオとの特訓で自信を得た少年は不良達に立ち向かい、レオらのフォローもあって財布を取り返す。 だが(背後で吼えるレオ@ジューマンの姿に)怯える不良の姿を目にしてフォースの暗黒面に飲み込まれた少年は、 不良に殴りかかろうとしてレオに止められ、仲違いしてしまう事に……。
 「おまえは強くなんかねぇ! 強くなる資格もねぇ」
 これを見ていたクバルが不良達の記憶を利用して少年にエレキハンドを渡し、 それに殴られてダメージを受けたレオは通りすがりのヤンキー怪人に大苦戦。 それでもヤンキー怪人に立ち向かい続けるレオの姿に少年はエレキハンドを投げ捨てるとレオに「ごめんなさい!」 と謝って二人は仲直り……て、うーん……。
 ゲストの少年が不良達に絡まれて酷い目に遭い、レオに「どうしたいのかは自分で決めろ」と問われて、 自ら「強さを身につけたい」と言う辺りまでは良かったのですが、憎しみのままに拳を振るおうとする、レオに謝って仲直りする、 という要所要所の感情の見せ方が唐突で、どうもノれませんでした。
 少年の感情については、レオに無茶な修行をさせられそうになって渋面になる、アムの助け船が入って満面の笑みになる、と、 わかりやすいといえばわかりやすいけど、やや過剰でマンガチックな描写をされていたのですが、全て同じ調子でやってしまった感。
 クバル製エレキハンドもあっさり外してしまうので何も劇的になりませんし、例えば少年の邪心に反応して外れなかったエレキハンドが、 少年が心から間違いを認めた事で外れる(クバルの思惑を越える)ぐらいの事はしても良かったような。
 勿論、エレキハンドを身につける/外す、というのは少年の内面の隠喩にはなっているわけですが、 尺の短さによる必然的な心理描写の不足を、劇的に補うもう一工夫はあっても良かったと思います。
 とにかく今回、ブラッドゲーム・レオと少年の交流・クバルの暗躍、 という要素がてんでばらばらで繋がっていないのですが、物語とはそこを繋げてこそ面白くなるわけで、 キャラエピソードをやりつつ終盤に向けてクバルを暗躍させる、というハードルに思い切り顔面から衝突した感じに。
 田中仁は今作での特撮作品初参加から数えて7本目。デビュー3本目の杉原監督と相性が悪かった可能性も大いにありますが、 大和の結婚式回など良かっただけに、ここに来ての急降下は残念。
 エレキハンドはラストでタスクが回収していましたが、年明けにこの一撃が遠因となって、 レオが死なないかちょっぴり不安です(笑) 今回だけだとこれ、ほとんど意味が無かったですし。
 もう一つ今回に関しては、レオ以外の5人はもっと大胆に出番を減らしても良かったような。 この辺りは出演者への配慮なども絡んでくるので単純な問題ではないのでしょうが、 5人揃ってレオと少年の背後でもやもやしているだけで、これといって個性も活きないというのは非常に面白くありませんでした。
 レオの語る「男の美学」というのがそもそも、本人の自覚もあった上でレオ個人のこだわりでしかないもの、として描かれてきたわけで、 それに同調する少年が居て、でも身内からは軽くツッコミが入るぐらいが丁度良いバランスなので、役割分担も失敗した感 (レオが美学を語るシーンに5人は居合わせなかったので、そこを全肯定するような構成になるという失敗はさすがにしませんでしたが)。
 そして前回今回と、大和くんが後ろにくっついて終始困った顔をしているだけという酷い扱いだったのですが、 クイズ回の変な笑顔の大惨事も思い返すと、もしかして杉原監督、風切大和というキャラクターを掴めていないのでは。 少なくとも、2話連続で主人公格に全く同じような演技を繰り返させているのはどうかと思うのですが。
 来季の事も考えると、中澤監督が帰ってくるか、ピンポイントで渡辺監督あたりが入るなどない限り、 年明けにもう一度杉原組がありそうですが、正直、凄く不安要素。
 「この星の奴等は何を考えているのか……それを利用すれば」
 右手の実験を繰り返していたクバルは、バングレイの能力を入手した事を見とがめたナリアと激突。 武闘派秘書をトラップとの合わせ技で気絶に追い込むと、右手によりその記憶を手に入れる――!
 次回、逆襲のクバル、そして、ジニス様フォームチェンジ。アザルドと鳥男も参戦で、初日の出を拝めないのは、果たして誰だ?!
 ……あ、タコは強引に参戦しました。お陰で最近それとなく強くなっていた怪人が、今回は物凄く弱かった、という事になりましたが、 こればかりは多分、現場は悪くない。

◆第41話「最初で最後のチャンス」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 見所は、ナリアとクバルを探して地球をフラフラしていたら、鳥男と遭遇してしまうアザルド。
 「おいおい? どうなってやがる」
 自ら、視聴者を代弁(笑)
 「……キューブ? おまえいったい……」
 第三種接近遭遇してしまったバドの発言は、初対面のアザルドの姿形に対する純粋な驚きなのか、それとも、 アザルドの再生能力は本筋の伏線だったのか?!
 一方、当のクバルは拘束したナリアの記憶からジニスを生み出すと、さわおを拉致。ジュウオウジャーに対してはさわおを人質に、 ジニスに対しては、ジュウオウジャーを秘書を人質に取った極悪集団に仕立て上げる事で、両者の鉢合わせを目論む。
 「これで奴等は、いつも以上の力を発揮する筈」
 「いつも以上の力?」
 「この星の奴等の心情は私には理解できませんが、まあ、実験から導き出した結果です」
 思わせぶりに仕込みを重ねた割には、“この星の住人は自分ではなく他人の為に戦う時により大きな力を発揮する” というごく定番のテーゼを持ち出すクバル。
 …………あれ、前2話、そんな話でしたっけ?
 と首をかしげた所で遡って考えると、どうやら“色恋よりも仲間の事を優先する”“強さとは、守る為の力だ” という所が前2話のポイントだったようですが、後者はサブタイトル通りにレオ個人の美学ですし、前者ではそもそも、 セラの中で仲間と恋愛が天秤にかけられているようには見えていなかった為に、非常にちぐはぐ。
 前2話の出来が微妙だった事が響いて物語の流れが巧く組み立てられず、定番が悪い形で平凡になってしまいました。
 「くだらない。そんな事でジニス様を倒せるものか」
 「サジタリアークではそうでしょう。でも、この地上でなら?」
 クバルの真の狙い――それはサジタリアークのエネルギーで肉体を維持しているジニスを、 重力の井戸の底へと引きずり下ろす事にあった。
 「いいだろう。このゲーム、乗ってあげようじゃないか」
 クバルと偽アザルドからナリア囚わるの報告を受けたジニスは、クバルの狙い通りに自ら弓矢基地を離れて地球へ降り立つと、 遂にジュウオウジャーと直接対面。
 ……ところで、酔いどれ系駄目人間のボスキャラが終盤に身近な女絡みの問題で雄々しく立ち上がる、 というとどうしても某戦隊を思い出してしまうのですが、単なる偶然か、はたまたプロデューサーの密かに好きなシチュエーションなのか(笑)
 「おまえのふざけたゲームは、今日で終わりだ!」
 さわおを取り戻したジュウオウジャーも変身し、両者激突するかと思われたその時――クバルの繰り出した再生プレイヤー軍団が、 ジュウオウジャーではなく、ジニスを取り囲んで刃を向ける。
 「フフハハハハハ。もう逃げ場はありませんよ、ジニス!」
 千載一遇の好機を演出し、ジニスに対する秘めた憎悪を露わにするクバル。
 「ジニス、あなたは覚えていないでしょうね。私の生まれた星の名前も、あなたに蹂躙された一族の顔も!」
 「この私を、欺いていたと?」
 「恐怖と憎しみを抑え、この時をどれほど待ち焦がれていたか!! ジニス! この星が今日、お前の墓場になるのです!」
 「つまり……復讐の為に、クバルが裏切ったって事?」
 テンション高いクバルに対し、ジュウオウジャーはいまいち話の流れについていけず、 もとよりデスガリアン内部の人間関係など知るよしも無いのですが、身内とゲストキャラとの関係性を丹念に描いてきた代わりに、 敵方との因縁付けはあまりしていない今作の弱点が出てしまいました。
 「さあジュウオウジャー! 一緒にジニスを倒しましょう!」
 だがそんな心の壁など軽々と飛び越えて、クバル、握り拳(笑)
 「「「「「え?」」」」」
 クバルのノリに戸惑うジュウオウジャーだったが、サワオが率先して賛意を示し、 イーグルもそれに乗った事からかりそめの共闘をする事に。
 「チームクバル、行きなさい!」
 復讐するは我にあり、と前のめりに攻めに出るクバルだが、ジニスは全方位からの一斉射撃を平然と防御。 そして取り出した三角形のメモリーデバイスを自らの体に挿入すると、 かつてジュウオウホエールやジュウオウバードを生み出したのと同じ地球パワーがジニスに集まっていき……今ジニスは、 サナギから蝶へと姿を変える!!
 ――月・光・蝶であぁぁぁぁぁる!!
 ……とは言いませんでしたが、台座を抜けたジニス様の背中に羽が広がるのは、ボスキャラらしい見栄えに加え、 羽化のイメージも入っている印象。もしかすると、地球に蓄積されていたセント○ピリアの生命エネルギーの影響かもしれませんが。
 「そ、その姿は……!」
 「似合うかな? この星のエネルギーもなかなかいい」
 気高い姿を君は見たか 神秘のボディが 光を放ってる
  昆虫魂 キューブホエールのデータを研究したジニスは、弓矢基地を離れても自らにエネルギーを取り込む手段を既に開発していたのであった。
 ここでキューブ型のアザルドの事を思い出すと、アザルドの正体はアザルド星(仮)のエネルギーの塊であり、ホエール魂は、 その再生能力も参考にして作られた、というのはありそうでしょうか。
 「エネルギーをこの星から……。バカな……バカな!」
 想定外の出来事に声がうわずるクバル、余裕から転落まで早かった!
 「私を、サジタリアークから引き離せば、勝機があると思ったようだが、残念だったねぇ」
 「で、では……地上へ来たのも、全てお見通しだったと」
 「楽しいゲームだよ、クバル。さあ、続けようじゃないか」
 ゆったりとクバルに迫ったターンジニス様が、至近距離からあえて大きく飛びすさり、故意に外した初撃の光弾が、 クバルの顔をかすめて背後で大爆発、というのはジニス様の力と性格の悪さが両方強調されて非常に格好良かったです。
 「自分の命がかかれば、最高の恐怖が、味わえるよ」
 「……行け、行けぇぇぇぇぇぇ!!」
 クバルは後ずさりしながら絶叫し、参考までに、「チームクバル、行きなさい!」から、約2分30秒後の出来事でした。
 共闘に巻き込まれたと思ったら、カップラーメンが出来るより早く共闘相手が逃げ腰になり、 戸惑うジュウオウジャーだがまたもサワオが先走って突撃。考えるより先に殴りたい青と黄がそれに続き、赤も番長に変身して参戦。 状況を見極めたかった緑と白もやむなく加勢する事になり、両陣営が入り乱れる戦いの中心で、 両手のシャイニングブレードを振り回すターンジニス。
 とにかく今回冒頭から、外に出てきたジニス様が動かしにくいし撮りづらいしで大変そうだったのですが、 サナギからメタルフォーゼしたターンジニス様も、あまり動かしやすそうではなく。むしろよくこれで、動かしているというか。 他者を見下すイメージを反映してか、顎を軽く突き出した様な顔のポジションが、そこはかとなく辛そう。
 激闘の中、ジニスファンネルが炸裂してサワオが消滅し、クバル寄りの言動を繰り返してジュウオウジャーを誘導していたサワオが、 偽物だったと判明。ジュウオウジャーはまんまとクバルの奸計に利用されていた事に気付く。
 「そうか! 操もクバルが作った、偽物だったんだ! 僕たちを騙して、ジニスと戦わせる為に!」
 「じゃあ、お城に閉じ込められたのも」
 「ジニスが地上に来るまでの時間稼ぎだ。最初に操を襲ったジニスも、クバルが作った偽物だろう」
 今回こういったくどい説明台詞がやたら多くてテンポをだいぶ害しているのですが、主要キャラの偽物だけでも、サワオ、ジニス、 アザルド、と3体出てくるので、なるべく児童層が混乱しないように、という事でしょうか。
 偽サワオが消滅した後には変身ライトが残されており、偽のさわおが本物のアイテムで変身していたというのは深く考えるとそれでいいのか悩ましいですが、 残された懐中電灯を手にさわおを探す方が悲壮感が出る、という話の都合を優先した感じ。 ジュウオウジャーがジニスの攻撃を受けた爆炎の中で変身するので、そこで偽さわおと偽サワオが入れ替わりトリックとかしていたら、 それはそれで面白かったのですが(笑)
 偽アザルドもシャイニングブレードでずんばらりんされ、クバルは逃走。
 「ふふふふっ、一人で逃げるとは薄情だねぇ」
 ターンジニス様は余剰エネルギーで残りの再生怪人を巨大化させ、 3体の巨大怪人に追われて必死にダッシュするクバルの図はとても面白かったです(笑)
 「おやおや、的が小さくて当たらないようだねぇ。ふふふはは」
 さわおの居場所を聞き出そうとクバルを追う前に、市街地に向かってしまった再生怪人軍団を倒す為、 ジュウオウジャーはロボットを召喚すると、キング、ワイルド、ドデカの必殺コンボで巨大怪人軍団を撃破。
 手分けしてさわおを探すシーンで、大和くんの頭上を、何かが飛んでいるのですが、いったい何……?  効果音がかなり強調されているので明確な意図があると思われるのですが、この局面でいったい何が飛んでいるのかハッキリせず、 これは次回明かされるのか。
 その頃、バドは殺意を放つアザルドに絡まれ、重傷のさわおは橋からぶら下げられていた……で、つづく。
 第25話で初めての伏線が提示されてから裏でこそこそ動き回る事およそ1クール、 遂に本性を見せたと思ったらカラータイマーが鳴るよりも早く無惨にジニス様の踏み台にされてしまったクバルですが、 身も世も無い右往左往ぶりは振り切れていて面白かったです。
 クバル自身がジニスに対して絶望的な畏怖を抱いているからこそ、同じトラウマを持つさわおを拉致して謀略の駒に使う、 というのがなかなか皮肉。
 物語として時間をかけた末の裏切りでありますし、デスガリアンといえども元々はブラッドゲームの被害者、 という立場はこれまでのジュウオウジャーサイドには全く無かった視点なので、クバルはこの流れでリタイアするにしても、 ジュウオウジャーに何らかの影響を残してほしい所です。
 上述したように、前2話の出来の影響で流れが雑になってしまった事、やたらにくどい状況説明、 とやや仕上がりの悪いエピソードでしたが、個人的に一番引っかかったのは、
 「あの時……俺が、声かけてたら……」
 「しょうがないよ。大和くんには尻尾ないもん」
 「関係ない! よりによってジニスだぞ……みっちゃん一人で、どんなに怖かったか。守らなきゃいけなかったんだ。 どんな理由があっても」
 「大和くん……?」
 「――とにかく絶対に助ける」
 アムのフォローに声を荒げ、必要以上の責任を自ら背負い込み、明らかに面倒くさい感じで様子のおかしい大和くんに誰もツッコまない事。
 ランニングしている姿を見かけたのに声をかけなかった結果、ジニスにさらわれた事を後悔=過去の母親の死にまつわるトラウマ? かと思われますし、 真相が明かされるのは次回以降で構わないのですが、さわおを助けに向かった城内でも暴走気味なイーグルの姿に違和感を覚えているような仕草は見せるも、 誰も声をかけて止めようとしないというのは、以前にマリオおじさんがさらわれて錯乱気味になった際(第16話) はすぐに引き留めようとしただけに、それと比較すると個人的には凄くスッキリしませんでした。
 で、次回、待望の大和父(?)登場のようなので、今回のもやもやを吹き飛ばす勢いで盛り上がってくれる事を期待。
 現状あまりに圧倒的なターンジニス様ですが、エネルギーが外部供給、しかも地球から得たパワーというのが付け目になりそうでしょうか。 「サジタリアークのエネルギーで肉体を維持している」事情も物語に絡んできそうですし、今後の動きが楽しみです。
 そして、鳥男が独自にキューブアニマルを集めている姿が改めてはっきりと描かれ、その手にしていたのは、 青・緑・黄・白の、〔!〕キューブ。丁度ジューマンズ4人の色に対応していますが、この最終盤で、 戦闘ヒエラルキーの悲しいほど低い4人に駆け込み強化は来るのか?!
 そういえば序盤に提示された、キューブアニマルの存在による世界の繋がりについては長らく踏み込まれていませんでしたが、 その辺りも一つの絵図になっていくのか……ここから年明け、風呂敷がどこまで畳めるのか、是非とも綺麗な完成図を見たい所です。

◆第42話「この星の行方」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 さわおを探し、二手に分かれるジュウオウジャー。大和・タスク・アム組でタスクの嗅覚が役に立ち、 重傷を負って気絶していたさわおを発見。付近にある病院を思い浮かべた大和は一瞬固い表情になるも、さわおをそこへと運んでいく……。
 一方、セラ・レオ組はなんと、クバルに囚われていたナリアを発見。そしてバドは、アザルドの強襲を受けていた!
 「キューブ? おまえいったい……」
 「まあいい。てめぇなら俺も遊んで構わねぇよな」
 「待て! おまえデスガリアンなのか?! この星の生き物なんじゃないのか?!」
 「なーに言ってんだ。こんな星、初めてだよ!」
 鳥男はジュウオウバードに変身し、アザルドと交戦。ゴリラに粉々にされたりスキャニングサワオチャージに粉々にされたり、 割と黒星先行のアザルドが久々にいい所を見せるも、やはりバードの鞭剣スピンで吹っ飛ぶ半身。 だがアザルドは部分再生しながらの反撃をバードに浴びせて痛み分けに持ち込むと、バードが取り落とした4つの〔!〕キューブが、 再生に紛れてアザルドの体に吸い込まれてしまう!
 「なかなかやるじゃねぇか。楽しみが増えたぜ。じゃあな」
 視聴者目線ではかなり衝撃の展開を全く自覚しないまま、当初の目的も忘れて、汗をかいたので満足して帰るアザルド(笑)
 そしてバドは、地面に残された幾つかの青いキューブの代わりに、〔!〕キューブがアザルドの体に取り込まれてしまった事に気付く。
 「まさか……ジュウオウキューブと入れ替わって……。……なんなんだ、あいつは」
 折角集めたのに……!(涙)
 再生に使用できる=アザルドを構成するキューブとジュウオウキューブは同質(ないし近似)の存在、という疑惑が急浮上しましたが、 この期に及んでアザルドが全く我関さずで自分の生きたいようにしか生きていないのが物凄い(笑)
 そもそもキューブとは何か? というのがアザルドの正体次第で予想だにしなかった方向へ転がっていきそうですが、変身パワーの源、 という要素に踏み込み、ここに来てもう一面風呂敷を広げてきたのは、どう畳んでくるのか非常に楽しみです。
 ……た、畳める、んですよ、ね?(^^;
 「どうしました? 私を仕留めないのですか」
 その頃、鎖で柱に縛り付けられたナリアの姿にキューブ剣を取り出したレオは、鎖だけを切断。
 あーやっちまったなぁみたいな顔で刀身を見つめるレオに対して一瞬驚くも、即座に殴りかかって人質に取るナリア格好いい(笑)
 「下等生物は甘いですね。私には理解できません」
 「女にトドメさせるかよ」
 レオを後ろから締め付けるナリアに対し、セラもセラで躊躇無くレオの腹部に勢いを乗せた回し蹴り(笑)
 貫通衝撃で吹っ飛んだナリアはそのまま去って行き、レオの本気で痛そうな顔がしっかり描かれているのが、(助ける為に) 本気で蹴っている事・セラの思い切りの良さとレオへの怒り・そうでありながらもジュウオウジャーの武闘派コンビの根底に通じ合う覚悟の呼吸、 が詰まっていて素晴らしい。
 「何やってんのよ馬鹿!!」
 セラに怒られて渋い顔になるもレオはくどくど言い訳はせず、そこでシーンをすぱっと切り替えてしまうのも秀逸で、 短いながらも今作らしさの凝縮された良いシーンでした。
 大和達はさわおを病院へと運び込み、今作一般において「デスガリアンにやられた」が通用する事が判明。大和はそこで、 父・景幸(演:国広富之)と再会する。
 「まさか……ここで会うとはな」
 「来たくて来たわけじゃない」
 叔父との関係、母の命日での反応など、それとなく匂わされてきた風切親子の軋轢が明確になり、硬い雰囲気を漂わせる二人。
 「友達を……助けてくれ!」
 それでも大和は、さわおの元へ向かう父の背中に頼み、背中を向けたままながらも、頷く父。
 前回ラストの流れを引いて冒頭から3分割の展開でしたが、アザルドの謎、レオの選択とセラの蹴り、大和父登場、 とそれぞれ大きな見せ場があり、テンポ良く進行。
 弓矢基地では、帰還したジニス様の台車がお役御免。あれはあれで異形感があって好きだったのですが、 最終盤に向けたモデルチェンジとしてはわかりやすい形に。クバルを止められなかった事を謝るナリアに対し、 ようやく足を組んでくつろげるようになったジニスは涼しく告げる。
 「殺す事などいつでも出来る。でも泳がせておけば、どんなゲームを仕掛けてくるか楽しめるじゃないか。 さあ……この後どんな恐怖の叫びを聞かせてくれるか」
 圧倒的強者として、自らの身に降りかかるトラブルも人生の余興に過ぎないと構えるジニス様、 今回から声に不気味なエコーがかかるようになったのですが個人的にはこれは微妙。これもモデルチェンジの一貫なのでしょうが、 ジニス様はあくまで、甘く怠惰な喋りが良いと思うのです。
 そしてクバルは、下水道を彷徨っていた(笑)
 「終わりだ……終わりだ。殺されるぅ! ジニスは、私を追ってくる! いたぶって、弄んで、絶望するまでしゃぶり尽くして殺す!  私はいったいどうすればぁ!」
 ジニス(ブラッドゲーム)のもたらす真の恐怖を全身で示す役回りとなったクバルですが、 デスガリアンの一員としてブラッドゲームに参加し、目的の為とはいえ下等生物を高みから見下ろす側に居たクバルが、 再びデスガリアンから見た下等生物の側に転落する事で心から絶望して恐怖する、というのは実に皮肉かつ真に迫っています。
 あと、下手に身近に居たせいで、ジニスの性格をよく把握している(笑)
 この辺りちょっと裏技ではあるのですが、もう一つ描写が足りず安定していなかったジニス様について、 元身内が「あいつはこんなに嫌で酷いヤツなんだーーー」と喚く事で今回一気にキャラクターとして肉付けが進み、 なんという踏み台の有効活用。
 病院では大和が、今晩はさわおに付き添いたいと頼み込むも看護師に断られ、そこに通りがかる大和父。
 「よせ。子供じゃないんだ」
 「父さん……」
 もう(大和は)子供じゃないんだから我が儘を言わずに社会のルールを守れ、と、 もう(さわおは)子供じゃないんだから心細いだろうなんて甘やかすな、がかかっていると同時に、 いつまでも子供の頃の悲しみを引きずり続け、それを他者にも投影しているように見える大和の言葉を気にし、更に結果として、 知らず知らず、さわおをフォローしてあげなくてはと庇護対象のように見ている面のある大和の頬をはたいている、 と二重三重の意味があって素晴らしい台詞。
 結局今回、前回気になった暴走気味の大和については特に踏み込まれないまま終わるのですが、やや描写が過剰には感じたものの、 ここに持ってくる為だったとしたら、それなりに納得。恐らく母の死にまつわるトラウマスイッチが入った影響はあったのでしょうが、 大和がさわおをフォローしすぎようとする傾向はこれまでも端々にありましたし、それが爆発した時に、 ジューマン達がそこに対して何かおかしくないか、と首をひねったというのは、頷ける範囲です。まあこの後、 年明け最終盤に改めて焦点が当たる可能性もありますが。
 そしてこれは、今回後半に大きな意味を持ってくる事に。
 「……大事な友達なんだよ。ついててやりたいと思うのは当たり前だろ。あんたとは違うんだ」
 ここで大和が母の死を看取ったシーンの回想が挿入され、どうやら大和くんは、 何らかの事情で父親が母の死の場に居合わせなかった事(見舞いなどに来なかった事?)を引きずっている、と判明。
 「……俺に厭味を言ったところで許可は出ないぞ。……彼は大丈夫だ」
 対する父は、口の中で言葉を転がすも外に出せず、何かを飲み込むような苦い表情で視線を外し、 その姿にはどこか自責や後悔を感じさせます。結局、距離を取った一線を引いて立ち去るも、去り際、拳でポンと大和の肩を叩いていき、 さわおの治療に向かう際も、このシーンも、大和に背中を向けた時だけ息子を勇気づけようとしており、互いに険悪というより、 大和からの憎しみに対して、どう距離を詰めればいいのかわからない、といった様子。
 引きに引いた大和父の出番は短い2シーンながらも、キャリアのある役者さんの読み込みもお見事で、 年明けに向けて楽しみな存在感を残してくれました。父子の問題をこのエピソードでバタバタと片付けてしまわず、まずは布石を一つ、 としてきた造りも良し。
 「それで帰ってこないのか……」
 森家では病院の話を聞いて頷いたマリオがわざとらしく席を外し、その背中をアムが見つめるアップが一つ。
 冬だけどサバイバル能力が高いので平気で野外に座り込んでいた大和は、夜半に帰宅。ジューマンズは既に不在なものの、 テーブルの上に残された大和の夕食の周りに4つの動物人形が置かれているというのが、気持ちいい。
 「また家出少年に逆戻りしたかと思ったぞ」
 「……あの人、全然変わってない。怖さも、心細さも、大事な人を心配する気持ちもわからない」
 大和の言葉に、含み笑いを浮かべるマリオ。
 「なに?」
 「そういうとこ、おまえも子供ん時から変わってないよ? ちょっと待ってろ」
 かつて子供の大和にしたように、ホットミルクを差し出すマリオ。
 「でもまあ……そろそろもう一度……ちゃんと話す時期かもしれないな」
 「え?」
 「人は……変わらないとこもあれば、変わるとこもある」
 病院での描写を見るに、息子が抱えている嫌悪感ほど、父の態度に冷たさはありませんが、さりとて亀裂を修復する方法もわからない、 といった様子で、恐らくマリオ叔父さんは大人の男としてそれがわかっているから、大和をそれとなく促している感じ。
 昔のお父さんは実際に性格が悪くて、妻の死で変わったという可能性もありますが、大和にはわからない形の「繋がり」 というものもある、という方向もありそうで、どうまとめていくのかは楽しみです。
 今作、特に大和周りでは語りすぎない物語の見せ方が一貫していますが、親子の関係や食卓の気遣いなど、 さりげない描写の積み重ねで見せていく、省略の仕方が巧みで、アバンタイトル〜Aパート、非常に今作らしいドラマの描き方になりました。 そして加藤監督、今季は本当に良い仕事。
 翌朝――
 「私が生き残る為には……これしかない」
 一晩下水道で体育座りしていたクバルは、街に繰り出すと、無差別破壊を開始。
 「ご覧下さいジニス様ぁ! これが私の罪滅ぼし! いえ、新たなブラッドゲームの始まりです!!  日没までにこの星の生き物ども全てを滅ぼしてご覧にいれます! ですからぁ……どうぞお助け下さい!!  ブラッドゲーム勝利の報酬として、どうか、私の命ぉぉぉ……!!」
 「クバル!」
 「何やってんだあいつ」
 本人も、チームのゲーム内容も、趣味で暴れているだけだったアザルドですが、この局面に至ってもあまりにマイペースすぎて (裏切った筈のクバルが普通に基地に戻ってきても普通に挨拶しそう)キャラの掘り下げが進んでしまうという、これもクバル効果で、 なんという踏み台の有効活用(二回目)。
 「なるほど? そう来たか」
 ひざまずいてジニスの靴を隅々まで舐めつくす路線を選んだクバルが、 どこから見ているのかわからない圧倒的恐怖に対して天に向かって手を広げ――すなわち神の慈悲を請い――哀願するのに対し、 それを射手座基地から見下ろす面々、という構図が、これまたブラッドゲームの本質を提示しているようで、ここに来て凶悪。
 「ジュウオウジャー……私の邪魔をしないで下さい」
 クバルは駆けつけたジュウオウジャーに対してメーバ軍団を放ち、集団戦闘開始。
 「邪魔するに、決まってんだろ!」
 「人の星を、勝手に生け贄にしないで!」
 「おまえも星を滅ぼされたなら、わかるだろう!」
 「あんたにも、大事な仲間が居たんじゃないの?!」
 「だから、おまえはジニスを倒そうとしたんじゃないのか?!」
 前回、クバルにはクバルの事情がある事を知った5人は会話(コミュニケーション)を試みるが――
 「フン、知った事かぁ!!」
 クバルはそれを一言で切って捨て、その明確な断絶にメーバと戦いながらもハッと顔をあげる5人。
 「おまえたちも見ただろう?! ジニスのあの凄まじく、凶悪な強さを! 我々がいくら足掻いた所で無駄なのだぁ!  生き残る為なら私は、プライドも何もかも捨てる! こんな星の事など、どうでもいいわーーー!!」
 クバルは自らデスガリアンに潜り込み、復讐の為に臥薪嘗胆するほどには胆力があったわけで、 命が惜しいとはいえただ殺されるだけならここまでおかしくもならなかったのかと思うのですが、「いたぶって、弄んで、 絶望するまでしゃぶり尽くして殺す!」というジニス様評が、凄く効いています。
 まあ今回の扱いの感じからすると、もともとクバルの一族は物凄く傲慢で他人に見下される事が我慢ならず、 復讐の最大の動機もいつかジニスを這いつくばらせて床の雑巾がけとかさせたい、とかいうものだった可能性もありそうですが。
 そんなクバルはここで、群れを切り捨てて自分一人だけが生き残ろうとする者と置かれる事で、 ジュウオウジャーが戦わざるをえない今作における“悪”と既定。
 一方で今回レオがナリアを見逃しているのですが、男の美学にプラスアルファのポイントがどこにあったかというと、 「ご無事なのですね……」とジニスの無事に安堵した呟きであり、デスガリアンといえども「他者を心から心配する」 姿に人間味を見てしまった為に切れなかった、というのは1エピソードの中で巧く対比になっています。
 同時にレオが“美学だけ”でナリアを見逃してしまうのを回避しているのですが、今作の造りとそれこそレオの美学からすると、 レオはこの件に関して何らかの形で責任を取ろうとする可能性が高いと思われ、前々回の電撃パンチの事も思うと、 ここに来て急に前途に暗雲が漂ってきたなレオ……!(笑)
 まあクバルがこんな事になったので電撃パンチはあそこだけのネタという気もしますが、 ボディブローは後から効いてくるものと相場が決まっているのでさぁどうか……。
 「クバルーーー!! ……おまえがジニスに抱いた恐怖を、みっちゃんも味わったんだ! はぁぁぁぁぁっ!  自分勝手にみっちゃんを利用して! 今度はこの星を利用して! 許さない!」
 ジニスへ反抗したクバルは、しかし力に敗れ隷属を選んだ結果、自分の目的(遊興)の為に他者を弄ぶジニスと、 自分の目的(復讐/生存)の為に他者を利用するクバル、として重ね合わされ、他者の命を尊重しない傲慢に激怒するイーグルは野生解放。
 「私が欲しいのは、ジニス様のお許しだけだぁ!!」
 ヒーローの怒りに対してこの局面で面白い返しをするクバルへ、ゴリラ&ジューマンズが連続攻撃を浴びせ、 番長キャノンによるスプラッシュでの目くらましからスライディング番長変身は格好良かったです。その後、 左手にキャノンつけたまま低い位置で斜め回転からの攻撃が、腰回りのヒラヒラと足捌きも栄えて格好良かったのですが、 どうやっているんだ、あれ。立ち回り時に地面などにぶつかっても壊れないように、柔軟素材のキャノンとか用意してあるのかしら。
 最後は全員集合(あ、一人足りない……)ファイナル番長キャノンが、最高出力のクバルガンを上回り、クバルは大爆発。弓矢基地では、 はいじゃあ、台所の掃除掃除、みたいな感じで視線を外すナリア(笑) だが……
 「ナリア、コンティニューを」
 「ええっ?! しかしジニス様! クバルは!」
 「いいじゃないかナリア。私は楽しかったよ?」
 オーナー命令で仕方なく地上へ降りてきたナリアに対し、一歩前へ出たライオンが呼びかけるも完全スルー、というのはポイント高く、 最終盤で拾っていってほしい要素です。
 「ジニス様の御慈悲に、感謝なさい!」
 クバルを足蹴にして起こしたナリアは、たぶん嫌がらせで、大量のコンティニューメダルを投入(笑)
 「うおぉぉぉ、ジニス様ぁ!! 有り難うございます! このブラッドゲーム、必ずや成功させてみせます!」
 前回の今回で、いっそ哀れレベルの、清々しいまでのクバルの卑屈ぶりは非常に素晴らしい。
 サワオ不在の為、ジュウオウジャーはキング、ワイルド、ドデカ、を起動し、タコキングの意味も出る事に。 他の武装アニマルがまがりなりにも2クール以上の付き合いだけに、ぽっと出の新人が(文字通りに) でかい顔をしている感がどうしても強いですが(^^;
 「体に漲るジニス様の御力、思い知るがいいぃぃぃ!」
 クバルはエネルギー触手によるオールレンジ攻撃で3大ロボと渡り合い、周囲の騒ぎから病室で目を覚ましたさわおは、 窓からこの戦いを目撃。
 「待っていて下さいジニス様。間もなく、間もなくジュウオウジャーを倒してご覧にいれますゆえぇ!」
 「みんな……」
 ジニスへの恐怖から変身アイテムに手を伸ばす事ができず、戦う5人の姿を目にしながらも、さわおは窓辺に座り込んでしまう。
 「俺は、怖い……でも……変わりたい」
 オ「おい、操。わかってんだろ?」
 「……え?」
 ワ「わかってるくせに。いつまで座ってんだ?」
 サ「変わりたい、じゃ、いつまでたっても変わらない。だろ?」
 「……うん!! 変わりたいじゃない……」
 サ・ワ・オ「「「うん」」」

 「変わるんだっ!!」

 サ・ワ・オ・サワオ・サワオ!
 変身!!
 現実で立ち上がる事とそのシンボライズとしてのヒーローの「変身」を重ねてきて非常に熱いのですが、ここで凄く良かったのは、 久々登場の脳内フレンズが「わからないのか?」でなく、「わかってんだろ?」と声をかけること。
 そう、門藤操は、もう、わかってる。
 落ち込んで座り込んで、手を引いてくれる人を待っているのではなく、自分が、 誰かの手を引ける側になりたいと願うなら――自らそうなろうとしなければならない事を。
 それが、子供じゃない、という事を。
 そして、その手が震えを越えて掴んだ変身アイテムは、闇を照らす光の標。
 「俺に! 怯えてる資格はない!」
 ここまでずっとネガティブに使ってきた十八番のフレーズの意味も逆転し、看護師の制止を振り切って病院の外へ飛び出すさわお。
 ロボ戦では、クバルが触手で捕まえたドデカをジャイアントスイングしており、戦隊ロボ戦ではあまり見ない、 セットを広く使った構図でクバルのこれまでにない強さの表現にもなり、格好良かったです。
 「はははははははっ、貴様等の命が私を救う! トドメだ」
 3大ロボに迫るクバル、だが、しかし……!
 「させるかーーー!!」
 サワオの操るトウサイジュウオーが参戦すると、右ストレートでクバルをぶっ飛ばす。
 「俺はもう逃げない! ジニスがなんだ、デスガリアンがなんだ! 俺には、みんなが居る。 ……昔の俺とは、レベルが違うんだよぉ!!」
 一方的に与えられた力で、レベルが違うのではない。
 みんなと高め合ってきた事で、レベルが違う。
 恐怖を乗り越え、仲間とともに変わる姿でサワオとクバルが鮮やかに対比され、ここでもまた、 かつての決め台詞が別の意味を持って塗り替えられる、とジュウオウ/ザワールドの要素を使い切り、実にお見事。
 そしてサワオは、ジニスの呪縛を、“昔の俺”を乗り越える事で、今、真の意味でヒーローになる。
 ――誰かに手を伸ばせる者になる。
 サワオ加入時(第20話)、洗脳解除→シリアスに進むのかと思ったらかなりコミカル→凄く変なテンション、 という予想外の展開に「面白いか面白くないかで言えば面白かったのですが、何だか凄く、眩惑された気分があります(^^;」 と書きましたが、あれはまさしく眩惑であったのだな、と20数話を超えて辿り着いた大ジャンプの着地点に、脱帽。
 「さあ、みんなでクバルを倒すぞ!」
 3大ロボットが立ち上がり、流れ出す主題歌。

「世界の王者! ジュウオウザワールド!」
&トウサイジュウオー
「雪原の王者! ジュウオウタイガー!」「森林の王者! ジュウオウエレファント!」
&ジュウオウワイルド
「サバンナの王者! ジュウオウライオン!」「荒海の王者! ジュウオウシャーク!」
&ジュウオウキングオクトパス
「王者の中の王者! ジュウオウホエール!」
&ドデカイオー
「動物戦隊!」
「「「「「「ジュウオウジャー!」」」」」」


 最終的にロボで揃い踏みポーズというのはありますが、コックピットの座席から一人一人立ち上がって名乗りポーズを決め、 その背景にそれぞれ搭乗ロボを重ねて見せる、というのはちょっとした新機軸でしょうか?
 「ひゃはははははははは! 皆が居る? ふざけるなっ! この星は私のジニス様への手土産! それ以外の未来はない!」
 「この星を――舐めるなよ」
 毎年お馴染みクリスマス決戦らしく、動物武装と4大ロボが総攻撃で大活躍からの全合体。今回頑張って存在感を出していたタコは、 やはり全合体すると居なくなるのですが、これはもう、どうしようもなかったのか(笑)
 「クバル! おまえが負けた恐怖に、みっちゃんは勝ったんだ! そのみっちゃんが俺達を勇気づけてくれた。 もうおまえなんかには負けない!」
 弱者が集って世界から目を逸らすのでも、圧倒的な強者が集団を支配するのでも、 一握りの優れた者達がその他大勢の劣った者達を一方的に庇護するのでもなく――
 「動物が群れを作るのはな、大事な仲間とみんなで、生き抜く為だ!!」
 この辺り、動物行動学としてあらゆる“群れ”に該当するわけでは勿論ないでしょうが、 今作における“群れ”というキーワードによるなぞらえが、大和達が変えたさわおが大和達を勇気づけるようになる、 という生き抜く為に互いが強くなる関係性に集約。
 “守るヒーローと支える大衆”というテーゼから互いの関係をもう一歩近付けた、 強い者も弱い者も皆が一緒に成長していく関係と描かれ、それはすなわち、
 今はヒーローに守られている君達も、いつかは誰かを守れるヒーローになれる
 いや……
 「なるんだっ!!」
 という事でありましょう。
 それが今回サワオが辿り着いた、誰かに手を伸ばせる者、ではないかなどと思うのです。
 「まだだぁ! まだ私はっ!」
 ワイ(中略)キングの猛攻に耐えるクバルだが、遂に必殺の百獣乱舞が直撃。
 「ジニス様ーーー!!」
 そしてクバルは、同じ手を伸ばすのでも、ただ強者の慈悲を乞いながら爆散し、断末魔の台詞が、実に哀しい。
 「面白かったよ――クバル」
 クバルの超踏み台運動により、今回だいぶ自身が面白くなってくれたジニス様ですが、 今作の悪としては最終的に惨めに這いつくばって「馬鹿な?! プリキュアが作って食べて戦うだと……!? ……じゃなくて、 馬鹿な!?」と散るのがふさわしいかなとは思いつつ、「自分の命がかかった恐怖! 肌にひりつくこのスリル!  最高のゲームだった……!」と満足して散っていく可能性もありそうで、私としては割とどちらでもOKなのですが、 どう決着をつけるのかだいぶ楽しみになって参りました。
 「つーかおまえ、ホント強くなったよ。昔の操なら、俺は役立たずだーっつって、座り込んで動かなかったろ」
 「人って変われるんだねー」
 戦い終わり、車椅子に乗せたさわおを病院へと運ぶ面々。
 「…………みっちゃんの方が、俺より大人かもしれないなぁ」
 はにかむさわおの姿に、ぽそっと呟く大和くん、で続く。
 今回、さわおが過去を乗り越えてヒーローとして脱皮する一方、これまで“大人の対応”を見せる事が多かった大和が、 マリオおじさんから変わらない部分を指摘されて自分の姿を顧みる事で、サワオとクバルだけではなく、さわおと大和も対比されている、 というのが面白いポイント。
 また主人公として今作におけるテーゼの体現者だった大和くんが、今回はさわおにそれを“教えられる”立場になっており、 この立ち位置の変化というのが最終盤に作用してくるのかどうかは、注目したい部分です。
 とはいえ人間、幼少の頃のトラウマを消化するというのは簡単な事ではありませんし、 マリオも必ずしも変わらない事を否定しているわけではないのですが、今回さわおを通して、 “子供からの脱皮”というのを明確に描いたので、物語として大和が父親とどう向き合っていくのか、年明けの展開が楽しみです。
 大和(達)がサワオを良い方向に変えてきたのは確かだけれども、 もしかしたらその大和(達)がサワオ自らが立ち上がる事を妨げていた面もあったのかもしれない、 という事が「よせ。子供じゃないんだ」という台詞で間接的に示唆されており、大和がその事を、 目を背け続けてきた父親から教えられている(恐らくまだ、自覚は無いけど)、というのも父子の関係性として面白い所。
 大和には二人の擬似的な父親(マリオ、バド)が居るわけですが、その辺りを含めた描き方もどうなるか興味深いです。
 とにかく今回、色々な要素が多重に絡んでおり、非常に濃密で面白い1本でした。クバル退場でシェイプアップされつつ、 敵味方の間に幾本かのロープが張られて新たな面白みも生まれており、この勢いのまま完走を願いたい。
 個人的には後、「百獣の王者」というフレーズありきであったろう「王者の資格」の「王者」とは何か、 という点が繋がってきてくれると嬉しいのですが、さてさて。
 ……そういえば、前回ラストで大和くんの頭上を飛んでいた何かには一切触れられなかったけど、 あれは何だったのだろう……(^^; コラボ映画ネタ……?(手裏剣?)
 次回、一山越えてクリスマスでコスプレ収め、と思ったらここで一気の叔父さんバレ?!

→〔その8へ続く〕

(2019年11月17日)

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