■『機動刑事ジバン』感想まとめ1■


“これは人を愛し、正義を守る、
若者と少女の心のドラマである”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『機動刑事ジバン』 感想の、まとめ1(1〜8話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔総括〕


◆第1話「僕のかわゆい少女ボス」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 かわゆい……かわゆい、と来たか……。
 冒頭、とある研究所から奪われたフロッピーディスク(!)を追って、ジバン、緊急出動。
 まずはお約束のカーチェイスですが、犯人グループに対するジバンの攻撃が、 「死んじゃったら死んじゃったでいいや」という容赦の無さで、恐ろしい。専用車から撃ったビームで、 ジープ吹き飛ぶし(笑)
 犯人を確保しようとか、そういう意図が全く感じられません。
 多分、ジバン作ったのは、アメリカ人。
 続けての倉庫での戦闘では、腕のモーター部分?が故障するなど機動刑事っぽい所を見せつつ、警察手帳を取り出しての口上。
 「礼状なしで逮捕」とか
 「バイオロン犯罪と認めた場合、独断で処刑OK」とか
 いちいち怖いぞジバン。
 結局、フロッピーを奪われるのは阻止したものの、正体を現した怪人には逃げられてしまい、ここで一度、敵組織の顔見せ。
 中年の恰幅のいい博士が、若い女二人をはべらかす、ただれた組織、バイオロン。
 バイオロンのボスであるドクター・ギバは、外国人の俳優に飯塚昭三が声をあてるという面白い事をしているのですが、 声と動きが合っていなくて、違和感が凄い激しい(^^; というか技術的な問題なのか何なのか、全体的に、演技どうこう以上に アフレコがやたらに合っていません。
 ジバン抹殺を目論むドクター・ギバは、東京都内に生体型コンピューターウィルスをばらまくと共に、各地で子供を誘拐し、 ジバンをおびき出す作戦に。ついでに、誘拐事件の捜査にあたる女刑事(ジバン人間体の時の先輩刑事)も一人さらってきますが、 何故さらったのかは全く意味不明。
 作劇上の理由は勿論、レギュラーキャラである先輩刑事の顔見せなわけですが、その為だけにさらうという、ひどい脚本。 しかも先輩刑事をさらう理由を作る為に、組織の作戦としては何の意味もなく子供を攫うという、二重に酷い内容。
 ウィルスの発生源を突き止め、バイオロンの基地に侵入したジバンに襲いかかる巨大触手。
 せっかく「機動刑事」でメカメカしてくしている割に、敵があまりひねりの無い十年来の怪奇生物、というのは勿体ない所。 カメレオンモチーフの怪人なのに、足から触手生やしているのも意味不明(笑)
 基地にはさらわれた子供達と女刑事も触手に掴まっていたのですが、さらわれた子供と一緒にひたすら「助けて」とわめくだけで、 女刑事は何の役にも立ちません。
 むしろ、マクシミリアンで撃ちたいレベル。
 正直あまり強くない感じのジバン、どうするのかと思ったら右腕からドリルが出てきて、ピンチを脱出。
 しかし、続けて謎の巨大生物が出てきて、再びピンチに。
 またもあっさり掴まる女刑事と子供達。
 どうするジバン、と思ったら、警察手帳を取り出して、パトカー(レゾン)を呼んだ!
 このパトカーが強い
 序盤のカーチェイスでも、犯人グループのジープを一撃で粉砕したレゾンビームで巨大怪物を倒し、再び窮地を脱出するジバン。 女刑事と子供達も逃げだし、生体コンピューターウィルス散布装置を破壊すると、その余波で基地が大爆発し、降り注ぐ瓦礫の中を、 レゾンに乗って脱出するジバン。
 …………子供達、死んだだろう、これ(笑)
 にしても、困ったらとりあえず主題歌流しておけ、的な演出は良くない。
 主題歌格好いいから、ちょと騙されるんですけど。
 最後は基地の外で怪人を倒し、女刑事と子供達の元に人間体で走ってやってきて(ウルトラマン方式)、 ツッコまれると笑って誤魔化して終わり。
 人間時の名前が「田村直人」と、凄まじく普通なのが、全編通して一番の衝撃かも。
 一条寺烈→伊賀電→沢村大→城洋介→剣流星→山地闘破
 と来て、どうしてそうなった。
 戦隊シリーズでもよくありますが、1話は敵味方の主要キャラの顔見せとアクション重視で、背景の説明は後回し、 という手法で作られており、「かわゆい少女ボス」との関係、なぜジバンになったのか、そもそもジバンとは何者なのか、 などに関しては2話以降に持ち越し。それを考慮するにしても、正直辛い出来の1話で、行く手には暗雲漂いますが(^^;

◆第2話「大好き!ナオトお兄ちゃん」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 銀行強盗発生の報に、現場へ急行する直人と先輩女刑事。

 抵抗する犯人は拳銃を取り出し、女刑事が……撃った!

 異常にトリガー軽いけど、大丈夫か、この先輩。
 その場を逃げ出した犯人と取っ組み合いにある直人だが、謎の怪力を発揮した犯人に大苦戦。そこへやってきた警視庁の刑事達に、 横から逮捕されてしまう。警視庁の刑事に捕まる時には、何故か謎の怪力を発揮しなかった犯人。
 実はこれは、ジバン抹殺を目論むドクター・ギバの作戦であった!
 警視庁を標的にする事で、ジバンをおびき出そうとするバイオロン。
 警視庁に潜入する為に、
 銀行強盗を行う→警視庁の刑事に捕まる→取調室で刑事と入れ替わる
 という、用意周到なのか遠回りなのかわからない作戦を行う怪人。
 一方直人は、刑事の不審な動きから、バイオロン怪人との入れ替わりを推理、女刑事に事情を説明して、 警視庁に様子を探りに行ってもらう事に。
 その時、突然、TVキャスターの精神をジャックして(?)、バイオロンが警視庁の爆破を予告!
 予告時間まであと20分!
 時間が無い! ……のに何故か、素直に警視庁に向かう女刑事。肝心の直人は、「バイオロンの作戦がこれだけとは思えない」と、 何故か待機。酷い、酷すぎる。
 警視庁に向かった女刑事は、地下で怪人に入れ替われた刑事を発見。
 直人の適当な推理を聞いただけにも関わらず、「試させてもらうわ」と口にしたかと思ったら、
 いきなり4発撃ちこみました。
 しかも足とかではなく、肩と胸。
 ……いやそれはまあ、遠い昔(未来?)に、ウルトラ警備隊の皆さんも、 宇宙人に入れ替わられたとおぼしき隊員にいきなり光線銃をぶちかましたという故事がありますが、酷い、酷すぎる。
 幸い、怪人は拳銃の弾丸ぐらいでびくともせず、その場を逃亡。どさくさ紛れに仕掛けられた爆弾が発見され、爆弾の処理を開始。 残す時間はあと8分……一方、バイオロン基地では、爆破予告におびき出されないジバンに業を煮やしたドクター・ギバ、
 「ジバンはまだ現れないのか! やむをえん! ミサイル発射!!」

 警視庁に向けて、ミサイル発射

 基地のまゆみちゃんからの連絡を受けた、車中の直人
 「やはり時限爆弾とミサイルの両面作戦だったのか」
 いやいやいやいやいやいや
 最初から出ていたら、ミサイル撃たれなかったぽいのですが
 というかそもそも、この両面作戦とやらの、
 意味が分からない。

 本気でわからない。

 ミサイルの阻止に動く直人は、柱の後ろを通り抜けると、ジバンに変身。
 いきなり動きのぎこちなくなる直人お兄ちゃん。
 ジバンの変身システムってどうなのだろうと思ったら、とりあえず、瞬間変身は出来るの模様。毎回、 こういう“見せない”処理なのかなー。
 警視庁では、ミサイル迫る、の報を聞いて、逃げ出す爆弾処理班。
 何故かその場に残って、起爆装置の解除を試みる女刑事。
 全体の脚本の酷さもさる事ながら、終始この女刑事がバカすぎて、ハラハラもしなければ、ドキドキもしません(^^;
 結局、ミサイルはジバンが飛行メカで撃破。その勢いで怪人も撃破。
 地下の爆弾は、女刑事がたまたま解除に成功。
 最後は1話に引き続き、直人とまゆみちゃんがいちゃいちゃして終了。
 ……毎回、このオチなのだろうか。
 そしてサブタイトルに全く何の意味も無かった事に気づく。

◆第3話「へんな男とおばけ野菜」◆ (監督:岡本明久 脚本:杉村升)
 町中で、野菜や果物が増殖して巨大化するという異変が発生。課長命令で少年野球のコーチ中だった直人は、 異変の現場に踏み込んだところ、レモンの洪水に飲み込まれ、更に笑うレモンを目撃。おまけに、奇妙なガスを吹きかけられる。 レモンばかりでなく、タマネギ、カボチャ、ありとあらゆる野菜や果物が、勝手に転がり、集まり、ガスを噴出し始める……。
 「課長、これはバイオロンの仕業に間違いありませんよ」
 女刑事の横で堂々と口にしていますが、課長には「バイオリン?」とスルーされており、 警察におけるバイオロンの扱いはどうもハッキリしません。
 街は瞬く間に巨大化した野菜とその発する有毒ガスに埋め尽くされ、ガスマスクを装備して野菜を回収しようとする刑事達だったが、 動き回る野菜に翻弄され、更にはカボチャの吐き出した強酸で倒れる警官、と間抜けな絵面に対して、割とハードな展開(笑)
 この現象はごく一部の地域に留まっている為、早晩収束するだろう、という政府の見解に、「全くこれだから、 見通しの甘い凡俗どもは度し難いッ!」と憤る小学生ボス・まゆみちゃんは、高性能コンピューター・ボーイに、 野菜の流通経路を調べさせる。
 そして勿論、その背後には、バイオロンの恐るべき陰謀があったのだ。
 「見ろ、愚かな人間ども。バイオロンの恐ろしさを思い知ったか!」
 「さっすがギバ様。野菜で街一つを占領しちゃうなんて、もう、とんでるぅ!」
 「やがて野菜が東京を覆い尽くし、毒とガスで誰も住めなくなる。無血占領とは、まさにこの事だ。はっはっはっはははははは……!!」
 秘書に持ち上げられて高笑いするギバ様。いつ見ても、ただれた組織バイオロン。
 前作『世界忍者戦ジライヤ』における山路哲山の吹き替えは非常にぴったりだったのですが、ギバ様の飯塚昭三による吹き替えは全くあっておらず、 どうしてこんな事にレベルの激しい違和感。役者さんが日本語ほとんど出来なくて、適当に口を開閉しているだけだったり、 下手すると英語で喋っている所に強引に日本語あてているのだろうか……といった感じです。
 一昔前なら大月ウルフのイメージなんだろうなぁ、というドクター・ギバの見た目のインパクトは面白いのですが。
 怪しい野菜の流通経路を追った直人と女刑事は、辿り着いたビニールハウスの奥で奇妙な装置を目撃するが、 怪しげなヘッドギアをつけた男の攻撃を受け、女刑事は気絶、直人はビニールハウスの外へ投げ飛ばされてしまう。 男は直人を追って外へ出るが見失ってしまい、その背後に迫る鋼鉄の手。
 ……何故、主人公の登場シーンなのにホラー演出(笑)
 ジバンは超音波発生装置を破壊し、男は逃亡。回収したカボチャを分析した直人は、それが特殊な遺伝子改造を受け、 ある種の超音波によって巨大化、毒ガス噴出などをするようになる事を突き止める。一方、 ペットの文鳥を追って危険地域に戻ってしまった子供達が、地中から伸び上がった、 巨大な電波タワーを目撃した事でバイオロンに捕まってしまう。その事を直人に知らせたまゆみも捕まってしまうが、 アジトに連れ込まれる寸前、地上に発信器を落としていくまゆみちゃん、超優秀。
 バイオロンの計画は、初動作戦で特定地域から住人を追い払った後、そこに建造した巨大な電波タワーにより、超音波を増幅。 日本中にばらまかれた野菜が一斉に増殖し、列島は瞬く間に毒ガスの海に沈む……という恐るべき物であった。
 「じゃあ、後は頼んだわよ。私達、こういうじめじめした所、苦手なのよ」
 子供達に説明するだけ説明して帰る秘書ズ(笑)
 3話にして、物凄く大がかりにして周到かつ有効な作戦なのですが、これがバイオロンのピークなのでは、 と心配になります(笑) 何が優れてるって、既に下準備が完全に終わっているという手際が素晴らしい……!
 作業着から軍服風衣装に着替えた男はいよいよ作戦を最終段階へ移そうとするが、まゆみちゃんの落とした発信器を頼りに、 アジトを見つけ出したジバンが壁を突き破って強襲する!
 「警視庁秘密捜査官警視正・機動刑事ジバン!
 対バイオロン法第一条・機動刑事ジバンは、いかなる場合でも礼状なしに、犯人を逮捕する事が出来る。
 第二条・機動刑事ジバンは、相手がバイオロンと認めた場合、自らの判断で犯人を処罰することが出来る。
 第二条補足――場合によっては抹殺する事も許される」
 手帳を男に突き付け、読み上げながら迫るジバン、というえらいホラー演出。ジバンのメカメカしい喋り方も恐怖を濃くします(^^;
 ジバンはサーチバスターを放ち、光線を浴びた男は、ドロノイドの正体を現す。外道照身霊波光線みたいなものでしょうか。
 「おのれぇ、貴様に邪魔されてたまるか! 日本中を野菜だらけにしてやる!」
 ドロノイドは人間体は地味なおっさん、正体もシンプルかつ茶色という地味なデザインながら、意外や派手なワイヤーアクションを展開。
 「どうしたジバン! 貴様の力はその程度か!」
 しかも何故かあおる(笑)
 意外な強敵だったドロノイドだが、唐突な逆襲から「マクシミリアンソード・ジバンエンド!」でざっくりデリート。 戦闘の導入が思わぬ盛り上がりだったので、もう少し成り行きつけてほしかった所で、勿体ない。
 かくしてバイオロンのアタック・オブ・キラーベジタブル大作戦は失敗に終わり、子供達も助かり、文鳥も帰ってきて大団円。 最後に「野菜食おうぜ!」アピールして啓発的に終了。
 1・2話の酷すぎるイメージが強かったからかもですが、意外と、面白かったです。敵の作戦が大がかりかつ馬鹿馬鹿しかったのが、 良かった。
 改めて3話まで見てみると、悪の組織が大規模な犯罪を行って、メタリックなヒーローが正面からそれを叩き潰す、 というストレートな構図は、初期シリーズへの意識を感じると共に、前年の『仮面ライダーBLACK』(1988) の流れもあるのかもしれません。
 一方で、主人公がストレートに格好いい系ではなく、熱い正義漢だけど抜けた所の多い2.5枚目 (『ジライヤ』主役であった山路闘破寄りといえる)、というのは変身後の鬼畜ロボット刑事とのギャップを狙った面もあるのでしょうが、 どこかちぐはぐ。その辺りが馴染んでくると、またちょっと変わってくるか。

◆第4話「すてきなバラのプレゼント」◆ (監督:岡本明久 脚本:藤井邦夫)
 「お父さん、やっと出来たわ。私、このバラで、絶対にお父さんの仇を討ってあげる!」
 5年前に死んだ父の研究資料を基に、超麻薬バラの開発に成功した少女・篠原ゆきは、そのバラを用いて、 父を陥れたかつての共同研究者達に復讐を開始する。3人の内2人までを超麻薬バラにより肉体が結晶化する奇妙な仮死状態においたゆきだが、 最後の1人の正体は、なんとバイオロンのバラノイドであった。
 眼鏡の中年が真っ赤なバラの怪人に変身するというバラノイド……うーん、どうして『ジバン』怪人はこの方向性なのだろう。 ギバの基地にいるクリーチャーも、親しみとユーモア要素を意図した配置なのでしょうが、今ひとつ、滑っていますし。 とにかく今作は、作中の色々な要素が八方破れで噛み合っていない(^^;
 バイオロンは芥子から精製される麻薬より何百倍も強烈な超麻薬により、人間を奴隷状態にしようと計画していた。だが、ゆきの父、 篠原博士は真摯に超麻薬を医学の為に使おうと考えており、他の3人と決裂。超麻薬の研究資料を隠すも、 3人の手によって殺害されてしまったのである。
 二つの現場でバラの花びらを拾った直人は、基地のコンピューターで篠原教授に辿り着く。 超麻薬バラを研究している危ない研究者として、篠原博士を対バイオロン法執行候補リストもとい怪しい科学者ファイルにリストアップしているお爺ちゃん(笑)
 博士は5年前に死んだが一人娘が居る事を知った直人は篠原家へ向かうが、一足遅く、 共同研究者の最後の1人の元に案内すると言って、秘書ズがゆきを連れ出してしまう。
 「それにしてもあの女達はなんだ? ……まさかギバの」
 木陰に引っ込んだと思ったら、いきなりジバン変身。どうしてこんな、ヒーローの登場シーンに盛り上げる気がないのか(^^;  岡本監督は前作『ジライヤ』で10本演出していますし、取り立てておかしい監督というわけはない筈なのですが。
 まさか、ジバンがどういうメカニズムでどうやって変身するとか、この時点で決まってなかったのかなぁ……(^^;
 レゾンに乗り後を追ったジバンは、バラノイド人間体から5年前の真相を聞かされると共に超麻薬バラを奪われ殺されそうになったゆきを救出。 気絶したゆきを篠原家へ連れ帰り、直人の状態でどうやって誤魔化すのかと思ったら、
 「詳しい事はジバンに聞いたよ」
 で済ませました(笑)
 仮死状態の2人を元に戻す事は出来るのか、という直人の問いに、元に戻す事は出来るが戻す気はない、と答えるゆき。
 「ゆきちゃん、あの2人の体を元に戻し、お父さんを死に追い込んだ罪でちゃんと裁判にかけるんだよ」
 「嫌よそんな事」
 「ゆきちゃん、人間なら、どんな凶悪な奴でも、法で裁く義務があるんだ。そうしなければ、ただの獣になってしまう」
 いきなりの重い社会派展開で、前回が「日本を野菜で埋め尽くせ」作戦だっただけに、ギャップ、というか、 シリーズとしての方向性の定まってなさを激しく感じさせます(^^; 中盤の変化球とかならともかく、 4話までのアップダウンが激しすぎて、バラエティ豊かというよりも、作品としてどこへ進みたいのか、さっぱりわかりません。 描写は猟奇なのに、サブタイトルはえらい軽いし(笑)
 そこへ先輩刑事がやってくるが、バイオロン戦闘員が屋敷を襲撃し、突然の銃撃アクション。 先輩もゆきちゃんをガードして射撃の名手ぶりを発揮するが、秘書怪人に叩きのめされ、ゆきをさらわれてしまう。 屋外に誘き出されてバズーカで吹っ飛ばされた直人は、しれっとジバンの姿で篠原家へ戻ってくるとそれ聞き、 専用バイク・バイカンで追跡を開始。
 バイカンは低い車高に丸みのある外観、黒ベースにワンポイントで黄色という配色が良く、なかなか格好いいデザイン。
 爆撃を切り抜けたジバンの前に現れ、助けを求める、2人のゆき。
 「どちらかがバラノイドの化けたゆきちゃん」
 いや貴方、バラノイドと会った事ないヨ。
 「どっちだ……どっちが本物のゆきちゃんなんだ?!」
 悩んだ末に、超麻薬による結晶化の治療法を問うジバンに対し、1人のゆきは「いいのよあんなやつら!」と切り捨て、 1人のゆきは治療法を答える。それを聞いたジバンは、切り捨てた方のゆきに外道照身霊波光線。
 えーーーーーー?!
 ゆきちゃんが復讐を捨てて心変わりする時間も描写も一切無かったと思うのですが、直人、 自分の説教にそんなに自信があったのか。それとも、治療法を知っているのは本物のゆきちゃんだけ、 というごく単純なお互いの機転なのか(しかしそれだと、ドラマ的な深まりが全く無いのですが)。
 とにもかくにも正体を現したバラノイドに対し、いきなり片言ぎみになって対バイオロン法を読み上げるジバン。
 先程まで凄く流ちょうに喋っていたので、なにか言わされてる感が、怖い。
 今回は読み上げている最中に相手の攻撃を弾くという演出が入り、駆けつけた先輩に本物ゆきちゃんを託して、戦闘開始。 バラノイドの猛攻に苦戦するも、本日も突然逆転。
 「第二条補足――場合によっては抹殺する事も許される」
 どう見ても、最初から逮捕とかする気ないけどな!
 人間なら、どんな凶悪な奴でも法で裁く義務があるけど、バイオロンには人権が無いからシカタナイ。
 かくてバラノイドはジエンド。ゆきは結晶化した2人を血清で元に戻し、2人は裁判で罪を認めるのだった。そしてゆきと直人は、 人類にはまだ早すぎた……と超麻薬バラに関する篠原博士の資料を焼き捨てるのであった。
 「直人さん、どうしてジバンは、貴方しか知らない事を信じてくれたのかしら」
 「え? そ、それは……」
 「まさか……直人さんがジバンじゃ」
 4話にして早くも、ばーれたーーー。
 「しっ。ゆきちゃん、それは言わぬが花の秘密だよ」
 ……え、それ、格好いいつもりなのか、直人。というかスタッフの中で一応、格好いい扱いなのか直人。いや一応、 主役なので格好いいに越した事はないのですが、ここまで特に格好いい描写無かったのに、急に洒落っ気とか出されると、 反応に困ります(^^;
 シナリオの展開、キャラ描写、悪くはないけど統一感のないアクション、 と『ジバン』のどこへ行きたいかわからない感じが凝縮されたエピソード。
 例えば後年の『特捜ロボジャンパーソン』も序盤は暴走&迷走していましたが、立ち上げ4話で、 これだけ腰の据わってない作品もなかなか珍しいような(^^;
 ドラマとしては、復讐を望む少女の葛藤部分が全て吹き飛ばされたのが致命的。
 ゲストキャラのゆきは、どこかで見覚えのある顔だなぁ……と思ったら、翌年『特警ウインスペクター』第7話(藤井邦夫脚本)に、 ダメオヤジを支える娘役で出演していました。
 調べたら他にも『仮面ライダーBLACK』『超獣戦隊ライブマン』『高速戦隊ターボレンジャー』『超人戦隊ジェットマン』 『特救指令ソルブレイン』『特捜ロボジャンパーソン』『超力戦隊オーレンジャー』と、前後にゲスト出演多数。道理で落ち着いた演技。

◆第5話「三大メカ出動!アイドルロボを救出せよ!」◆ (監督:宮坂清彦 脚本:杉村升)
 ノーベル物理学賞と平和賞を同時受賞した板倉博士が海外遊説から帰国する。博士が作り、 世界的に子供に大人気のパンダっぽいマスコットロボット・ハリーは高度な人工知能を搭載しているのだが、 どうやら階段を降りられないらしく、そんなハリーくんを抱えて走る博士(笑)
 「可愛いじゃないか! あのハリーってロボット!」
 ハリーは可愛いアピールをするならまゆみちゃんに喜ばせれば良かったと思うのですが、何故かまゆみちゃんよりはしゃぐ直人。 そして、ハリーに搭載されているのが自分達と同じ未来世代コンピュータであると分析し、 まるで兄弟が出来たみたいだと喜ぶボーイを初めとするサポートメカ軍団(車、バイク、ヘリ)。 その勢いでハリーにアクセスを試みようとするボーイを止める直人、警官らしく良識のある所を見せました(笑) というか、 ボーイが自由すぎて怖い。
 ところが、そのボーイがハリーと博士の異変を察知する。研究室からの迎えを装った車に博士が拉致されそうになり、 救出に向かったジバンはレゾンで体当たりを敢行。
 博士ごと殺す気か。
 「やはりバイオロンか」って言えば何しても許されると思うなジバン。
 警察もやってきて怪人タコノイドは退却。メディカルチェックの結果、2時間以内にハリーを修復しなければいけないが、 博士は催眠ガスで12時間は意識を失っている為、仕方なくジバン、ハリーを誘拐(笑)
 直人の手によって無事に修理されたハリーはサポートメカの数々の武装を目にして、
 「どんな悪い人でも話せばわかるじゃないか」
 と、地下組織の存在意義にきついダメ出し(笑)
 まあこの地下組織、いっけん非合法のようで、実は闇の公権力の手先なので物凄いタチ悪いのですが!
 どうやら博士が研究しているエネルギー蓄積チップが何者かに狙われているようだ、と博士をガードする警察だが、 バイオロンの強襲で博士の身柄を奪われてしまい、それを目撃したハリーは車を追っていく。
 秘書ーズ、よくわかりませんがヒトデ状の物体から人間体へと、凄い変身が出来る事が判明。
 そして直人は、「意識回路ストップ」と、偽装システムを丁寧に作りすぎたのか、催眠ガスで倒れてしまう困った仕様である事が発覚。
 博士を追うハリーとコンタクトを取るボーイだが、「君たちみたいな頭からっぽの武闘集団とは手を取り合えない」と協力を断られてしまう(笑) 
 大枠では“主人公達の善意と正義を信用せずに協力を拒むゲストキャラ”のパターンなのですが、 そのゲストキャラが嫌な奴でも無ければ何か背景や信念を抱えているというわけでもなく、 プログラムされた言葉を繰り返すあざとい外見のプロパガンダマスコットロボ、なので、何だか酷くねじくれ曲がった事になっています(笑)
 直人が役に立たないので、まゆみちゃんの指示で発進するメカ軍団。レゾンはハリーを発見し、ハリーが追っているのが、 ハリーが迷子にならないようにと、板倉博士が歯の中に仕込んでる無線発信器の電波である事を知る。
 マスコットロボットの為に自分を改造するとか、板倉博士、結構クレイジー。
 なおも協力を拒むハリーはレゾンに花火を投げつけて逃走。まゆみちゃんにハリーを見失った理由を問われて、 「ハリーに花火を仕掛けられて頭にきました」って、サポートメカ軍団がフリーダムすぎる。
 ハリーはとうとう博士を発見し、バイオロンに対して話し合いで博士の解放を求めるが、度重なる攻撃を受けて大ピンチに。 そこへジバンとロボ軍団が飛び込んでくるが、博士を人質にされて滅多打ちにされてしまう。
 「どうしたらいいの、このままじゃ、みんなやられちゃう。……そうだ――戦うんだ。戦うしかないんだ」
 あ、あれ?
 ハリーは不意を突いてタコノイドに電撃を浴びせ、ジバン反撃。タコと秘書ズは外へ逃げるが待機していたヘリの爆撃を喰らい、 タコをジバンにけしかけている内に、秘書ズ逃亡。タコは毎度お馴染みジバンエンドでずんばらりん。
 「博士ぇ……ぼくは、武器を使ってしまった。ごめんなさい」
 「いいんだよ、ハリー、それでいいんだ」
 えぇーーーーーーー。
 暴力反対を訴えまくるマスコットロボットに、怪人がひるむレベルの高出力のスタンガン仕込んでいた上に、その行為を全肯定。 結局、命あっての物種、という意味では間違っていませんが、物語としてはどうなのか。結論として今回のテーマは、 「話し合いで解決なんて幻」という事でいいのか。要するにハリーは平和大好きなマスコットロボの皮を被った、 自爆装置内蔵の護衛ロボだったという事か。全てはフォーピース、ではなく、フォージャスティス。
 「僕は、もう、だめ……機能が、停止する……さよなら……」
 駆けつけたまゆみちゃんらの前で沈黙するハリーだったが、メモリーチップが無事だから大丈夫、と安定のオチ。
 シンプルにバカシナリオだった3話はともかく、1・2・5話と、杉村さんが何を書きたいのか、この作品はどこへ行きたいのか、 さっぱりわからないのですが、シンプルな構造に戻したのに、どうしてここまで混乱しているのか『ジバン』。 基本構造をシンプルにしたが故の迷いなのかもしれませんが、それにしても、ちょっと酷い(^^;
 2話の「ジバンを誘き出そうと警察に時限爆弾を仕掛けたけどジバンが出てこないのでミサイルを撃ってみた」も凄かったけど、 今回の「マスコットロボットが暴力反対を訴えるも誰も話を聞いてくれないので加速をつけて殴ってみた」も大概。
 高名な科学者が出てくるとナチュラルにクレイジー、という点では凄く杉村脚本ですが。
 サブタイトルに大きく扱った割にはメカは目立たず(出動はしたので嘘はついていませんが)、 特にヘリはほとんど役に立ちませんでした(^^; まあどうしてもヘリは別撮りのミニチュアや合成になるから仕方ないですが。 その中で、無人の車やバイクに演技させるのは面白かったです。面白かったけど、エピソードの焦点が散漫なので、 メカ回ならもっとはっきりとメカ回をすれば良かったのに、という内容。
 例えばハリーの平和主義を聞いてメカ軍団が自分達の行動の正当性に悩むとか、物語も色々と転がせたと思うのですが、4話同様、 綺麗にすっ飛ばされました。敢えていえばあれです、「ノーベル平和賞とはいったい」を問う、物凄い風刺作。

◆第6話「割れた恐竜の卵のひみつ」◆ (監督:宮坂清彦 脚本:高久進)
 前作『世界忍者戦ジライヤ』で2本書いた杉村升にスタートを任せたというのは、ライター陣の代替わりを意図しての事だと思われますが (『ジライヤ』も当初、中原朗がメインを務める予定だったらしい)、藤井邦夫に続いて、高久進が登場。
 高久先生のノリなのか、作品全体としてそういう方向に舵を切る事にしたのか、秘書ズの言動と行動がギャグ寄りとなり、 バイオロン基地のクリーチャーの出番も増加。言動はともかく、恐竜の卵だと思ってダチョウの卵を盗んでくるなど、 秘書ズが一気に頭悪そうな感じになったのは、若干心配。もともと頭悪かった刑事達のやり取りもより頭悪くなり、 全体に緩い感じが増しました。
 今回バイオロンが狙っているのは、とある動物園に密かに隠されている恐竜の卵。ドクター・ギバは卵を入手・孵化させ、 甦った恐竜をバイオ技術で改造、巨大恐竜により人間社会を破壊しようと目論んでいた。
 「これが思い上がった人間に対する、俺の復讐だ」
 ……突然、ギバ様の動機が判明がしましたが、1話で語ってましたっけ……?
 泥棒が入ったとの通報を受け、動物園に向かった直人と先輩だが、既にそこにはバイオロンの戦闘員が入り込んでいた。 直人と先輩は戦闘員と生アクションを披露するが、不意打ちを受けて倒されてしまう直人。
 戦闘員にガス吹きかけられた上に、上段蹴りくらって気絶した主人公、はもしかして特撮ヒーロー史上初では。
 銃を抜いた先輩はさんざん威嚇射撃をした後に「手向かうと撃つわよ」とわけのわからない事を言い出すが、 増援のサブマシンガン部隊に追い詰められてしまう。先輩刑事の命、風前の灯火……というかここでリタイアしても特に問題は無い気がする!  と思ったその時、ジバンが登場して先輩刑事をガード。
 ジバンはこのまま、直人が間抜けに倒れる→ジバンが格好良く現れる、というパターンになるのかしら。
 その後、園長からこっそりと保管されている恐竜の卵を見せて貰う直人だったが(物陰から戦いを覗いている時にジバンの正体だと知った?)、 飼育係として入り込んでいたハゲタカノイドによって、卵は奪われてしまう。
 ハゲタカは首が長くて覗きが顔ではなく首の根元の方だったり、両腕が極端に大きかったり、と面白い着ぐるみ。
 直人は物陰に引っ込んでジバンに早替わり。ジバン基地からボーイとまゆみちゃんがアメリカの軍事衛星に違法アクセスして映像をチェック、 という変化をつけてのトラック追跡は『ジバン』らしさを出そうという意図が見えて、面白かったです。
 卵を強奪したバイオロン部隊を追い詰めたジバンは、物凄く宇宙刑事なテーマ曲と共に戦闘員を次々と滅殺。が、 調子に乗ってデストロイしている内に、撃ち殺した戦闘員が卵の保存ケースの上に落下して、卵が割れてしまう。
 じ、ジバンさん?!
 …………まあとりあえず、目前の敵の抹殺が最優先事項なので、飼育係にサーチバスター。
 この、丸わかりの上に隠してもいない相手(既に目の前で一回変身済み)にサーチバスターを撃つ必然性は全く感じないのですが、 当初はもっとこう、社会に潜むバイオロンを炙り出して闇の底で抹殺していく、みたいな予定だったのかなぁ(^^;
 構造としては、直人が敵の前で変身できないので、その代わりに敵が変身するという、クライマックス入り口の代用なのですが、 物語がそこ(サーチバスター)に繋げる形で書かれていない(正体判明する所で盛り上がるという流れになっていない)ので、 今のところ正直うまく行っていません。
 ハゲタカは空中からの毛針攻撃でジバンを追い詰めるが、撃ち落とされてジバンエンド。
 卵を奪われてがっくりと落ち込む園長の元へ、割れたはずの卵を持ってやってくる直人。実は割れた卵は、 いつの間にか直人がすり替えていたダミーだったのである。バイオロンは卵が割れたと思いこんでいるからもう動物園が襲われる筈もない筈…… 直人さん頭脳派ぁ! みたいなオチなのですが……えー……本当は、あの時割れたんですよね? 今、博士に渡した卵は、 急遽アジトでボーイに偽装させたダミーなんですよね? 博士も「孵化するかわからないけど頑張ってみます」と言っているし、 夢があるからいいじゃないか、みたいなオチですよこれ。
 2話続けて、子供の好きそうな要素を軸にしながら、パンダ似のマスコットロボットは高圧スタンガンを放ち、 恐竜の卵はおっさんの夢にしか繋がらないという、『ジバン』クオリティ。 何故かラストはナレーションが秘密捜査官の宿命をハードボイルドに語りましたが、どうしてそうなった。

◆第7話「恐怖のハクションおじさん!」◆ (監督:小西通雄 脚本:藤井邦夫)
 直人の知り合いの少女・ミコが大切にしていた古い人形が、飼い犬にくわえらえて外に放り出された所をどぶ川に投げ捨てられた挙げ句に、 人間社会の雑菌の集まったサンプルとして秘書ズに回収され、バイオ怪人・カゼノイドの素体となってしまう。
 今回のギバ様の目的は、病原菌の塊ギバウイルスの散布実験。風邪と似たような症状で油断していると、 24時間で確実に死に至る殺人ウイルスを抵抗力の弱い子供達を対象にばらまき、 その成功の暁には日本中にバイオテロを決行しようという、恐るべき計画であった。
 変なモチーフなのに割と格好いいカゼノイド(目に見えないモチーフだから、というか)は、 素体となった人形そっくりの服装の人間体となると街に繰り出し、子供達の間にウイルスをばらまいていく……と7話にしてようやく、 怪人の特徴とバイオロンの作戦が繋がりました。
 それにしてもギバ様、秘書ズ人間体はタイトミニの若い女なのに、 一般怪人の人間体は軒並みおっさんというのは趣味が丸出しすぎて、 そのうち反乱を起こされてもフォローできません。
 街で次々と子供達が倒れ、ボーイがウイルスを分析。その結果、感染者を24時間で死に至らしめるギバウイルスの特性がジバンの知る所となる。 というかボーイ、何の根拠もなくいきなり「ギバウイルス」とか名付けて、バイオロンの責任にするな(笑)
 ジバン一味は絶対に本編になっていない所で、
 「おまえはバイオロンだな!」「え、な、なんですかバイオロンって?」「サーチバスター! …………あれ? バイオロンじゃない?」 みたいな事を繰り返していると思われます。
 サーチバスターは正体を見抜く為の装備というより、誤解によるデリートを防ぐ為の安全装置。
 ……と思うと、凄く人道に配慮している気がしてくるから不思議だジバン!
 ウイルスをばらまいているとおぼしき怪しい男(カゼノイド人間体)を目撃した刑事コンビは、 先輩がわざとらしいプラカードをかかげて囮になり、その後を直人が尾行するという作戦を行うが、 子供の相手をしている内に先輩を見失う直人(笑) その間に今日もバイオロンに抹殺されそうになった先輩は、華麗に射撃で反撃。
 タイトスカートをちょっとまくって腰を落として、スキャットをBGMに狙撃するとか、元ネタありそうですが、なんだろう(笑)
 2話の時はいきなり相手の胸に弾丸撃ち込んでいたのが、靴の踵を狙ったりと、先輩の描写も少しずつ補正はしている模様。 1・2話の印象が悪すぎて、受け入れられるようになるで、まだしばらく時間かかりそうですが(^^;
 正体を現したカゼノイドにウイルスを吹きかけられ、先輩が始末されそうになった所で、ジバン登場。 ダメージを受けて逃亡したカゼノイドは、人間の姿でたまたまミコちゃんの家(家族経営の印刷所で、外へ向けてシャッターが開いている) に転がり込んだ所、ミコちゃんの看病を受ける。
 「ミコちゃんか……変だなぁ……前にもこんな事してもらったような気がする……」
 それは、素体となった人形に宿っていた想いなのか。人情の温かさに触れたカゼノイドは、自らの作戦活動に躊躇を覚える。
 (子供があんなに優しく、可愛いものとは知らなかった……)
 だが、秘書ズに制裁を受け、ビンの中に閉じ込められる事に。
 「まさにゴミね」
 「そう。あんたは汚いバイ菌なのよ」
 小さくして閉じ込めたカゼノイドを罵る秘書ズが、とてもいい感じ(笑) この手のポジションはだいたい、 演技があまりにもだったり容姿が……だったりする事が多いですが、『ジバン』秘書ズは悪くないと思います。 割と出番があるのでしっかりキャスティングしたのか、割といい感じなので出番が増えたのか、因果関係はわかりませんが。
 ギバ様に消されると脅されたカゼノイドは再びウィルス散布を行うが、一度生まれた優しさが再び顔を出し、 あと3時間で最初の被害者達が死ぬという現実に苦悩する。
 「ミコちゃん、おじさんはどうすればいいんだ……」
 悩めるカゼノイドは再び印刷所を訪れるが、そこで、その朝ウイルスの犠牲にした少年が、ミコの兄だったという事を知る。 事ここに至って、たとえ自分が消え去る事になっても子供達を救おうと決意するカゼノイド。
 「このままでは、俺の体は、ギバウイルスで砕け散る。ミコちゃんのお兄ちゃんや、みんなを助けるには、 ジバンに倒してもらうしかない」
 最初の被害者達の死亡まで、タイムリミットは後1時間……くしゃみをしないと、 体内で自動的に発生していくギバウイルスにより自壊してしまうカゼノイドは、その苦しみに耐えながら、ジバンの到来を待っていた。 その裏切りに激怒したギバは、カゼノイドをただの戦闘モンスターに変えようと、秘書ズを放つ。そしてカゼノイドを探すジバンは、 遂にその姿を見つけ出す。
 「ジバン……早く俺を倒してくれ。俺を倒して、ミコちゃんや子供達を助けてやってくれ」
 対バイオロン法を読み上げるジバンに、自ら抹殺を望むカゼノイド。
 「カゼノイド……」
 「頼むジバン……早くしないと、俺の体は、砕け散って……」
 ここでジバンがカゼノイドを探す目的が全く提示されていなかったのが、非常に惜しい所。ジバンの目的が 「カゼノイドから抗体を手に入れる」なのか「カゼノイドを倒す」なのかの目的設定が先に明示されていれば、 戦闘に至る流れで選択とか葛藤が生じたわけなのですが。その為、秘書ズがカゼノイドを獣に変えて戦闘になるのも、 そもそもカゼノイドが撃破を望んでいた為、「抵抗がある/ない」程度の違いしかなく、惜しい、実に惜しい。
 「第二条補足――場合によっては抹殺する事も許される」
 拳を固めたジバンは反撃に転じ、マクシミリアンでジバンエンド。爆発の後には素体となった人形が残り、ジバンが手にすると、 それも消滅。何故かその後にギバウイルスへの抗体が残り、空に浮かんだカゼノイド人間体のイメージ映像がそれを説明。 その投与により子供達は無事に回復するのであった。
 ここまで全く触れないので、怪人倒したらなんとなく治ってしまうパターンなのか……と思っていたら、 一応「抗体」という概念はあったらしく、惜しい、ますます惜しい……。
 なお子供達に紛れて先輩もパジャマ姿で復帰。先輩の立場からすると、 後をつけてガードしてくれていた筈の直人がよそ見していた為に死にかけたわけですが、特に根に持っていないようなので、 器だけは大きい。
 「カゼノイド、おまえはなぜ、子供達を……」
 ナレーション「直人は信じた。バイオロンの怪物にも、心を持つ者がいることを」
 ……いや、殺りにくくなるから、そこは信じない方がいいかも(笑)
 物語の中心に「怪人」を据えると、敵の作戦−ドラマ−戦闘がスムーズに繋げられるので締まりやすい、という見本のようなエピソード。 他人を思いやる気持ちを持ってしまい苦悩する怪人、を軸に転がす事で、7話にしてようやく、話が落ち着きました。 笑いのノリは前回とまた変わったので、全体としてはまだ安定していないですが(^^;
 惜しむらくは「病原菌と抗体」という、もう一つの軸に出来る要素について、全て後出しな点。その為、 後半のジバンの行動に繋がりが薄く、実に惜しい。
 また、怪人が心を得たのは少女が大切にしていた人形を素体にしていたから(かもしれない)、とする事で、 前後の設定と矛盾を来さないようになっており、藤井邦夫らしいオカルトとメルヘンが良い方向に出ました (最後に顔が空中に浮かんで解説したのは悪い方向に出たけど(笑))。カゼノイド人間体がおままごとの家に視線を向けるけど、 それ以上くどくどとは劇中で語られない、というのも良かった。
 ただこの展開だと、途中の「大事なお人形を無くしちゃったの」「よーし、お兄さんが新しいのを買ってあげよう」 「やったー!」はまずかったと思うのですが(^^; そこは、「あの人形じゃなきゃ嫌なの」ではないのか(笑)
 そしてよく考えると、かわゆい少女ボスお休みの回に他の女に粉かけている直人さん、 油断も隙もありゃしないぜ!(おぃ)

◆第8話「デコボコ!東京モグラ地図」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)
 配信『ジバン』視聴のモチベーションにしている扇澤脚本回ですが、今回は特に面白くはありませんでした。面白くない、というか、 まだ“らしさ”が無い。実際、デビュー作(『超人機メタルダー』第11話)を除くと、 『メタルダー』『ジライヤ』での担当回は『ウインスペクター』以降に比べるとそれほどあくが強くはなかったのですが、果たして一体、 どの辺りから濃くなるのか。まあ『ジバン』の間はそれ程ではない可能性もあるけど(^^;
 今回のギバ様の目的は、ズバリ、地上げ。
 食べた者に永遠の命をもたらすエタナルの果実、しかしその樹木を育てる為には莫大な地殻エネルギーが必要。そこでギバ様は、 地殻エネルギーが日本で一番集まっている地点を探し出し、その周辺一帯の土地を不動産会社を隠れ蓑に次々と買収していたのであった。
 ギバ様脳内イメージにおけるエタナルの樹を中心にした俺の楽園、でバルコニーでデッキチェアに揺られているという相変わらずのデカダンぶりですが、 ギバ様だから仕方ない。
 ところが、不動産会社の社長にすり替わったモグラノイドが、その社長に強い恩義を感じている社員に怪しまれた事から、 計画に支障が生じてしまう。男の話を聞いて事態に疑いを持ち、捜査を始めた直人は社長室で獣の毛を拾ったふりをしてかまをかけるなど、 8話にして、首の上に乗っかっているのが飾りではない事を証明しました。
 正直、改造の副作用で、バイオロンと殴り合う時しか脳が機能しないのかと疑っていました、ええ。
 直人のハッタリに乗せられて襲撃してきたモグラノイドは、モグラモチーフとしては珍しく、鼻が前に突き出ておらず顔が横に広い、 という面白いデザイン。そして、物凄く華麗に飛びまくる。モグラなのに。
 吊りを多用してくるくる回してみたり、戦闘シーンは結構力入っている今作なのですが、肝心のジバンが無言でデストロイ系なので、 今ひとつ、盛り上がりに欠けるのが惜しいところ。しかもデストロイ系の割にはそんなに強そうに描写されないですし。 アクション的にはこの進化形が、圧倒的デストロイのジャンパーソンになるのかもですが(笑)
 不動産会社が買収している土地を調べた直人は地殻エネルギーの蓄積に気付くが、その頃、社長を疑う社員親子が会社に潜入。 社長(モグラノイド)が隠し通路に入っていくのを目撃して後をつけるが、バイオロンに捕まってしまう。 親子を探す直人もその隠し通路に気付き、地下でエタナル生育の為の装置を操っていた社長と遭遇。詰め寄るが、 落とし穴に落とされる(笑)
 更に、手榴弾を投げ込まれる(笑)
 が、ジバンになって浮上し、サーチバスター。親子と本物の社長を人質にした秘書ズが現れ、一度は危機に陥るが、強引に突破。 なんか人質を気にせず攻撃したように見えましたが、頭が(以下略)だから仕方ない。
 今回、秘書ズが空中攻撃や謎の光輪などを使い、初の直接戦闘。そしてモグラは、ドリルとパワーアームで追加武装に、 胸部が開いてビームまで発射と、無駄に盛りだくさん。何故、モグラがこんなに贔屓されているのか(笑)
 穴掘り攻撃などでジバンを苦しめたモグラだったが、地中移動をサーチして射撃され、ジバンエンド。
 「限りがあるからこそ人は愛し合い、命はまばゆく輝くのだ」
 と、急にためになる事を言う機能を発動したジバンは、エタナル生育施設を破壊し、かくてギバ様の、 永遠の命と俺の楽園でうはうは別荘ライフ計画は、阻止されるのであった。
 何故かすり替わり後も生かされていた社長も助け出されて大団円になるのですが(この辺りに、整合性をつけようとしていないのは、 後の扇澤脚本から考えると粗すぎる)、バイオロンがけっこう無茶な土地購入や立ち退きの為の嫌がらせなどしていそうで、 明日からの経営が大変そうです。
 DEKOBOKO不動産の明日はどっちだ!
 前回に続き、作戦と怪人の能力がわかる範囲で繋がっている他、家族愛などの軸は放り投げられずに最後まで使われ (5話までが放り投げすぎでおかしかったんですが)、コメディ部分のバランスも取れてきて、方向性としては落ち着いてきました。 今回のエピソードが特に面白かったわけではないですが、7−8話でようやく、作品として一定の基準が出来た感じ。
 ギバ様の、基本その日の思いつきで、自分の欲求の赴くままに何となく作戦を開始するが、 科学力は超凄いので何となく作戦の初動は成功してしまうのは、段々面白くなってきました(笑)
 ギバ様はあれです、組織のトップに立っているのが最大の弱点のタイプ。
 今回の特色として、直人が急に頭を使いだしましたが、一応刑事ものなので、今後はこういう要素も入れていこうという感じでしょうか。 むしろこれまでが脳が動いてなさすぎだったので、これは歓迎したい方向性です。次回を見ないと、 「扇澤脚本回でだけ頭を使う」という可能性もありそうで怖いですが(笑) 逆に、こういう積み重ねがあれば、 6話のオチの卵すり替えも納得できる範囲に収まったわけなのですけど、順番が逆で惜しい(^^;

→〔その2へ続く〕

(2014年6月7日)
(2019年12月27日 改訂)
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