■ザ・詰め合わせ■


“メガール、悪いのはドグマの心だ!”


 〔東映特撮YouTube Official〕 での配信に際して、試しに最初だけ見てざっくり感想を書き留めたり、 途中リタイアした作品の第1話感想をブログから回収して詰め合わせてみました。 70年代〜90年代初頭までを、ジェットコースター的に体感……出来るような出来ないような。時々第2話までと、番外編1本あり。 書いた時期が数年に渡る為、文体の統一や誤字脱字の修正の他、2016年現在、捉え方がだいぶ変化している部分などについては、 ある程度の改稿を加えています。

戻る


◎『変身忍者 嵐』 (1972)
 なんというかこう、力強く40年以上前の作品でした。
 ハヤブサオー(嵐の愛馬)のメンコの上でムギ球が光っているのと、
 OPの
 魔神斉 
 というキャスト表記(このぐらいの文字の比率。他は普通)が謎すぎて気になります。

◎『人造人間キカイダー』 (1972)
 通りすがりのトラックを破壊して喜んだり、採石場の大きな石に突っ込んで喜んだり、 逃げたキカイダーを追って「俺の能力(走力?)は900キロ!」とか叫んで一生懸命走ったり、 崖っぷちで戦って「追い詰めたぞ!」て喜ぶのできっと回避されて逆に落とされるのだろうなぁと思ったら、 その通り見事に落ちたりするサイ怪人があまりに残念すぎて、ちょっと辛い出来(^^;。
 そんなバカ怪人なのに、光明寺博士の息子をさらおうとする時だけ、光明寺博士の姿に化けてさらおうという搦め手を使おうとする辺り、謎。
 雑魚戦闘員の殺陣がちょっと独特で、面白いです。
 アンドロイドっぽさを意識したのか、わざと動きを制限するようなキカイダーの構えなども東映着ぐるみ芸の伝統を感じさせますが、 バトルが面白いかというと、微妙。……まあ1話はホント、サイ怪人が馬鹿すぎたのですが。
 シルエットで紹介されたダーク破壊軍団(怪人部隊)は、一部、凄い弱そうな名前のが居るのですが、 ちゃんと出てくるのか気になります(笑) 「サソリホワイト」とか「ピンクタイガー」とか。

◎『イナズマン』 (1973)
 大学生・渡五郎は、ある夜、ガスマスクにかぎ爪という謎の集団に取り囲まれる姉弟を助けるが、 そこに現れた謎の怪人イツツバンバラの攻撃を受け、海に落ちてしまう。 目を醒ました彼が運び込まれていたのは珍妙な服装の少年少女達が行き交う、謎の部屋……そこは少年同盟の秘密基地であった。
 悪のミュータント(超能力者)を率い、人類根絶を企む新人類帝国。
 その野望に立ち向かうべく、キャプテンサラーにより世の悪に汚れていない少年少女のミュータントによって結成されたのが、 少年同盟である。
 ……えー、つまり……純真無垢な少年少女をだまくらかして尖兵にしている、のか。
 「新人類は許せない」と詳しい事実確認もせずに少年同盟に協力を申し出た五郎は、ミュータント検査機にかけられた結果、 検査機の針が振りきれるほどの強い超能力を持っている事が判明し、超能力を扱う為の訓練を受ける。
 街に現れたイツツバンバラから人々を守る為に少年同盟が出撃するも危機に陥った時、五郎の変身したサナギマンがそのピンチを救う!  更にエネルギーを溜めて「超力招来!」とイナズマンに転身し、イツツバンバラを撃退。
 この辺り、さらっとナレーションで流して、何の溜めもなくAパートの内にイナズマンまで見せてしまうのが恐ろしい。 10年後にギャバンもAパートの内にさらっと変身していましたが、当時はこういう方針だったのかしら。
 この後、鏡越しに新人類帝国の帝王バンバ自らによるヘッドハントを受けたりするが、五郎はそれを断り、 大学の教授に化けて彼の命を狙ったイツツバンバラを撃破。少年同盟の一員として、 恥ずかしい制服を着る 新人類帝国と戦う事になるのでありました。
 変身ブームが落ち着き始めた時代に生み出された本作、有名な二段階変身は面白いといえば面白いのですが、 ナレーションで「サナギマンが成長してエネルギーを溜めると……」のその「成長」が何を意味するのかが全く説明されない為、 単に時間的な問題だけになっているのが非常に残念。ギミックは作ってもディテールに凝らない、というのはままある話ではありますが、 ディテールの無さを吹き飛ばすだけのパワーは今ひとつ感じません。
 全体的には割とまっとうな作りで、まっとうすぎて残念なくらい(笑)
 一番頭オカシイのは、少年同盟のミュータント少年少女達が、 掛け声と共にジャンプして空中一回転すると瞬間的に恥ずかしい制服姿に変身する事なのですが、 超能力なのか、キャプテンサラーに改造された為なのかは、不明。この少年同盟の珍妙な制服は、悪い意味で凄い気になります。 Wikipediaには石ノ森作品風味(オレンジ色に卵形の飾り)と書いてありましたが、どちらかというと、 間違えた科学特捜隊(『ウルトラマン』)っぽい。 というか夜中にその制服にヘルメットかぶった人間が戦っていたら、助けるのを躊躇するレベル。
 少年同盟を率いるキャプテンサラーも同系列のデザイン(色は白)を着て現れるので、信用するしない以前に、 この人は正気なのか不安が。

◎『秘密戦隊ゴレンジャー』 (1975)
 第1話冒頭、河原でサッカーしている男達に突如襲いかかる、黒十字軍。
 何事か、と思ったら、国際防衛機構イーグルの関東支部であったらしく、どう見ても遊んでいたようにしか見えないのですが、 訓練だった模様。
 蹴り上げたサッカーボールに、飛来した黒十字のマークが突き刺さる演出と、その後の容赦ない惨殺シーンに至る流れは格好いい。
 そして立て続けに、イーグル東北支部・九州支部・関西支部・北海道支部、が黒十字軍の奇襲により全滅。それぞれたった一人だけが、 生き残る……。
 この一連の襲撃シーンが格好いい(特に毒ガス仮面は秀逸)だけに、次のシーンになると、 何故かそれぞれレンジャーに変身して武器の練習をしていて、どこからともなく走ってきたアカに「合格だ!」 と上から目線で言われるという展開がちょっと勿体ない。まあもともと、レンジャー要員のエリートだったとか、 そういう理解でいいのかもしれませんが、この間に色々あったのは脳内妄想で補うにしても、「不合格」だったらどうするつもりだったのだろうアカ(笑)
 で、戦隊の集合場所が何故「スナック・ゴン」なのかと思ったら、1970年代頃の「スナック」は、今イメージする、 女の子の居る飲み屋、というよりは、軽喫茶、というものであったらしく、作中では単純に「喫茶店」ぐらいのイメージで捉えておくべきようです。
 これでついでに、『ジャンボーグA』(73年)で、PATの基地内に「スナック・PAT」がある謎が解けました。 PATは頭おかしいから、基地内にスナックあっても平常運転だな、とか思っていてごめんなさい(笑)
 それぞれスナックに集まるメンバー(ここでキのカレー大食い披露)、「一人足りない」「大丈夫だ」。 スナックの奥の扉を抜けて地下の秘密基地に向かうと、何故か先回りして、ギター弾きながら佇んでいる新命明(宮内洋)。
 宮内洋しか許されない所業です。
 この後も続く、アカとアオの妙な心の通じっぷりは、今なら即刻ネタにされるレベル。……や、 当時からあったかもしれませんが(ライダーのスーツ姿のカップリングとかある業界らしいしなぁ)。
 私まったくそちらのケはありませんが、妙に通じ合うアカ(短髪ワイルド、というか日活ヤクザ)とアオ(長髪優男)、 そのアオのヘリコプターに同乗する気さくな感じのキ(太マッチョ)、そこにとっぽい坊ちゃん風のミド(長髪やや女顔)がどう絡むのか、 と波乱を感じさせる人間関係で、今年の冬はゴレンジャー本が席巻しても驚かない(おぃ)
 第2話、冒頭のナレーションでさらっと語られる
 「イーグルの科学陣の力で、ゴレンジャーに転換」
 ……「転換」、「転換」ってなんだろう。もう元には戻れないタイプかしら。
 あらゆるものを砂に変える「サンドビーム」を奪った黒十字軍は、人類とその作り出した文明全てを砂にする作戦を決行。その為に、 子供を人質とし、サンドビームを開発した博士に、更なる改造を行わせる。黒十字軍の計画を察知したボスの指示により、 ゴレンジャーは作戦の阻止と博士の救出の為に動き出す。
 ボス(声だけ)がやたらに黒十字軍の動きに詳しいのは、イーグルのスパイが黒十字軍に潜り込んでいるからな模様。
 1話から黒十字軍は、世界征服の前提にやたらに人類を根絶したがりますが、宇宙人か何かなのか。
 物語は色々あって、ロケットに積み込んだサンドビームを人工衛星に設置し、 宇宙から地球を砂の星に変えようと目論む武者仮面とゴレンジャーが激突。
 戦闘中にサンドビームを撃ってくるのですが、改造されたサンドビームは、何故か、当たった所が爆発するようになります。
 ……あれ? いろいろ、台無しですよ?
 ゴレンジャーのアクションはそれぞれのスタイルを見せる感じでなかなか秀逸なのですが、 「行くわよ!」と叫んでから投げるモモの小型爆弾の威力が、超凶悪。
 リアルに這いずって逃げる武者仮面の目の前で、文字通り跡形も残らず吹き飛ぶ構成員とサンドビーム発生装置という絵は、 黒十字軍にトラウマを残すレベル。
 ゴレンジャーストームに使う変なボール(ドッジボール型爆弾、らしい)も取り出すし、 今回はクライマックスで高性能小型ミサイルとやらを平然と取り出すし、モモレンジャーは、全身武器庫。
 ゴレンジャーの必殺技ゴレンジャーストームは、モモの取り出した爆弾をゴレンジャーが次々にパスし (蹴り飛ばしてパワーを込めないといけないのかと思ったら、2話では単純に投げ渡していた)、 最後にアカが「フィニッシュ!」と蹴り込む(どうやら1話冒頭のサッカーはこの練習?だった模様)のですが、 逃げまどう怪人にぶつかった瞬間に

 ドカーーーン

 と割と洒落にならないレベルの爆発が起こる、大変酷たらしい必殺技です。
 火薬はいい、火薬はいいなぁ。
 全体として、視聴者をワクワクさせよう、という仕掛けが満載かつ真っ直ぐでストレートに楽しめ、思った以上に面白い。

◎『アクマイザー3』 (1975)
 見所は、一介の新聞記者の筈なのに、凄く普通にアクマ族の戦闘員をハイキックで沈める島一平。
 ……千葉治郎だから仕方ない。
 遙かな昔、地底世界へ移住した人間達――アクマ族は、地球の中の空洞、ダウンワールドの環境に適応する為に自らの体を機械化していき、 今では地上の人間とは似ても似つかぬ異形の姿へと変貌していた。そんなアクマ族が、地上世界への侵攻を開始。 その行為を許せないアクマ族の戦士・ザビタンは、一族を裏切ると、人間界の為に孤独な戦いに身を投じるのであった!
 主人公のザビタンは、1話から負傷した際に体内の機械回路が見えるという描写が入り、 生まれながらの改造人間・敵を裏切ったヒーロー・悪魔の紋章を突き付けられると体内に埋め込まれたアクマ回路の作用で苦痛を受けると、 ここまで盛って良いのだろうかという勢いで、石ノ森ヒーロー要素がてんこ盛り。
 抜け悪魔狩りでザビタンの命を狙って現れた、イビルとガブラを攻略して仲間に加え、悪魔三銃士となるという事で、 基本の剣技はフェンシング。このサーベルを、いちいちくるくる回しながら腰に収めるのが格好いい。
 また、改造人間である事を強調する為か、いきなり肩にバルカン砲を取り付けて連射する辺りはイカします。
 地上の人間狩りに用いられた空飛ぶ幽霊船(は石ノ森章太郎の漫画原作アニメのオマージュ?)を強奪した三銃士は、 何故かそれを自分達の母艦に一瞬で改造。古風な帆船が、突然、星条旗っぽい配色の飛行船に変わり、激しく謎です(笑) というか、 カゲスターを思い出さずにいられないのですが、野口竜さんが関わっていたりするのか、どうなのか。
 ダウンワールドにさらわれた人々を助け出したザビタンらは、地上侵攻を目論むアクマ族と戦う事になるのであった……で1話は終わり。 三銃士が揃うまでのエピソードで、随所にバトルはあるものの、特に怪人を倒して締め、みたいな事がないのは1話としてはちょっと面白い。

◎『超神ビビューン』 (1976)
 妖気を感じる……と、赤外線スコープでマンションの一室を覗き込む怪しい老人。
 真夜中に公園の鉄棒で大車輪している主人公。
 と、いきなりの通報案件×2。
 妖怪バックベアードの手下に追われる老人を助ける主人公だが、その事でバックベアードの怒りを買って呪いをかけられてしまい、 大学の体操部で使用した器具が次々と壊れるというトラブルに見舞われてしまう。
 鉄棒や踏み切り台がどう見ても不自然に壊れているのに、怒りの矛先が製造元に向かわず、部員から口々に責任を負わされる主人公は、 元々嫌われているのではないか(笑)
 夜中に謎の全身タイツ軍団を蹴り飛ばしてもあっけらかんとしていたし、空気読まない困った奴扱いな気がしてなりません。
 弁当は砂になり、飲み水は油になり、とバックベアードの嫌がらせに困る主人公の元を、前夜の老人――ダイマ博士が訪れ、 呪いを打ち破る力を手に入れる為に、主人公はダイマ超神研究所へ。
 博士曰く破軍星の儀式だそうなのですが、七星檀とやらに飾ってあるのがどう見ても悪魔の石像だし、 主人公は何故か鎖に繋がれているし、100%、ヤバい組織に拉致られた……!
 だがバックベアードの軍勢が研究所に迫った時、空の星が光輝き、主人公はその体に宿った運命の力に目覚める!
 「破軍星に招かれた、超神ビビューン!」
 この後、バックベアードを追い詰めると何の説明も台詞もなく助っ人妖怪?が現れて逃がしてしまい、何故か博士の孫がさらわれ、 助けに行って追い詰められた所に脈絡もなく2人の仲間が現れて戦闘シーン……と、初回に入れないといけない要素を順々に詰め込みました、 という雑な展開(^^;
 特に2人の超神仲間は全く前振りが無いままBパートで突然出現して共闘し、敵を倒した所で意気投合。いきなり胸元オープンして
 「超神になったのは、君たちもこれでか」
 と言うと胸に何やら痣があり、3人はそれぞれアクマイザー3の魂を受け継いでいた! と悪い意味でアクロバットすぎます(^^;
 何はともあれ3人は、アクマイザー3の魂から滝口順平の声で喋る謎の飛行船をプレゼントされ、妖怪軍団と戦う事になるのであった!
 70年代にしてもちょっと雑な感じの1話ですが、顔と胸にクリアパーツを組み込んだビビューン、重量感の出たズシーン、 ジャンプ姿が格好良いバシャーン、と超神のデザインは秀逸。
 ザビタンを継承してか、ビビューンのサーベルアクションも格好いいです。必殺技・火の玉アタックは、サーベル二刀流から何故か、 燃え上がる岩石になって敵の上に転がり落ちるという斜め上ですが!
 主人公がいきなり、大道具の仕掛けみたいになるのは、けっこう衝撃。
 今の所、謎の儀式といい名前といい、ラスボス候補筆頭はダイマ博士ですが、超神達の明日はどっちだ! というかこれ、 ダウンワールドが妖怪達に支配されてしまったので、大魔王が無知な地上人とアクマイザー3の魂を利用して妖怪達を片付け、 政権を奪い返そうとしているのではないのか。

◎『ザ・カゲスター』 (1976)
 敬愛する長石多可男監督の監督デビュー作という事で、いつか見てみたかった『カゲスター』が配信開始!
 OP(演出:長石多可男)は、基本的には作法に則ったベタな作りなのですが、 主人公のアクションシーンの背景に空を横切っていくジェット機を合わせるという映像が非常に鮮烈で、凄く長石多可男。
 それにしても、こう……あり得ないかっこ悪さカゲスター(笑)
 個々のパーツはそうでもないのに、全て揃うと、風呂敷&ほっかむり&手ぬぐいに見えるという、 この絶妙なバランス。
 そのくせ、マントの模様は何故かアメリカナイズ。
 派手さと丸さのアンバランスが、癖になる格好悪さを生み出しています(なおデザインは、後に戦隊シリーズなどでも活躍する野口竜氏)。
 中身の方は、まあ如何にも70年代半ばという感じで、今日的な視点ではかなり雑な展開。 また、この頃の作品はコメディセンスのズレがけっこう辛かったりしますが、 やたらに脈絡無いギャグを押し込んでくる上にけっこう尺を割くのが厳しい。
 社長令嬢のお嬢様とその丁稚のバディものかと思ったら、お嬢様に口でロープをほどかせるとか、 影夫さんが結構凄い。恐らく前年の『仮面ライダーストロンガー』(ストロンガー&タックル)への意識はあったのかと想像されますが、 東映特撮で男女のバディものは割と珍しくて、この後だと約10年後の『シャイダー』『スピルバン』辺りになるのか。
 カニヘルメットの変な悪役は何をしたいのか今ひとつわからなくて凄く困るのですが、 お嬢様を狙っている理由が単なる身代金目的なのかそれとも怨恨なのか、さっぱりわかりません。両方かもしれませんけど。
 そしてカゲスターとベルスターが出現した理由についてはは、「高圧電流で細胞が分裂したんじゃないかな……よくわからないけど」と、 思いっきり土俵の外に放り投げました(笑)
 潔いけど、凄い。
 何が凄いって、その「秘密」について、視聴者として特にドキドキを感じる余地がないという構成が凄い(笑)
 もしかしたら、特に作品における「秘密」でない可能性すらありますが!

◎『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』 (1978)
 父親に呼ばれて里帰りした主人公、ゲン・ハヤト……実家に帰ると入り口で立ち往生している父。そして、 惨殺された母と妹。「ゲンは幻……ゲンは源……」という父の遺言を聞くやいなや、天井から敵忍者が襲ってきたので、 咄嗟に隠し通路に飛び込むと家族の亡骸ごと家を大爆破。

 これが忍びの掟なのだ!

 ナイフ突き付けた相手と和やかに談笑して別れたり、妹の悲鳴を聞いて慌ていた筈なのに笑顔で帰宅したり、 主人公のテンションがシーンごとにコロコロ切り替わるのが、如何にも70年代(^^;
 猿人の相棒を連れた宇宙船乗りとか、頑張った宇宙ドッグファイトとか『スター・ウォーズ』の影響なのでしょうが、 終盤に巨大な宇宙帆船と謎のお姫様が出てきて、一気に松本宇宙に(笑)  まあその後に手に入れる宇宙船はミレニアム・ファルコン号っぽいのですが。
 そして、恩人を脱出装置の強制起動で宇宙に放り出したばかりの主人公、「ごっきげんな宇宙船を手に入れたぜ!」とノリノリになり、 別行動を取っていた敵宇宙戦闘機をたまたま撃墜。その勢いで、家族の仇、強大なガバナス忍軍と戦う事を決意するのであった。
 宇宙への植民が進んだという時代設定で、物語の舞台は地球から遠く離れた第15太陽系なのですが、 序盤で「今日は珍しく第1太陽系が見えるぜ」と、「今日は天気がいいから富士山が見えるぜ」ノリでそんなわけはないのですが、 宇宙空間の広大さを大らかな台詞で表現しようとしていたり、宇宙ものとしての見せ方がなかなか素敵。
 イーガー副長が超へたれすぎて、何話保つのか心配です。

◎『仮面ライダー(新)』 (1979)
 「話し合いは終わりだ。これからは……」
 「これからは?」
 「殺し合いだ!」

 原点回帰を強く意識していたというのもあるのでしょうが、劇中で繰り返し、
 “スーツを装着”しているのではなく、
 “異形へと変身”しているのだ、
 という点を強調していて興味深い。

◎『電子戦隊デンジマン』 (1980)
 デンジ犬アイシーが、デンジマン候補以外は一切助けなくて怖い。
 目の前でテニスのコーチが焼け死んだ後に、「君は今日からデンジピンクだ」とか目が光るチャウチャウに言われたら、 それは頷くしかありません。しかしその犬の背後には、硫黄の匂いが立ちこめていたりはしないのか。
 現行の戦隊シリーズの基本フォーマットを確立したと言われる今作ですが、『ジャッカー電撃隊』『バトルフィーバーJ』が、 スパイアクション要素を取り込み、秘密犯罪結社との戦いだったのに対し、 宇宙からやってきたデンジランドを基地に異次元からの侵略者と戦う、とだいぶ雰囲気が変化。初回から戦闘母艦とロボットも活躍し、 成る程、といった感じです。
 司令ポジションが犬と謎の声なのは、前作でやりすぎたと思った反動でしょうか(笑)
 まあ、既に犬は犬で若干踏み外している気もするのですが。
 予算的には次作『サンバルカン』よりあったのか、初回のアクションに関して言えば、『サンバルカン』よりもっさり感低め。 というか『サンバルカン』初回は前後や周辺作品と比べても、かなりもっさり度が高かったのでは疑惑(^^;
 デンジブーメランはほぼペンタフォースですけど。
 怪人が、
 「おのれ、くっ、誰がどぎゃーーーん!
 と台詞の途中で直撃喰らって吹っ飛んでいたのはなかなか凄かったです(笑)
 あとデンジマンは、スカーフがお洒落。
 それにしても、デンジロボが怪人より頭一つ大きいのですが、どうしてそんな事になったのか(笑) 基本的に、 デカい=強いの世界なので、もうそれだけで見るからに凄く強そうなわけですが、それを意図したものなのか、 背の高いスーツアクターさんしか都合が付かなかったのか。露骨に頭一つ高いと、ちょっと不自然(^^; あと、 最初からベーダー怪人にあまりに勝ち目が無さそうすぎます(笑) ……よくよく見ると、ロボの足首から下の部分が、 どうも大きなゲタを履いてる状態で、人間の足はその上までっぽいけど、どうしてそんな着ぐるみになったのだろう(^^;
 改めて見ると、企画段階でそういうオーダーだったのか、後の『バイオマン』は結構、今作を意識した入りなのだなーと。 勿論そのままではないですが、古代に宇宙からやってきたオーバーテクノロジーがベース、血統的なものでメンバーがスカウトされる、 頭のメカが色々教えてくれる、というのは恐らく意識的に踏襲した所かなと思われます。
 で、並べると大体、職業戦隊かスカウトという名の拉致監禁となる初期戦隊において、 「資金援助を餌にほいほいやってきた若者達を巻き込む」という『ダイナマン』(1983)はけっこう異彩でありました(笑)  まあ、スカウトの亜種なのですけど、わけのわからないまま戦闘が始まって海に飛び込んだと思ったら一堂に会してそのまま科学戦士になってしまうダイナマンは、 もしかしたら一番、曽田さんの色が出ているのかもしれません。
 後そもそもはドラマ重視のハード路線だったというのもありますが、メンバー集めの過程でそれぞれの動機付けをしっかり描いていく 『ジャッカー電撃隊』(1977)はかなり鮮やかな1話だったのだな、と。
 一度は拒否するもクライムの非道を目の当たりにして覚悟を決める正義漢のスペードエース、 男同士の腹の底での通じ合いからサイボーグとなる無頼漢のダイヤジャック、父親の復讐を望む気丈なハートクイーン、 そして死んでいる間に勝手に改造されるクローバーキング。

◎『仮面ライダースーパー1』 (1980)
 当時コメント欄でお薦めいただいた第22話がかなり衝撃的な内容で、折角なのでこの機会に発掘収録。
 物語は、ドグマ帝国との戦いがいよいよたけなわ。度重なる作戦の失敗に、帝王テラーマクロから「余のために死ね、 メガール」と言われてしまった実働隊長のメガール将軍は、ドグマの神・カイザーグロウの力を受け、スーパー1に最後の決戦を挑む。
 その頃、主人公・沖一也の元を、ある女性が尋ねてくる。彼女は5年前に失踪した婚約者・奥沢正人を探し続けていた。 優秀な研究者だった奥沢は5年前にアメリカ宇宙開発研究所に派遣されたが、その一ヶ月後に失踪。いったい研究所で何があったのか…… 婚約者を探し続ける女は、5年をかけて、かつてアメリカ宇宙開発研究所で育てられていた一也の元に辿り着いたのであった。 一也のコネでジャパン宇宙開発研究所の所長に会いに行くが、目の前で爆発する研究所。所長室に駆け込むと、 何者かが研究所に爆弾を仕掛けたという……そんな状態の所長に、「奥沢さんを知ってるか?」ととりあえず質問する一也、 空気とかどうでもいい子。
 「一也くん、宇宙研のタブーなんだよ」
 口をにごす所長だったが、奥沢の婚約者を目の前に突き出され、重い口を開く。
 実は奥沢は本部の秘密研究員であり、宇宙開発研究所で極秘に行われていた改造人間(スーパー1の前身)の研究に参加。 志願してその手術を受けるが手術は失敗、異形の姿に変貌した彼は姿を消したのだった……。
 ………………5年の間、タブーだからと口をつぐみ、改造手術の失敗を内部でも隠蔽して (後に同じ流れを汲む和也は奥沢の存在すら知らなかった!)、婚約者にも「謎の失踪」でだんまり決め込んでいたとか、何この、 ダーティーな組織。
 アメリカ宇宙開発研究所は、番組スタート時にドグマの襲撃を受けて全滅するのですが、凄く、 自業自得な気がしてきました。どう考えても、他にも、表にも口にも出せない非人道的な実験してますよこの組織!
 ジャパン宇宙開発研究所の所長は襲撃してきたドグマ一般兵によって殺害されてしまい(しかし漂う、因果応報な感じ)、 襲撃を切り抜けた一也は、どうやらドグマが奥沢について何か知っているらしい、と対峙したメガール将軍に問いただす。
 「メガール将軍、一つだけ聞きたいことがある。奥沢正人さんを知ってるな!」
 沖一也、どこまでも直球。
 メガールはそれを否定するが、戦いの中、怪人・死神バッファローに変身したその姿に、一也は直感する。
 「もしや、もしや貴方は奥沢さんではないのか?」
 「そんな男は知らん!」
 両者の戦いは、不気味な墓標が立ち並ぶ、怪人墓場へ。今までスーパー1が葬り去ってきたドグマ怪人の首が、 十字架に滴る青い血とともに現れる、という演出はなかなか格好いい。
 「スーパー1よ、貴様は美しい。貴様には、醜い怪人の悲しみがわかるまい」
 「メガール、悪いのはドグマの心だ!」
 将軍の姿に戻ったメガールとスーパー1の激しい戦いの中、こぼれ落ちるロケット。それは、奥沢を探す婚約者の女性が、 5年の間、肌身離さず持ち歩いていたものと同じメロディを奏でる。やはり、メガールこそが奥沢だったのだ!
 「この俺こそ、宇宙開発研究所改造人間、第一号になるべき人間だったのだ」
 だが、手術は失敗。獣のような姿になった奥沢は自殺しようとした所をドグマの帝王テラーマクロに拾われ、 ドグマの司令官として人類にその憎しみを向けていたのであった。
 激しい戦いを繰り広げてきた敵幹部が、実は、改造人間第0号であった、という衝撃の展開。そもそも仮面ライダーは、 “敵も味方も改造人間”というテーゼでありますが、敵幹部こそが、道を外れた改造人間だった、という一回転。 初期ライダーにおける“異形”というモチーフも敵の中にこそ存在し、スーパー1が「美しい」と評された事と対比されるのは鮮やか。
 進歩した現在の技術なら変身メカを直して 俺みたいに格好良くなれる 普通の人間の姿に戻れる、 とメガールを説得するスーパー1。そこへ婚約者も姿を見せ、お互いの差し出したロケットに、 今でも彼女が自分を愛し続けてくれていた事を知るメガール、いや、奥沢。――だが、メガールの脳には、 テラーマクロにより服従カプセルが埋め込まれていた!
 人間の心を完全に取り戻す寸前、服従カプセルによって支配されたメガールは死神バッファローへと変貌してスーパー1へと襲いかかり、 それを止めようと割って入った婚約者の体を、その角が刺し貫く。
 「おのれ死神バッファロー、もはや貴様は人間ではない! 来い、ドグマ怪人!」
 割り切り早いよ、スーパー1。
 怒りのスーパー1、スーパーライダー閃光キックが炸裂し、死神バッファローは爆死。恋人達の悲劇に怒りを新たにする一也は、 メガールのロケットに、ドグマ基地の地図が隠されていた事を発見。雌雄を決するべく、ドグマ基地へとバイクを走らせるのであった……。
 主人公が志願して人類の未来の為と改造人間になった世界観で、敵幹部の正体は主人公とルーツを同じくする改造人間第0号だった、 主人公にとって家であった場所は実は凄くダーティーな組織だった、と、刺激的な要素を取り込みながら、 全体としては凄くさばさばしているのが、なんとも80年(笑)
 一也の怒りが、宇宙開発研究所には一切向かないところも、時代を感じます。ただここで作為的に裏のある組織だった、 と強調してしまう作劇はかえって面白くない場合もあって、この、よく考えると真っ黒? というのがポイントでしょうか。今となっては、 アメリカ宇宙開発研究所が壊滅して、全てが炎の中に消えてしまったのは、正義の為には良い事であったのかもしれません。多分、 エリア51の中にあったのだろうなぁ……。
 「メガール、悪いのはドグマの心だ!」

◎『太陽戦隊サンバルカン』 (1981)
 北極海に現れ、調査に向かった原子力潜水艦や偵察機を次々と撃破した敵の出現に、
 「サミットは、太陽戦隊の結成を満場一致で決議した」
 でスタート。
 サンバルカンのメンバーとして選出された地球平和守備隊の空軍・海軍・レンジャー部隊にそれぞれ所属する3人の青年が、 指定された集合場所に集い、マスターにブレスレットを見せて3人のブレスのシンボルを謎の機械にはめると、 秘密基地への道が開ける……と、昔ながらの秘密組織ものの雰囲気が燃えます。……いやまあ、昔の作品なんですけど。
 こうしてサンバルカンとして訓練を始めた3人だが、地球の支配を目論む機械帝国ブラックマグマは、 既にその巨大ロボットの存在を察知していた。
 「恐るべき超兵器だ。赤子の内にひねり潰すに限る」
 ……と、いきなりスパイに写真を撮られているのですが(笑)
 で、基地に攻め込んできた機械生命体とサンバルカンが戦闘開始。一気にサンバルカンロボまで登場です。
 とにかく全体として、ストーリーもアクションも、物凄く荒っぽい作品。
 今見ると、現代の作品は勿論として、この5年後ぐらいの作品でも凄く試行錯誤が見えるというか、 経験の蓄積とそれにともなう技術と質の向上がかなり窺えます。
 なのですが、戦闘を終えて三人が本部へ戻ると
 嵐山長官(岸田森!)「ところで、ここにスパイがいる」
 てっきりスルーされる(よくある事)と思っていたので、バトルの後にこれが来たのはビックリ。
 ブラックマグマのスパイだったのは、長官の女秘書! スパイは正体を現し、基地もろとも自爆しようとするが、 基地の機能で外に排出されて爆死。
 いやぁ、ここは凄かった。さすが上原正三(笑)
 秘書的お姉さんを好きな身としては、本当は長官の助手には残ってほしかったですが!
 今見ると、長官がスナック店長に偽装しているとか、黄色がカレー食ってるとか、合体技がボールとかは、『ゴレンジャー』意識か。
 EDには既に曽我町子様が登場していて、番組乗っ取る気満々(笑)

◎『大戦隊ゴーグルV』 (1982)
 細かい事は全てナレーションで説明し、なし崩しに戦闘に巻き込み、勢いで戦隊になるという、実にわかりやすい初期戦隊1話。 上原正三から曽田博久にメインライターが変わっての一発目ですが、ストレートにシリーズの流れを引き継いだ作り。
 戦隊メンバーの選抜方法は、博士が集めた天才少年少女達(コンピューターボーイズ&ガールズ)が、 事前にリストアップしていたメンバーから選抜。本人の元を訪れて強引に基地に連れ込むという、拉致同然で、 『ゴーグルV』とか『バイオマン』を見ると、意思を確認するだけ『ジャッカー』の方が人道的に見えてきます(笑)

 (※注:そんなわけはない

 1話時点での戦闘スピードは、『サンバルカン』を1とすると、『ゴーグルV』が1.2で、『ダイナマン』が1.5という所か。 やっぱり『ダイナマン』で相当、早くなっている。なお『ゴーカイジャー』で2.0。
 装備、戦闘には新体操を取り込み、独特の面白さを出しています。全員凄く普通に順応して戦うのも、実に80年代。メンバーは、 冒険家・将棋部・アイスホッケー選手・動物園の飼育員・新体操選手、と膨大なリストの中から選抜しただけあって、多彩。 選抜理由は特に明確にされないので、たぶん項目の中に「性格:ノリがいい」とか「転がしやすい」とかきっとありますが!
 ゴーグルピンクは当時もだいぶ人気出たそうですが、今見てもかなり可愛い。
 そして、仲谷昇、格好いい。
 やはり戦隊の魅力は長官ポジションであります。
 一方、敵の一番偉い人は、シルエットというよりも、監禁されているように見えます(笑)
 なんかこー、あの手の動かし方がいけないのだと思う。

◎『星雲仮面マシンマン』 (1984)
 同期の『宇宙刑事シャイダー』と比べると、どうもスーツが安く見えるのは、予算か、予算の問題なのか。
 口オープン+透明マント、が非常に拍車をかけている感じなのですが、正直、今見ると、ローカルヒーローっぽい見た目(笑)
 そんな主人公が地球へ来た理由は、宇宙の大学の卒業論文のため。
 ヒロインと接触して、「地球人を研究するには、もってこいの標本だ」とのたまい、その理由は、 可愛いからと、他のヒーローとの差別化の意味合もあったかと思いますが、非常に、コミカルかつライトなタッチ。 主人公がメガネかけた見た目とっぽい系青年、というのも珍しいかと思われますが、メガネは地球人擬装の一貫なので、 『スーパーマン』のイメージが入っているのかも。
 そう思うと、スーツの胸の大きなの意匠は、オマージュなのかしら。
 主人公ニックが訪れた地球はいっけん美しく平和な星であったが、悪の秘密結社テンタクルが密かに活動を開始しようとしていた。 テンタクルのドン・プロフェッサーK(天本英世)は子供が大嫌いであり、組織の戦力と超科学を子供達への嫌がらせに注ぐ、という、 非常に困ったキチガイ。
 「その手始めに、子供達から教育を奪う」
 「私は反対だ」
 部下の怪人から、真面目に世界征服しようぜ、と駄目出しを受ける。
 しかし一応ドンなので、作戦を強行。それは、教科書などの印刷物を真っ白にしてしまうという、「教科書真っ白作戦」!
 「儂の敵は世界中の軍隊などではなく、世界中の子供達だ」……って、いったいどんな過去があったんだ!
 一方その頃主人公は、ヒロインの車の前にバイクで飛び出し、
 「でもね、考えようによっては縁があるって事じゃないのかな、僕たち」
 直球でナンパしていた。
 主人公、なかなかアグレッシブです。
 ヒロイン(雑誌記者)の無鉄砲ぶりを危ぶんだニックは、相棒の野球ボール型メカ・ボールボーイ(CV:曽我町子)に追跡させるが、 教科書真っ白事件を探る彼女は、怪しげなワゴン車を追った結果、テンタクルの怪人ドリル男に消されそうになってしまう。
 ドリル男!
 予告見ると次回の怪人は、右手を換装したハンマー男だし、ド直球。
 ボールボーイから連絡を受けたニックはスーパーマシン・ドルフィンを召喚・合体。超次元ハイウェイを走り、 ウォーリアスーツを装着する!
 ドルフィンは小型のF1マシンのようなイメージで、ウィンタースポーツのスケルトンみたいな形でその中に収まります。 というか明らかに、前は見えてないと思う。
 飛行モードのドルフィンジェッターでヒロインの危機に駆けつけたニックは、ドリル男と戦闘開始。基本、 宇宙刑事を意識したとおぼしきチャンバラなのですが、細身のサーベルで差別化。 途中で相手を見失って透視能力みたいなもので隠れている所を発見するのは宇宙刑事パターンなのですが、 意図的に人気作と合わせた流れでしょうか。最後は必殺の円月殺法でドリル男を撃破し、ヒロイン姉弟を救うと、 いずこへともなく爽やかに去って行く。……なんだろう、主人公のこの、壮絶な通りすがりの変な人ぶり。
 「誰だろあの人……?」
 「マシンマンじゃないかしら……」
 「え? マシンマン?」
 「だって、すっごいマシンに乗ってきたでしょ。だから、マシンマン!」

 本気か!!

 かくて地球に新たなヒーローが誕生した。
 地球滞在の日数を伸ばしたニックは、テンタクルと戦う事を決意する。もっとも、その本音は……
 「マキさんから目を離すことはできない。僕が守ってやる」
 ここに、宇宙から来たストーカーヒーローが誕生したのであった。
 その名は――星雲仮面マシンマン!
 ヒーローは職業でも宿命でもなく、3割の道義心と7割の下心から戦う、と全体として、ライトタッチで爽やか路線。ただし、 敵は凄いキチガイ。各国軍隊とも戦える戦力と科学力を子供達への嫌がらせに注ぐプロフェッサーKと、通りすがりの宇宙大学生の対決、 という隙間狙って謎の大地に着陸した感じ。
 ヒロインが活動的な雑誌記者というのは、後の仰木舞(『超人機メタルダー』)に影響したのかしら。なんか、衣装の色合いとか、 全体の雰囲気が似ています(『ギャバン』の雛形とされる作品でもヒロインが記者だったそうで、 脚本を担当した上原正三の趣味が入っているのではないか、という情報あり)。
 ……大先生、当時『シャリバン』クライマックスで『シャイダー』の準備もしていたのではないかと思われるのですが、 並行して他の作品のパイロット版とか書いていて恐ろしい。

◎『超電子バイオマン』 (1984)
 第1話、何だか凄い悪の軍団が襲ってきたぞ、というワクワク感は格好いい。
 というか、そういう演出にワクワク出来るのが、今も戦隊シリーズなどを楽しめてしまう所以なのでしょうが。
 世界一の頭脳を自認するドクター・マンの第一の襲撃目標は、日本、テクノトピア21(たぶん、並行世界のつくば市)。 一般兵に割とざくざくと殺される学者達。どういうわけかパラシュートで降下して学者達に紛れていたレッドは攻撃を受け逃げまどうが、 目前に現れた謎の巨大ロボに鷲掴みにされる……。
 新帝国ギアの侵攻に呼応して(?)覚醒した謎の巨大ロボが

 民間人を次々とさらっていく

 という展開は衝撃(笑)
 さらわれた5人は現れた金ぴかロボに「バイオマンになる力が受け継がれているんだ」と教えられ、 ブレスを強制的に装着させられて成り行きで、バイオマンに変身。
 体に流れるバイオ粒子のなせる技か、変身直後についポーズを取ってしまう5人。
 圧倒的な力で一般兵を蹴散らしていき、バイオソードでバラバラにした一般兵の姿を見て、
 「おい、彼等はメカ人間だ」
 と気付くのですが、…………え? ついさっき、正拳突きで、頭をスイカ割りのスイカように吹き飛ばしていたのに? 今確認?
 生身時のブルースリーが、素で一般兵の首をひねりに行っていたり、割とアウトローなのかもしれない、 この人達(バイオロボに強制的に集められていたので、当初、面識はない)。
 新帝国ギア(名前格好いい)は、
 総帥:ドクター・マン
 |
 大幹部:ビッグスリー
 |
 中幹部:ジューノイド5獣士
 という幹部組織で構成され、毎回の単発怪人は出てこずに大幹部と中幹部の組み合わせで作戦が展開し、 巨大ロボットはそれとは別にもともと巨大メカであるメカジャイガン(巨大化プロセスがない)、という構造は今見ても意欲的。
 主題歌は抜群に良いですが、音楽も全体的に格好いい。
 第2話、亡き兄の意志を継いでアフリカの大地を撮るカメラマンになるという夢のため、イエローが共に戦う事を拒否する、 という面白い展開。しかしそんなイエローがバイオマンの正体を探るべく動き出したメスに狙われる。彼女を助けて事情を聞いた4人は、 そんな優しい心を持つ君ならうちのロボットの話も聞いてくれる筈、と基地に連れ込み、語られるバイオマンの秘密。
 500年前、発展しすぎた科学の暴走によって滅亡の危機に瀕したバイオ星。彼等は、宇宙で一番美しいという伝説のある地球が、 自分たちの星と同じように悪の科学によって滅びしてしまわないようにと親切心を働かせて地球にバイオロボを送り込んだ。 そのバイオロボが発したバイオ粒子を浴びたのが、500年前に恐れる事なく謎の巨大ロボの前に立った若者達であり、 彼等こそ5人の先祖であった。
 バイオ粒子を浴びて(代々)強靱な肉体と精神の持ち主になった5人が、 バイオマンとて戦うのは選ばれた運命だったのだ!
 なんか怖いぞ、バイオ粒子。
 これってつまり、「わりゃあ、バイオ粒子浴びて、ご先祖さんの頃からええ目見てきたんやから、その借り、 熨斗つけて返してもらおうかい。知りませんでした、じゃ通用しないんじゃあ」という事でしょうか。
 そんなこんなで、
 「宇宙で一番美しいという伝説のある地球を守る為に戦うという事は、 アフリカに行かなくてもアフリカの自然を守っているに等しい」
 というアクロバットな説得を受け、納得してしまうイエロー。彼女を加えた5人は、 バイオマンとして新帝国ギアの野望に立ち向かう!
 とはいうものの、ここまでに描かれたギアの目的が、
 総帥ドクター・マンの自分の頭脳自慢(「私の頭脳と科学力は世界一ぃぃぃぃぃ!!」)
 であり、その為に行った事が街を一つ襲ってみただけなので、悪い人達なのは間違いないのですが、若干、 バイオロボの過剰反応なような気がしないでもありません。
 一方、満を持して自分の科学力を披露しに出てきたところ、デビュー戦で綺麗なクロスカウンターを食らってしまったドクター・マンは 「変な連中が出てきてやられてしまいました」と帰ってきた幹部を、自分も予想していなかった事は棚の上に置いて「言い訳するな」 とお仕置き。ここで、化粧と服装は変だが見た目人間の幹部も体内はメカである事が描写。
 ところで、合体変形ロボットの、変形前のどこが変形後のどこになるかとか見るの好きなんですが、 バイオロボは1号機のジェットエンジンがロボットの拳になっている、というのはなかなか熱い。
 今まで見た戦隊ロボで一番狂っているのは、索敵機のレーダードームをシールドにするフラッシュキングですが。
 あとバイオロボは、戦闘機2機にそれぞれ、赤&桃、緑&青&黄と分かれて搭乗する形なのですが、 ロボットに合体後もコックピットが合体せずにそのまま、というなかなか素敵仕様。多分、赤だけが嬉しい仕様。
 初めての合体時の、
 「合体マニュアルに聞け!」
 は名台詞として記録したい(バイオスーツの電子頭脳に戦闘マニュアルなどが入っていて、 基本素人のバイオマン達はそれを参照しながら戦うという設定)。

◎『仮面ライダーBLACK』 (1987)
 宮内洋と倉田てつをの歌唱は、棒読みならぬ、棒歌、という独自のジャンル。

 何故か、シャワー室で裸で絡む光太郎と信彦

 ……はさておき、TVシリーズ復活作という事で、さすがに力の入った第1話。
 映像演出は小林義明監督が実に凝っていますし、冒頭に追走劇を持ってきて、徐々に事情を明かしていくという構成はそれなりに面白い。 お陰で三神官が少々間抜けにはなってしまってますが。
 Bパートに入って顕著に、随所の繋ぎの説明が飛ぶのは、上原正三だから仕方がない。
 気が付くとゴルゴムが既成事実化しているのも、上原正三だから仕方がない。
 なんかいきなり変身しちゃうのも上原正三だから(以下略)
 …………誰だよ、大先生に脚本頼んだの?!
 でも、「父さんだって戦わなければこの廃墟と同じじゃないか!」は名台詞。
 そして何だかもやもやした部分は、最後のナレーションで全て説明して既成事実に(笑)
 「暗黒結社ゴルゴム」とか「人類の自由の敵ゴルゴム」とか「自由の戦士・仮面ライダーBLACKとなった」とか。
 ある程度、原典回帰を模索した作品ではあるので、怪人の怪奇っぽいデザインは、見直すと割と秀逸。 クモ怪人と集団戦をやった意義とか、唐突なライダーパンチとかは謎ですが。 戦闘シーンの振りの無さという点ではちょっと古くさい感じが強く、そこはもう少し流れをつけて欲しかった所です、
 第2話、「怪人パーティ」というサブタイトルでもう駄目か、と思ったら、意外や、世紀王の誕生日を祝うパーティの雰囲気とか、 蟲の王、的な演出とか、なかなか秀逸。
 前回、一生もののトラウマになりそうな光景――謎の糸まみれになって路上に転がる父親の死体――を目撃した、 義理の妹である女子中学生(高校生?)に、「その家は危険だから荷物をまとめて逃げろ!」とか、 電話で投げっぱなしな指示だけ出す主役は、記憶は失わなかったけどたぶん脳改造済みだから仕方がない。
 ……と思ったら、Bパートで一応、喫茶店&ダイビングショップを経営する先輩宅に匿う。
 「後は任せた」的な感じで、どうやら初対面っぽい女の子に店を任せて、海へと去っていく先輩。
 やってくるお客さん。
 先輩「杏子ちゃんなら大丈夫」
 光太郎「さ、元気を出して」

 そんなわけがあるか、この 虫 人 間 め

 改造手術の後遺症は深刻だ……。
 秋月杏子(信彦の妹、光太郎の義理の妹)は、今の視点で見るともっさりした女子中学生にしか見えないのですが、この展開だと、 一応、女子高生なのかな……どちらにせよ、経営的には大きな問題しか感じませんが。
 さて前回、全裸でゴルゴム基地から逃げ出したと思われた南光太郎は、手術用パンツ?をはいていた事が発覚。
 パンツ一丁でバイクに乗ったライダーは、アマゾン以来ではなかろうか。
 それにしても毎週、こんなサービスシーンがあるのだろうか(笑)
 ゴルゴムの痕跡を追って、パーティに参加していた女優の元を訪れる光太郎。回想シーンで、「俺、ファンなんだ!」と叫んでいたし、 それなりに知名度のある女優さんみたいな扱いだったのに、やたら安そうなマンションに住んでいるのはご愛敬(^^;
 ここでその女優さんを口封じで殺害したヒョウ怪人が、逃走する時に、怪人から四つ足のヒョウの姿になって走るという演出は格好良かった。 ヒョウ怪人は、デザイン的には格好良くもないのですが、戦闘のジャンプ合戦も格好良かったです。やはり、 おざなりに倒されてしまいますが。
 最後、女子高生を風船で懐柔しようとする南光太郎。

 虫 人 間 だから仕方ない

 当時の感想(日記にはそのまま残っています)だと、この後、上原正三に関して、 誤解を招くかもしれないが別に嫌いなわけではなく偉人という認識で好きとか嫌いとか越えた存在である、などつらつら書いていたのですが、 最近はむしろ、どちらかといえば上原正三は好きなのかもしれない、という気がしてきています(笑)
 転機となったのは『ロボット刑事』で、上原正三も伊上勝も(演出との兼ね合いもありますが)、 オーダーを受けてディテールを詰めたシナリオをその気になれば書けるというかやはり基本的な脚本力が高いのだなぁと思い知らされ、 物量的に重宝されている人というのは伊達ではないのだな、と色々考えさせられる作品でありました。
 それはそれとして、今作は数年ぶりの《仮面ライダー》シリーズ復活作品として、もう少し今日的な作劇に近づけられなかったのか、 とは思う所ですが、同期は『マスクマン』と『メタルダー』だし、落ち着いて考えればこんなものかと言う気もして複雑。
 この辺り、『クウガ』を経験した上で約30年後の視点なのでありましょうが。

◎『恐竜戦隊ジュウレンジャー』 (1992)
 地球に接近した惑星ネメシスに着陸したスペースシャトル。何もない不毛の惑星上で奇妙な石を発見した二人の宇宙飛行士が、 そこに付いていた石盤を動かすと、なんとそれは偉大な魔女バンドーラの封印であった! 部下達とともに1億7千万年の眠りから目覚めたバンドーラは、 地球を何もない石ころの惑星に変えてやると、活動を開始。手始めにネメシスに着陸していたスペースシャトルをミニチュアに変えてしまい、 中に残っていた子供宇宙飛行士の二人を人質とする。二人を救う為に立ち上がるのが、 バンドーラの復活に備えて1億7千万年の眠りについていた恐竜族の戦士達、恐竜戦隊・ジュウレンジャー!
 なぜか空中で自転車をこぎながら、人類に宣戦布告するバンドーラ様
 対するは、どうやら地球でバンドーラの封印を見守っていたらしい、不思議仙人バーザ。
 多々良純vs曽我町子とか、濃すぎます(笑)
 ジュウレンジャー達は、1億数千万年前に恐竜達と共に生きていた、恐竜の進化した人類(爬虫人類?!)5部族それぞれの、戦士達。 赤はプリンスで、桃はプリンセスなのに、黒・青・黄はナイトな、格差社会。彼等は過去にもバンドーラと戦っており、その封印後、 いつかバンドーラが目覚めた時の為に、眠りについていたのであった。
 ゴウシさん(黒)はちょっと格好いいけど、メイ(桃/千葉麗子)が、アフレコが上手いとか下手とかでなく、 滑舌が悪すぎて気が抜けるレベル。
 当時のアイドル喋りってこうだったかもしれませんが。
 なんだろうなー、初期のユウリ(『未来戦隊タイムレンジャー』)が頭を抱えるレベルだったとしたら、メイは、 膝から下に力が入らなくなるレベル。
 アクションなどは、可もなく不可もなく。通常、1話で個人武器の顔見せ紹介的な事をするのですがそれが無かったのは、 予告からすると3話で改めて武器を入手するという事なのか。吊られて、 空中キックするというティラノサウルスの予想外のアクションは面白かったです(笑) あと、ボーイが変身すると、 明らかに太るのが気になる(笑) 当時、中の方々に、小柄要員が足りなかったのか……?
 作風としては、児童層が喜びそうな要素をふんだんに仕込んでおり、その世代だったら面白かったかも。 子供の面白がりそう/恐がりそうな仕掛けを真面目に取り込んでおり、しごく真っ当。子供向け作品というのは、 子供向け作品であるが故に、意図的に幅をとって作る場合が多いのですが、この1、2話に関しては、 (前作『ジェットマン』のカウンター的要素もあるのか)、ストレートに絞った対象世代を楽しませるという事を念頭に置いた作り。
 また、金曜夕方25分枠自体は変わってないですが、配信映像の時間を見ると『ジェットマン』の時より合計で2分ぐらい減っている気がして (勘違いかもしれないですが)OP、ED抜くと実質15分ぐらいしか無く、物語部分を入れる余裕があまり無かった感じ。 1・2話が完全に続き物になったのは、その影響かと思われますが、作る方は大変そう。
 物語部分では、終始ひとごとぎみにあおりまくる実況レポーターが楽しかったので、今後もセミレギュラー的に出続けたら面白いですが。
 面白いとか面白くないとかではなく、こちらを向いている感じが全くないので距離を置くのがマナーかなぁ…… というのが正直な感触。ゴウシさんには、ちょっと、ときめきかけたけど(笑)


 というわけで計17作品でした。
 ……わかった事は、第1話の感想を並べると、手探り感と、とりあえずのテンションの勢いが激しい(^^;
 この中では、『マシンマン』はその後も何話か見ており、ラスト2話の感想も書いています。色々ネタ度の高い作品かつ、 割と見所があって、再配信されたら通しで見てみたいかなーと思う1つ。

“ドルフィーーーン!!”

(2016年3月15日)

戻る