■『動物戦隊ジュウオウジャー』感想まとめ3■


“荒海の王者、ジュウオウシャーク!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『動物戦隊ジュウオウジャー』 感想の、まとめ3(13話〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


◆第13話「山頂の目撃者」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 今頃気付いた重大事項:アザルドは半ズボン。
 今回も頼りないプレイヤーのサポートの為に地上出張するし、割といい上司です。
 さて前回の予告から注目の集まったレオの守備範囲ですが、
 「ニンゲンの女の子も可愛いよな〜」
 凄く普通に、ニンゲンの女子もいけました。
 あれか、ライトなファンタジー的に言うと、エルフや、猫耳はえた種族ぐらいならOK、みたいな感じなのか。
 ……まあ、ジューマン基準で見た場合レオがアブノーマルな可能性もありますが、 タスクの「レオは女好きだから」の際の吐き捨てるような言い方を考えると、 ほじくり返さない方がいい闇がわだかまっているのかもしれません。
 この問題に関しては、心の平穏の為にここで検討を打ち切りたいと思います。
 鳥を見た! じゃなかった、鳥男を見た、という情報提供者・五十嵐百合が大和の家を訪れ、面々はその案内で斧岩山へ。 ところが百合を一目で気に入り、大和に対抗心を燃やしたレオが百合を背負って暴走した挙げ句、 山中に仕掛けられていたトラップに引っかかって2人まとめて逆さ吊りになってしまう。
 なんたる偶然か、斧岩山はチーム・アザルドの送り込んだ登山家怪人が地脈エネルギーを吸い取っている真っ最中であり、 そこへ人を近づけさせない為、アザルドが配置したブービートラップだらけの死の山と化していたのである。
 という、ラブコメかと思っていたら、この辺りでみんな一度吊られてみようか回。正確には約2名回避しましたが、その分、 ゲストキャラが吊られました。
 なお、登山家怪人の声は、『GO!プリンセスプリキュア』で1年間ゼツボーグを担当していた中務貴幸。 またご本人のTwitterによると、柴田プロデューサーの紹介で、同作の田中裕太監督が撮影現場を見学に来ていたとの事。 『GO!プリンセスプリキュア』は、ヒーロー史に残したいレベルの完璧な「変身」シーンを見せてくれた傑作なので、お薦めです。
 レオと百合は追いかけてきた大和によって助け出されるが、大和を頼りにする百合の様子を見てますます意地になるレオ。
 「ま、おまえが来なくても、俺が何とかしたけどな」
 「そもそもレオが無茶するからでしょ」
 「あん? 俺のせいだってのか」
 「わっかんないけど……もっと百合ちゃんの事考えろって」
 ……爽やかな外見の裏側に鬼畜の本性が時々垣間見える大和くんが、そろそろ、 マジギレして背中のリュックから首輪取り出しそうで怖いんですが。
 そこに正規ルートを進んでいた3人からデスガリアンと遭遇した連絡がもたらされ、大和がキレる前に自ら反省したレオは、 百合の下山を大和に任せ、独り山頂へと突撃。あらゆるトラップを突っ切って駆け抜け登山家怪人に挑むも、崖から叩き落とされてしまう。
 「なんも出来ねぇな俺……頼む大和、デスガリアンを止めてくれ!」
 百合を麓まで送り届け、追いついてきた大和に、レオは渾身の土下座。
 「百合の事も、百合が好きだってこの山も……俺じゃ守ってやれねぇ! 俺バカだし、単純だからよ……でもお前なら、お前ならきっと。頼む!」
 これ前作なら、「よっしゃ、俺に任せろ!」って天晴さんが1人で解決するパターンだなーとドキドキしましたが、
 「…………あのさ、なんで俺がここまで、無傷でやってこれたと思う? レオが先に、全部罠にかかってくれたからだよ」
 言い回しが凄く微妙なのですが、やっぱり本当は怒ってますか。
 「なにも出来なくなんかない」
 「大和……」
 「俺かおまえ、どっちかじゃなくて、俺とおまえ、2人で守ればいいだろ」
 自ら穴にダイブしていくレオを、大和が引っ張り上げるというのは、第11話でジュウオウジャーが一つの群れになった先で、 今作におけるレッド像、というのを意識的に描いたのかなと思われます(ちょっぴりS)。
 ライオンが囮になって怪人に挑んでいる間に、イーグルで回り込んだ赤がゴリラで地脈エネルギー吸収装置を引き抜く事に成功。 他の3人も合流して怪人を撃破し、巨大戦。敵が大きいほど盛り上がる登山家魂に火がついた怪人の攻撃でソードを落としたワイルドキングは、 咄嗟に山頂の斧岩を引き抜いて攻撃を受け止めると、なんとそれが、キューブアックス(クマ)に姿を変える!
 山頂の奇岩が新たな力だった、という流れは格好いいのですが、肝心の斧岩が出てくるのが百合の回想シーンだけで、 大和達の視点で強調される場面が無かった為、手に取るのが唐突になってしまったのは残念。 次回予告ではっきり見せていたので前振りシーンが優先的にカットされた可能性が高そうですが、 ここは斧岩山の由来あたりからバッチリ攻めて欲しかったです(笑)
 マサカリそのものはワイルドキングの体型に似合って格好良く、クマへの変形攻撃を見せた後、登山家怪人をばっさり両断。 改めて百合と山頂に向かう大和達だが、そこで見たという鳥男のテントは影も形もなく消えていた……果たして鳥男は、 キューブクマの存在を知っていたのか? めげずに鳥男を捜し続けようと誓うジュウオウジャーであった。
 そ・し・て、潔く身を引くのが男の美学、と逆方向に暴走するレオは大和と百合の仲を応援すると言い出し、 アムが直球(興味本位)で百合に大和への好意を訪ねると、大和を見る時に目がキラキラしていたのは、飼っているインコに似ていたから、 というオチ。
 恋愛要素はギャグで片付けられ、女性ゲストをカタパルトに大和とレオの友情が深まるという内容で、 まあ及第点の出来ではあったのですが…………違うんだ! 私が求めていたのはそういうのじゃないんだ!!(笑)
 いやまあ、趣味でいえば、大和を以前から知っていて好意を持っている女性キャラが欲しかったので、 今回みたいな初対面からというのも少し違ったのですが、ただ一度ギャグでやってしまうと、 そういう立ち位置のキャラを持ち込む気は無いのかなぁと、ちょっぴり残念。
 大和は両親を伏線にしてしまったので、周辺の関係人物がまだ出しにくい、というのはあるのかもですが。
 細かい所では、チラシが劇中で具体的に役に立ったのは良かったと思います。
 あと、うっすら考えていたのが今回のレオの言動で補強されたのですが、鳥男の正体として、 異文化交流の一要素としての血の混合――ハーフジューマンという可能性はあるのかもなぁ、と。 鳥男以外(追加戦士?)での登場可能性も含めて。
 今回、アックスを見たエレファントの「何故だ?!」という台詞が割と強調されていたので、 ニンゲン世界とジューランドの歴史的関わり(闇)の謎に迫っていく伝奇的展開とかしてくれたら凄く好みなんですけど。
 次回――「子連れヒーローアバレ系」、じゃなかった、「ウソつきドロボーおバカ系」。そもそもの元ネタは、 『はみだし刑事情熱系』でいいのか?? そして『はみだし刑事情熱系』のメインライターが今井詔二だったという無駄な知識を得る。

◆第14話「ウソつきドロボーおバカ系」◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久)
 第1話でジュウオウジャーの踏み台となってあっさり弾け飛んだチームリーダー・ジャグドの配下2人が、 新たなリーダー昇進を希望して自らゲーム参加を志願してくるという変化球。これまで丁寧にジュウオウジャー5人を描いてきた反面、 やや掘り下げ不足であったデスガリアン側へスポットを当て、ナリアの台詞が大増量。膝蹴りもあるよ。
 先手となった泥棒怪人は、泥棒の背負う風呂敷包みがモチーフと思われる、やや人体から離れたバランスのデザインが秀逸ながら、 少々おつむが足りず言動・行動・作戦の全てがコミカルに展開。
 そのままギャグで進むのかと思いきや、アムの知り合った男が、難病の妹の手術費用を餌に美術品強盗の手引きをそそのかされる、 と前半のケチな銀行強盗を伏線に抱えてシリアスに急カーブ。
 間の抜けた怪人とは裏腹に、市井の男が“命か正義か”の二択を迫られる、という流れは面白かったのですが、 悪魔の誘惑に負けてマジックアイテムでジュウオウジャーを拘束した男がアムの説得で良心を取り戻すくだりが淡泊で、やや拍子抜け。 その後も怪人が隙あらばセコいギャグ(蛮鬼族的言い回し)を突っ込んでくるのも、どうも中途半端に感じました。
 これなら、前半と後半でがらっと雰囲気を変えてしまって良かったのでは。
 後、お兄さんは犯罪に協力する時は、忘れずに前金を貰おう!
 怒れるアム、という状況設定で、キャラクターと役者さんの幅を広げたのは良かったです。後、 荒川さんはどうもタスクが動かしづらいのか扱いがぞんざいに見えるのですが、セラの聴覚に続き、 嗅覚で透明化した怪人の位置を突き止める、と活躍があってホッとしました(笑)
 難病の少女という重い設定を持ち込んだ事への始末は、アムがエールを送るも振り返らずに手だけ上げて去って行く男、という、 世の中どうにもならない事もある、と苦みを残した着地。都合の良い奇跡もしらけますが、 解決策への新たな展望が1ミリも見えないという、ヒーロー物のフィクションとしては、かなり放り投げに近い結末。
 サブタイトルも含めて意図的な刑事物テイスト、という事なのでしょうが、一つ引っかかったのは、 手術を受けられると妹を喜ばせてしまった事。これがお兄さんの内心だけの問題ならこの着地で構わないと思うのですが、 アムへの情報提供の都合で妹をぬか喜びで傷つける結果になったのは、登場人物への責任として、やり過ぎではなかったかと思います。
 ジューマンとニンゲンとの関わり、という部分でも中途半端に終わった感じがあり、若干、そういう可能性が漂っている気がしますが、 出来れば中盤以降にもう一度、この兄妹は拾ってほしいなぁ……。
 次回、順番からセラ回かと思ったら、予告はタスク&レオ回な感じですが、 果たして2人は倫理観と性的嗜好の違いという巨大な壁を乗り越える事が出来るのか?!(待て)
 この流れだと恐らく、第16話から追加戦士がらみの新展開かと思われますが、ちょっと緩めた後でどう走らせてくるか、楽しみです。

◆第15話「戦慄のスナイパー」◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久)
 「君は目の前のものしか見えなくなるのが悪い癖だ。そこを直さないといつかとんでもない事になるぞ!」
 急な雨の予報を無視して洗濯物を外に干してしまったレオに、マジ説教モードに入るタスク。
 「おまえは俺のおふくろか! 先の事は後で考えりゃいいんだよ! 勝負に、絶対なんてねぇんだよ」
 「なんで洗濯物が勝負の話になるんだ!」
 「俺は! そうやって生きてんだよ」
 メンバーの中では一番演技が危なっかしいタスクですが、なかなか上達しないのか、段々、キレキャラになってきました。
 演技が微妙な人には「叫ぶ」か「淡々と喋る(クール系)」かをやらせる、というのはよくある手法ですが、 「淡々と喋る」→「叫ぶ」に移行するってよほどだと思うのですが、大丈夫か、タスク。今作の場合、一番演技が達者なレオに、 普段叫んでばっかりで馬鹿っぽいけど締める所は締めるキャラ、をあてているのが配役の妙なのですが、 2クール目に入って変な所でかぶってきました(^^;
 今作、他の4人がある程度の水準に達しているのでどうしてもタスクだけ目立ってしまうのですが、 その辺りの演出面でのフォローとして若干キャラクターが不安定になっているのがどうもそのまま、 情緒不安定気味のキャラになりつつ見えます(笑)
 ガンバレタスク。
 後、ある程度こなれてきたら、どうぶつかくれんぼクイズは、ぜひ撮り直してあげてください。
 レオとタスクの言い合いがヒートアップした所で、デスガリアン反応に出撃するジュウオウジャー。街には何故か大量の人形が転がっており、 ビルの屋上から狙撃を受けたセラもまた、人形に姿を変えられてしまう。
 メイン回ローテを飛ばされたどころか、真っ先にリタイアした上に植木鉢ダイブする羽目になるセラ、哀れ……(涙)  続けて大和もリタイアしてしまい、ソナーと望遠スコープの両者を失ったジュウオウジャーは一時撤退。 リーダー昇格を狙うハンター爺は、その狙撃により、1日で1000人のニンゲンを人形に変えようとしていた!
 必死に対策を巡らすタスクと、とにかく行動をとせっつくレオの姿が対比して描かれ、 再び狩りを始めたハンターに対してやむなくその時までに思いついた手段で立ち向かう3人だが、作戦失敗。アムが人形にされ、 残った2人は倉庫の中に追い詰められてしまう。
 「僕のせいだ……僕が、無理な作戦を立てたせいで……アムまで」
 「おい! 落ち込んでどうすんだよ! 言っただろ、勝負に絶対なんてねぇんだよ! 駄目なら次頑張りゃいい!  それでも駄目ならその次何倍も頑張りゃいいだろ!!」
 レオはとことんいい奴だなぁ。
 「勝負に絶対なんてない」という、やってみなけりゃわからない理論に、だから勢いで成功してしまえばそれでいい、 という“結果が正義”の面だけではなく、失敗したらまた頑張ればいい、という両面の意味を持たせたのは実に秀逸。
 また、レオが作戦はタスクに丸投げなのに、タスクが行動しない事を一方的に責めているだけだと感じ悪い所を、 レオにとっての「行動」とは、成功を約束されていると思い込んでいるのではなく、失敗したらまた挽回すればいいものだと思っている―― そしてそれは、誰に対してもである――とする事で、バランス取り。  馬鹿で向こう見ずかもしれないが、行動する事で誰かを責めない、それがレオの生き方である、と、 洗濯物のやり取りとの繋げ方もお見事。
 そして勿論、失敗した時に必ず挽回できるとは限らない、という所にタスクの一理もきちっと置いてあります。
 「僕は頑張ったつもりだ! でも、結果が……」
 「ふざけんな! 俺は知ってるぞ。おまえの全力はこんなもんじゃねぇ! おまえが本気になりゃ、 もっともっとすげぇ作戦が出る筈だろうが!!」
 そもそも、作戦立案途中で飛び出しているわけですが、確実に勝てる作戦が出来るまで街の被害を放置するなんて出来ない、 という1票をアムに入れさせておいた事で、ここも上手く全体のバランスを取りつつジュウオウジャーのヒーロー性もしっかり保っています。
 レオの叱咤に瞳の光を取り戻したタスクは、倉庫の中のマネキンを見て閃くと、 レオとマネキンの衣装を着替えさせた囮作戦でハンター爺の裏をかく事に成功し、白スーツレオ@ジューマンが、妙に格好いい。
 奪い取った銃を破壊すると皆は人形から元に戻り(毎度書きますが、この破壊→治療のお約束化は、 東映特撮として改善していってほしい所なのですが、子供向けにはこれが一番“わかりやすい”という事なのか)、 ジュウオウジャー反撃開始。
 ハンター爺のヒゲメランはともかく、ヒゲ外したバージョンの顔があるのは驚きました(笑)
 「自分も、撃たれてみろ!」
 至近距離からの銃撃を故意に外してハンター爺に汚いステップを踊らせるエレファント、ニンゲン界の勉強中に、 何か悪いDVDでも見てしまったのか。
 巨大化したハンター爺は、クマサカリで割とざっくり撃破。レオとタスクは、お互いの行動力と思慮をそれぞれ必要なものだと認め合い、 平和な我が家では、一斉に人々が人形から元に戻っておじさんが困っていた、でオチ。
 前回は色々な半端さが目についたエピソードでしたが、今回は細かい計算が行き届いており荒川さんがさすがの冴え。 二つの価値観をそれぞれ認めてすり合わせる、という着地も今作らしくて良かったです。
 次回、マリオおじさん回で、とにかくそつのない構成。
 ……故に気になるのですが、ここまでメイン回(私主観)の流れが、
 〔1:―― 2:赤×緑 3:赤×白 4:青×黄 5:赤 6:赤 7:緑×白 8:黄 9:赤×青 10:――  11:―― 12:緑 13:赤×黄 14:白〕
 と来ていて、当然今回セラ回だと思ったらそうでなかった上に、未だにセラだけ単独メイン回がない (しかも第9話はそれほど目立たなかった)のですが、これは追加戦士と絡むなど今後大きく扱われる予定があるのか。……まあ、 割を食うメンバーが出てくる、というのもままありますが、凄くきちっと配分されているだけに、気になる所です。次回、 蓋を開けたらセラ×マリオ回かもしれませんけど!(多分それはない)

◆第16話「ジューマンを探せ」◆ (監督:竹本昇 脚本:田中仁)
 街で動物の着ぐるみをさらうマント怪人と遭遇する大和。怪人はどうやらジューマンを探して拉致しているようだが、 ジュウオウジャーの姿を見ると退散してしまう。
 「多分デスガリアンには、ニンゲンの着ぐるみとジューマンの区別がつかないんだろう」
 というタスクの台詞は、ニンゲンとジューマンが手を取り合っている一方で、 “わかり合えない”異種族としてのデスガリアンを補強しているニュアンスがあり、結構面白い台詞。
 手分けしてさらわれた人々を探している最中、牛になったつもりで街を徘徊していたマリオが 警察に逮捕された ジューマン狩りに巻き込まれた事を知った大和は、錯乱気味に走り出そうとする。
 「おい待て大和!」「どこ行く気!」
 「決まってるだろ! おじさんを助けにだよ!」
 「焦るな! 場所もわかってないんだ!」
 「離してよ! 俺1人で探しに行くから!」
 「自分でも言ってたでしょ。少し落ち着きなって!」
 「落ち着いていられるわけないだろ!!」
 「大和……」「大和くん……」
 「……だって……俺の叔父さんだよ?」
 どちらかといえば状況をしっかり判断して行動するタイプの大和が、マリオの事を知った瞬間に身も世もなく取り乱す、 というのは凄く良かったです。
 どうしても演出的に間を入れたくなる所で、一切の間を入れずにパニックとなり、仲間の手もふりほどき、 乱暴な言葉を投げつける姿を描く事で、大和のマリオへの思いが非常に良く出ました。
 「寂しい時は、いつだって側に居てくれた。一番尊敬してる、大切な家族なんだ」
 幼少期の大和とマリオの関係が回想シーンで描かれ、どうやら大和少年は父親との仲が余り良好では無かった様子。これは、 実家は厳しい金持ちの家で勘当されているパターンか? 兄が家出した為に凄く屈折したエリートに育った大和弟とか見たいぞ……!
 「マリオさんを助けたいのは、僕たちも一緒だ」
 「その為の方法を考えよう。みんなでね」
 「……うん。なんか……ごめん」
 ここで大和が仲間達になだめられる事で、物語の構造上、大和が“与える側”になりがちな所に一つ、大和が仲間達によって (精神的に)救われる、というシチュエーションを入れる事が出来たのも良かったです。
 少し落ち着いた大和は、さらっている所を見つけるのが大変ならさらわれればいい、とニワトリになりきった囮作戦を敢行し、 見事にアジトに連れ込まれる事に成功。そこではナリアがさらってきた人々について何かを調べ、 “ゲームの駒”にならないニンゲンを始末しようとしていたが、その中に加わっていたマリオが憤然とそれに抗う。
 「遊びで、命を弄ぶな!」
 「ブラッドゲームを否定する事は、ジニス様に逆らうも同じ。この星の下等生物ごときが!」
 「生き物に……下等も……上等も……ねえんだよ! ――この星を、舐めるなよ」
 マリオ叔父さんが知らずに大和とシンクロする決めのシーンなのですが、ここはカット分けない方が良かったかなぁ。 「生き物に下等も上等もない」という台詞も良かったので、そのままのカットで後半の台詞も言ってくれた方が個人的には好みでした。 予告で見せてしまった、というのもありますし。
 マリオが危なくなった所でイーグルが割って入り、ナリア、ヌンチャク状の検査機で、予想外の近接格闘を披露。 検査機兼ヌンチャク兼銃火器、というアイテムに脅威のデスガリアンテクノロジーを見ます(笑)
 人々を逃がした後、全員合流してマント怪人と戦闘。……なんだか、キューブ銃やキューブ剣のCGエフェクトが強化されているような。
 デザインが凄くペガッサ星人(『ウルトラセブン』)なマント怪人ですが、巨大戦では意味もなく夕焼けになり、 今回は「狙われた街」だったのか。誰かの中で、『ウルトラセブン』オマージュ回だったのか。 マントール……マンルート……ンマルート……ノンマルト?! なおペガッサ星人の登場する「ダーク・ゾーン」は、 私が『ウルトラセブン』で一番好きなエピソードです。
 今回もクマックスが炸裂し、マリオ叔父さんらを無事に救出、ワープ能力を持った怪人も倒すジュウオウジャーだったが、 デスガリアン基地には既に、3人のジューマン?と1人のニンゲン?が捕らわれていた……
 次回――サイ! ワニ! オオカミ! サ・ワ・オ! サワオ サ・ワ・オ!
 歌は気にするな!
 実質的にデスガリアン掘り下げキャンペーンだったここ3話ですが、次回いよいよ、 両陣営にとっての新キャラクターが予想外の形状で登場。動物パワーの組み合わせといい立ち位置といいガオシロガネを思い出す所ですが、 今作の造りからすると意識的な所でしょうか。予告を見る限り、セラメイン回でサワオの武装が釣り竿のようなので、 その辺りの絡みも期待したい。

◆第17話「エクストラプレイヤー、乱入」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
 戦闘機軍団と共に地表に現れ、4つのスートが描かれたカードをばらまくトランプ怪人が出現。最近、 クマ専用機だったワイルドキングが久々の動物大集合光線で戦闘機部隊を瞬滅するが、ジュウオウジャーも額にカードを貼り付けられ、 更にその力でバラバラに吹き飛ばされてしまう。そしてそのカードには、同じスートの者同士が近づくと、 激しい電撃を放射するという仕掛けがあった!
 これにより同じマークだったタスクとレオが真っ先にリタイアし、アムも通りすがりの人との接触で倒れてしまい、 残るはセラと大和のみ……と、綺麗に先日のスナイパー回と逆ですが、これは話し合って狙った構造なのか。
 こんな所まで抜かりありません。
 セラはカードの効果で父親とはぐれた少年を発見するが、少年と父親のスートが同じ事を知り、 大和がカードをはがす手段を探している間に時間稼ぎで少年と話す内、ジューランドに居る弟を重ねていく……。
 カット変わったら大和くんが洗面器に顔をつけて何事かと思ったのですが、 水に濡らしてカードを剥がそうとしていた事に気付くのにしばらくかかりました(笑)
 「あのさ〜、つまり、同じマークじゃなきゃいいんだろ」
 シンナー類を並べて苦闘する大和におもむろに近づいたマリオおじさん、カードに上から別の線を書き足してみる。 この裏技が効果を発揮し、セラと大和は合流に成功すると、人々のカードに別の線を書き加え、父子も再会。 前回目立ったから今回は空気、になるのではなく、マリオおじさんがマリオおじさんらしく、解決に一役買う、というのは良かったです。
 ゲームの状況がおかしい、と地上の様子を見に来たトランプ怪人はカードケースを破壊され、カードの効果が消滅。 よく気にする状態異常の回復問題ですが、今回は「余のカードケースを壊さぬ限りはな」と事前に治療方法を怪人に自己申告させる形で解決。 これはこれで、毎度やると敵が間抜けになってしまうのが、この問題の難しい所です(^^;
 「あんたみたいに、人の気持ち踏みにじる奴、あたし、大っ嫌い!」
 集合したジュウオウジャーは新挿入歌をバックにトランプ怪人を追い詰めるが、その時、突然戦場に飛び込んできた釣り糸が、 ジュウオウジャーの武器を絡め取ってしまう!
 「はぁ……つまんねぇ獲物だな」
 そこに立っていたのは、金・銀・黒、の3色で塗り分けられた、ジュウオウジャーに似た姿を持つ仮面の戦士。
 「これはジニス様がお造りになった、ブラッドゲームのエクストラプレイヤー。名付けて、ザワールド」
 予告時点では、つりざお? と思っていた釣り竿ですが、イーグルの鞭剣とのバトルが非常に格好良く、 まさか釣り竿がこんなに格好良くなるとは驚きました(笑)
 ザワールドのモードに合わせて、釣り竿・銃・棒、と3形態に変化する武装のギミックもかなり格好良く、新キャラとしてのインパクト十分。
 「あいつ、大和と同じ事が出来るの?!」
 ザワールドは複数の動物パワーを操り、次々とジュウオウジャーを一蹴。無条件かはわかりませんが、 どうやら“ニンゲンはジューマンパワーの器になれる”というのは、今作の大きな物語とも関わってきそう。
 「俺とやるなら、これぐらいはやってみな! 野生・大解放!」

サイ! ワニ! オオカミ!
サ・ワ・オ・サワオ・サ・ワ・オ!!

 サワオは三つのジューマンパワーを同時解放し、エクストリームサワオに。
 「レベルが違うんだよぉ!」
 その怒濤の攻撃に、ジュウオウジャー完敗、でつづく。
 後半3分の1、縦三分割のデザイン・金銀黒をまとめて使う贅沢な配色・メインウェポンが釣り竿という衝撃のサワオ登場編でしたが、 後回しになっていたセラメイン回としても良い出来でした。
 モグラ回の家族ネタを引っ張って家族思いな所を押し出しつつ、カードに線を書き足す所で顎の辺りまでぐいっと引っ張ってしまう思い切りの良さも描く事で、 優しさだけではないセラの持つ格好良さを合わせて見せたのがとても良かったです。女優さんの顔だしクライマックスまで引っ張る事を考えると多少悩む所ではあったと思うのですが、 思い切った事でセラのキャラクターが非常に引き立ちました。セラの力強さを描くばかりなでく、 一度警戒した少年の心を和ませるクッション作用になっている辺りも巧く、この内容を前半3分の2に押し込んだのはお見事。
 あと、セラと大和が叔父さんのアイデアが有効か試す場面で、“やたら近い”というサービスショット(笑)も良かったです。
 その上で、前回の振りに加え、ここ3話ほどデスガリアンサイドの描写をやや増やした事で、 ジニス様がブラッドゲームに新たな趣向を取り込むという新キャラ登場の流れも、違和感なく収まりました。
 この先デスガリアンにとってどう転がるにせよ、“ジニス様の遊びが原因”というのは今作として一番損をしない理由付けですし、 デスガリアンのテクノロジー的な優位も強調でき、追加戦士(候補)の組み込み方としても秀逸。
 ジニス様に精神改造でもされているのか、今のところ乱暴な口調で暴れているだけで、サワオ個人の人格というのは見えていませんが、 どういう形で個性が発揮されてくるのか、楽しみです。
 この流れだと、大和くん、3つめのジューマンパワー入手の可能性もあるのかなぁ。
 次回――サワオロボ登場。
 ところで、何故、タスクとセラは、まだ冬服。

◆第18話「きざまれた恐怖」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 「へぇ……。しぶといなぁ」
 エクストリームバーストでジュウオウジャーを蹴散らしたサワオは、キューブライノス、クロコダイル、ウルフを召喚。 最初から7・8・9と数字が入っていたり、召喚音声がジュウオウキューブと同じだったりする所に、 ジニス様の職人魂を感じます。
 声紋分析と再現ぐらい、デスガリアンテクノロジーなら朝飯前なのです。
 キューブアニマルを繰り出すジュウオウジャーに対し、サワオは動物合体を発動して7・8・9合体によるトウサイジュウオウが誕生。 戦隊の作劇上2話連続敗戦で終わるのは難しかったのか、前回の敗北からの引きで、前半にロボが完敗するという構成。
 乱入キャラクターを使ってゲームを面白くしてみろ、というジニス様のオーダーを受け、トランプ怪人が再出撃。 今度は箱の中に次々と人間を閉じ込めていく。箱についた4枚のカードの内、ハートを引けば箱は開放されるが、 ジョーカーを引くと爆発し、ところがハートはトランパスだけが持っているという仕掛けなのですが、あっさり判明するなど、 色々それどころではないのでトランプ怪人の扱いは、非常に雑(^^;
 話の主眼が完全にそこに無いのですが、「ザワールドを呼ぶ」というブラフにジュウオウジャーがすくむだけで、 サワオを組み込んでよりゲームを面白くする、という要素も特に無かったのは残念。
 「本能に刻まれた恐怖は、簡単にはぬぐえない。フフフフフ、これからどう足掻くか、見物だねぇ」
 それはそれとして狼狽するジュウオウジャーにご満悦のジニス様であったが、野生の立ち直りは想像を超えて早かった。
 「もうやめよう。自分を誤魔化しても仕方ないよ」
 強がる仲間達に、大和は率先してザワールドへの恐怖を告白し、他の4人も正直な心情を吐露。
 「それでも――みんなを助けたい」
 「ああ」
 「この星を守りたい」
 「ザワールドが強いかどうかなんて関係ないんだ。考えよう。みんなを助ける方法を」
 強敵に対する恐怖と向き合う、という展開はオーソドックスなものの、そこから、どうすればサワオを倒せるかではなく、 どうすれば囚われの人々を助ける事が出来るのか、という地に足のついた目的意識をハッキリさせる、というのが今回良かった所。
 地味ながら非常に堅実に、ヒーロー物が陥りがちなパワープレイ――マジックワードによる強行突破――を回避しています。
 再びトランプ怪人に挑むジュウオウジャーの前に今度こそサワオが乱入。
 「釣りなら、俺が付き合ってやる!」
 イーグルは鞭剣でサワオを捕まえるとそのまま戦場を遠く離れ、時間稼ぎの一騎打ちに。残った4人はその間にトランプ怪人を撃破し、 とうとう、4人で動いてしまうワイルドキングは、さすがにフルパワーは出せないという言及はあったものの、クマックスで怪人を両断。
 一方、《一騎打ち:○》のゴリラで奮戦する赤だったが、サワオエクストリームの連続攻撃を受けてしまう。 しかしトドメの一撃を放つ寸前、急に苦しみだしたサワオの変身が解け、上半身裸になった所で、つづく。
 物凄くガリガリのサワオ中身ですが、役者さんが虜囚の役作り?で、体脂肪率3%ぐらいにまで絞ったそうで、凄まじい。
 強敵が腹痛(頭痛)で早退パターンが続くのは好きではないのですが、予告見る限り、大和くんがグイグイ攻めてくれそう。 いよいよサワオのパーソナリティが見えてきそうで、どう転がしてくるのか、楽しみです。

→〔その4へ続く〕

(2018年8月6日)

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