■『世界忍者戦ジライヤ』感想まとめ1■


“この地球を 抱きとめる
そんなでっかい 心が欲しい”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『世界忍者戦ジライヤ』 感想の、まとめ1(1〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。1話&2話は簡易。

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◆第1話「磁雷矢VS妖魔一族」◆ (監督:辻理 脚本:中原朗)
◆第2話「城忍フクロウ男爵」◆ (監督:辻理 脚本:高久進)
 超古代――宇宙から飛来した一種のタイムカプセル、秘宝パコ。戸隠流忍術は代々、このパコが悪の手に渡らぬようにその在処を示す ボードを守るという使命を帯びてきた。その34代宗家にあたる山地哲山の義理の息子、山地闘破は、家事万能の好青年だが、 忍者としてはまだまだ未熟な修行中の身。しかし、ボードを狙って宿敵・妖魔一族の襲撃を受けた事から、闘破は山地家に伝わる ジライヤスーツと磁光真空剣を身につけ、ボードを守る戦いに身を投じる事になる。敵は鬼忍・毒斎率いる妖魔一族、 そして我こそはとパコを求める凄腕揃いの世界忍者達。果たして闘破は、パコを守り抜く事が出来るのか?

「戸隠流正統・ジライヤ!」

 主題歌以外、全く予備知識の無かった『世界忍者戦ジライヤ』1・2話を視聴。
 ヘリコプターに乗って現れる忍者
 車に乗り移って逃走する忍者
 OPからツッコミどころ満載です。
 もっと忍者らしい事はしないのだろうか……と思ったら、車の運転席から、追跡してくる車に向けてマキビシを放つ忍者!
 ……ああうんまあ、忍者らしいですけどね……。
 『世界忍者戦』というタイトルのまくらも凄いですが、いわゆる怪人の総称にあたるカテゴリが

 世界忍者
 とか凄すぎます。
 このセンスは嫌いではない。
 さわりで紹介された世界忍者の皆さんは、明らかに世界選りすぐりの変態ばかりですがッ!
 多分イギリス人と思われる城忍・フクロウ男爵はデザイン的にはなかなか格好良いのですが、唐突に白馬に乗って現れ、
 「アイアムにせものなどノーサンキュー」
 とルー語を使用。
 色々、不安が募ります。
 ロープウェーアクションとか、川燃やしたりとか頑張っていましたが、肝心のヒーローの登場シーンが凄く適当でビックリ。 今作の制作が遅れた為に、打ち切りになった前作『メタルダー』が急遽ラスト2話追加したという曰くもあり制作現場はかつかつだった 模様ですが、構成の雑さは否めません。
 ただ全体的に、面白いか面白くないかはさておき、凄く、前作の反省を踏まえた、というのは伝わってきます(笑)
 2話、妹にしごかれる主人公の特訓風景……を見ているフクロウ男爵。
 現代日本+白馬
 ってそれだけで笑えてズルい(笑)
 更にそれを見つめる妖魔一族のカラス忍者と、白レオタード+SF風バイザーというまたトンデモな見た目の、 一匹狼の貴忍・柳生麗破!
 それにしてもどうしてこの世界観で、「パコ」とか「ボード」とか、重要アイテムが横文字なのでしょうか。 1話はそこでちょっと乗り損ねたというか、どうせなら、素直にもっと山田風太郎にしてくれた方が、個人的にはノリやすかったのですが (前作の反省を踏まえましょう)。
 柳生忍者出て来ちゃったし(笑)
 実際の戸隠流の方が武芸考証に加えて、そのまま役者として演じている(声のみ吹き替え)、主人公父の生アクションは格好いい。
 『メタルダー』が割とド突き合い路線だったので、戦闘及びアクションは色々とギミックに凝ろうという気配が窺えます。 後半のジライヤvsフクロウ男爵の競馬場でのバトルなどは、なかなか秀逸。男爵は、終始白馬にまたがりっぱなしというのも、 なかなか凄い。
 戦闘の結果、「ボードはしばらく預ける」と去っていくフクロウ男爵。
 一方、毒斎様は、2話にして既に小物感満載。
 ちなみにヒロイン?は、義理の妹。主人公(養子)は義理の妹に呼び捨てにされて家事全般担当とか、そこはかとない時代の先取り感(笑)

◆第3話「牢忍ハブラムの秘宝!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:高久進)
 『快傑ズバット』と同じで、あまり考えずにノリと頭のおかしさを楽しむの前提とすると、けっこう面白いかもしれない。

 いきなり縛られて逆さ吊りにされる主役
 ……なの?(待て)
 毒斎様との戦いで負傷してから役立たずの父さんは、世界忍者の情報源として機能する模様。
 妹さんは、車のナンバープレートを記憶して、ある人物の住所を割り出し、頭脳プレーと細やかさを見せる、と家族の役割分担をさらっと描写。
 妖魔一族サイドの雑魚扱いだったカラス天狗も、地上げ屋の部下相手に活躍。
 さすが忍者、アサルトライフル装備のヤクザ者ぐらいよりは強い事が表現されました。
 そして、
 「ある時はジライヤの味方。またある時はジライヤの敵」
 って本人目の前に自分で名乗りましたよ、柳生さん(笑)
 見た目世紀末ひゃっはー団のトルコ忍者・牢忍ハブラムさんは、当初は罪もない民間人に襲いかかっているように見えたものの、 実は盗まれた秘宝「緑の炎」を取り戻す為に日本まで追ってきただけでした、と、見た目明らかに悪い人がそうではなかった、 という3話にして、少々ひねった展開。
 ジライヤに「緑の炎」の盗難容疑を押しつけ、そんなハブラムをけしかける毒斎様は、 悪の大ボスというよりは忍者らしさの表現なのでしょうが、既にして、愛おしくなりそうなレベルの小物感を漂わせています(笑)  そんななのに、声だけは伝統の大ボス声(飯塚昭三)なのが、またいい。
 今回のアクション的見所は、高層ビルの窓拭きに変装してロープを伝って窓から室内を窺う闘破。 元来<宇宙刑事>シリーズといえばロープアクションというのはあるので、原点回帰、とは言えるのかも。 『メタルダー』は戦闘シーンは格好いいけど生アクションは控え目だったので、前作との差別化という意味も含め力を入れているのが 窺えます。
 逃亡中にスーツを着込み、落ち葉の中からOPテーマとともに参上、という今回のジライヤの登場シーンは格好良かった。
 むしろ、どうして1話はあんな適当な変身&登場だったのでしょう(^^;

◆第4話「破れ!!火忍チャンカンフーの幻術」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:藤井邦夫)
 白地に赤い炎柄の忍者服、というこれまた頭おかしいデザインの香港忍者チャンカンフーの 幻術により、戦う心を焼き尽くされてしまった闘破。そして奪われる武神館(忍者道場)の看板。へたれてしまった兄に代わり、 ケイと学が戦いの場へと赴く……。
 という事で、1話からキャストの所には堂々と書いてあった姫忍・恵美破初見参。
 自動車免許が無いので、普通に歩いて出撃。

 というか父さん、娘のスーツまで用意していたのですか。
 父が闘破を立ち直らせようとしている頃、奮戦空しく妖魔一族に捕まってしまう恵美破と学。伝書鳩から報せを受けた哲山は、 ケイは闘破を立ち直らせる為に敢えて危地に飛び込んだのだと語る。
 父の言葉、妹の想いに、ジライヤスーツを身につける闘破。
 「俺は甦る!」
 あくまで「甦った」でないのは意図的だと思うのですが、日本刀を向けて「恐怖と闘志は表裏一体!」という父の強引な鍛錬だけでは 完全に術が解けず、ジライヤが自らの意志で戦いを乗り越えてこそ、真の闘志が甦る、としたのは良かった所。
 復活したジライヤはチャンカンフーを打ち破り、妹弟の協力により紅牙も撤退。
 「盗んだものは置いていけ!」
 と言われて、身につけていた盗品を律儀に全て外して投げ捨てていく紅牙さんは、意外といい人かもしれない。
 1〜3話はゲスト敵と明確に決着がつかない形だったので、ジライヤが敵をずんばらりんしてしまうのかどうかは 少々気になっていたのですが、今回を見る限りでは、チャンカンフーは磁光真空剣のサビになったぽい。
 割り切ってそこは気にしない、という作品ならそれはそれでいいのですが。
 ところで「磁光真空剣」て必殺技の名前だと思っていたのですが、予告見る限り、刀の名前であり必殺技の名前というか、 磁光真空剣でないと「磁光真空剣」が使えない模様。道理で特に修行していないのに闘破が使えたわけです。
 〔序→ライバル登場?→世界忍者も悪人ばかりではない〕
 と来て、山地一家の絆の物語(特にケイ→闘破)と、スムーズな立ち上がり。というか、最初の1ヶ月(4話)で、 1話の出来が一番悪いって、どうなんだ『ジライヤ』(^^;

◆第5話「奪われた磁光真空剣!!」◆ (監督:辻理 脚本:高久進)
 磁光真空剣が厳重に隠されている事が判明。
 ……まあ、気を付けないと銃刀法違反で捕まるから!
 その磁光真空剣を手に早朝訓練に励む闘破を見つめる、二人の男……そして、「むやみやたらと磁光真空剣を持ち出すな!」 と闘破を叱るお父さん。

 捕まるからね。
 ところがそんな磁光真空剣を、弟・学が持ち出した上に、妖魔一族に奪われてしまう!
 その妖魔一族を追う、紫色の新忍者、槍忍・突破。通常時の名前が「飛鳥竜」、服装も70年代ヒーロー風とまるで主人公デザイン なのですが、「武器が槍」なのでたぶん主役にはなれない。(演じるのは、前年の『光戦隊マスクマン』で ブルーマスクを演じた広田一成)
 突破の追跡をかわし、まんまと磁光真空剣を手に入れる妖魔一族であったが、そこに襲いかかる、謎の巨大トカゲ。それは怪物の幻影? を操る世界忍者、異形忍・紅トカゲ! ここの戦闘シーンの音楽が、主役不在なのに妙に格好いい。
 早くも、「○忍」(2文字)パターンは諦めた模様。まあ、無理にこだわって途中でとんでもない名前とか出てくるよりは、 早々にパターンを広げて良かったと思います。紅トカゲは、カラス天狗ズ、紅牙、縞縞の人を一蹴する剣技の使い手の上に、謎のトカゲ変身、 そして何故かキャノン砲、というオールマイティ型の強豪。
 紅牙を人質に磁光真空剣を渡すように迫られた毒斎様は、
 「娘の命にはかえられん」
 とあっさり刀を渡す。
 毒斎様、素敵。
 磁光真空剣を入手してニヤニヤする紅トカゲのアジトに潜入する柳生麗破だったが、紅トカゲに退けられたところを突破に助けられ、 家族会議中の山路家にアジトの場所を教えて去っていく。
 ……正直まだ、麗破さんと紅牙さん素顔の区別がつかないので、もう少し、服装で差をつけてほしい(^^;
 紅トカゲのアジトに乗り込む、哲山と闘破。磁光真空剣を振るう紅トカゲだったがジライヤのように光らせる事が出来ず (「レーザー刀」、と言うらしい)、学の目くらましを受けた所でジライヤは刀の奪取に成功。 必殺の磁光真空剣で紅トカゲの覆面を切り裂いた所で、父さんが間に入って勝負はそこまで。紅トカゲはレーザー刀の姿を見て、 深く満足。
 「もう、思い残す事はない。私は日本を離れ、名刀を求めて、またさすらいの旅に出る」
 この人、世界各地で大迷惑なのでは……。
 なぜ自分だけが磁光真空剣を輝かせる事が出来るのか、と首をひねる闘破に「今にわかる時がくる」と告げる哲山。 そしてそれを見て帰っていく麗破と突破はどうやら知り合いらしい……と、伏線幾つか。
 妹の話に続いて、弟にスポットを当てて、とオーソドックスかつスムーズに展開。お父さんも怪我が治ったのか、やや復活。 趣味はどうやら盆栽の模様。前回の鳩に続いてペットの犬も登場し、「家族の物語」の部分を前面に出しているのは面白い。 ごく当たり前のように、磁光真空剣が光った状態を「レーザー刀」と急に皆が言いだすのだけ気になったのですが、 既出を聞き逃した……という事は無いと思うのだけどなぁ(^^; これはまあ、セルフパロディ的な物かとは思うのですけど、 「パコ」「ボード」に続いて、どうして重要な用語が横文字なのか(笑)
 ……というか、バード星人がまた、争いの種になるマジックアイテム(例:魔神兜)を 地球に投棄したのか?!

◆第6話「謎の謎は謎謎?!」◆ (監督:辻理 脚本:藤井邦夫)
 忍者道場に乗り込んでくる虚無僧姿の世界忍者、音忍・宇破!
 音忍は冷酷非道な悪の忍者一族であり、かつて戸隠流山地路一族によって滅ぼされていたが、宇破はその唯一の生き残りであった。
 山路一族を復讐の仇と狙う宇破は妖魔一族と協力し、忍術で楽珍を操って闘破を誘導、待ち伏せる。罠にはまったジライヤは、 紅牙の変装した麗破にボードを渡しそうになるが、そこへジライヤを助けに来た麗破ともども、宇破の秘術によって魔空空間に 呑み込まれてしまう。
 ここでは、なかなか気張った集団戦闘。
 先祖帰りといえば先祖帰りなのでしょうが、特撮ヒーロー物で敵も味方も刀持ってのちゃんちゃんばらばら、 というのは一周回って新鮮な感じ(笑)
 無尽蔵の敵に追い詰められる二人だったが、駆け付けた突破により宇破の秘術は破られ、最後は磁光真空剣でずんばらりん。
 「許さん!」とか言いながら念入りに十文字に切ったので、弁護のしようがなく、意図的に仕留めに行っています、 闘破。
 今回、哲山の代ぐらいで血で血を洗う忍者一族同士の殲滅戦があった過去も明かされましたし、闘破もやはり忍者、 ぼんくらっぽいなりに、いつでも凶手として覚醒できるレベルには覚悟完了していた模様。
 ……ジライヤスーツになんらかの暗示がかけられている可能性もありますが。
 スーツといえば、6話にして、手で装着している、という設定はもう無かった事にして良いのではレベルで、瞬間早着替え。 最初から、忍術で装着する事にしても良かったような気はするのですが(^^;
 突破とともに去っていた麗破の正体は、国際秘密捜査官である事が二人の会話から判明。……判明した所でどうか、という正体ですが。 突破は70年代ヒーロー系かと思ったら、声がかなり軽く、実は三枚目ポジション?
 麗破の残した「パコを正しく使うのが貴方の使命、それを見守るのが私の使命」という言葉の意味は何なのか?  彼女の瞳にきらめいた緑の輝きの正体は? 新しい謎に頭を悩ませながらも闘破は戦い続ける――まずは夕飯の準備だ闘破!
 主人公が夕食の準備をしているところにナレーションをかぶせてしめる、というのはなかなか凄い。
 『メタルダー』とは違った意味での異色の作品ですが、それ故にというか、ここまでの展開は、 主人公とその周辺人物を一人ずつ取り上げていく、という非常にストレートな構成。まあこれも、 前作の反省を活かしたといえば活かした所なのでしょうが。
 妖魔一族の方も毎回ちょこちょこと出てくる事で、存在が落ち着いてきました。あくまで毎回のメインの敵は世界忍者で、 妖魔一族は裏で暗躍していたり全く別件で絡んだり相手にされなかったりと色々な為に、どんどんせせこましい感じになってきましたが、 それがいい(笑) というか、「妖魔一族」というと何か大組織みたいですが、実質、毒斎社長率いる、 家族経営の零細企業ですこの人達。社長含めて従業員6名。

→〔その2へ続く〕

(2013年3月9日)
(2018年1月14日 改訂)
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