■『動物戦隊ジュウオウジャー』感想まとめ4■


“サバンナの王者、ジュウオウライオン!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『動物戦隊ジュウオウジャー』 感想の、まとめ4(19話〜24話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第19話「信じるのは誰」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 ジュウオウイーグルにトドメを刺す直前、不意に苦しみだしたザワールドはニンゲンの姿となり、その苦悶の表情を目にする大和。 だが痩せ細った男はナリアによってデスガリアン基地へと回収され、ジニスによって再調整を受ける事に。
 「大丈夫。私に任せておけばいい。私は君の事なら全てわかっている。私は君の味方だ。君はただ、私を信じていればいい。 ふふふはははははは」
 回収の際に一撃でサワオ中身を気絶させているナリアは、この後の戦闘シーンでは再びヌンチャクを振り回し、 どんどん肉体派になっていきます(笑) 検査機を兼ねていた筈のヌンチャクは、 もう完全に基本装備という事でいいのか。
 一方、大和はサワオを単純に敵とは思えなくなっていた。
 「……ザワールドを、助けられないかな」
 「は? 冗談だろおい?!」
 「あたし達の事、ぼっこぼこにした奴だよ?!」
 「あの時の顔……凄く辛そうで……泣きそうで、もしかして、俺にトドメ刺したくなかったのかな、って。だとしたら、 あの人だけでも!」
 「大和くん、気持ちはわかるけど……」
 「俺らにとっちゃ、超やべぇ敵としか思えねぇ」
 ここで全員があっさり右にならえするのではなく、サワオの中身を見た大和と、見ていない4人の温度差をしっかり描くのが、 今作の堅実かつ手抜かりのない所で、個々のキャラクターがきっちりと活きています。
 デスガリアンではサワオに苛立つアザルドがボウリング怪人を地上に放ち、ピンに見立てられて吹っ飛ぶ人々。 吹っ飛び方からとても無事に済むとは思えず、相変わらずさらっと被害を出す戦隊です。
 ジュウオウジャーの前には調整を追えたサワオが再び立ちはだかり、オオカミモードで5人を叩きのめすが、 大和は敢えて変身を解いて、サワオを説得しようとする。
 「俺は君とは戦いたくない!」
 だがサワオは大和の言葉には一切耳を傾けず、強力な蹴りを放ち、銃を突きつける。
 「それでも……やっぱり俺は助けたいんだ!」
 気絶した大和を助ける為に白が割って入る→青が大和の身柄を確保→エレファント目くらましで脱出、 という連携アクションはスピーディで格好良かったです。
 大和は家で治療を受け、ジューマン4人はマリオから、大和が以前にも暴れ馬を取り押さえようとして大怪我を負った話を聞く。
 「「またか」か……」
 「ん?」
 「ラリーさんの心の傷を癒やしたのは、大和くんの一途な熱意だったなーって」
 「……そういえば、タスクをここに連れてきたのも」
 「それを言うなら君達も同じじゃないか!」
 体も、心も、自ら傷む事を恐れずに、大事なものの為に常に手を伸ばしてきた風切大和…… 4人はその真っ直ぐな想いに助けられてきた事を思い出し、翌朝――目を覚ました大和を待ち構える。
 「あたし達、お話があります」
 今回の、妙に好きな台詞(笑)
 「……ごめん! 昨日は無茶しすぎました! でも俺――」
 思わず丁寧語になる大和だったが、その時、白い小悪魔の《唇タッチ》が発動した! 大和は硬直した!
 「どうしても、ザワールドを助けたい。でしょ?」
 「あいつを救えるかどうかは僕たちにもわからない。でも……君が信じるなら、僕たちも信じる」
 「乗っかってやるよ、おまえの賭けに」
 「一人で無茶されるより、よっっぽどマシ」
 「みんな……ありがとう」
 大和を信じ、サワオを助ける――心を一つにする5人だが、再びボウリング怪人が出現。
 アザルドはサワオの乱入を拒むも、ジュウオウジャーはボウリング怪人を撃破し、コンティニュー。
巨大戦で追い詰めた所で今度こそサワオが出撃し、トウサイジュウオウvsワイルドキングに。今回も苦戦するワイルドキングだったが、 突然、マサカリが、パンダに、そして金色に。
 サワオ含めて皆が仰天している間に、勢いでトウサイジュウオウにダメージを与えるパンダ。
 「パンダつよっ!」
 「でもなんでいきなりピカピカパンダさんに?」
 「ん? 根性見せてくれたって事だろっ」
 物凄く強引に販促キャンペーンネタを突っ込んできましたが、後年に見ると意味不明になりそうです(^^;
 もはやパンダに操られている感のあるワイルドキングは猛然とサワオロボに連続攻撃を浴びせ、 その隙にコックピットに突入したイーグルはサワオを外へ引きずり出すと、押して押して押しまくる。
 「ジニスの望みなんて、君には関係ないだろ!」
 「ジニス様は俺の理解者だ。俺の、全てを、わかっている!」
 説得ロールに精神抵抗したサワオの攻撃を受けて変身が解ける大和だが、それでもまだ、諦めない。
 「やっぱり、ジニスはわかってないよ……」
 「なに?」
 「だって、君にこんな酷い事させてる」
 大和はジニス/ザワールドの望みである「暴力」そのものを否定し、その事に激しく動揺するサワオ。
 「俺達は君が誰なのか、本当はどんなやつなのか全然知らない! でもこれだけはわかる! 本当の君は、 俺達と戦いたいなんて思ってない。それだけは絶対に信じられる! 俺達は君を信じる!!」
 ……これはあれだ、ザワールドへのロイスをタイタスにして起き上がった後に、ザワールドの中の人をロイスにしたんだ (突然の『ダブルクロス』解釈)。
 サブタイトルは「信じるのは誰」でしたが、ここで、ジニスの「私を信じろ」に対するのが、「君を信じる」だったのは面白かった所。 冒頭で如何にも悪魔の囁きめいていたジニス様のイメージ映像がサワオの心象風景の中に浮かび上がる一方で、 大和の声もサワオを揺らし、脳内天使と悪魔の綱引きのような映像も面白く、つまり、大和くんは天使。
 エンジェル大和の「君を信じる」、すなわち、暴力を肯定しない「君を信じろ」 という言葉に自分自身を取り戻したサワオは絶叫と共に体内のジニスメダルを吐き出すと、近づいてきたナリアに一蹴り入れ、訣別を宣言。
 「俺はもう、おまえらには従わない」
 ジニスの言葉でナリアは引き下がり、狂戦士ザワールドは今、デスガリアンの呪縛を逃れるのであった。
 「「初めまして」なのかな。俺は、風切大和。君の名前は?」
 「門藤……操だ」
 本名「サワオ」だったらどうしようかと思っていたのですが、「ミサオ」でした。
 ミソサザイ! サバ! オカピ! ミ・ミ・ミサオー! ミ・ミ・ミサオー!
 (そろそろ離れなさい)
 しかしジニス様のサワオ修理シーンがセルメダル投入に見えたのは私だけではないと思いたい。
 実にバイオレンスな見た目から、もう少し引っかき回すかと思われたサワオですが、大和くんの攻撃力が高すぎて、 3話で陥落してしまいました。恐るべし、エンジェル大和の《貫通説得》(※どんな心の装甲も無効化)。
 サワオが正気に戻る際に、黒いオーラと共に大量のメダルが噴き出したので、弱体化するとしたら、 この辺りが理由付けにされそうでしょうか。今のまますんなりパーティインだと、パワーバランス悪すぎますし (逆にジューマン4人のパワーアップ展開で全体を底上げしてくるかもですが)。
 サワオロボvsワイルドキングも、パイロットが一人しか居ないという弱点を突いての奇策でドローに持ち込んだり、 戦力ヒエラルキーの描写には気を遣っている様子なので、上手い調整には期待したいです。
 一種の洗脳状態とおぼしきサワオに自我を取り戻させるアプローチが「君を信じる」というのは面白かったのですが、 少々引っかかったのは、ここでサワオの事を何も知らない大和が何を信じているかというと、 好んで他者の命を傷つけるものは居ない、という“善”を信じているという事。
 結果として、サワオの中の善がジニスという悪に打ち勝ち、その土台には信じ合う命の繋がりがある、 という形で綺麗に収まってはいるのですが、この台詞に至る大和の積み上げ、というのはこれまでの物語ではやや足りなかったように思えます。
 大和が今回口にした善への信頼が何かというと、 遊戯として好んで他者の命を傷つけるデスガリアンに対するカウンターの思想なわけですが、 それが大和の積み重ねから出てきた自然な言葉というよりも、デスガリアンに対するカウンターとして置く必要性ありき、 という構造的な事情優先に見えてしまったのは残念。
 その点、ギフト編ほどの爆発力を埋めず、少々物足りなく感じてしまいました。
 次回、二大幹部揃って出張から新戦士覚醒、という盛り上がりそうな展開の中でサワオの人となりが見えてきそうなので、 どういう位置づけに収まるのか、大和の言葉とどう繋がっていくのか、物語としての融合と一跳ねを期待したいです。 ……それにしても今回地味に生き残ったボウリングに、登場の余地はあるのか。

◆第20話「世界の王者」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 「サイの意見を、採用した」
 まさか20分積み重ねて、こんな1発ネタをぶち込んでくるとは……!!(笑)
 ジニスの呪縛を脱するも、ジューマン4人の姿に極度に怯えたさわおは、大和の家で半裸体育座り。
 「おまえ達の事情を聞いて、確信した。俺には……服を貸してもらう資格なんか、ない」
 自分の意思でないとはいえサイ男・ワニ男・オオカミ男のジューマンパワーを奪ってしまった事を気に病むさわおは、 やたら大仰なポーズで自分を責めると、大和達の善意を受けるに値しない路傍に吐き捨てられたガムのような存在で生まれてすみません、 と自らを卑下し、ありとあらゆる事に自虐的な反応を見せる。
 「俺には、ご飯を食べさせてもらう資格は……ない」
 芝居がかった身振りと言動、果てしない自分浸り、強固すぎるマイワールド……えーとこれ、 凄くネガティブな虹野明(トッキュウ6号)では(笑) トッキュウ6号の登場編は今回と同じ中澤監督で、 本人の深刻な罪の意識を外から見るといっそギャグめいた形で描き、周囲にツッコませる事で雰囲気を軽くする、 という手法も同様なのですが、意識的にやったのかしら。
 まあ、明が自分の“設定”にハマりこんでいたのに対し、さわおは天然物のようですが。
 そんなさわおを励まし、被害者として接する5人だが、さわおは突如、子供の頃から体が弱く、恥ずかしがり屋で気も弱く、 あだ名で呼んでくれるような友達も出来ず、という哀しい過去を告白。そこで何とか注目される為に強くなろうとしたのだが……
 「だがしかし! やっぱり孤独なままだった」
 そんな時、デスガリアンに捕まったさわおは、ジニスによってサワオに改造される事に。
 「抵抗、できなかった……」
 ザワールドは実質的に洗脳状態であったものの、さわお自身に元々強くなりたいという気持ちはあり、 そこをジニスにつけ込まれて肥大させられていた、という形で接続。
 苦悶するさわおの脳裏に浮かぶ、うらめしやジューマン3。
 「俺が、俺が彼らの命を奪ったんだ!」
 「「「「「いやいやいやいやいや」」」」」
 「君の思い込みだよ。ほら、うらめしや〜って完全に日本の文化でしょ」
 サイ・ワニ・オオカミに関しての5人の反応がやたら軽いのは、物凄く慌てている人をみるとかえって冷静になる、 みたいな効果なのか(勿論、さわおを責める気がない故に過剰に明るく接しているという面もあるでしょうが)。
 しかし罪の意識からパニックに陥ったさわおは逃げ出してしまい、追いかけた大和は、一夜明けて、ベンチで体育座りしている姿を発見。 コンビニで買った食べ物を手に近づく。
 「いや……俺にはこんなもの貰う資格は」
 「俺が買いすぎたの。食べるの手伝ってよ。ほら」
 傷ついた野生動物には、まず、餌付けから。
 一方、「壊れた玩具を、放っておくわけにはいかないだろう?」とジニスはクバルとアザルドにサワオの回収を指示し、 これに立ち向かったレオ達4人は完敗して捕らえられてしまう。クバルは戦うと案外格好いい系。
 「君の罪悪感、俺はちょっとわかるんだ」
 大和は自分がジューマンパワーを得た顛末をさわおに語る。
 「一緒に守ろうよ、この星を」
 「違う……おまえと俺とは違う。だって、鳥とゴリラは、自分の意思でパワーをくれたんだろう? でも、 サイとワニとオオカミは、無理矢理パワーを奪われたんだ。…………怖い! この体に、ジューマンパワーが流れてるのが怖いんだよ!」
 ここですんなり共感させるのではなく、自分の体に自分のものではないパワー(命)が宿っている、 という未知への恐怖――さわおにとっての真の恐怖は異形と化した自分自身である――を持ってきたのは、 大和とさわおの差異として面白かったです。
 その時、雰囲気ぶち壊しで鳴り響く陽気な着メロ。
 「ご機嫌よう、ジュウオウイーグル」
 「…………クバル!」
 ……大和くん、絶対、(え? 誰だっけこいつ? 詐欺?)って間があった。
 クバルはレオ達4人を人質に、ザワールドを連れてくるように要求。電話を切るタイミングでちょうど殴られたレオの叫びが入る辺りが、細かい。
 「俺を連れていけ! 俺なんかどうなったっていい!」
 「良くない!! 君がどうなってもいいなんて俺は思えない!」
 「何故だ……」
 「だって……君と俺はもう、繋がったんだから」
 ぎゅぃーーーんと上昇する、さわおのときめきゲージ。
 「大丈夫。みんなは俺が助ける。だから君は、逃げて」
 大和くんのそれは、ニンゲンの女子に発動してもらいたかったのに……! 野生にしか、効果を発揮しないのか。
 4人が捕らえられた倉庫に向かった大和は初手からゴリラで戦いに挑み、借りがあるとバトルに応じたアザルドは、 途中でクバルが乱入しても特に怒るわけでなく、クバルの攻撃でゴリラがよろけた所に横からヤクザキックを入れるなど、 余計な美学は無いただの喧嘩好きと判明。
 こっそりと大和の後をついてきたさわおはその光景に思い悩み、再び始まる脳内会話……前回のエンジェル大和と悪魔ジニスの囁きシーンは、 この為の伏線だったのか(笑)
 (だがしかし……俺にジューマンパワーを使う資格は……)
 「気にすんな。わりぃのは全部デスガリアンだ」
 「え? さっきと、言ってる事、違わないか……?」
 「ほら、俺達、おまえの妄想だから」
 断言した(笑)
 ……つまりこれがあれか、イマジナリーフレンドというやつか。
 友達いない歴=年齢という事なので、以前から壁に向かって話しかけがちな体質だったとは思われますが、もう一つの見方としては、3人のジューマンの命が体の中にある、という現状において、それを受け入れて精神の平衡を保つ為の安全弁でもあるのかもしれません。
 そう考えた場合、脳内ジューマン3は今後もちょくちょく出てきて、最終的に
 「「「もう、俺達が居なくてもおまえは大丈夫だ!(さむずあっぷ)」」」
 「サイ男、ワニ男、カミ男ー!!(涙)」
 みたいな感じで、浄化されてくれるといいなぁ(笑)
 「俺は……どうしたらいいんだ……?」
 「あんまり悩むなら……両方取っちゃえば?」
 デスガリアンをぶちのめせ派のワニ男(妄想)と罪を背負って苦しめ派のカミ男(妄想)が脳内で揉める中、 その折衷案を提案するサイ男(妄想)。
 さすがのゴリラもダブル幹部相手に変身解除に追い込まれたその時、脳内フレンズ会議が結論に達したさわおが、倉庫に立つ!
 「俺は決めた! この罪を、背負って戦う! 本能覚醒!! 今日から俺は…………ふむ……世界の王者、 ジュウオウザワールド!! ――この俺を、なめるなよ!」
 遠回りした末に結局、罪滅ぼしの為に戦うという着地になりましたが、しかるべき煩悶を、 脳内フレンズ会議というフィルターを用いる事で重くなりすぎないように描く、というのが狙いでしょうか。また、 脳内フレンズ会議という形の自問自答の結果には、異形と化した自分自身の肯定、というニュアンスも含むと思われます。
 なにはともあれ世界の王者として新生したサワオ改めジュウオウサワオは、赤と共にアザクバコンビと激突。
 ゴリラとワニでアザルドを壁に押しつけてのラッシュは格好良かったです。同僚の危機に背後からサワオに切りつけにいくクバルは、 せこいのか友情なのか。……この後、サワオエクストリームせいやーーーの盾にアザルドを使ったので、せこかった(笑)
 アザルドは15話ぶり2度目の大爆発も速攻で復活し、クバルともども撤退。そこに忘れ去られかけていたボウリング怪人が、 最初から巨大な姿で登場…………というか、一度コンティニューすると、標準サイズに戻れないのか?(^^;
 「そっか、まだあいつ居たんだ」
 「ザワールドが助けてたからな」
 「……ごめん。過去の俺が、余計な事を……」
 タスクの心ない一言に、壁に向かって体育座りするサワオ。
 「おまえメンタル弱すぎんだろ!」
 「ある意味図太い気もするけど……」
 セラ、多分、正解。
 「とりあえず、過去は忘れて。今、がんばろ。ね?」
 大和くんは完全に、手負いの野生動物を保護モード。
 「そうか……? そうだな! ――ここは、俺に任せろ」
 精神的にも肉体的にも立ち上がったサワオは、サワオロボを召喚。いちいち乗り換えながら3体のアニマルを操って戦闘機部隊を撃破すると、 動物合体してボウリングを圧倒的な力で撃破する。
 「おまえの世界は――ここで終わりだ!!」
 パーティインと共に弱体化が予想されたサワオですが、思いの外そのままの強さを発揮。レオ達が2人がかりで幹部に完敗したのに対し、 ゴリラ&サワオは見事な勝利を収めており、ジューマン4人の戦力ヒエラルキーが物凄い勢いで落ちていきます。これはさすがに、なんらかの強化展開が待っていると思いたいところ。
 「助けが必要な時は呼んでくれ。必ず駆けつける。それが、俺の罪滅ぼしだ」
 脳内妄想会議を乗り越え、デスガリアンと戦う事を決意したさわおは、5人に告げていずこともなく歩み去って行く……。
 「結局一人で行っちゃうんだ」
 「すぐには無理でも、ちょっとずつ仲良くなれるよ」
 「なれるかなぁ、お友達」
 その後ろ姿に、友達いない発言を思い出した大和は、しばし沈思黙考。
 「みっちゃん!」
 「「「「みっちゃん?」」」」
 「今度、みんなで、ご飯食べようね!」
 驚愕の展開に心の針が振り切れ、ダッシュで戻ってくる野生動物。
 「いつ?! いつ行くんだご飯?!」
 食らいつかれた大和くん、超目が泳ぐ。
 「なんだ…………社交辞令か」
 色々あった今回ですが、コミュニケーション能力高い人の軽い気持ちの一言が、相手によっては物凄く重い時があるんだよ!  というここが一番面白かったです(笑)
 圧倒的な対野生攻撃力を誇る風切大和にも、失敗はあるのだ。
 「マジめんどくせぇ」
 さすがに空間に限度がある為か、5人目の居候にはならなかったさわおですが、 住まいに帰るわけでもなくサバイバル生活に突入しているのは、デスガリアンに狙われる身なので周囲を巻き込まないように……と、 一応考えているという事でしょうか。
 「楽しみだなぁ……」
 川に釣り糸を垂らしながら、ジューマン達のぬいぐるみを手作りするさわお。……待てさわお、 そっちはどん引きルートだ!
 ここまでの流れからシリアスに行くのを期待させておいて、かなりコミカルに寄せるという予想外の展開。 面白いか面白くないかで言えば面白かったのですが、何だか凄く、眩惑された気分があります(^^; 表向き明るいけど、 こっそり特大の時限爆弾とか仕掛けられているのではないか、今回。……今後の展開次第では、 作品全体の流れを変えたエピソードになる可能性もありますが。
 あだ名、という形で名付け――仲間入りのイニシエーションを行うのを、キャラクターの設定からしっかり繋げたのは、地味に秀逸。
 さわお自体は、人付き合いには問題が多々あるけれど別に孤独を愛してはいない、という事で、既存5人とは絡めやすそう。 物語が「さわお真人間化計画」になりそうですが、面白く転がってくれる事を期待。
 で、予告で印象的だったグラスパリーンが本編ではカットされた為(物語としては無い事になった為)、 ジニス様をどう捉えていいのかは、またちょっと難しくなってしまいました(^^; まあ、予告のワンカットだけでは、 “何に対するリアクションなのか”を確定できないので、
 「馬鹿な……イギリスがEU離脱だと?!」
 (ユーロ溶かした)
 「馬鹿な……マリアライトだと?!」
 (ドゥラメンテ頭で溶かした)
 「馬鹿な……はーちゃんがプリキュアだと?!」
 (補習メイツ押しだった)
 など様々な可能性があり、見なかった事にするしかないでしょうが。
 キャラクターの肉付けとして、有ると無いとではだいぶ印象が変わってくるシーンを、予告にだけ残した、 というのはちょっと中途半端な事をした感はあり。早めに改めて、サワオ離脱に対するリアクションは確定してほしい所です。
 次回、セラとタスク、ようやく夏服。そして面倒くさいブラザーズ結成?!

◆第21話「プリズン・ブレイク」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 OPにサワオ追加。基本、釣り人属性のようで、“渓流の王者”みたいな。
 「ジニスの支配から逃れたザワールドこと門藤操は、大和達ジュウオウジャーと共に戦う事を決めた。 ――ところが! 素の操はだいぶめんどくさいやつだった」
 ナレーションいきなり、メタな頭部死球を投げてくる。
 サワオのHPがいきなりレッドゾーンだ!
 アバンタイトルから霊体がダラダラ出血状態のさわおは、大和に借りた服を返しに背広姿で森家を訪れ、お中元を手渡すなど、 開幕からフルスロットル。前回のオチで見せた手作りぬいぐるみは意外と好評を得るのですが、「ジューマンに対する恐れを払拭すべく、 一針一針、思いを込めた」……って、後で悪夢とか見ないか。
 そんな中、サワオの装備に関して矢継ぎ早に質問を浴びせるタスクだが、完成品を渡されただけで詳細を知らないさわおは 「俺は役立たずだ……やはり、仲間になる資格など……ない」とネガティブモードに突入してしまい、すみっこで体育座り。 タイミング悪くチームアザルドの鉄鎖怪人がゲームを開始し、仕方なくレオがさわを背負って現場へ向かう事に。
 ……いや、全然、背負って持っていく必要なかったと思うのですが(笑)
 …………まあ、ここで放置していくと、傷心旅行に出て帰ってこない可能性はありますが。
 戦いの最中、面倒くさくなったレオがさわおを放り捨て、それをかばったエレファントともども、 鉄鎖怪人の能力で地下洞穴へと連れ去られてしまう。一人で出口を探しに向かったタスクは鎖怪人に敗れ、それを発見する操。
 「俺が、おまえを一人で行かせたから……」
 「あーもういい加減にしろ! そうやってなんでもかんでも落ち込むから事態が無駄に悪化したんだ。 君が本当に反省すべきは君のその性格だ! ……悪い、言い過ぎた。駄目だな、僕は……」
 操を叱責したタスクだが、我が身を振り返り、勢い余って何かと他人を強く責めてしまう自分を反省。
 ……まあタスクの場合、“言動がきつい”よりも、“不用意発言が多い”(配慮が足りない)事の方が問題な気がするわけですが、 そこまで修正するにはLVが低すぎるので、まずは経験値稼ぎから始めよう。
 ジューランドでの回想シーンが入り、警備中にあくびをしたレオに「仕事に影響するほど夜遊びをするな!」 と説教しては必要以上に反発を買い、槍にリボンをつけたアムに「武器を可愛くする必要はないだろ!」 と小言を言っては「可愛くても性能には問題ないよ?」と穂先を突きつけられ、人生が大ピンチに。
 「どうして僕がキレられるんだ。悪いのは向こうだ!」
 「あんたが間違ってるとは思わないけどさ。もうちょっと……言い方とか考えた方がいいんじゃない」
 どうにもセラは崩しにくいようですが、ここは思い切って、セラにも何かしら突っかかって欲しかった所。 崩せない割にはそこまで強キャラではない、とどうも中途半端になっている感があります。
 「わかってはいるんだ。でも、なかなか直らない……」
 タスクのこの、もっと器用にやりたいけど思うようにならない……というのはホント、役者さんとのシンクロを感じます(^^;  スタッフの方が上手く、タスクのキャラクターを修正・誘導したというか。
 自虐モードに入ったタスクの姿に、さわおの脳内で活動を始める妄想フレンズ(祝・再登場!)。
 「人付き合いが下手で、自分の事が好きじゃない。はっ! まるで、おまえのような駄目人間だな」
 「あれ? てことはこいつ、操の同類じゃん? 仲間なんじゃん? いえーい!」
 妄想の姿を借りて、けっこう酷い事を(笑)
 「同類……? 仲間……?」
 タスクに激しく共感したさわおは、テンション急上昇。二人に襲いかかるメーバを前に、立ち上がる。
 「タスク……ここは俺に任せろ。本能覚醒!」
 片足に繋がった鉄鎖の影響でメーバの集団に苦戦するサワオだったが、洞窟の天井が崩れた際に表面に顔を出したキューブが、 その奮闘に応えるかのように目覚め、キューブコウモリが覚醒。その超音波で鉄鎖を粉砕し、窮地を脱した二人は脱出に成功すると、 洞窟の前まで来ていた4人と合流する。
 なお4人が洞窟を発見したのはアムが鉄鎖怪人に噛みついた際の、「さっき戦った時、海っぽい味したんだよね」に基づいており、 序盤から、これどうするんだ? と思っていた鋭敏味覚をここでねじ込んできたのは、凄いと思いました(笑)
 「てめぇら、いったいどうやって?!」
 「教えてやろう……不器用同士の、友情パワーだ!」
 「え?」
 初めての6人名乗りから、サワオ挿入歌で大暴れ。
 「あいつ強いのか弱いのか謎すぎるだろ」
 サワオの戦闘力に関しては、設定上の理由をつけて弱体化させるのではなく、テンションに基づいて上下が激しいという、 Mさん(by『仮面ライダー電王』)体質、の扱いになりました。
 開き直りといえば開き直りですが、この先の上下動を見越して台詞にしてしまったのは、一つの手段ではあったと思います。
 「これで終わりだ。タスク!」
 「…………なんで僕だけ」
 サワオ&エレファントは、友情合体騎馬戦アタックを発動して鉄鎖怪人を撃破。巨大戦では、コウモリの活躍で鉄格子を破壊し、 キリン、モグラ、クマ、コウモリの、サポートアニマルコンボで撃破。キリンとモグラを思い出したのは良かったと思います(笑)
 戦い終わり、そもそもレオがさわおを路上に投げ捨てたのが悪い、とさっきの反省はどこへやら、レオに噛みつくタスクを、 訳知り顔で止めるさわお。
 「よせタスク。また自分を嫌いになりたいのか」
 「え?」
 「大丈夫だ。おまえには俺がついている。さあ! 釣りをしよう! 釣りはいいぞ、心が無になる」
 「なに言ってんだ、おい、みんな、助けてくれ!」
 「や……助けてと言われても……」
 けっこう恐ろしいなーと思うのは、前回今回と、割と大和くんが素で操に引いている事。
 人助けとその後の人間関係はまた別というのが、凄く、シビアです(笑)
 恐らく大和のさわおに対する「友達」は、1/100ぐらいだけど、さわおから大和に対する友達は1/5なので、この濃度の差が残酷。
 ただまあ、ナンパした責任は取るべきだと思います。
 そして一方的にさわおに懐かれる事になったタスク、1話かけて不器用ブラザーズ誕生を描いた筈なのに、意外と距離が縮まっていない(笑)
 既存メンバーと追加戦士がギスギスした状態から少しずつ関係改善をしていく、という展開はよくありますが、 追加戦士が友好度全開なのにほとんど距離感が縮まっている気がしないというのは、初めてではないか(笑)
 くじけるなさわお、人と人はそう簡単にわかり合えないんだ!
 そういう距離感の中、大人の対応を出来ない不器用なタスクを最初にメインで絡ませるというのは、 タスクの今後も視野に入れた展開として良かったと思います。レオは何かきっかけがあれば一瞬で距離が縮まるタイプですし、 後はやはりセラが微妙にわかりにくいのですが、セラ×サワオ回をどう転がすのかは、注目したいところ。
 EDは歌詞が2番になり、さわお、そしてまさかの鳥男が参戦。ここはいっそ、着ぐるみよりも、 しかめっ面のまま村上幸平さんに踊って欲しかった!!(笑)
 次回――早まるなさわお、その女は、「レベルが違うんだよぉ!」だ!!

◆第22話「覚醒か?カン違いか?」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 いや今回面白かった!
 ランニング中、倒れていた自転車を起こそうと触れた瞬間、手に異常な悪寒を感じるさわお。不審を抱きながらもランニングを続けると、 なんとその背後で自転車が大爆発。
 「俺の触ったものが……爆弾に変わるんだ」
 ちょうど買い出し中だったレオ・セラ・アムが爆音を聞いて駆けつけると、さわおは素っ頓狂な方向に思い込みを発揮しており、 そんなさわおに笑顔でトイレットペーパーを差し出すアム。
 「じゃ、これ触ってみよっか?」
 爆弾が居た(笑)
 でも賢いので、実証実験としては極めて有効な辺りが、恐るべし。
 「きっとこれは呪いだ……ジニスの下僕となった俺に、天が罰を下したんだ。俺にはやはり……お前達の仲間になる資格は……ない」
 自虐フォームを発動したさわおは実験を拒絶して座り込み、仕方が無いのでデスガリアン反応に向かった3人は、 踊り狂うイリュージョン怪人と遭遇。
 イリュージョンなのでマジックではありますが、デザインや動きは、劇場版のサーカスとの繋がりを意識した感じでしょうか。あと、 ここで対メーバの生バトルは吹き替え無しっぽく見えるのですが、セラけっこう動ける?
 メーバを蹴散らしている間にイリュージョン怪人は姿を消し、大和とタスクが合流。5人は一旦、さわおの元へ戻る事に。
 「大丈夫。呪いじゃないよ。気のせいだって」
 《説得》を試みつつも、ちょっと距離のある大和(笑)  そして、更に距離のあるジューマン達(笑)  面倒くさがるレオと遠巻きにする女性陣に対し、大和がさわおから話をしっかりと聞き出し、そこに検討する価値がある、 とタスクがやや距離を縮める、というのは前回を受けて丁寧な仕事。でも最初から積極的に肩入れするわけではない、というのも丁寧(笑)
 「大和、タスク……ありがとう」
 友情の尊さに、思わず大和とタスクの手を取ってしまうさわお。
 「は?! 触ってしまった!! どうしよう?! 二人が爆発する!!」
 「しないしない」
 直後、爆発(笑)
 「あーーーーーーー!! 爆発したぁぁぁ!!」
 爆発に関する誤解を上手くさわおの落ち込みやすい性格と結びつけ、過剰になりかねないリアクションを笑いとして物語に収めながら、 追加戦士の既存メンバーに対する存在感と関係性を確立していく、という流れが実に鮮やか。役者さんのはっちゃけ芝居も、 良い感じに馴染んできました。
 「してない! よく見て」
 爆発が発生していたのは、怪人が踊り回っていたショッピングモールの広場。物体の爆発は、 呪いでもなければ勿論さわおが新たな力に目覚めたわけではなく、触れた無機物を爆弾に変えてしまうイリュージョン怪人の特殊能力だったのだ。
 「よくも俺の純粋な心を弄んだな!」
 やはりさわお、根っこが太い(笑)
 「これから奴等は、身の回りの何がいつ爆発するかしれないという、スリリングな日々を過ごす事になります。いかがでしょう、ジニス様」
 「…………そうだねぇ、悪くはない」
 前回、さわおに対してうすーーーい反応だったジニス様、今回はグラスに手を伸ばさず、じわじわと不機嫌を溜めているようですが、 さて、どうなりますか。享楽的で表向きは感情表現のオープンだったジニス様がここで明らかに本心を見せなくなる、というのは面白く、 どういう形で爆発するのか、楽しみです。
 正直、今作で一番しっかりしていないキャラクターがジニス様なので、この辺りでボスキャラとしての強固な確立を見たい所 (爆発の仕方次第では、いっそリタイアの可能性もまだ捨てきれませんが)。
 地上では、巨大な爆弾を仕掛けてあると言い残してイリュージョン怪人が姿を消し、それを探す事になるジュウオウジャー。そしてサワオが植木鉢爆弾を回避した事から、大和はある事実に気付く。
 「みっちゃんは、物を爆弾に変えるんじゃない。爆弾を触ったからぞわっとしたんだ」
 「ジューマンパワーの影響で手の感覚が覚醒したのか……」
 「サイの力かな。サイの肌は、意外と敏感だから」
 クバルの思惑通り、爆弾化能力で普通にサスペンス物に出来そうなのに随分ネタ割れ早いと思ったら、ここでしっかり「鋭敏触覚」 を使ってくるという展開。爆弾探しが以前のジニス様のゲームと被ったのはちょっと惜しかったですが。
 「操……変人扱いして悪かった! この通りだ! もうおまえしかいねぇんだ。頼む! 爆弾探してくれ」
 相変わらずさっぱり、土下座を敢行するレオ。
 「さっきはごめんね。この手ににそんな力があったなんて」
 続けてアムが手を握りしめ、さわお、激しく狼狽。
 「だ、だがしかし……俺なんかにそんな、大事な、任務が……」
 「出来るよ! 私達はあんたの手にかける」
 セラも参加し、女性二人に至近距離で見つめられ、高鳴る鼓動、始まる妄想。
 「おいおい、女の子に手ぇ握られちゃったよ。しかも二人」
 「もしかして、脈あり?! うわぁ、やべぇ! 選べねぇよ〜〜」

 さわお、煩悩覚醒。

 妄想フレンズの姿を借りて、アムちゃんもセラもどっちもいいな〜という辺りが実にダメですが、うん、やっぱり、まだちょっと、 女子との接触は早かったんじゃないかな……。
 それはそれとして、他人からの期待×ちょっぴりの下心で、さわおのジュウオウゲージはMAXだ!
 「よし……わかった」
 鼻息荒く、不適な笑みを浮かべて立ち上がるさわお。
 その背後で、何かに気が付いた小悪魔が、唇の端を吊り上げているとも知らず。
 アムはLVが上がった!
 アムは《覚えると(周囲が)危険なスキル》をおぼえた!
 アムは<悪女>への道にまたいっぽちかづいた!
 画面左手前に拳を握りしめるさわおのアップ、その後方でニヤリと笑うアム、という酷すぎるカット(笑)
 そんなこんなで、さわおのおさわり大作戦がスタートするが、成果が無いまま刻一刻と迫るタイムリミット。
 「やはり俺は、役立たずの能なし野郎だったのか……」
 だがしかし、うなだれて手を付いた立体駐車場の壁が、さわおの触覚を揺さぶる。なんと、 怪人は一つの建物全体を爆弾にしていたのだ。イリュージョン怪人が妨害に現れて戦闘が始まり、その最中、サワオに駆け寄るタイガー。
 「操くんお願い! なんとかして」
 「アム、なんとかって」
 「さっき爆弾見つけた操くん、素敵だった、輝いてた! 操くんなら出来る! セラちゃんも、ね」
 「え?」
 シャーク、巻き込まれる(笑)
 「あたし達操くんの事、信じてる♪」
 「あ……うん」
 「……二人が……? 俺の事を? あぁ……よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 信じる力は超能力、絆は光だ!!
 (※各方面への配慮として、そういう事でお願い致します)
 ジュウオウゲージが天元突破したサワオは、猛ダッシュして高い所に上ると釣り竿を取り出し、立体駐車場をふぃーーーーーしゅ!  そのまま、建物を丸ごと釣り上げて、虚空で爆発させる事に成功する。
 …………改めて、サワオ作ったジニス様、凄い(笑)
 メインで動くのがアムで、サワオが煩悩覚醒して頬を染めたりはしていますが、 “誰かの期待に応えたい”という人間が一般的に持つ感情(そしてさわおが満たされていなかったもの)、を押さえておく事で、 単なる下心のみではなく、今後の拡張性も確保しているのは、今作の丁寧で手堅い所。やり過ぎるとアムが嫌な感じになってしまうので、 なかなかギリギリな所でもありますし。
 「みっちゃん、すげぇぇぇ!!」
 「フッ、まあな」
 「うん、予想通り♪」
 「どういう事?」
 「操くんって、勘違いしてすぐへこむけど、勘違いして調子にも乗りやすいのかなーって」
 「……え? それでわざとおだてたの?」
 まだまだ女の子に夢一杯のイーグル、軽く引く。
 「操くん、すっごーい格好良かった!」
 思い当たる悲しい過去でもあるのか動悸が激しくなったライオン、心臓を押さえる。
 これを機に、レオが女嫌いになって男の友情を優先するようになったら面白いなぁ(笑)
 「ぬ〜〜〜、こうなったらこんな星、一瞬で消してやります! 私のイリューージョンを、舐めるんじゃあーりません!」
 「おまえこそ、この星を、そしてこの俺を舐めるなよ!」
 準備動作まで入ったイーグルの台詞を横から奪い取り、今回も、挿入歌でサワオ無双。
 「つよ」「いけいけ♪」「本当に滅茶滅茶調子に乗ってる」「調子のいい時と悪い時の差が激しすぎる」
 サワオの号令で連係攻撃をかけるジュウオウジャー、釣り糸と鞭剣で動きを封じた所をなます切り&狙い撃ちにするというのは、 ヒーローとしてどうかと思うえぐさ(^^;
 「レベルが違うんだよぉ!」
 そして今回、この台詞が入ってくるとは(笑)
 巨大化したイリュージョン怪人は、戦闘機と合体してパワーアップ。
 「ふふふ、このイリューージョン、お前達には真似できまい」
 「ふん、真似なんかするか! 俺達はもっと凄い物を見せてやる!」
 「もっと凄い物って、なに?」
 「今考えるんだよ。俺達なら、出来る!」
 巨大化した敵の前でキューブをあーでもないこーでもないとやるのは最初どうかと思ったのですが、“遊び”とはそういうものか、 と考えてみると、むしろ『烈車戦隊トッキュウジャー』でやってほしかったネタかも。……それこそ、宇都宮プロデューサーが 『トッキュウジャー』の時に使おうとして使い損ねたアイデアだったりするのか、と思ってしまうほど凄くトッキュウジャーぽいノリ。
 色々試しては失敗するのですが、サイの荷台にキューブ1〜8までを縦に積む、というのは割といい線行っていたと思います(笑)  最後はサワオの勢いジャグリングが上手く行き、手持ちのジュウオウキューブを全て合わせたワイルドトウサイキングが完成。
 足の横にくっつくだけという武装アニマル4体の扱いは雑すぎますが、早くも13体合体なのか……!
 そもそも既存ロボが負けたわけですらない新ロボお披露目戦は彼我の戦闘力差が圧倒的なまま進行し、 右腕のパイルバンカーによるジュウオウダイレクトストレートでイリュージョン怪人は木っ端微塵。 そのままテンションMAXで森家を訪れるさわおだが、急な来訪だったので夕食の数が足りず、残酷な人生の仕打ちに、 おのが存在の無意味さをそっと噛みしめて丸まるのであった……。
 「やっぱりこうなるんだ……」
 「調子の良さは長持ちしないようだな」
 むしろ、良い時の方が状態異常みたいな扱い。
 「あーー、やっぱめんどくせぇ」
 「でも、操くんとの付き合い方はわかったでしょ?」
 かくしてまた一歩、さわおと5人の距離は縮まった! 縮まっ……た…………? おかしい、なんかまたちょっと、 友情から離れた気がするよ?!
 劇場版合わせだったのか全合体ロボの登場はやや強引でしたが、謎のメールによる変形合体もそれはそれで強引なので、 能動的な取り組みという手法そのものは良かったです。さわおの思い込みと落ち込み、 そして妄想を存分に活用したテンポの良い展開は笑いどころが多くて面白く、楽しいエピソードでした。
 この先、鳥男を絡めての一山・一波乱が予想されますが、是非ともこの勢いで、残りも突っ走ってほしいなぁ。
 次回――ジャスピオン?

◆第23話「巨獣ハンター」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
 ウルトラシリーズの新作が始まったので、景気よくビルを吹っ飛ばしてみた。
 ……的な所が、東映にはある気がしてなりません。
 チーム・アザルドのクルーザー怪人による無差別砲撃ゲームが始まるが、テンション低いジニス様は、ほぼ興味無し。
 この所の様子から一体どんな方向へ爆発するのか期待と不安のあったジニス様ですが、どうやら、 飽きてきていた。
 ……うん、これが一番、ジニス様っぽいな(笑)
 ところがそんなジニス様の興味をそそる、思わぬ闖入者が宇宙から飛来する。 食事の邪魔をされた腹いせにジュウオウジャーとプレイヤーをまとめて攻撃してきたのは、 銀河を駆け巡り様々な巨大生物を狩ってきた風来坊。
 「俺の名は、バングレイ。宇宙をバリバリ股に掛ける、巨獣ハンターだ」

ジャス○オン 巨きな悪ほど ジャス○オン 不足はないぜ
おれが おれが おれが正義だ ジャス○オン

 割と大雑把そうなバングレイは、義手・義足・錨状の武器、と宇宙海賊のイメージでしょうか。
 しかし、
 「デスガリアン、何だそれ?」
 というのは、バングレイの頭が悪いのか、デスガリアンの知名度が意外と低いのか(笑)
 ジニス様、ジニス様、広告宣伝費が足りていません!
 初お目見えという事で、ステージ上でのバトルは、ワイヤーアクションを織り交ぜつつ、スピーディでなかなかの迫力。個人的に、 ワイヤーバリバリはあまり好きではないのですが、不意を突く感じで使ってくれると、驚きがあって素敵。
 何やら他者の記憶を読んで実体化する能力?を持つバングレイが召喚した山登り怪人を倒している内にバングレイは姿を消し、 途中で逃げたクルーザー怪人ともどもその行方を追うジュウオウジャー。
 三手に別れて探している内に、大和とアムは無差別砲撃で負傷した少年と出会い、病院へ連れて行く。
 「駄目だよ。そこは秘密にしちゃいけないとこ。気持ちはわかるけど、君がちゃんと話さないと、お母さんが悲しむよ」
 仕事で忙しい母親が珍しく休みを取れ、2人で花火大会に行きたいが為に怪我を隠そうとする少年をアムが説得するのですが、 少年の背景の被害描写が凄すぎて、やや、花火大会どころではない雰囲気になってしまいました(^^; いや、世界観としては、 多少の破壊活動があっても花火大会が決行される事自体はアリなのですが、それはそれとして、空襲の跡から奇跡的に生還しました、 みたいな背景になっていたのはやりすぎだったかな、と。
 少年を無事に母親に引き合わせ、母親の為に我慢してしまういい子と、子供の為に頑張るその母親の距離が、 少なからず縮まった事を喜ぶアム。
 「うちもママと2人だからねー。先輩としてのアドバイス? 無理とか我慢とかしすぎると、自分が苦しいだけじゃなくて、 相手も追い詰めちゃうんだよね」
 「…………そうなんだ」
 「でも今は仲良くやってるよ? あたしもママも、無理する前にいろんな人にばんばん頼って、甘えちゃうんだよね」
 以前のセラ回の家族話でアムが「ママ」の存在を強調していたのを拾いつつ、頭の良さを積極的に使うよりも、 適度に使わない事で楽しく生きようとする傾向があるアムの性質を背景補強。
 「だから私、大和くんの気持ち、けっこうわかる」
 「…………え?」
 「みんな繋がって生きてるって話」
 「……あ、ああ、うん」
 これまで伏せられていた家族ネタに繋がるのか、母子の姿とアムの言葉に珍しく大和が歯切れの悪い反応を見せ、 この役回りはセラにあげて欲しかった気はするのですが、少年への配慮はともかく、その後の踏み込みと、大和の挙動不審への気付きは、 アムではないと無理か。
 ……頑張れ、セラ。
 バングレイとクルーザーが戦い始めた気配にジュウオウジャーは駆けつけ、赤&サワオがバングレイ、残り4人がクルーザー、と、 戦闘分担。最近、ジューマン4人の全体戦力における自己評価が正しすぎて、スムーズですが何かもの悲しい気持ちになります。
 ……頑張れ、ジューマン、頑張れ。
 バングレイは、サワオ:テンションLV5(普通)とゴリラ:《一騎打ち○》を上回る強敵描写。
 「雑魚が1人で頑張るねぇ」
 「1人じゃない……俺達は、繋がってる! みんなでこの星を守ってるんだ。だから! おまえにも負けない!」
 「みんな繋がってるって……? はははは! おまえ、そういうタイプ? バリかゆ〜。俺の嫌いなタイプだわ。バリバリ苛めたくなる」
 サワオ攻略から立て続けの強敵登場で、どういう立ち位置になるのかと思ったバングレイですが、大和の理念を真っ向から否定する、 いわばネガ大和という存在の模様。ここで、主人公の動機付けともう一回正面から向き合う、という展開になりそうなのは、 さすがの目配り。
 追い詰められたゴリラは間一髪、立ち上がったサワオと、クルーザーを撃破して駆けつけた4人に助けられるが、 クルーザーがコンティニュー。
 「街の平和はあんたにかかってるよ!」
 エレファントの頼みとシャークの激励を受け、テンションLV6になったサワオがトウサイで立ち向かい、続けて巧く戦闘を分担。
 恐らく、前回と今回の間に、セラには特に、サワオ操縦方法がアムから伝授されたのかと思うのですが、 意味わかんないけど触ればいいんだよね……? という感じで一回余分に叩いてみるシャークが面白い(笑)
 ただし、この後のクルーザーへの苦戦を見るに、テンションLV6までしか上げられない辺りに、セラの限界を見ます。
 ……走れ、セラ、走れ!
 地上の5人は巨大メカに興奮するバングレイを不意打ちして砂にしようとするが、そこにナリアが登場。 ノールックでジュウオウジャーを射撃するという格好いいアクションを見せつつバングレイをデスガリアンへと招き、 バングレイは弓矢基地へと姿を消す。5人は気を取り直してトウサイジュウオーの救援に向い、合体サイキング発動で瞬殺。
 陶山章央さんが結構好きなので、バングレイの踏み台にされてAパート退場もあるかと思ったクルーザーが、 最後まで出番あって沢山喋ったのが地味に嬉しかったのです(笑)
 戦い終わり、ひとまず予定通りに花火大会を、浴衣で楽しむジュウオウジャー。 ところが……朝から浴衣姿でテンション高かったさわおは何故か、ジャージ姿で体育座り。
 「今日一日、浴衣で暴れたせいで、破れてしまった。俺には、花火を楽しむ資格はない」
 「……えっ、馬鹿じゃないの」
 セラ、遂に撲殺に行く。
 いや一応、言い方は笑い混じりなのですが、相手はその辺りのニュアンスが掴めないので、下手すると来週から登校拒否ですよ?!
 その頃、弓矢基地では若干機嫌を直したジニス様が、バングレイと対面していた。
 「ようこそ、デスガリアンへ」
 退廃貴族と巨獣ハンターが出会う時、この新風は、ブラッドゲームに如何なる嵐を巻き起こすのか……「巨獣ハンター」という設定も、 なにがしかの要素を今後の展開に持ち込みそうではありますが、バングレイ自身は、アザルドと色が被りすぎなので、 あまり長持ちしなさそうな気はしてなりません(笑)
 次回、バングレイはブラッドゲームを生き延びる事が出来るか?!

◆第24話「よみがえる記憶」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
 バングレイをスカウトするジニス様だが、身内からは大ブーイング。
 前回ゲームを邪魔されたアザルドの、「一緒に遊べなんて、冗談じゃねえぜ」というのは、 繰り返しジュウオウジャーにを阻止されているものの、未だゲーム気分は微塵も変わらないデスガリアンのスタンスが明確に出ていて秀逸。
 バングレイはクバルの記憶をちょっぴり読み取ると、面白そうな事には噛むのがモットー、とテストプレイヤーとして自ら出撃。
 クバルの記憶の他、「本命」が他にある、と巨獣ハンターとして(?)地球に来た目的を匂わせ、今後に向けた伏線を二つ。 ……ところで、バングレイと打つ時に何故か「バンデラス」「バンテリン」と打ちそうになる事がありまして、 もし感想中にこの単語が混ざっていたら、バングレイの事だと思って下さい(^^;
 その頃、大和はマリオと共に母親の墓参りに行っていたが、デスガリアン反応(というかバングレイ反応) を感知したジューマンに連絡を受け現場に向かう途中、そのバングレイと単独で遭遇。
 「獲物はっけ〜ん」
 「……バングレイ」
 と言う時の表情と声のトーンが非常に格好良くて、大和くんはホント、当たり引いたなぁ。
 1人立ち向かうイーグルだったがバングレイに叩きのめされ、気絶。
 「いい夢見なよ」
 バングレイは大和の記憶を読み取って姿を消し、目を覚ました大和が目にしたのは、自分を助け起こす、 死んだはずの母・和歌子の姿だった。
 一方ジューマン達は、死んだ筈の身近な人物が目の前に現れるという事態に大パニックになっている公園に到着。
 「この時期には霊が戻ってくるって本で読んだ事はあるが」
 ニンゲン界(日本)の風習をちょっぴり誤解するタスク、というのは小ネタながらいい味。
 女性に迫っていた幽霊?にレオが背負い投げを決めると消滅し、前回の怪人の消え方を思い出したタスクは、 バングレイには死者を蘇らせる能力があるのではないか、と推測。
 そんな状況を知らない大和は、母親?に傷の手当てを受けながら、幼い日の記憶を甦らせていた。
 「死んじゃ嫌だよ、お母さん。僕を1人にしないで……」
 「大丈夫。お話したでしょ。この星の生き物は、みんな……どこかで繋がってる。私たち家族も、ずーっと、繋がってる……。 だから大和は、独りじゃない」
 「お母さん……」
 作品全体のキーでもある大和くんの信念が、鳥男との関係性だけだと少々弱いかなとは思っていたのですが、 ここで幼少期に失った母親の言葉として、補強。
 (いや、まさか、幽霊なんて……でも、だとしたら、この人は)
 間違いなく過去の記憶を持つ幻の母に、戸惑いを募らせる大和。
 「誰なんだよ……」
 「大和?」
 「幽霊なんているわけないんだ。俺は二度と、母さんには会えないんだよ!」
 神妙な墓参りから戦いへの切り替え、さわおに連絡をという柔らかい表情からバングレイへの厳しい視線、 失った筈の母への戸惑いと困惑による苛立ち、と、今回、頭からずっと、大和くんに色々と芝居させているのが物語を引き締めており、 脚本×演出×役者の間に、しっかりした信頼関係があるのが窺えます。
 「……言ったでしょ。ずっーっと、繋がってるって」
 「なんなんだよ……なんで……暖かいんだよ……」
 ランニング中のさわお、ベンチで手を握り合う、大和くんと妙齢の女性の姿を目撃。……思わず木陰に隠れる(笑)
 「……大人だ」
 まあ、さわおでなくても、そう見えて仕方がない。なお、もう少しよく確認すると、 大和母の左手の薬指に指輪が見えて更に大変な事態になったのですが、さわおに望遠視力のジューマンパワーが無くて本当に良かった。
 一旦家に戻ったジューマン達は、墓参りから帰ってきたマリオが落とした写真を拾い、病死した大和の母親(マリオの姉)の事を知る。 そこに現れたさわおは、公園で大和が写真の女性といちゃいちゃしていた件を報告。
 「しかしまさか……大和がお姉ちゃんそっくりの人と付き合ってるとはなぁ」
 今作ここまで、色々な勘違いと、それを誤魔化せていない誤魔化しとが繰り返されてきましたが、 物語中最大の地雷ではないか、これ(笑)
 早く訂正してあげないと、色々とこう、あれだ……!
 さわおと叔父さんの誤解はともかく、さわおが目撃したのは、バングレイが甦らせた大和母ではないか、と推測するジューマン達。
 「操! 大和はどこに居たの?! 連れてって」
 叩きつけるように迫るセラ(新しい髪型が可愛い)は既にさわおの操作方法を忘れ気味……だが、 さわおは満更でもなさそうだった。何か、さわおの中の目覚めさせてはいけないスイッチを入れてしまったような気がして、 今後が不安です(真剣)。
 一方、戸惑いながらも母親と公園を歩き、最近出来た“変わった友達”の事などを話す大和は徐々に笑顔もこぼれだすが、 そこにバングレイが姿を見せる。
 「バリ楽しそうじゃん? 仲間に入れてくれよ」
 バングレイは変身を阻んで大和を蹴散らすと、駆けつけたジューマン達も一撃で吹き飛ばし、大和母をあっさりとずんばらりん。
 「母さん!!」
 大きな衝撃を受けた大和母は、やはり金色の光となって消滅していく……。
 「大和……もうちょっと……お話したかったな……」
 「母さん……」
 「ホント……大きくなったね。……ありがとう大和。また会えて……嬉しかった」
 母親の二度目の死を目撃する事になり、崩れ落ちる大和の姿に、高笑いするバングレイ。
 「ぬふふふ……ぬはははははははは! 見ろ! 何がずっと繋がってるだ! わかったろ? んなもんは、ただの夢幻だ。 繋がりなんてな、こーんなあっさり切れちまうんだよぉ。ぬははははは!!」
 根っからデスガリアンではないバングレイですが、この悪辣さと性格のねじくれ具合は実にデスガリアンと遜色なく 劇中における“悪”のトーンが統一されているのも、良いポイント。
 「笑ってんじゃないわよ!!」
 「あ?」
 そしてここで、最近何かと埋没を心配されがちだったセラが、真っ先に啖呵を切る、というのがとても良かったです。 迫力もしっかりあって、思わずバングレイが振り向く、という流れに説得力も出て女っぷりが上がりました。
 さ「どうしてこんな酷い事が出来るんだ!」
 タ「人の気持ちを……玩具みたいに……」
 ア「許せない……許さない!」
 レ「てめぇの腐った根性こそ、ぎったぎたにしてやるよ!」
 「「「「「本能覚醒!!」」」」」
 「こんなふざけた遊びの為にに、死者を生き返らせるなんて!」
 「生き返らせた? 違うよ。俺はな、記憶を読み取れるんだ。そっから面白そうなもんをチョイスして、実体化すんだよぉ!  こんな風にな!」
 バングレイは自身の能力を種明かしし、緑の記憶から、髭スナイパーを実体化。………… タスクの記憶で一番面白そうなの、それだったのか(笑)
 「記憶を読み取る……。あいつ、まさか……」
 クバルは自分の記憶が読まれた可能性に気付き、一方、久々にお酒が進む。ジニス様。
 「ふふははははははは、これは興味深い能力だ。バングレイ、リーダーとして迎えるのも、面白い」
 前回の水兵怪人への台詞から“記憶を読み取れる”事は明白でしたが、そこから、タスクが勘違いした 「死者を蘇らせる」だとトンデモすぎるので、劇中で早めにハッキリ説明してくれたのは良かった所。
 「おまえらみんなただの記憶に振り回されまくりじゃねぇか! ひゃはははははは! バリくだらねぇ! ひやはははは、あっははははは!」
 ヒゲメランに苦戦する5人の姿を嘲弄するバングレイ、だが……
 「ただの、記憶……?」
 その言葉に、座り込んでいた大和の、スイッチ入る。
 「違う……ただの記憶なんかじゃない」
 「あぁ?」
 「ずっと覚えてた。大事な思い出だ! だからまた会えたんだ、母さんと。……おまえが証明したんだよ。 覚えてる限り、ずっと繋がってるって! 俺の持ってる繋がりは、おまえには壊せない!!
 ――本能覚醒!!」

 悪に突きつけられたアンチテーゼを更にひっくり返す、というのはヒーローの王道ですが、 決め台詞へ向けた綺麗な集約を得意とする香村さんの持ち味が冴え、非常に格好良く決まりました。
 特に「おまえが証明したんだ」ではなく、「おまえが証明したんだよ」というのが、 大和くんの凄く怒っている感じが出ていて秀逸。
 ここまで、大和くんに幅のある芝居をさせてきた流れも、最後のこの激情に鮮やかに繋がり、とてもいいシーンでした。
 また今作はこれまで、ジューマンパワーの委譲という形で、「命を食べる」というのは、「他者の命を受け取る事」であり、 その繋がりの中であらゆる命は生きている(この対存在が、遊びで命を奪うデスガリアン)事を示していたのですが、そこにもう一つ、 「他者を覚えている事」も命の繋がりであり、想いが受け継がれていく限り、死者も消えてなくなりはしない――命は、 他の誰かの中に別の形で生き続けている――とする事で、心身の両面で、繋がる先の命の生き方、という根幹のテーマを補強。
 ちょうど折り返し地点できっちり、主人公と物語のテーマの繋がりを強固にしつつ厚みを増やし、実にお見事。
 キューブを拾ってイーグルにダッシュ変身した大和は、反撃開始。最近ゴリラの影に存在が薄れがちだったイーグルですが、 怒りの鞭剣ラッシュから超火炎イーグルスピン更に真っ向両断、の怒濤の連続攻撃。……ここまで盛り上げてくれれば、多少の戦力差など跳ね返せて当然です(笑)
 「行け操!」
 ヒゲメランの方はサワオ@クロコダイルが、棒術ワニワニパニックで粉砕。とにかく勢いで技を繰り出すサワオですが、 フィニッシュ後の謎のポーズが格好いい(笑) ……ワニが口を開いたイメージ?
 前回今回と、サワオが怪人を抹殺する為のマジックアイテム化しているのはちょっと気になりますが、技を変えている所といい、 これは釣り竿強化キャンペーンか。
 「バリおもしれぇじゃん。……なあ赤いの、おまえ名前なんだっけ?」
 「ジュウオウイーグル――風切大和だ!!」
 「風切大和……OK〜。今日はこの辺でお預けだ」
 バングレイはシャークの記憶から巨大怪人を2体実体化すると、自前の宇宙船で退却。 乗ってきた船の存在が忘れられてなくて良かったですが(前回ナリアとワープしたし)、それにしても、 高速移動から記憶読みは強力すぎるなぁ……(^^;
 「大和くん、大丈夫?」
 今回は地味めながら、しっかり気遣いポイントを稼ぐ白。
 復活怪人相手という事もありロボ戦はざっくりめで、ワイルドキングとトウサイジュウオーで適度に痛めつけた後、 サイキングが左腕の銃器で粉砕(キリンの存在価値……)。
 かくして戦い終わり、大和の過去を知ったジューマン達は、大和が家族の話題を避けていた事に納得する、が……
 「お母さんの事だけなのかな……?」
 「え?」
 「……ううん、なんでもない」
 アムは慎重に言葉を濁し、その背後で何かを考える表情になるタスク。 ジューマンメンバーの中では最も父親との繋がりを深く描かれるタスクだけに、アムと同じ発想に至ったと思いたい所ですが、 なにぶんタスクだけに、(そういえば、あの歳で死んだ姉を「お姉ちゃん」と呼んでいるマリオさんは、割とシスコンじゃないのか?  今度、それとなく大和に聞いてみよう)と、全く見当違いの事を考えている可能性も否定できまないので頑張れタスク。
 夕暮れの陽を浴びながら、一人、母の墓に手を合わせる大和。
 「大丈夫。ずっと繋がってるから……」
 その視線が、墓前に供えられた新たな花束に向けられるも大和は無言のまま立ち去り、不在の父親の存在が匂わされた所で、つづく。
 この辺り、直接的には語らず、遠回しな表現を二つ重ねるだけに留める、というのは今作の演出ラインの渋い所です。 想像できる範囲の中で、一つの伏せたカードを開くと、それが次の伏せたカードに繋がるという展開も、厭らしくなく鮮やか。
 新たな強敵の登場から大和の過去が……という、否が応でも期待の高まりすぎる予告から逆に若干の不安を覚えたりもしていたのですが、 蓋を開けてみれば見事に期待を上回る出来でした。
 今作ここまで、山場の大和くんに外れ無しなのが、実に素晴らしい。
 次回は、何やら知られてはいけない事を知られてしまった風情のクバルがバングレイにいきなりの直接攻撃。バングレイの特殊能力を、 予算節約・大和の掘り下げだけに留まらず、デスガリアン側の波乱要素にまでしてきたのは実に巧い。
 今回の次回でバングレイ退場とは思えないので、どちらかというとクバルの一時退場→復活コースの方がオッズが高そうですが、 真面目にチームリーダーをこなしていたクバルに、新たなアクセントが加わってくる事に、期待したいです。
 どう転ぶにせよ、アザルドと色が被りすぎで気になる・特殊能力の使い勝手が天井知らず過ぎる・ リーダーとしてのチームの差別化が難しそう、とバングレイの命は夏休み中な気はするのですが、 アザルドかバングレイの色が赤くなったりする可能性はあるのか(笑)
 いわゆる夏休み展開の季節にしては割と話が動き加減ですが、バングレイで幾つか種を蒔いておいて、 休み明けから満を持して鳥男再びみたいな流れになるのかなぁ……ジュウオウジャーサイドは追加戦士キャンペーンに戻ってサワオ×レオ回になるようですが、 2人の“相性の悪さ”を誤魔化さずに主題に据えてくれそうなので、どう転がすか楽しみです。
 そしてセラは、ローテを飛ばされずに無事にサワオ×セラ回に辿り着けるのか。今回も最後に回されてちょっぴり不安ですが、 巨獣ハンターの妨害にくじけず、ニンゲン界の海を目にする機会は、果たして?!(厳密には、海岸線で戦闘はしていますが)

→〔その5へ続く〕

(2019年5月21日)

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