■『ロボット刑事』感想まとめ2■


“ロボット その名はK.K ロボット刑事 K”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ロボット刑事』 感想の、まとめ2(8話〜14話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕  ・ 〔まとめ4〕


◆第8話「雷が殺した?!」◆ (監督:内田一作 脚本:中山晶一)
 雨の中、スポーツカーの前に立ちはだかる、バドーの怪ロボット・カミナリマン!
 やはりこの世界は、車の前に飛び出してきた怪しいロボットに「馬鹿野郎! 気を付けねえか!」と言う認識のギャップが魅力です。
 とか思っていたら翌日、パトロール中の新條とK、ごく普通に道を歩いているカミナリマンと遭遇(笑)
 2人はスパーク攻撃を受けて気絶する……って、バドーも脚本家も、何をしたいのか。
 新條とKは近くで前夜に、財閥の御曹司が雷に打たれて死亡した事件があった事からこれがロボットによる殺人ではないかと考えるが、 芝刑事はそれを否定。2人だけで捜査に乗り出す事になる。
 これ、2人が白昼堂々とカミナリマンと出会う必要はあったのか(^^;
 70年代前半のクオリティなので平常こんなものという気がしますが、それにしても、適当すぎて辛い。
 再戦したカミナリマンの電撃に敗れたKは、ふらふらとマザーの元へ行き、カミナリマンに勝つ方法を聞く。
 段々、駄目な子になっていきます。
 事件の真相は、財閥乗っ取りを企む叔母に、バドーが殺人の売り込みを図ったというもの。新條が全く役に立たなかったり、 芝刑事がもはや存在する意味が無くなったりしつつ、復活したKは逆流コイルによってサンダービームを反射。 背中のユニットを使って上昇し、高空から射撃攻撃をしてきたカミナリマンを頭突きで叩き落とし、速射機関銃で蜂の巣にするのであった。
 単純に面白い所がどこも無いし、『ロボット刑事』としての魅力は全く無いし、酷いエピソードでした(^^;  拳銃が通用しないのはわかっているのだから新條は知恵と勇気でそれを補うべきなのに何もしないし、 芝刑事に関しては出番が必要無かったレベル。70年代前半なので構成が雑なのはある程度仕方ないとしても、 作品の特色がまるで活きていないのは厳しい。このまま、このノリが基本にはならないでほしいなぁ……次回、 電気椅子腰掛けマン。

◆第9話「電気椅子スパイ!!」◆ (監督:折田至 脚本:上原正三)
 マッハ8の超音速旅客機の設計が完成し、特別科学捜査室は設計図と、その開発者である葉山博士を守るように命令を受ける。 事件が発生したわけでもないのに警護につくという仕事に不満をこぼす芝だったが、設計図には産業スパイ、 そしてそれと契約したバドーの魔手が忍び寄っていた。
 今回のバドーの怪ロボットは、スパイロボット・コシカケマン。

 見た目、椅子。

 真っ赤な上に背もたれが前側に斜めというエキセントリックなデザインのコシカケマンは、 博士が注文した特注品の椅子に偽装して研究所に入り込むと、深夜に起動。つい腰掛けてみた警備員を電気ショックで殺害すると設計図を写真に撮り、 そのプリントアウトを契約したヤクザ者の元へ届けるという、外見からはとても想像できない鮮やかな手腕を見せる。
 金庫から設計図を強奪するのではなく、写真に撮って物は戻しておく、というのがスパイロボットらしくて素敵なところ。 偽装にはかなり無理があるものの、手足のついた椅子、というデザインも素晴らしい(笑) 惜しむらくは、 前回(カミナリマン)の今回で、主な武器が電気ショックで被っているという事ですが、あまり気にしない時代だったのか。
 「廊下の1人はナイフで一突きです」
 「こっちのガイシャは無抵抗のまま黒焦げだ。煙草に火をつけて一服しながら……。どうもわからねぇ」
 翌朝、現場検証をしながらの、こういうやり取りが、今作の魅力。
 そこで例のエキセントリックな椅子が無くなっている事に気付いたKは、何でも出来る赤外線スコープを発動。 床を何かが這いずったような跡を発見する。
 (あの椅子がロボット……きっとそうだ)
 「芝刑事、これは人間の仕業ではありません」
 「またかよK」
 「昨日運び込まれた椅子が無いんですよ」
 「馬鹿! 椅子が人殺しをするか」
 これですよ、やっぱり今作はこうでないと(笑)
 常識的ではあるが頭の固い芝刑事と唐突すぎるKの噛み合わないやり取りというか、 元を正すとKを有効利用する気の全く無い警視庁上層部のてきとー感。
 設計図に何者かが手を触れている事に気付く博士だったが、金庫に収められていたそれは、博士の用意したダミーだった。 博士は本物の設計図をこっそりと、息子が学校の宿題で作ったKの粘土細工の中へと隠し、自分だけの秘密としていたのである。 しかし、設計図がダミーとわかれば、犯人は今度は直接、博士や息子を狙うかもしれない。そこでKが、 息子のボディガードにつく事となる。
 「これはバドーの初めての失敗だ。葉山に一杯くわされたのだ」
 首領、一週間前の事とか覚えていない事、発覚。
 ヤクザ2人はまず博士の誘拐を目論み、車で連れ去られそうになる博士。一緒に居た刑事達が何の役にも立たない……と思ったら、 車に乗せて油断した所を狙って、犯人を殴り飛ばして博士を助け出すオヤジさん。そして車の屋根を飛び越える新條!  新條さんはいちいち、効果音が改造人間ぽいやりすぎ感が面白い(笑)
 一方、少年の警護についていたKは、小学校で子供達と和気藹々と野球をしていた。下手投げで軽く打たせた後で、 本気を出してアウトにしにいく現実の見せ方が容赦ない。
 そして何となく、女教師にモテているK。
 芝家長女ともフラグ立ててるけど、お姉さん系の女性にモテるというか、母性本能を刺激するタイプなのか。
 そこをコシカケマンが強襲してくるが、何とか撃退。だがコシカケマンは放課後、帰り道の女教師をナンパする。
 「先生、お茶でものみませんか」
 椅子モードで坂を滑り降りるコシカケマンに捕まった先生と、それを追いかけるKの図が凄くシュール(笑)
 女教師を救い出すKだったが、その間にヤクザ2人によって、少年がさらわれてしまう。
 「馬鹿野郎! なんて間抜けなんだおまえは」
 「すいません!」
 「すいませんで済むと思っているのか」
 「お父さん、誰にだってミスはあるわよ」
 「儂はミスを怒っているんじゃない。ここへおめおめと戻ってきた鉄屑野郎の根性が気にくわねえんだ。どうしてとことん追い詰めて、 取り戻そうとしねぇんだ」
 K、相変わらず、刑事として無能。
 ……まあ、物凄く、五十歩百歩の感じもありますが。
 そこへ犯人からの電話がかかり、葉山博士は単身で呼び出しの場所へと向かう事に。
 「それじゃみすみす設計図を奪われにいくようなものです。命なんでしょ、あなたの」
 「命より、大切です。リョウイチは」
 シンプルなのだけど、このやり取りの置き方は巧い。
 反省モードでステルスしていたKは、取引場所へ向かう葉山博士のポケットにこっそりと電波反射装置を忍び込ませると、 新條と共にアジトを強襲。ヤクザ2人をあっさり逮捕し、コシカケマンと戦うK。
 電気椅子に座らされたKは電気ショックを浴び、更に必殺の電気椅子スピンにより地中に引きずり込まれそうになるが、 逆回転で浮上し、いましめから脱出。落下した電気椅子が地上に埋まった所に速射機関銃を浴びせて勝利する。
 犯人逮捕には成功するが、電気椅子による拷問で、博士はひどく衰弱していた。更にそこに現れた新たなロボットが少年をさらい、 追いすがるKは両目を潰されて敗北してしまう。
 「見えない! 目が見えないんだマザー!」
 ホント、駄目な子に(笑)
 再び上原正三で変則2話構成(前編でその回のロボットは撃破するが、新しいロボットが登場し、事件そのものは後編へ続く)ですが、 やはり魅力のツボを押さえていると、今作は俄然面白い。
 警察の対応は全般的にもう少し真面目にやれという感じではありますが、 そもそも特別科学捜査室が窓際部署である事を考えると、 警視庁は元からこの件に本腰を入れていない可能性があり、何か外務省辺りで複雑な事情が展開しているのか。 芝刑事が妙に乗り気でなかったのも、長年の経験からその辺りに勘づいていたからなのかもしれません。

◆第10話「バドーのみな殺し作戦!!」◆ (監督:折田至 脚本:上原正三)
 見所は、
 ハリサスマン、飛ぶ。
 追いかけて、Kも飛ぶ(笑)

 ヒコーマンとは何だったのか(涙)

 視覚回路の完全修復には24時間かかるので、急に機能不全になるリスクを承知で応急処置をしてもらうK。一方、 葉山博士は電気ショックの影響で目がうつろになり、一時的な記憶喪失に陥っていた。警視庁では芝と新條が、 逮捕したヤクザから黒幕を聞き出そうと尋問し、刑期をネタに若い方の口を割らせようとするが、 「社長」の一言を口にした所でハリサスマンに暗殺されてしまう。
 コシカケマンのデザインがインパクト抜群だったのに比べると、ハリサスマンはこれといった特徴はなく、一番面白いのは、名前。
 ハリサスマンは更にヤクザの会社の社員達、ヤクザ上司を暗殺。全てはヤクザに設計図の強奪を依頼した黒幕・黒沼の手によるものだった。
 リョウイチ少年を監禁していた黒沼は、更に葉山博士を誘拐して設計図の場所について口を割らせようとするが、 それによって逆にKに所在を突き止められてしまう。取っ組み合いの末に新條から逃げ延びた黒沼は、 怪ロボットに頼らなくても暗殺の一つや二つぐらい出来るのでは(笑)
 無事に助け出された葉山親子だが、今度は監禁中に黒沼の顔を見てしまったリョウイチ少年にハリサスマンの魔手が忍び寄る。 ハリサスマンは校門前で少年を狙い、それを守るK。
 にしても、何か特別ゲスト枠だったのか、前回今回と、女教師がやたらにヒロイン度高い(笑)
 少年が黒沼の車を見かけた事から、K、少年、先生は、ハリサスマンを放置して、ジョーカーでその車を追跡。 ナンバーの確認に成功し、黒幕の身元が、世界規模の商社・日の出商事の黒沼社長だと判明する。 バドーへの糸をたぐり寄せるチャンスと黒沼に任意同行を求める特別科学捜査室だったが、ハリサスマンによって暗殺されてしまう黒沼。
 失態続きですが、ロボットによる殺人は立証されないので、失態ではないのだ!
 何故か「船の科学館で、決着をつけてやる。来い」と力強く飛翔するハリサスマンと激突したKは、 戦闘中に視力を失って大ピンチに陥るが、相手がアンカーで動きを封じてきた事を逆用。 真っ正面に来たハリサスマンに速射機関銃を叩き込み、からくも撃破するのであった。
 折角なので新條刑事のサポートでカバー、みたいな展開が見たかった所ですが、力技で倒してしまいました(^^;  ここまでひたすら無謀に怪ロボットに突っ込んでいた新條ですが、今回はロープ捕縛術を披露。怪ロボットの動きを制限しにいくと、 ようやく変化をつけてきました。一応コワシマン謎の電撃爆破で協力していますが、そろそろ、 新條が怪ロボット戦でKをサポートするような戦いも見たい。
 葉山博士は正気を取り戻して粘土細工の中から設計図は回収され、Kは小学校で大人気、でオチ。
 基本ドタバタしたシナリオなのですが、芝と新條による取り調べシーンがしっかり入っていたり、刑事としての姿勢に問題多めのKが、 修理に24時間かかるなら応急処置でいい、と連絡無しに失踪から一歩前進したり、とディテールの描き方が今作の魅力です。
 7−8話から心配されましたが上原脚本で良い『ロボット刑事』に戻り、改めてやはり露骨に中山脚本だけズレているのですが、 中山脚本だけ1話完結だったり、どうしてこういう造りになっているのか(^^; まあ番組として全て2話構成はやりにくかったので、 中山脚本にしわ寄せが行った、という可能性もありますが。
 次なる怪ロボットは、ロッカーマン。

◆第11話「バドー基地の秘密!!」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝)
 会社社長に迫る怪ロボットの黒い影……それは、
 「なんでここにロッカーが?!」
 中に閉じ込めたものを高熱で完全に焼却処理してしまう、

 ロッカーマン!!

 見た目、長方形のロッカーからまんま手足が伸びているというロッカーマンが、電話かけているだけで面白くてズルい(笑)
 殺人依頼の容疑者として、関係者の男を張っていたKと新條は、男がとある廃屋に現金の入ったトランクを置いていくのを確認。 依頼人を捕まえて泥を吐かせようと江戸時代のような事を言い出す新條に対し、それよりバドーの集金人を尾行してその繋がりを抑えようと、 Kが刑事脳を発揮して諌める、というのが新鮮。まあKの場合、尋問により証言を引き出す機能とか搭載されていないので、 人道的というより効率的選択に過ぎないのでしょうが(笑)
 だが、集金人を追う2人の前に、ロッカーマンが立ちふさがる! しかし、ロッカーはやはり直接戦闘向きではなかった!  Kとの戦闘中に蓋の歪んできてしまったロッカーは、煙幕を張って逃亡。
 一方、集金人を追いかけた新條は懐のロープ(前回の小技をちゃんと拾った!)を取り出して逃走するオートバイに引っかけるが、 当然、そのまま引きずられる(笑) アスファルトの上を時速数十kmで引きずられた上に、 オートバイが転倒して地面に激しく叩きつけられた新條はそのまま気絶。微妙に改造されている疑惑のある新條だったが、 Kに拾われてさすがに入院。
 「K……いや、このロボット野郎。能無しの鉄屑! 新條をこんな目にあわせたのは貴様のせいだ。責任を感じているのか」
 「申し訳ないと思っています」
 「だったら少しは悲しい顔をしてみろ。悔しかったら涙でも流せ!」
 いや、今回ばかりは、全力で新條さんが悪いと思います(笑)
 まあここで「涙を流せ」と来るのは、石ノ森異形テーマの重要ポイントを入れる意図だったのでしょうが。
 その頃、バイクの転倒で同じく大きな損傷を負った集金ロボ(見た目人間)は、 たまたま出くわした少年にトランクとバドーを召喚するドクロのマークを伝えて爆死、と思わぬ展開。
 深夜、素直にドクロのマークを描いた少年の家をロッカーが訪れ、トランクを回収すると少年を焼き殺そうとするが、 それを阻止するK。ロッカーは煙幕を張ると再び逃亡する……車で。それを追ったKが辿り着いたのは深い洞窟、 そしてその奥に隠された、バドーの秘密基地!
 巨大金庫に丁寧にお金を並べるロッカー、がいちいち面白い(笑)
 突入したKは、そこで遂に、バドー首領の声を聞く。
 「我々は逆に君を待っていたのだ」
 「私を罠にか? 少し甘いぞバドー。よーし、いいチャンスだ。汚い方法で集めた札を、無くしてやる!」

 また全爆破する気だよ、この人。

 だが、全てはバドーの周到な罠だった。大金庫の中身は全て偽札であり、秘密基地そのものがフェイク。 思わず「え? 本当?」と札束を確認し、そのまま偽金庫の中に閉じ込められてしまうK。
 「私を罠にかけた、理由はなんだ!」
 「マザーだ。君のマザーに用がある。マザーは可愛い君の為なら、我々の条件を聞く」
 「マザーには、指一本触れさせはしないぞ!」
 怒りのKは速射機関銃であっさり大脱出し、またも取っ組み合う、ロッカーとK。だから、ロッカーは、直接戦闘向きではなかった!  Kはロッカーを逆さまにすると、地面に頭部を連続で叩きつけて尋問する。
 「さあ! 言え! 言うんだ! マザーを狙うのは何の為だ!」
 そして役に立たないと見るや、あっさり速射機関銃で爆殺。
 Kさんにそろそろ、経済観念と取り調べ機能を搭載していただきたい。
 1クールの締めという事でか、Kとバドー首領が遂に接触。首領の口から、「お金集めて世界征服だ!」と、 組織の目的も明かされました。そして何より重要なのは、バドー首領がマザーを知っており、マザーはKの妄想ではない、 とハッキリした事(笑) これまで完全に謎だったマザーと敵組織が繋がる事で、大きな物語も少し動きだし始めました。

 ……この展開だと予想される本命は、別れた夫婦、か。

 果たしてマザーとは何なのか? バドー首領の目論みはいったい? ロッカーを葬り去るも、狭い室内を縦横無尽に跳ね回る新たな刺客、 全身バネのスプリングマンに苦しむKは、この窮地を脱出する事が出来るのか……?!

◆第12話「マザーが狙われる!」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝)
 前回のロッカーマンがあんまりだったからか(いや、存在は素晴らしく面白かったですが!)、 かなりアクロバットな戦闘を見せるスプリングマン。
 ところでこれまでのネーミングセンスからすると、バネハネマンとかつけられそうなのに、 至極真っ当にスプリングマンなのですが、バドー開発部に何があったのか。さすがに、コシカケマンについて営業部からクレームが来たのか!
 エネルギー切れの迫るKは何とか偽装アジトを脱出するが、Kに補給をさせまいと、バドーのロボット処理班(雑魚戦闘員)が追いすがる。 と、K、初の雑魚戦。
 バドーにも人間型の構成員が居る事が判明しましたが、構成員居るのに毎度わざわざ依頼人と怪ロボットを直接遭遇させる辺り、 首領の歪んだユーモアセンスを感じずには居られません(^^;
 その頃、前回集金ロボットからトランクを受け取った為に事件に巻き込まれた少年は、 「自分はロボットを呼べるんだ」とつい友達に自慢してしまい、公園の遊具にドクロのマークを刻んでいた。
 バドーと一般人の少年が関わるという面白いネタだったのに、前回あっさり処理されて残念だと思ったら、 引っ張って話を繋げてきました。これは今作の変則2話構成を活かした、面白い展開。
 「誰だ。バドーと殺人契約を結びたいのは」
 ドクロのマークに応え、洒落の通じない人、来てしまう(笑)
 「子供の悪戯か。バドーマークを知っている奴は、1人残らず殺してやる」
 子供達に銃口を向けるバドー営業マンだったが、復帰した新條が大回転で子供を救い、逃げた営業マンを追跡する。
 ……やはりこっそり、警視庁に改造されているのでは。
 営業マンが廃ビルでロープアクションしたり、今回はアクロバット分多め。格闘戦の末、芝の助けもあり、 新條は営業マンの確保に成功する。
 「オヤジさん、どうしてここが」
 「おいおい、無駄に飯を食っちゃいねえよ。足と勘。おまえの足取りを掴むのは簡単さ」
 バドーがKを狙っていると考える新條はKの居場所を吐かせようとするが、営業マンは木箱に潜んでいたスプリングマンに抹殺されてしまう。
 「おまえ達を殺しても一銭の収入にもならない! 命だけは助けてやる!」
 バドーは上から下まで、組織としての信念が染みついていて素晴らしい(笑) ……横の連絡は、若干、不徹底のようですが。
 その頃、ロボット処理班に追い詰められていたKは、バドーのロボット技師の裏切りによって助けられる。 しかし技師は大ジャンプで高速移動してきスプリングマンに殺され、「この万年筆を息子に渡してくれ」と受け取った形見を手に、 Kは川ダイブで逃亡、省エネの為、川を流れて海を目指す事に(笑)
 だが、Kを助けた技師の正体は、裏切り者ではなくバドーの諜報員だった。技師の死は偽装であり、Kが受け取った万年筆には、 マザーとドッキングした途端に爆発する小型水爆が仕掛けられていたのだ!
 さすがに都合が良すぎないか、と思ったら、トラップでした、というのは今作の良い所。
 「バドーにとって邪魔なロボット母子は、これで地上から消える。ふふふふふ」
 前回、マザーと取引したいような台詞だった首領ですが、単純に、Kを人質にマザーを破壊したかっただけなのか。
 Kの行方を追う芝と新條は、ドクロのマークを利用し、芝がバドーと殺人契約を結ぶという、囮捜査を決行。
 自宅でいいのか(笑)
 「お父さん、新條さんのお兄さんの名前なんか出したりして大丈夫なの」
 「もし本当に殺されちゃったりしたら」
 「敬太郎なら大丈夫だ」

 千葉真一だからな!

 「全く世話を焼かせやがって。あの機械野郎め」
 ぶつぶつとぼやく父を、微笑ましく見つめる娘達。
 「何がおかしいんだ」
 「だって、Kさんのこと一番心配してるのは、お父さんでしょ」
 「……そんな事は無い」
 新條は営業マンの車に忍び込み、バドーの秘密基地へ案内を迫る。営業マンがこっそり警報スイッチを押そうとしたその時、 乗り込んでくる芝。
 「忘れたのか新條。相手の隣に座れって言っておいたのを」
 「ついその……」
 Kと比較して忘れがちだけど、そういえば新條さんも、決して優秀な刑事ではなかった(笑)
 「さあ、行くんだ」
 「オヤジさんも?!」
 「Kを助けるんじゃないぞ。連続殺人事件の黒幕、AB産業の重役・大岡の証拠を掴みに行くんだ」
 新條・芝組は車で移動し、Kは川を流れて海岸に辿り着き、と交互に見せて、水爆爆破までのタイムリミットへの緊張を高める構成。 ところで営業マンは脅しに弱いけど、ロボットではなく人間なのだろうか……と思ったら、 芝と新條を案内した小屋の中で煙のように消失したので、やはりロボットの模様。続けて小屋が大爆発し、なんとか逃げ出す2人。 バドー営業マンは、脅しに屈したフリをして、2人を罠へと誘い込んでいたのであった。
 海岸のKはマザーを呼び、迫る、水爆爆破の時。余裕のバドー首領はKとマザーの大爆発を宣言し、何とか囲みを突破した新條は、 ジョーカーの通信機で必死にKに呼びかける。が、マザー、大爆発。新條と芝は構成員とスプリングに囲まれ風前の灯火……と、 なかなか、スペクタクル。
 「すまないオヤジさん」
 「おまえが謝る事はない」
 「そうですとも! 謝るのは私です」
 その時、2人の窮地を救ったのは、復活のK! 新條の連絡がギリギリ間に合い、Kとマザーは水中に入って爆発の回避に成功していたのだ。 エネルギー満タンのKは構成員を蹴散らし、スプリングマンと激突。
 「どこまで逃げても無駄だな」
 「小うるさいロボットめ、叩き壊してやる!」
 「行くぞ!」
 そしてKさん、ファイティング全裸!
 勿論ここでOPインストが入り、ヒーロー物としても、今回は充実の熱さ。
 奇声と共にやたら高い所に飛び上がりたがるスプリングマンの動きを読んだKは、珍しく頭脳戦で反撃を決め、速射機関銃で爆砕する。
 「間抜け! その生き証人、いや……生きロボット、むむ、とにかくぶっ壊しやがって!」
 「すいませんでした」
 反省してない(笑)
 だがKは、今回の事件の黒幕・大岡に関しては、バドーとの契約書を秘密基地でしっかり確保していた。

 成・長!

 合わせてバドーも確保だ、とKの案内で秘密基地へ向かう3人だが、既にその入り口は封鎖済み。
 「バドーアジトに二度と入らせん。ロボット刑事K。いつか必ず、母マザーと共に消す」
 バドー首領、その正体は何者なのか――そして、マザーとの関わりは。ロボット刑事の前に今、恐るべき敵が、 その一端を覗かせたのであった……。
 最後は、会社を手に入れて得意絶頂の黒幕を逮捕して、エンド。
 いや今回、面白かった。
 事件の陰でKに迫る魔手、Kとバドー首領の接触から始まって、マザーを巡るスペクタクル、忍法帖的な敵と味方のフェイクの打ち合い、 事件の犯人ではなくバドーマークを知ってしまった少年で前後編を繋げる変化球、Kを助ける2人の刑事の活躍、見せ場たっぷりの芝刑事、 新條刑事もアクション頑張る、と要素が盛りだくさん。最後もヒーロー物としてきっちり盛り上がった上で、 要素としてはおまけだった殺人事件の黒幕の逮捕を忘れず持ってきて、刑事物としてもしっかり落着。素晴らしい前後編でした。

◆第13話「悪魔の煙に気をつけろ!」◆ (監督:内田一作 脚本:中山昌一)
 競馬場の売り上げを強奪したドクガスマンは、帽子・サングラス・黒マント・マスク、という超怪しい姿で歩いている所を、 団地から小学生に激写される(おぃ) モスグリーンの色彩で、球形で構成された上半身デブというデザインがなかなか印象的なドクガスマンですが、 それゆえに、変装に無理がありすぎました。
 目撃者の少年を強引に助手席の新條の上に乗り込ませたジョーカーの中が、超狭そう。
 毒ガスマンと黒幕の取引現場を押さえようとしたKと新條はまんまと倉庫の中に閉じ込められ、毒ガス攻撃で大ピンチに。 外で待っていた少年が、逃げる黒幕達を撮影した上に、ジョーカーの通信機でKと新條の危機を署に連絡して、超優秀。
 ヘリで駆けつけた芝は倉庫の中から2人を救い出し、ガスから解放された途端に元気になるK。
 「あんな子供だましの毒ガスで倒せると思っているのか!」
 先程までやられる寸前だったのを綺麗さっぱり忘れている辺り、だいぶ人間らしくなってきました(笑)
 新條はロープを放ってKの戦闘をフォローするが、今日も地面を引きずられる。
 ……癖にならないか、心配です。
 直接の攻撃では勝てないので(いつもとりあえず撃つけど)、相手の自由を封じようという新條の路線は面白い。……まあ明らかに、 その後の、芝刑事の体当たりからチョップの方がダメージを与えていましたが(笑)
 前回のスプリングマン戦もかなり激しいアクションでしたが、アクションシーン強化の指示でも出たのか、 今回もかなり尺を取った上で攻守のめまぐるしく入れ替わる肉弾戦。
 Kの右前蹴りを毒ガスが受け止める→そのまま横に投げようとする→その力を利用して体を捻りながら左足でキック→両者地面で一回転
 など、まさに肉体言語のやり取りという感じで、なかなかの見応え。
 激戦の末、毒ガスマンは奥の手を発動。自らガスを燃焼させると、飛んで逃げる(笑)

 ひこーーーまぁぁぁん!(涙)

 目撃者の少年を警護するKだが、毒ガスマンは少年宅の鍵穴からガスを注入して部屋ごと吹き飛ばすという、物凄い証拠隠滅をはかる。 今回、警視庁の屋上からヘリが飛び立ったり、団地の一部屋が大爆発したり、やや特撮も強化した感じ。
 黒幕の真の目的は、銀行の現金輸送車の襲撃。警護と気分転換を兼ねてKと少年は遊覧飛行中だったが、 少年が黒幕の乗っていた車を覚えており、これを追跡する……と、通常、困った人質役とかになりがちな少年が、ひたすら優秀。 率直に、Kや新條より刑事としての素質は高いと思います。
 黒幕2人はKから連絡を受けた新條達に逮捕され、Kは毒ガスマンと、とうとう空中戦を展開。
 いつの間にやらマザーに改造してもらったようですが、今回は言い訳しようもなく、完全に飛んでいます(笑) もう少し、 ミニチュア特撮の出来が良ければシーンとしても面白いのですが、今作のミニチュア特撮は基本的に物凄く残念(^^;
 今日はやたらにテンション高いKは、「ははははははは!!」と高笑いしながら、高速移動で毒ガスマンを翻弄。 逃げる毒ガスマンを背後から速射機関銃で爆砕するのであった。
 今回もなぜか、ゲストを交えて新條と芝一家が遊園地で遊び、人間と同じ楽しみを得られないKにとって、 マザーから補給を受ける時間が唯一の慰めなのだ……でオチ。ロボット刑事の悲哀を表現したいのでしょうが、このネタは毎度、 強引すぎて無理があると思います(^^;

◆第14話「光る眼の恐怖!!」◆ (監督:内田一作 脚本:中山昌一)
 宝石強奪計画に、いっちょかませろや、と自分を押し売りしてくるバドーの怪ロボット・ガンリキマン。契約を強制し始めましたが、 バドーのコンセプトとして、それはどうなのでしょう(^^;
 ……まあ今回、そんなものは序の口なのですが。
 そんな眼力マンは、いきなり宝石店の店員を殴打し、怪光線で客を虐殺。

 杜撰すぎる。

 そして外で待機していた悪党2人は、狭い道を堂々と塞いでいたせいで、怪しまれる事に。
 「怪しいやつだな。よし、あの車をつけてみよう」
 って、後ろの車のドライバー、あなたは何者ですか。
 「俺の方はうまくいったが、誰にも気付かれなかったろうな」
 「大丈夫だ」
 「いや、尾けてくる車があるぞ」
 「どうした?」
 「店の前で割り込んだ車だが……怪しまれたかな」

 全員頭ぱー。

 眼力マンは背後のドライバーに怪光線を浴びせて尾行を阻止し、男は瀕死の重傷で病院に運び込まれる。 男の家族の護衛をする事になったKだが、眼力マンの殺人光線を浴びて、視力を失ってしまう。
 Kを退けた眼力マンは次の標的である宝石収集家の家を襲って宝石を強奪。警官隊に囲まれるが新條を一蹴し、 警官隊をあっさりと全滅させる。そこへやってきたのは、殺人光線への対策として、サングラスを掛けたK!  だが、交戦中にサングラスが外れてしまい、再び眼を潰されたKは、瓦礫の下敷きになってしまう。
 「なんてだらしがねえんだ、おめえ達は」
 芝家で正座してうなだれるKと新條(笑)
 荒れる芝刑事は、勢い余ってKと怪ロボットはグルじゃないかと発言してさすがに家族から猛抗議を受けるが、 これが思わぬ形でKに自分のアイデンティティを考えさせるきっかけになったのか、Kはマザーに、バドーとは何者なのかを問う。 ……ただ、マザーからの回答はないまま場面転換してしまったので、物語の核心に関わる伏線なのか、ただの勢いなのかは不明。
 その頃悪党2人は、事務所のあるビルの周囲に警官が集まってきているのを見て、窓から銃で撃ち殺そうとしていた(おぃ)
 ここは、1920年代のアメリカか。
 だがその時、開いた窓から事務所にロープで飛び込む新條(笑) 新條はロープ捕縛術も用い、2人を華麗に制圧する。 新條さんのロープが一発ネタではなく、定番化したのは、キャラ付けとして嬉しい所。 次の標的を求めて街をぶらついていた眼力マンは少年(瀕死の重傷を負った運転手の子供)の通報を受け、 電話ボックスの上から現れたKと激突。マザーの改造を受けたKは殺人光線を跳ね返し、必殺の速射機関銃に耐えられるも、 新装備の火炎放射で見事に眼力マンを撃破するのであった。
 ちなみに予告ではKと少年の心の交流が〜みたいな感じだったのですが、そんな要素は全くありませんでした。前回の方が、 まだ絡んでいた。
 シナリオはここまでで最高レベルにぐだぐだでしたが、前回に続いてアクションには気合いが入っており、 なかなかの見応え。回転しまくり飛びまくりで、1vs1の肉弾戦は要するにプロレスなのですが、シンプルゆえの面白さというか、 中の人同士の呼吸の掛け合いまで伝わってくる感じが、いっそ面白い。……そこしか、見る所が無かったというのもありますが(^^;
 また眼力マンは、首から下は漆黒のコートで包んでおり、人間まま(多分)。巨大な両目、首が潜望鏡のように伸びるギミック、 サーベル付けたり機関銃付けたりとアタッチメントを取り替えられる機械の右腕、 という3つのポイントでロボットらしさを出すというデザインと見せ方がなかなか秀逸。恐らく予算節約を兼ねた、 非全身着ぐるみタイプだったと思うのですが、外見からギャングっぽさが出て(途中で葉巻を吸うシーンもあり)、 思わぬ秀逸怪ロボットになりました。
 さてここまで、中山脚本の時がどうもピントがずれていると評してきましたが、実際にはどうやら、 刑事物テイスト強めの前後編エピソードと、シンプルなヒーロー物構造の1話完結エピソードを意図的に交互にやっている様子。
 もちろん正確な現場の事情はわかりかねますが、わかりやすい1話完結エピソードを担保に、 若干雰囲気が暗くて細かい描写に凝った意欲的な前後編エピソードを展開しているのかなと思われ、実に面白い構成です。
 ……まあもう少し、二つの作風の間の整合性は取って欲しいですが(笑)


★前半戦まとめ★
 14話まで、3人の脚本家が2話ずつを担当し、
 伊上勝−中山昌一−上原正三−中山−上原−伊上−中山
 というローテーション。
 伊上、上原が2話完結、中山が1話完結のエピソードを描く、という変わった構成。
 伊上、上原の担当回と、中山の担当回に、世界観の捉え方などのギャップが大きく、当初は発注と脚本家の間に意識のズレがあるのかと考えていましたが、 ローテのパターンを見るに、どうやら意図的にこういった構成にした模様。
 ……もしかしたら深い意味はなくて、脚本家のスケジュールの都合だったかもしれませんが、結果として、 刑事物の色の強いエピソードとシンプルな70年代ヒーロー物らしいエピソードがほぼ交互に展開する、 という形になりました。そしてここまで綺麗にパターン化しているからには、意図があると考えて良いとは思います。
 中山脚本回の雑さと、今作らしい魅力が全く生きていない部分には非常に不満はあるのですが、 意図的な構成であり、それがある事で2話完結の方で凝った事が出来ているとするならば、仕方ないというかなんというか(^^;
 ちょっと面白いのは、ローテの関係により、ズレている、と感じる中山脚本回がむしろ数としては最多である事。 後半もこのローテで進むならば、数字の上でいえばむしろ、中山脚本回こそ『ロボット刑事』のメインとも取れます(笑) まあ、 パイロット版とか節目の回を考えると、あくまで裏だとは思われますが。
 伊上勝、上原正三は、言わずと知れた東映ヒーロー物の中心的脚本家ですが、中山昌一は、プロデューサー・平山亨の義兄で、 50〜60年代に主に活躍した映画監督・松村昌治のペンネームとの事。
 雑なりに中山脚本でここまで1番面白かったのは、3話か。後は正直、どんどん大雑把になっていきます……。ただ今作、 怪ロボットがデザイン的にどんどん面白くなっているというのはあって、シナリオが悪くても、見られる部分があるのは良いところ。 14話の眼力マンは、かなりの秀逸怪人でした。
 悪の犯罪組織が、人間の犯罪者に手を貸し、その不可能犯罪をロボット刑事を加えたチームが捜査する、 というストーリーコンセプトは非常にポテンシャルが高く、今日でも様々なリメイクが効きそうな面白さ。
 人の中の悪を揺り動かす秘密結社バドーの悪魔的存在感も面白く、自分達の金儲けの為と言いつつ、 必ず人間を介すそのやり口も、物語に独自の面白みと深みを与えています。
 ストレートに、『仮面ライダー』『キカイダー』の系譜に連なると思われる今作ですが、 そういったストーリー面での変化球を加え、変身しないヒーローであるKの異形さが、 “組織の中の異物”というアプローチで描かれており、それがどのような落着を見るのかは、楽しみです。
 特に深く触れられずに終わる可能性もあるかと思われたマザーと、バドーの繋がりも浮上し、物語も動く中、 後半戦も今作らしい魅力を見せてくれる事に期待。

→〔その3へ続く〕

(2014年6月29日)
(20174年6月5日 改訂)
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