■『特救指令ソルブレイン』感想まとめ6■


“燃える都会に ゴングを鳴らせ
ホイルスピン 正義の雄叫び”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特救指令ソルブレイン』 感想の、まとめ6(31〜36話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ5〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕


◆第31話「彼女は夢の未来車」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)
 プロット元は「サリーはわが恋人」(アイザック・アシモフ)でしょうか。90年代ともなれば“意思を持つ自動車”というアイデアは 珍しくも何ともないと思いますが、ゆえにこそ展開のそこかしこに影響を感じます。
 大樹の大学自体の先輩・南部光利が、長年の研究の成果を稔らせ、夢の未来カーを完成させた。光利の妻・典子(てんこ)が玲子の 高校時代の親友という縁もあり、そろって未来カーのお披露目を見に行くソルブレイン一同(除く、正木と亀。可哀想な亀)。
 二人テープカットに二人くす玉とか、南部夫婦はかなりハイテンション。
 そして披露された未来カーの名は、「T−01」。ソーラーバッテリーを搭載してガソリン要らず、高度な安全センサーを搭載し、 完全制御の自動運転によりたとえドライバーが寝ていても安全に目的地に辿り着ける、というまさしく夢の車である。そんなT−01の “声”(妙齢の女声)を聞くドーザー。どうやら、ドーザーとT−01のコンピューター波長が同調しており(同じ通信帯を使用している、 ようなものか?)、お互い同士でだけ会話が可能らしい。
 しかし幸せな状況は一変、忘れ物を取りに戻った増田がガレージで見たのは、床に倒れる二人だった。典子は怪我を負い、光利は死亡。 ソルブレインが辞した後にストッキングを被った強盗が侵入し、二人を拳銃で撃つとT−01を奪って逃走したのだ。だが続けて、 廃工場で強盗達の変死体が発見される。現場に残された痕跡からT−01によって轢き殺されたと見られ、大樹は強盗グループの 仲間割れを推測。
 ――だがT−01は、安全センサーの働きで人を轢けない筈では?
 更にそこへ入る、T−01がガレージに戻っている、という報せ。いったい何が起こっているのか……南部自動車開発研究所に向かった ソルブレインは、ドーザーにT−01から話を聞き出させる。
 「誰も安全センサーを切ったりしてないわ」
 「あたしが、あたしの意思であの二人を殺したの」
 T−01は、南部夫妻の復讐の為に、自らの意志で強盗達を轢き殺したのだ!

 忘れずに組み込もう、ロボット工学の三原則!

 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
 第二条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、 この限りでない。
 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

 思いもかけぬ真実に、一旦T−01の動力回路を切断した大樹達は、本部に戻って善後策を競技する。
 万が一を考えてドーザーを残して。
 ど うし て
 案の定、動力回路の配線を接続してしまうドーザー。
 T−01「ドーザー、こんな事して、叱られるよ」
 「一度ぐらいは、命令に背いてもいいさ。でも、T−01。どんな理由があっても、どんな犯罪者でも、 けっして人を殺したりしちゃあいけないんだ」
 自由意思のそれほど発達していないドーザーが命令無視を犯し、それでもなお、犯罪者だから殺していいわけではない、 と説くというのはなかなかいいシーン。
 正直、大樹の麗しきド正論よりも、胸に迫ります。
 それもどうかとは思うけど。
 T−01がスイッチを入れたカーラジオから流れる童謡に耳を澄ませる2台……だがそこへ、再び賊が乗り込んでくると、 手榴弾を投擲。T−01は奪われてしまうが……いざとなれば自力でエンジンを止める事も可能な彼女が 賊の運転のなすがままになっていたのは、復讐を完遂するべく彼等の黒幕の元へ辿り着く為だった!
 T−01が強盗の黒幕の存在を認識しているというのは少し無理がある筋で、勿体なかったところ。最初の強盗達の会話から 知ったというならそのままアジトまでは黙っている筈ですし、ガレージに戻った後のソルブレインの会話にそれを示唆するような 内容は無かったですし。後者の展開が筋としては自然なので、脚本上はあったものの、カットされた、という可能性はありそうですが。
 (やや強引に理屈をつけるなら……T−01、強盗達の会話から黒幕の存在を知る→しかしアジトまで我慢しきれずに殺害→ 殺人行為に一種の恐慌状態となり我が家へと帰還→黒幕の元へ行くチャンスを窺っていた……と収まらなくもないですが)
 これ以上、T−01に殺人を犯させるわけにはいかない。死亡した強盗二人の前科から、関係者を締め上げて黒幕・ 椎名の居場所を聞き出したソルブレインは、そのアジトへと急行する。道中、T−01のTは典子のTであり、 「T−01は2年遅れの結婚指輪なんだ」と玲子にもらす典子。そしてソルブレインが目にしたのは、燃え上がる工場の中で T−01に追い立てられて逃げまどう犯人グループであった(※火が付いたのは犯人グループの責任です)。
 増田、初?の格闘戦で活躍。
 犯人グループを取り押さえる。
 来週死なないように気を付けろ!(おぃ)
 鉄骨の下敷きとなった椎名に迫るT−01を必死に抑え込み、思いとどまらせようとするドーザー。だが……
 「人間なんか皆殺しにしてやる!」
 椎名達による高電圧実験の影響か、回路に変調を来したT−01は、もはや南部夫妻の為の復讐を通り越して暴走を開始していた。 自分の説得にも耳を貸さないその姿に、典子は断腸の思いでその破壊をブレイバーに望む。
 ここに至るまでの車内の会話で、「T−01が夫の忘れ形見であり結婚指輪と同じ存在」とする事で典子の中で非常に重い存在である 事を強調し、ただの暴走ハイテクカー、というだけでなく、それを破壊する事に大きな意味を持たせたのはお見事。 導入のご都合の為かと思われた、大樹の先輩と玲子の親友の夫婦、という設定も、そういう話が出来る関係、 として玲子と典子を設定する必然性が生じ、うまくまとまりました。
 90年代始めにこのぐらいテクニカルな脚本を放り込んでくる扇澤さんはやはり達者。
 欲を言えば「暴走」でお茶を濁さずに、正常なままあくまで復讐心を捨てないT−01にソルブレインがどう立ち向かうか、 とまで重い展開にしても良かった気もします。……まあ、それをやると“ロボットの人権問題”というシリーズとして避けている部分が 浮上してロジックがややこしくなりすぎるので、ここまでが無難ではありましょうが。
 典子の決断を受け、ギガストリーマーを構えるブレイバー。
 だがそれを、ドーザーが押しとどめる。
 「ドーザー!」
 「隊長、私がやります!」
 ……ところで、貴方達が盛り上がっている間に、ジャンヌさんの背後で絶賛鉄骨の下敷き中の椎名さんが 死にそうになっているんですが、レスキューしなくて大丈夫? あの位置関係だと、たぶん炎で熱くなっているゾ、鉄骨。
 ドーザーの振り下ろした拳がT−01を砕き、大爆発。後に残ったのは、スクラップと化した部品と、エンブレムだけ……。 典子はエンブレムと夫の遺骨を手に一度故郷へと戻り、夢の車作りの為の再起を誓って去っていく。そして誰も居ない工場のガレージで、 T−01に花を捧げるドーザーは、あの日カーラジオで彼女と聞いた童謡を口ずさむ。

シャボン玉消えた 飛ばずに消えた
産まれてすぐに こわれて消えた
風、風、吹くな シャボン玉飛ばそ

 夭折した子供への鎮魂の思いを込めた歌詞、という説があるそうなので、そこへ掛けたのだと思われますが、いいラストになりました。
 もう少しロボット(刑事)のアイデンテティの部分に突っ込んでくれれば言うこと無かったのですが、様々な要素をうまく埋め込んだ好篇。
 もちろん当たり外れはありますし、今シリーズでは一本明らかにやりすぎたりもしていますが、やはり扇澤脚本は面白い。 話の出来が悪い時でも盛り込まれている諸々が面白いし、一つか二つは印象的な台詞が入っている。この後メタルヒーローシリーズの 中核を担っていく事になるようですが、この当時に1シリーズ、メインで戦隊やってみてほしかったなぁ。

◆第32話「警官殺人を追え!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:高久進)
 とうとう、ミニスカ+花柄ノースリーブの玲子さんは、どこへ行くのか。
 まあ初期の、全員黒革よりはマシといえばマシな気はしますが、どこからどう見ても刑事に見えなすぎる。 ……まあ誰が刑事に見えたかといえば、竜馬さんからして刑事には見えませんでしたが!
 大樹と警察学校の同期で親友だった警官・田中隼人(翌年のドラフトレッダー)が何者かに刺殺された。平沼時夫という男が逮捕されて 犯行を自供するが、その子供達の話を聞いた玲子は、どこかそれを鵜呑みにできないものを感じる。正木の指示で独自調査を始めた大樹だが……
 という、全編に定番的な捜査シーンや尋問シーンが散りばめられた、割り切った刑事ドラマ展開。
 予告その他のせいで、犯人は一発でまるわかりですが(^^;
 高久脚本という事で不安だった致命的な時制の崩壊などもなく、オーソドックスな展開なので物語も破綻しませんでしたが、 内容の方は本当にベタで良くある展開と伏線のてんこ盛りで、悪くもないけど面白くもなく。
 特撮に刑事ドラマ要素を盛り込んだレスキューシリーズでシンプルに刑事ドラマをやるという一種のメタ構造は、 本編のアベレージが高ければネタ回として評価できない事もないですが、『ソルブレイン』のアベレージが低いのでどうしても、 「気持ちはわかるけどその前にしっかりとヒーロー物として組み立ててほしいなぁ」と思ってしまいます(^^;
 真犯人に向けた大樹の、
 「おまえを死なせはしない! 俺が法で裁いてやる!」
 は格好良かったですが。
 話の展開があまりに地味だと思ったのか、クライマックスは思わぬ激しい大爆発で、ドーザーも変形して活躍。
 誤認逮捕により冤罪寸前だった平沼時夫は酒に溺れて心の弱い自分を反省し、子供達とやりなおす決意を固めて一応、大団円。
 それにしても高久先生もまさか、警察官が身内に甘いのも、身内の敵に超厳しいのも、20年後にそのまま通用して、 2012年の今日この時にまさしくタイムリーな社会諷刺になろうとは、さすがに思わなかったに違いない。
 大樹も感情的になって「平沼時夫が犯人なのは間違いないんだ!」と決めてかかって玲子に論破されそうになるシーンなどは、 ここまでのシリーズでの大樹の描かれ方とは少々齟齬がありますが、面白い。以前にも書きましたがむしろ大樹は最初からこうやって 時々判断を間違える、成長途上のヒーロー像として描いていけば良かったと思います(それを増田に担当させようとして失敗したわけですが)。
 ……そういえば。
 もしかして:増田が出てこなかった
 次回、
 きゃーーー、広瀬さぁぁぁぁぁん!
 時期的にはちょうど、トランザになる少し前か。

◆第33話「勇者が涙を流す時」◆ (監督:小笠原猛 脚本:宮下隼一)
 冒頭からいきなりバラード調挿入歌をBGMに、万引き中学生達と戦う大樹と増田。
 なにこの不思議なシーン。
 そこへ跳び蹴りかまして乱入する少年。それはかつて大樹が補導した、コウヘイという非行少年であった。少年院から帰ってきた彼は 更正とは程遠く、大樹にけじめをつける気満々。さすがに大樹にはいなされるものの、大樹が通信機に気を取られた隙に蹴りを入れるなど、 善戦。
 増田「事件ですか?!」
 大樹「ここは頼む!
 いや、増田ひとり置いていっても……案の定、逃げられる増田。
 こうしてコウヘイは、刑事の顔に蹴り入れて逃げおおせた男、として悪ガキどものリーダー格に収まる。
 大樹相手になかなか見せ場のあるアクションシーンで、前回に続いてなんらかの前振り出演かとも思いましたが、 調べた限りでは特にそういう事はなし。
 兄貴分の土居(広瀬匠!)に盗んだ高性能爆薬を港へ運ぶ運び屋として利用されるコウヘイだが、途中の事故で子分の一人が 怪我をした事から、逆に土居を脅して金を取ろうとして……消されそうになる。それはそうだ。逃げおおせたコウヘイは110番通報し、 ソルブレインが取引現場を押さえて捕まっていた悪ガキ達も無事に助け出される。
 コウヘイ達はちんぴら以下のバカな悪ガキなので、ほぼ何も考えないで行動していても仕方ないといえば仕方ないのですが (そういう演出意図でもあるでしょうし)、そんな連中に運び屋を頼んで余計なトラブルを背負い込み、昼間っから堂々と駐車場で 盗品の積み込みしている悪人達が、何から何まであまりにも杜撰すぎる……。
 悪役が広瀬さんでなかったら、途中で心が折れていたかもしれない……(笑) 酷すぎるちんぴら役でしたが。
 にしても、増田は民間人を巻き込んだ爆発が起きた時でも、何よりも真っ先に「ブレイバー!」を心配するのはどうなのだろう(笑)
 この件で少年院に逆戻りする事になったコウヘイの元を訪れた大樹は、鑑別所から少年院への移送を見送りに来るだろう悪ガキ達の前で 「みっともなく泣き叫んでほしい」と彼に頼む。そうする事で、彼を「勇者」と持ち上げる少年達が、これ以上浮かれて悪の道に 引きずり込まれないように……そしてコウヘイ自身にも負の連鎖を断ち切って欲しいと。大樹の前では断るコウヘイだったが、 見送る悪ガキ達の前で泣き叫んで少年院送りを嫌がってみせる。その姿に、失望して走り去っていく悪ガキ達……。
 盗難事件そのものはBパート前半で解決し、後半5分、大樹によるコウヘイの説得という意欲的な構成でテーマも悪くはなかったのですが、 あまりにも事件パートが杜撰すぎました。意欲は面白いけどエピソードとしては出来が悪かった、のが残念。
 次回、とうとう大幅テコ入れ?
 というか、あれはどう見ても……
 もしかして:増田殉職でメンバー交代

◆第34話「新英雄(ニューヒーロー)九州へ!−PART1」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 前回のどたばた気味のSS−1回が置き土産と思ったら、普通に杉村さん登板でした。
 熊本県荒尾市・三井グリーンランドで遊ぶ、幸せそうな親子連れ、中田家。だが息子・光夫が何者かによって誘拐されてしまう。 更に同じ頃、父親が専務を務める新和精密工業の有明工場で爆発火災が発生。支援要請を受けたソルブレインはSS−1で出動して 救助にあたり、この二つの事件に関係があるのかもしれない、と現地警察と協力して継続捜査にあたる事になる。
 早速、遊園地で光夫少年の行方を追って聞き込みにあたる増田に、襲いかかる黒い影! ここ2回ほどの格闘戦での活躍が フラグだったのか、拳銃の通用しない襲撃者にぼっこぼこにされた増田は意識を失う……。
 雪まみれのウォータースライダーみたいな所での戦闘は、ロケ地を活かしていて格好良かったです。
 しかし、玲子さんがプールに飛び込む必要はあったのか。
 そして玲子が倒れ伏す増田の上で見つけたのは、ズバットカード!
 「この者、役立たず」
 ……ではなくて、誘拐犯からの5000万円を要求する脅迫状であった。あわやと思われた増田もなんとか番組降板の危機を乗り切り、 その証言から襲撃者の身元が浮かび上がる。男は、ボンバー本間。数ヶ月前に海外で傷害事件に巻き込まれ、 行方不明になっていた元プロレスラーであった。
 プロレスに詳しい亀さんの解説によると子供に人気があったというボンバーは、誘拐した光夫に手品を見せて楽しませたり、 幼い子供を誘拐した事に不満そうだったり、そこはかとなく根はいい人の雰囲気。増田に襲いかかっている時は ノリノリでしたが!
 身代金の受け渡し場所として指定された福岡リコランドに向かった中田専務とソルブレイン、取引15分前に現場に着いて 「館内に居る不審者を徹底的にチェックするんだ」とか、堂々と館内をうろつくドーザー、とか、 どう見ても一番不審なのはソルブレインです。
 「本庁のエリートだからって、調子に乗りやがって……!」(地元警察:某さん)
 増田がやられて頭に血が昇っている大樹は、完全にこれが誘拐事件の捜査だという事を忘れています。
 案の定、犯人からかかってくる「刑事がたくさん張り込んでいるから取引しねーよ」という電話。もっとも犯人も増田の上に 脅迫状を残しているぐらいなので、これを見越して罠を仕掛けている、という設定ではあるのですが、それにしてももう少し、 誘拐事件らしい捜査をしてほしかった所ではあります。
 リコランドが吹っ飛ぶほどの爆弾を仕掛けた、という犯人からの電話に爆弾を探すソルブレインは、地下施設で爆弾を発見。 だがそれを解除しようとしたブレイバーに、ボンバーが襲いかかる!
 ドラム缶を投げるというボンバーの凄まじい攻撃に大苦戦するブレイバー。というか、34話目にして、 ブレイバー、初の完敗? 人間離れした怪力でブレイバーを追い込むボンバーだったが、突如ブレイバーの前で苦しみだすと、 メタルボディの異形の姿へと変貌する。彼の正体は、金属人間だったのだ!
 ケルベロスのビームすら無効化するメタルボンバーの攻撃の前に、駆け付けたジャンヌとドーザーも倒れ、かつてない大ピンチに陥る ソルブレイン!
 だがその時――現場に飛び込む一台のパトカー、そして姿を現す、新戦士・ナイトファイヤー!!
 ナイトファイヤーの放つパイルトルネードを受けてメタルボンバーは撤退。そしてナイトファイヤーのマスクの下から現れたのは、 香川竜馬! どうして竜馬がここに居るのか? 金属人間とは何者なのか? そして事件の黒幕の目的とは?  今、九州を舞台にソルブレイン史上最大の戦いが始まる!
 約20分、ナイトファイヤー登場までの前振りだった(笑) という凄い話。
 前回の次回予告が、本編で使われなかったカットまで含めて、見せ過ぎもいいところだったような(^^;
 劇中で大樹達が正木に連絡を取って、新兵器の最終チェックで忙しい……という伏線シーンが2回ほど入るのですが、 「本部長が来てくれない」「本部長が素っ気ない」とか、やたらに正木に九州に来てほしがる大樹達がちょっとおかしい(^^;
 そんな正木は何故か通信機で金属人間について言及するし、色々おかしい。
 ボンバーがそもそも海外で行方不明になっているので、インターポール絡みで竜馬さん登場と繋げるのかもしれませんが。
 終始サングラスな敵の黒幕とか、なにやら後ろ暗い事がありそうな中田専務とか、幾つか伏線は張っているので、次回、 どうまとめるか一応期待。
 それにしても、初登場時のアピールポイントが光線兵器とか、ナイトファイヤーは 全くレスキューしそうな気配がないのですが、警察庁はどこまで武力強化するつもりなのか。

◆第35話「新英雄(ニューヒーロー)九州へ!−PART2」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 それ自体が生命を持ち、タンパク質と同化する事で金属化した生物へと変質する、金属生命体オージー9。 その特質の一つは金属化した生物は成長を続けるという事で、動物実験ではハツカネズミが10日あまりで全長1m以上の モンスターと化していた。
 ICPOに出向していた筈の香川竜馬が日本へ帰国していたのは、この開発者である博士を半年前に殺害し日本に逃亡したと思われる 助手・高岡隆一を追っての事だった。そしてボンバー本間が傷害事件を起こして失踪したのも半年前……おそらくボンバーには、 高岡の手によって博士から奪われたオージー9が埋め込まれている。
 ボンバー本間は金属人間→バックに居るのは高岡
 と冷静に考えるとおかしいのですがなし崩し的に事件の黒幕が判明。
 本間を金属人間にした人物と誘拐事件の黒幕が同一人物である必然性実は無いので、本来ならこの後に高岡の関与を洗ったら 中田専務との過去の関係性が浮上して……とならないといけないのですが、尺の都合で亜空間した模様。
 ICPOとソルブレインの技術提携によって誕生した新スーツ、ナイトファイヤー、そして新兵器パイルトルネード。
 ブレイバーは誘拐事件そっちのけで、パイルトルネードの試し撃ちに臨む。
 ……て、あれ、ブレイバーも、パイルトルネード使うのですか。
 パイルトルネードは3つのモードを持ち、
 モード1:スーパーディスチャージャー(消化弾)
 モード2:コーキングパンチャー(粘着弾)
 そして、
 モード3:トルネードバースト(破壊光線)
 と色々と反省を活かした仕様。
 ただの破壊兵器ではなく、レスキューにも使える新装備、というのは非常に良かったと思います。良かったと思うのですが …………えー…………あー…………

 ギ、ギガストリーマーは?

 もしかすると、ギガストリーマー回がそもそも、ナイトファイヤー登場の前振りだったのでしょうか。
 あんなに盛り上げて託した上に、色々と筋に問題のある回だったのに、何だったのか。
 そして……なんだか同じ武器を持った事で、わかりあう二人。
 これだから男って……。
 ナイトファイヤーとソルブレイバー、そし二つのパイルトルネード。新戦力に意気上がる大樹達のもとへ、 中田専務と高岡の繋がりに関する情報が入ってくる。
 高岡は養子に入った家の名前で、もともとの名前は水谷隆一。かつて中田専務が働いていた水谷ICの社長夫婦の一人息子であった!  画期的なICを開発した水谷ICだったが、その技術を狙う新和精密工業の引き抜き工作に乗った中田の暗躍によって不祥事が続発し、 会社はICの発売に漕ぎ着ける事無く新和精密工業に買収される。そして社長一家は心中……ひとり生き残った高岡は、 裏切り者の中田に対する復讐の為に現れたのであった。
 その高岡から、園内に爆弾を仕掛けたという連絡が入り、必死に園内で爆弾を探す大樹達。
 そういえばこのパーティには、探知係が存在しません。前作ならバイクルかウォルターが適当に見つけてしまいそうですが、 ドーザーにも電磁波感知装置とか、付けた方が良いような(電磁波は魔法の言葉!)。
 爆発まであと30分……その時竜馬が、遊園地のシンボルタワーに気付く。そこからなら、園内を一望し、大樹達の行動も監視できる!
 ナイトファイヤーの変身時のキーワードは「ブラスアップ!」である事が判明。ううーん、そこは「着化!」 が良かったなぁ。まあ基本、ブレイバースーツをベースにしているようなので、仕方ないか。後ここで、大樹・竜馬・玲子が、 並んだ車に一斉に駆け寄って乗り込むシーンがあるのですが、格好いいというよりは……正直、間抜け(^^;
 特に、申し訳ないけど玲子さんのおまけ感が。
 実際、大樹と竜馬は変身シーン入ったのに、玲子さんスルーですし。
 シンボルタワーに乗り込んだソルブレインの前に立ちはだかるのは、金属化が進み、ほとんど理性を失い異形のモンスターと化した ボンバー本間! ナイトファイヤーの装備は、ケルベロスから謎の棒まで、何から何までソルブレイバーと一緒である事が発覚(^^;  奥の部屋でジャンヌとドーザーが光夫少年を助け出すと、高岡は体から変なケーブルを出してor外から変なケーブルに捕まえられて、 脱出。ここは高岡も金属人間能力を有している演出だったのかどうか、今ひとつわかりませんでした。故意にどちらともとれる演出にした 可能性もありますが。
 爆弾を止める為にやむなく本間に向けてパイルトルネードを向けるブレイバーとナイトファイヤーだったが、解放された光夫少年の涙に ボンバーは理性を取り戻し、その隙にブレイバーが爆弾を解除。しかしボンバーは金属生命体としての急成長の副作用で命尽きてしまう。 高岡の話を聞いた光夫に「パパは悪い人だったんだね!」となじられ、「私は悪くない」「会社の為だったんだ」の一点張りから 急に改心する中田専務。
 ううーん、この辺りの描写が丁寧なのがレスキューシリーズの良い所だったのに、今回、凄く適当(^^;
 そこへ背後から現れてビームライフルを乱射しまくった高岡だが、ソルブレインにガードされ、攻撃を断念、 狂気の矛先を復讐の妨害を邪魔したソルブレインへと向ける。
 「貴様等ソルブレインを、必ず叩きつぶしてやる! 覚えていろ! ははははは」
 高岡は見た目のはったりはともかく、高笑いの声などは格好いいと思ったら、現クロス2000、 かつての世紀王シャドームーン、後のキンタロスこと、寺杣 昌紀(てらそま まさき)さんでした。キャスト見て誰かなぁ…… とは思っていたのですが、てっきり、ボンバーだと思っていた(笑)
 こうして事件は解決したが、高岡は逃亡。正木の交渉の結果、竜馬はソルブレイン本部内にICPO東京支部を置く形で常駐し、 ソルブレインに協力しながら高岡を追う事になるのであった。
 ……なんだろう、この島流し感。
 前作を記憶にある方なら、どこかで見たパターンだな……となると思いますが、恐らく前作31・32話の焼き直し (脚本も同じくメインライターの杉村升)。ギガストリーマー初登場回/パイルトルネード初登場回、 というのも意図的に被せたものでしょう。
 前作31・32話に登場した、娘を交通事故で失った哀しみから全国のバイクへの復讐を計り、それを邪魔した警察に矛先を変えて 警視庁を大パニックに陥れた狂気の天才科学者・広崎は、31話ラストでの逃亡後、後編となった32話ですぐ始末してしまったのが 惜しかったのでは、と思われるキャラクターでした。『ウインスペクター』自体も、因縁の相手として最終話に、 1話のゲスト悪役であった博士を割と無理矢理に持ってくる事になっていたので、おそらくその反省を踏まえた構成かと思われます。
 ソルブレインに復讐を誓う因縁の相手を残しつつ、竜馬さんを日本に残す理由も作り、加えてこの設定なら普段は高岡の件を 追っているという事で竜馬さんを毎度出さなくてもいいですし、全体の構成としてはなかなか良いと思います。単体ではかなり無茶な 金属生命体というネタを用意した事で、竜馬さんがひとりICPOやるぐらいの大きな事件、として納得のできる範囲ですし。
 惜しむらくは、新戦士登場と全体構成の為の引きに重点が置かれ、地方ロケ名物観光案内も加えた事で、前後編のエピソードの出来が 良くなかった、という事ですが(^^; あと竜馬さんのセミレギュラー化(?)は嬉しいけど、ナイトファイヤーはちょっと線が 細いのが惜しいなぁ。もう少し骨太の方がデザイン的に好みではあります。中の人補正もあるので、格好いいけど!
 そして、主人公と追加戦士が武器が一緒というのは驚天動地というかもはや斬新 のレベルですが、ぎ、ギガストリーマー……(はやはり悪魔の兵器だったので封印されたのです)。
 後はパイルトルネードのレスキュー的要素が、ちゃんと使われる事を祈ります。SS−1の存在意義がだいぶ危険になりそうですが。

 次回、

 またか、またやっちゃったのか……

◆第36話「何度目だ、不祥事」◆ (監督:東映太郎 脚本:正木俊介)
じゃなかった
◆第36話「誘拐犯は隊長!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:杉村升)
 西尾大樹・営利誘拐で逮捕。
 うーんまさか、ここまで35話が全て、主役交代の為の前振りだったとは。
 ……まあ冗談?はさておき、パトロール中、誘拐未遂事件に出くわした大樹は少女・江口恵子を助けるが、なぜか本部への無線が 通じない。公衆電話からかけても「おかけになった番号は現在使われておりません」。更にあろう事か、新宿の大型モニターで 身代金目的の凶悪誘拐犯として報道されてしまう。
 困惑する大樹の前に姿を見せる白いシルクハットの老人。そして道行く人々に囲まれる大樹。いったい、何が起きているのか……?!  問答無用で逮捕されそうになって逃亡を図った大樹は、もみあいになって警官を撃ってしまう。
 「違う! 違うんだ!」
 ああうん、犯人はみんな、そう言うんだ。
 演出としては、人々に囲まれる辺りから、ちょっと様子がおかしい、普通の世界ではない雰囲気。東映的にいえば、 魔空空間っぽい感じ。となっています。
 すっかり逃亡者になった大樹と恵子は、使われていない倉庫の中に逃げ込む。
 「どうしてこんな事になったんだ。どうして……」
 うんだから、犯人はみんな、そう言うんだ。
 そこへ倉庫にあった、線の切れている筈の電話にかかってくる、本部長からの電話。
 「自首するんだ」
 そして急に映ったTVには、娘が誘拐された哀しみを訴える両親の姿。続いて流れるTVゲームのCMにはあの白いシルクハットの 老人が登場し、大樹はその顔に見覚えがあるが、どうしても思い出せない……。少女の家に向かう大樹であったが、中は無人。 そして再びTVからCMが流れ、「みんなで買って良い子になろう 良い子はみんな持っている」という文句が 「みんなで買って悪い子になろう」と響き、強烈な頭痛が大樹を襲う。
 少女とともに表に出た大樹を待っていたのは、銃を向ける玲子! &機動隊。
 「本部長は、隊長の顔なんか見たくないって言ってるわ」
 という台詞はなんか、親子喧嘩みたいです(笑)
 更に姿を見せた両親の元に戻った少女が豹変、大樹を誘拐犯だと名指しし、哀れ大樹は機動隊によって逮捕されてしまう。
 「違う!これは罠だ! 本部長に会わせてくれ!」
 だから、みんなそう言うんだって……。
 取り調べ室ですごむ増田と、虫でも見るような目の玲子さんから、間違いなく自分の声である脅迫電話のテープを 聞かされる大樹は、必死に正木への面会を要請するが、拒否され、廊下でたまたま出会った正木にも冷たく一蹴される。
 これまでも数多の不祥事を揉み消してきた実績からか、今回の大樹はやたらに本部長に会いたがります。 「本部長に会えば全て解決する」みたいな態度が怪しすぎて仕方がありません(笑)
 牢屋の中で考え込む大樹。なにかが、なにかがおかしい……必死に考える内に思い浮かぶ、鉄パイプで殴られた記憶……白衣の男…… 「そうか、そうだったのか」。いきなり始まった裁判で死刑を言い渡される大樹だが「本当の悪党になってやる!」と裁判所を逃亡し、 その前に、ラスボスのように登場した正木が立ちふさがる。
 「大樹……貴様とうとうおかしくなったか」
 全てを幻覚だと理解した大樹は、正木に向けて発砲。更に玲子、増田を撃ち殺し、空に向けて銃を乱射すると……世界が壊れていく!
 全ては、キダ博士の恐るべきマインドコントロール実験であった。人が急に植物人間になる事件を追っていた大樹は逆に博士と助手に 拉致され、マインドコントロール装置により人を悪党に変える最後の実験台にされていたのだった。だが大樹はその精神力で装置の見せる 幻覚を打ち破り、半狂乱になった博士は施設ごと自爆を試みた所を、駆け付けた玲子達の協力もあり、逮捕される。
 「全ては、科学の進歩の為だったんだ……」
 「違う! 人の心を忘れたところに、本当の科学の進歩なんてない!」
 博士達は逮捕され、幻覚の素材として用意された写真に目をやる玲子。中で少女の写真をわざわざクローズアップして、 事件とは無関係な子だ、と大樹に強調させる必要性は全く無かったと思うのですが、まさか今後の伏線……?  単純に「で、この娘は?」と疑問が残るのをすっきりさせようとしただけの気もしますが、むしろ変になったので要らなかったような。
 「ところで本部長は?」
 「心配して待ってます。急いで帰りましょう」
 ニコニコ笑顔で本部へ帰る大樹達。
 ……え、何それ、そのオチ(^^;
 いやまあ、部下が行方不明になって正木が心配するのは普通と言えば普通なんですが。
 「本部長が僕を信じてくれないなんて有り得ないです。だから幻覚だと見抜けたんです」
 と、得意満面の笑顔を浮かべる大樹と周囲の雰囲気に漂う、この微妙な気持ち悪さはなんだろう(笑)
 うーん、『ソルブレイン』だと、上司と部下の篤い信頼というより、男達の体育会系的いちゃいちゃよいしょ に見えるのはいかがしたものか。たぶん、大樹と増田の関係が悪いんですが。特に増田が最近、「僕が好きなのは先輩で、 民間人とかどうでもいい」のを隠さなくなっているのが。
 今回はAパートまるまる逃亡者・大樹(明らかにおかしな世界である事は演出していますが)、Bパートも冒頭から大樹の取り調べに ノリノリの玲子&増田と、魔空展開を凝って貫いたのが良かったです。こういうのはやはり、やりきってこそ面白い。

→〔まとめ7へ続く〕

(2013年3月24日)
(2019年12月27日 改訂)
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