■『動物戦隊ジュウオウジャー』感想まとめ6■


“雪原の王者、ジュウオウタイガー!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『動物戦隊ジュウオウジャー』 感想の、まとめ6(31話〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・  〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


◆第31話「巨獣立つ時」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
 「どうして……。大王者の資格を持っているのに」
 イーグルは姿を消したホエールを探し求め、一方、デスガリアンでは、前回ナリアが撃ち込んだ発信器の反応により、 その所在を突き止めていた。
 「バングレイも案外手こずっていたようだねぇ。毒で獲物を炙り出すとは、彼らしくないやり方だ。フフハハハ……だいぶ、 焦れていたのかな?」
 間接的にクバルを煽るジニス様が実に厭らしく、ブラッドゲームに獅子心中の虫が存在する事で、ジニス様の懐が広くなったのは、 好材料。前半どうにも、出たとこ勝負感を井上和彦の演技で誤魔化していた部分が強かったジニス様ですが、 ようやく余裕と貫目が釣り合ってきました。是非とも、わかった上でクバルを手元に置いている路線で行っていただきたい所。
 大切なのは、スリルとロマン。
 イーグルも山中の湖で休憩中のホエールを発見し、仲間達へ連絡。タスクの作った毒消しで治療中のセラとさわおを留守番に残し、 黄緑白は現場へと向かい、その状況にますます沈み込むさわお。
 「俺だけジューランドに行った事も無いし、ジューランドの事もわからない。そんな俺に、おまえ達の仲間で居る資格はあるのか」
 前回のさわおが普段以上に肩に力が入って空回りしていたのは、 大王者の資格絡みであまり役に立てなかった事を気に病んでいたからであり(ゴーカイシルバーが戦ってあげていれば……)、 その背景には、“ジューランドの歴史”に関わっていない自分が、この戦いに参加するのは筋違いではないのかという、 引け目が存在していたと判明。
 コラボSP前後編で、歴史の蓄積を重視したのを逆手に取り、その歴史に繋がっていない者が戦いの中の居場所を探す、 という形で普段ギャグに用いている「俺には資格が無い」に重い意味を持たせたのは鮮やか。
 「ごめん! 内緒にしてたわけじゃ……」
 「違う! そうじゃない。俺が! もっと役に立ちたいんだ……生まれて初めて出来た…………友達の為に」
 そして、内心では本当の理由(友達の為)がわかっていながら、客観的に自分を納得させられる理由(仲間で居る資格) を求めてしまうという、さわおの弱さと脆さの描き方もお見事。
 メタ的な“追加戦士”の戦隊的意味づけも含めて、やりすぎによる破綻すれすれの所をきりもみ飛行で縫うさわおの造型は、 本当に良く出来ています。
 「それでやたら張り切ってたんだ。……あんたのそういうとこ、嫌いじゃないけどね」
 「……え?」
 「空回ってるし、面倒くさいけど、色々考えて努力してるのわかるもん。友達作りたくて、体鍛えたり、手芸頑張ったり、 けっこう根性いるでしょ」
 前後編という事でさすがにセラとさわおにもフォローが入り、空回りも面倒くさいのも否定しないし、 多分ちょっとズレていると思っているけど、努力する根性は否定しない、というのがセラの立ち位置に。
 「ちょっとわかるんだよね。私もずっと……もっと強くなりたい、認めてほしいって、じたばたしてるから」
 さわおに対して理解と共感をもらすセラは、すっかり公式不憫キャラ的な扱いになってきました(笑) この、 “強気な優等生の弱み”をなかなか同じジューマンには見せられない、という部分が終盤もう一跳ねしてくれると良いのですが。
 「それで……強くなれたのか?」
 「まだまだ。だから、みっともなくても、努力し続けるしかないんだよね。理想の自分に近づく為には」
 「努力を続ける……そうか。そうだな……俺ももっと強くなって、みんなの役に立つ、ぞーーーーー!!」
 「……いきなり空回ってる」
 だが勢い良いさわおの動きで解毒が完了した事がわかり、仲間達を追いかける2人。
 「行くよ操!」「ああ」
 この2人は、距離が近づくほど、友情というより、姉御と子分の関係になっていきます。
 湖付近では、ジニスの命令でクジラに迫るナリア一行と黄緑白が交戦し、ライオンが、 ジャンプして木の腹を蹴った勢いで横に3回転ぐらいしながら受け身を取って転がるという、なんかまた凄い動きを。
 一方、湖に降り立った大和はクジラに話しかけるも、キューブ状態に引きこもられていた。
 「ケタスさんはどうやって仲良くなったんだろう…………違う」
 そもそもキューブホエールはジュウオウホエールと共に生まれた対になる存在であり、 初代ジュウオウホエールこそが唯一無二の存在であった事に思い至る大和。
 「そっか……生まれた時から、相棒だったもんな。……大好きだったんですね、ケタスさんの事」
 ホエールの心の糸口を掴む大和だがそこにバングレイが現れ、大和はイーグルに変身するとホエールを守る為に立ちふさがる。
 「ごめんキューブホエール! 大王者の資格持ってるからって、いきなり同じように付き合えないよな! 大丈夫、 一緒に戦おうなんて言わない! 俺達は、あなたを守りたいだけだ!」
 資格はあくまで目覚めの入り口に過ぎず、そこから先で示す事を求められるのは、力でも絆でもなく、 相手と一から向き合う事という流れが、つくづくコミュニケーションの物語。
 今作の長所の一つはこの、物語の中で起こる様々なイベントに対し、その背骨として常に一つのテーマが貫かれて繋がっている事。 エピソードとしてのテーマは他にあっても、物語全体として描こうとしているものがその時々で右に左に揺れ動くことなく、 『動物戦隊ジュウオウジャー』はこういう物語である、という軸が非常にしっかりしています。
 これは一歩間違えると物語の硬直化(同一メッセージの上昇の無い繰り返し)を生む危険性も孕んでいますが、今のところ上手く、 劇中のエスカレートに重ね合わせた上昇曲線の構築にも成功しており、是非ともこのまま最後まで昇りきってほしい。
 イーグルの隙をついて四角いクジラにと飛びかかるバングレイだが、そこに伸びた釣り糸が絡み、今度こそふぃーーーーーしゅ!
 「やられっぱなしは耐えらんないのよ!」
 「俺は何度でも立ち上がる! 俺が目指す、俺になる為に!」
 セラの掘り下げと、さわおの成長も綺麗に重なり、ここは格好良かったです。
 一同揃うジュウオウジャーだが、ナリアがジニスが作ったギフトカスタムを起動、搭乗してクジラを狙い、火力に溺れて楽しそうな事に。 バングレイにはゴリラが立ち向かい、残りメンバーはサイキングを起動してギフトカスタム〔緑〕に立ち向かう。
 これだけ分割展開を繰り返すと白けそうなものなのですが、キャラクター個々の蓄積が効いていて余り物感が薄いのと、 全体のキーワードである「繋がり」の定期的な強調により、非常に一体感が強い戦隊である事、 そして序盤から割とロボットが適当な扱い(最大3人乗りだけど2人で動かせる)なのであまり違和感がない、 というのも巧く回っています。
 「負けない……」
 「あぁ? 巨大クジラちゃんが待ってんだ! 暇つぶしは用済みなんだよぉ!」
 バングレイに押し込まれながらも四角いクジラを守り続け、バングレイの放つ衝撃波を二刀流で受け止めるイーグル。
 「渡さない……。おまえにも! デスガリアンにも!」
 ギフトカスタムに苦戦するサイキングのコックピットで、仲間達も声を合わせる。
 「「「「「絶対に、負けない」」」」」
 「キューブホエールが守れなくて、この星が守れるか!!」
 目の前の目標にこだわりすぎて全体を見失う、という展開もしばしばありますが、ここで、 なぜキューブホエールにこだわって守るのかというと、色々と過去の因縁もあるけれど、 身内のしがらみだけでなく何よりそれは地球を守る行動の一つなんだ、と接続。同時に、新ロボ登場回において、 力の為の力を手に入れるのではなく、守る為に戦った結果として力が手に入る、という流れも巧く成立しました。
 スペシャル前後編に続いての新ロボ登場編において、全体テーマの貫徹と細かい所へ行き届いた意識という『ジュウオウジャー』 の良い部分が鮮やかに縦糸と横糸を織り上げて、お見事。
 バングレイの衝撃波を弾き飛ばしたイーグルの後ろ姿に、クジラ大王の面影を見たキューブホエールは目を開くと、 イーグルへの助力として巨大な銛を与える(玩具的にはスピアーのようですが、クジラから出てきたし銛な気がこれ)。 さすがに身長以上の銛は取り回しが大変そうで、体の周りをぐるぐる回しつつ、攻撃にエフェクト乗せてかなり派手に見せてはいるのですが、 斬ったり刺したりしているというより、丸太で殴打を繰り返しているように見えます。
 なんだろう……一人破城槌?
 丸太必殺城門砕きを受けてバングレイは森の彼方へと吹っ飛び、 イーグルが勢いで投げつけた銛は見る見るうちに巨大化するとギフトカスタムにダメージを与えた後、 クジラの頭部に戻ってホエール再起動。大王者の資格が反応し、ジュウオウ番長が乗り込むと、「動物変形!」により、 単独で人型ロボットへと変形する!
 「完成、ドデカイオー!」
 本体といい銛といい、キューブホエールのセールスポイントは「デカい」という事になるようですが、 それに「海」がかかっている名称は、行き着くところまで行った感がありつつ、何となく巧く言われた感があってそこはかなとなく悔しい(笑)
 しかしどうして、顔がブライガー。
 どデカい王は、サイキングが手も足も出なかったギフトカスタムを圧倒すると、最後は銛を連続で叩きつけるドデカイオーシャンスプラッシュにより撃破。 ジニスの為の勝利にこだわるナリアだが、そのジニスの命令により、メモリーデバイスを取り出すと本拠へと帰還し、コインワープ、便利。
 「ありがとう、キューブホエール。俺達、少しだけ認めてもらえたのかな」
 こうしてジュウオウジャーは、初代と共に戦った伝説の力を得、ホエールも小さくなってアニマル軍団に参加。 引き続き距離感の読めないさわおがホエールに頬ずりして逃げられる一幕もあったものの、 ひとまずバングレイの凶手からホエールを守る事に成功するのであった。
 そのバングレイは、てっきり新装備か新ロボの踏み台になるのかと思っていたら、まさかの生存。 吹っ飛ばされた森でよろよろしているシーンが入ったので、これはクバルに刺されるパターンかと思ったら……それも無し。 一人破城槌の登場で赤との格付けもほぼ付いていましたし、率直にかなり意外な展開なのですが、いったいどんな波乱分子になるのか、 楽しみにしたいと思います。
 そしてジニスは、この戦いにおいて、キューブホエールのデータを入手。
 「さぁて、どうやって遊ぼうかな。ふふはははは」
 オーナーが、久々に、立った!
 細かい所では、メモリーデバイスが三角形、というのは小道具として宇宙感があって素敵です。
 組み替えロボ1→組み替えロボ2→組み替えロボ全合体→実質的2号ロボ→全合体ロボ→単独変形3号ロボ、と来ましたが、 初登場補正ありとはいえ、〔サイキング<<<ギフトカスタム<<<<<<<ドデカイオー〕の戦力差が随分派手な事に。 ジニスがそのドデカイオーのデータを入手したので、それに対抗する為にもう一段階何かあるのでしょうが、さて、どんな事になるのやら。 また、赤が更なる専用武器?を入手した事で、ジューマンズとの戦力格差が更に開いてしまい、軽い……ジューマンズの戦力的価値が、 ダークネビュラに送られそうなぐらい軽い……ので、合わせて早めに次のステップを期待したい所です。 物語としてきちっと段階を踏んでいるので嫌な感じは無いのですが、さすがに、レッドとジューマンズの戦闘能力格差は開きすぎのような(^^;
 ところでドデカイオーの玩具、お腹に巨大な穴が空いているけど、それでいいのか。
 あと本編と全く関係ない点で一つ気になったのですが、マリオおじさんの髭が立派になってきているのは、 夜に隠密をやっている関係なのか。

◆第32話「心は裏表」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:下山健人)
 今週から『ゴースト』が終了して『エグゼイド』がスタートした事で、スーパーヒーロータイムの開幕映像が変わったのですが、 各キャラクターが飛び出してくる所で、サワオ、体育座り。
 強烈な掴みでした(笑)
 ジュウオウジャー一同は森家でパンケーキパーティを開き、自由に振る舞うメンバーに、今日も口やかましい小舅のタスク。 ひたすら大和に焼かせて美味しい所だけいただくアム、我慢ができなくてほぼ液状の生地をひっくり返そうとするレオの2人は概ね平常運行として、 ホットプレートいっぱいに生地を流し込むセラがなかなかハイレベルで、これまでなかなか崩せずにいたセラも軽いギャグに巻き込んだのは良かったと思います。
 そして初めてのパンケーキパーティに食べる前から胸一杯のさわおは、ドリーム溢れるデコレーションの山を築き上げており、 そちらへ向けられるタスクの矛先。
 「パンケーキの事をわかってなさすぎる!」
 「俺に……パンケーキを焼く資格は、ない……」
 がっくりと生クリームの泥沼に沈み込むさわおの姿に、タスクが言い過ぎを反省し、大和達が慌ててフォローを入れている頃、 デスガリアンではジニスがブラッドゲームの再開を宣言。
 「では諸君。ブラッドゲームを、再び楽しもうじゃないか」
 その一番手として送り込まれたのは、人間の裏の顔を増幅させるリバース光線を放つ、オモテウリャー。 心の裏に隠している悪意を増幅された人々は喧嘩を始め、その光景に変身するジュウオウジャーだが、ライオン、シャーク、イーグル、 タイガーが、次々と光線の餌食になって心の裏面を増幅されてしまう。
 青「ちょっと。頼む、とか言ってるけど、ちゃんと頼んでなくない?」
 赤「被害妄想だよ。セラはプライド、高すぎるんじゃないの?」
 白「確かに。セラちゃんはクールビューティを気取ってお高くとまってるし、大和くんはいい人ぶってる偽善者に見えるかな〜」
 赤「偽善者? 俺が?」
 青「お高くとまってるって、腹黒いあんたに言われたくないんだけど」
 赤「可愛子ぶってんじゃないよ」
 青「何よこの偽善者」
 マスクのゴーグル部分に赤い吊り目マークの入った赤青白は早速身内で揉め始め、シャークの顎をくいっとやるイーグルの本性は、 やはり鬼畜属性だと思います。
 黄「お、みんないい所突いてくるね〜」
 そして約1名、あまり変わらなかった(笑)
 腰に細い手(中身入ってない)を当てた陽気な道化師風の怪人は、背中を向けると凶悪な本性の顔が露わになり、 合わせて巨大な腕が飛び出してくる、というのは秀逸な造型。裏表怪人はリバース光線で人間関係を破壊すると嘯くが……
 「そんなの全然大した事ねぇなぁ。だいたい、裏の顔ぐらいで、俺達の関係は壊れねぇよ」
 同じ光線を浴び、ゴーグルに吊り目は入っているものの、凄く普通に、緑の肩を抱く黄色(笑)
 まこと、馬鹿と大器は紙一重です。
 ところがやたら大げさなジャンプでサワオが3人の仲裁に入ろうとした事で、事態は燎原に広がる炎のごとく大炎上。
 青「操の事、面倒くさい、と思ってるくせに」
 ぐさっっっ(笑)
 青「中途半端に優しくするとことかね」
 「なーにが悪い。喜んでんじゃねぇかよ」
 白「そういうセラちゃんだって、操くんに巻き込まれないようにしてない?」
 「面倒くさいから仕方ないじゃん」
 赤「アムこそなんだかんだ、一番距離を置いてるように見えるけど?」
 「ちょうどいい距離取ってんの」
 長丁場の戦隊シリーズでは、途中参加の脚本家が、シリーズそこまでの問題点や不足部分を外からの視線で汲み取って本編に組み込む事で良いスパイスになる事がしばしば有りますが、 BD−BOXの特典映像で脚本を担当していたという下山さんが、本編初期から入っていると書きにくい所を、鮮やかに突いてきました(笑)
 特に大和くんがさわおに対して若干引き気味なのは明確に繰り返されていたので、増幅された暗黒面という形とはいえ、 ここでハッキリと触れたのは、大和くんといえども決して無敵のコミュニケーションモンスターではない、 という宣言にもなって今後を考えても良かったと思います。
 下山さんはどうも、その場のノリの面白さ優先でキャラクターの積み重ねを二の次にする印象があるのですが (これは、面白さの違いであって、必ずしもどちらが正解というわけではないですが)、 今回はその“ノリの面白さ”を怪人の特殊能力と繋げ、「キャラの崩し」=「裏の面の増幅」とする事で、上手くコントロール。
 パンケーキパーティの時の慰めの言葉の裏を感じたサワオはショックのあまり逃走。 裏表怪人が自分の能力を確認して高笑いしながら姿を消すと特殊能力が解除され、赤青白は気まずい表情で顔を見合わせる事になり、 5人は一度、森家へと帰還。
 「みっちゃんと仲間になって、だいぶ慣れたと思ってたけど、結局俺達は裏表を使い分けてたって事」
 「やっぱりレオくんみたく、裏表無いのが一番いいのかな〜」
 「みんなが俺みたく言ったら、それこそあいつへこみまくって、もっと面倒くさくなるんじゃ」
 今回凄かったのはこの、“人間同士の付き合いには多少の裏表や、それぞれの適切な距離感がある”という事を、 否定しなかった事。
 怪人の特殊能力は善意を悪意に変えるのではなく、あくまでも“心の裏で考えている事の増幅”であり、実際、 大和達もそれぞれちょっぴりは考えていたからこそ、多少気まずいわけで。さわおに対する態度への言及も、 自己申告ではなく他人から指摘される……つまり、実は大和はこう考えているのではないかとちょっぴり思っていた事がちょっぴり的を射ていたけど、 普段はそこは敢えて口を出さない関係、を描いた上で、誰もその部分は否定しない。
 善い悪いの観念とは切り離した所で、“コミュニケーションとは何か?”という今作の中心テーマが描かれたのは、 切り口として非常に良かったと思います。
 「そんな事は無い。僕だって面倒くさいけど、みんな僕には気を遣わない」
 「それはタスクくんと操くんの面倒くささは違うじゃない。それこそ、表と裏っていうか……」
 「まあ……きつい事言われても、本心じゃない時は、わかるしね」
 「僕と操は同じように不器用だけど、みんなと一緒に居た時間が長い分、表と裏、どっちが本心か互いにわかる。その違いだ」
 「もう少し時間が必要って事か……」
 「それと……互いの心に一歩踏み込む勇気、一歩踏み込まれる勇気、かな。みっちゃんなら大丈夫。俺は信じてる」
 まあ、さすがにそのまま剥き身だと刺激的すぎると判断したのか、一緒に過ごした時間が長ければストレートな言葉をぶつけても互いの本心がわかるから大丈夫、 と裏も表もあるのが人間という話から少しマイルドな方に論点をずらすのですが、下山脚本だけに、配慮としてずらしたのではなく、 素でずれた可能性もありそうな気は若干。いや今回に関しては、ずらして良かったと思うわけですが。
 というかこれはこれで、タスクはタスクなりの理解であって、大和・セラ・アムは、もう少し別の事を考えていそうな気もします(笑)
 マリオおじさんが顔を見せ、TVで国際会議の話題を知った5人は、 裏表怪人の狙いが各国首脳にリバース光線を浴びせる事で国際紛争を誘引する事だと気付く。会談で掴み合いを始める首脳達の 「この野郎! こうなりゃ戦争だ!」の字幕というか吹き出しは面白かったです。
 そうはさせまいと怪人の行く手に立ちはだかる5人だったが、心に深い傷を負いながらも懸命に姿を見せたさわおを気にした隙に、 まとめてリバース光線を浴びてしまう。
 赤「何で来ちゃったんだよみっちゃん」
 白「一番ダメなタイミング、わかってないの!?」
 青「足手まといになるでしょ」
 さわおに向けて次々と言葉の爆弾が炸裂し、字幕と効果線のエフェクト付きでさわおの受けた精神的衝撃を表現する、 という演出は個人的には好きではないのですが、効果音と吹き飛ぶさわおの姿だけで精神ダメージを描写するのはちょっと難しかったでしょうか (この前のシーンの、足を手で強引に動かすようにして姿を現すさわおの姿は、心の傷と怯えの表現として秀逸だったのですが)。
 黄「その通りだけど……おまえら、容赦ねぇな」
 レオは概ねいつも通りなので、特に深刻なダメージ無し(笑)
 「大丈夫だ……時間と勇気!! さえあれば、俺も、みんなの本心が、わかるようになるんだろ」
 実はドアの外で5人の話を聞いていたさわおは、自ら覚悟を決めてそれを受け止めようとする。
 「俺はみんなの本心が知りたい!! ……何でも言ってくれ」
 緑「……わかった。操は驚くほど面倒くさい。独りよがりで、必要以上に、ネガティブだ!!」
 リバース光線の影響による赤い目元の裏面増幅化粧が妙に似合うタスクの攻撃がクリティカルヒット!
 「おいタスク! それは俺より言い過ぎだろ!」
 「本心だ。でも僕は……そんな操が好きだ! 大好きだ!!」
 「なんだー! いきなり素直になって」
 「ああそっか。普段なかなか素直になれない不器用なタスクの、裏の顔が表に出たんだ」
 「裏の裏は……表……て、事?」
 ここで、油断すると単に性格が悪くなっているだけになりそうだった怪人の特殊能力を丁寧に活用し、 タスクの“裏の顔”が状況を変える、というのは上手く決まりました。大和くんがタスクを率直に「不器用」扱いし、 裏面が出っぱなしなのも秀逸(笑)
 「俺は今、力が漲ってるぞぉぉぉ!!」
 タスクの告白を受けてテンションゲージがレッドゾーンを振り切ったさわおは本能覚醒し、 怒濤のラッシュを怪人に浴びせた事でリバース光線が解除。
 「大丈夫か操!?」
 「大丈夫だ! むしろ、みんなに色々言われるのが、気持ち良くなってきた……」
 やはり、そっちの道に本能覚醒してしまったか……。
 そして、白い歯を見せて苦笑しながら、また大和くんが、一歩下がった(笑)
 5人も本能覚醒するが、心だけではなく他者の向きを物理的に裏返す怪人に苦戦。しかしその時、緑がサワオと背中合わせ (どっちも表)になって攻撃するという妙案を思いつき、緑&サワオ、赤&黄、青&白が、 それぞれ手を取り合って2人1組で攻撃を仕掛けるという、変則戦闘タイム。連続アタックで裏表怪人を痛めつけると、 トドメは番長ファイヤー。……なお残り5人は、なんとなく身構えているだけでした。…………この次の一山(ジニス様の新たな遊び) で何らかの手が入るかと思いますが、さすがにこれはどうか(^^;
 「なかなか面白かったよ。まあ、我々まであの能力で、裏の顔をさらさないで、良かったじゃないか」
 最近、『プリキュア』を卒業して、『ガール○&パンツァー』にはまっている事は、部下には秘密のジニス様であった。
 コンティニューした裏表怪人はクジライガーとサイキングをリバース光線で回転させるが、 クジラが水をかけると何故か回転解除されたのは、海の浄化と共通した、状態異常の回復作用……という事でしょうか?  トドメはW必殺技であっさり片付け、戦力ヒエラルキー的には、次の新展開までは、ロボ戦はおざなりになりそうな (盛り上げようが無いというか)。
 かくしてリバース騒動は一件落着し、改めてさわお提供のパンケーキに皆が素直な感想を言う事に。
 「これも、本当の友達となる為の第一歩だと……わかったからな」
 「その意気だ操。不器用な者同士、頑張ろう」
 絆ゲージを高める不器用コンビであったが……
 「タスク…………言いづらいんだが」
 少しずつ自分の言葉を口にする勇気を身につけてきたさわおは、本当は大和とコンビを組みたかったと発言。
 「……え、俺?」
 その告白に、本気で距離を取りたそうになる大和(笑)
 大和は及び腰になり、さわおは甲斐甲斐しく大和に寄り添い、告白されたので告白を返したら何故かフられたタスクは不条理を噛みしめるのであった……でオチ。
 前年、正直シリーズ構成としては力不足を見せた下山健人ですが、 30話越えての本編参加なものの特典映像で作品には関係していた、という適度な距離感が良かったのか、 ここまでの積み重ねをしっかり汲んだ上で、今作のメインテーマに大胆な切り口からアプローチする良い仕事。 監督の差配なども出る部分ですが、前作では1エピソードにつきキャラクター2人ぐらいしか動かせていなかったのが嘘のように、 ジュウオウジャー6人全員を生き生きと使いこなし、改めて、メインライターとサブライターの適性の違いというものも感じる1本になりました。
 後、前年から気になっている事ですが、周囲の期待やオーダーはあるのでしょうけれども、正直、 下山さんは無理にナンセンス寄りのもの(浦沢義雄路線)をやろうとしない時の方が、脚本のまとまりがいいように思えます(^^;
 次回――ネコ科、というくくりはありなのか。

◆第33話「猫だましの恩返し」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:下山健人)
 周囲を大相撲時空に変えてしまい、相撲で負けた相手は延々と相撲の稽古をする羽目になるという奇妙な能力を持った宇宙の相撲取り怪人が出現。 セラ、タスク、サワオ、大和が次々と勝負に敗れ、ひたすら柱に向けて鉄砲稽古を続けるマシーンと化してしまい、 逆転の手段を求めたレオとアムは知り合いになった大学の相撲部の練習に混ぜてもらう事に……。
 やたらめったら相撲の解説と描写が続いて困惑していたら、合間にいきなり「かわいがり」とか「八百長ではなくて星の回し合い」 が飛び込んできて相撲界の闇まで抉られ、好きでネタにしているのか風刺ネタなのか(風刺ネタにしては古いし)首をひねりますが、 部下を強化する為にわざわざ地面に転がされにくるアザルドは相変わらずまめな上司です。
 で、もしかしたら下山さんの中ではこの、延々と相撲の話が続くという展開だけですっごく面白い事をやっているつもりなのかもしれませんが、 それはあくまで掴みと表層のギミックであって、その中身を詰めないと面白くならないのですが(ごくたまに、 掴みのネタだけで一話まるまる面白いエピソードがあるのは否定しませんが)、肝心の中身の方はがったがた(^^;
 4人の敗北を知ったレオは相撲取り怪人に勝つために頭をひねり
 相撲は素人→小兵でも勝てる奇策として相撲部に猫だましを習いに→やはり正々堂々と戦うべきと猫だましを否定→真っ当に練習する→ 自信をつけて勝負に挑む→何故かいきなり猫騙し(失敗)猫だましと関係なく勝利
 と、この流れだけで、ここまでの『ジュウオウジャー』史上に刻まれる破綻ぶり。
 後が無いから勝つ為に手段を選べないというのならば最初から猫だましを真摯に学べば良いのに (仲間と地球の為である事を考えればそこはレオとして特別おかしくはない)、「正々堂々ぶつかって勝つ事を目指した方がいい」 と力強く言い切り、猫騙しの練習など一切していない筈にも関わらず、本番でいきなり猫だましを使うレオの心理が、 物凄く意味不明な事に。
 恐らく、「ネコ科コンビで猫だまし」という言葉遊びが先にありきだったのかと思うのですが、 馬鹿で楽天的で自信家のレオがやってもいない相撲で「素人だから」と弱気になるのも、 怪人の姿を見ていないレオが“小柄な力士が勝つ手段”に頼ろうとするのも違和感がありますし、とにかく猫だまし先にありきで、 そこへ話を繋げる為の説得力が全く組めていません(^^;
 挙げ句、アザルドに勝つ事で横綱に昇進して強化された怪人に対して、腕を怪我したライオンに代わってタイガーが立ち向かい、 小悪魔タッチで隙をついて撃破するという、相撲一切関係なくここまで15分がほぼ無意味になる、実につまらない決着 (作っている側は、これが本当の猫だまし(笑)と、悦に入っていたかもしれませんが)。
 戦い終わって、大和達の間では相撲ブームが起こり、レオとアムは世話になった相撲部員達と再会。
 「教えられたのはこっちの方だよ」
 「なにが?」
 「正々堂々、ぶつかる事が大事だって事」
 「……おぅ、それが、いいと思うな。ははは」
 実際は猫だましを使っていたレオは動揺しながらも二人を見送り、勝利を祈るアムがぎゅっと目をつぶっているのを確認して猫だましを使ったのだが、 アムは実はその瞬間をばっちり見ており、ルールの中なら何をしてもいいじゃない、とのたまった後、「案外大人になってきたね、 レオくんも」とレオをからかう……というオチなのですが、例えば、 仲間の為に信念を曲げて奇策に走るレオの心理に焦点を合わせて格好良く描いていたなら話は違いますが、全くそういうわけではないので、 ただただレオがその場で適当な事を言っているだけになった、という酷い扱い。
 何故なら、レオが信念を持って猫だましを使ったのならば、相撲部員相手に動揺する必要がないわけです。 ゆえにこの展開も描写も、最低。
 善良な相撲部員は、レオの上っ面の正々堂々に感化されました、というのも、他者との交流を重要視する今作としては、実に酷い着地。 そしてストレートに受け止めると今回のメッセージは、勝利の為にルールの中であらゆる手段を駆使しつつ上辺だけ取り繕うのが正しい大人、 という事になるわけですが、それでいいのか。
 今作が描いてきたのは、片方に「アムの方法論」があれば、片方に「レオの方法論」があり、 そのどちらも絶対の正解でもなければ絶対の誤りでもない、という事であり、アムの方法論はアムの方法論として構わないのですが、 劇中でその対比とすべきレオの方法論が全く筋を通して描かれていない為に、極めてバランスが悪く、 全体としては溶けたスライムのような話になりました。
 せっかく前回良かったのに、掴みのギミックを入れただけで満足・ネタありきでキャラクターの積み重ねを簡単に崩す・ コアになる部分を見つけられないまま表面だけ掘って明後日に着地、と下山さんの悪い部分が濃縮されたようなエピソード(^^;
 次回、どうやらバングレイ本気。

◆第34話「巨獣ハンターの逆襲」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 街で3体の復刻巨大怪人が大暴れし、ジュウオウキング、ジュウオウワイルド、トウサイジュウオーが、 動物武装大盛りのバンク長めで揃い踏み、とここで一回ロボ戦力をまとめ見せ。それぞれ敵を弱らせた所で、一度合体を解除して、 サイトレーラー@キューブ全部乗せからサイキング発動という映像は面白く、 巨大怪人3体が縦に並んだ所をパイルバンカーで一気に串刺しから漂う、レッドファイト感。
 この戦いを見たジニスは、再びブラッドゲームの中断を宣言。
 「一度敗れた彼が、これからどう動くのか。楽しみじゃないか」
 「へっ、別に俺は興味ないがね。なあクバル? ……うわ? ど、どこに行ったんだ、あいつ?」
 妙にうろちょろクバルを探し回るアザルドは、相手の反応を特に気にせず、悪気は全くないけど面倒くさく飲みに誘ってくるタイプ(笑)
 一仕事終えて森家に戻るジュウオウジャーだが、大和に襲来する、怒りのホエール頭突き。
 「もしかして、今の戦い、なんで儂を呼ばなかったんじゃー的な?」
 「意外と、好戦的?」
 先日の仲間入り後は、ごく普通に他のキューブアニマルと馴染んでいたホエールですが、元々、 気に入らないからミサイルでぶっ飛ばす!というヤンキー体質であった個性を発揮。
 殴られる前に殴り飛ばせ、というその姿に、同じジューマンパワーで繋がる相棒であったクジラ大王に対する不信感がますます高まります。
 不満げに暴れ回るホエールにキレた大和くんは、布で被せて捕まえた後に首輪で柱にくくりつけるという鬼畜モードを発動。しかし、 いつまでもこの状態を続けていられないと一計を案じ、マリオにダミーのホエールを彫刻してもらい、 バングレイに対して囮作戦を仕掛ける事に。
 「でも、あんな風に繋いじゃって、私たち……酷い事してるんじゃない?」
 「……いや、動物を保護する時って、命を守る為にも、手荒な真似しなきゃいけない事もあるんだ。もしこれでまた嫌われたとしても、 キューブホエールを守れるなら、それでいいかなって」
 やはり、先日の宇宙海賊は、野生動物扱いだったのか。
 バングレイ反応に出撃したジュウオウジャーは、バングレイを罠にはめる為に、ダミーを使った猿芝居を開始。
 緑「なにー、まさか僕たちを助ける為にー」
 を筆頭に、人を騙す芝居が出来ないメンバーの、絶妙な棒読み(笑)
 しかし君達、パスを繰り返して放り投げるダミークジラの扱いが雑すぎるゾ。
 ところが、誘い込んだバングレイに対して不意打ちでいきなり必殺技を放つというヒーローとして若干どうかと思う作戦で皆の期待を一身に受け、 盛り上がっていたサワオが、そこに現れたジュウオウイーグルの攻撃を受ける。
 そしてホエールを抱えて先行していたイーグルの前には、青黄緑白が。
 更に、イーグルを追っていた4人を、サワオが襲撃。
 バングレイに立ち向かう際、記憶を読まれるのを防ぐ為にマリオの被り物をレンタルし、「なーるほど、考えたな。いいじゃん、 面白いじゃん」とバングレイの意外な高評価から、被り物のままで変身してバンクではない名乗りを決めてそのまま戦闘、 という展開は局面に対して少々やりすぎなギャグではと思っていたら、被り物の有無で本物と偽物がわかる、 という予想外の映像的伏線になっていて、これは面白かったです。
 ダミーホエール作成を動物人形劇に使うと誤魔化した事で、その辺りの作品を適当に持っていっていいよ、 とおじさんに言われるという前振りも丁寧。
 だが……
 「おまえらの作戦なんぞ、バリバリお見通しなんだよ。偽物使うなら、もっとうまくやんな」
 今回ばかりはホントすみません。
 バングレイを伏兵で仕留める作戦の筈が、むしろ分断され、クバルの記憶から実体化された偽物と戦う事になるジュウオウジャー。 ネタが割れた所で被り物を外して、赤vs偽ジュウオウジャー(ゴリラを追加)、サワオvs偽赤、青黄緑白vs偽サワオ、という、 哀しい戦力差の漂う変則三分割バトルに。
 「いい人になる可能性なさそうだね」
 「遠慮はやめだ! やっちまうぞ!」
 偽物への対応としてクイズ回を拾うのですが、お陰で、他のメンバーと違って、 躊躇無く仲間を切り刻みに行くジュウオウイーグルが、すっごく鬼畜な事に(笑)  ……演出的には三分割の都合により、バングレイが赤に対してネタ割れした時点で、他のメンバーも真相を知る (目の前の偽物に聞かされた事になっている)という形になっていたので、ここも、 アムの一言にまとめてそれぞれの場面で葛藤を終了した、という扱いなのでしょうが。後、改心可能性に関しては、 クバルの記憶から生まれたから無理、という解釈が成り立つ範囲か。
 青黄緑白は野生解放すると日頃のストレスを全力で叩き込んで偽サワオを撃破。 サワオは最近避けられがちな悲しみを込めた野生大解放そしてもっと近づきたいがぶり寄りからの投げ技で偽イーグルを撃破。最近、 正直!通帳の!残高が!不安だ!と偽青黄緑白を切り捌くイーグルだったが、残った偽ゴリラに苦戦する。
 同じ赤だけど違う姿と能力を持った、イーグルvsゴリラ、という対決は今作の特徴も出て面白かったのですが、 番長にならない理由が無い為、5対1で苦戦しながらもイーグルのまま戦い続けていたのは、少々苦しかった部分。 ドデカイオー登場回で、絆と力を別に描いたからこそ、余計に気になる形になってしまいました。
 奮戦するイーグルだったが、偽ゴリラの猛攻とバングレイの零距離ストーカービームの直撃により、気絶。大和を捕まえたバングレイは、 「巨大クジラちゃんと交換」と言い残して去って行き、飛び去る宇宙船視点のカットは、戦隊としてはちょっと珍しい映像で面白かったです。
 ジニスがバングレイの動きをチェックしているのを承知の上で、堂々とバングレイに協力して宇宙船で一緒に去って行くクバルは、 実はやっぱりジニスの忠実なコマでした、という可能性もありそうな雰囲気に。そうなると、その上で何を狙っているのか、 という事になりますが。まあこの辺り、ジニス様(というかナリア?) がどこまで地球のライブ映像をエアチェックしているのかは物語の都合でどうにでもなってしまう所ではありますが。
 次回――ストーカー最期の日(仮)。しかし、予告映像は、実に堂々と見せてくるなぁ(笑)  やたらに大和くんが念入りに緊縛されているのは、今週の展開と繋がってきたりするのか。

◆第35話「ジュウオウジャー最後の日」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 念入りに鎖で繋いだ大和をいたぶり、変態ロードをまっしぐらに突き進むバングレイは、大和とキューブホエールを交換する時間と場所をセラ達に連絡。 その上で大和には、揃った仲間達を上空からのビーム攻撃で綺麗さっぱり消し炭にしてやる、と邪悪に宣告する。
 「言ったろう? 俺はおまえの信じる繋がりが切れて、絶望する姿が見たいんだって。おまえの仲間は助けに来るだろうなぁ。 なんたって、繋がってる大事な仲間だもんなぁ。ははははは」
 「そんな……みんな、俺のせいで……」
 一方5人は、どうせバングレイが素直に人質交換をするとは思えないのだから、 クジラは置いたまま力尽くで大和を取り出そうと覚悟を決めるが、話を聞いていたクジラが脱走してしまい、捕虫網で確保。
 「何してんのあんた!」
 「こんな時に勝手な事をするな」
 「俺は…………キューブホエールの気持ちがわかる。…………気がする」
 ホエールを責めるジューマンズに対し、さわおがホエールに共感を抱く、というのは実に巧く、 いきなり正面切っては別の意見を言えないので、体育座りで背中を向けながら呟く、というのも秀逸。
 「キューブホエールにとって大和は、現代で出来た、初めての仲間だ。もし置いていったとしても、きっと勝手に、後から来る。 だったら最初から! みんなで、力を合わせる事は出来ないか?」
 さわおの変な所に力の入った台詞回しも、他人に自分の意思を伝えるのが苦手なキャラクターを表現する為にかなり計算されているのだと見えてきて、つくづく感心。
 「大和くんは絶対、連れてくるなって、思ってるよね……」
 「だろうな」
 「俺でも言うぜ」
 「でも! 大和、言ってた……」
 前回の大和の、今ホエールを守れるなら後で嫌われても構わない、という言葉を思い出すセラ。
 「もし、大和が怒っても、大和を助けられるなら……」
 コミュニケーション方法に関する疑問という方向には進みませんでしたが、前回印象的な表情で描いていたセラも拾って、 手抜かりのない作り。
 またこの状況(囚われの大和をジューマンズ&さわおが救出しようとする)自体が、1クール目の山だったギフト回を裏返しており、 ジューマン達の「うちに帰る時間」を守る為に、ある意味で仲間を裏切って一人で戦いに赴いた大和を、今度は皆が裏切って助けに行く、 という構図になっているとも見えます。
 決意を新たにした5人はホエールと共に指定された場所へと向かい、そこでは大和が、 鎖で縛られた上に猿ぐつわまでかまされて大変念入りに拘束されていた。
 ……なんか不意に、こういう展開で敵にいきなり空襲ぶちかました戦隊があった事を思い出してしまいました(笑)
 「知ってるか? 約束ってのは、破る為にあるんだぜ」
 ホエールを手に入れたバングレイは大和を返す事を拒否し、ここで、声の出せない大和が視線で上空に注意を向けようとしているのが細かい。
 台詞から一瞬、上空の宇宙船で待機していたクバルが約束を破ってバングレイを砲撃、という展開も頭をよぎったのですが、 クバルは真面目にジュウオウジャーを標的とし、ビーム攻撃で消し飛ぶ5人。
 「どうだ、風切大和。てめぇのせいで仲間を皆殺しにされた気分は。その顔、もっとよーく見せろよ」
 「あぁぁ! あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 「ははははははははは、いいじゃん、バリバリ最高じゃん! てめぇの繋がりが招いた悲劇に、絶望した顔だ! はははははははは!  心配ねぇ。すぐ後を追わせてやるぜ」
 だがその時、背後の崖をキューブモグラで突き破って、不意打ちを仕掛けた仲間達が大和とホエールの奪還に成功。 クジラはすかさず巨大化すると宇宙船とバトルに入り、死んだ魚のような目になっていた大和が、 無事な皆の姿を見てすぐに喜ぶのではなく、しばらく呆けた表情を見せるというのがまた秀逸。
 「みんな……」
 「うがぁぁぁ! いったいどうなってやがる?!」
 「おまえ! 大和にしつこく、嫌がらせしていただろう!」
 全くその通りなんですが、妙に面白い台詞に(笑)
 「大和くんの目の前で、私たちも皆殺しにしたら……大和くんすっっっごい苦しむぞ、て考えそうだなって」
 「来てみたらクバル居ないし。……だからずっと、警戒してたの!」
 高空からの砲撃を受けた5人は、咄嗟にキューブモグラを使って地中に回避し、背後に回り込んでいたのである。
 「良かった……。…………俺、みんなに死なれたら俺……良かった……」
 泣きの芝居もばっちり入れ、感極まって立ち上がった大和はレオの胸に飛び込み、 まあ位置的に真ん中の人に飛びついた形ではありますが、勢いでも女子には抱きつけないし、 タスクorさわおに抱きつくのはどこか躊躇するものがあるしで、こんな時でも真人間の大和くんらしいチョイス(笑)
 「大和こそ、無事で良かった」
 「大丈夫。私たちは簡単に死なないよ」
 「大和が繋げた仲間だ」
 「あたし達が力合わせたら最強」
 「ああ。気合い入れ直せ大和! バングレイを倒すぞ。今度は俺等……全員でなぁ!」
 「ああ」
 揃った6人はバングレイに向き直り、一転、据わった目で一歩踏み出す大和。
 「へ! また繋がりか。弱い奴ほど群れたがる」
 「うるさい! 動物が群れを作るのはな、大事な仲間とみんなで、生き抜く為だ!! ……俺も戦い抜く。 この仲間達と一緒に!」
 仲間の意味を示す定番のテーゼを、作品の個性としっかり繋げて綺麗な決め台詞に持ち込み、今回も山場の風切大和に外れなし。
 勿論、撮影現場では通しで撮っているわけでもなければ順番に演じているとも限りませんが、大和くんはこの数分間の中で、 絶望→呆然→感涙→歓喜→激怒、と目まぐるしい感情の動きを、必ずしも全てフルオープンではない演技で見せており、実に良い芝居。
 戦隊やライダーの場合、脚本や演出で役者を育てていく部分が強いわけですが、中尾暢樹(大和)なら演じきれる、 という三十数話の中で重ねてきたスタッフからの信頼感が見えて、お盆回(第24話)に引き続き、見事に物語を引き上げてくれました。
 また、やはり大和くんは本気で怒ると、「だ」とか「は」とかいう言い回しになるのが、 良いアクセントになっています。

「「「「「「本能覚醒!!」」」」」」
「動物戦隊」
「「「「「「ジュウオウジャー!!!」」」」」」


 「そんなに言うなら……群れごとぶっ殺してやるよ!」
 「俺の仲間を、舐めるなよ」
 揃い踏みの所でイントロから主題歌が始まり、バングレイがメーバを繰り出して戦闘に。 ジュウオウ番長とシャドウゴリラの柔剛対決は絵的に面白かったので、「こっちは頼む!」とあっさり譲ってしまってちょっと残念(笑)
 シャドウゴリラは、サワオスローによる打ち上げからジューマンズの一斉射撃で撃破し、宇宙船はクジラミサイルで吹き飛んで、 クバルは脱出。
 「バングレイ! 後はお前だ!」
 「やれるもんならやってみな!」
 ゴリラをあっさり5人に任せてしまい、一騎打ちで番長無双になるのは最近の『ジュウオウジャー』の流れではあるけど、 ここでそれは嫌かなぁと不安がよぎったのですが、クジラを倒したメンバーが参戦し、しっかりと、「全員で倒す」構図に。
 次々と切りかかるジューマンズ
 ↓
 バングレイの範囲攻撃を受けるがこらえる
 ↓
 バックの主題歌「百獣の王者!」
 ↓
 煙の中から飛び出して「野生解放!」
 というのは、素晴らしく格好良かったです。
 エレファントステップから、ライオン・タイガー・シャークが次々と必殺攻撃を浴びせ、 足の止まったバングレイをサワオスローした所に、番長キックが直撃。ここだけちょっと仮面ライダーになってしまいましたが、 ホエール丸太を投げつけるのはどうかという判断だったのか(笑)
 回が進むごとにジューマンズの戦力面での不遇な扱いが気になっていた今作ですが、終盤へ向けての一山となる所で、 戦隊らしい連携バトルを綺麗に決めてきました。
 盛大に吹き飛んだバングレイは近づいてきたクバルに手助けを要求するが、クバルはバングレイの右手を切り落とす!
 「てめぇ?!」
 「おや? まさか、いつまでも私が手を貸すと? あり得ないでしょう。奴等の言葉を借りるなら……私とあなたに、 仲間の繋がりなんて、無いのですから」
 バングレイとクバルがお互いを利用し合う関係なのは明白として、 このままバングレイに退場されるとクバルがただ働きになってしまう点をどうするのかと思っていたら、クバルはバングレイの右手を確保。 本体抜きでリーディング能力が発動できるのかはわかりませんが、クバルのテクノロジーなら何とでもなりそうで、面白い布石に。
 基本、一つの伏線を明かすとそれが次の伏線に繋がる、というのを丁寧にやっている今作らしく、 キャラクターの退場もしっかりと次の展開に繋げてきて、ポイ捨て感が無いのが良い所。
 バングレイは失った右手の先に錨を接続してジュウオウジャーに襲いかかるが、「みんなで行くぞ」と、 ここで満を持して番長キャノンを全員で使用。後半の必殺武器を個人で使用してしまう事には不満があったのですが、 物語の中で全員で使用する流れに意味を持たせ、番長周りのちょっとした不満点を全てジュウオウジャーの更なる団結に繋げてくるという作劇に、 脱帽する他ありません(^^;
 まあ次回、しれっと一人で撃つ可能性もありますが(笑)
 演出としても、初使用時が月の表面を削るという派手なものだったのですが、 今回は全員のジューマンパワーを結集する事で太陽系規模のエフェクトが入り、 映像でわかりやすくパワーアップが表現されているのも良い所。バングレイが海の仮想空間に引きずり込まれるのは謎でしたが、 地球パワーの象徴が「水の惑星」という事でしょうか?
 最大出力の番長キャノンを受けて倒れるバングレイだが、 クバルが餞別という名の厭味で残していった芋ようかん……じゃなかったコンティニューメダルを喰らう事で自ら巨大化。
 「まだだ……伝説の獲物、狩らずに死ねるかぁ!!」
 それに対して、またも謎のメール受信から史上最大規模の火の輪が浮かび上がり、 ホエールを含めた全キューブアニマルが一斉にくぐり抜ける事で、今こそ超動物合体!
 「「「「「「完成! ワイルドトウサイドデカキング」」」」」」
 人を騙すとか誤魔化すとかが苦手なメンバーが揃っているジュウオウジャーですが、あなた方、 ロボットの名前ぐらいはもう少しひねってもいいんですよ?!
 14体合体にして名前総数14文字のワイルドトウサイドデカキングは、右足が1234縦積み、左足が5678縦積みという、 凄くわかりやすいけど、史上空前の脚部(笑) 一方で、9が割れて10の中に収まるのは面白かっただけに、 頭部が亜空間から発生してしまったのはちょっと残念。
 まあ元々、ジュウオウキングの芯からして突然飛んで来る仕様ではあるのですが、今作この、謎の電波でロボット合体、 どこからともなくパーツが飛来、という点に劇中で理屈付けできれば更に完成度が上がるのですが、さてそこまで詰め切れるか。
 「俺達は負けない!」
 「確かにあんたは一人でも強い!」
 「でも今より強くはなれない!」
 「このワイルドトウサイドデカキングは、地球のパワーの結晶と!」
 「6人の王者の集まりだ!」
 「一人じゃ出来なかった事が、みんなとなら出来る!」
 サワオの言葉の凄まじい重さが、定番のヒーロー台詞に今作ならではの説得力を上乗せしており、 今作における追加戦士としてのサワオの填め込み方は、本当にレベルが高い。
 ワイ(中略)キングのオーラ攻撃・ジュウオウドデカショットに耐えるバングレイだが、ジュウオウジャーは更に追い打ち。
 「これで最後だバングレイ! 俺達の繋がりは――」
 「「「「「「おまえなんかに壊せない!!」」」」」」
 ワイルド(以下略)の足下から柱がニョキニョキと伸び、竹馬状態で放たれる百獣乱舞・ジュウオウドデカダイナマイトストリーム (19文字)が炸裂し、遂にバングレイを粉砕。
 「俺の獲物が! 俺の夢がぁぁぁ!!」
 デスガリアンとは別勢力ながら、悪役としての性質はデスガリアンに重ねられていたバングレイですが、その最期の言葉も、 自分の身勝手なロマンの為に他者を踏みにじってきた悪、として貫かれて決着。
 登場当初は、アザルドとの色被りと雑な性格から数話で退場するのかと思っていたのですが、デスガリアンをかき乱し、 SPコラボ編の仇役となり、3号ロボの引き金に留まらず全合体ロボの踏み台にまでなる、という想像を超える活躍ぶり。 巨獣ハンターとしてのクジラへの執着と、アンチ大和としての粘着が今回しっかり融合し、最終的に倒し甲斐のある良い悪役になりました。 神奈延年さんの演技も凄く嫌らしくて良かったです。
 例年のパターンなら最強ロボと思われる(前略)キングは、パーツ構造の都合による太い上半身と細い下半身の歪さを、 比較的格好良い顔をつけて誤魔化した感じ(笑) やたら股下長いですが、日下さん(?)、どうやって入ってるんだこれ。 右腕がキャノンで左腕がドリルという、戦う為だけに生まれた感じが潔いですが、『ジュウオウジャー』ロボの行き着いた先としては、 足から溢れるキューブ感は割と好き。
 かくして散々引っかき回してくれた宇宙ストーカーを撃破した帰路、不意に足を止めた大和は、仲間達に感謝を告げる。
 「ありがとう。あの時、一瞬、絶望したんだ……。俺のせいでみんな! 殺されたんだって思って! ……生きていてくれたから、 救われたんだ」
 そんな大和に駆け寄り、肩を抱くレオ。
 「……大和! 後悔すんなよ。――俺等と繋がった事」
 後ろから手を添えるセラ。
 「後悔されたら、あたし達がさみしいじゃん」
 それぞれ、大和に触れる仲間達……。
 今回、“繋がっているからこそ失われる”という絶望を改めてバングレイが突きつけてくる事で、 繋がりと喪失の表裏一体が描かれた上で、でも、繋がった事を後悔してほしくないというのは、 大和が幻の母と再会する第24話も踏まえての、今作最終盤に向けた大きな布石だと思われ、 ニンゲンとジューマンが出会って生まれた群れに何が待ち受けるのか、様々な想像をかき立て、震えるラストでした。
 まあ勝手に重く受け止めているのですが、レオの台詞はかなり狙った仕込みであろうと、期待も込めて。
 全合体ロボのお披露目に、アンチ大和としてバングレイがぶつけてくる悪意を全員で乗り越える姿を見事に重ね、 単独のエピソードとしてもシリーズ全体の構成としても、非常に良かったです。途中で2000回SPの経由までしつつ、 上げたハードルを見事に越えてきて、ぐぅの音も出ません。
 メインライターとして十全の筆を振るう香村さんもお見事なら、今回、加藤監督の演出も非常に素晴らしい冴え。 ハッタリの効くシーン以外でも、手抜かりなく細かい描写が行き届いて全体の盛り上がりに繋げ、 個人的にこれまで見た加藤監督の演出エピソードで最高傑作かも。
 次回――ハロウィンでタスクが王子様?! 戦隊で季節ネタとしてハロウィンが持ち込まれるのって、初でしょうか……? 予告で、 女装ミニスカのレオが、スカートの前を押さえながらジャンプしているのが奥ゆかしい(笑)

◆第36話「ハロウィンの王子様」◆ (監督:加藤弘之 脚本:田中仁)
 サンバ怪人がカーニバルで、実質的に『ジュウオウジャー』vs『キョウリュウジャー』(おぃ)
 巨獣ストーカーを撃破し、一息ついたジュウオウジャー。ジューマンズはハロウィンの賑わいに興味を持ち、 皆で仮装をしてみようという事になり……戦隊シリーズで“季節ネタとしてハロウィンがエピソードに持ち込まれる” というのは初でしょうか……? 物凄い山場の後に日付ドンピシャで閑話休題エピソードとなりましたが、 いつからどこまで計算していたのやら。
 なお大和くんのカボチャの被り物が、前作レッドが一番輝いていたコスプレと被り気味で、思い出さずにはいられません(笑)
 その頃、毎日がカーニバルのデスガリアンでは、改めてブラッドゲームが再開。 チームアザルドから新たなプレイヤーが送り込まれる一方で、クバルは自らの右腕を見つめてほくそ笑んでいた……なんとクバルは、 バングレイの右手を自らの右腕に移植していたのである!
 どうするのかと思われたバングレイの右手を、アイテム化するのではなく合体してしまう、というのは驚きのネタ。
 映像的にわかりやすくする為、前回の回想シーンを挟んでクバルの右手の変化を示すのも綺麗にはまりましたが、改めて前回の、 手を貸せと手を出したら手を切られたは意図した以上の面白展開(笑)
 外出ついでにアムに買い出しを要求されたタスクは、前日サンバ怪人から助けた少女・真美と再会。
 「昨日から探してたんです! 真美の、新しい王子様! もう、離さないんだから〜」
 事案発生で、遠くから響いてくるサイレンの演出が酷い(笑)
 理想の王子様として真美に腕にかぶりつかれたタスクは、戸籍とか身許引受人とか社会的に色々まずいのでやむなく真美を森家へ連れ帰る羽目になり、 約一名除いて、他人事モードの仲間達。
 「その子は……タスクの……彼女なのか……?」
 「はい!」
 「……タスクが……遠い、所へ……行ってしまった」
 色々な意味でな!
 人としてのレベル差を見せつけられたさわおがどっぷり落ち込む一方、恋に恋する女の子が可愛いーと二人を微笑ましく見つめる女性陣だったが、 「それより王子様、お菓子は?」というアムの発言が、少女の中の女を刺激。
 本能覚醒!
 「真美の王子様にちょっかい出さないで下さい!」
 「え?」
 「あなたは? 王子様の何なの?」
 「タスクくんとは……幼なじみみたいな感じ」
 やたら長い間が空いたのですが、「友達」ではないのか(笑)
 「負けられない……」
 そこにマリオが帰宅し、セラが妙なボールを投げた事で、タスクとアムが付き合っているという誤解が広がるが二人は全力で否定。 今回良かった点は、予告はそれっぽく編集していましたが、終始アムが、タスクを男として眼中にない事(笑)  この辺り、ジューマンの種族問題という謎の要素もありますが、とりあえずそれは置いておくとして、 第36話にもなって積み重ねの無いラブコメ要素を安易に付け足さなかったのはホッとしました(前半ならまた別ですが)。
 「女の子を舐めるなよ? 小さくてもレディなんだから、きちんと向き合って答えてあげて」
 「ハロウィンが終わるまでには、きちんと伝えるよ」
 一行は仮装に身を包んでハロウィンを楽しむが、タスクと二人きりになろうとした真美は間違ってアムの手を引いて広場を離れてしまい、 そんなタイミングで広場に再びサンバ怪人が出現。
 「守られるのもいいけど、王子様のピンチを救うお姫様も、格好いいと思わない?」
 踊ると周囲に火柱が吹き上がるサンバ怪人の能力に苦戦するジュウオウジャーだったが、 アムが合流してエレファントと華麗なコンビネーション攻撃を浴びせて形勢逆転すると、みんな一緒のファイナル番長キャノンで撃破。 巨大化後は、前略キングの百獣乱舞でざくっと撃破。
 戦い終わり、真美にしっかりお断りを伝えようとするタスクだったが、走り寄ってきた真美は、アムの胸にダイブ。
 「アム王子様!」
 かくしてまたも、タスクのプライドはズタズタに引き裂かれてゲシゲシと踏みつけられてボロボロになって都会の冷たい風にさらされるのであった……。
 一山越えたタイミングの季節ネタで如何にもな閑話休題ではあったのですが、王子様がタスクからアムにすり替わっただけで真美の王子様願望に特に変化がもたらされるわけでなく、 お姫様になりたい少女がアムの薫陶を受けてちやほやされるだけの女の子から男を積極的に転がす女に脱皮するわけでもなく、 冒頭で真美に弄ばれて捨てられた少年が特に拾われる事もなく、破綻はしなかったけど跳ねもせず、率直に、 毒にも薬にもならなかったエピソード(^^;
 前回あまりに盛り上げすぎたというのはありますし、次回の鳥男登場にパイロット版監督を合わせる為か、 3連投になった加藤監督も出し殻気味な感じでしたが、脚本が手癖だけで書いてしまったみたいな話で、もう一歩二歩、 踏み込みが欲しかったです。
 というわけで次回――、一山越えたら早くも次の山?! 鳥だ! ゴリラだ! 新戦士に新メカだ?!
 でもその前に、駅伝だ!
 今季これで3回目のお休みですが、例年どんな感じだっけと思ってとりあえず過去2年を確認してみた所、 『烈車戦隊トッキュウジャー』(3回休み+合体SP1回で、全47話)・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』 (放映1週遅れ+3回休み+合体SP1回で、全47話)だったので、大体こんな感じの模様。
 ……いやもう今作、あと心配しているのは、最終盤でもう1話欲しかった! みたいになる事ぐらいなので。

→〔その7へ続く〕

(2019年8月15日)

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