■『特救指令ソルブレイン』感想まとめ5■


“青空高く 光を浴びて
真っ赤な母艦 出動だ”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特救指令ソルブレイン』 感想の、まとめ5(25〜30話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第25話「巨大母艦応答せよ」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升)
 いきなりのビル街、大破壊。
 ……番組、間違った?
 事件は、城南大学物理工学部の島野博士(演:石橋雅史、アイアンクロー!)が研究開発し、何者かに盗まれた大気圧変換装置による ものだった。この装置により東北の石油コンビナートを爆破するという予告電話がかかってきた事から、正木は島野博士に協力を求め、 博士を乗せたソリッドステーツ−1が、東北へ向けて発進する。
 玲子「私たちにとっても、心強い味方です」
 と、定期的に持ち上げられるSS−1。
 やりすぎると戦隊になってしまうのでバランスが難しいのでしょうが、どうせならソルブレイン本部はSS−1の基地と一緒でも 良かったような。劇中で「母艦」「母艦」言うのですが、使われ方が大きなレスキューメカでしかないので、どうにもそれらしくないのが 難。
 なお、犯人の予告電話に対する本部長の反応。
 「誰だ貴様ぁ!」
 「馬鹿な!」
 …………どうして本部長は、組織内部の寝業や政治工作は得意なのに、犯人との交渉能力が皆無なのでせう。
 素人だってもうちょっと、逆探知の為に話を引き延ばせますよ!
 初回に登場したオペレーター部署が劇中から抹消されたのは、本当に残念。
 予告された現場で必死の捜索を行う現地警察、そして東北へ飛ぶソルブレインと島野博士。だが、それを嘲笑うかのように、再び犯人 からの電話が本部にかかってくる。
 「SS−1が発進したようだな」「SS−1は時間内に現地に辿り着くことはできない」
 そしてSS−1の針路近くで発生する、ビル爆発火災。見過ごすわけにはいかない、と急遽SS−1は現場へ立ち寄り、ブレイバー、 ジャンヌ、ドーザー出撃で消火活動にあたる。タイムロスはあったものの無事にレスキューを終えて再び東北へ向かうSS−1だが、 今度は針路上の福島で爆発事件が発生し、その救援に回る事になる。
 一方、島野博士の身辺を洗っていた増田により、博士が私財をつぎこみ借金を重ねて大気圧変換装置を開発していた事、そしてこの 数ヶ月、外国の軍需産業とコンタクトした形跡がある事がわかる。
 ……まあ、演じているのが石橋雅史さんな時点で、怪しすぎるのですが、博士(笑)
 二つの災害を無事に救援し、現場へと急ぐSS−1。だが、今度はエンジン部分にトラブル発生! 動力パイプには人為的に切断された ような形跡があり、現場に白髪が落ちていた事から、玲子は島野博士に疑いの目を向ける……。
 大樹「犯人は島野教授に違いありません」
 正木「ああ、わかっている」
 全ては、軍需産業に対して装置の売り込みを計る島野博士が、ソルブレインが乗り出してくる事を予期して自らその至近から妨害工作を 行うという恐るべき計画であった。まんまとその計画にはまり、SS−1の現地到着時刻は、爆破予告のギリギリ。正木は現場の警官達を 退避させ、大樹達にも爆破が起きた後の消火活動に全力を注ぐように指示するが、「爆破は僕が食い止めてみせます」と大樹はそれを拒否。
 自分以外の隊員をSS−1から降ろさせた大樹は、“装置を解除するため”という当初の名目を盾に島野博士ひとりを半強制で連れて、 二人だけでSS−1を現場へと着陸させる。爆破予告まであと僅か……死なばもろとも、道連れになりたくなかったら装置 を仕掛けた場所を教えろと、自白を強要する大樹。
 必死に粘る博士だが、爆破2分前に、遂に観念。装置の場所を大樹に告げ、カモフラージュしていた装置に駆け寄って停止。大樹は それを、犯人である動かぬ証拠として、博士を逮捕するのであった。
 博士の自白を引き出す為の無茶な作戦の中で、ヒーローらしさが表現できたのが、かなり良かったです。
 特に今回は無茶をするにあたって、大樹が自分の命を天秤の片方に乗せている、というのが良い。
 例えばメサイア回と比べた時、犯人説得に失敗した時のリスクマネジメントに欠けている点では同じであるものの、刑事としての 任務を放棄しているわけではなくギリギリまで刑事として活動しているし、そのリスクを自らが最大に負っている、という点がヒーローと して正しい。
 ソリッドステーツはともかく、降りた描写が無いので、知らない内に一蓮托生になっているドーザーは、少し 可哀想でしたが(笑)
 また、先にレスキューシーンを挟んでブレイバーなどを活躍させた上で、クライマックスは生身の大樹と博士の対決に集約する、 という変則構成。大樹が珍しく(あれ?)正統派ヒーローとしての活躍を見せる回だけに、大樹にピントが集約されて良かったと思います。
 博士が策士策に溺れすぎた感はありますが、バランスの良かった回。
 SS−1ミニチュア回の、“大樹も操縦可能”という、当時は台無し感のあった追加設定もうまく活かされましたが、お約束的に、 杉村升SS−1三部作、みたいな感じで終盤にもう一回ぐらいソリッドステーツ話あったりするのでしょうか。
 インフレ的には次は……テロリストによって占拠?
 ところで今回、憑き物が落ちたかのような大樹の大活躍だったのですが……ジャンパーか?! 白ジャンパーの力か?!
 大樹は今回から夏仕様(?)で、さわやか白ジャンパーに衣装チェンジ。
 色彩的には、竜馬さん登場回からで良かったような気はしますが。
 あの回は本当に、画面が黒かった(^^;
 一方、半袖の増田は軽い雰囲気が増大して、よりイラっとする感じに(笑)
 今回は珍しく、別行動で情報収集で役立ったりはしているのですが。
 そして最近の玲子さんは無駄にスカートが短すぎて、さすがにどうかと思います。

◆第26話「罠をしかけた刑事」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)
 城西警察署の前で交通事故にあった男、草野秋彦は、連続企業爆破集団「五月のバラ」のメンバーだった! だが警察病院に収容された 草野は自分の名前を含めて一切を覚えていない記憶喪失状態で、事情聴取は不可能。事件を担当する公安の木崎部長は草野の記憶を強引に 取り戻させようとするが、それを止めようとした大樹ともども……医者に怒られる。
 目的の為には手段を選ばない事で知られる公安の木崎刑事は、病室に入ってくるそうそうの台詞が「飛んで火にいる虫けらか」と、 キャラが立っていて良い感じ。
 犯罪者は虫けらで、手段を選ぶ必要が無いという木崎に、くってかかる大樹。
 「虫けらなんかじゃありませんよ」
 「なら、薄汚い豚だ」
 「どんな犯罪者も人間です!」
 「……君は仕事を変えた方が良さそうだな
 「どういう意味ですか」
 「犯罪者を憎む心がない奴には、警察官を続けていく資格はない」
 木崎さん、熱い(笑)
 「なんて傲慢な人なの」
 「間違っている、あの人は絶対に間違っている……!」
 木崎に対して反発する、玲子と大樹。また正木も、その強引すぎるやり方には、危惧を抱いていた。
 だが木崎は草野から情報を得られないとなると、彼を逮捕して取り調べが進んでいるという偽情報を流す事で、組織を誘き出そうとする。 記憶喪失の草野を囮に使う事に反対するソルブレインだが、かつて民間の自転車屋さんを囮に使った事がある彼等には 残念ながら説得力がない。
 邪魔なソルブレインを追い払うべく、土砂崩れの影響で現場へ向かうルートが変わったと、木崎は部下に嘘の誘導をさせる。だが大雨が 降った筈の割には草木が濡れていない、と途中で気付いて珍しく増田が役に立ち、大樹達は草野を連れた木崎を追って現場に急行。
 その頃、木崎は「五月のバラ」による待ち伏せ攻撃を受けていた。
 「運が良ければ逮捕だが、運が悪ければあの世行きだ!」
 「ひるむな! 撃て! 撃て! 撃ち殺せ!」
 世紀末TOKYOだから、仕方ない
 相次ぐ爆弾攻撃、いつのまにパトカーから連れ去られる草野。草野を救出した「五月のバラ」は、彼が記憶喪失状態であり、偽報を 流してそんな草野を囮に使った警察の非道さに報復する為に、次々と派出所を爆破する。
 資本主義社会のブルジョワどもへの抗議と革命を標榜する「五月のバラ」はこれまでの爆破事件では念入りに予告をし、死者を出した 事はなかった。その豹変に木崎の責任は重いと、割と根に持っている大樹。
 劇中で名乗らないので階級は不明ですが、大樹も花形部署の隊長でいつも部下から割と持ち上げられているので、目上の人間に虚仮に されると、恨みが根深い模様。
 これ以上の被害の拡大と、木崎の暴走を食い止めるべく、「五月のバラ」のアジトを本格的に探るソルブレイン。指名手配犯である筈の 草野が城西署の前で事故に遭った事から、盲点を突いて署の近くにアジトがあるのではと話を聞きに行くが、「んなわけない」と、刑事に 一蹴される。だが、かつて草野が軽い障害未遂を起こした際に、城西署に勤務していた森本という刑事がその面倒を見てやっていたという 情報を入手。
 その時、稲城の廃工場にアジト発見の情報が入る。ならば草野はなぜ、署の近くをうろついていたのか……?
 疑問を持ちながらも、現場へ急ぐソルブレイン。警察に囲まれた「五月のバラ」は次々とダイナマイトを胸に包囲に対して特攻をしかけ、 部下達にそれを「撃ち殺せ!」とすっかりハイになりすぎて暴走している木崎。そして狙撃されたメンバーが取り落としたダイナマイトを 拾っては投げて捨てる大樹。
 ブラスアップしようよ……。
 外での爆発の衝撃で記憶を取り戻した草野は事故直前の行動の理由を思い出し、ダイナマイトを手にしながら恐る恐る顔を出す。
 「森本さんを呼んでくれ!」
 そう、草野は事故の直前、城西署に自首するつもりだったのだ。だが、森本刑事は半年前に病死していた……それを聞き、工場の中で 派手に火をつける草野を、爆発の中に飛び込んだブレイバーは救出する。
 「森本さんに、手錠をうってもらえたら、やりなおせると思ったのに……」
 草野が自首するつもりだった事を大樹は木崎に告げるが、そんな事は関係ない、と犯人達への悪意を剥き出しにする木崎。
 「どうしてあなたは犯罪者の心の中を見ようとしないんですか?!」
 反駁する大樹に、怒りを募らせる木崎。
 「査問会議にかけて懲戒免職にしてやる」
 「査問会議に持ち込んでも無駄ですよ」

 ソルブレインの背後には、正木が居るからな!
 現場での無茶な銃殺命令などで、部下や狙撃班からの信望をすっかり失っていた木崎は、自分が孤立無援である事を知る。
 「目を醒ましてください木崎さん!」
 ここは木崎と互いの信念をかけてバトルする大樹が格好いいのですが、斜め後ろの両サイドに玲子と増田が立っているので、非常に 台無し(^^; 取り巻きを連れているみたいで、絵として凄く格好悪くなってしまいました。
 「五月のバラ」の身柄は公安に預ける。だが……
 「その取り調べで問われるのは、彼等四人の罪であると同時に、貴方の警察官としての資格です。その事を忘れないでください」
 根に持ってる、根に持ってるなぁ、大樹
 筋としても台詞としても悪くないのですが、根に持っているようにしか見えません(笑)
 無言を貫き通した木崎さんは、少し反省して考え直したけどあくまで大樹とは別の信念を持っている人、としてもう一回ぐらい出て くると、面白いかも。
 次回、忘れた頃のバイオネタ。
 鷺山脚本と予想。

◆第27話「お話し植物の秘密」◆ (監督:小笠原猛 脚本:鷺山京子)
 冒頭、
 轢く?!
 と思ってドキドキしたのは私だけではないと思いたい。
 ガードレールの外側に落ちてしまった犬のぬいぐるみ・ポメを拾おうとしていた少女チカコと知り合った増田は、 彼女を父親の勤め先だという松本バイオ研究所まで送っていく。父親を迎えにやってきたチカコだが、妙に警戒厳重な研究所で働く父親、 手塚博士は何かの実験に夢中で娘への態度は素っ気ない。
 その研究室で巨大な培養槽の中に入っていたのは、人の頭部ほどもある巨大な藻、ネオレラ。博士の研究に投資し、 研究を商業ベースに乗せるようにせっつく人相の悪い所長に、
 「私はこの研究を商売に使うつもりはない」
 と断言してしまう、研究バカ・家族無視・経済観念なしと三拍子揃った、典型的困った博士。 そういえば前作第18話「超能力!孝行少女」も駄目学者と健気な娘の話で、定型的な設定といえば設定ですが、同じ鷺山脚本。
 博士と助手がお話し合いの為に所長室に向かった後、ひとり残ったチカコに話しかけてくる、藻の声。 手塚博士が研究しているその植物ネオレラは、知能を持ち、人間と会話する事さえ出来るのだ!  ネオレラが電圧実験などを受けている事に心を痛めていたチカコは、一晩寂しくないように、と大事なぬいぐるみポメを置いて 研究所を去る。
 その夜――ネオレラを盗み出そうと研究室に強盗が侵入するが、ネオレラの放った電気ショックで気絶。ネオレラは近くにあった ポメのぬいぐるみの中に身を隠す……。
 強盗二人組のおっちゃんの方が、警棒で襲いかかってきた警備員を身軽にのして気絶させるとか、やたらに強い(笑)
 翌日、違法な遺伝子組み替えを行っていた為に、ソルブレインの捜査に口をつぐむ所長と博士。そしてネオレラはポメの中に入ったまま チカコの家に連れ帰られ、彼女に話しかける。博士さえ知らぬ電撃能力を持っていたネオレラであったが、自分を気遣ってくれていた チカコには懐いており、ポメに偽装したままの生活を送る事になる。だがそこに迫る黒い影……研究所に忍び込んだ強盗は手塚博士から ネオレラを奪おうとする松本所長の手引きであったのだ。それに失敗した事から博士がネオレラを隠したのだと疑い、ちんぴら達と共に 家捜し。そこへ帰宅したチカコを追いかける。
 一方、病院で意識不明の強盗Aから遺伝子改造の産物と思われる植物の組織が発見され、博士に追い込みをかけたソルブレインは、 “知能を持ち、考え、声を出す”遺伝子組み替え植物ネオレラの真実を聞き出す。研究所から姿を消したネオレラはどこへ……その時、 増田が研究所から唯一外に持ち出された物の存在に気付く……それは、ポメ!
 この辺りは、視聴者に対してチカコに懐くネオレラの描写さが提示れる一方で、ソルブレインはあくまで“危険な植物”を 追いかけている、という複数の視点が入っているのが良いところ。
 そして倉庫街に追い詰められたチカコ&ポメに襲いかかるちんぴら達を相手に、ネオレラ大暴れ。銃弾を受けて細胞分裂したネオレラは 次々とちんぴら達を気絶させていくが、チカコの「やめて」という声を受け入れる。彼女たちに迫る松本所長……恒例の、 化学薬品にピストル。
 あまりにピストルが日常化している為かと思うのですが、この世界の住人達は、もう少し火器を使う場所を考えてほしい。
 薬品に火がつき、激しく爆発炎上する工場……倒れてきた鉄骨に飛びついてチカコをかばうポメ!
 この後、駆けつけたソルブレイバーが炎にまかれたチカコを助け出すのですが、

 ポメさんが格好良すぎて全て持っていかれました。

 ブレイバーは続けて、ギガストリーマーで倒れてきた鉄骨を吹き飛ばしてポメを助けると、松本所長とちんぴら達も全員御用。 ショック死?したかと思われたネオレラだったが息を吹き返し、再びポメの姿を借りて喋りだす。ぬいぐるみを抱きしめる娘の姿に、 深く反省する手塚博士。
 手塚「私は、一度としてネオレラを、命あるものと考えたことはなかった。だから真実はなにひとつ見えていなかったんですね」
 増田「手塚さん、これからのチカコちゃんに必要なのは貴方なんじゃないですか。科学者ではなく、父親としての」
 手塚「私は罪を償います。そしてもう一度ネオレラを、生き物として、人間の友達として研究してみたい。……チカコと一緒に」
 家族の絆と科学者としての倫理、命や感情を大事にする事と、いきすぎた科学への反省、と作品に散りばめられたテーマをうまく絡めて、 なかなか綺麗なオチ。博士も実刑判決、という程にはならなそうですし。
 ……まあ、たまたま娘に懐いていたからいいものの、割と危険な生物なのは確かなので色々と前途多難は 予想されますが。
 ある意味で、子供+動物のいわゆる無敵の組み合わせなわけですが、ゲストの少女チカコちゃんも好演。
 それにしても、小笠原監督はもうちょっと、演技のつけ方を考えた方がいいよなー……とはしばしば思う。特に変な事もしないかわりに 特に面白みもない、良く言えば安定、悪く言えば平凡な演出ラインが持ち味ですが、時々、キャラクターの立たせ方が適当にすぎます。
 本来は演出話は好きなのですが、画面がYouTube(画質・大きさの問題)なので一連の感想ではあまり触れていないのですが、 それにしても今回は目立って適当でさすがに気になりました。
 クライマックスの工場炎上シーンでひたすら棒立ちで「ブレイバー!」と叫んでいるだけの増田とか、ラストで博士が “これから喋りますよ”という感じでわざわざ大樹の前まで出ていってから喋るとか(動かなくても声の届く位置なので非常に不自然だし、 大樹に近づいた意味も特になく、顔アップでも問題なかったと思う)、もう少し工夫が欲しい。
 あと今回、本部の勢揃いシーンで無言棒立ち、強引に台詞が一つあっただけの亀さんは、何とかもう少しうまく使えなかったのか (脚本・演出、両面で)。一つ台詞があるのが、いっそ不憫。ここ数話、けっこう盛り返している『ソルブレイン』ですが、 増田が目立つと亀が空気、亀が目立つと増田が空気、は改善されないなぁ……。
 そして次回、
 本当に占拠されたーーーーー!!!

◆第28話「急げ!命の母艦」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:杉村升)
 クロス2000「火災発生・火災発生!」
 ……て、いや、火災というレベルでなくビルが吹っ飛んでいる気がするんですが……。
 緊急出動するSS−1、ここに来て初めての気がする、パトカーの積み込みシーン。
 救助活動の最中、ビルの中で不審な男を目撃したブレイバー、いきなり撃たれる。そして避難中の少女を人質に した男は追い詰められた結果、、待機中のSS−1に乗り込んでしまう。
 純「あれは強盗殺人で無期懲役になっていたが、10日前に刑務所を脱走したタツミジロウだ!」
 亀「米軍基地を襲って拳銃を略奪した!」
 ……待って、何者、タツミジロウ。
 ただのちんぴらにしか見えませんが、コスギ教官レベルのマスタークラスの猛者ですか。
 たまたま米軍基地に侵入して拳銃を奪ったのか、拳銃を入手する目的で米軍基地を襲ったのかわかりませんが、 どちらにしろ頭オカシイ。
 増田の異常な説明台詞も良くないですが、今の今まで数多くの小悪党が拳銃を所持していた世界観で、 どうして今更になって拳銃の由来に触れたのかも謎で、色々とおかしい。乗り込んだSS−1では矢沢が「お前は脱走犯のタツミ!」 と念を押すなど、時事ネタかと疑うぐらいなのですが、今回は色々と雑。
 タツミはパイロット一人を残して他の隊員は降りるように要求。残ろうとした矢沢だがタツミが脅しで撃った銃弾で負傷してしまい、 代わりに大樹が残る事となる。大樹、タツミ、人質の少女を乗せ、浮上するSS−1。だが船内には、医療用品を取りに戻っていた玲子が、 外の事態を知らぬままに取り残されていた……。
 そろそろ、国会で問題になりそうなレベルの不祥事です。
 「香港まで高飛びしろ」というタツミの要求を呑んだ振りをしつつ、存在を気付かれていない玲子と協力して犯人を格好良く取り押さえ ……たかと思いきや、タツミの予備の拳銃が火を噴き、人質の少女が負傷、SS−1も機関部に損傷を負ってしまう。
 ただのちんぴらにしか見えませんが、サイドアームをしっかり所持している辺り、やはりマスタークラスの傭兵か何かなのかタツミ。
 急降下するSS−1を何とか応急修理する大樹。出血の多い少女を玲子が簡易手術しようとするが、極めて珍しい血液型だった為、 備蓄の血液では輸血する事ができない! 犯人の説得を試みる大樹だがタツミは東京に戻る事を拒否。しかし大樹の、 「もし人質の少女が死んだら、俺は容赦なくキレて貴様を滅殺してやる」という脅しに、タツミは香港へ向かう針路上の病院に少女を 降ろす事を許可。
 譫言で「おにいちゃん……」と呟く少女に動揺するなど、無期懲役食らった強盗殺人犯の割には、早くも折れ気味。
 一方、ビル火災の出火元である岡村医学研究所で、所長の岡村博士が殺害され、博士の開発していた万能性の高い人工血液のサンプルが 盗まれていた事がわかる。犯人はまず間違いなくタツミ……という事はタツミがその人工血液を持っているのかもしれない。 輸血用の血液を準備するのが難しい状況から、正木は大樹に改めてタツミの説得を指示。タツミの調書をもとに、 大樹は泣き落としを試みる。
 「おまえにも幼い頃、亡くした妹が居た筈だ」
 刑事ドラマ志向の割には、よくよく考えると珍しい、正統派の説得シーン。
 ……まあ一番偉い人が説得スキル持っていない上に、尋問中に「貴様を必ず極刑にしてやる!」とか叫んでしまう組織なので、 仕方がない。
 動揺するタツミだが、その時エンジンが爆発し、SS−1が急降下。大樹は玲子に操縦を任せ、ブラスアップ。 「僕の体で高圧電流を接続する」と燃えさかるエンジンルームに飛び込み、機関部のコードを自ら掴んで導線の代わりとなる。
 ああ、尊敬する先輩もやっていましたね、それ……。
 一方、SS−1の操縦は未経験の玲子はコントロールの利かないSS−1を必死に立て直そうと奮闘。 操縦法の指示を無線でくれるという大樹に助けを求めると、「頑張るんだ玲子さん」と、案の定、 全く役に立たない大樹。まあ、大樹の方もそれどころではないので仕方ない。
 山腹にぶつかった衝撃で外壁が壊れ、風圧で外へ吹き飛ばされそうになる少女に手を伸ばすタツミ。 幼かった頃に救えなかった妹の記憶がフラッシュバックし、少女の手を掴んで抱き寄せた時、 タツミは妹を救えなかった後悔から人の道を踏み外した自分のトラウマを、乗り越える。
 三者三様の奮闘があり、なんとか無事に病院にたどり着くSS−1。少女を守りきったタツミは、 香港で売り飛ばそうとしていた人工血液のサンプルを快く提供し、人生をやりなおそうと手錠を受けるのであった。
 仕方ない部分もあるとはいえ、病院の中庭でただ勢揃いでSS−1を待っている本部長達の絵が凄く間抜け。
 やはりこういうシーンは、“何かをやらせる事で”プロフェッショナル感を出さないといけないと思います。 まあ今作に限った話ではないですが、ヒーローが活躍している間に、仲間がただ“待ち”になってしまうシーンというのは、 なるべく作ってはいけません。本当のクライマックスなら別ですし、例えば今回のゲストでいうところの少女の母役のように、 一般人ポジションなら構いませんが。
 逆に言えば、少女の母、という“待つ”キャラクターを用意しているのに、その周囲で正木以下をただ立たせては余計に良くない。
 このシリーズはホント、制作上の縛りがあったのではないかと思うぐらい、クライマックスでメンバーを無駄に揃い踏み させようとするのですが、その弊害が露骨に出た形となりました。
 凶悪犯が事件をきっかけに過去のトラウマを乗り越え、人生をやりなおす決断をする、というコンセプトは良かったと思うのですが、 各所に雑さが目立って、いまひとつ盛り上がりにかけてしまったエピソード。
 “最後に改心する”のを織り込みすぎて、タツミの言動と行動がちぐはぐに過ぎたのも、勿体なかったところ。実際問題として、 タツミがあそこまで凶悪な犯罪歴でなくても良かった気はします。そんな犯罪者でも改心してやり直すことが出来る…… という話にしたかったのかもしれませんが、今度はそれにしては、そんな犯罪者ぽくなく、物語としてのバランスが悪い。
 後こういう回ならもうちょと、玲子さんの衣装はなんとかならなかったのか。せっかくコックピットで 奮闘してなかなか格好いいシーンの筈なのに、どうにもあのシマシマが緊迫感を削ぎます(^^;
 うーん……この後の脚本家の参加状況はわかりませんが(一つの楽しみなので放映リストは確認していない)、 もしかすると翌年からの『ジュウレンジャー』立ち上げで杉村さんが抜ける事になって、構想にあったSS−1ネタを早めに 投入してきたのかなぁ。それで全体として雑な作りになった、というなら納得いく感じ。
 あくまで推測で、このあとも普通に杉村さん参加するかもしれませんが(^^;
 次回、更なる不祥事の予感……?!

◆第29話「子供帝国の反乱」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:山田隆司)
 街で、天才少年と出会う増田。少年の目の前でひったくりを捕まえたのが縁で、少年のソルブレイン見学を受け入れる事に。 一目で本部コンピューターのスペックを見抜くなどコンピューターについて凄まじい知識を見せる少年・一条アキラはギガストリーマーに ついて根ほり葉ほり聞いて去っていく。その姿に、わずかながら不審を抱く本部長。
 簡単に本部中枢に入れて、目の前にギガストリーマー置くとか、ロボットやコンピューターはいざとなれば自爆する気満々 なのに、セキュリティ意識の欠片もない人間達だな……!
 帰宅したアキラ少年を待っていたのは、研究室らしき場所と、かしずく大人達。彼等は警視庁の研究所をハッキングすると ギガストリーマーの設計データを入手し、更にその先端に使われた素材であるジルコナイト3−2を奪う為、筑波鉱物研究所を襲撃する。
 研究所のパスワードが、

 [ RESCUE.LIFE&HEART ]

 とか、責任者は後で、鼻からうどんを食べながら逆立ちで庁内を一周するように。
 大人達を従え、株を転がす天才少年アキラ……彼はおよそ一年前、脳医学者であった父の作り出した頭脳活性装置にかけられていた。 天才的な知能を得ると同時に悪魔の心を手に入れてしまった少年は父を監禁し、子供を圧迫する大人達を排除した、子供による子供の為の 帝国を作り出す為に着々と準備を進めていたのだ!
 筑波鉱物研究所で地元の刑事と会話したり、黒板に写真を貼って捜査会議をしたり、久々に原点回帰というか、 今作ではえらく珍しい刑事もの的演出。最も、黒板に写真は、前作でもありませんでしたが。
 一条家の屋敷を監視していた大樹達はそこで行方不明になっていた学者達の姿を発見し、設計図のデータ盗難、 ジルコナイト3−2の強盗事件など、全てが繋がっているのではないかと推測する。鍵はおよそ1年前、一条博士が失踪し、 その同時期に息子アキラの知能指数が90→250に急上昇している事。そんな時、鉱物研究所を襲った強盗の片割れが空港で逮捕され、 全てを自供。アキラ少年の恐るべき企みを知ったソルブレインは屋敷を強襲するが、既に少年の手には、小型ギガストリーマーの試作品が 握られていた!
 小型ギガストリーマーは、下手すると、玩具そのまま……?
 逃亡したアキラを追うブレイバー、追いすがるブレイバーを本物の半分の威力だという小型ギガストリーマーで撃ちまくるアキラ。 偽物でしつこく撃たれたのが頭に来たのか、本物で思いっ切り撃つブレイバー。
 どう見ても、小型ギガストリーマーは、この半分の威力もない(笑)
 いっそ、遠回しにギガストリーマーはそんなに危なくないよ! とアピールしているように見えなくもありません。
 ブレイバーはアキラ少年を工場地帯に追い詰め、屋敷の地下から助け出された一条博士もジャンヌらに連れられて姿を見せる。 その父へ、銃口を向けるアキラ。
 「世間体や、家の為に、自分の息子の脳を改造した奴が、オヤジづらするんじゃない!」
 ブレイバーは博士をかばい、小型ギガストリーマーの攻撃を受けながら、アキラ少年に迫る。連射の末にエネルギー切れを起こした その銃口を、自分の頭に向けるアキラ。
 「たとえ僕が死んでも、子供が子供らしく生きられない社会がある限り、第二の僕が必ず現れる」
 自殺しようとした瞬間、ギガストリーマーを持った手をショックビームで撃つブレイバー。取り落とされた小型ギガストリーマーは 地面を滑り、近くにあったドラム缶に引火。
 「危ない!」
 ……あれ?
 爆発から身を挺してアキラ少年をかばうブレイバー、なにこの、自作自演。
 そして今回も、説得しないソルブレイバー。
 少年を抱いたまま外へと出たブレイバーは、駆け寄ってきた一条博士を一喝。
 「あなたに抱く資格はない! アキラくんをここまで追い込んだ、あなたに抱く資格はない! あなたは人間として許すことのできない、 最低の事をしたんですよ!」
 ――だが心から反省し、息子を再手術で元に戻して今後は生き方を改めるなら……と泣きじゃくる父にブレイバーはアキラを託し、 アキラは再手術で元の知能に戻ると、親子も和解するのであった……物凄い数の逮捕者を周辺に出しながら。 アキラ少年はともかく、警察のデータに手を出したからなー、協力していた科学者の皆さんは、容赦されないゾ。
 犯罪の首謀者が、父親の科学の暴走の犠牲者であり、社会問題にもっともらしく抗いつつも、 基本的には幼児性に満ちているというシチュエーションから期待される展開は、ヒーローがどうやって 少年の心を解きほぐすかなのですが、『ソルブレイン』はとにかく最後に逃げてしまう。
 大樹が悪い、というよりも、『ソルブレイン』という作品が、そこからいつも逃げてしまう。
 それが決して「正しい答」でなくても、追い詰められた子供に言葉をあげるのがヒーローの役目の筈なのですが、 ブレイバーのした事といったら、
 〔相手のエネルギーが切れるまでガード→投降を呼びかける→自殺しようとした所を射撃して阻止〕
 だけで、「心を救う」の「こ」の字もない。
 明らかな悪人であるお父さんを罵倒するだけならヒーローでなくても出来るわけで、そこでカタルシス作っても仕方ないのだけどなー、 大樹は。
 ちょっと良くなってきたと思ったのも束の間、どうにも『ソルブレイン』は、物語の在り方がズレたまま直りません。 最後に説得シーンを置けなければ、こういうテーマを持ってくる意味がなく、エピソードそのものが空虚。そしてそこで いったいどんな言葉を持ってくるか、こそが書き手の腕の見せ所なわけで、脚本家が力不足を露呈しただけの結末。 自分の持ってきたプロットとは、責任持って最後まで戦い抜いてほしい。
 前作を受けた上で、“考えすぎた”結果が今作の状況なのかと思うのですが、終盤に向けてもう少し軌道修正を期待したい。
 それにしても、導入部で大活躍したのに、後半は空気と化す、相変わらずの増田クオリティ。
 大樹に言葉が造れないなら、大樹よりは子供寄りの増田から青臭い言葉をかけさせるとか、そういう手段もある筈なのですが、 そういった使い分けが出来ないのが、今作のキャラクター配置の残念さでもあります。
 次回、なんか予告がオカシイ回のフラグに期待(笑)

◆第30話「神様はつらいよ」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)>
 神蔵興産技術開発センターに泥棒に入った、ちんぴら二人。若い男・タケが変なゲージの中に入ってしまうと、 強制的に謎の黒いアーマーを装着されて吐き出される。その胸に燦然と輝くのは……

 

 の一文字。人間離れした怪力を発揮できるようになったタケはそのまま外へと走り去る……。
 どんなトンデモかと思ったら、タケが入ったのは海底作業用パワースーツの装着室という事で、どうやらブレイバーのスーツと 同じような技術の模様。そう言われると、毎週毎週やっていました。この会社のデザインセンスはさておき(笑)
 タケが着た最新型のパワースーツは高水圧下での作業を念頭に置いている為、大気中では一般的な人間の十数倍のパワーを発揮可能。 ただし外部から空気を供給する事ができず、内蔵酸素の容量は約4時間。加えて外部からキーカードでロックを外さない限り着脱する事が できない。
 酸素供給のタイムリミットである4時間以内にタケを捜し出そうとするソルブレインだが、その頃タケは、道で飛び出した少女を トラックから救っていた。資産家である祖父からニコニコ現金払いで300万円のお礼を貰って気の大きくなったタケは、 心中しようとしていた家族を救い、100万円を渡して去っていくと、更に残った金をビルの屋上からばらまく。 そこへ駆けつけるソルブレインは、スーツの酸素供給についてタケに説明する。
 「3時間……いや、2時間半したら必ず自首します」
 「2時間半で何をするつもりだ!」
 「何もしないよ……でも、脱ぎたくないんだ」
 「なに?」
 「子供の頃から、愚図で役立たずって言われてきて、いっつも邪魔者扱いされてきたんだ。でも、これを着た途端、 俺が俺じゃなくなった。子供も助けた、自殺しようとしている家族も助けた。俺なんかでも人の役に立てるんだなって……へへっ、 まるで、神様みたいにさ」
 前半からコメディ色強めで来ましたが、この辺りの台詞の巧さは扇澤脚本の味。
 2時間半後に必ず自首すると告げたタケは、屋上から飛び降りてソルブレインの包囲網を脱出、そこをヤクザ風の男達によって、 はっぴいかむかむ教団という宗教団体の元に連れて行かれる。
 ここから先の展開は、新興宗教(詐欺)をからめて、やや諷刺的に展開。教団にのせられたタケは工場で大暴れしてしまい、 更に信者達の願いを乗せて「望み通り、神様になってもらうさ」と焼き殺されそうになる。身勝手で無茶ながらも必死で願い事をする 信者達の姿を見て(どうせ死ぬなら……みんなの神様として)とそれを受け入れてしまうタケだが、間一髪、ソルブレインの手によって 救い出され、はっぴいかむかむ教は崩壊。
 結局、自分は何も出来ない役立たずだったとうなだれるタケに信者の老婆が「ほんの一時でも、あんたはあたしらの神様だったんだよ……」 と声をかけ、タケは少しばかり救われるのであった、とオチは今ひとつ綺麗に終わりませんでしたが、社会に対する劣等感を持つ男が 強大な力を手に入れて妙な方向に暴走していく滑稽さは、なかなか出ていたかと思います。
 終盤のBGMがおかしくなければもう少し盛り上がったと思うんですが(^^;
 選曲が、奇をてらいすぎて失敗していたような。

→〔まとめ6へ続く〕

(2012年12月4日/2013年3月24日)
(2019年12月27日 改訂)
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