■『動物戦隊ジュウオウジャー』感想まとめ1■


“本能覚醒!”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『動物戦隊ジュウオウジャー』 感想の、まとめ1(1話〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕


◆第1話「どきどき動物ランド」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 「地球には、およそ800万種の生物が存在すると考えられている。しかし、現在発見されているのは、およそ170万種。 この星はまだ、我々の知らない生き物で溢れている――」
 地球規模の視点の提示に始まり、自然と動物に深い興味を持ち、子供に慕われ、運動能力に優れ、 奇矯な親戚が居るというレッド・風切大和の基本情報から異世界ご案内まで、冒頭1分に巧く詰め込みました。
 そして大事なお守りを巨大な立方体にはめ込んでしまったばかりに、大和は巨大キューブに飲み込まれ、 そこで獣面人身の奇妙な生き物たちと出会う。
 「喋ってる……? サメが、ライオンが、ゾウが、トラが、立って、服着て、喋ってる?!」
 大和(というかこの世界の人間)には、ジューマン達は着ぐるみではなく、リアルな獣の顔に見えていますよ、という重要な台詞。

地球はまだ、我々の知らない生き物で溢れている――

 大和は広大な世界を目にし、ここでクレジット〜OP入るタイミングはベストといってよく、まず小気味のいい導入。
 その頃、地球の軌道上に巨大な弓矢に似た変な宇宙船が近づき、中では侵略者軍団がガチャガチャとしていた。 かなり意図的に作った絵だと思うのですが、侵略者の皆さんが整然としておらず、なんか得体の知れない悪い連中がやってきた、 という騒がしい雰囲気なのは、個人的には非常に好み。
 「ジャグド。つまらぬ星なら、さっさと破壊しておいで。なにせ、次の遊び場が、記念すべき100個目の星になるのだから」
 そしてCV:井上和彦の、迫力と貫禄を押し出すのではなく、どこか貴族的退廃を漂わせる気怠げなボスキャラ演技が、 予想以上に良かったです。下半身が閉じたデザインもなかなか面白い。
 デザインといえば、乗り物といい、ボスといい、緑の人といい、 侵略者軍団はどうもザンギャック(『海賊戦隊ゴーカイジャー』)を思い起こさせるのですが、どこまで意図したものなのか。 もしかして4クールかけて、直近の『ニンニン』を除く過去4作品 (『ゴーカイ』→『ゴーバス』→『キョウリュウ』→『トッキュウ』)をモチーフにした悪の組織を出すもくろみがあるのだろうか、 と邪推してみたくなります。青い人がCV:中田譲治というのも、ちょっと怪しい(笑)
 宇宙からの侵略者→異次元からの侵略者→太古からの侵略者→闇そのもの、という流れならスケール感もダウンしませんし、 『ゴセイジャー』の雪辱も兼ね、2010年代戦隊の中間まとめを意識しているのではないか……とか適当にもっともらしく言ってみる。
 人知れず地球に危機が迫っている頃、大和はジューマンの世界、ジューランドを案内されていた。
 「凄い! 地球にこんな生き物が居たなんて! いったいどんな進化したんだろ〜」
 「じろじろ見てんじゃねえよ」
 「しょうがないよねぇ。お互い珍しいもん。ニンゲンの世界とは、リンクキューブでしか、繋がってないから」
 ジューランドを地球に入れていいのか、という部分は保留したい所ですが、ここで「進化」という単語が出てくるのが、 キャラクターの個性が見えて良かったです。
 ニンゲン世界とジューランドは冒頭で大和を飲み込んだリンクキューブで繋がっている事、 リンクキューブを使うには<王者の資格>と呼ばれるジューマンを加護する6つのキューブが必要な事、 それが盗まれた為にしばらくリンクキューブが使用不能になっていた事、と二つの世界にまつわる基本設定が確認され、 大和は幼い日に謎の男からお守り――キューブ――を渡された嵐の夜の事を思い出す。
 ――「もう大丈夫だ。きっとこいつが、お前を守ってくれる」
 大和が持っていたお守りは、ジューランドから盗まれた<王者の資格>なのか……?  盗人として吊し上げられそうになる大和だがその時、地球に侵略者軍団の黒いのが侵攻してきた影響でキューブに異変が起こり、 慌てて元の世界へ帰ろうと大和がキューブをはめ込んだ勢いで、ジューマン4人を巻き込んでニンゲン世界へと転移してしまう。
 転移先の平和だった山林は黒い奴の攻撃により山火事になっており、大和がガイドしていた人々が逃げ惑う中に、 逃げる鹿の映像など交えているのは、細かく秀逸。そしてジューマンの尻尾はまがまがしい気配に反応。
 「俺たちはデスガリアン。この星は今日から、俺たちの遊び場だ」
 「これが遊び?!」
 「そうだ。ブラッド・ゲームだ」
 黒い奴の攻撃でリンクキューブが破壊されてしまい、4ジューマンは砕け散った破片の中から4つの<王者の資格>を拾うと、 立ち上がる。
 「このまんまじゃ済まさねえ! ジューマンのプライドに賭けてな!」
 その叫びに反応するかのように光り輝き、姿を変える<王者の資格>。
 「不思議、力が伝わってくる!」
 「これが<王者の資格>に秘められた力?」
 「ジューマンを守る力だ!」
 ここまで非常にテンポ良く来ていたのですが、このくだりが妙に駆け足かつ急に物凄く説明的な台詞になってしまったのは、 許容範囲ではありますが、勿体なかった所。それでも、4人はリンクキューブの守り人なのでそれなりの理解度がある、 という辺りは圧縮しているのですが、圧縮して芯だけ取り出したら、かえって<王者の資格>を拾う際の驚きなどが薄くなって淡泊になってしまったというか(^^;
 「「「「本能覚醒!」」」」
 持ち運びには不便そうな携帯電話に姿を変えたキューブの力で、4人は変身。変身アイテムが携帯電話(広義)というのは、 『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)ぶりでしょうか……?
 「荒海の王者――ジュウオウシャーク!」
 「サバンナの王者――ジュウオウライオン!」
 「森林の王者――ジュウオウエレファント!」
 「雪原の王者――ジュウオウタイガー!」
 「「「「動物戦隊・ジュウオウジャー!」」」」
 木の陰からこれを見つめる風切大和さん「え?!」
 赤抜きで4人で名乗った!?
 ジュウオウジャーは黒いのと雑魚軍団に立ち向かい、「野生解放」で部分パワーアップ。サメの人、背びれ……(笑)
 「まるで、動物たちが……地球を守っているみたいだ……」
 銃剣アイテムを見せた後に、戦場移動。大和は落ちていたキューブを拾い、一方で、謎の鳥男がもう一つのキューブを拾う。
 ジュウオウジャーは雑魚兵の空戦部隊に空から攻撃を受けて苦戦し、黒い奴の砲撃を受けて倒れてしまうが、 そこへ突っ込んでくるニンゲン。しかし奮闘むなしく、大和もあっさりと叩きのめされてしまう。
 「戦いたいんだ俺も……守りたいんだこの森を……地球に生きる命を! 頼む、俺にも力を貸してくれ!!」
 「無理だ。それは、ジューマンにしか使えない」
 「何が違うんだ!」
 振り返って叫ぶ大和に、無情な銃口が向けられる。
 「ゲームオーバーだ」
 だが――
 「人間だって動物だ!!」
 その時、大和の手にしていた<王者の四角>が光を放ち、大和の体を包み込む!

「……きっとこいつが、おまえを守ってくれる」

 赤い輝きが大和を炎の弾丸から守り、そして舞う紅の翼――ワシの力が大和に宿り、大和もまた、ジュウオウジャーへと変身を果たす。
 「大空の王者――ジュウオウイーグル!」
 先の「まるで、動物たちが……地球を守っているみたいだ……」という台詞で、 人間/動物という視聴者の常識的垣根を引っ張り出しておき、大和の台詞に若干の他人事感覚が漂ったかと思いきや、 大和がその垣根をごく当たり前に乗り越えてくる事でヒーロー台詞を成立させるというのは香村さんらしい綺麗な線の繋ぎ方。 「何が違うんだ!」は、とても良かったです。
 惜しかったのは、直前まで膝をついて倒れていたのに、「人間だって動物だ!!」の台詞でいきなり正面向いて立ち上がってしまっていた所で、 一応「ゲームオーバーだ」の所でカットを一度切り替えてはいるのですが、いい場面だっただけに、 繋ぎの不自然さが目立つ形になってしまいました(^^;
 ここからイーグル無双で、野生解放して翼を広げると空戦部隊を蹴散らし、個人武器で黒い奴も圧倒したまま撃破。 これを見ていたジニス様は立ち上がるとナリアにコンティニューを命じ、 ジニス様の細胞から抽出したエネルギーコインを投入された黒い奴は巨大化する。 ジュウオウジャーが<王者の資格>の力でキューブアニマルを召喚するとデスガリアン母艦からは戦闘機部隊が出撃し、 この突然の空戦には凄く80年代感が漂いますが、正直、好きです(笑)
 この辺り、30代親世代のイメージする“戦隊っぽさ”をかなり意識して入れてきたのではないか、と思う所(緑のゾウ以外、 割り切って過去戦隊と被せているのも、意識的ではあるのでしょうし)。
 キューブアニマルは戦闘機軍団と黒い奴に立ち向かい(途中でゾウが消火活動しているのも秀逸)、まさかの、 イーグル火の玉アタック!
 ……説明しよう! 火の玉アタックとは、自らの姿を燃え盛る岩石に変え、標的の頭上から転がり落ちて体当たりを仕掛けるという、 どう見ても年に1回ぐらい敵怪人が苦し紛れに放ちそうな、正義のヒーロー・天の超神ビビューンが繰り出す必殺技である!
 そして、新たな<王者の資格>の力を解放する事で、火の輪くぐりにより、 イーグル・シャーク・パンサーライオンが合体。どこからともなく飛んできた頭を芯に、 動物合体ジュウオウキングが誕生する!
 先着3匹ロボットは、赤・青・黄が縦積みになる、炎神王タイプ。当然、今後の拡張前提のデザインでしょうが、 玩具が凄く動かなそうなのは気になります……(^^; 5体合体というより、早めに6号が出てきて4・5・6合体になるのかなぁ……。
 若干不安になるのは、「またなんか来た」って、どこかからメールを受信している事ですが、 今作の送信主は命を弄ばない存在だといいなぁ……。
 ジュウオウキングは黒い奴を撃破し、ゾウとトラもしっかり援護攻撃を入れているのが、ぬかりなし。だがリンクキューブが砕け、 6面を成す<王者の資格>の一つが行方不明な事で、ジューマン達はジューランドに戻れなくなってしまう。そんな4人に、 <王者の資格>探しの協力を申し出る大和。
 「でも私たち、人間の世界で住む所も無いし」
 「俺が、まとめて面倒見る!」
 なにこの甲斐性(笑)
 更にジューマン達は、キューブの力で人間の姿を得る、が……
 「僕は行かない。僕は君の世話にはならない」
 一人ゾウのタスクだけが、大和の申し出を拒否するのであった――と、そう来なくては、と気持ち良く転がる感じで、続く。
 サブタイトルが往年の有名クイズ番組のもじりである事に少々不安を抱いて臨んだのですが、特に悪ふざけがあるわけでなく、 面白かったです。抑えるべき所を抑えた上で、後半にかけてかなりサービス要素も詰め込みつつ、全体としてはテンポ良くまとまっており、 戦隊の第1話としては申し分ない出来。
 変身アイテムを正六面体と繋げる事で最初から追加戦士の要素を取り込みつつ、鳥男はなぜキューブを盗んだのか?  盗んだそれをなぜ大和へ渡したのか? 大和に宿ったワシの力は鳥男のものなのか? と主人公の必然性と物語のミステリーを絡めているのも秀逸。
 1人の現代人と4人の異邦人、という基本構造は『未来戦隊タイムレンジャー』(2000)を思い起こさせますが、 次回恐らく、ニンゲン−動物−ジューマンの関係に触れつつ、ジュウオウジャーとはどんな戦隊なのか、 を見せてくる展開になると思うので、まずは楽しみ。
 おまけに細かい所で、仕方が無いとはいえダンスEDだと、 本編でまだ打ち解けていないキャラクターが満面の笑みで踊っていたりするのがいつも気になってしまうのですが、今回、 緑の人がものすごーくだるそうなのが素敵(笑) ……いやこれ、単に笑顔の余裕が無いだけで、ずっとこのままかもしれませんが!

◆第2話「この星をなめるなよ」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:香村純子)
 「――多くの命が生きる星、地球。1人のニンゲンと、4人のジューマンが出会い、一つの群れが生まれた。地球を守る為に!」
 OPナレーションはいっそストレートに『未来戦隊タイムレンジャー』(2000)を思い起こさせる上で、 今作の特性として“群れ”を強調。王者の四角もとい資格など、今作の言葉のチョイスはなかなか良い感じ。
 そんな“群れ”へと至る“繋がり”の第一歩を描いた今回は、第1話がかなり詰め込んでいたのに比べると、だいぶ緩やか。
 第1話ぐらいのペースで、一気に〔ニンゲン/動物/ジューマン〕の関係性にまで踏み込むのかと思ったのですが、 あくまで大和とタスクという二人の関係に収めてきました。
 そんな大和のジューマンへの対応がどういった感じになるのか気になっていたのですが、
 いきなりの首輪
 そして
 おもむろにリンゴで餌付けを試みる
 他、「あ、サメだから? あ〜、やっぱり動物ぽいとこあるんだ」など、 思ったより動物寄りでビックリしましたよ!(笑)
 ナップザックの中に首輪とロープが常備化されているし、大和は野生動物の研究名目で、 密猟しているのではないか疑惑も急浮上。
 この、ジューマン権に関する倫理的問題というのは、一歩踏み外すと今作における巨大な地雷だと思うので、 慎重に扱ってほしい部分ではありますが、率直に、首輪はやりすぎだったのではないかと思います。
 幾らキレても常識的には人間相手に首輪は持ち出さないわけで………………まあ、 大和先生は人間相手でも首輪を使える人という可能性もありますが。
 逆に、普通に人間扱いすればそれで済む所を、敢えて若干動物寄りの対応を描いたのは、今回特に踏み込まなかったのも含め、 大和(ニンゲン)−ジューマンの関係性を、序盤の一山に持ってくるつもりなのかな、とも思えますが。
 第1話でジューランドにも「動物」は存在し、ジューマンもそれを使役?しているという描写(ゾウonゾウ)がありましたが、 ニンゲンの動物観とジューマンの動物観は同じなのか違うのか、という辺りは早めにきちっと描いて欲しい部分です(例えば、 ジューマンを動物園に連れて行くとどういう反応になるのか、とか)。
 別にジューマンの動物観が、これはこれそれはそれでニンゲンと一緒でも全く構わないのですが、動物に似た別の種族、 という設定を持ち込んだからには、それを物語としっかり繋げて欲しい所。
 「今大事なのは、これからのメシだ」
 と現実的なレオ・セラ・アムは大和の誘いに応じ、大和の動物研究仲間として動物彫刻家である大和のおじ宅に下宿する事になるが、 大和を信用できないタスクは一人、森に残る。タスクに対して割とドライなジューマン3人を置いて、翌日、 一人でタスクを迎えに行く大和。
 「強いて言うなら、恩返しかな……。俺ね、子供の頃、鳥男に助けてもらった事があるんだ」
 こじれる前に過去の話について説明し、レオ達にもおじさんの口から同様の説明。
 「まあ鳥男っていうのは、大和の幻覚だろうけどな。それで色々、思うところがあったんだろうな」
 「一人じゃないんだって思った。俺たち地球の生き物は、どっかでみんな繋がって生きてるんだって。だったら俺も、 その繋がった誰かを、助ける人になりたい!」
 視聴者目線だと、ジューマンが存在する前提で見てしまうわけですが、 子供の頃の大和からすると“得体の知れない鳥頭の生物に助けられた”という事になるわけで、「ニンゲンだって動物だ!」 と力強く叫べる大和は、幼少期の神秘体験の影響を受けて成長していた、という形に。
 これ一歩間違えると、天狗に助けられたと思って民俗学者とかになっていたのかもしれない(笑)
 「……俺たちも、繋がったじゃん」
 タスクにリンゴを渡す大和だが、その時、デスガリアンのプレイヤー・槍怪人が地球に出現し、都市を大規模攻撃。 タスクに王者の資格を取られたままの大和は、怪人に生身で立ち向かう。
 「居るんスよね〜、どこの星にも。関係ないのに首突っ込んできて、無駄死にするばーか」
 「関係なくない! この星の生き物はみんな、どこかで繋がっている。支え合って生きている、仲間だ!」
 大和はあえなく槍怪人に吹き飛ばされるが、そこに邪悪な気配を感じてレオ達がやってくる。
 「俺等が戦ってやるよ!」
 「私もああいうタイプ嫌いだし!」
 「お世話になるお返し?」
 怪人の台詞で普遍的な善良さに言及しつつ、ここで大和にしろジューマンにしろ、戦う/協力する理由が、性格の善良さだけではなく、 個人の背景や渡世の義理、それに感情的怨恨(「リンクキューブの恨みだ。行くぞ!」)などの重なりに基づいているのは、良かった所。
 「まったく……君達は甘いんだよ」
 最後にやってきたタスクは、王者の資格を大和へと渡す。
 「……貸してやる」
 「え?」
 「僕と君も、繋がったんだろ?」
 タスク、ジューランドを思い起こすシーンなど見るに、斜に構えたがるけど寂しがり……!
 大和を加えた5人は変身し、今回こそ揃い踏み。イーグル剣が非常に強調されましたが、戦闘見るに他の4人は個人武器無しで、 その分、イーグル剣押しなのか?
 「動物戦隊!」
 「「「「「ジュウオウジャー!」」」」」
 「へへっ、ま、こんなちんけな星の奴等に、ブラッド・ゲームは止められないっス」
 「この星を、なめるなよ!」
 この決め台詞は、格好いい。
 バトルは今のところ、野生解放からのCG技押し。もう少し生っぽい方が好きですが、ゾウの足とかあるので仕方がないか(^^;  4人が戦っている所に、斜め見下ろしの映像でイーグルが飛んでくるシーンと、合体ブレード攻撃が、 獣の5本爪になるのは格好良かったです。
 巨大化した怪人に対しては、足技主体の1・5・4合体を早くも披露。……終盤、9・1・3合体はあるのかなぁ(笑)
 こうしてタスクも下宿の一員に加わるが、マリオおじさんが用意していた納豆の匂いに倒れてしまうのであった……でオチ。 ジューマンはそれぞれ、鋭敏聴覚(セラ)・鋭敏味覚・(アム)・鋭敏嗅覚(タスク)、と特殊能力が与えられているのですが…… レオだけ、声が大きい。
 ……いや、野生だと、声が大きいの、重要ですけど!
 鋭敏視覚で良かったのではと思ったら、予告のあおりによると、視覚はイーグルに行く模様。
 他、キューブによるニンゲン変身は、興奮したり気を抜くと解けてしまうという描写。役者の露出差に繋がってしまうので、 その内滅多にジューマンにならなくなりそうな気はしますが、今回の所は、小刻みに獣と人が入れ替わる演出で見せてきました。
 前回気にしたEDダンスの緑が笑顔になっていたら面白いと思いましたが…………そんな事はありませんでした。 キャラ付けなのか純粋に余裕が無いのかわかりませんが、他の4人がやたらいい笑顔でノリノリなので、 一人だけだるそうなのが凄く目立ちます(笑)
 OPの動物ゲーム紹介では、とにかく声を張り上げてみました!感じになっていましたが、色々頑張れ、緑。
 第1話に比べると密度もスピード感も抑えめでしたが、及第点といっていい立ち上がり。後は首輪が勢いのギャグではなく、 先を見越した仕込みだったらいいなぁ……といった感じ。

◆第3話「帰りたいけど帰れない」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 改めて、よくある“サバンナの地平線に昇る朝日”カットに、「1人のニンゲンと、4人のジューマンが出会い、 一つの群れが生まれた」と被せるOPの入りは作品をびしっと現していて格好いい。
 下宿先にタスクが合流し、本格的に王者の資格探しに励むジュウオウジャー。大和は街でビラを配り、セラは川に潜り、 レオは不燃ゴミの山を漁って回る。
 「見つかるのかじゃない。見つけるんだ」
 「げ。めんどくせぇのが来た……」
 現状、一番演技の危なっかしいタスクと、一番こなれているレオ(公式サイトによるとデビューは『仮面ライダーW』 最終回のチンピラ役との事!)を絡めて掛け合いをさせるなど、短い時間でそれぞれの個性を出しつつ、 細かい配慮が見えて気持ちのいい作り。
 そんな中、一人ニンゲン世界の方に興味津々のアムは、王者の資格探しにかこつけて、大和を巻き込んでショッピング。
 「アムはジューランドに帰りたくないの?」
 「……だって馬鹿馬鹿しくない?」
 「え?」
 「何の手がかりもないのに毎日毎日手当たり次第。そんなんで見つかるわけないじゃん」
 「そんな事思ってたの?」
 「うん」
 いい笑顔を浮かべるアム。
 「いや、だって……いつもニコニコしてるから……笑顔の裏で、まさかそんな……」
 まだ女の子に夢一杯のお年頃だった大和くん(今回のレッドは、なんとなく“くん”)は、経験値10000を手に入れた!
 ニンゲン(男の子)としてLVが上がった!
 スキル《望遠視力》が使えるようになった!
 心の傷から野生が覚醒し、急に遠くの物がくっきり見えるようになった大和は、キューブに似たものを手にしているカップルを発見して、 そちらへと急ぐ。
 <仮面ライダー>シリーズぽくなってしまいますが、この先話を重くするなら、徐々にジューマン化していく大和、 という展開も出来そう。
 その頃、新たなプレイヤー・ボウガン怪人が地球に降り立ち、道行く自動車を次々と破壊していく。今後どうしていくはわかりませんが、 とりあえず立ち上がりは割とざっくり被害路線で、むしろ第1話が一番、被害が少なかった感じ。
 邪悪の気配に気付いて現場へ向かった青・黄・緑だったが、ボウガンの高速射撃に苦戦して逃げられてしまい、ライオン、 崖転がりを披露。
 「大丈夫?」
 「セラ……肩貸して」
 「甘えんな」
 レオの愛嬌とセラのびしっとした所が出て、非常に良かったやり取り。
 キャストが決まってからレオをそういう位置づけにしたのか、レオの位置づけに合わせてキャスティングしたのか後先はわかりませんが、 今のところ、メンバーの中では演技経験のあるレオに、演技経験の少ないメンバーを絡める事でキャラの彩りをつけていくという構造で、 脚本と演出による役者のフォローが、良く出来ています。
 ハッタリの効いた衣装の効果も活かしていますが、レオは一歩間違えると凄く雑な馬鹿になってしまう所にうまく愛嬌をつけていて、 好キャスティング。
 「ブラッド・ゲーム……勝利の条件は、私を最も楽しませる事」
 「出撃回数が少なくとも、アザルドより面白い物をお見せすれば、貴方の勝ちです」
 デスガリアンでは改めてブラッド・ゲームの目的が明言され、地球の支配でも人類の滅亡でもなければ、 何かの利益を得る為ですらないという非常に嫌な感じの悪になりました。これまでも、 支配などの為の過程を「ゲーム」として楽しむ悪の組織はありましたが、「ゲーム」そのものが目的である、 というのは今後の自由度を確保すると共に、隔たりのある邪悪さが良い形で打ち出されました。
 後は設定のハッキリした所で、ジニス様が何を喜ぶのかというゲーム中の姿を、早い内に1カット描写してほしい所でしょうか。
 目指すカップルを発見した大和とアムが王者の資格っぽい石について問うと、男が旅先で見つけてプレゼントに渡した石を、 あっさりくれるという女。
 「いや……あんな石貰っても、ぶっちゃけいらないし。どうせ帰ったら捨てるつもりだったし」
 アムだけ嫌な感じになるのを回避しようとしたのでしょうが、日曜朝から女には裏の顔があるんだよ! と魂から海に向かって叫ぶ『仮面ライ○ーW』路線なのか(笑)
 ところが女はそれをバスの中に忘れてきており、慌てて乗り込んだ二人は、座席でキューブを発見するが……
 「やった……王者の資格だ! ほら! 手当たり次第でも、馬鹿馬鹿しくても行動して正解だったんだよ!」
 「なんか、小さくない?」
 一回り、小さかった。
 「そんな悲しい目で見ないでよ。これでも前向きに言ってるんだからあたし。あのね、私だってジューランドに帰りたいの。 でも現実的に考えて難しいじゃん。だから腹くくってニンゲンの世界に馴染む。そういう事」
 ぬか喜びさせたと沈む大和を元気づけるアムだが、そこへボウガンが襲来し、バスの横からのカメラ視点は面白かったです。 バスの上に乗ったボウガン相手に大和は変身し、アムは下から射撃、という結果的連携でボウガンを振り落とす事に成功。
 「もう、危ないよ?! 俺まで撃たれる所だったよ?!」
 あ、割と普通にツッコむ路線なのか(笑)
 「無事だったからいいじゃない。ほら、前向き〜。うふっ」
 ほっぺを両手で挟まれたりしてしまう大和くんが、獣人に目覚めないか、ちょっと心配になります(待て)
 ……今後、大和くんを憎からず思ってたりするニンゲンヒロイン(たまに出てくる)の登場には期待したい。
 2人は、ボウガンを追いかけていたレオ達と合流し、王者の資格には通話機能ないのかと思ったら、 あったけどアム以外はわかっていなかった、と判明。ちなみに、受話器のアイコンが人間界とジューマン界で共通なのがちょっと笑えます。
 5人は揃って変身して戦闘となり、ライオンがさらっと、木に飛びついて反動バック宙で着地からシザースとか、凄い事していたり。 再び高速射撃に苦戦するジュウオウジャーだったが、イーグルの視覚が覚醒し、迫り来る矢を見切ると鞭剣で撃墜。 ちょっと勿体なかったのは、矢サイドに視点を置いてしまって、いまひとつ、矢がスローに見えている、 というのが映像からわかりにくかった所。
 合体技・ジュウオウスラッシュはシンプルだけど格好良く、前作が派手な単独技主体だったのと差別化。この流れだとその内、 飛び道具が出てきそうな感じではありますが。
 ボウガン怪人はコンティニューで巨大化され、ジュウオウジャーはキューブ召喚するが、 ボウガンの攻撃で起きた崖崩れにゾウとトラが埋まってしまう。残った3匹は助けに行くのかと思ったらいきなりの動物合体でジュウオウキング123。
 「このサイズなら、埋めらんねえだろ!」
 そういう事か(笑)
 救援より攻撃を優先する辺りにそこはかとなく野生のドライさを感じますが、 そのジュウオウキングも下半身を土砂に埋められ行動不能になってしまう。だがその時、4と5がキューブ形態で土砂の中から復帰。
 「どうだ! キューブに変形していれば」
 「このぐらいの土砂なんか平気なんだから!」
 第1−2話ではワシがキューブ形態に変形して敵の攻撃を跳ね返していましたが、謎の便利さ、キューブモード。
 そこから1キューブが離脱して、145に合体を切り替え、先着3匹ロボットの変形ギミックを鮮やかに活用し、これは非常に巧かった。
 ジュウオウキング145は回避力の高さを見せるが攻めあぐね、その足下で燃え広がっていく森。
 「駄目だ……どんどん自然が壊されていく。早くあいつを倒さないと!」
 この、巨大ロボの回避によって周辺被害が拡大していく描写、というのはリアリティバランスを難しくしてしまう要素なのですが、 「街」ではなく「森」とする事で、今作の特性を出しつつ、あくまで自然破壊であって人的被害ではない、という形でギリギリ収めました。
 自然破壊なら良いわけではないですが、“明らかに人死にを増やす描写はしない”というのは明確な線引きであり、 ブラッド・ゲームで割とラフに被害を出している事を考えると、描き分けが意識にある部分だと思われます。
 その時、大和の叫びに反応するかのように、あの小さな四角(一応、拾ってきたらしい)が変形し、キューブキリンが誕生。
 「そうか! 王者の資格じゃないけど、ジューランドのものだったんだ!」
 巨大化したキリンは飛び道具でボウガンを痛めつけ、更にバズーカモードに変形。ジュウオウキングはキリンバズーカ連射で、 ボウガン怪人を地球の大地に葬り去るのであった。…………バズーカ?
 前半の戦闘のBGMがちょっと8bit風味だったのですが、今回使われたジュウオウキング挿入歌の締めも、 少し昔のゲームを思わせるメロディで、そういうラインを押していく模様。
 第3話にしての追加アイテム登場(戦隊史上最速?)となりましたが、
 「ニンゲンの世界にもジュウオウキューブがあったなんてね」
 「繋がっているんだな……ジューランドと」
 と前回のキーワードを持ってくる事で、強引さを減じると共にタスクの存在感も出して巧み。 ニンゲン界とジューランドの繋がりというのは世界の背景に関わる重要な要素でもあるので、ニンゲン界にジュウオウキューブがある意味、 という強化アイテムの出現理由もかなり良い形で物語の中に収めたと思います。
 そして大和は、掃除機に興味津々のアムに言葉をかける。
 「両方やるんじゃ駄目かな? その、王者の資格探しも続けるけど、ニンゲン界の勉強もする。これが一番、前向きだと思うんだけど」
 「いーんじゃない?」
 “手当たり次第でも馬鹿馬鹿しくても行動する事”にも、“現実を考えて置かれた状況に対して腹をくくる事”にも、 それぞれの意味と価値がある事を描き、二つの価値観がしっかり物語の中に入っているのも秀逸。
 アムの返事に手応えを得た大和は、張り切って他の3名に向き直る。
 「ハイちゅーもーく! これからみんなにも、ここでの家事のやり方を勉強してもらいます!」
 「「「え? ……え〜〜〜?!」」」
 あ、この3人、どうせジューランドに帰るからを理由に何もしないつもりだったのか(笑)
 まずは順調だったパイロット版から、どう広げていくか注目の第3話でしたが、ギミック・テーマ・物語が融合して見事に折りたたまれ、 良い出来でした。キャラクターの絡め方やロボットの使い方など細かい所にも配慮の見えるしっかりした作りで、 この丁寧さが維持されてくれれば、今後も期待大。後は敵方が組織としての存在感は明確ながら、 個々のキャラクターがややパンチ不足なので、話数一桁台の内に、もう一つインパクトを付けておいて欲しい所です。
 次回、なんとなく絡みの多かったセラとレオをメインに据えて、「リングに吼えろ」。 サブタイトルは今作の決め台詞だった第2話を別にすると、どこかで聞いたようなタイトルやフレーズ(ちょっと古い) のもじり路線でしょーか。

◆第4話「リングに吠えろ」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 怪人の声が金尾哲夫さん(ミハエル大佐)で宇宙樽漂流とか出てくるので、つまり今回は『∀ガンダム』。
 ……は?! このサブタイトルは『リングにかけろ』をもじっているようで、 『∀ガンダム』第1話「月に吠える」ともかかっていたのか!!!(止まれ)
 セラとアムが2人で買い物に行き、洗濯機の練習をサボってそれを追いかけるレオ。 タスク曰く「女好き」のレオは荷物持ちを買って出るが、セラには冷たい視線を向けられた所で、3人はデスガリアン反応を感じる。
 向かった先で行われていたのは、特殊リングに閉じ込めた人間2人を戦わせ、勝者だけが外に出られ、 敗者は樽にされて永遠に宇宙を彷徨う事になるという、チーム・クバルプレゼンツのバトルショー。
 「いいねぇ。仲の良かった2人が、裏切り、裏切られて苦しみながら、戦う。実にいやらしい作戦だ。ふふふ……酒も進むよ」
 前回の感想で気にした、ゲームに対するジニス様のリアクションがしっかり入ってくれましたが、 マッハで飲んだくれ路線に。
 酒というキー要素が入るだけで、一気に「邪悪」から「駄目人間」に印象が変わるこの無慈悲な大宇宙の法則。
 バトルショーを目にしたレオ達が「……なんだ?」という反応だったのは、 一瞬ニンゲン世界の文化かもしれないと思ったようなニュアンスが感じられて、細かく良かった所。 敗者が樽に変えられた所で(なお樽は、ボタン一つ押したら人間に回復)ゲームに割って入り、人々を救出する青黄白だったが、 白をかばった青と黄が網怪人に捕獲され、連れ去られてしまう。
 「となるとクバル……私の見たいものはわかっているね」
 退廃宇宙貴族ジニス様のリクエストにより、ジュウオウジャー同士のバトルショーがスタート。
 一方、アムから連絡を受けて2人を空から探すも見つけられなかった大和は、通りすがりの犬を見て秘策を思いつくと急いで家へと戻り、 洗濯前だったレオの靴下を、タスクへと突き出す。
 「タスク、臭いを嗅ぐんだ!!」
 大和くんやっぱり、爽やかな顔して凄い鬼畜なのではないか。
 「嫌だ! どうして僕が、レオの靴下なんか」
 「じゃあ、セラちゃんのにする?」
 場外へ逃げようとしたタスクの後頭部に炸裂する、魔性のタイガー空中殺法。
 「……あ、え、う」
 「アム、それはさすがに、色々まずいんじゃ……」
 「タスクくん、2人の命がかかってるんだよ。今すぐどっちか選んで」
 ここは、凄く面白かったです(笑) また、洗濯・靴下というネタが、前回のオチであった、ニンゲン世界の家事を覚えよう!  から繋がっているのも秀逸。
 前門の赤い鬼畜・後門の白い小悪魔に囲まれたタスクは覚悟を決めてレオの靴下に手を伸ばして臭いを嗅ぐが、 それをマリオ叔父さんに目撃されてしまって一悶着。叔父さんは、スイッチ入ると動物になりきる以外は割とまともな人格の気がしていたのですが、 タスクの男の匂いフェチ疑惑に全力で引いており、今回裏打ちされました。……まあ、 叔父さんが変態性癖ウェルカムだと大和がツッコミ死ぬので、無難な所か。
 その頃バトルショーのリングでは、自らバトルを仕掛けてきたレオの真意をセラが見抜いていた。
 「こんな手抜きパンチで何言ってんの。あんた自分が負けるつもりでしょ?」
 「女ぶっ倒すとか、男のする事じゃねえだろ。男は……女を守ってなんぼだ」
 「……ほっんと嫌い。あんたのそういうとこ、ホント嫌い!」
 セラとレオはかつてジューランドの武術大会でも対決した事があったが、その際にレオはセラへの攻撃を加減し、 それによって勝利を得たセラはその悔しさを引きずり続けていた。
 「女だと思って、あんたに手加減された! そういうの全然嬉しくない!」
 自分を対等の相手として見ないレオに対してセラは怒りをぶつけ、本気の勝負を望む。
 「レオ、本気で戦って。私も本気で戦う。言っとくけど、手抜いたら、すぐわかるから」
 「わかったよ……てめぇ、死ぬ気で来いよ」
 ここから2人がジューマンの姿に戻り、バトルが激化、というのは今作の特性を巧く活用。前回も、 バスから飛び降りるシーンでアムがジューマンモードになる(スーツアクターさんに入れ替わる)という手法を使っていましたが、 アクション吹き替えよりもカットの自由度が上がる分、演出の幅を広げてくれそうです。
 「随分とじらされましたわ」
 「だがそれがこのショーの面白い所だよ。葛藤し、苦悩する姿が――実に昂ぶる!」
 ジニス様、起きる! を俯瞰で撮ったのは格好良かったです。今のところチームクバルが圧倒的に有利そうなので、 チームアザルドの大雑把な破壊も割とイけるジニス様、というのも次回辺りは見たい所。
 本気の対決はパワーに勝るレオが優勢に進め、いよいよ最後の一撃となる2人の拳が交錯したその時、 駆けつけたイーグル達が特殊リングを破壊し、セラとレオのキューブを回収。
 「ここは俺たちに任せて」
 「ううん、戦う。今ものすっごいムカついてんの」
 「おうよ! あいつぶっ倒さねえと、気が済まねぇ」
 いっけん同じ怒りのようで、先ほどのラストパンチに思うところがあったらしいセラがレオを横目で睨んでいる (そしてレオは気付いていない)、という含みは良い感じ。
 イーグルは第4話にして早くも決め台詞を奪われ、挿入歌投入で肉弾戦盛り。イーグルの鞭剣は今回が初めてのリアル造形物でしょうか。

帰れない 世界へと 思い馳せながら 生きるのは 遊びじゃない なめるなよ

 挿入歌はちょうど作品のキーワードが入って格好いい所が、戦闘の効果音少なめで聞き取りやすくて、狙った演出だったら素敵。 網怪人は、スタミナもあればガードも固いライオンの猛攻と、シャークの回転背びれアタックで弱った所を、 今回は噛みつきをイメージした銃撃と斬撃の合体攻撃で撃破。コンティニュー後は、揉めずに123合体から、 連射しないキリンバズーカで粉砕。
 「レオ……あの時、みんなが助けに来なかったら、あんた、あたしのカウンター食らうつもりだったでしょ」
 「え? ……いやいやいやいや、ははは、洗濯物は、俺に任せろ!」
 「やっぱり……いつか絶対、本気出させる」
 誤魔化して部屋を出て行くレオの背中に握り拳を向けるセラ、とセラとレオの話を1エピソードで丸く収めてしまわなかったのは好印象。 その上で、最後の台詞と拳によって、ジュウオウライオンの戦いぶりにレオの真の実力を垣間見たセラの意識の変化が描かれており、 人間関係がきちっと動いています。
 「あーーー!! しょうがねえだろ! 女ぶちのめすぐれぇだったら、嫌われる方がマシだって思ったんだもんよ。 ……力で女負かしても、格好わりぃだけじゃねえか。これが、男の美学ってもんだ」
 そして外で悶絶するレオが、女をぶちのめさないで好かれたい、と相手の気持ちを考えずに自分に都合の良い事ばかり考えているのではなく、 女をぶちのめすぐらいだったら嫌われる方を選ぶ、とあくまで自分の身勝手な選択である事(だから“男の美学”)を自覚している、 というのはとても良かった所。
 レオは油断すると即物的で雑な馬鹿になってしまいそうなのをかなり丁寧に描写していて、 好感の持てるキャラクターになっているのは有り難い。
 次回――
 「このゴリラパワーで、君もいますぐムキムキだ!」
 「「マッスル・マッスル!!」」
 (byアブレラ通販)
 早くもアザルド直接出馬で、デスガリアンが1クールを乗り越えられるのか、割と本気で心配になってきました(いやまあ、 序盤に幹部と一当たりというのはよくありますが、パワーアップ展開を兼ねるとなるとどうなのか……)。

◆第5話「ジャングルの王者」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 公式サイトにセラ役の女優さんが18歳と書いてあって、えええええ、と思っていたのですが、OPコーナー見て成る程納得。 単純に本編撮影入る前だったのかもしれませんが、OPコーナーは随分と、演技つけない路線。
 ジュウオウジャーは今日もせっせとチラシ配りに精を出し、1人さぼってジュースを飲んでいるアムはもや放置。 タスクがうまくチラシを渡せない感じだったりする中、大和が地球に迫り来る大規模なデスガリアン戦闘機部隊を発見し、 ジュウオウキング完成。
 戦闘機部隊を率いる、巨大な顔に手足が生えているという動きにくそうな怪人がドタバタする中、 戦闘機部隊はジュウオウキングらに撃墜されて全滅するという出オチ展開で、アバンタイトルにロボットの出番を確保。
 脱出した怪人を探す5人は森で、メキシコノリのジューマン、ゴリラのラリーと遭遇。ラリーはジューマンのニンゲン学者で、 フィールドワークとしてニンゲン世界にやってきた所、王者の資格の喪失によるリンクキューブの機能停止に巻き込まれて帰還手段を失い、 長い間、1人ひっそりとニンゲン世界で暮らしていたのだった。
 ジューマンとの出会いを喜ぶレオ達はラリーに王者の資格を渡してみるがニンゲンに変身する事は出来ず、 第1話でかなり成り行きで使用していた王者の資格は、ジューマンなら誰でも使えるわけでないという事が判明。……まあ、 単なる先着順ではないかという気もしないでもないですが(笑)
 和気藹々と盛り上がるジューマン達だったが、大和がニンゲンだとわかった途端、パニックになって逃げ出すラリー。 実はラリーはニンゲンと仲良くなろうとするも怯えて逃げられた挙げ句に、警官に銃弾を浴びたトラウマから、 ニンゲンを恐怖の対象として見るようになっていたのだった。
 ラリーの回想シーンにおける一般市民の反応から、ラリーはゴリラの被り物をした変態ではなく、 人間の服を着たゴリラに見えるという事が改めてわかり、第1話の大和の「喋ってる……? サメが、 ライオンが、ゾウが、トラが、立って、服着て、喋ってる?!」は大和固有の視点ではなく、 この世界の標準的反応であるという事も裏打ちされました。
 更に、大和がジューランドにやってきた時に自分たちが警戒した事を持ち出し、
 「僕はニンゲンの気持ちもわかるけどね」
 と、最もニンゲン世界に馴染んでいないように見えるタスクに言わせるという、バランス取りと世界観の一連の補強が実に手堅い。
 アムの発案で、それとなくラリーのサバイバル生活を手伝い、距離を縮めようとするも逆に怒らせてしまった大和は、 吹っ飛びからの水被りとバケツ直撃を披露。ここで大和が怪我しそうになった事を真っ直ぐに怒るレオが格好いい。
 自分がニンゲンを傷つけかけた事に沈んだラリーは、同じく反省中で鹿とお話していた大和と向かい合い、 ニンゲンを好きでニンゲンを学びに来たラリーがニンゲンに恐怖を感じている悲しみを何とかしたかったという大和の心を知るが、 そこにデスガリアンの幹部・アザルドが姿を見せる。
 大和が鹿とお話(自覚のある独り言)している際のラリーの鹿への反応を見るに、ジューマンの動物観は、すっぱり別物、例えるなら、 人間が猿を見るような感じっぽい。
 プレイヤー怪人を拾いに自ら地球へやってきたアザルドは、ジュウオウジャーと遭遇するも最初は思いっきり無視しようとしたり、 銃も剣も全く通用しなかったり、と幹部初顔合わせとして良いインパクト……だと思ったんですが……(笑)
 大和の変身を見て、王者の資格が人間にもジューマンパワーを与えられる事に気付いたラリーは、 アザルドの攻撃を受けて重傷を負った大和の元へ駆け寄り、資格を手にする。
 「頼む、王者の資格よ。力を貸してくれ」
 ラリーがキューブを通して生命力とジューマンパワーを送り込むと傷が癒え、目を覚ます大和。 そこへアザルドがトドメを刺しに現れるが、イーグルに変身した大和は、その攻撃を受け止めてみせる!
 「本能・覚醒!!」
 内側から沸き上がる力に突き動かされるようにマスクを跳ね上げると、別の顔が出てきた!!
 仮面ライダーシリーズでは過去に、剥けたり割れたりありましたが、スピーディな演出でこのアクションとニューフェイスはビックリ。
 決め台詞の際の髪をかきあげるようなポーズは、微妙にこの伏線だったのか(笑)
 ライダーよりも記号化の傾向が強い戦隊ではかなり大胆な仕掛けと思えますが、スマートなイーグル顔から、 鼻の穴を強調したゴリラ顔になるのも実に大胆不敵。最初にデザイン出た時、スーツの動物プリントが別の動物に変わるのでは?  と予想していた方がどなたか居たけど、どんぴしゃりだったなぁ……。
 「ジャングルの王者・ジュウオウゴリラ!!」
 鼻息荒くパンプアップでアザルドを上回るパワーを見せたゴリラは、 そのまま大胸筋の導きに従った圧倒的筋肉の力でアザルドをギャラクティカマグナム。
 「下等生物のくせに……やるじゃねえか……」
 「言ったろ。この星を、なめるなって」
 「うははははは、はーっはははははははは!!」
 ……本当に爆死してしまいました、アザルド(笑)
 「ナリア、コンティニューの必要は、無いよ」
 ただジニス様がコインを投入せず、前半には「案外、面白い事になるかもしれないよ」という台詞があり、 アザルドはこのまま単純に退場、というわけではなさそうです。アザルド撃破後、爆発とゴリラの雄叫びに、 別の変な笑い声がかかっており、再生を繰り返して強化するみたいなタイプになるのか。
 この辺り、巧くやらないとレッドと敵幹部のパワーインフレだけが進行して4人置き去りにされかねないので、ちょっと心配ですが(^^;
 難敵アザルドを撃破した5人はラリーを探すが、何故かラリーの姿が見えない……既に予告でハッキリしていますが、 大和に生命力を分け与えたラリーは急速に老化してしまったのだった、と怪我をしていた子供大和と鳥男の関係を当然思い起こさせ、 伏線の張り方も巧い。
 次回、マッスルロープアクションとかマッスル組み体操とか、予告の画がいちいち強烈。
 「いいのか、この星をなめられたままで」
 住む世界の違う2つの種族が、“星”をキーワードに心を1つにするという展開なら燃えますが、果たしてラリーの運命は、 そして逆襲の大口怪人の真の実力は?!

◆第6話「ワイルドなプレゼント」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 アザルド、冒頭であっさり復活、と思ったらちゃんと怪人を引っこ抜くお仕事(笑) 立ち直った大口怪人は街のビルを食い荒らし、 そこに駆けつけるジュウオウジャーだが、ゲーム優先の怪人には逃げられてしまう。
 「お帰りアザルド。どうだい? 地球で体を再生した気分は」
 「気分? 別に、いつもの通り爽快だ」
 割とバラバラになるのか(笑)
 アザルドの再生能力に関してはナリアもクバルも知らず、そしてアザルドはジニス様にちょっと気安い口調 (誰に対してもそうなのかもしれませんが)、とデスガリアンに少し色づけ。アザルド本人の言動を見ると、 たまに爆発から再生すると肩こりが治る、ぐらいの扱いみたいですが。
 ジュウオウジャーは逃げ遅れた子供を助け出すが、瓦礫から少女をかばっていたのは、姿を消したラリーだった。 白髪になったラリーから事情を聞き出した5人は、ジューマンパワーを分け与えるとは、ジューマンの生命力そのものを渡す行為だと知る。
 「ラリーさんの寿命が減った、て事?」
 王者の資格を通してゴリラパワーを返却しようとする大和だが、返品不能。ラリーの寿命を奪ってしまった事に独り思い悩む大和は、 幼年期の出来事を思い出す。
 「待って。じゃ、ジュウオウイーグルになれるのは……」
 この辺り、繋げるべき所を繋げ、気付くべき所に気付き、変な遠回りをしないで進むのは、今作ここまでの気持ちの良い所。少々、 中盤以降の展開が不安になるぐらい、真っ直ぐに突き進んでいきます。この作りだと、前半の一山越えたら、 かなり波乱の展開になったりするのかも。
 「俺、鳥男の寿命も……」
 そして何度聞いても、絶妙に間抜けな言い回し、鳥男(多分、「とりあたま」を想起するから)。
 他に何とかならないのか、と思うのですが、正直これと言って思いつかない敗北感(笑)
 「私、そんな悪い奴だと思えなくなってきた。だって、自分の寿命を削って大和を救った、って事でしょ」
 一方、鳥男に王者の資格盗難容疑をかけているジューマン達も、この件により鳥男への印象が変化する、と実に手堅く丁寧。
 翌日、大口怪人の気配に飛び出すレオ達。セラさん、ナチュラルに風呂場から出てきましたが、 湯船常駐なのか。
 ここで、セラが大和に連絡しようとするのをアムがそっと止め、アムはただ気ままで脳天気なわけではなく、 周囲の状況を把握して肝心な所では必要な配慮をする事が描かれました。……逆に言うと、普段サボっているのは、 真面目な連中が仕事するのを把握した上でという事になりますが(笑)
 前作の邪悪策士と近いラインとはいえますが、割と、これまでの戦隊女性メンバーには見ないタイプかもしれない。
 今回も他に、細かい所に気がついて話を進行するセラ、知性派として洞察力を見せるタスク、跳ねてボケるレオ、と、 個々のキャラクターに関する印象付けの割り振りも丁寧に気を遣っており、ヒーローだから自然に受け入れて貰えるだろう、 というままあるパターンの手抜きがありません。
 ラリーは一晩外で黄昏れていたらしい大和の元へと向かい(アウトドア系動物学者である大和にとって、 冬の路上で一晩過ごすごとぐらい、お茶の子さいさいなのです)、大和だけ邪悪アンテナが付いていない事も、 うまく物語に取り込みました。
 「こんな事なら、嫌われたままで居れば良かった。余計な事しなきゃ良かった……」
 「……大和。先にパワーを貰ったのはミーの方だ。ニンゲンに絶望していたミーが、ユーと出会って、もう一度希望を持てた」
 感謝こそすれ、恨み言など一つもないと大和を励ますラリーは、瓦礫からかばった少女からのお礼を噛みしめる。
 「そして、幸せな出会いにも繋がった」
 “出会い”“繋がり”という今作のキーワードを交えて、丁寧な台詞の構成。
 「ユーのお陰で、ミーは生きるパワーを取り戻す事が出来た。ミーはユーに生きるパワーを送った。 これはとってもハッピーなプレゼント交換さ」
 そしてラリーは、前回と逆に自ら大和の手に触れると、デスガリアンの襲来を伝える。
 「いいのか? 王者の資格を持った者が、この星をなめられたままで」
 ラリーの激励を受け取った大和は、大口怪人に苦戦し変身解除まで追い詰められたレオ達の元へ駆けつける。
 「ごめん心配かけて。……でも決めた。折角貰ったジューマンパワー。俺たちの――この星の為に使う!」
 第2話時点では、幼少期の体験を背景とした上で、繋がっているものを守りたい、 という善良な意識を大和のヒーロー性としていたのですが、そこから、貰った命を何に使うのか? というより強い意識で、 ヒーローとしての大和をステップアップ。
 この「貰った命」というのは、命を食べる、という行為を暗喩していると思われ、ラリーの台詞でも示唆された、 生かし生かされる関係性というのが、“繋がり”というキーワードと合わせた、今作の重要な背骨となるようです。
 そしてそれは、ただ一方的に他者を貪り命を弄ぶ者達に対する、この星の力となる。
 「――この星を、なめるなよ」
 大和は最初からゴリラ変身で、ゴリラバージョンの揃い踏み、という凝った仕事。 ジュウオウゴリラは鞭剣をロープ代わりに使うターザンアクションからウホウホ乱舞を怪人に浴びせ、 トドメは組み体操からのマッスルハンマーでユアギルティ。
 第5話のサブタイトルが「ジャングルの王者」でしたが、『ターザン』ネタもなんかこう、久々に見たような気がします。
 巨大化した怪人に対して、6号機キューブゴリラが目覚めて登場。携帯電話の6番に対応していたので、 とりあえず9番までは出てきそうでしょうかキューブアニマル。あと0番。
 初登場回という事でキューブゴリラが大活躍し、654のジュウオウワイルドが誕生。 割とキリンバズーカ台無し目の重火器で戦っていたワイルドですが、最後はパンチ連打 (腕の長さのバランスがゴリラっぽくて面白いデザイン)から、拳を飛ばすワイルドロケットナックルで大口怪人を撃破。
 ラリーは、もう一度、ニンゲン社会を見る為に旅立っていくのであった………………民家のベランダを望遠鏡で覗いて、 逮捕されないように気をつけて!
 序盤矢継ぎ早の新モードから新メカ登場でしたが、それらを大和のヒーローとしてのステップアップと絡める事で、 巧く物語に収めました。大量のギミック投入が物語からはみ出して扱いが雑になりがち、 というのは00年代戦隊の功罪と言える部分ですが、今作ここまで「まあ仕方ないよね……」 という印象がほとんど無い形で追加ギミックが物語の中に収まっており、その部分の重視が窺えた上で、良い形で回っています。
 後は今後の使い方ですが、イーグルとゴリラは空戦用と筋肉という事でわかりやすいとして、 キングとワイルドは巧く使い分けて欲しい所です。そして、頑張れキリン。
 ところでマリオおじさんはコスプレは凄いけど、“居間にゴリラっぽい生き物が居るのはおかしい”と即座に気付く辺り、 やはり割と常識人だと思います(笑)
 そしてジュウオウジャーは、メンバー全員話を誤魔化すのが苦手路線で行くのか。
 次回、ゴゴゴゴゴースト、というか、シオマネキング。
 順調に進んできた所ですっかりお馴染みになったコラボ回か……ただ今年は1時間スペシャルではなく、 通常の第7話扱いのようですが、『ゴースト』はかれこれ4ヶ月分ぐらい溜まっている(この後、途中リタイア)ので、正直、 助かります(^^;

→〔その2へ続く〕

(2018年4月20日)

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