■『機動刑事ジバン』感想まとめ2■


“ジバン ジバン…! 人間は誰でも
ジバン ジバン…! ひとつの太陽”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『機動刑事ジバン』 感想の、まとめ2(9〜16話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔総括〕


◆第9話「猫になった子犬」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:高久進)
 ブランコに乗る少年の主観映像が、なんかホラー気味。
 そんな少年が公園で見つけた捨て犬……その犬が「にゃー」と鳴いた事から、思わぬ事件が幕を開ける。
 その頃、セントラルシティ署管内で、狂犬病ウイルスの盗難事件が発生していた。それを盗んだのは、得意顔の秘書ズ。 自分達で作れよ! と思ったら、どうやらまた間違えた様子……と、今回もバイオロンアジトはコメディ色強めで、 高久先生的にはバイオロンは明るく楽しくただれた組織の模様です。
 ……もう少し、全体で色彩を統一してほしいんですが(笑)
 愉快な部下達を抱えたデカダンな男ギバ様の今回の計画は、「ペット凶暴化作戦」。
 ペットが人間に甘えているのが気に入らないので野生を取り戻させて人間共に歯向かわせるのだ!
 ……えーなんかそれ、数年前に別の組織の偉い人も主張していたような。
 (※『超人機メタルダー』第29話「ある哀しいのら犬の物語」。脚本:中原朗)
 バイオロンは街でペットを誘拐すると、狂犬病ウイルス他、様々なウイルスを混ぜ合わせて培養した新型ウイルスを注射し、 凶暴化をはかっていた。研究施設へ足を運んだギバ様、実験の経過にご満悦。今のところ、鳴き声が別の動物に変わっているだけですが、 それでいいのか、キバ様。しかし、実験により猫の声で鳴くようになった犬が逃げ出した事を知り、慌ててその回収を指示する。 少年に拾われたにゃーと鳴く子犬は、たまたまセントラルシティ署を取材にしていたTV局により、ニュースで報道される事に。
 セントラルシティ署、いつも珍事件と怪事件が持ち上がっているいわくつきの警察署扱いされているのですが、
 バイオロンのせいか。
 というか因果関係の為にむしろ、バイオロンがご近所の愉快でただれた悪の組織みたいな扱いに。
 保健所の職員に化けたバイオロンはまんまと子犬の回収に成功するが、それを取り返すジバン。犬を少年に返す直人だが、 今度は疫病が流行っていると動物を集めて回っている怪しげな獣医と接触し、その後を追う。
 この辺り延々と間の抜けたやり取りが続くのですが、高久回だけ露骨にノリが違うので、未だ内部の統制は取れていない様子(^^;  バラエティ豊かと、統一感が無いのは似ているようで違うのですが、今作はどうにも後者。
 直人が獣医を追っている間に、バイオロン施設に捕まっている親犬の遠吠えを聞いた子犬が走り出すシーンは急にメルヘン演出になり、 前作『世界忍者戦ジライヤ』で切れ味を見せていた三ツ村監督にも、どうも困惑が見えます(^^;  90年前後の<メタルヒーロー>シリーズの演出陣では最も信頼できる監督だと思っていますが、今回、全く冴えない。
 少年と子犬を探すジバンは、「耳をすまして鈴の音を聞いてみて」というまゆみちゃんの無茶ぶり指令に応えてアジトを発見し乗り込むが、 サーチバスターを受ける前に自ら変身してしまう獣医/ハイエナノイド(笑)
 ハイエナノイドは腹から口が飛び出すギミック(映画『エイリアン』のイメージか)など、なかなか凝った着ぐるみ。……非常に、 動きにくそうですが。
 少年が人質にされるが犬が突撃して少年を助け、電撃攻撃デストロンショックから、ジバンエンドで成敗。 バイオロンによって作られたウイルスはジバンが処理し、アジトにあったワクチンで実験台にされていた動物たちの鳴き声も元に戻って大団円。
 …………えー、あらすじ紹介の所に「小鳥が鶏に、ウサギが犬に、猫がライオンになってしまった!」と書いてあって、 予告でもそんな事を言っていたような気がするのですが、見ている限り、「鳴き声が別の動物に変わっているだけ」なのですが、 ギバ様はここから、何をどうするつもりだったのか。
 確かに「実験の第一段階」みたいな事は言っていましたが、後どれぐらいのプロセスで、 凶暴化したペットが人間を襲うようになる手筈だったのか。そもそも、子犬が「にゃー」と鳴くようになる、 というプロセスは正しかったのか。
 一番偉い人が思いつきで考えた作戦を実行すると、途中で止める人が居なくて困ります。
 一方で、悪の組織はワンマン経営が最高に浪漫だとはつくづく思う次第であります。

◆第10話「パパはパパじゃない!?」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:藤井邦夫)
 冒頭、まゆみちゃんの夢のシーンは、小林義明演出のような、不気味着ぐるみワールド(笑)
 そして、まゆみちゃんの王子様は、直人ではない事が発覚。
 お兄ちゃん、アイドルに負ける!
 世間では、人間の頭脳を飛躍的に活性化させる天才バンダナが大ブーム。
 このままでは人間が生意気に賢くなってしまうと、秘書ズがご注進するが、不敵な笑みを浮かべるギバ様。
 「心配するな、もう手は打ってある」
 実は天才バンダナは、本来の開発者・天童博士がその副作用に気付いて開発を中止した後で、 博士に化けたアクムノイドが世間に広めたものだった。そしてアクムノイドの能力により、バンダナ装着者が次々と悪夢に襲われる。
 コメディリリーフの村松刑事は、ちょっとHな夢を見ていた所を夢の中で怪物に襲われ、 騒動の通報で駆けつけた女刑事に一本背負いをくらってアスファルトに思い切り叩きつけられる羽目に。
 村松刑事は7−8話と出てこなかったので、あわやフォージャスティスされたかと思ってドキドキしましたが、 前回今回と無事に連続出場。…………まあ、フォージャスティスされても特に問題は無かったのですけど(^^;
 代わりに課長の存在が消えましたが、こちらは村松刑事よりも更に滑っていたので、まだこちらの方がマシか。
 今作、コメディ部分が前後と噛み合わないテンションで強引に挟まれるのがどうにも70年代テイストなのですが、 どうしてそんな事になったのか(^^;
 バンダナに付着した物質に気付いた直人はそれを基地で調査し、中枢神経を刺激するバイオロン反応を検知する。 ギバ様はジバンを恐れつつも物的証拠を毎度よく残すのは、探偵と怪盗のような関係性を感じます。デカダンでワンマンとなれば、 あと求めるものはスリルだけなので仕方がない。
 「そのパワー、貴様バイオロンの怪物だな」
 研究室へ踏み込まれた天童博士/アクムノイドは直人を投げ飛ばすとあっさり正体を現し、 もはやサーチバスターの事は忘れた方がいいのかもしれない(笑) 黒いガスを吹きかけられた直人と洋子は悪夢世界に引きずり込まれるが、 銃がまぐれ当たりで解放され、悪夢ノイドは逃亡。追いかけるジバンだったが、 戦闘員のバズーカ攻撃などを受けている内に行方を見失ってしまう。
 本物の父はどこに居るのか……博士の娘は、博士が最初に作ったオリジナルの天才バンダナを装着すると、 自ら夢を見る事で城北のフラワー公園を幻視する。
 突然、超能力活性化装置と化す天才バンダナ。一応、よく当たる夢占いとか伏線だったのかとは思いますが、 〔地点A(よく当たる夢占い)〕と〔地点B(父の居場所を夢見)〕を、 天才バンダナ(脳を活性化)によるワープ航法で繋ぐという構成が、悪い意味でミラクルすぎます(笑)
 脳が活性化されて元からあった娘の第六感が強化されて父を思う娘の愛のパワー! って物凄く藤井ワールドですが。
 娘の夢見を頼りにフラワー公園へ向かったジバンはバイオロン反応を検知し、地下基地で倒れていた天童博士を発見。
 すり替わった相手をいちいち何の意味もなく生かしておくバイオロンは、案外と人道的で侮れません。
 博士を救出するもアクムノイドに襲われたジバンは、悪夢世界へ飲み込まれて攻撃を受けるが、手帳でバイクを呼び出し、 外部からビーム攻撃で強制脱出。
 ……え、あれ、今回のアクション的盛り上がり所はここではなかったのか!(^^;
 悪夢世界を脱出したジバンは対バイオロン法を読み上げ、悪夢ノイドと直接対決。
 本日のバイオロン怪人ビックリドッキリギミックは、
 頭が割れてびーーーむ!
 バイオノイド着ぐるみは、毎度変形路線で行くのでしょうか。差し替え・追加パーツにしても、ちょっぴり豪華。
 悪夢ノイドは、更にアメーバ攻撃や分身攻撃を繰り出すが、分身をあっさり見破られてジバンエンド。 天童博士はジバンの手によって救出され、親子は無事に再会するのであった。
 先輩に「いったい誰が博士を助けたのかしら?」と問われて挙動不審になる直人、は秘密のヒーローのパターンの一つでありますが、 しばらくこの、怪人撃破後に警察がやってきて、直人が適当に誤魔化す路線になるのでしょうか。
 洋子先輩は、
 「あなたは弱い者が必要なのよ。弱い者の面倒を見る事で、自分が上に立てるから」
 で、凄く嫌な感じです(笑)
 最後は久々に、まゆみちゃんといちゃいちゃエンド。使えない年増に、ヒロインの座は渡さない!
 だいぶ見慣れてきましたが、前作『ジライヤ』が割と意欲的な作風だったのに対し、 基本のストーリーラインが5年ぐらい巻き戻っている感じなのは、意識的なものなのではありましょうが……少々、 戻しすぎた気はするのですが。
 次回、無駄に引っ張っていたジバン誕生の秘密、ようやく。

◆第11話「少女と戦士の心の誓い」◆ (監督:岡本明久 脚本:杉村升)
 まゆみちゃんの誕生パーティで、娘に向けて
 「これからも隠し事をせず、パパとママに何でも話せる素直な子で居ておくれ」
 という父が、ちょっとおかしい(笑)
 小学生の娘に「隠し事」という表現はどうなのか……五十嵐博士(祖父)と直人の秘密(ジバン)について、 両親に話せない事を悩むまゆみ……の前振りなのはわかりますが。いかにも展開の為だけの変な台詞回しになってしまいました。
 そして、悩みながらも父の言葉に、満面の笑顔で「うん!」と即答するまゆみちゃん、小学生ながら立派な悪女。
 直人は心を痛めるまゆみちゃんを秘密基地に連れて行き、ジバン誕生の経緯にまつわるデータファイルを、 思い出再現マシンによって二人で見る事にする……と、ジバン誕生編。
 全ては半年前――聞き込み中に暴走車を見かけた直人がそれを追いかけた事から始まった。
 五十嵐博士の運転する暴走車を追い、まゆみを人質にしたバイオロン怪人ウニノイドを目撃した直人は、 博士とまゆみの救出に成功するが、ウニノイドの攻撃で瀕死の重傷を負ってしまう。瀕死の直人は二人を救う為、 切れた電線をスパークさせてウニノイドを爆殺するが、力尽きて死亡。同じくウニの攻撃で致命傷を受けていた五十嵐博士は、 現場へ駆けつけた対バイオロン関係者の柳田の手を借り、朦朧とした意識で死亡した直人の改造を決断する……。
 世界征服をもくろむバイオロンへの対策として密かに進められていた「ジバン計画」は、やっぱり人間を改造するのまずいよね、 と廃棄される予定だったが、命を賭けて自分と孫娘を守ってくれた青年をこのまま死なせるわけにはいかない…… とおためごかしの理由をつけて手術を敢行する博士は「儂はもう駄目だ」発言から先の余命がえらく長く、 素直に病院に向かっていれば助かったのでは疑惑。
 朦朧状態で、「今なら! 勢いで! 禁忌を超えられる!」とエキサイトしているようにしか見えませんが、 相変わらず杉村脚本の高名な科学者はナチュラルにマッドで、倫理観とか道ばたに落ちている10円玉程度の価値しか見いだしていません。
 かくして、死んでいる間に勝手に改造された直人は機動刑事ジバンとして甦る……かと思われたが、エネルギーを注入するも、何故か目覚めず、 「ジバンは、必ず甦る……」という言葉を遺して、やる事やって満足した五十嵐博士はとうとう息絶える。
 ニュースで博士の死を知ったギバ様は、警戒していたけどバイオロン対策なんてなかったんだ! と喜び勇んで、 本格的な活動開始を宣言。だが……秘密基地に眠るジバンを前に、祖父を思って流したまゆみの涙を受けたその時、 ジバンは遂に起動する!
 …………もう少し、盛り上げて欲しい(^^;
 まゆみの涙をキーに起動するのは全然構わないのですが、起動しませんでしたー→博士死にましたー→基地で泣いたら目覚めましたー、 と淡々とイベントが発生していくだけで、全く、物語に劇的な繋がりがありません。故に、起動シーンが1ミリも盛り上がらない。 おまけに、基地を覗きにやってきた柳田さんが動いているジバンを見て、「おお、ジバン」と、物凄く軽くて酷い。
 「君は一度死んで、五十嵐博士の手で、機動刑事ジバンとして生まれ変わったのだ」
 柳田の説明により、ジバン状態はバトルスタイルであり、直人の意志でいつでも人間の姿と行き来できる事が判明。 ジバン→直人ですが、初めて変身シーンが映像化され、純然たる瞬間変身で特にポーズもかけ声も何もない事が判明しました。
 そして直人は海の見える崖で、柳田からバイオロンの存在と、自分が背負った運命について聞く。
 「実は…………はっきり言おう。君の命はいつまで保つかわからん。……五十嵐博士は、自分の命と引き替えに君を作り上げた。 バイオロンと戦えるのは君しかいないんだ。やってくれるね。田村直人――いや、機動刑事ジバン。本日付をもって、 君を警視正に任命する」
 直人が死んでいたのをいい事に五十嵐博士の暴走を美談にすり替え、 返事を聞く前から出世を鼻先にぶら下げる柳田がとてもダークで、なかなかドロドロした背景を匂わせます。
 「やります。命の続く限り」
 こうして、深い暗がりの奥底でバイオロンを密かに裁く、闇の公権力の犬・機動刑事ジバンが誕生した!
 “完全な改造人間”“本人の承諾なく勝手に改造”“かりそめの命”と、 古典的で割とストレートな背景設定が判明したジバンですが……これ、11話まで引っ張る必要はあったのか(^^;
 ここまで引っ張って1話まるまる使ったほどの内容が無く……そしてこれ、脳改造済みという気がするわけですが。 たまたま、改造した側が国家権力だっただけで、科学には善も悪も無いのだな、とつくづく思わされる改造手術でありました。
 そんな顛末の挙げ句にかなり酷い宣告を受けながらも「一度は死んだ命だし」と前向きに受け入れ、 重い運命を背負っている事は表に出さずに呑気に明るく、言われるがままに闇の処刑人に身をやつす直人のヒーロー度は物凄く上がって、 それはとても良かったと思うのですが、これなら2話で良かったのでは。
 もしかしなくても開始時点では、しっかり出来てなかったのか、設定(どうもその辺り、後の『特捜ロボジャンパーソン』と同じ匂いを感じます)。
 同時に、思い出再現マシンを用いて、自分と祖父の死を追体験させ、ぐだぐだ言わずに腹くくれや、 と小学生女児に迫る直人のヒーローとしてキマりすぎている感じも浮き彫りになりましたが、脳改造済みだからシカタナイ。
 そしてよく考えると、過去の秘密が明かされた結果、まゆみちゃんがボスである必然性が全く無い事が判明。
 敢えて言うなら、「まさか、小学生が命令していただと?!」とギバ様の意表をつく煙幕の効果しか考えられず、 対バイオロン委員会が、とことんダークで鬼畜。

◆第12話「危うし!洋子先輩」◆ (監督:岡本明久 脚本:高久進)
 五十嵐博士が設計し、警視庁科学研究所が密かに開発したジェット噴射装置、高機動システムウェポン・ダイダロスを装着し……ジバン、 飛ぶ! というわけで新装備お披露目&前回出番の無かった洋子先輩アクション祭り回。シンプルに活劇回だと思えば、 これはこれでありなのかもですが、なんというか全体的に、展開が10年ぐらい古い(^^;
 ダイダロスはいわゆるロケットベルトを背負う形で、両手でハンドル部分を操作するというのが、元ネタままですが、 今見ると妙に面白い。前回だけだとあまりに何だと思ったのか、柳田が再登場し、これについて解説。
 直人から誕生日プレゼントに貰ったコンパクトの鏡に映った、走り去る直人の姿にジバンの姿が重なり、
 (もしかしたら彼が、機動刑事ジバン……まさか)
 とか、突然妄想を抱く先輩。そんな先輩は、よくジバンに助けられる事からジバンの正体を知っているのではと疑われ、 マンションに突入してきた秘書ズにさらわれる。深層催眠でジバンの情報を探り出そうとする秘書ズだが、 全く何も知らない為に失敗に終わり、東京壊滅作戦のミサイル基地の地下に埋められそうになる先輩は、銃を奪って大脱出。 そして村松と二手に分かれて洋子の行方を追っていた直人はジバンに変身し、空中からミサイル基地を発見する……。
 先輩、撃って、跳んで、転がって、ロープにぶら下がって、火薬の間を走り抜けて、大活躍。個人的に好感度が0に近いので、 まあ正直どうでもいいのが、困りものですが。
 秘書ズに追い詰められる先輩だが、ダイダロスで飛んできたジバンがそこで救援。……あ、今回、 予算がフライングジバンの特撮に使われて、怪人無しなのか。またここで先輩が、秘書ズの幻覚装置に苦戦するジバンを、 装置を射撃で破壊して助け、初めてバイオロン怪人との戦いで役に立ちました。
 秘書ズは逃亡し、東京壊滅ミサイルが発射されるが、ジバン、おもむろにロケットベルトを背中から外して前に構えると、 砲撃モード・ダイダロスファイヤーで、飛び立った巨大なミサイルを破壊。
 専用の破壊兵器ならまだわかるけど、飛行ユニットがそのままオーバーキル兵器とか、恐ろしすぎます。改めて五十嵐博士は完全に、 「私は神になる!」側の人である事が、確定いたしました。
 ミサイルの破壊に成功するも、放棄された基地の爆発に巻き込まれるジバンと洋子だったが、ジバンが無事に洋子を助け、 命の恩人であるジバンに、ときめきゲージがぎゅんぎゅん上がっていく先輩であった。
 あと人間関係としては、何となく気のある素振りは見せていた村松刑事が、正式に洋子を好きだと明言されました。……凄く、 どうでもいい情報ですが。
 ところで今回、謎のファンシーなジングルが多用されているんですが、いったいなに。どうも岡本監督が、迷走気味(^^;

◆第13話「哀しみの少年を救え」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 不審な人間が出入りしているとの通報を受け、廃工場を張り込んでいた直人は、 真っ赤な仮面をつけた背広姿の男達が工場の中に入っていく姿を目撃する。

 不審だ!!

 後を追って工場の中に入ると、そこでは仮面の男達が会食中。
 獣毛などに覆われた人ならざる右腕で男達が人間社会に潜伏したバイオロン怪人である事を見せ、
 「何といっても、われわれ怪物にとっての餌は、子供の体が一番だな」
 という事は今食べているのは……? と、なかなかえぐい台詞。そして怪人達が進めているのは、安定した美食供給の為の、 子供農場計画であった!
 潜入を気付かれた直人はスカンクノイドの攻撃を受け、ジバンに変身するもガス攻撃で肩部に大ダメージを受ける。 なんとか脱出に成功するも変身解除した直人は意識を失って倒れる……と、13話にして、ジバン、初の完敗。 ジバンの危機的状況をモニターしていたボスがレゾンで駆けつけ、道に倒れていた直人を回収するが、そこは何故か、 最初に倒れていたのとは違う場所だった。果たして、気を失っていた間に、直人の身に何があったのか……?
 秘密基地(表向き五十嵐医院)で治療を受けた直人は、見舞いに来た洋子先輩に
 「とにかく、またバイオロンが何か企んでいる事は間違いありません」
 と相変わらず、バイオロンが一般警察に認知されているのかいないのか、隠したいのか隠したくないのか、よくわかりません。 まあ先輩は何度も巻き込まれてバイオロン怪人も目撃しているので個人的に認知していていいと思いますが、 その割にはバイオロンという単語への反応が無いので、直人の発言をどう受け止めているのか謎ですし。
 悪の秘密結社が派手に暴れている割には世間に認知されていない、というのはある程度、 “お約束”で誤魔化して良い所だとは思いますが、そうであるからこそ、誰までが情報共有者であるのか、 というのはしっかり区分けしてほしい所。この辺り『ジバン』は、ヒーローを現実の公権力と結びつけてしまった為に、 線引きを決めかねている所が作品全体に漂う迷いに繋がっている感じ。
 改めて工場に踏み込む直人と洋子だったが、既に工場はもぬけの殻。意識を失った記憶のある場所を調べる直人は、 そこで自分を見つめる少年の姿を目にするが、声をかけると逃げられてしまう。追いかけて辿り着いた二階堂家で、 身分も名前も名乗らずに少年を問い詰め、家の人に追い払われる直人。
 いや貴方、これ以上なく強烈な身分証明書持っているのだから、警察手帳を見せなさい。
 実は二階堂家はバイオロンに乗っ取られており、少年は父を人質に沈黙を強要されているのであった。後日、 通学中の少年に再び接触をはかる直人だが、計画の周囲を嗅ぎ回る刑事として、刺客の襲撃を受ける。
 前回が洋子先輩祭りだったからか、今回は直人がアクション多め。ベルトコンベアーに乗りながらの刺客の銃撃など、なかなか面白い。 襲撃の中、少年はランドセルに潜んでいた監視役小型モンスターの毒針を受けて倒れ、 瓦礫の下敷きになりながらもジバンに変身して窮地を脱した直人は、少年を基地に運び込んで解毒に成功。そして、 少年が意識を失っている間に、勝手に記憶をリプレイする。
 対バイオロン法特記事項・機動刑事ジバンは、バイオロンが関わる犯罪と認められた場合、 関係者の人権を無視する事が許される。
 これによりあの日、二階堂親子が道に倒れた直人を発見して屋敷に運び込むも、正面玄関から堂々とバイオロン戦闘員が訪問して来た為、 裏口から外に連れ出して道路に放置していた事が判明する。二階堂家に踏み込んだバイオロンは、 たまたま二階堂父が資産家であり、広大な土地に「子供の国」を建設しようとしている事を知ると、それを子供農場の隠れ蓑にしようと、 二階堂父に成り代わったのであった(なお二階堂父役は、東映怪人声優の古豪にして常連、西尾徳さん)。
 「意識を失った直人の身に何があったのか?」というちょっとしたミステリ要素を盛り込んだのは面白かったのですが、 バイオロン側に少年を生かしておく理由が全くなかったのが残念。その上で次のシーンでざっくり「刑事と子供は始末しました」 とやってしまうので、バイオロンが何をしたかったのか、さっぱりわかりません(^^; 計画を立ち聞きした刑事=直人、 を誘き出す為の囮作戦、と解釈するのはちょっと親切に過ぎますし。
 邪魔者は排除した、と二階堂家に集まって意気上がるバイオロン怪人おっさん軍団。それぞれ表の顔は、政治家、建設会社社長、 新聞社の編集長……と、社会の権力構造に、バイオロンが浸蝕している事が改めてハッキリしました。
 だがその時――鋼鉄の体に正義の魂を秘めた不死身の刑事、闇の裁きの執行者が、星の輝きと共に現れる!
 星形に撃ち抜かれた扉の奥にジバンが立っている、というカットは凄く格好良かった。
 数話ぶりの外道照身霊波光線でスカンクノイドは正体を現し、仮面おっさん軍団は、省コストの為、右手だけ変形。 階段を上へと逃げる男達、それを追いながら片言で対バイオロン法を読み上げるジバン、と相変わらずホラー風味。 バイオロンはいつものように二階堂父を人質にし、銃を捨てたジバンは追い詰められるが、そこへやってきた先輩が射撃で援護。
 射撃した先輩が一瞬シルエットなのも格好良く、今回は小西監督がけっこう冴えています。設定がハッキリしたり (序盤の演出を見ていると今作、初期はジバンの設定がしっかり決まっていなかったのでは、という気がして仕方ない)、 登場人物のバランスが見えてきたりで、演出陣の方もようやく落ち着いてきたのか。
 まさかの先輩の活躍で二階堂父は無事に救出され、スカンク火炎放射を打ち破ったジバンは、ジバンエンドでずんばらりん。 かくて、バイオロンの、子供農場計画、の前にとりあえず資産家のドリーム計画をかすめとろう作戦は瓦解するのであった!
 今回、『ジバン』としては結構面白かっただけに、軸であった筈の少年がらみの展開の雑さが残念。真相の解明も、 心の交流とか全く無しに、気絶している間に機械の力ですし(笑)  直人が何の躊躇もせずに他人の記憶を盗み見るのが恐ろしいのですが、脳改造済みだからシカタナイ。
 次回、
 「バイオロンが遂に、ジバンの弱点を発見」

 脳?

 そして、予告に物凄くヤバめの映像ががが。

◆第14話「愛の大逆転ゲーム!」◆ (監督:小西通雄 脚本:藤井邦夫)
 休日、公園でまゆみちゃんといちゃいちゃバドミントンに興じていた直人は、落とし物の財布をねこばばしようとする駄目父と、 それを止めようとする真面目な小学生の息子、という原田家のやり取りを目撃する。
 日曜朝のお茶の間を挙動不審にさせる展開を果敢に突っ込んでくる藤井邦夫ですが、だらしのない父と誠実な子供の取り合わせ、 というのは次作『特警ウインスペクター』第7話の雛形でしょうか。こうなると、この更に原型もありそうですが (時代劇パターンでもありますし)。
 その頃バイオロンは、これまでの戦闘データからジバンの弱点を分析していた。秘書達の挙げたその弱点は、「子供に優しい」 「秘密基地のメカと連絡を取れないと戦力激減」の二つ。
 ……確かにレゾン、多分ジバンより強いから。
 決定打に欠ける回答に不満顔のギバ様だが、そこにバイオロン怪人キラーノイドが登場。
 「ジバンの一番の弱点は、ヤツ自身、メカである事」
 「その通りだキラーノイド」
 教師みたいです、ギバ様(笑)
 かくてバイオロンは、ジバンのコンピューターを狂わせる作戦を立案する。
 バイオロンが再びジバン抹殺に照準を定めている頃、妻を亡くして安アパートで寂しく暮らす原田家では、 父が息子の貯金箱から小銭をかき集めて酒を飲みに外に出ていた(^^; パトロール中に、 公園で寂しく泣いている少年を目撃した直人は父親を連れ帰る事を約束して少年を家へ帰すが、少年は秘書ズによって誘拐されてしまう。 直人が赤提灯で飲んだくれていた父を確保して家に帰ると、少年は当然不在。現場に落ちていた靴と、 付近で発生している大量の子供行方不明事件から、バイオロンが絡んでいるのかもしれないと秘密基地へ向かう直人だが、 その背後では、「誘拐犯人を目撃した」と語る秘書ズが、原田父にジバンの写真を手渡していた。
 駄目父をどう物語に絡めて立ち直らせるのかと思ったら、割と積極的な組み込み方をしてきました。
 そういえば始祖たるギャバンも、誘拐犯の汚名を着せられて社会的に抹殺されそうになっていたなぁ。 まあジバンの場合、闇の公権力がバックについているので、社会的に抹殺するのは難しそうですが。多分そういう事をした日には 「犯人はジバンではなくてこの男です」と別件で逮捕された犯罪者が罪を着せられてスケープゴートにされそう。 怖いよ対バイオロン委員会。
 秘密基地では、ジバンを呼ぶ怪電波が傍受されていた。大量の子供達を人質に取り、 時限爆弾を仕掛けたというキラーノイドの呼び出しに応じて横浜の倉庫に向かったジバンだが、 まんまと秘書ズに誘導された原田父に「息子を返せ」と組み付かれた所にキラーノイドの電磁波光線を浴び、 コンピューターに大ダメージを受けてしまう。ジバンと連動している3大マシンも電磁波の影響を受けて召喚する事が出来ず、 大ピンチに陥るジバン。
 「子供に優しい」「秘密基地のメカと連絡を取れないと戦力激減」だけでは落第としつつも、作戦にしっかり組み込んである、 ギバ様の優しさ(笑)
 (ちなみに、駄目父の子供が誘拐されて……と似たプロットを辿る『ウインスペクター』第7話では、 父親が子供のために一発では男気を見せず、主人公に説得されてようやく犯人との取引現場に向かう、ともう一ひねり加わっています)
 原田父をかばい、更にダメージを受けたジバンは、敵のターゲッティングも出来ず、倉庫の外に吹っ飛ばされてしまう。
 「どうしたらいいのボーイ?! どうしたらジバンのコンピュータが元に戻るの?!」
 「時間はかかりますが、こちらからジバンにキーワードを送り、メカを刺激して回復させるのです」
 「教えてボーイ! そのキーワード」
 「キーワードは、愛…ということば…です……」
 「愛?」
 電磁波の影響でボーイも遂に沈黙。まゆみちゃんは、何故か秘密基地のコンソールパネルに用意されていた、

 のボタンを連打しまくる。

 「お願いジバン、甦って」
 まゆみちゃんは非常に真剣で必死なのですが、物凄く狂った絵に。
 標的を見失ったジバンは、武装も起動せず更なる危機に陥っていた。加えて、人質の元に仕掛けられた爆弾はキラーノイドと連動しており、 キラーノイドを倒すと子供達が吹き飛んでしまう……と念の入った仕掛けであった事が判明。攻撃手段を完全に失うジバンだが、 調子に乗ったキラーノイドは遂、聞かれるがままに子供達の監禁場所を話してしまうミステイク。だが、 ジバン絶体絶命の状況に変わりはない。

 その頃、ボスは愛を乱打していた。

 基地のモニターに浮かぶ、

愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛
LOVE LOVE

 がちょとサイコ気味。
 ……いやまあ、そういう、緊急復帰システムなのでしょうが。
 「ア……イ……? あい……コンピュータに届く、この言葉はなんだ」
 またも吹き飛ばされたジバンは、おずおずと顔を出した原田父と接触するが、戦闘員に囲まれてしまう。 そこへ車で突っ込んでくる先輩(倉庫へ向かう際にジバンとすれ違って追いかけていたという伏線あり)。 怪人相手には何の役にも立たないものの、二話連続で先輩がジバンを助ける活躍。ようやくポジションが落ち着いてきましたが、 序盤の悪印象が強すぎて、まだ払拭されるには遠い(^^; 後はもう少し、頭使う描写があると良いのですけど。
 なんだかんだで戦力としては信用していないのか、子供達の監禁場所を伝えるでもなく、原田父を洋子に任せて逃がし、 キラーノイドへ立ち向かうジバンだが、引き続き大苦戦。合間に会話シーンなどは挟んでいるものの、 Bパート入って延々続くかなり長い尺での戦闘シーンという事もあり、両者がトタン屋根の天井を突き破ったり、 なかなか派手で凝ったアクション。
 ボスは引き続き、16連射中。

愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛
LOVE LOVE
AMOR AMOR
LIEBEN LIEBEN

 かなりサイコです。
 「あい……愛……さっきから僕のこのコンピューターに打ち込まれる、この言葉はなんだ」
 だが、まゆみの必死な願いとともに、その狂気な電波は確実にジバンの元へ届いていた! 若干ノイズ気味に感じていたジバンだが、 キラーの剣が迫ったその時、愛の力がヘビーメタルのボディを満たす。
 「愛・まゆみちゃん!」
 色々と問題視せざるを得ない発言と共に、コンピュータが復帰したジバンはターゲット認識にも成功するが、 キラーノイドの攻撃で工場の屋根から地上へ落とされてしまう。
 「ジバンを倒した!」
 だがそこへ、走り込んでくるレゾン。
 「ここは、このレゾンに任せろ」
 レゾン、格好いいゾ(笑)
 ジバンの落下位置に駆けつけて走り去ったレゾンが、大ダメージのジバンを回収したと思いこんで後を追うキラーノイドだったが、 それは陽動で、ジバンはその間に子供達を救出。そして、レゾンの運転席が無人である事に気付いたキラーノイドの背に突き刺さる銃弾。
 「対バイオロン法第一条・機動刑事ジバンは、いかなる場合でも礼状なしに、犯人を逮捕する事が出来る」
 人質の子供達がどうなってもいいのか、と高圧的に迫るキラーノイドだったが、既に子供達は救出済み。
 「まんまとレゾンの罠にかかったなキラーノイド。我々のコンピューターは既に、正常に戻ってるんだ! 
 ――第二条・機動刑事ジバンは、相手がバイオロンと認めた場合、自らの判断で犯人を処罰することが出来る」
 さあ、お仕置きの時間だ。
 周囲に現れた雑魚の十字砲火を浴びるも、ジバンはそれを圧倒。思うに洋子先輩は、 警察(対バイオロン委員会視点)における戦闘員の立ち位置だと考えると、あらゆる意味で正しい扱いの気がしてきました。
 「第二条補足――場合によっては抹殺する事も許される」
 飽きられないように手を変え品を変え愛・連打を挟みながら、長々とジバンの苦戦を描いてきた事により、 この大逆転は格好良く盛り上がりました。キーワードであった「愛」とかはあまり関係なく、本来ジバンが持っていた、 ポテンシャルとしての格好良さですが(笑)
 キラーノイドが剣使いなので、ちょっとしたチャンバラの後、ジバンエンド。この事件がきっかけで原田父は心を入れ替え、 真面目に働く事を決意。そして直人は、まゆみちゃんといちゃいちゃするのであった。
 時間の大幅な進行なしにBパートずっと戦っていた、というのはなかなか凄い。適度に別のシーンを挟みながら場所移動を繰り返し、 雑魚を交えてみたり天井を突き破ってみたりと単調にならないように変化を付けながら長大な戦闘シーンを維持する事で、 最後の逆転劇の盛り上げに繋げたのは綺麗にはまり、前回・今回は、小西監督がいい仕事。物語ともしっかり連動し、 アクション的には充実の一編でした。
 次回予告から問題になっていた「愛」ですが、いっそ清々しいほど、何が愛だったのかは語られず。 エピソードのテーマとしては「親子愛」なのですが、原田父が土壇場で見せた息子への愛情がジバンに影響を与えたわけでなく、 親子愛とジバン復活の愛は全く繋がっていません(^^;

 万能用語としての便利使いを通り越して、五十嵐博士の用意した緊急復帰システムが 純粋に頭おかしいという、マッドサイエンス。


“これは人を愛し、正義を守り、祖父の狂気に弄ばれる、若者と少女の心のドラマである”


◆第15話「オオカミ男はピアノ好き」◆ (監督:岡本明久 脚本:扇澤延男)
 「音楽で愛と平和を訴えるだと?! この生意気な人間を、我がバイオロンの怪物に、改造してやる!」
 慈善活動に熱心な天才ピアニスト・立原修一郎の紹介をTVで見たギバ様、嫌がらせをする事にする(笑)
 ギバ様は絶対、コーラとポテチ用意してぶつぶつ文句言いながらTV見て、こういう感じでたまに思いつきで作戦実行している。
 シルクハット+黒マント+タキシード+仮面+ステッキ、という怪盗ルック、 まあ2000年代にわかりやすく言うとタキシード仮面様の格好をした怪人(文字通りの)が登場。 秘書ズによって攫われた立原は、怪人オオカミノイドの体組織の一部を移植され、怪物へと改造されてしまう。
 両親を早くに亡くして立原に引き取られていたその姪っ子がまゆみの友達だった縁で、立原が行方不明になった事を知る直人と先輩。 立原を探そうとした矢先、鉄パイプを振り回して暴れる男を取り押さえる。その男によると、ピアノの音色を聞いたら突然、 わけもなく暴れ出したくなったのだという。
 倉庫の中に響くピアノの音色……人気のない倉庫の真ん中でグランドピアノを奏でるオオカミ怪人、 はなかなか頭おかしくていい絵面。しかも、作曲していた(笑)
 作品が落ち着いてきたら、迷走気味だった岡本監督の演出も落ち着いてきました。
 直人は今日も物陰でジバンに変身して戦うが、苦しみだしたオオカミが立原の姿へ変わる。
 「ここはどこなんだ……? 僕はどうしてこんな所にいるんだ?」
 「とぼけるなバイオロンめ! 立原さんに化けて何を企んでる!」
 胸ぐらを掴みあげるジバン、そうか、そちらへ行ったか(笑)
 そこへ秘書ズと怪人が出てきて、立原はオオカミノイドの呪文一つで怪物に変身するのだと種明かし。 相手がバイオロンでなければ現場判断で死刑執行できないという弱点を突かれて苦戦するジバンは、 先輩の射撃からオオカミ立原をかばうと、とりあえず気絶させて基地へと運び込む。
 一方バイオロンは、オオカミ立原が作曲中の悪魔の賛美歌が人間の暴力衝動を高める事に気付き、 それを完成させてレコードにして全世界に売りさばく事で 一山当てようとしていた 世界を暴力の蔓延る世紀末ディストピアにしようとしていた。
 ただの嫌がらせと思いつきだった筈なのに、流れるように巧妙な作戦計画だった事にすり替える、ギバ様、かっこいー。
 秘密基地で立原を調べた直人は、立原の耳の奥にオオカミ細胞が埋め込まれている事を発見する。 それがオオカミノイドの呪文に反応して立原を怪物に変貌させるのだが、音楽家にとって極めて大切な聴覚を傷つける可能性がある為、 外科手術による切除は難しい。そこでボーイは、呪文と逆の波形をぶつける事で、それを無効化させる音波発生装置を作成する。
 ジバン一味の事なので、しごくあっさりと「背に腹は替えられない」と手術してしまうのかと思いましたが、意外な気を遣いました(笑)
 逆音波発生装置を完成させて立原を家へ返す直人だったが、今度は姪っ子がさらわれそうになる。が、それはバイオロンによる陽動で、 姪っ子を助けようとしている間に、さらわれる立原。パトロール中に連れ去られる立原を発見した先輩はそれを追いかけ、 直人に連絡をすると、単身、オオカミノイドのアジトへと踏み込む。
 アピールタイムという事で、得意の射撃でばったばったと戦闘員を撃ち殺す先輩。 もともとトリガーの軽い人でしたが、戦闘員に対しては確実に殺りにいっているので、 さすがにその辺りの事情は対バイオロン委員会から特命で伝えられたりしている様子。また今回は、 射撃ばかりではなく手錠格闘術も披露し、これが格好良かったです。加速をつけて頭を使わない方向へ行ってますが、 手錠格闘術は格好良かったので、また見たい。
 戦闘員を始末した先輩は、タキシード仮面と激突。切れ味抜群の回し蹴りを放つタキシード仮面は、キャストクレジット見る限り、 岡本美登さんか。オオカミノイド人間体は何故どちらかというと『ジライヤ』寄りの素っ頓狂な見た目なのかと思ったらこのアクションの為だったようで、 マントを翻しながらの戦いは格好良く、思わぬ所でアクションが充実。
 先輩が追い詰められた所にバイクで走ってきたジバンは逆音波発生装置で立原を元の姿に戻すが、露骨に掲げていた為に、 秘書ズの指示で壊されてしまう(笑) 意図したのかどうかわかりませんが、これ丁度、 先輩が秘書ズの幻覚装置を破壊してジバンを助けたのと同じ構図です。
 「音楽で、愛と平和を訴える希望の、戦士なんだ!」
 とポイント割り振ってない説得機能を使用してみた結果、微妙にズレたジバンの言葉は、オオカミに戻った立原には届かない。 だがその時、まゆみちゃんと姪っ子が持ってきたラジカセから、かつて立原が、 両親を亡くして生きる希望を失った姪の為に作った勇気の曲、「ピアノコンチェルト・デイザイア」が流れ出す。その調べと、 姪の叫びに、人間の姿に戻る立原。
 「「「馬鹿な!」」
 「どういうことだ?!」
 「どんな科学技術をもってしても、人間を怪物に作り替える事など不可能なのだ」
 オオカミ立原オリコン1位作戦を諦めたタキシード仮面は立原の体内に移植していた自分の細胞を取り戻すと、高い所にジャンプ。 マントを投げ、シルクハットを投げるとそれが満月のイメージとなり、ひたすらハッタリを効かす怪盗紳士は、 真のオオカミノイドへと変身する。いきなり口から火炎弾。更に爪の攻撃と胸からビームにより、火薬大奮発の猛攻を受けるジバン。 反撃の「ディスクローズショック!」(意味は不明)が炸裂すると何故か月が消え、弱体化したオオカミにジバンエンド。
 立原は正気を取り戻し、姪っ子達に囲まれていい話で大団円。大団円なのですが、流れている変なノリの挿入歌が凄く気になります(笑)
 ジバンの強さを 君知ってるか♪
 そして立原は新作を発表し、ピアノリサイタルを行う。新作のタイトルが
 「光の天使 智子のために」
 て、なんだこの叔父馬鹿(笑)
 ベタもベタな大団円ですが、話としてのミソは、逆音波発生装置が破壊された後に、立原がピアノの調べで人間に戻った事で、 バイオロン側に限らず、「どんなに優れた科学よりも、人間の心の方が強いんだ」というテーマ性が強調されているところでしょうか。
 扇澤脚本の一つの武器は、クライマックスに至る積み上げの丁寧さと、その為の濃密な要素を詰め込む技術の高さなのですが、 まだまだ、後の切れ味は無いごく普通の一本。
 で、一つ言語化できたのですが、『ウインスペクター』以降の扇澤脚本は、 「愛と勇気で救われる」というヒーロー物のテーゼは一応抑えつつも、 では「愛と勇気って何か?」という部分を描く事にかなりウェイトが置かれていたのですが、 今回はごくシンプルかつストレートに「愛と勇気で救われる話」であり、その違いがわかりやすく見て取れるな、と。
 これは同じ扇澤脚本で、割と秀作ながら最後に綺麗事でまとめてしまうのが物足りなかった『世界忍者戦ジライヤ』第33話 「ギターかかえた渡り鳥 雷忍ワイルド」(ジライヤと再登場したワイルドの決闘編)も思い起こす所。
 今回も、叔父と姪の愛情について段階を踏んで積み上げており、クライマックスに最低限の説得力を持たせていますが、 その踏み込み具合と劇中の要素の詰め方は、後年に比べるとまだ物足りません。
 作品としてそこまで求められていなかった、という部分もあるかと思いますが、その踏み込みが、『ジバン』の途中で起きたものなのか、 『ウインスペクター』から出てきたものなのか、引き続き興味深い部分です。
 今作、途中から堀長文がプロデューサーに参加する筈なので、変化があるとすれば、それ以降か。
 ところで、ED映像にダイダロスが追加されている事に気付いたのですが、登場回以降、影も形もないけど、 どうしたのかダイダロス。落として壊したのか、直人。

◆第16話「おれは透明人間だぞ!!」◆ (監督:岡本明久 脚本:高久進)
 いかにも研究馬鹿な感じの父、家計を支える母、そんな両親が大好きな一平少年、 という暖かいが割とストレートに貧乏な感じの野呂一家。野呂海洋科学研究所を称して父が打ち込んでいるのは、 透明になる研究とだいぶ夢見がちなものだった。
 今日も今日とて、お母さんは外に働きに行き、お父さんは実験に没頭していたが、草野球のボールが飛び込んできたドタバタで、 ペットの猿が適当に混ぜ合わせた液体から、念願の透明薬が出来上がってしまう。有頂天の野呂父は自ら透明になって外に飛び出すと、 車に轢かれそうになるなど、お約束。
 ところが、野呂父が研究の為に飼っていたクラゲは、バイオロン怪人・クラゲノイドであった…………え、ずっと、 市井の素人発明家をスパイしていたのですかバイオロン(^^;
 「私は完全に透明になりたくて、街の発明家をマークし、手に入れたのです」
 怪人の自発的な行動だった!(笑)
 いや、ギバ様の指示だとアホすぎるので、正直良かったですが。
 クラゲノイドは盗んできた透明薬を、にぎやかしのモンスターで実験。高久先生は、お気に入りなのかこのモンスター。 見事にモンスターが透明になったのを喜ぶギバ様は、透明薬の量産の為に、野呂父をさらってくるようクラゲノイドに指示を出す。
 ギバ様が透明になる薬を求めていた理由――1分前までクラゲの自発的行動だった筈なのに、 いつの間にか世界征服の為の作戦行動に組み込むギバ様カッコイイ――……それは、透明薬により子供達を大量に透明にすれば、 万引きし放題だ!

 ………………………………え。

 透明になった子供達は自分の欲望の赴くままに犯罪に手を染め、悪の心と喜びに目覚めた多くの子供達がそのまま大人になれば、 やがて社会は泥棒だらけになるだろう!!

 ………………………………ギバ様?

 高久脚本の時のバイオロンの作戦は、根本の所で何か間違っています(笑)
 透明薬を飲んで完全に透明になったクラゲは、当の野呂父が、透明状態から元に戻れなくなって困っているとも知らずに街に繰り出し、 通りすがりの警官達に嫌がらせ。シーツをかぶって存在をアピールしていた野呂父がさらわれそうになった事から (シーツが外れて居場所がわからなくなって逃亡に成功)、野呂父に迫る敵を探すジバン。しかし赤外線スコープでも感知する事が出来ず、 クラゲの攻撃を受けてピンチになってしまう。と最近やや、バイオロンに苦戦気味。
 ボーイが音響ソナーにより敵の居場所を探り出すという潜水艦作戦を提案し、ディスクローズショックを放つジバン。 これは機動刑事の特性を活かし、透明になった敵を破る作戦としては面白いのですが、ディスクローズショックの謎がますます深まります。 そしてソナーによる探知は決定打にならず、結局、少年がカラースプレーをかける、という台無しな展開(^^;
 姿が見えるようになったクラゲを相手にジバンは反撃に転じ、ジバンエンド。前回今回と、対バイオロン法の読み上げは無し。 戦闘中のあれこれから、熱線を照射すると体内の透明薬の成分が蒸発する事がわかり、ジバンに軽くあぶられて、野呂父は元の姿に。 悪い連中に狙われるのはもうこりごり、と透明化の研究を止める事にした野呂父は、心を入れ替えて働…………いたら負けなので、 とりあえず今晩のおかず目的で釣り糸を垂らすのであった。あれ?
 警官が見えない相手に殴り飛ばされたり吊り上げられたり、ジバンが一人で転がり回ったりと、 映像的には面白くしようと色々やっていましたが、Bパートがほぼ透明アクションで、さすがに間延び。後、 折角のソナー作戦が活かされなかったのが残念。そしてそろそろ、ジバンには自分で頭を使ってほしい。

→〔その3へ続く〕

(2014年6月7日/11月12日)
(2019年12月27日 改訂)
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