■『動物戦隊ジュウオウジャー』感想まとめ2■


“大空の王者、ジュウオウイーグル!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『動物戦隊ジュウオウジャー』 感想の、まとめ2(7話〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


◆第7話「ゴゴゴゴーストが出た」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久)
 春休みスペシャル『仮面ライダーゴースト』コラボ回。ここ2年続いた1時間スペシャルではなく、30分枠(&春映画の宣伝要素無し) という事で物語的な絡みは一切なく、『ジュウオウジャー』の1エピソードの合間に突然シオマネキングが現れて、 それとゴーストが戦って帰っていく、という内容。
 アムに家事当番を押しつけられ不満たらたらもつい完璧にこなしてしまうそんな自分がちょっと好きだがそれはそれとして一言云ってやらないと気が済まないと買い物に飛び出したアムを追いかけたタスクだが、 二人は邪悪の気配を感じ、街中でクバルと遭遇。クバルが作り出したスペーススポイトに吸われたアムはメーバに注入され、 アムメーバと化してしまう。
 一方、同じく邪悪の気配を感じて飛び出した大和達3人は、何故か海岸で、ショッカー怪人シオマネキング(とりあえず関智一を当てて何とかしてもらうメソッド) と遭遇。そこに現れたピュアハート18歳・天空寺タケルが仮面ライダーゴーストに変身し、 何はともあれ邪悪滅すべしと4人で一方的にシオマネキを撲殺。
 これを見ていたジニス様がノリでコインを投入すると見事に巨大化したシオマネキだが、ジュウオウワイルド623でやっぱり撲殺。
 と、コラボ部分はざっくり割り切ったバトルオンリー。
 正式に話数カウントされた回で「偉大なるショッカー」とか言われると個人的には萎えますが、 まあ今回に関してはヒーロー競演を楽しめればそれで良い、と割り切るエピソードでしょうか。
 勿論、思わぬ化学変化で予想を超える面白さが発生するに越した事は無いですが、 『ジュウオウジャー』序盤がかなりかっちり進んでいる作品なので、無理にアクセル踏み込まずに安全運転で切り抜けるという判断は良かったと思います。
 その頃、クバルに区切られた時間に3人が間に合わないと単身突撃したタスクは、必死にアムメーバを説得しようとするもその銃に撃たれて倒れてしまう……が、 それはギリギリで意識を取り戻したアムとタスクの連携プレーで、二人はクバルの隙を突いてスポイトを取り戻すと、アムは無事に復活。 クバルはジュウオウジャーをゲームの良き障害として認めると、宇宙船に帰宅するのであった。
 割と出鱈目な技術力(実質、一撃必殺)を披露したクバルですが、スポイトから押し出したゲル状の物体がアムに戻ってホッとしました(笑)  また、フェンシングスタイルの戦闘でもそれなりの力がある所を見せ、アザルドに続いてクバルに少し特徴付け。敢えて言えば、 今回はクバル回だった感。
 最後は、アムが正気を取り戻すきっかけとなったタスクの
 「アム、応えてくれアム。僕は、僕は君の事……!」
 という気になる言葉の続きは、
 「ちゃんと注意しないと気が済まないからな!」
 だったでオチ。
 セラとレオの距離感が近い中、タスクとアムの距離感も近づけすぎてしまうと、 ただでさえ一人だけニンゲンの大和があぶれてしまうのでギャグにするのは予想通りでしたが、タスクはそのルートを真っ直ぐ行くと、 ちょっぴり変(態)フォルダが待っているので、それはそれで気をつけろ!
 ちなみに、見る限りコイバナの気配に一番ワクワクしていたのは大和くん。
 引き続き女の子に夢一杯です。
 去年のスペシャルはコラボした割に両作品のキャラクターの絡みがほとんど無く、 いかにも撮影スケジュールの厳しい気配が漂っていましたが、今年はシナリオ時点で更に撮影スケジュールに配慮したと思われ、 『ジュウオウジャー』パートはタスク・アム・クバル、『ゴースト』競演パートは大和・セラ・レオ、と完全に出演を分担して進行。
 クライマックスで合流する際も大和達は変身状態でしたし、アクションもほとんど無いので、スーツアクターも代役だったのかも。
 メインライターを務めた『海賊戦隊ゴーカイジャー』以来、荒川稔久の3年ぶりの本家参加は、 後輩が本筋に集中できるように面倒くさい仕事を片付けにきてくれた助っ人感が強いですが、今後も参加はあるのかなぁ。 ジューマンアイドルユニットネタとかやってくれてもOKですよ!(え)

◆第8話「サバンナのメロディー」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
 檜山ヤンキー怪人とチーム・アザルドの親和性高すぎ(笑)
 今日もジュウオウジャーはチラシ配りに精を出し(便利な導入)、 落ち着きの無いレオはチラシ配りをさぼってフラフラと歩いている内にミュージシャン志望の青年・大輔と出会い、 そのオリジナル曲をいたく気に入る……とジューマンと大和以外のニンゲンが触れあう、異種族交流エピソード。
 一方、欲望に忠実なアムがチラシ配りの途中で和菓子屋で買い物して出てきた所に近づくセラ。
 「アムも真面目にやろうね」
 「……うん」
 (そうしないとレオと同じフォルダに入れるよ?)という心の声が聞こえた気がします。
 デスガリアン反応に、大輔から強奪したヘッドフォンをかけたままで駆けつけたレオは、そのお陰で、 バイク怪人のパラリラノイズの防御に成功。凶暴化音波という作戦はスタンダードですが、 凶暴化した人々が「ぱらりらぱらりら」口にしながら暴れる、というのは珍しいか(笑)
 耳の良すぎるセラが耳を塞いでもなお凶暴化してしまうなどあったものの、レオにノイズが通用しなかった事でバイク怪人は一時撤退。 だが、レオからヘッドフォンを取り返そうと追いかけていた大輔が、凶暴化して柱を何度も殴った事で、 大事なオーディション前日だというのに右手を怪我してしまう……。
 「許せねぇのはわかってる! 気が済むまで殴ってくれ! でも、オーディションには行け!」
 悪いと思っているから好きなだけ殴れ、というのは、潔いと同時に割とタチ悪い感じもあるのですが、同時に、 殴ったらオーディションへ行け! と持ち出すバカか紙一重かの前向きさにレオの善性と個性が巧く出ました。
 「俺はあの曲、マジで好きなんだよぉ! ニンゲンじゃねぇ俺がこんなに気に入った曲だぞ。ニンゲンが気に入らないわけがねぇ!」
 レオはジューマンの姿を見せ、それに怯えて後ずさる大輔に、明日引きずってでもオーディションに連れて行くと宣言。
 ここで大輔がレオの変身を簡単に受け入れずに恐怖を見せたのは良かったし、その反応を受けてもなお大輔の事を考えるほどに、 レオが大輔の音楽を好きだし、相手に対して真っ直ぐに向き合おうとする姿が良い形で描かれました (レオが意図的に変身したのでも思わず変身したのでもどちらでも話が成り立つのも秀逸)。
 この真っ直ぐさが、男の信念を曲げるぐらいだったら相手に嫌われた方がマシ、と、レオから見れば矛盾は無いけど、 セラから見るとレオが普段と違って自分に正対していないように見える、というのが苛立たしくてややこしい、 というのも以前のエピソードと巧く繋がっています。
 翌日、バイク怪人が強化再登場し、今度は厳重に対策していたセラ以外の3人がぱらりらしてしまう。
 皆公平に目の下を黒く化粧する事になりましたが、最初は手で耳を塞いだ程度で防げ、 強化後は〔ヘッドホン+マフラーぐるぐる巻き+ヘルメット〕−鋭敏聴覚、で防げ、バイク怪人の性能には若干の疑問が漂います(笑)
 その頃、大輔はレオに引きずられる事なく自らオーディション会場に向かおうとしていた。
 「ライオンの君に響いた……俺の曲なら、人間相手でも、爪痕ぐらい残せるかなって」
 大輔からヘッドホンを受け取ったレオは戦いの場に駆けつけ、オーディションの演奏開始とレオのヘッドホンから流れる大輔の曲、 とを重ねる形で戦闘スタート。怒りのレオは、大声でパラリラノイズをかき消しながら本能覚醒し、バイク怪人のスピーカーを破壊すると、 皆回復。ダッシュ攻撃を繰り出すバイク怪人を一対一で叩きのめし、トドメはハンマープライス&ライオンクローのダブルアタック。
 巨大化したバイクにワイルド654が苦戦するが、赤がゴリラからイーグルに乗り換えて、早くもキングと同時使用。
 「後ろからとか、しゃばい真似を!」
 「あなたに言われたくないんですけど」
 キングと切り結ぶ怪人を、躊躇無く背後から撃つ白、えぐい(笑)
 ひるんだバイクに、キングとワイルドのダブル必殺技が炸裂。ゴリラに赤が乗っていなくても、 ワイルドは動くどころか必殺技まで使える事が判明し、けっこうフレキシブルですキューブロボット。
 大輔のオーディションの結果は残念ながら不合格。だが担当者から名刺を貰って夢への道は続き、 レオは歓喜の雄叫びをあげるのだった……と、合格の数歩手前で収めて綺麗に着地。
 一段落しての小品というエピソードでしたが、早めにジューマンとニンゲンゲストとの積極的な絡みを描いたのは良かったと思います。 油断していると、戦隊メンバーが主要周辺キャラクター以外の世界と関わりがないまま進行してしまい、 物語を集約しようとした時に地雷になる、というのが時折ありますので。
 ところでEDの「すぐファンファンエレファント」というのがどういう意味かずっと悩んでいたのですが、 「口うるさい小舅のタスク」という事か! と前回今回で納得。

◆第9話「終わらない一日」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:荒川稔久)
 アバンタイトルから、巨大化した敵と戦うジュウオウキング。
 投げつけられた鉄塔をはじき返し、「美しいっていうのは、こういう事だ!」と叫ぶ大和くんは、 ジュウオウゴリラもノリノリですし、割と、筋肉とか好きなタイプですか?
 花怪人をずんばらりんするジュウオウジャーだが、家に戻ると再びデスガリアン反応。急いで現場に向かうと、 暴れていたのは倒した筈の巨大な花怪人だが、ジュウオウジャーは何の戸惑いもなくジュウオウキングを呼び出すと再び戦いを挑み…… 繰り返される戦い。
 タイトル通りのループ物ですが、原因は怪人の悪夢パヒュームを浴びた為で、本当のジュウオウジャーは繰り返される夢を見ているのだった、 と早々と種明かし。花怪人は人々を眠らせた後、地下で巨大なスペース食肉植物を芽吹かせようとしていたのだった。
 ジュウオウジャーを倒して地球を滅ぼすだけだったら今回で最終回ですが、あくまで本題はゲーム、というのはデスガリアンらしい所。 それにしても、クバル組は優秀です。
 夢の中で手紙を書いていたセラは何かの叫びを聞くが、再びデスガリアン反応に飛び出すと巨大な花怪人を目にし…… 全く同じ戦いが繰り返されそうになった所で、不思議な既視感に気付く。
 「おかしい。今の台詞、前に聞いた気がする!」
 花怪人を倒した5人は懸命に記憶を辿り、大和は今朝あった大事な出来事を思い出す……それは、早朝、窓辺で涙を流すセラの姿だった。
 朝から女の子の涙を見てしまって大和くんドッキドキ。
 「これって……セラの家族?」
 「本当は、昨日までに、王者の資格見つけて、ジューランドに……帰りたかったなーって思ったら、ついね」
 「昨日まで?」
 「今日、両親の結婚記念日なんだ」
 ここで「家族」という要素を物語にしっかり組み込むと共に、何事にもきびきびとしたセラが、家族を想う柔らかさと弱さ、 普段と違う一面を見せる、というのは良かった。
 「今見た事、みんなには内緒にして」
 そんなセラに、手紙を書く事を大和は勧める。
 「届くって、信じて書くんだ。そうすれば、きっとセラの想いは、お父さんやお母さんに伝わるよ」
 現実ではそこでデスガリアン反応が感知され……セラの家族の映像が入ったブローチを拾ったままだった事を思い出した大和は、 ポケットを探ってその針で指を突き刺した痛みで自ら目覚めるという、サバイバー属性を発揮。
 大和に起こされて目を覚ましたメンバーは怪人にパヒュームを浴びた事を思い出し、 夢の中で凄く駄目な感じだったタスクは、眠りが深かった為と鋭敏嗅覚の設定を拾いつつ、 目覚めないタスクの顔に水を浴びせるレオとアム(笑) 野生のサバイブは厳しいのです。そしてどんどん、 コメディリリーフに侵食されていくタスク。
 戦隊に毎年、知的クールポジジョンがあると思うなよ!
 夢の中に届いた叫び声を辿ったセラ達は、地下で球根を育てる怪人と遭遇。
 「地球が滅ぶ悪夢を見せてあげます。うふふふふー!」
 「この星を、なめるなよ!」
 からイーグルウイングで花粉を跳ね返し、更にシャークのアニマル水流で無効化、というは格好良かった。 そして黄と白の銃撃で花が壊れて、悪夢は無効化。状態異常からの回復にはもう一手間あった方が好みですが、 パラリラノイズもマイク壊したら回復していたので、デスガリアン所属宇宙人は、そういう仕様の模様。
 「これでもう悪夢とはおさらばだ!」
 「いいえ。現実の方も恐ろしいわよ」
 成長した球根から伸びた触手に捕まりピンチになるジュウオウジャーだったが、そこに地下からの叫び声の主――キューブモグラが現れ、 5人を救う。
 球根の伸ばした根がモグラを目覚めさせて……という展開なのですが、モグラが5人を助ける理由が「キューブアニマルだから」 だけになってしまっており、出来ればジュウオウジャー側の能動的なアクションの影響でモグラが助けてくれる、 という形にしてほしかった所でちょっと残念(キューブアニマルも純粋に邪悪に反応する体質なのでしょうが)。
 流れを考えると、根っこに絡まったモグラを助けるプロセスが尺に収まらなかったのかもしれませんが。
 野生解放した5人は花怪人を叩きのめし、ゴリラナックルは一発殴るだけで済まさず、 殴って殴って叩き潰すのがいつ見ても惨い。
 超筋三段パンチ!
 巨大化した花怪人の植木鉢シールドにワイルドパンチを弾かれるも、新たな力、モグラドリルでジュウオウブレイク。
 戦い終わって、セラ家の結婚記念日の話から、ジューマン達の望郷の念に振り、ちょっとしんみり。
 「帰れるのかな……」
 「帰れるよ! 決まってんじゃん」
 ジューマン4人が帰還するとニンゲン界の危機が高まるのですが、第1話から一貫して、大和の優先順位がハッキリしている、 何も考えていないわけではなく、大事な事が決まっている、と見えるのは今作の良い所。
 「そうだ。大和のお父さんとお母さんは、どんな人なの?」
 「……お、俺の?」
 動揺して言葉を濁す大和に、マリオ叔父さんが強引な助け船を出し、善玉サイド誰も彼も隠し事と誤魔化しが苦手な世界です、 キムチー!
 次回、遂にジニス様出馬で、デスガリアンは本当に2クール目を拝む事は出来るのか。そして――!

◆第10話「最も危険なゲーム」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 「探したい人は探す。諦めた人はお疲れ様」
 アムさん格好いいぃぃぃぃぃぃぃ!!
 それによって善悪の判定をするのではなく、あくまで個々の選択としてばっさり処理する辺りが、凄く実務的。
 また、「お疲れ様」という、これまでの作業は作業で認めた上で突き放す、という言葉の選択が絶妙です。
 ホームシック気味のジューマン達を気にして海へ行こうと持ちかける大和だが、一番肝心のセラに拒否され、 かえってぎくしゃくしてしまう。更にレオとマリオ叔父さんだけがはしゃいで雰囲気最悪になるが、大量のメーバが街で大暴れし、出撃。 メーバ軍団を軽く蹴散らすジュウオウジャーだが、そこにホログラフでジニスが現れると、ナリアを進行役に自らゲームをスタートする……!
 「そのドームに触れた生物は、消えて無くなります」
 触れた生物を消滅させながら徐々に縮んでいく光のドーム内に隠された解除スイッチを探せ、というゲームの内容は凶悪なのですが、 ドームが設置・縮小を始めた途端に人々が我先にと逃げ始めてしまい、生物消滅のリアリティと恐怖感が足りなかったのは、残念。 出来れば、「なんだこれ?」と軽い感じで触れた人間が消滅してしまい、それを見た人々がパニック状態で逃げ出す…… みたいな流れにしてほしかったですが、人体消滅描写とかは、近年は出来ないようで。
 精一杯の努力として代わりにネコが消されましたが、ネコ好きの人は、ネコーーーーーー! となった所か(^^; どうせ消すなら、 ネコが消えてから人が逃げ出す、という形にしてほしかったですが、ちょっとこの辺り、折角の仕掛けの描写が全体的に溜め不足。 あくまで「生物を消す」ので、建造物などの破壊をともなわない、というのは良いアイデアだったのですが。
 手分けしてスイッチを探すジュウオウジャーだが、小さなスイッチをなかなか見つける事が出来ない。
 「見つけなきゃ帰れないのに、ちっとも見つからない……。まるで、王者の資格探しだ……」
 ここで今回のキーであるスイッチ探しと、全体のキーである資格探しを絡めたのは巧かった。
 一度合流する5人だが、スイッチと資格探しを重ねて暗澹とするタスク、セラ、レオは弱気な言葉を漏らし、 大和と険悪な雰囲気になってしまう。
 「どうしたんだよ?! みんなの命がかかってるんだぞ。弱気になってる場合じゃないだろ!」
 「わかってるよごちゃごちゃうるせえな! 強気で探して見つかるならとっくに王者の資格見つけてジューランド帰ってんだよ!」
 レオが苛立ちと不安を爆発させ、間に入ったアムは冒頭の台詞でその場をばっさり収めると、大和を連れて探索を続行。
 「みんなじわじわ溜まってたんだよね〜」
 ジューマン達がどうしても、スイッチ探しと資格探しを重ねてしまう事を大和に説明するアム。
 「俺……全然わかってなかった……」
 「しょうがないよ。大和くんと私たちじゃ、立場違うもん」
 「……見つけるしかないよな」
 「え?」
 「スイッチ見つけられたら、王者の資格も見つかる。ジューランドに帰れるって、信じられるかもしれない」
 エピソードの問題と物語全体の問題を重ねてキャラクターの心を揺らすだけでは満足せず、 そこからもう一繋ぎして逆の“希望”を見出させる事で、大和のヒーロー性を見せる、というのは実にお見事。
 物語として、どうして風切大和はヒーローなのか? というのがしっかり描かれており、こういった、 説得力を持った背景の構築が出来るか出来ないかというのが、一つ、良い作品の悪い作品の分かれ目といえると思います。
 一方、残り3人はドームの内外で離ればなれになった親子を発見し、逃げ遅れた子供を助けると、囚われた人々の恐怖を知る。
 「みんな、不安なんだ……」
 「人間も……ジューマンもない」
 「こっから無事に帰りてぇのは、俺等も……大和も一緒なんだ」
 「後で謝んなきゃ」
 「その前に探そう。――最後の最後まで」
 主に私怨と義理人情で戦ってきたジューマン3人が、種族を越えた誰かの為の一歩を踏み出し、ヒーローとしてステップアップ。 大和のステップアップはゴリラ回で描かれており、混成チームであるジュウオウジャーが順調にヒーローとしての階段を上っております。
 ……この構成だと、アムだけステップアップ展開が無いのですが、アムだけは先に踊り場で待っていたという事なのか、この後、 アムがステップアップするエピソードも描かれるのか。
 どちらにせよ、物語として“ヒーローはどうしてヒーローなのか”を手抜きせず丹念に描いていこうという意識が見えるのは、 非常に好み。
 望遠視力でスイッチを発見した大和は大声でセラに場所を伝え、セラの指示でレオが壁を駆け上り、 弾き落としたスイッチをタスクが鼻でキャッチ。チームプレイでドームは消滅するが、その解除スイッチは、 ジニスが開発した殺戮マシン・ギフトの起動スイッチでもあった。かつて、ロールアウト直後に瞬く間に10の星を壊滅させてしまい、 ゲームにならないと封印されていたギフトは、高精度の分析力と見た目を裏切るスピードでジュウオウジャーを圧倒し、ジニス様、大喜び。
 「ふふふははははは、さあ! もっと悲鳴を響かせたまえ!」
 野生解放も通用せず、ゴリラパワーで圧倒しようとする赤は、掟破りのいきなり巨大化で跳ね返されてしまう。この、 躊躇無く最適解を実行する姿は、凄く殺戮マシンで良かったです(笑)
 惑星を消し飛ばすギフトンソードの発動を何とか食い止めるジュウオウキングとワイルドだが、そのダメージで合体&変身解除。 倒れた大和は崩れたビルの破片に押しつぶされそうになるが、飛来した何者かが、それを救う。大和を助け、振り返ったのは、 険しい顔つきの白髪の男――で、続く。
 ジニス出馬・強敵登場で初めてのジュウオウジャー完敗となりましたが、吹き飛ぶ二大ロボの姿に、 ジニス様が机叩いて高笑いしており、急に小物っぽくなってしまったのは気になる所。個人的にはジニス様にはもっと、 余裕シャクシャクで退廃ロマンに耽溺して、無駄に面白いだけの作戦とかを愉しんでいて欲しかったのですが。
 今回、ジニスが「オーナー」である事がアザルドの台詞で判明しましたが、こうなると、デスガリアンは組織全体ではなく、 オーナーだけすげ替えられる、という可能性もありそうかなー。アザルド(不死身?)、クバル(超優秀)と見せてきて、 今回の描写でジニス様がデスガリアンで一番面白くなくなってしまったのは、引っ張るつもりなら少し不安な所です(^^;
 そしてとうとう人間の姿で登場した鳥男。この先どうなるかは全くわかりませんが (すんなり6人目になるには一人だけ老けキャラすぎるのが気になります……前例はあるといはいえ)、 もし今後このままレギュラーになった場合、村上幸平への愛で井上敏樹参戦はあるのか。

◆第11話「動物大集合」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 第11話でここまで詰めてきたか……!
 序盤戦まとめの一山として、素晴らしい出来でした。とにかくここまで、構成と盛り上げ方が非常に綺麗で、 この出来を維持していってほしい……。
 「もう大丈夫だ」
 人相悪いが口調は優しい鳥男の声を聞きながら大和は気絶し、充電切れでギフトが機能停止している間に一時退却した4人は、 家の前で転がっている大和を発見する。
 「鳥男?!」
 「あの泥棒が、どうかしたのか?」
 目覚めた大和はタスクの言葉に思わず言葉を濁してしまうが、ポケットの中に赤い羽を見つけ、自分が間違いなく鳥男に助けられた事、 そして鳥男が人間の姿をしていた事――王者の資格を持っている事――を確信する。
 「なんでみんなに言えなかったんだろう……」
 その夜、眠れぬ夜を過ごす大和は、自問自答。ここで、ギフトが休憩中に自分たちもとにかく寝て傷を回復だ!  というジューマン達には何だか凄く動物っぽさを感じて納得してしまいます(笑)
 「信じたいのかな……俺の恩人が、泥棒なんかじゃないって」
 仲間達への友情と、恩人への想いで揺れる大和……みんな、タスクのせいだ。
 そこにマリオ叔父さんがやってきて、部屋でホットミルクをご馳走になる大和は、『真実のワシ』と名付けられた、 カラフルなワシの彫刻を目にする。
 「真実って……ワシは、こんな色じゃなくない?」
 「なーに言ってんだおまえ。芸術家にとっちゃ、自分の信じるものが、真実だ」
 「……自分の、信じるもの」
 この叔父さんの言葉を受け、正義とは何かに惑う時、自分の信念を貫く所にヒーロー性が存在する、 という従来的な描写に寄るのかと思いきや、
 「まあおまえは、学者だかんなぁ。学者ってえのは、自分の気持ちで、真実を曲げちゃいけねえんだろ?」
 「え? ………………うん。そうだね」
 ここで、芸術家と動物学者、という2人の社会的立場に絡める形で、正義の在り方を語る時に、 それぞれの所属する環境がその背景に影響する、という戦隊ではオミットされがちな要素が組み込まれたのは絶妙。
 さすがに酒こそ酌み交わしませんでしたが、「久々に、飲むか」という叔父さんの台詞は、そういったニュアンスを示唆していますし、 大和とマリオおじさんが、大人同士として向き合う(だから仕事の話になる)という戦隊では珍しいシーンから、 風切大和とは何者か?というのが浮かび上がり、普遍的なヒーロー性の手前で、その存在が、 ぐっと大地に足を踏みしめて立ち上がる事になり、素晴らしい。
 この、対等な大人の関係と、社会の中における自分の立場から問題に向き合う、という視点は戦隊としては割と攻めていると思うのですが、 巧く用いてくれれば大きな特色になると思うので、今後も期待したい部分。
 また、二つの価値観に正誤をつけない事で、おじさんのメンター性も確保。二つの価値観を並べて見せる、 というのは第3話でも強調されていますが、かなり意図的に入れている感じでしょうか(全体が、 ニンゲンとジューマンの交流の物語ですし)。
 真実とは何か――決意のまなざしになった大和は、翌朝、皆に鳥男を見た事を教え、資格を持っている可能性を告げて謝罪。 タスクに匂いを辿る為の羽根を渡すと、自分はまだ怪我が痛むから、ギフトが動き出したら連絡する、と言ってその場に残る。
 「王者の資格、何がなんでも取り戻せよ」
 大和の激励を受けて出撃した4人は、山中で首尾良く鳥男と遭遇。
 見知らぬ連中からいきなり、羽根の匂いを嗅いできたと言われた鳥男は、 内心多分どん引きです。
 「大和は俺を覚えていたか」
 間抜けな二人称も気にしたそぶりは無く、なんだか嬉しそうな鳥男は、自分が王者の資格を盗んだ事を明言。
 「あんな世界との繋がりは、切れてしまえばいい」
 資格を渡す事を拒否して4人と戦闘になり、女の子にも躊躇無く攻撃するところが素敵(笑)
 一方、大和は4人に連絡する事無く、動き出したギフトに1人で立ち向かおうとしていた。
 「1人で来たのですか? 仲間はどうしたのです?」
 「家に帰る時間が来たんだ」
 今回、地味にお気に入りの台詞。
 そして大和くんは考え足らずなわけでも成り行きでもなくて、いつか来る今日という日の事をきちんと考えて覚悟していた、 というのが台詞や表情、物語の積み重ねから見えてくるのが、素晴らしい。
 「この世界は俺1人で守る! 本能覚醒!」
 ジュウオウイーグルはナリアの生み出したメーバを蹴散らすと、翼を広げて巨大ギフトに単騎突撃。同じ頃、 鳥男は自前ガリアンソードを振るって4対1でもジューマン達と拮抗した戦いを見せ、しばらく戦闘を交互に展開。 だがイーグルはギフトにはたき落とされ、鳥男も本能覚醒した4人に次第に追い詰められていく。
 「これが覚醒した、王者の資格の力か……!」
 遂に鳥男は石状のままのキューブを懐から落とし、ニンゲンに変身は出来るが、本能覚醒は出来ない事も判明。だがその時、 4人は大和がギフトと戦っている事に気付き、資格を拾うか、大和を助けに行くか、の選択を迫られる……!
 一方で大和の覚悟と決断を描き、もう一方でホームシックを煽ったジューマン達に選択を迫るという二面の展開が綺麗にはまりました。 葛藤と選択をしっかり組み込んでくれる物語は、好みです。
 「まだだ……あいつは、俺が倒す!」
 イーグルを破られた大和はゴリラに変身するも、やはり弾き返され、倒れ伏す。
 「駄目だ……ここで俺が踏ん張らなきゃ……みんなが、ジューランドに帰れないんだ……」
 ちょっと「さようならドラえもん」になりすぎた感はありますが(^^;、必死に立ち上がろうとする大和の耳に届く、大きな声。
 「何やってんだばーか」
 そこに現れる、4人のジューマン達。
 「鳥男は?! 王者の資格は取り返せた?!」
 「それはまた今度にした」
 「……なんで?!」
 「決まってんだろ! 仲間がやべぇのにほっとけるか!」
 「大和くん、意外と無茶するからね」
 「私たちが助けてやらないと」
 「大和、僕たちはもう、帰れないからここに居るわけじゃない。僕たちの意志で、ここに居るんだ」
 「…………みんな」
 「大和! 五人であいつをぶっ倒すぞ!」
 「ああ!」
 ジューマンとニンゲンが、手を繋ぎ、再び立ち上がる大和。
 お互いに決断と選択を乗り越えたからこそ、繋がる手は劇的となり、ここで背後のビルの窓ガラスを鏡に見立て、 倒すべき巨大な敵と立ち向かうヒーロー達の姿を一枚の画面に収めたのは好演出。
 今、一つの群れが、吼える――

「「「「「本能覚醒!!」」」」」
「大空の王者・ジュウオウイーグル!」
「荒海の王者・ジュウオウシャーク!」
「サバンナの王者・ジュウオウライオン!」
「森林の王者・ジュウオウエレファント!」
「雪原の王者・ジュウオウタイガー!」
「動物戦隊!」
「「「「「ジュウオウジャー!!」」」」」

 OPがサビから流れ、ちょっと溜めが入ってからギフトを見上げるイーグルという俯瞰カットで、
 「俺たちを、なめるなよ!」
 も見事にはまりました。
 5人揃って野生全開のジュウオウジャーは、ガリアンソードでギフトの足を止めて一斉射撃。ひるんだ所を転ばせると、 その隙にキューブアニマルを召喚。
 「一人じゃないんだ……俺たちは、支え合ってる!」
 5人の心の繋がりに応えるかのように新たな合体システムがアンロックされ、6+2に増える火の輪。
 「動物大合体!」
 により、8つのキューブアニマルが合体した、ワイルドジュウオウキングが誕生する!
 名前がストレートな足し算だったのはビックリしました(笑) そして、モグラとキリンの意味は。
 意気上がるジュウオウジャーは、皆で景気よくキューブを回し、アニマル大集合ビームでギフトを撃破。初期の全合体で、 いきなりオーラ飛ばし系の必殺技が来ましたが、今後どう、エスカレートさせていくのでしょうか。
 割とギミックの理由付けをしている今作において、ロボ合体だけやたら謎の電波なのは気になりますが、この辺り、 鳥男の「あんな世界」と絡めて、しっかり考えてあったりすると面白いのだけどなぁ……。
 後、どうでもいい話としては今回初めて、ロボ搭乗時の青と白が、同じ内股でも違う座り方をしているのに気付きました。細かい。
 「まったく……面白い星だよ。ふふははははは」
 ジニス様はいきなり激昂して机を叩いたりしたらどうしようかと思いましたが、余裕の態度で良かった。 次回はちょっと軽い話になるようですし、しばらくは安心できそうです。
 鳥男は資格を手にして飛び去るが、果たしてその真意と目的は何なのか――? 追加戦士で強化展開かと思わせて一度はぐらかしてきたのは、 近年お約束になりすぎている追加戦士に変化を与えようという意図がありそうですが、 人相悪くてジューマンには厳しいけど大和には優しい、という謎めいたスタンスは案配が面白く (ここで大和にも厳しいとただ嫌な感じになってしまうわけで)、どうかき回してくれるのか、期待。
 鳥男の本格的登場に加えて、大和の覚悟、ジューマン達の選択、ジュウオウジャーの結束、を一つにまとめて新ロボットに繋げ、 充実の一編でした。またその中で、大和のキャラクターをマリオとの対比で広げてきた手法は面白く、今後の展開がますます楽しみです。

◆第12話「はなのみじかいゾウ」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:田中仁)
 セラのコスプレがほぼペンギンで、あれはちょっと、ズルい……(笑)
 ジュウオウジャーは新たに鳥男の人相書きを配る事にし、セラがプロ並みの似顔絵を披露。
 掲示板に貼り付けて賞金賭けてWANTED!!とかやらない所には、今作の真っ当さを見ます(笑)
 皆が新たなビラ配りを進める中、長期戦に備えてこの世界の知識をもっと得ようと考えるタスクは、大和の勧めで図書館に向かう途中、 偏屈な古本屋の店主に怪我をさせてしまい、代わりに店番に立つ羽目に……。
 大和くんの手元のノートパソコンはインターネットには繋がっていないのか、と思う所ですが、 レオやアムに知られると厄介な事になりそうなので、そんなニンゲン文明の利器は存在しない事にしておいた方が無難でしょうか。
 ビラ配り組はチーム・クバルのプレイヤー、ハテナ怪人と一当たりするも攻撃が効かず逃げられてしまう。 デスガリアン反応に気付かないぐらい古本屋・ひねくれ堂でこき使われていたタスクは、持ち帰ってきた (ページを折ったので買わされた?)絵本『はなのみじかいゾウ』に目を通し、幼い頃、父に絵本を読んで貰った事を思い出す……と、 タスク父は第2話の回想にも登場しているのですが、どうやらタスクにとって父の存在が大きそうな事が繋げられています。
 ハテナ怪人を演じる飛田展男は、芸達者なのは今更言うまでもないですが、改めて引き出し広い。 二又一成怪人みたいな演技も出来るとは。
 翌日、本への愛にこだわるあまり次から次へと客を叩き出す店主の姿に、店の経営を心配するタスク…… あー、その人ほぼ間違いなく、土地とか持っていて他に固定収入あるから大丈夫だ!
 ……などジューマンなので知るよしも無く、自らの体験から本の素晴らしさを知る客を増やすには子供に本を好きになって貰うのが一番だ、 と考え、公園で読み聞かせを行う事に。最初は上手くいかないも、仲間達のサポートで子供達に喜んでもらうタスクだが、 どこまでもひねくれた店主が盛況を認めない所に、ハテナ怪人が再び出現。
 タスクが子供達と店主を逃がしている内にハテナ怪人に立ち向かう4人だが、怪人の能力により言葉を奪われてしまう。 ハテナ怪人の能力は、生物から言葉と文字を奪うワードハンティング。それにより会話する事も記録する事も出来なくなった文明は崩壊してしまうという、 恐るべきゲームであった。
 ……て、ヤギノイド!
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 町中の書店や図書館からあらゆる本が消滅するという怪事件が発生。目的不明のこの変事に世間はパニックに陥るが、 こんな斜め上かつ大規模な悪事を行うのは、もちろん我らがバイオロンしかなかった!
 「動機が掴めぬ? 愚かな人間共の発想の貧しさよ」
 「まさか、この世から一冊残らず本を消滅させる事が、我がバイオロンの目的とは、夢にも思いませんね。あははははははは」
 うんそうだね、思わないね……。
(『機動刑事ジバン』感想17)
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 という話が、『機動刑事ジバン』(1989)にありまして(笑) (※第23話「マンガを喰いすぎた怪物」)
 何が凄いって、文字根絶の為の手段がヤギの怪人にあらゆる本を食べさせるという事なのですが、30年近い時を経て、 目的は全く同じなのにあまりの手段の落差に目眩がして、思い出さずにはいられませんでした。
 「僕も本が大好きだから。こんな素晴らしいもの、消させたりはしない」
 ワードハンティング光線で絵本から文字が消えるのを目にしたタスクは、店主を逃がして取って返すと、ハテナ怪人と戦闘。 資格電話の数字が消えて変身不能となった4人は、ハテナ怪人の本体が頭部の帽子部分である事をジェスチャーで伝えようと四苦八苦。 最後は、鈍い緑を見かねて飛び出してきたおじさんがジェスチャーの正解を伝え、エレファントが怪人を単独撃破。
 巨大化した帽子がジュウオウキングのコントロールを奪ってワイルドと同士討ちになるが、 モグラドリルによって引きはがしてワイルドキングになると、アニマル大光線で瞬殺。 ……赤を制してドリルアタックを決めた緑が妙に格好つけてますが、特に機転を利かせたわけでもなんでもない正面からの物理攻撃で、 別に誰でも良かった感(笑) 調子に乗らせるとドンドン自分に酔っていく傾向がハッキリし、 川の向こうで沢山の残念達が手招きしています。
 SupercoolにPerfect!
 ひねくれ堂には子供達が来るようになって店主は満更でもない様子を見せ、 世界の壁を越えた本に対する愛情でニンゲンとわかりあったタスクは、《社交》レベルが一つ上がるのであった。
 昨季、東映ヒーローとは縁戚関係にある『GO!プリンセスプリキュア』のシリーズ構成を務めた田中仁は、 これが特撮ヒーロー作品初参加との事。最初に軽い戦闘こそあるものの、怪人の能力が中盤まで明かされず、 Aパートはほぼ日常パートの延長線上で進む、というのは、《プリキュア》の文法を感じる所ですが、前の仕事が抜けきっていなかたのか、 《戦隊シリーズ》として意図的に作劇に変化をつけたのか。
 アリバイ的な戦闘の入れ方は演出サイドのバランス取りのような気もするのですが、この辺り、どういう意識と調節があったのか、 ちょっと興味のあるところです。
 アムを小悪魔系ではなく、他人の心理を読んで気配り出来る人物、という形で広げていったのは、正の面でキャラを立てていった 『プリンセスプリキュア』の手法を感じますが。
 バランス的にここまで日常パートを重視するなら、もう少し古本と敵能力の間の繋がりが深ければ言う事なしでしたが (古本屋でバイトしていた事で敵の仕掛けに気付くとか)、読み聞かせという現実とリンクの深い要素をギミックに、 善意がひねくれた人の心を少し暖かくする話として、悪くなかったです。
 予想以上の冴えを見せるメインライター香村純子、きっちりサポートに回るベテラン荒川稔久に続き、3人目の脚本家参戦でしたが、 タスクメインで、アムが気配りを見せ、レオとセラは冒頭のイラストでワンポイント、と、毎度ジュウオウジャー各人に見所を配分する丁寧さも怠られず、 全体の構造がしっかりしているのが、今作の本当に素晴らしい所。
 次回――待望の、大和くんに気のあるニンゲン女子登場?! で、私が俄然盛り上がって参りました!  大和くんは! 1ミリも! 気付いていない感じで宜しくお願いします!!

→〔その3へ続く〕

(2018年4月23日)

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