■『特救指令ソルブレイン』感想まとめ9■


“そうさ 俺たち
ソルブレイン ソルブレイン”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特救指令ソルブレイン』 感想の、まとめ9(49〜53話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第49話「大好き!悪い子」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升/浅附明子)
 ベンチで亀さんが昼寝中、子供達に囲まれてお話をせがまれたドーザーは、過去の事件について語り出す。
 「こないだ起きた事件の話をしよう。その子に会ったのは……」
 と、回想にして本編へ。
 パトロール中(?)に、もう学校が始まっている時間だというのに、『ジンギスカン』の替え歌を大声で唄いながら公園で 落書きしている小学生に出会うドーザーと亀。気軽に「今度は本部に遊びにおいで」と言ってしまったのが縁で、本当にその2時間後に、 同級生の女の子・真理子を連れてやってくる、悪ガキ・義彦。
 そろそろソルブレイン本部は、本格的にセキュリティを考えた方がいいと思います。
 連日、授業中の時間にも関わらず学校を抜け出して本部に遊びにやってくる二人だったが、ある日、ぱったりと来なくなってしまう。 最初はほっとしていたものの、何となく不安になってきたある日、真理子が一人でやってきて「大変だ」とドーザーを連れて行き、 それに玲子もついていく事に。
 玲子とドーザーが真理子に連れて行かれた教室で見たのは、なんとすっかり優等生になった義彦の姿であった。真理子によると、 母親に塾に通わされるようになってから、義彦は人が変わってしまったのだという。最初に催眠術をかけ、勉強の前に社会道徳を 教えるという塾を一応調査する玲子とドーザー。訪れた英心塾の塾長は、自分の催眠術により、いずれ日本中の子供達が公衆道徳と 規律を守るようになるだろう、と豪語する。
 この捜査シーンでは、玲子×ドーザー×小学生、という実に珍しい組み合わせ。
 ドーザーと真理子の心配はともかく、表向きは良い事に思えた道徳催眠術であったが、クラスの多くの親が義彦くんに続けとばかりに 我が子を英心塾に通わせだした事で、少々事態がおかしくなっていく。道徳と規律をガチガチに守るようになった子供達はそれを周囲にも 押しつけ始め、大人達のマナー違反に集団抗議。ついには違法駐輪の自転車を勝手に片付け始め、それを通りすがりの警官に止められる、 という不思議な構図に発展。同じく通りすがったソルブレインもそれを止めようとして、
 「ソルブレインは悪い奴らの味方か!」
 「ルールを守らなくていいの?!」
 と言われてしまう始末。
 事ここに至って英心塾に捜査のメスを入れるソルブレインだが、塾は既にもぬけの殻。塾長の飯村が偽名であり、 その正体が城南大学の神経外科の教授、柴田博士である事が判明するが、大学に聞くと博士は一ヶ月前から行方不明となっていた。 それも、研究開発中だった“人間の良心を増幅させるマシン”を持ち出して……!
 装置は、人間の精神に影響を与えてより秩序的な存在を作り出す事が出来る機能を持っていたがまだ未完成であり、 長時間ないし強いパワーで使用すると、人間の頭脳を破壊してしまうという。

 またそれか

 義彦をどうしても元に戻してもらおうと、夜逃げする柴田博士のトラックに乗り込んだ真理子は博士によって強制的に装置に かけられそうになり、彼女が最後にかけてきた電話から、急いで渋谷付近を捜索するソルブレイン。一方、博士について調べる為に 柴田家へ向かった大樹は、博士がみどりという孫娘を交通事故で失っていた事を知る。
 祖父(柴田博士)に駆け寄ろうとして赤信号を飛び出して事故に遭ったみどり……それ以来博士は、 孫も事故も自分自身も憎む事が出来ず、彼女が交通ルールを厳格に守っていれば、というその思いだけで研究に没頭し、 その心はもはや狂気に蝕まれていた。
 日本中の子供達を、ルールを厳しく守るように染め上げる――
 真理子の姿にみどりを重ねた博士は彼女に最大出力で装置を作動させようとするが、博士がついていた小さな嘘 (催眠術ではなく機械を使っていた)が許せずに外へ飛び出した義彦とドーザーが遭遇し、間一髪でドーザーが廃工場へと踏み込む。
 ここで、ドーザーと義彦が遭遇する所から、OPテーマが入るのは格好いい。
 が、何故か人間の良心を増幅させるマシンからビームが迸り、直撃を受けたドーザーは、人工頭脳に狂いを生じてしまう。 そこへ続けて駆け付けたブレイバーらが登場し、博士の身柄をあっさり確保。格闘時の衝撃でマシンは大爆発し、「みどり!  みどりぃ……!」という博士の狂気の叫びが虚しくこだまするのであった……。
 んー、折角、OPテーマを入れて“今回のヒーロー”としてドーザーを扱ったのだから、博士を捕らえるぐらいの活躍はしてくれても 良かったのに。結局そこをブレイバーにさらわれてしまうのは大きく不満です。ブレイバーはその後の爆発から子供達を守るぐらいでも 良かったような、或いは逆でも良いのですが、ドーザー、突入するまでは格好良かったのに、人間の良心を増幅させるビームを食らった 後は、一切見せ場無し。
 なぜかスポットを当てたキャラが活躍しきらないという今作の悪癖が、最後でまた出てしまいました。
 まあ、“人間の良心を増幅させるビーム”を受けて影響が出る事で、ドーザーの人工頭脳が“より人間らしく成長している” 事を演出したかったのかもしれませんが、わかりにくかったですし、ドーザーの見せ場優先で良かったと思います。……ただでさえ 普段から、見せ場あまり無いわけですし。
 こうして事件は解決、ドーザーのお話は終了し、子供達は解散していく。彼等を見送ったドーザーは、義彦くんと真理子ちゃんに 思いをはせる…………て、どうして最後、義彦くんと真理子ちゃんは私の心の中で生きている、 みたいなオチだったのでしょう(笑)

 もしかして:マシン壊したので義彦くんは元に戻らなかった

 ……うわー、凄まじくブラックなオチだ(^^;
 「ドーザーが過去の事件を語る」という一風変わった構成でドーザーに焦点が当たったのは良かったのですが、 使いすぎると頭脳破壊・大人と子供のトラブル・狂気の科学者、と定番のネタを、構成で誤魔化しただけ、という感は否めません。 さすがに“使いすぎると頭脳破壊”は用いすぎでしょう(^^; クラステクターに始まるレスキューシリーズのお家芸、 とはいえ。
 一方で、この構成により、3話では亀吉がさぼって公園で寝ている間に街に出たら大騒ぎで不審ロボット扱いだったドーザーが、 同様の状況でもどっしり構えて、子供達にお話をせがまれる程に慣れ親しまれており、そして見事にお話してみせる、という成長を 描いたのは非常に良かった点。
 惜しむらくは、小学生への語り、という手段を用いたからには、なにか教訓めいたオチをつけるなど、“手段の意味”を プラスアルファして欲しかった事。
 そこで一ひねりが足りず、手段が手段としてだけ終わってしまったのは残念でしたが、ドーザーものとして、 なかなか面白いエピソードでした。しかしここでこのドーザー話を持ってきたという事は、ロボット刑事のアイデンテティ問題については、 今作も踏み込みそうで踏み込めきれずに終了かなぁ……どだい、脇で扱うには、重すぎるテーマなのですが。

◆第50話「希望を生んだ魔犬」◆ (監督:小笠原猛 脚本:石山真弓/宮下隼一)
 いやホント、この連名祭は何なのでしょう。
 ジョギング中に倒れて念のために入院させた患者が、一晩で体内の血液が失われてミイラ状態の死体となる、という怪事件が発生。 死体の外傷は、犬のものと思われる噛み跡のみ。血液免疫学の世界的権威である岡本博士に傷跡とこの奇妙な血液の症状について調査を 依頼するが、実は事件には岡本博士そのものが関わっていた。
 博士の研究所には、政情不安に揺れるラザニア共和国の反体制派から資金が流入しており、博士は彼等が切り札とする細菌兵器の抗体の 研究を行っていたのである。事件の被害者は、この抗体作成の為に微量の細菌を投与された犬に噛まれたものであり、 研究所に入り込んでいる反体制派のエージェント、Mr.Xとその部下は、研究所から逃げ出した犬を捜し出すべく活動していた。
 物語後半で研究所を怪しんだソルブレインの調査で、あっさりと資金の流れが割れるのですが、そんな肝心な事があっさりバレるのは、 反体制派が日本を舐めていたのか、クロス2000が優秀すぎるのか。
 検体となった犬は外で子犬を生んでおり、それを捨て犬と勘違いした博士の息子ショウタに、餌を与えられていた。ところが、 子犬を攻撃する敵と勘違いされたショウタは、母犬(検体)に噛まれてしまう。細菌によるミイラ化が進行し、病院で緊急輸血を受ける ショウタ。連絡を受けた博士は、検体と子犬、ショウタの関係に気付くと、研究をまとめたディスクを胸に、Mr.Xの目をかすめる為に、 (最低でも)2階から窓の外へ大脱出。
 ショウタの命を救うべく抗体を持った犬を探すが、犬の親子を見つけたところでMr.X一味に捕まってしまう。
 拳銃を持った相手に体当たりとか、割とアクティブな博士であったが、一味の投げた手榴弾で犬は 消し飛んでしまう。駆け付けたソルブレインによってMr.X一味は逮捕されるが、ショウタを救う抗体はもうない……だがその時、 検体の犬が生んだ子犬が博士の目に留まる。抗体は無事に子犬に遺伝しており、博士は子犬から抗体を検出して息子の命を救うとともに、 反体制派の作り出した細菌兵器を無効化する新薬を作り出すのであった。
 ソルブレインが犬の救出に間に合わないのは衝撃展開なのですが、只でさえ低水準のヒーローポイントを削ってまで、 犬を吹き飛ばさなければならなかったかというと、甚だ疑問。ショウタ少年が飼いたがって世話をしていた子犬が少年の命を救うという ドラマ性を強調したかったのかもしれませんが、子犬がいかにもキーすぎて「そんな手が!」的なインパクトもなく、 いたずらにヒーロー性を落とすと同時に、犬に酷い事をしただけになったと思われます。
 酷い事したほどの効果はない。
 全体的に話のテンポも悪いのですが、何がどう悪いのかというと複合的な問題なのですが……シンプルな点を一つ挙げるとすると、 物語の展開がのっぺりしている。正味20分のエピソードの中にリズムが無くて、ただダラダラと起きた事件を追っているだけ になってしまっていて、つまり演出も脚本も両方悪い。
 例えば増田がショウタ少年と割と絡み、博士の机の上の写真立てで二人が親子だと気付くのも増田なのですが、 それなら最初から最後まで増田とショウタくんを連動して絡めさせ、ついでに増田のキャラクター性を出す所までやれば、いい脚本。 それが出来ないのが、つまらない脚本。いい脚本というのは、散りばめたネタが有機的に絡んでいくのですが、それが無い。 そしてそんな流れの脚本をそのまま撮ってしまうから、演出も平板になってしまう。
 犬を見せるタイミング、増田と少年の出会い、Mr.Xの登場、色々、リズムをつけるやりようはあったと思うのですが。
 そんなこんなで事件は解決し、
 子犬はショウタくんに
 お父さんは刑務所に
 変に明るい音楽を流していますが、全然明るくありません。
 宮下脚本におけるレスキューシリーズ的リアリティ(犯罪に関わったら基本的に逮捕)というのは前作から通して基本的に一貫 してはいるのですが、今回、明確に逮捕を描く必要があったかというと、疑問が残ります。親子の背後にパトカーの大樹が立っている事で、 伝わる人には伝わるわけで、ふんわり匂わす程度で良かったのではないでしょうか。
 というのも今回の場合、“外国の反政府組織に協力して細菌兵器の抗体を作っていた”というのは明らかに高度な政治的問題 であり、事件は複雑な外交問題を孕んで展開すると思われ、博士が「罪を償って帰ってくるよ」と言うほど単純に逮捕して裁判にかかって 刑務所でお務めしました、という話で片付くとも思えず、子供の視点としても大人の視点としても、必要以上にすっきりしないラストに なってしまった気がします。
 日本政府がラザニア共和国に対して博士の身柄を引き渡す可能性はかなり低いと思われますが、 世紀末ディストピアの外交情勢その他によっては、博士、ラザニア共和国に送られて帰って来ないのではないかなぁ かなぁかなぁ。
 で、敢えてそういうリアリティを押し通すなら、それが物語と連動して効果を発揮しなければいけないのですが、とってつけたように ナレーションで大樹が親子の想いにどうのこうのと言われてもそんな前振りは劇中に一切無かったわけであり、どうにも、ちぐはぐ。
 途中式を省いて解答だけ書いてまとめても、いい話には、なりません。
 次回、
 「それが、崩壊へのスタートだ! ふっはっは、はっはっはっはっは!」
 相変わらずいい声の貴公子の高笑いで、いよいよ、最終章の幕が開く!

◆第51話「特救・解散命令!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升)
 くんずほぐれつ乱取り中の竜馬vs大樹。後輩を投げ飛ばして嬉しそうな竜馬さん。大樹も巴投げでお返し。
 おそらく二人とも(特に竜馬さん)、署内でまともに稽古に付き合ってくれる人が居ないっぽい。
 道場へ顔を出した玲子と純を見て、
 「いや、いいなぁと思ってさ、俺達。いい仲間と、いい仕事に恵まれて」
 急に変なフラグを立てる大樹。
 「ソルブレインはよくまとまっているし、ひとりひとりが、仲間を大切にしている。俺から見ても羨ましいぐらいだ。みんな、 これからも頑張ってくれ」
 そして、えらく含みのある発言をする竜馬さん(笑)
 和気藹々と本部へ向かう4人だが、突然、廊下で記者に囲まれる。
 そこで聞かされたニュースは――ソルブレイン解散?!
 「馬鹿なことを言うな!」
 と相変わらず、誰彼構わず暴言を吐く増田。
 新聞にそのまま掲載されますよ?
 「メンバーの一人は、記者に対して「馬鹿な事を言うな!」と罵声を浴びせた。ある関係者によると、 かねてからこの刑事の捜査態度には……」とか。
 記者「何かまずい事があったんですか?」

 沢山、ありました。

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 ・
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 本部へ向かった4人は、正木の口から事の真相を聞く。
 実は、かねてから進められていた改良型ソリッドスーツの量産体制が遂に確立。性能は多少劣るが、 それなりの訓練を積んだ警官なら着用可能になったスーツは、手始めに20着が全国の主要都市に配備。それにともない、 ソルブレインの組織体制が見直され、警察庁直属の機関として再スタートする事になるのであった。
 決して、正木が様々な不祥事を闇に葬る為に、ソルブレインを解体して全て無かった事にするわけでは、ない。 多分ないと思う。ないんじゃないかな。まちょっと覚悟はしておけ。
 合わせて、現在のソルブレインメンバーはそれぞれ、改良型ソリッドスーツ部隊の指導要員として、大樹は大阪、玲子は名古屋、 純は九州へと異動(亀吉とドーザーは東京残留)。正木は警察庁に入り、全体の統括をするという発展的解散である。
 ……北の方に主要都市は無いらしい(^^;
 メンバーの解散後、屋上で物思いにふける正木。
 また回想祭……?
 …………またでした(^^;
 というわけで、大樹の活躍シーンから。
 今見ると懐かしい、宇宙ステーション。
 そして革ジャケットの裾が長くて、初期の大樹は本当にヤクザ度が高い。
 場面変わって、今回の異動に不満たらたらの純。
 「だってそうでしょう! 俺はまだ半人前ですよ。その俺に、九州行って新組織の指導にあたれなんて、 失敗するのが見えてるじゃないですか」
 自己分析は全く正しいのですが、情けなさすぎます……もっとも、実際に半人前の上にスーツを着た事があるわけでもない 増田に何を指導させるのかは激しく疑問なのですが。
 正木が色々と隠蔽しまくった結果、もしかして上層部では増田も優秀な刑事と誤認されているのであろうか。
 玲子さんも本当はソルブレインを離れたくない、とチームの繋がりを強調しつつ、二人主体の回想シーンへ。
 ソルジャンヌの回想は、負けている所酸素ボンベ出している所ばかりで、酷い(^^;
 そして、ドーザーと亀吉。
 「本部長は、ソルブレインは家族だと言いました。家族がバラバラになるなんて、私にはインプットされていません! 嫌ですったら、 嫌です!」
 「いい加減にしろ! おまえの成長チップは大人になっているんだ! 大人は巣立つものなんだ!」
 亀吉が、一番まともな大人の反応、というのもなんだか皮肉です。
 亀さんとドーザーも、ちゃんと描けばもっといいコンビになったのだろうけどなぁ。どうして全53話もあって、 最後に急にコンビ再結成で無理矢理まとめるような羽目になってしまったのか(^^;
 そういう意味では、今作は1話1話の「刑事ドラマ」にこだわりすぎて、キャラクターを中心とした流れ、 というのを作れなかったのが一つの欠点であったのでしょう。結論としてはもっと、流れを持ったキャラクターエピソードを やってしまって良かった。
 その点では、前作では出番こそ極端に少なかったものの、“香川優子の存在”が、香川竜馬というキャラクターに連続性を 持たせていた事がわかります。
 Bパートでは、最近出てこなかったSS−1登場。
 矢沢さんも回想でちゃんと出てきた!  そしてナイトファイヤーの回想から、「僕は先輩の事の方が気になります」と高岡の話に繋げ、SS−1のコックピットに集う、 正木、大樹、竜馬の3人。ソルブレイン解散まであと2ヶ月……それを知った高岡は、最後の挑戦をしてくる筈。 それこそが高岡を逮捕するチャンスであると、ソルブレインの意気は上がる。
 そしてそれに呼応するかのように、高岡らしき男に銃撃を受ける黄色い車。玲子と純が狙撃地点のビルの屋上へ向かうと、 そこには高岡の大好きなビデオレターが。
 「今日の午後二時、東京都内のどこかで殺人事件が起きる。それが、ソルブレイン崩壊へのスタートだ! さあ、 受けてもらおうか。はっはっは、はっはっはは!」
 そして高岡の指定したと思われる時刻に、一人の少年が廃工場で殺人事件を目撃する。だが駆け付けたソルブレインが調べても、 死体どころか血痕も争った形跡もなく、久しく人が踏み込んだ様子すらない……。果たしてこれは何を意味するのか?  高岡の挑戦の真意とは?! 今、ソルブレイン最後にして最大の戦いが始まる!

◆第52話「特救・爆破命令!」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 死体なき殺人事件の調査を続けるソルブレインは、少年・勇が殺人を目撃したという現場で、20年前に殺人事件が起こっていた という驚くべき事実を知る。そしてその加害者と被害者こそ、勇少年が目撃した犯人と被害者であった。いったいこれはどういう事なのか?  更に驚くべきことに、20年前の加害者・中井が、勇の父親である事が判明。借金の取り立て人・佐藤ともみ合っている内に誤って 殺害してしまった中井は出所後に結婚、そして生まれたのが勇であった。
 つまり勇は、20年前に父親が犯した殺人を目撃した事になる。
 そして勇が何者かに誘導されて現場の廃工場に足を踏み入れた事も判明し、事件の背後には高岡とその超科学の存在が ちらつくのであった。
 しかし、驚愕の事実はこれだけではなかった。
 一月ほどまえに中井家の近くに引っ越してきて、勇とよく遊んでいるという近所の青年の素性を調べたソルブレインは、 彼が20年前の被害者、佐藤の息子、カズヤだと知る。20年前の事件の加害者と被害者が今、隣同士に住んでいるのだ!  果たしてこれはただの偶然なのか……? 中井に話を聞きに行くと、彼は「もう憎しみはない」と言うが、何故かストレートに 「復讐する気なんだろ?」と煽る増田。
 本当に、増田は酷い(^^;
 カズヤの素性を知り、20年前の償いは終わっていなかったのだと、打ちひしがれる中井。妻もまた、勇に近付くカズヤに対して 疑念を膨らませる。
 増田「どうするんですか、このままじゃ中井家は崩壊ですよ」
 現状、波風立てたの、主にソルブレインですけどね。
 20年前の殺人事件の加害者、被害者の息子、何も知らない少年、裏で糸を引く高岡……、と幾つもの立場と思惑が交錯する、 凝りまくったシナリオ。
 そして精神を摩耗させた中井に、一本の電話がかかってくる……。
 「佐藤カズヤはあなたに復讐しようとしている。息子さんを殺されたくたくなかったら、私の言うとおりにするんです」
 息子の命を救いたければ指示に従え、という高岡からの電話。勇が車に轢かれそうになった、という連絡を受けた中井は疑心暗鬼と 混乱がピークに達し、電話の指示に従って新宿駅のロッカーを開くと、そこに入っていた時限爆弾を手にする。
 「勇の命を救いたければ、紙袋の中の時限爆弾をタイマーをセットしてソルブレインに持っていけ」 という文面に、煩悶の末、追い詰められた中井はスイッチを入れてしまう。
 甦った過去の罪に苦しむ男が、息子を思う余りに袋小路にはまっていく姿が、役者さんの熱演もあり限られた時間で うまく表現されました。……ヒーロー物として面白いかはさておき(^^;
 折悪しく、中井の動向を追っていた大樹と竜馬により、本部に連れて行かれてしまう中井。
 ――爆発まであと19分。
 正木「中井さん……話してくれませんか。何があったんです!」
 竜馬「中井さん……!」
 大樹「なぜ言えないんですか!」
 こんな強面の男3人に囲まれて恫喝を受けたら、話す気無くします。
 (勇……私は死ぬ……ソルブレインと一緒に……勇)
 迫る爆発のタイムリミット。沈黙を貫いていた中井だが、抱え込んだ時限爆弾入り紙袋について問われ、露骨に狼狽、その場を逃げ出す。 「やっぱり私には出来ない!」という台詞はあるのですが、良心の呵責というよりも、3人の威圧に耐えかねて逃げ出したように見える のがなんです(笑)
 落ちた手紙から、紙袋の中身が時限爆弾であると知る正木と大樹。
 竜馬が中井に追いつくが、そこで爆弾が爆発。二人は炎にまかれ、さすがの完璧超人もスーツ無しで大ピンチに陥った所を、 駆け付けたソルブレイバーに助けられる。
 最終回目前にして始めて、竜馬が大樹に助けられる展開は、おそらく意図的。
 アクションの尺が短いので、それほど感銘は無いのですが(^^;
 かくて、中井を操る高岡の卑劣なソルブレイン爆破計画は、寸前で阻止された。しかし高岡はまだ、諦めない。ソルブレイン解散まで あと一ヶ月……はたして高岡を逮捕する事が出来るのか?!
 次回予告ナレーション「軟弱な現在の子供達よ、刮目してみよ!」
 ……どうしてそうなった。
 「ブレイバー、行くぞ!」
 そして最後の予告を持っていく竜馬さん。
 次回、遂に完結!

◆第53話「また逢う日まで」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 父の逮捕、そして佐藤カズヤとの因縁を知った勇少年は、自ら「お願い、パパを許して」とカズヤの元を訪れる。 中井の自爆テロについて与り知らなかったカズヤはそれに狼狽。高岡の指示で中井家の隣に引っ越してきたものの、自ら口にした通り、 カズヤの中で中井を憎む気持ちは確かに薄れていたのだった。そんなカズヤが憎しみを保とうとする理由……それは事件をきっかけに 心を病んだ母の為にあった。そして母親の入院費用をたてにされ高岡の指示を聞かざるを得ないカズヤは、尾行していた純を気絶させると、 勇を誘拐する。
 ……純のあれは、もはや尾行でも何でもないですが。変に顔をそらすだけ、無駄に気まずい。
 高岡からの電話でカズヤが勇をさらって隠れた廃工場に向かうソルブレイン。竜馬や大樹の説得に動揺しながらも、 カズヤは勇にナイフを向ける。そしてそこへ降ってきた高岡は、ソルブレインの目の前で勇を殺す事をカズヤに強いる。だが……!
 カズヤが振り上げたナイフは、高岡の脇腹に突き刺さる!
 結局、カズヤには、過去の事件とは無関係に自分を慕ってくる勇に憎しみをぶつける事が出来なかったのだ。
 深手を負った高岡は、
 「全員ここで死ぬがいい! 私はソルブレインに勝ったんだぁ!」
 と叫んで工場を爆発させながら逃走。勇とカズヤの身柄を確保したソルブレインであったが、高岡の仕掛けた凄まじい爆発火災の前に、 退路を塞がれてしまう。ソルブレイン最大の危機に、本部長自らが乗り込み、ソリッドステーツ発進!
 「ソリッドステーツ発進! ゴー!」
 矢沢さんも一応出てくるが、おいしい台詞は本部長に奪われてしまう。
 あまりの火勢にSS−1の消化剤も通じず、正木は工場への突撃を敢行。外壁をぶちやぶり、内部から消火する事でブレイバー達の 危機を救うと、「よーし、行くぞ!」と、大樹、竜馬を引き連れ、工場の奥に逃げ込んだ高岡の後を追う。
 もしかして:今回も正木祭
 工場の奥、巨大なコンピュータールームに、高岡は居た。高岡登場時に背中から伸びていた謎ケーブルがそれに繋がっているのを見て、 正木は全ての真相を悟る。
 「おまえがどうして次々に新しい発明をして我々に挑戦できたか、それがわかったよ。
 おまえはコンピュータと合体していたからだ!!」
 今アカサレル衝撃ノ真実。
 ケーブルの謎が解けたのはいいのですが、いいのですが、なんか、ええと、どうなんでしょうか。
 「何故だ! 何故そうまでして我がソルブレインを、いや! 人間を憎むんだ!  おまえの憎しみは消えることがないのか!」
 やはりソルブレインは正木の私設組織であった事が、とうとう最終回にして本人の口から語られてしまいました。
 重傷を負い、追い詰められ、既に自ら服毒していた高岡は、口元から血を滴らせながら正木達を近づけない為に部屋の爆破スイッチを 作動させ、激しい炎が正木達と高岡の間を隔てる。
 「私の父も母も、毒を飲んで死んだ。あの時……本当は私も死んだんだ!!」
 自らを死人とする事で、高岡は憎しみの心を薄れさせる事を拒んだのであった。父母への強い思いから、 憎しみを捨ててしまう自分自身を認めず、自ら合体したコンピュータに憎しみを増幅させるプログラムを埋め込む事で、 高岡は永久に憎しみが消えないように己自身を縛りつけていた。
 正木は高岡の背後のコンピュータを撃ち、作動を止めるコンピュータ。
 「やめろっ! 私から、憎しみを奪うな……憎しみが無くなったら、私はどうしたらいいのか……」
 毒の影響で視力が駄目になったのか、焦点が定まらない視線で思い出の時計を探りながら血を吐くように叫ぶ高岡(てらそままさき)が、 超熱演。
 というか正直、高岡の熱演以外には、見るべきところの無いシーンです。
 大樹も竜馬も直前の爆破シーンでスーツの着用リミットが来たようで、ヘルメット外して顔を出しているにも関わらず、 一言も喋りませんし。
 「高岡……」
 「来るなぁぁぁぁぁぁ!!」
 再び近付こうとした正木を制し、高岡は最後の爆破スイッチを押し込み、壮絶に自爆して炎の中に消える。最後まで、その憎しみを、 宿したままに。
 「高岡……我がソルブレインの使命とは、人命のみならず人の心も救う事にあった! だが、高岡の心だけは、最後まで……」

 またも最終回で

 完・全・敗・北

 大樹の刑事としての葛藤は完スルー、心理的に崩壊させる方向性だった筈なのに結局杜撰に直接攻撃になってしまう高岡、 そもそも最終作戦の発動理由が「お上の命令でソルブレインが解散してしまうから慌てて」というのはどうなのか、 「情か法か」というテーマは無かった、ドーザーと亀吉は一切見せ場無し、増田は最後の最後まで本当の意味で役立たずというか 最終盤はもはやクズ、ソルブレイバーの見せ場無し、ドーザーの見せ場無し、51話で散々強調した仲間の繋がりも全く活用なし、 それぞれ色々な事情(と高岡の暗躍)があって結果的に犯罪行為を行ってしまった中井やカズヤにどう対応するかというのが ポイントだった筈なのに全くなし、むしろ償いとか更正とか復讐を忘れるとか有り得ないというレベルの増田の言動と行動、 結局また全て持っていってしまう正木
 52話の展開は凄く凝っていたのに、そこから一つも通しテーマに繋がらず、なし崩し的に高岡が派手に自爆して、 「あー、やっぱ駄目だったわ」で終わってしまいました(一応、カズヤだけは憎しみの連鎖を断ち切っているのですが)。
 ……うーん、なんでしょう、落ち着いたら、色々と不満やそれでも良かった点など出てくるとは思うのですが、現状、凄くシンプルに、 ビックリしました。
 率直なところ今作の平均的な出来からいってテーマの重い部分を描ききれるとは思っていませんでしたが、それにしても、 ここまで見事にすっ飛ばされるとは思いませんでした。
 特に最後でまた大樹がお地蔵さんになってしまったのは酷すぎます。
 どうして正木なのでしょう?
 「宮内洋を最後に目立たせなくてはいけない」という契約でもあったのでしょうか。
 アクション面でも、『ウインスペクター』最終回ですら、暴徒相手に一応メンバーのアクションと、体調不良をおして着化した竜馬と ロボットとのバトルとかあったのに、ソルブレイン一同、全員炎にまかれておろおろするだけで最後にSS−1が主役扱いという、 謎すぎる構成。
 中井と高岡役の両俳優の熱演があったから良かったものの、そうでなかったらもっとグダグダであったと思われます。
 あー…………後はまあ、落ち着いたらまとめで。
 反省会をしたいと思います。
 本編最後は、ソルブレインが再編され、それぞれ任地に向かう大樹、玲子、純、が車で走り去るシーン。
 「僕は、いつまでもソルブレインを忘れない。きっといつか、また逢える日が来る。それを信じて。さようなら、ソルブレイン。 ありがとう、ソルブレイン」
 ソルギャロップで走っていく大樹、で幕。
 えー……反省会へ続きます。
(2013年4月26日)
(2019年12月27日 改訂)
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