■『ロボット刑事』感想まとめ1■
“これで、全ては片が付いた”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『ロボット刑事』
感想の、まとめ1(1話〜7話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕
・ 〔まとめ4〕
- ◆第1話「バドーの殺人セールスマン」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝)
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刑期を務め終え、入所前の約束通り、かつて強奪に成功した10億円を2人の仲間と山分けしようとする男・黒田。だが、
犯罪者仲間は取り分が減るのを惜しみ、スケープゴートとして罪を被った黒田をのけ者にしようとしていた。
そんな黒田に接触する怪しげな車。謎の組織バドーは、裏切った2人の仲間を消して10億円の隠し場所を吐かせる為の、
殺人レンタル契約を黒田と結ぶ……と、なかなか渋い入り。
バドーの殺人ロボット・ワッカマンは、分離した体で通風口から入り込み、再合体して標的を抹殺。これにより、人間には不可能な、
密室殺人事件が発生する。
黒田の出所にともない、かつての10億円事件の容疑者を張っていた、芝と新條の2人の刑事はこの殺人事件に遭遇し調査。
窓の鍵を調べたり、鑑識を呼ぼうとしたり、と刑事もののセオリーを踏んで展開した所で、1人の刑事が現場にやってくる。
やけに固い体をトレンチコートに包み、奇妙な鋼鉄のお面を被った男……いやそれは、お面ではない。彼の名は、ロボット刑事・K!
序盤ここまで、犯罪の成り行きと刑事の動きを割と丁寧に描き、その上で、秘密結社の怪ロボットが不可能犯罪を起こす、
というのはなかなか面白いコンセプト。そして長官命令でベテランの芝刑事と組むように言われてやってきたKは、
根本的にその存在を疑われている事もあり、いかにも叩き上げで古くさい芝刑事と、全く噛み合わない。
いきなりやってきて信頼されない上に、人間の感情を理解できないK。刑事としては色々と問題がありすぎる気もしますが、
人間とロボット、足の捜査と科学捜査、古い刑事と新しすぎる刑事、と幾つかの要素が組み合わさって、
Kが単純なヒーローとして受け入れられない、というのは面白い所です。
結局、両刑事の理解を得られなかったKだが、超聴覚により現場を離れる輪っかマンの動きを察知。
単独で追いかけて戦闘になるが逃げられてしまい、翌朝、何事もなかったかのように芝刑事のお出迎えにあがる(笑)
機械野郎がけったいで仕方がない芝刑事の、「嫁入り前の娘に変な噂が立つと困るから家には近づくな」という台詞が、なんともいい。
そんな事を言いながら、ド派手なKの車で出勤する芝刑事(笑)
いったい警視庁の上層部は何を考えて、Kに黄色い鳥打ち帽被せて真っ赤なジャケット着せて、赤と白の奇妙な車に乗せたのか。
一方その頃、新條刑事が詳しく調べていた昨夜の現場に、窓から千葉真一が飛び込んできた。
そして窓から帰って行った。
血縁関係などによる特別出演かと思われますが、劇中でも実際に兄弟役。
昨夜の衝突もありKとのコンビはまっぴら御免だと上司に反駁する芝刑事だったが、階級社会の悲しさ、
特別科学捜査室長に任命するとの辞令を受けて、配属を変更されてしまう。ロボット刑事による最新鋭の科学捜査……
が謳い文句の筈の特別科学捜査室だったが、あてがわれた部屋は放置されていた物置同然で、どう考えても島流し部署。
……上層部で何があったのかわかりませんが、上の方でもKを持てあましている、という事だけは強く伝わってきます(笑)
だがそこには、芝をオヤジさんと慕う新條が、自ら強く希望して共に配属されていた。更に情報屋の地獄耳平が顔を出し、
特別科学捜査室は過去の10億円強奪と絡むと思われる、密室殺人事件の捜査を続ける事になる。
地獄耳からの情報により、10億円事件のもう1人の容疑者だった男が、
出港させた小型フェリーの中に立てこもっていると聞いたKと新條は現場へ向かうが、既に男の前に輪っかマンの魔手は迫っていた。
海に飛び込んでフェリーに乗り込んだKは輪っかマンの前に立ちはだかり、相手の「死ね!」という言葉にエキサイトしたのか、
ジャケットを脱ぎ捨てると瞳が真っ赤に変わり、ファイティング全裸モードを発動する!
変身しない代わりに服を着込んでいるという珍しいヒーローのKですが(後のジャンパーソンのジャンパー脱ぎはオマージュか)、
ただ全裸になるだけではなく、瞳の色が黄→赤に変わる、というアクセントがいい味を加えています。
そして突然、観音様のように虚空に浮かび上がる、K似の巨大ロボット。
凄まじく奇妙な映像になった上に、さっぱり意味がわからないのですが、Kが「マザー」と言っているので、とりあえず、
Kサイドの存在の模様。実際に出現しているというよりはKにだけ見ているような気がしますが。
あとナレーションが「巨大ロボット」と言っているのですが、本当に、ロボットなのかも疑わしい。
マザーに見守られながら船上で輪っかマンと激突するK、両者の戦いが盛り上がってきた所で、まさかの……つづく!
- ◆第2話「目撃者はゼロ」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝)
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予想外の連続物となりましたが、輪っかマンは冒頭で、Kに再結合装置を破壊されて、爆死。
物的証拠になりうるバドーの殺人ロボットを、木っ端微塵に吹っ飛ばすK。…………さすが、
東映刑事ヒーローの元祖的存在(笑)
輪っかマンを倒したKだったが、立てこもり中の男はバドーの送り込んだテナガマンにより抹殺されてしまう。
死体抱えて困っている所に通報を受けた水上警察がやってきて逮捕されたK、2話にして留置場を体験。
反省する。
芝刑事の尽力もあり、刑事だと認めてもらって釈放されるKだったが、
警視庁上層部はロボット刑事の存在認知を全くはかっていない様子が窺え、本気で扱いに困っている様子です。
社長の息子が描いたイメージキャラクター、みたいな感じ。
「密室殺人の犯人は殺人ロボットだったんですよ!」と報告するKだが、
その証拠となるロボットは自ら粉微塵にして海の底に沈めた為、当然信用して貰えない。
最新型分光器とか超聴覚とか速射破壊銃とかの前に、Kには刑事ロボットとして搭載すべき機能がもっと他にあったのではないか。
この辺り、Kの「刑事としての成長を描く」のも作品コンセプトなのかもしれませんが、現状、
本当に刑事ロボットなのかどうか疑わしすぎて、そちらの要素は入るのかどうか(^^;
殺された男の言い残した暗号をKは簡単に解読し、10億円の隠し場所へ急ぐ芝と新條。度重なる不祥事に居残りを命じられ、
殺人ロボットも知った筈だから今から行っても無駄なのになぁ……と青い瞳で呟くKの、人間は理解に苦しむ、
というロボットの視点が入るのは今作らしいウィット。
2人の仲間の死により10億円を手に入れた黒田は、半分の5億円をバドーに払うという契約を一方的に破棄し、
10億全てを自分のものにしようと欲をかいた事で、契約違反でバドーに狙われる身となる。むしろ、契約通りに5億貰えればOK、
という所にバドーの犯罪結社としての矜持を見ます(笑)
地獄耳平の情報(超優秀)、Kや両刑事、今回もゲスト出演の千葉真一の活躍もあり黒田は逮捕されるが、
10億円は手長ロボットによって奪われてしまう。回収した契約金を地味にヘリコプターで運ぼうとするぶバドーだが、その時、
Kがヘリに飛びつく! しかし地上のテナガマンによってKはヘリから振り落とされ、飛び去っていくヘリコプター!
だがKは、飛びついた際にヘリに時限爆弾を仕掛けていた!
10億円を乗せたまま、吹っ飛ぶヘリコプター!!
全裸ファイティングスタイルを発動したKは手長ロボットと戦い、殺人の実行犯であり、
未知の科学力を持った犯罪組織の物的証拠となる筈のバドー怪ロボット・テナガマンは、車に突っ込んで爆死。
K「これで、全ては片が付いた」
駄目だよ、全然駄目だよK!!
「なんだと。ロボットは自爆して、10億円は灰になっちまった? 貴様それでも刑事か」
さすがに、怒られました。
相手が自爆したのは仕方ないとしても、Kがこの結果に何の疑問も抱かず満足している所がダメすぎます(笑)
まあそれはともかく、黒田は逮捕したし一杯やりにいくか……とひとまず和やかになる特別科学捜査室だったが、
Kの超聴覚が留置場に迫る気配を捕らえる。黒田は留置場で何者かに暗殺され、その言い残した「バドー」という言葉だけを3人は知る……という所でつづく。
マザーに関しては全く謎のままでしたが、Kが輪っかロボットを爆発四散させたところで首を左右に振って駄目出しをしていたので、
Kにおけるガンツ先生的なものか。K、落第!
次回、ジリキマンの磁力で工場の時計が狂ったように爆発する……
第3話、「時計発狂事件」。
狂っているのは、時計か、バドーか、この世界か。
久々に、凄まじいパンチ力。
これが、1973年か。
ただ、2話完結形式でのサスペンス展開、刑事物としての細かいギミック見せ、あまりにもダメすぎるK、
と全体としては思ったより面白かったです。
単純に「刑事のヒーローが活躍する」のではなく、刑事物とヒーロー物の要素を丁寧に組み合わせていった上で、
あくまで“異物としてのロボット刑事”が描かれるという、変身ヒーローの絶頂〜飽和期の作品という事で、少しひねった感じが、
いい方向に作用。Kの相棒を若手刑事だけにしないで、いかにも頑固そうなベテラン刑事も交えてギャップを強くしている所も面白い。
あと余談ですが、水木一郎の歌声はこの頃が一番好きだなぁ。
- ◆第3話「時計発狂事件」◆ (監督:折田至 脚本:中山昌一)
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バドーの殺人ロボット・ジリキマンが、2人の男を襲撃。果たしてその目的は何なのか……という、ホワイダンニット形式。
黒幕を見つける為にはもう少し怪ロボットを泳がせていた方がいいんだ、とか言っている内に被害が広がっていますが、
ロボットの合理性という事で良いのでしょうか。
被害者の息子との交流が描かれたり、お父さんの居ない間に芝家にあがりこんでいたり、2−3話の間に、
えらく人間社会に馴染んでいるK(^^;
前回やたらに優秀だった地獄耳は、今回は既に警察が掴んでいる情報を自慢げに持ってくる、と控えめにしつつ顔出しだけ。
実は2人の被害者は、ある時計工場に関わる産業スパイ事件に絡んでいた。黒幕はその事件を闇に葬る為にバドーと契約し、
事件当時スパイを捕まえた警備員2人の抹殺を図ったのである。
磁力マンとの戦闘中に、相手に発信器をつけていたKは、黒幕が磁力マンを車に乗せている所を確認。黒幕の素性を突き止めると、
その会社を捜索して、バドーとの契約書を押収する。
……これ、法廷で証拠になるのか(笑)
追い詰められた黒幕は開き直って、契約の最終段階である時計工場の壊滅を予告。今からでは、
どんなに警察が急いでも磁力マンが工場を破壊するのを止められはしない筈……だが。
新條「早まったな。ロボット刑事Kの存在を忘れてもらっちゃ困るぜ」
現場には、空飛ぶパトカーを駆って、いちはやくKが向かっていた!
格好いいけど、一気に普通になってしまいました(^^;
3話にして突然、警察がKとバドーと怪ロボットの存在を受け入れていて、2〜3話の間に、
劇中で半年ぐらい経過したような展開。1話で置いた特色が軒並み薄れていて、勿体ない。
「ジリキマン、今度は徹底的にやるぞ!」
黒幕を逮捕した以上、容赦の必要はないと、K、本気全裸。
スクラップ置き場で磁力攻撃に苦しみつつも、自らの鉄の体を生かして体当たり。最後は、磁力の暴走?で廃車に埋もれた所を、
速射機関銃で吹っ飛ばしてデリート完了。
磁力マンは、磁石の力で金属にくっついて垂直の柱を登っていく描写など、物凄い縮尺の適当な人形だったりで、
全体的に特撮は脱力もの。73年とはいえ、もう少し頑張っていただきたい(^^;
かくて黒幕は逮捕され、少年の父親も回復し、遊園地で遊んで大団円の中、なぜか、荒野でマザーを呼んでいるK。
ナレーション「ロボットは、機械だと人は言う。だがKは違う。Kは、人間の感情を持っている。Kは、思いやりもある。
Kに恥じないだけの人間が、どれだけ居るだろうか」
あ、あれ?
前回、芝刑事の怒りの感情を理解できなかったKですが、えらい急速に人間を学習している模様です。
途中の路線変更はわかるけど、どうして1−2話と3話でこんなにギャップがあるのでしょうか。なんというか、
企画会議と設定をもとにそれぞれの脚本家が最初に書いてきたシナリオを、描写の摺り合わせなど無しに、
そのまま映像化・放映してしまったような感じ(^^; マザーも、とりあえず出して下さい、と言われて各自1回ずつ出しているけど、
書いている側にも何だかわかってない疑惑(笑) 折角面白かったサブタイトル倒れが、個人的には特に残念。
- ◆第4話「壁に消えた殺人者」◆ (監督:折田至 脚本:中山昌一)
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今回の見所は二つ。
K、ポエムを書く。
マザー、補給装置だと判明。
「いいな いいな 人間っていいな」的な書きかけのポエムを芝家の娘達に見せるように迫られて、
恥ずかしがるKは何とも悲しくも面白いのですが、取り上げた上に声に出して読む次女、鬼畜。
あまり調子にのるとKさんだって怒って、机の引き出しに隠された思春期の乙女日記を透視して拡声器で朗読するぞ!
カモフラージュ機能によって姿を消すバドーの殺人ロボット・カメレオマンにより、3人の男が次々と殺害される事件が発生。
カメレオマンは、その場に居合わせた被害者の同僚に凶器を持たせて捜査を攪乱しようとしている割には、
Kと新條の前に堂々と姿を見せたり、公園で子供を脅かして「青木さんの家はどこだ?」と聞いたり、
折角のカモフラージュ機能が潜入時にしか役に立っておらず、何か大事な回路を取り付ける前に出荷してしまった疑惑。
捜査の結果、殺された権田と山村に、勤め先の社長であり縁戚関係にあたる久保を受取人とした多額の保険金がかかっていた事、
その権田と山村が、3番目に殺害された青木の後援で独立しようとしていた事が判明。黒幕は久保社長に間違いないが、
あくまで実行犯はカメレオマンで証拠がない。そこで新條は一計を案じ、久保とカメレオマンの密会を録音・撮影する。…………て、
書いていて気付きましたが、カメレオマンは久保社長を逮捕させない為に、実行犯が怪ロボットである事を、
故意に警察に見せつけていたのでしょーか。それにしても、あんまりとうか、バドーが、派遣するロボットを間違えたような(笑)
「カメレオマン、今度は逃がさんぞ!」
黒幕の逮捕の為には証拠が必要、と一応刑事物らしさを付け加えた上で、もはや容赦はいらないと、Kがカメレオマンを成敗。
1−2話は前後編形式だったので多少余裕があったにしても、割と丁寧にやっていたのが嘘のように、3・4話は、物凄い雑(^^;
70年代前半クオリティといえば、全くその通りではあるのですが。
「相手がロボットとなると、刑事としての長年の俺の勘がさっぱり役に立たたねぇ。俺はそいつが情けねぇのよ」
芝刑事は今回、ただ愚痴っていただけで、単なる困ったおじさんになってしまいました。
そして何故か科学捜査室長任命の話が蒸し返されており、やっぱり最初に2本ずつ依頼して、
全く摺り合わせをしなかったのではないか疑惑(^^;
- ◆第5話「二重犯人の謎」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
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思った通りではあるけれど、脚本変わったら、また雰囲気がけっこう変わりました(^^;
手がかり一つ残さない連続宝石強盗が発生し、芝刑事は、5年前に捕まえた凄腕の金庫破り・錠無しの松を思い出す。
現場の痕跡から組織的な犯行に見えたが、自分の仕事に美学を持つ松なら、犯行は1人で行う筈。果たして犯人は誰なのか……それは、
バドーの怪ロボット、七つ道具のナナツマン(見た目は黄色いドライヤー。モチーフはどうやら、懐中電灯か)の仕業であった。
ジャージーな音楽とともにコミカルに忍び込むナナツマンは、ラジオのノイズに苦しんで思いっきり見つかってしまい、
警備員を抹殺して逃亡。
「昔の金庫破りは人殺しはしなかった。ひでぇ世の中になったもんだ」
と、芝刑事の変な昔気質が素敵。
金庫から盗まれたのは宝石だけであり、現金には手を付けられていないのも錠無しの松の手口に酷似。松の関与を疑う芝だが、
50万ボルトの高圧電流が金庫破りに使われている事からKはロボットの仕業を疑い、赤外線サーチで現場に奇妙な足跡を発見する。
しかし……
「K、これは人間の仕業だよ。落ちていた見取り図から、わずかだ指紋が検出された」
と、ロボットか人間か、残された情報で順々にひっくり返していく、というのは面白い。
新條は松を追い、Kは指紋の分析をしたがるが、すげなく芝に断られる(笑)
Kがやっても鑑識がやっても指紋の分析に代わりはないのですが、どうしても、人間の手を通したいらしい芝刑事。
「はははっ。残念だった。ロボットじゃなくて」
「待って下さい。人間の仕業と決めてかかるのは危険ですよ。事件の本質を見失う事になります」
「何だと? てめえこの儂に意見しようってのか」
「いや、忠告ですよ」
K、逆撫で(笑)
「だって、あまりにも非科学的なやり方だと思うんです」
「てやんでいべらぼうめ。どうせこちとらポンコツよ。だからてめえみたいな鉄屑野郎と組まされてるんじゃねえか」
ここのやり取りは実に秀逸で、やはり今作の肝は芝刑事にあります。
松と接触した新條は、松が確固たるアリバイを持っている事を知る。そして松は、刑務所内部で作業中の事故で右手首を失っていた。
自分で仕事が出来なくなった松が仲間を集めたのか……しかし松にはアリバイがある……ところが、
現場の見取り図に残っていた指紋が松のものだと判明する。
一方、現場で見つけたタイヤの跡を追っていたKはナナツマンと遭遇し戦闘になるが、逃げられてしまう。
やはり犯人はロボットなのか……Kには説得の材料として、録画機能をつけてあげてほしい(笑)
まあ、情報公開を求められた時に問題になる事を懸念してか、約20年後のソリッドスーツ(『特救指令ソルブレイン』)ですら、
付かないけど。
事件の真相は、バドーと契約した松が、ナナツマンに金庫破りをさせているというものだった。そしてその本命は、
ツタン王国の秘宝ブルームーンの輝く王冠。
見取り図の指紋の件から松を逮捕しようと2人の刑事が家へと向かい、松の娘が居るのが、いい所。
「あれほど約束したのに、もう真面目になるって」
だが父は逃亡し、一緒に居たチンピラを確保しようとした新條は、ナナツマンによって気絶させられてしまう。
逃げ出した松の前に先回りした芝刑事にもナナツマンの飛び道具が迫り、その危機を救うKが、BGMも合わさって格好いい。
「このロボット野郎、逃げちまったじゃねえか。鉄屑野郎め!」
直後のやり取りがこれなのが素晴らしい(笑)
松とチンピラは車で逃走し、ナナツマンを追って再び全裸になったKも、目潰しを喰らって逃げられてしまう。だが、松の狙いが判明し、
秘宝の展示される東都博物館で張り込む事にする3人。そこへやってきた地獄耳は、今回も役に立たず。
「そこらのロボット野郎と一緒にされてたまるかい」
「お言葉ですが、人間だけと決めて警戒していると、とんでもない事になりますよ」
「ホシをとっ捕まえりゃいいんだろ、とっ捕まえりゃ」
その頃、松と下っ端もロボットに愚痴っていた(笑)
「人殺しした上に、見取り図まで落としてくるなんて、全くドジなロボットだぜ」
だがそれは、ナナツマンの周到な計画の一部だった。敢えて松達を警察にマークさせた上で、
美術館に忍び込んだ2人は警察に逮捕される……そして2人が故意に留置場に居る間に、ナナツマンが王冠を盗み出せば、
アリバイは完璧。この作戦に則り、2人は見事に警察に逮捕され、事件は片付いたと機嫌良くおうちで一杯やろうとする芝と新條は、
まだロボットが残っている、と主張するKを邪険に追い払う。
落ち込むKを気遣う長女は、当然のように新條さんとカップルになるのかと思ったら、
予想外にも先にKとフラグ立てたぞ!(笑)
なんとなく海岸でマザーを呼んで黄昏れるK。
「マザー、いつも芝刑事を怒らせてばかりいるんだ。僕はロボットなので、人間とうまくやっていけないのだろうか」
無言でなんか指さすマザー。
「……んー、自分の思い通りの道を進め、マザーはそう言いたかったんだ」
あ、勝手に都合よく解釈した(笑)
「そうだ、僕は僕なりの、捜査活動をすればいいんだ」
改めて美術館に向かうKだが、時既に遅く、気球によって上空から美術館に侵入したナナツマンは、溶解液とロープを用いて、
警報センサーに引っかかる事なく王冠を入手。気球を追ったKは、パトカーと気球で変な空中戦を演じ、
最終的に気球に体当たりして地上戦へと移行。Kの回路にダメージを与えるナナツマンだったが、
それによって生じたノイズで自らもダメージを受け、速射機関銃の藻屑に。
かくて秘宝は取り戻され……る寸前、Kに襲いかかる新たなバドー怪ロボット・コワシマン! と、思わぬ形でつづく。
ロボット刑事+人間の刑事の善玉側に対し、ロボットの盗人+人間の盗人の悪玉側、という二つのトリオを対比させ、
人間のターンとロボットのターンがくるくる入れ替わるという構成が秀逸。
ややコミカルな要素が増えたものの、雰囲気は1−2話に近く、ロボットと一般社会の関係も少し巻き戻りました(笑)
芝刑事とKのやり取りも全編面白く、改めて今作の大きなポイントです。現状だと、芝刑事があまりに頭の固い頑固オヤジすぎるので、
芝刑事の捜査方法が解決に繋がる展開も見たい所ですが、Kのヒーロー性との兼ね合いで、なかなか難しいのかどうか。
今回でいうと、すっと松の名前が出てくる辺りで、ベテラン刑事らしい存在感を見せてはいるのですが。
今後どう転ぶかわかりませんが、芝刑事を如何にただの困ったおっさんにしないかという案配が、今作のミソだと思うので。
- ◆第6話「恐怖の死刑マシン!!」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:上原正三)
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コワシマンに頭を叩かれ動きの鈍ったKは、鎖分銅とハンマーの攻撃を受け、固い装甲に大苦戦。最後はストンピングの連打を受け、
6話にして完敗を喫してしまう。
壊しマンはKを放置すると王冠を奪って去って行き、バドーはプロフェッショナルとして、依頼以外の余計な事をしないという点で、
非常に徹底しています。
孤独な戦いに敗れたKは、マザーの緊急補給を受ける事に。マザーを呼ぶ為には海岸まで行かないと行けないようですが、
1話の戦闘シーンでも海上に浮かんでいたし、マザーには海の上縛りでもあるのか。まあ、登場が蜃気楼っぽいという、
演出上の合わせというのが一番でしょうが。役割が明確になるまでは、Kの妄想で片付けられたけど、
補給装置だと判明した事で、ますます謎の深まるマザー。……まあ、本当は日光浴していれば回復するだけで、
“マザーに補給を受けている”事自体が、Kの妄想、という可能性も捨てきれませんが。
「儂もどうやら焼きが回ったような……歳かな」
王冠が盗まれた事を知り、いたく落ち込む芝刑事。そこへやってきた地獄耳は憎まれ口を叩くが、警備システムに捕まる(笑)
芝と新條は松を取り調べるが松は王冠盗難との関わりを否定。そして芝と下っ端を乗せた護送車が、壊しマンの襲撃を受ける。
けっこう怖い物知らずに壊しマンに立ち向かう警官達。3・4話が入った事で、
この世界における一般的な怪ロボットへの認識がぶれていますが、もしかすると、
ロボットなどとは夢にも思わず覆面レスラーの一種ぐらいに思っているのかもしれません(^^;
身軽に飛び回る新條は脱走した松の前に凄いジャンプで立ちはだかって手錠をかけるが、それも壊しマンに砕かれた末に、
遂にハンマーで叩かれて気を失ってしまう。
「バドーは契約を大事にする。あんた達は依頼者だ」
かつてここまで、アフターケアを大切にする悪の組織があっただろうか。
どんなジャンルでも、20年30年遡ると、一周回って新しく見える物に出くわしたりするわけですが、
『特捜戦隊デカレンジャー』は正しく、〔東映刑事ヒーローの集大成+円谷テイスト+戦隊フォーマット〕だったのだなぁ(笑)
バドーボスから契約金を要求される松と下っ端だったが金が惜しくなり、
行儀良く石垣に腰掛けて待機していた壊しマンを蹴落として逃走。バドー、3話ぶり2回目の裏切られですが、
どうもバドーは人間が運営しているというよりも、もっと悪魔的なテイストが感じられるので、前金を貰わないのは、
実はバドーにとってはどちらに転んでもいいからなのかもしれない。
松と下っ端を追い詰める壊しマンの前に立ちはだかるKだが、必殺の速射機関銃が通じず、逃走。
その間にホテルに隠れ潜んだ2人だったがそこにもバドーの刺客が迫り、結局、2人は保護を求めて警察に出頭する。
その頃、王冠の盗難と新條の怪我に意気消沈した芝は、筆で辞表を書いていた。
「どうやら儂の時代は終わったように思うんだ。科学の前には、どうにもならん」
「そんな事ありませんよー」
そこへ朗らかにやってくるK。
「芝刑事は立派な刑事です。辞めてはいけませんよ」
お ま え (笑)
「馬鹿野郎! いやしくも刑事たるものが事件をほっぽらかしてどこ行ってたんだ。だからおまえは鉄屑野郎だっていうんだ」
KはKで捜査活動を真面目にしていたのだけど、芝刑事の目から見ると確かに、連絡も無しに行方不明になっていたように見える、
のがポイント(笑) Kには色々、肝心な機能が足りません。
Kから、松が本庁に出頭してきた事を聞いた芝刑事はいつもの調子を取り戻し、取調室へ。
王冠の隠し場所については知らぬ存ぜぬを通す松だったが、その夜、壊しマンが留置場の壁を突き破って侵入し、
下っ端のチンピラを殺害。芝刑事が珍しいアクションで壊しマンから松を助け、立ち向かったKは怖しマンの弱点に気付く。
改めて、松を囮に廃工場で壊しマンと戦うKは、ダミーの人形を壊しマンに捕まえさせる。
「コワシマン! お前の負けだ。――今です!」
Kの指示で新條が何か電気のスイッチを入れると、ダミー人形ごとド派手に吹っ飛ぶコワシマン。
あまりに唐突で、面白展開に(笑)
「不死身のコワシマンにも、弱点はあったわけだ」
「でも、恐ろしいやつでした」
……え、何が、弱点だったのですか(^^;
単に至近距離から大爆発させただけにしか見えず、壊しマンの弱点は謎。この前のシーンで、
留置場の照明から火花が散ってコワシマンが苦しんだ姿にKが何かを閃くのですが、それが何を意図してダミー作戦に繋がったのか、
さっぱりわかりませんでした。前回のナナツマンも電子回路のノイズで苦しんでいたので、この2エピソードは、
Kが苦戦するが相手の弱点を突いて知恵と勇気で勝利するパターン……が企図されていたのかもしれませんが、両方とも、
正直うまく転がりませんでした。
バドーの刺客から逃れた松は、先祖代々の墓に中に隠していた王冠を、芝刑事へと返却。
「死んでも一緒にと思ってたんです……」
「どうして急に返す気になったんだ? 命より大事なものを」
「芝の旦那に負けたんですよ。このあっしを、身を投げ出してかばってくださった。悪党のあっしをね」
「てやんでぇ」
ベテラン刑事が犯人の心を揺り動かす、と、ようやくらしい形でポイントを得る芝刑事。
バドーが人の悪意につけ込む悪魔的存在とするならば、その悪意を正すのは人の心、という対比になっているとも見て取れます。
「良かったですね、王冠が無事に戻って」
「なんだおまえ、礼の一つも言えっていうのか。儂はロボットに下げる頭なぞ持っておらんぞ」
「僕はそんなつもりで言ったんじゃありませんよ〜」
「おいK……照れてんだよ」
芝は懐に収めていた辞表をこっそり破り捨て、ちょっぴり雰囲気の良くなった3人は、和やかに帰路に着くのであった……でオチ。
んー……なんか面白いなぁ。時制などはやっぱり、如何にも70年代的にすっ飛びまくるのですが、その上で比較的辻褄はあっているし、
細かいディテールを描く所に力を入れた上で、意外ととダラダラしたシーンがなく内容が詰まっており、少なくともこの立ち上がり、
伊上勝と上原正三は、2話セットの脚本に、力が入っている様子が窺えます。一方で3・4話が凄く“普通”だったのは、
オーダーに対して書き手の意識のズレがあったのか(^^;
次回、「頭上の恐怖(づじょうのきょうふ)」というルビに、時代を感じる(笑)
- ◆第7話「頭上の恐怖!!」◆ (監督:内田一作 脚本:中山晶一)
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空飛ぶ怪ロボット・ヒコーマンによる殺人事件が発生し、狙われる目撃者の少年。
名前が凄いヒコーマンは、何故か潜水夫風。腰についている爆弾みたいなもので攻撃するかと思いきや、
腹部からマジックハンドが飛び出すという、バドー開発部の迷走が窺える一体です。
元々、刑事ロボットという事であまり戦闘力を重視した設計ではないのでしょうが、今回も一方的にやられるK(^^;
Kはあのジャケット姿で凄く身軽なジャンプを見せるのは毎度格好いいのですが、そろそろ、速射機関銃以外の武器も欲しい所です。
今回の依頼人に、2件の殺人を完遂した事を報告するヒコーマン。
「君、証拠は残さなかっただろうな?」
「目撃した子供が1人居たが、それは勿論、片付けていきます」
ええっ?!
依頼人は、今回に関しては、支払い拒否しても許されると思います(笑)
ヒコーマンは2人の目撃者の内の1人はその場で抹殺したのに、子供は見逃して「喋ったら殺すぞ」と脅かしておいて、
子供があっさり新條とKに喋ると窓から覗いて「おまえを殺す」とか、まるっきり意味がわかりません。
そこへ踏み込んでくる新條。
「林さん、とうとう正体を現したな!」
ええっ?!
とうとうも何も、ここまで全く接触がなく、マークしていたわけでもなく、超杜撰。
まあ、ロボットがらみと思われる怪しい殺人事件があったら、
生き残って一番得した関係者を張り込んでいると大体バドー怪人と接触している現場を押さえられるのですが(笑)
そういう点で今作のキモは「犯行がロボットによるものだと証明されるかどうか」にあるのですが、
中山脚本はその肝心な部分を豪快に無視します(^^;
今回で言えば、少年の証言をKだけが信じて〜……とか持っていけば、芝や新條との擦れ違い、少年とKの友情など、
色々とドラマも盛り込めたと思うのですが。伊上勝、上原正三が、2話1セットで少々変則的に書いている中、
1人だけ1話完結で書いている為に一概には比べられないのですが、ここまで3本、中山脚本は作品の個性と面白みから完全に外してしまっています(^^;
救援に駆けつけたKは、戦闘中に浮かび上がったマザーを見て、授業参観パワーでヒコーマンを撃破。芝家の娘達と新條は、
バドーの魔手を逃れた少年とその母親を連れて浜辺でピクニックとしゃれ込むが、人間の食事を摂れないKは、
ヤカンの側で黄昏れているのだった……。
新條「見ない方がいいんだ。Kを気にしない方が、Kは喜ぶんだ」
楽しかったピクニックが一瞬で物凄く気まずい空気に。
連れてくるな。
まあKが空気読まずについてきた可能性もありますが。KもKで、瞳を青くして「マザーに会いたい」とかナレーションが入って、
“ロボットの悲しみ”を唐突にラストで盛り込んだのも、何かノルマがあったのかもしれませんが、激しく蛇足になりました。
今回からEDが、OPの2番でない、れっきとしたED曲に。
ロボット刑事 K! K! K!
→〔その2へ続く〕
(2014年6月29日)
(20174年6月5日 改訂)
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