■『特救指令ソルブレイン』感想まとめ7■


“だいじなものは 力じゃなくて
胸に秘めてる 大きな正義”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特救指令ソルブレイン』 感想の、まとめ7(37〜42話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・  〔まとめ3〕 ・ 〔まとめ4〕
〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ6〕 ・  〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕


◆第37話「哀しいヒットマン」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
 ある日ソルブレイン本部に、国際的な犯罪者であり武器密輸などの元締めとして名を知られる鮫島から、 自首する代わりに保護を求める電話がかかってくる。
 自首してきた相手に「虫が良すぎますよ」って意味不明だぞ、増田。
 罠を警戒しながら鮫島の隠れ家へ向かったソルブレインだが、その目前で、鮫島はヒットマンの放ったレーザーキャノン の砲撃で爆死。
 ヒットマン(ゲスト:河合宏!)がどう見てもバズーカ構えているので、この世界では暗殺にバズーカが 流行しているのかと思ったのですが、引き金引いたらバズーカより凄い武器でした(^^;
 ヒットマンは現場近くに居て爆撃で負傷した子供を連れて逃走。人質にされる恐れに検問を張ったソルブレインだが、 犯人は逃げおおせてしまう。それどころか、子供を病院に連れていき、輸血までして立ち去った事が判明。首をひねる大樹達の前に、 そのヒットマンの事を知る竜馬が姿を見せる。
 ヒットマンの名は、ヘンリー・鳥羽(28)。
 ICPOでもマークされている国際手配中の殺し屋で、元ニューヨーク市警の警官。正義感からの内部告発により同僚から命を狙われ、 結果的に同僚を殺害。刑務所を脱獄後、闇の社会に身を落としたが、闇社会以外の人間には決して手を出さない男だった。 だがそんなヘンリーが民間人を巻き込んでしまった事件があった。パリでヘンリーと標的との銃撃戦に巻き込まれ、両親と視力を失い、 現在は国内の施設で暮らすアリサという少女……ヘンリーの性格と行動を考えれば、彼女と接触する可能性は高い。 竜馬から情報を得た大樹達は、アリサの過ごす施設へと向かう。
 レーザーキャノンの爆撃で虫取りの少年を巻き込み、サブマシンガンの乱射 で観光客の親子を射殺…………ヘンリーさんは、武器を選んだ方がいい。
 アリサと接触するソルブレイン、視力のほとんどない少女の近くで大声を出す増田(最低)、 そこに現れる「お兄ちゃん」ことヘンリー。施設の教師を人質にその場は逃亡をはかろうとしたヘンリーだったが、突然の狙撃を受け、 崩れ落ちる。負傷しながらも、駆け寄ってきた大樹を人質にとったヘンリーは、その場を逃亡。
 ……あ、あれ? 今週も、不祥事……?
 隠れ家に逃げ込んだヘンリーは、自分を裏切った雇い主に敢えて、暗殺の成功報酬を持ってくるように要求する。 彼はアリサをアメリカに連れていって視力を取り戻す角膜手術を受けさせる為に、何としても大金を必要としていた。
 一方、ヘンリーの正体について大声で話してアリサに真実をだだ洩れにする玲子と増田(最低)。
 そして鑑識の調査によって、驚くべき事実が判明する。
 「なにぃ?! 爆殺された鮫島は、高性能ヒューマノイド?!」
 ……なんですかそれは(笑)
 ヘンリーによって殺害されたと思われた鮫島は、人間そっくりに作られた、極めて精巧なロボットだったのだ!  本物の鮫島は生きている。そう、全ては警察と闇社会の目を眩ます為に自分を死者としようとする、鮫島自身による偽装殺人だったのだ!
 高性能ヒューマノイドの無茶さ加減はさておき、狙われている筈の鮫島がカーテンもかけない窓際をうろついている危機管理意識の低さとか、 微妙にサイレンの近づくのを待っている風だったヘンリーだとか、序盤の違和感が事件の真相によりカチッとはまるこの展開はお見事。 偽装殺人、というネタも良かったです。
 鮫島と手下達はアリサを人質にしてアジトへ現れ、縛り付けられている大樹も何もできない。必死にアリサを守って銃弾を受け、 追い詰められるヘンリーにトドメの銃口が向く――その時!
 ダイビングヘッド気味に窓ガラスを割りながら飛び込んでくる香川竜馬!!
 格好良すぎる。
 九州回の次の登場という事で、基本、竜馬さんフィーチャー回なのでしょうが、柱に縛られている大樹が可哀想すぎる格好良さ(^^;  断然、竜馬さん派の私でも、さすがに一瞬、大樹が可哀想になりました(笑)
 必殺ロープ撃ちで救出された大樹は本部に通信を送り、現場へと駆け付けるジャンヌ達。瀕死のヘンリーとアリサを守りながら戦う 大樹達だが、銃撃戦で地面の薬品に引火した炎が、化学薬品入りのドラム缶に迫る!

 <問>:あなたは廃工場で悪漢達と銃撃戦をしています。その最中、化学薬品入りのドラム缶に炎が迫っているのが目に入りました。 このままでは大爆発が起きてしまいます。次の内から、正しい行動を選びなさい。なお、負傷した民間人が同行しているものとします。

 1,一目散に逃げ出す。
 2,「ブレイバー!」と叫ぶ。
 3,迫る炎を消火弾で消火する。


 正解:化学薬品入りのドラム缶を破壊光線で消し飛ばす。
 ……えー、あれだ、あれですよ、爆風で火災を消し飛ばす、みたいな。
 ヨーロッパでは当たり前の対処方法なんですよ。
 期末試験に出るからよく覚えておく事。
 鉄骨からアリサ達を守っていたブレイバーをナイトファイヤーが助け、鮫島一味は粘着弾で逮捕。「お兄ちゃんが殺し屋でも、 視力が戻らなくても構わない」と泣き叫ぶアリサに、「自分が死んだら角膜を移植してやってほしい」と大樹達に最後の望みを伝え、 ヘンリー・鳥羽は死亡する。その胸ポケットには、アメリカ行きの二枚の航空券が入っていた……。
 今回は、ここで終わっておけば良かったと思います。
 この後エンディングとして、〔角膜提供は順番待ちがあるのでアリサちゃんにヘンリーの角膜は提供されない→「そりゃないですよ」 (増田)→パリで新手術を受けられる事になった→良かった良かった〕となるのですが、勿論、角膜の順番待ちがあるというのは リアルとしては正しいのですが、代案として出された「パリで新手術」というのもコネクションにより優先されたという事実に 代わりはないわけで、そこはもう、“フィクションとしては許される範囲”として誤魔化して良かったと思います。 どうしてもそこにこだわるなら、エンディング部分まるまる無い方が良かった。
 『ソルブレイン』については何度も書いていますが、とにかくリアリティのバランスが悪い。
 このオチだけ凄く不満。
 また今回は全編通して、感情だけで反射で物を言う増田が、人の好い若輩者の微笑ましさを通り越して、単なる、 見ていてイライラする粗忽者、と化しています。増田のキャラクターは最低限、そこだけは踏み越えないように、 気を付けないといけない筈なのですが。
 竜馬さんフィーチャー回としては満足の出来。あの服装はどうかと思いますが(笑)
 あと、大樹は「竜馬先輩」で安定したけど、玲子と増田が、「竜馬先輩」とか「香川さん」とか安定しないのは気になる。
 次回、
 ナチス第三帝国の夢なのか?
 実体のない敵とどう戦うのか?
 悪霊vsソルブレイン、君はこの戦いを正視できるか?!
 ……竜馬さんなら、勝てる(笑)
 “逆らえば弾かれる 全てを受け入れる事!”

◆第38話「死をささやく悪霊」◆ (監督:小笠原猛 脚本:高久進)
 首都圏近郊で続く、原因不明の若い女性の自殺事件。飛び降り自殺をはかった女性を助けたソルブレインは、女の口から 「リガの女!」という叫びを聞く。リガとは、かつてナチスドイツの強制収容所があったラトビアの地名である。そして 「リガの女」とは、その強制収容所の女所長を描いた肖像画であった。画商である、玲子の高校の同級生の父がこの「リガの女」 を求めたラトビアで死亡していた事から、事件は更に奇怪な様相を見せ始める……。
 謎の自殺事件と肖像画の悪霊と悪霊を信じるあまり心の歪んだ女が絡む、という筋なのですが、大樹や玲子の発想の筋道が飛びすぎな 上に、全体的にテンポが悪くて単純に面白くありませんでした。
 少なくとも玲子の高校の同級生が現場に居合わす、という要素は一切外して、もっとすっきり作れたとは思います。
 高久脚本だから仕方ない。
 あと小笠原猛にこういう、油断するとすぐに間延びしてしまう回の演出をさせてはいけない。
 まあこちらが、予告を見て前作のカルラ回ぐらいぶっ飛んだものを期待してしまった、というのはありますが。
 見所は、
 「だがリガの女の悪霊が、肖像画の中に住み着いていたらどうなる」
 と本部長にトンデモを宣われ、とりあえず話を合わせる大樹と玲子さん。
 後から「悪霊は信じない」と言う割に一旦は同意した風を装うところに縦社会の悲哀を感じます。
 それから、しれっとまた民間人を囮に使うソルブレイン。
 戦闘シーンでのドーザー着ぐるみ空中大回転。
 これは割と凄かった気がします。

 そして、快挙・ソルジャンヌが大活躍。

 実際のところ、本来ならソルジャンヌは定期的にこのぐらい活躍させないといけないと思うわけですが(^^;
 最後は、「人の心が……」とか「愛と正義がある限り……」とか言い出してまとめる、実によろしくないパターンの胡散臭いオチ。雑。

◆第39話「夢を届けた宇宙人」◆ (監督:小笠原猛 脚本:鷺山京子)
 「金持ちの男がやってきて宝石を大量に買っていったと思ったら、しばらく後に受け取ったはずの現金が煙にようにかき消えた」 という謎の事件が続発……それは、集団幻覚を発生させる装置・サターンヘッドの悪用による窃盗事件であった。三流マジシャン・ 水野良平は、窃盗グループから逃亡中に交通事故を起こした男からサターンヘッドを受け取ってしまい、グループに追われる事になる。 何の気なしに装置をかぶってみた良平は、通りすがった子供に気軽に言った言葉から幻覚の作用によって宇宙人と思われてしまうのだが、 サターンヘッドにはある恐るべき秘密があった……。
 集団幻覚発生装置サターンヘッドは、精神病の治療用に作られたが、使いすぎると脳細胞が破壊されしまう危険性の為に、 設計図ごと破棄された……という事なのですが(悪用されているのは盗まれた試作品)、
 〔精神病の治療器具・危険性が高い・開発中止〕
 ……て、前作最終回に全く同じ3拍子揃った装置(本能覚醒マシン)が登場しましたが、もしかしなくても 開発者は黒田鬼吉先生でしょうか。……まあ、あの人なら、設計図燃やしたりはしなさそうですが。
 宇宙人だと思われてUFO好きの少年サトシに匿われた水野は、激しい頭痛を覚えながらも、彼の友達らの前でも幻覚を見せて喜ばれる。 子供達を喜ばせたくてマジシャンの道に進んだ水野は、サトシ少年に宇宙通信機だと言って腕時計を渡した後、外で装置をどうしようかと 思っている所を、装置を追う大樹と接触、サターンヘッドに隠された副作用を知る。
 水野が大樹に「サーカスにいた」という事を凄く重大な告白のように言う(大樹のリアクションも妙に深刻そう) のですが、えー……もしかしてこの時代はまだ、サーカスというと親に売られた子供達が見世物の訓練に励む場所 だったのでしょうか(^^; まあ、世紀末TOKYOなら、有り得なくもない。
 一方、サターンヘッドを追っていた窃盗グループは水野がかぶっていた帽子を見つけ、サトシ少年を締め上げるが、 銃声を聞いて捜査中の玲子と純が駆け付ける。大樹と共に遅れてやってきた水野は、人質にされた少年を救うべく、 頭痛をおしてサターンヘッドを被ると、犯人グループ達に宇宙人による攻撃の幻覚を見せる。
 人間達が幻覚を見る中、作用しないドーザーが首をひねる、というのは小技の効いた演出。
 そして宇宙人を見て一旦は逃げ出すものの、兄貴を守る為にやっぱり戻ってくるチンピラ達が意外に熱い(笑)
 幻覚により窃盗グループが混乱している内に大樹達はブラスアップし、無事に少年を救出。悪役のボス・谷村役が岡本美登さん (戦隊シリーズなど多数出演のアクション俳優。『超新星フラッシュマン』ボー・ガルダンなど)だったので、背広のまま大樹と 格闘戦してくれるかと思ったのですが、拳銃振り回していただけで、ちょっと残念。
 犯人グループは逮捕され、水野はサトシ少年に、「UFOで去っていく宇宙人」という最後の幻覚を見せ、少年の夢を守る。 水野に最後のサターンヘッド使用を許したり、水野が身を隠している間に自然な流れで少年をパトカーに乗せて家まで送っていくなど、 大樹が珍しく気が利いて格好いい(笑) ……いや大樹、野暮な事を言いがちなので!
 そして水野は、自分の力で少年達の目を輝かせたいと、マジシャンとして一から腕を磨き直すべく、練習の日々を送るのだった。
 少年の夢を守るべく、夢破れかけた男が奮闘する、という、柔らかいタッチの1本。……脳細胞が破壊されたり、 手榴弾が飛び交ったりしますが!
 もちろん当たり外れはありますが、前作今作と、シリーズを一本調子にしない、という意味において、鷺山・扇澤、 両脚本の存在意義は大きい、と改めて。
 筋としては、ちょっと偶然が多すぎたのは難。水野が逃走中のチンピラと出会ったのも偶然、サターンヘッドを被ったのもほぼ偶然、 サトシと出会ったのも偶然(ここまでは、許容範囲)、大樹が水野を見つけたのも偶然、玲子と純が工場の近くで銃声を聞きつけたのも偶然 ……と後半の二つはさすがに強引にすぎました。理屈をつければ、交通事故の現場近くを捜索していた、という事なのでしょうが、 こういう時こそ、水野らしき男を見かけたという情報を得る、など聞き込みシーンの1カットでも欲しかった所。一つ入れるか 入れないかでだいぶ説得力が違うので、勿体なかった。
 次回、
 ナレーション「その背後には、復讐の貴公子・高岡隆一が居た」
 き、キコウシ?!

◆第40話「英雄(ヒーロー))に罠をかけろ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:杉村升)
 OPにパイルトルネードとナイトファイヤーが追加。
 やっぱり強調されるのは、同じ武器を持った事で分かり合う二人なのですね(笑)
 通勤中、白バイに止められる増田。
 「やだなぁ、俺、違反なんかしてないよ。だいたい、おたくと同業ですよ」
 ……あー、これはやってるなー。
 過去に違反揉み消ししてもらってるなー(笑)
 ところが、白バイ警官は違反切符の揉み消しどころか、謎のスプレーで増田の意識を消し去り、そのまま連れ去っていく。
 一方、ソルブレイン本部では……
 正木「あれ、純は?」
 玲子「遅刻みたいです」
 亀吉「どうせまた、寝坊ですよ」
 ……それでいいのか、ソルブレイン。
 そんな和やかな朝の一時にかかってくる、「純を誘拐した」という犯人からの脅迫電話。犯人は、プロテクターを身につけずに生身で来 るようにという条件付きで、大樹と竜馬を名指しで呼びつける。
 ここに来て、まさか、まさかの、増田、ヒロイン狙い。
 そう来たか、増田(おぃ)
 ところで今回から、竜馬さんが似合わないカーキ色のジャケットをやめて、黒ジャンパーに戻りました。あのジャケット姿は 変すぎたので良かった。良かったのですが……前々回ぐらいから、大樹が秋冬使用で、黒ジャンパーに戻りました。
 …………おや?
 なお二人とも、中のシャツは白でお揃いです。
 ……ヒーロー二人、私服だだかぶり。
 ズボンの色しか変わりませんよ……(大樹:白、竜馬:黒)。
 どうしてこうなった……。
 明らかに、今作スタート時に、大樹の基本パーソナルカラーを竜馬さんとかぶらせた制作側のミスだと思うのですが(^^;
 もういっそ、竜馬さんは黒ジャンパー+赤シャツ+赤ズボン、大樹は黒ジャンパー+青シャツ+青ズボン、でいいのではないでしょうか。 二人揃って、チンピラ度が加速度的に上がりそうですが。
 まあ、露骨に服の色を付けると戦隊物の匂いが濃くなってしまうので、それを避けた上で多少なりとも警察っぽい配色という事で無彩色 (黒・白基本……画面が暗くなるので女刑事はどんどん派手に)になったのでしょうが、まだむしろ、カーキ色のジャケットは大樹の方が 似合った気はする。
 そんなこんなで、どちらがどちらかステルス気味の二人を指定された廃工場で待ち受けていたのは、 変なバックパックを背負った男だった。
 男は掲げたその両手から、電光を放つ!
 思わぬ超科学な攻撃に苦戦する二人だが、ここでドーザーとジャンヌが背後の壁をぶちやぶって奇襲。しかし電撃を受けてジャンヌが 倒れ、男には逃げられてしまう。全身打撲で絶対安静の身となる玲子……病院で憤る亀さんの台詞に、
 「犯人のやつ、純ちゃんを誘拐して……」
 というのがあるのですが、いつの間に、そんな関係に。
 ……や、変な意味ではなく、そんな呼びかけしたの、番組内で初だと思うのですが。二人称でアクセント付けるなら、 もっと早い内からやってください、と(笑)
 戦線離脱したソルジャンヌだが、格闘戦で覆面を剥ぎ取った際の映像から、強盗傷害で前科3犯の今井という男が犯人の正体だと 判明する。今井は服役中だったが少し前に看守曰く「空を飛んで」脱獄、行方をくらませていた。そして今井の背負っていった バックパックは、空気中の静電気を吸収して人体を帯電させる静電気吸収装置である事が判明する。
 大樹も竜馬も今井とは面識がなく、個人的に恨まれる覚えはない。また、国内の研究機関で開発事例の無い静電気吸収装置を作ったのは、 いったい何者なのか。今井の背後に居る何者かの影を感じながら刑務所へ向かった二人は、今井が模範囚であった事を知る。 入所後に産まれた子供のために早く出所したいと真面目に刑期をつとめていた今井は刑期満了まであとたった3ヶ月だった。はたして、 そんな今井がどうして脱獄したのか……。
 今井の子供の「ぼくのおとうさん、どこにいるの?」という所では、看守さん、迫真の演技。
 今井の妻子の家を訪れた竜馬と大樹は、そこで更なる衝撃の事実を知る。今井の息子・悟は交通事故で死亡していた……しかも加害者は、 居眠り運転の覆面パトカー。
 今井の警察への復讐心の根源はそこにあった。だが、それだけではない。今井を脱獄させ、静電気吸収装置を与え、復讐をそそのかした 何者かが居る……竜馬の脳裏にはその全てを実行可能な一人の男の名が浮かんでいた。天才的な頭脳と技術を持ちながら、憎悪に狂い ソルブレインに復讐を誓う男――その名は、高岡隆一!
 シーン変わって、オルゴール付きのロケットを開きながら、今日も白詰め襟の貴公子・高岡。
 「見てろソルブレイン、私の狙いがどこにあるか、最後の最後になって気が付くんだ!」
 竜馬は事故を起こして懲戒免職になった刑事の元へ向かい、一度本部へ戻ろうとした大樹に入る、正木からの通信。 再び今井から電話があり、大樹一人だけを呼びだしてきたと言う。
 正木「今度は、ブラスアップしていくんだ!」

 本部長、鬼畜

 まあ確かに、今回は、「プロテクターつけてくるな」、て言われなかったんですが(笑)
 とはいえ前回も、しっかりジャンヌとドーザー潜ませていたし、正直、既に増田が殺されていても文句は言えないと思うのですが、 増田の存在理由はデミタスレベルだから仕方ない。
 死んだら、不名誉な誘拐の事実は揉み消して、二階級特進だ増田!
 そんな増田は、時限爆弾付きで天井から吊されていた。姿を見せた今井の放電攻撃に膝をつくブレイバー。必殺の電光が その体を灼き尽くそうとしたその時――間一髪に駆け付けるナイトファイヤー!!
 ……えーとあれですね、今回増田が空席のヒロインの座を狙うという思わぬ奇策に出ましたが、結論として、 竜馬さん登場時の大樹の方が圧倒的にヒロイン度が高い(笑)
 ブレイバーを救ったナイトファイヤーは、今井に息子を失った交通事故の真実を語る。悟を轢いた警察官はなんと、 事前に催眠術をかけられていた。全ては今井が警察への復讐に狂うよう仕組まれた、高岡の周到な計画だったのだ。
 ネタとしては読めていただけに、催眠術、というのは如何にも強引で勿体なかったところ。話を詰める都合でここまで 凝れなかったのでしょうが、もう少し、説得力のある理由が欲しかった(ただし今回、間延びしてしまった九州編の前後編のように しないで、1話に凝縮した事自体は良かったと思います)。
 もちろん信じない今井に、今井の妻から預かった、刑務所の今井に届く筈だった悟の声を吹き込んだテープを聞かせるブレイバー。 「これ以上、悪い事をしないで早く家に帰ってきてね」という悟の言葉……どんな理由があろうと、今井がしている事は犯罪だ。 亡き子供の想いに応える為にも、もう一度刑務所でやり直すんだという大樹の言葉、竜馬の突きつける高岡の写真と警察官の証言。 高岡を信じる事が出来なくなった今井は、増田に取り付けていた時限爆弾を手に自殺を図り逃走。爆発の直前、 ブレイバーがなんとか静電気吸収装置を破壊、ナイトファイヤーが爆弾を外へ投げ捨てる、というチームワークにより、 自殺を回避させる。
 お約束の、爆煙の中から無事だったナイトファイヤーが姿を見せる、というシーンはつまらないのですが(ブレイバー含めて使いすぎ)、 九州編のvsボンバーでは割とやられっぱなし、ヒットマン編ではそれぞれがパイルトルネードを撃っただけなので、 実は劇中初のヒーローコンビネーションアクション、という扱い、か? 後まあ、ナイトファイヤーをブレイバーになぞらえて、 改めてヒーローとして劇中の立ち位置を確立させる、という意味はあったのかと思います。
 一瞬、「スパーク!」するかと思ってドキドキしたのですが、どうやらナイトファイヤーには、《高速移動》機能、 ついてない模様。出鱈目すぎるので止めたのか(笑) 両スーツに差を付けるという意味では、いっそあっても良かったかとは思いますが。
 「今井、刑務所に帰ろう」。大樹の言葉に頷いて歩き出す今井……だが、突然の後方からの狙撃により、崩れ落ちる。
 振り向いた二人の前に、高岡現る。
 鉄骨にぶら下がって。
 無駄にいい高笑いとともに、竜馬達の推論が正しい事を認める高岡。
 「罪を憎んで人を憎まず、それがおまえたちのモットーだったな!」
 ……どこで仕入れた情報か知らないけど、高岡、それ、ちょっと違う。
 わかりやすくまとめるとそういう事かもしれないけど、違う(笑)
 「だが今は、この私を憎んでいる! 偉そうな事を言っても、所詮おまえ達もただの人間なんだ!」
 今井を抱き込む為に悟を殺し、今またその今井をあっさりと切り捨てる高岡、その真の目的とは――
 「憎しみを持てば、冷静さを欠き、捜査は混乱し、ソルブレインは内部から崩壊する!  その為なら、虫けらの命の一つや二つ」
 「貴様ぁ!」
 「憎め! もっと私を憎め! はははははっ、あはははははは!」

 高岡は最初から、今井がソルブレインを倒せるとは思っていなかった。彼の真の目的は、ソルブレインに自らの非道さを見せつける事。 全ては、彼自身による復讐の為の前奏曲に過ぎなかったのだ! 大樹の心に憎しみの種子を蒔き、高笑いとともに高岡は去っていく。 ……相変わらず、あのケーブルはよくわかりませんが。
 いやまさか、ここに来て、ここまで徹底的な外道が登場するとは。
 ここまでやるなら、前回登場時にもっと非道でも良かった気もしますが、ここは意欲的な展開を買いたい。
 本部の屋上?で物思いにふける大樹に、近づく正木達(屋上で佇むのは刑事ドラマのある種、お約束)。
 「大樹、そんなに苦しいか」
 「僕は高岡が憎いんです。なんの罪もない命を奪い……
 本部長、本当に警察官は、人を憎んではいけないんでしょうか?」
 「その通りだ。罪を憎んで人を憎まずを厳守するのが警察官だ。冷静に、罪だけを考えるんだ」
 「本部長……」
 また適当に正木がまとめてしまうのかとガッカリしかけたのですが……

 「大樹は悩んでいた。
 卑劣な高岡を憎んではいけないのか。
 警察の仕事とは、人間の憎しみとは。
 高岡の突きつけた挑戦状は
 大樹の心に、重くのしかかっていた」

 おおおおお、引きました!
 いやこれは。
 ラスト1クール、この路線を背骨にして展開するなら、ようやく色々なものが効いてきます。
 ここまでの『ソルブレイン』に多々あったもやもやが、果たして物語の大きなテーマとして描かれ集約される事はあるのか。
 これは期待。
 前作『ウインスペクター』はラスト1クールで息切れしまたが、『ソルブレイン』は、ラスト1クールで“化ける”かもしれない。
 また、前作ラストに駆け足で済ませてしまったテーマの再利用という側面もありますし、前作・今作とメインライターを務める 杉村升がここに来て踏み込んできたこのテーマ、どこまでやってくれるか、楽しみにしたいです。
 ……あの時は、本部長は殺意に屈したし(笑)

◆第41話「激突!高速マシン」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:増田貴彦)
 逃亡する銀行強盗を追うソルブレインだったが、追跡していた車が目の前で消滅、取り逃がしてしまう。
 それは透過バリアによる光学迷彩と、レーダーによる探知を防ぐステルス性能を併せ持つ、闇の逃し屋のスーパーカーだった!
 迫真のカーチェイスの間、玲子さんの助手席に座っているだけの増田が、情けなさ過ぎる……。やはり増田は、 バイクぐらい乗せてあげてよかったような……。予算が免許が無かったのかもしれませんが。
 逃がし屋を探すソルブレインは、元F1レーサーの弟とメカニックの兄が経営する、久我モーターズという自動車整備会社にたどり着く。 国際的な強盗団を率いるデヴィッド・式場がそこに接触した事から、久我兄に任意同行を求めるが、自分たちでF1チームを作る為の 資金集めに手段を選ばない久我兄は口を割らず、悪びれない。
 「汚れた金でチームを持つ事が、おまえの夢なのか?」
 ……大樹さん、“汚れた金”ってフレーズ好きよね。
 ソルギャロップのエンジンを分析した久我兄弟は、オンロードでは敵わないと、オフロードの勝負に持ち込む事を計画する。一方、 式場らの目的がダイヤ強奪にあると見たソルブレインは逃がし屋との対決に備えて亀さんがソルギャロップに超音波ソナーを取り付け、 更にオフロード勝負に持ち込まれる事を読んで足回りを強化。
 果たして岩場で、激しくチェイスする事になる2台の車。しかしそこに飛び込んでくるバズーカの砲弾!  ソルギャロップは炎上しながら崖下へ落下し、久我兄弟は待ち伏せていた式場一味によって始末されそうになる。だがその時、 崖を登って復活するソルギャロップ!
 ジャンヌ達も駆け付け、式場一味は敢えなく御用。膝をつく久我兄を大樹は諭す。
 「なぜだ……なぜ、夢がかなえられないんだ」
 「久我、わからないのか。この道と同じだ。この道と同じなんだ。おまえは、このでこぼこ道を、フルスピードで走ろうとした。 だから夢にたどりつく前に転んだんだ」
 ……大樹、珍しく説教したと思ったら、なんだか年寄りくさい(笑)
 ここに来てのソルギャロップ回でしたが、どうせやるならもう少し早めに行うという選択肢は無かったのでしょうか。 巧くやれば亀さん回にもなって、仲間達の力で補い合うソルブレイン、みたいな展開にも出来たと思うのですが。
 「逃がし屋との対決」というアイデア自体は面白かったのですが、残念ながら後半のカーアクションシーンはそれほど面白くならず(^^;
 “崖を登ってくるギャロップ”の絵が一番面白くて、全て持っていく形になってしまいました(笑)
 次回、
 ソルブレイン解体!

 不祥事続きで遂に、政府が動いた?!

◆第42話「グラブに誓う復讐」◆ (監督:小西通雄 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
 ソルブレイン設立メンバーの一人であるが、大がかりな贈収賄事件に関わって議員辞職した超タカ派の政治家・遠山銀次郎が、 復職を目指して選挙に立候補。自衛隊を国軍に変えて軍備拡大を訴える遠山には、ソルブレインを解体しその科学力と技術力を活かした 影の軍隊を作り出そうというプランがあり、正木らはその動向を注視していく事になる。
 ……なるほどつまり、国政において発言力のある人間をおだてて設立メンバーに抱き込んだ上で、 汚職事件で失脚させたわけですね、正木。
 遠山が選挙戦に苦戦する中、選挙事務所で爆発騒ぎが起き、現場へ向かうソルブレイン。
 遠山「ソルブレインの治安効果はさっぱりのようだな」

 返す言葉もございません。

 更に事務所にFAXで脅迫文が届き不穏な空気が漂う中、正木はそこで、アメリカ留学時代の旧友ケン・ナカタと再会する。 アメリカでも五指に入る選挙参謀として名を馳せるケンは遠山の選挙参謀に収まっていたのだが、共に大学野球で活躍した仲だというのに、 正木に対する態度は素っ気ない。何かきさなくさいものを感じながらも遠山の周辺をガードするソルブレインだが、今度は鉄骨が落下、 巻き込まれた少女が怪我をしてしまう。その少女を選挙活動に利用しないケンに疑問を感じる大樹……。
 「あのアクシデントは計画に無かったとしたら?」
 とかいきなり言い出すのですが、ここで「計画」という単語が出るには、一連の爆発や脅迫などが遠山陣営の狂言であると 見破っていないといけないのですが、推測レベルでもそんな話が一切出てきていないので、物凄い唐突。
 果たしてケンがどんな手段を使ってでも遠山を当選させようとする真意とは何なのか……ケンの過去を捜査したソルブレインは、 彼の父が20年前に遠山の選挙参謀を務め、選挙違反の罪をかぶって自殺していた人物だと知る。遠山への復讐。 それこそが彼の動機だったのだ。そしてその復讐は歓喜の絶頂の瞬間――当選のその時に行われる筈!
 ケンの活躍もあり、当選を決めた遠山が目を入れたダルマ、大爆発。
 投げ飛ばしたドーザーがよろけた事で、爆発の威力を演出したのは良かったです。
 意外とのんびりした調子で、大樹が抱えた時はどうしようかと思いましたが(笑)
 遠山の爆殺はソルブレインによって阻止され、空港のTVでそれを知ったケンは自らの手で復讐を遂げるべく遠山の屋敷へと 乗り込んでいく。
 剛速球とチョップの一撃で、二人のガードマンを仕留めるケン・タナカ。まあ、正木の友人なので、仕方ない。
 思い出のグローブの中に隠していた拳銃を遠山に向けるケンだったが、それは影武者だった。逆に追い詰められたケンは、 駆け付けた正木の目の前で、遠山配下によって撃ち殺されてしまう。大学野球の思い出を忘れてはいなかった……と語り、 正木の腕の中で絶命するケン。正当防衛を主張する遠山は、その正木にケンの逮捕を命令する。
 「その虫けらに手錠をかけろ」
 「……なにぃ、虫けらだぁ?!」
 つかつかと遠山に歩み寄る怒りの正木、殴る。

 本部長が憎しみに負けた。

 ……えー、あー、これはこれで有りなのです。
 フィクションの物語としては、当然、こちらの方が気持ちがいい。
 ただ、そういう形でのカタルシスを徹底的に否定してきたのが『ソルブレイン』なわけです。
 どうして今更そこを踏み越えるのか。
 踏み越えるならとっとと踏み越えれば良かったし、ここまで来たら踏み越えてはいけなかった。
 しかも、「警官は犯罪者に憎しみの心で向き合っていいのか?」という最終的なテーマを持ち込んだばかりの所です。
 これはまずい。
 どのぐらいまずいかというと、メタルダーが問答無用で怪人をレーザーアームでずんばらりんしてしまったあの瞬間 レベルでまずい。
 なぜ撮影中に誰も止めなかったのか。

 「罪を憎んで人を憎まずを厳守するのが警察官だ。冷静に、罪だけを考えるんだ」

 「罪を憎んで人を憎まずを厳守するのが警察官だ。冷静に、罪だけを考えるんだ」

 「罪を憎んで人を憎まずを厳守するのが警察官だ。冷静に、罪だけを考えるんだ」

 もっとも、そもそも正木は旧友の仇を捕まえて取り調べ室で「貴様を必ず極刑にしてやる!」(前作第9話より) とか口走ってしまう基本激情家であり、最初から大樹にどうこう言える人では無いのですが。
 無いのですが、それはともかくとして、いやー……今回なぜか脚本が連名になっていますし、誰が悪いのかはわかりませんが、 前作からそれなりに関わっている筈の宮下隼一は反省、厳重に反省。
 ケンの死体を抱きかかえた正木は、スーツの内ポケットからこぼれるテープレコーダーに気付く。そこにはケンの殺害を指示する 遠山の声がはっきりと録音されていた。事ここに至って、正木の射殺も命じる遠山。追い詰められた正木だが、そこへブレイバーと ナイトファイヤーが駆け付ける!
 部下達が遠山の配下を逮捕していく中、拳銃を手に遠山を追い詰める正木。
 「ケン・ナカタという男を殺したのは貴様だな? き・さ・まだな?!」
 「違う!」
 「嘘をつけ!!」
 靴の踵を撃ち、拳銃を撃ち落とし、最後の弾丸は「当選御祝」の垂れ幕を撃ち落とす……という演出は格好良かった。
 にしても、竜馬さん、120%、時間外労働だったような……。
 多分、最低2回に1回はナイトファイヤーを出す、という事で構成しているのかとは思いますが。
 次回、予告でひたすら高笑いしている貴公子が凄い(笑) 1シーンを予告で分割使用しただけだとは思いますが、 面白い予告映像になりました。色々と心配になってきたので、予告倒れにならない事を祈る。

→〔まとめ8へ続く〕

(2013年3月24日/4月26日)
(2019年12月27日 改訂)
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