■『特救指令ソルブレイン』感想まとめ3■
“BURNIN' どこまでも
BURNIN' 駆け抜ける
特救指令 ソルブレイン”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特救指令ソルブレイン』
感想の、まとめ3(13〜18話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・
〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕
- ◆第13話「殺人プレイバック」◆ (監督:新井清 脚本:杉村升)
轢 い た!
……夢だった。
少女を車で轢いてしまう夢を見た大樹が出勤すると、本庁に届けられたビデオテープと手紙を持って、監査官がやってくる。そのテープ
に映っていたのは、大樹の轢き逃げシーン。
「そういえば、昨日これと同じ夢を見ました」
意味不明な供述をする、西尾容疑者。
……あー、やってる、これはやってるよ。
大樹は監査官に身柄を拘束され、正木以下は、大樹の無実を証明しようと捜査を開始。玲子と純は被害者の少女に運転手の顔を見て
いないか聞きにいくが、空振り。ついでに医者に事件へのアドバイスを求めるが、「夢遊病じゃねーの?」とむしろだめ押しを受ける。
正木は前作で竜馬が行動不能になった時の事を思いだしたのか大樹の部屋をくまなく調べるが、手がかりはない。そんな正木に接触して
くる、大樹のファンを名乗る怪しげな男、広沢。そしてビデオテープの調査の結果、映っているのは間違いなく大樹本人――しかし映像が
全体的に奇妙に歪んでいる事がわかる。
大樹の無実を証明する事は出来ないのか……思い悩む本部に、雑誌を手に駆け込んでくる亀吉。そこには、夢をコントロールする医療用
の装置が完成したという記事。もしかしたらこれが用いられたのでは?! と早速セントラル医療へ向かったメンバーは、被験者が見て
いる夢を、機械に素材を加える事で好きに加工できる実験を目の当たりにする。更に素材さえ揃えれば、見せる夢のシナリオを操作する
事もそれを録画する事も可能だという。
このマシンが用いられたなら全ての謎は解ける……だが、セントラル医療にあるマシンは、一つきり。他社で開発中の同様のマシンが
盗まれたのかもしれない、と捜査に動く玲子達。そんな彼等を見つめる警備員……それは、あの広沢であった。
せっかく地道な捜査シーンを描いたのに、亀吉がたまたま読んでいた(としか思えない)雑誌の記事から話が動く、というのは残念
だったところ。大樹の見たという夢に引っかかった、というのも描写としては厳しいですし。
深夜、警備員の立場を利用し、研究室に忍び込んでドリームマシンを持ち出した広沢は、正木に夢を照射。
機能もトンデモですが、先端だけ取り外して狙撃銃のように使えるドリームマシンは便利すぎ(^^;
広沢を追跡する夢を見た正木は、翌日、広沢の身辺を調査。彼がセントラル医療に務めているという情報を得て広沢のアパートを訪問
すると、露骨に怪しい動きで逃げ出す広沢。追跡する正木は、それが前夜に見た夢の光景と同じ事に気付く……一方、正木から連絡を
受けた玲子と純が広沢の部屋を探ると、大樹に見せる夢の素材となった轢き逃げ現場などの写真が発見される。そして近所の住人に預け
られていたビデオテープ……その中に映っていたのは、正木による、広沢の殺害シーン!
なんと広沢は、故意に追い詰められる事で、正木に自分を殺させようとしていた!!
「突き飛ばさなくたっていいんですよ。僕が勝手に飛び降りれば。テープが何よりの証拠になりますからね」
「自殺をするのか。なぜだ?」
「なぜ? 僕はソルブレインが好きだったんですよ。西尾さんも、貴方も。
だから友達になりたかった!
でも貴方たちは、全然僕なんかに関心を持ってくれなかった。だから、だんだん憎くなってきて。せめて夢の中で、貴方たちより格好
良くなろうと思ったんです。毎日毎日、仕事の合間に夢を見て……
そしたら最近になって聞こえるんですよ。誰かが僕の耳元でささやくのが。
おまえはもう死ぬ、もう死ぬ…………だから、ソルブレインを道連れにしろって」
ソルブレインに対する愛情が歪んだ憎悪へと変貌し、更にドリームマシンの過剰使用で精神に変調を来した広沢は、完全な狂気の領域
にあった。正木を振りきった広沢はアジトを爆破し、予告通りに自ら炎の中に飛び込む事でその妄執を完成させようとする。だがその瞬間、
炎の中に飛び込んだ広沢を横からさらって助けるソルブレイバー! 玲子達が入手した証拠を監査官に届けるのが間に合い、間一髪で
大樹が釈放されたのだ。
かくて広沢は逮捕され、正木はその背に、病院で治療を受けた後しっかりと罪を償うんだ、と心で声をかけるのであった……。
大樹、エピソード通してほとんど台詞無し。
監査官に問いつめられている時もほとんど無言。
何か、今回の轢き逃げ以外に、後ろ暗い事があるとしか思えません(おぃ)
大樹ほぼ不在というシチュエーション、金も力もない男の妄執がソルブレインを追い詰める、などの特異な構造に加え、いつまで
経っても大樹が釈放されないのでなにか事件に大きな黒幕が居て前後編だったりするのか、と思わせてからの怒濤の決着などは、裏読みを
逆手に取られた感じで面白かったです。
ただ、ドリームマシンは少々トンデモすぎ。無論、全編トンデモ満載ではあるのですが、1エピソードにおいて許されるトンデモ・
超科学ギミックというのは、数に限度があると思うのです。
「夢を加工できる」「それを録画できる」「携帯して狙撃銃のように使用可能」
の3つは、やりすぎだったかな、と。
ネタの中心ではあるのですが、特に録画(しかも夢なのに、間違いなく本人と断定される映像)がトンデモすぎる上に、話の都合とは
いえあちらこちらの会社で似たようなものを開発しているとか、怖すぎます(^^; この辺りの設定はもう少し縛ってほしかったところ。
しかし、『ソルブレイン』に入ってからの、正木の主役度の高さは凄いなぁ(何かオカシイ)。
- ◆第14話「愛を呼ぶ銃弾」◆ (監督:新井清 脚本:山田隆司)
-
前回から、ドーザー変形に合わせて、微妙にOP映像がマイナーチェンジ。合わせてEDにも幾つか、日常シーンが追加。本編で全く
「青春」していないので、EDでだけ補強されるという不思議な事になっていますが。
あと、前回から衣替えで大樹が黒ジャンパーに着替えましたが、見た目は落ち着いたけど、ますます竜馬さんと被ったような……(^^;
放課後、ソルブレインの話で盛り上がっている小学生達……やっぱり、ブレイバーの武器の話題ばかり。
それでいいのかソルブレイン。
そんな彼等に、交番勤務の警官である父を尊敬する級友が
「装備ばかり頼りにしているソルブレインなんてたいしたことねーよ」
と、危険な爆弾発言。
そんなわけで、クラスメイトで揃って少年・信之の父、影山の勤務する交番を見にいくが、影山は地元を愛し、また地元民に慕われて
はいるものの、傍目にはとても格好良くは見えない。口喧嘩から掴み合いに発展した少年達の元をたまたま通りがかり仲裁に入った大樹、
影山をバカにした小学生(なんかサイクリング屋の子供でセミレギュラー扱いなのですが、個性が薄すぎて顔見ただけではわかりません)
をたしなめ、派出所警官が如何に立派であるかをフォロー。
お、なんか今回、ここだけでも凄くいい話です(笑)
フィクションのヒーローが、リアルの現場で働いている人達が立派である事を語るのって、いい事だと思うのですよ。教育に悪い展開が
続く色々と逸脱気味なシリーズなので、いい意味での子供番組らしさが挿入されたのは良かった。
そんなある晩、影山の勤務する交番が暴漢に襲撃され、若い巡査が拳銃を奪われ、影山も撃たれて負傷。
翌日、病室の影山に物凄い剣幕で詰め寄る玲子。
「目撃者の証言によると、充分犯人を撃つチャンスがあったのに、貴方は銃を撃たなかったそうですね!」
反対側では、親の仇を見るような目つきで影山を睨む増田。
…………えー、なぜ貴方がた、撃って当然、むしろパニッシュ!みたいな勢いですか。
いくらレスキューシリーズの世界観が、世紀末TOKYOディストピアにしても、どうなのか。
「怖くて拳銃が撃てなかった」と答えた影山を、「警官が拳銃を怖いなんて信じられない」と虫でも見るような目
で見る玲子さん。
見舞いに訪れてそんな父の言葉を聞いてしまった息子・信之は、“一度も銃を使わずに犯人を逮捕してきた父の誇り“が、実は“拳銃を
撃てなかった臆病さ”なのだとショックを受けて、出ていってしまう。そしてそこへ入ってくる、拳銃強奪犯が、工事現場でダイナマイトを
奪って姿を消したという連絡……。
大樹がこういう時に無言で役に立たないのは、いい加減そろそろ何とかした方がいいような。
主人公として間違えられない都合、というのはわからないでもないですが、かといって部下を止めるわけでもなく、考えているふりを
しているだけで、考えてないように見えて仕方がない(^^;
ソルブレインの罵倒による集中攻撃にあった影山であったが、実は彼には、犯人を撃てなかった真の理由があった。病院を抜け出し、
家に置き手紙を残した影山は、ひとり街へ消えてゆく。
「信之へ 夜7時までに帰らない時は、これをソルブレインに届けてくれ」
という封筒の中身は、辞職願いと警察手帳と正木への手紙。
手紙によると、交番襲撃の犯人は、マキオカシンイチ17歳。影山が子供の頃から知っている少年だったが、中学生の時に両親が離婚し、
街を離れていた。そのシンイチが数日前、「母さんが三日前に死んだ」と交番を訪れ、ろくな養育費を払ってこなかった父への恨みを吐露。
話を聞こうとした影山だったがその矢先に強盗事件が発生してしまい、派出所で待っていてくれるように言ったが、事件から帰ってきた時
には彼の姿は消えていた……。もしあの時、もっと親身になって話を聞いていれば……影山はその後悔ゆえに、シンイチを自首させようと
その身を張るつもりでいたのだ。
信之が届けた封筒の中身を見て、ソルブレインは影山を追うとともに、シンイチの父のガードに動く。同じ頃、シンイチを発見した
影山は説得を試みるが、サイレンの音に恐慌状態になったシンイチに足を撃たれ逃げられてしまう。
翌日、いったいぜんたい誰が辞表の話をばらまいたのか(しれっと見舞いに訪れている一人しか居ない)、「辞表を撤回してくれ」
「影山さんが居てくれなきゃ」と、影山の病室を地元の人々が大挙して訪れる。その光景に、信之にそっと声をかける正木。
「信之くん、腰抜けの警察官の為に、こんなに大勢の人が来てくれると思うかい?」
病室の光景に、真の男の格好良さを知る信之。
ここは凄くいいシーン。
『ソルブレイン』で、こういう話が見られるとは、正直思いませんでした。
父と子が心の絆を取り戻した時、病院の廊下を激走してくるバイク(おぃ) それに乗っていたのは、影山がよく小言を言っていた、
不良予備軍の学生だった。「本官の小言が無いと寂しいぜ」と言う学生は、拳銃を持っている男を廃工場で見た、という情報を影山に
伝える。
ここは、影山に反抗的だった学生も本心では……というシーンではあるのですが、さすがに、病院の廊下をバイクで走るのはやり過ぎ
ました(^^;
正木はソルブレインを廃工場へと急行させ、あくまでシンイチを自首させたいと同行を申し出た影山に、「最悪の事態を考えてこれを
持っていくなら」と、懐の拳銃を渡す。
先行したソルブレインは、シンイチのダイナマイト無双を突破。追い詰められたシンイチは「こうなったら自爆してやる!」と手持ちの
爆弾に火を付けるが……その瞬間、影山の拳銃が火を噴いた。シンイチはダイナマイトを取り落としてうずくまり、ソルブレイバーに
逮捕される。
慣れない拳銃(なぜか正木に渡されたのはオートマ)を使って左手ギブスでバランスが悪い状態から片手撃ちでピンポイントに
ダイナマイトを持っている手の甲だけ撃ち抜くとか、実は影山さん、あまりにも射撃が上手すぎて
ハッピートリガーになりそうな自分を抑える為に拳銃を封印していた疑惑。
或いは、夜な夜な犯罪者を狩る闇のヒットマンなので、素性がばれない様に普段は気弱で人の
好い男を装っているのか。
よくよく考えると、病室における地元住人の台詞「影山さんが来てから犯罪が無い」は、この世紀末TOKYOでは
不自然すぎます。
犯罪の芽を全て事前に影山さんが刈り取っていると仮定すれば……! 犯罪ゼロの不自然さの秘密も! 影山の狙撃の腕も! そして
風体に対して妙に格好良すぎる苗字も! 全ての謎が解ける!!
最後は大樹が珍しく説教モードに入り、敢えて引き金を引いた影山(アフター5はヒットマン)の思いを代弁、正木が影山の辞職願いを
破り去り、事件は解決。
ヒーロー物の立場から敢えて普通の巡査警官を立てる、というコンセプトは良かっただけに、最後に影山にもうちょっと説得させて
ほしかったかなぁ……結局、説得不能で銃を撃って止める(しかも超射撃)というオチは少々残念。『ソルブレイン』らしからぬ(あれ?)
道徳的なエピソードだっただけに、もう一歩、やり抜いて欲しかったです。
- ◆第15話「人形は平和の使者」◆ (監督:小西通雄 脚本:高久進)
轢 い た!
……相手が善人だったので誤魔化せました。
玲子がソルブレイン立て続けの大不祥事を起こしかけたのは、妻と娘に先立たれ、孫設定の人形マリアと暮らす、篠原という老人だった。
玲子は篠原と親しくなるが、ある日、彼の家に“近所でも評判の荒くれ三人組”が侵入して強盗を働き、更にマリアが盗まれる……。
悪役がリアルに不愉快すぎては駄目という、見本のような話。
他人の家を荒し、人形をいたぶるひゃっはー3人組が全編あまりにも不快すぎて、見ていて気分が悪いだけで作品として辛い。
しかも、恐喝・強盗・車上荒らしと明らかに純然たる犯罪者なのに、
「暴れている三人に反省の色は?」
「ありません」
「人形をいじめるなんて許せないですよ」
と、回のテーマの方に引っ張りすぎて、ソルブレインの反応もズレ気味。
あくまで人形に焦点を合わせたいなら3人組はもっと軽いヤンキーぐらいにしておくべきでした。
クライマックス、人形を救う為に躊躇なく炎の中に飛び込む大樹は少し格好良かったですが、その後、あまりにも平然と炎の輪から
脱出してきたので、若干、台無し(笑) ドーザーに消火させてから抜け出してくる(ぐらい強烈な火勢だった)という演出でも良かった
ような。
とどめに最後、“ドーザーの複雑なシステムをメンテナンスしているから”という理由で
「修理できないわけないだろ?」
と、ぼろぼろになった人形を、亀吉に無理矢理修理させる正木が酷すぎます(^^; 亀吉に無理矢理修理させるなら、プロに頼み
ましょうよ……。
人形は実は“青い目の人形”で、戦時中にからめて展開するのですが……戦後50年には少し早いのですが、青い目の人形の話が少し
盛り上がっていた時期なのでしょうか……? 何か、そんな頃があったような気はする。
- ◆第16話「母艦S.S.−1消失」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
-
ソルブレイン見学日、本部にやってくる子供達。
最近不祥事が多いので、世間様へのアピールが大切です、はい。
ところがソリッドステーツのコックピットを見学していた子供の一人がこっそりと謎の装置を取り付けると、スイッチをロックしている
筈のソリッドステーツが突然動きだし、交信不能・コントロール不能のまま、引率していた大樹と数人の子供達を中に乗せて飛び去り、
謎の光の目撃情報とともに、姿を消してしまう。……果たして、全長30mあまりのソリッドステーツは、どこに消えたというのか?!
更なる不祥事が発生してしまいました。
あと今回から急に、ソリッドステーツ−1を「S.S.−1」とか略すようになりました。
そして見学の子供達には何故か、ソルギャロップ(大樹の乗っている青いパトカー)より、玲子さんの運転している黄色い車の方が人気。
……ブレイバーには、武器以外の魅力は無いのか。
ギャロップの阿呆っぽいガルウイングは、何考えて設計したのか感が満載で好きなのですけど(笑)
S.S.−1に誘導装置を取り付けた少年は、笠原亮介。そしてS.S.−1を奪ったのは彼の父、笠原誠一博士。S.S.−1が
姿を消したように見えたのは、博士が開発した分子間凝縮光線により、5分間の制限つきではあるものの、
1/33の大きさに縮小された為だった!
笠原博士の真の目的は、「自分を裏切って、分子間凝縮の研究を海外の軍事産業に売り渡そうとする会社を止める為に、S.S.−1に
爆薬を積んで研究所にあるもうひとつの装置を爆破する事」であった。その為には、ただのマシンでは駄目で、「最新鋭の技術の結晶で
あり研究所の防衛システムを突破可能なS.S.−1こそが必要だった」のだ!
ソルブレインに敵対行為を仕掛けた相手が純然たる悪人というわけではなく、「分子間凝縮の技術が軍事産業に渡ればこの世の破滅だ」
と危惧し、事が終われば自分の手元の装置も闇に葬って自首して罪を償うつもり、と覚悟を決めた人物、というのはひねってきて面白い
ところ。まあ、大樹を手錠監禁していたりしますが!
一方ソルブレインでは、S.S.−1とともに消えた子供達が保護され、「凄く大きな男の人を見た」という証言が引き出されていた。
その話から、分子間凝縮に関する記事を読んだことを思い出した正木はクロスにそれを検索させ、記事の情報から玲子と純は東陽重機の
研究所に向かう。だが研究の主任である所長は既に退職……職員名簿を見た二人はそれがS.S.−1を追いかけている時に出会った男
(笠原)だと知り、再びその下へと向かう。
大樹は笠原の行為を認めず、彼の説得を諦めた笠原は「考え直すんだ」という制止を振りきり、S.S.−1を発進させようとする。
大樹は慌ててS.S.−1に乗り込むが、それを止めようとした亮介少年ともども、S.S.−1は二人を乗せたまま誘導電波に操られて
研究所へと向かって発進。車で後を追った笠原は研究所の手前でS.S.−1を縮小、研究所へと突撃させ、駆けつけた玲子達は
小型化する事で無力化してしまう。
「自ら研究を捨てようとするパパの気持ちがわかるか!」と父をかばう亮介少年を「もっと別の方法がある筈だ」と説得しようとする
大樹ですが、そうですね、大樹も、S.S.−1に乗り込まないで、さっさと博士を拘束した方が良かったかと。それとも簡単に
無力化出来そうにない、達人の気配でも発していたのか、笠原博士。
小型化して研究所へ突入したS.S.−1に襲いかかる防衛システム! ここのミニチュア撮影は、なかなか格好良かったです。
ここまで、大仰に出撃してはケミカルディスチャージャーを発射するしか出来なかったS.S.−1に、アクションさせるという
アイデアも良い。
レーザービームをかいくぐり、分子間凝縮マシンの足下に爆弾を投下する事に成功したS.S.−1だったが、レーザー攻撃を受けて
回線の一部が焼き切れ、誘導電波を受信できなくなってしまう。博士の呼びかけに応え、目を醒ました大樹はブラスアップすると
S.S.−1を操り、なんとか脱出に成功。爆弾はマシンを爆破し、S.S.−1もリミット前に戸外に出て元の大きさに戻るのであった。
最後は大樹が博士に「あなたのやった事は間違っている! しかも子供を巻き込むなんて! 僕は絶対に許さない!」と
ド正論説教を行うのですが、もともと笠原博士は最初から「逮捕される覚悟」な上に「自分が間違っている事を理解している」人
なので、どうにも空回り気味。
勿論それで笠原博士が許されるわけではないので逮捕されてしかるべきなのですが、大樹の説教で博士が中途半端に反省するような
表情になったのは余計な演出だった気がします。それならば大樹にもっと、説得力のある説教をさせなくてはいけない。せめて、
「ぼくたちソルブレインが、貴方の実験を絶対に軍事利用なんてさせない」ぐらいの大見得は切らせる
べきだったのでは。
『ソルブレイン』世界のリアリズムとしてそれが難しいのが誰にもわかっていたとしても、敢えてそこで大見得を切ってこそヒーロー
たりえると思うわけで、ヒーローが“中途半端な綺麗事”に終始したのは良くないと思うわけであります。
また、確かに盗難に子供を利用したのはお父さん非常に悪いのですが、最後に子供が一緒に研究所に特攻する羽目になったのは、
90%大樹さんの責任なので、大樹も心の底から反省した方がいいと思います。
S.S.−1を盗んだ側の事情を一ひねりしてきた事と、S.S.−1によるミニチュアアクションの部分は面白かっただけに、
大樹のリアクションが、もろもろ残念だった回。
そんな隊長は、次回も手錠プレイ。
……癖になっ(以下略)
- ◆第17話「手錠のままの脱走」◆ (監督:小笠原猛 脚本:宮下隼一)
-
連続金塊強盗犯の一味・永田哲也が逮捕されたが、仲間について一切口を割らない。業を煮やした正木は、非合法とされている囮捜査に
手を染める事を決断し、大樹が囮役として名乗りを挙げる。永田以外は警察関係者で固められた護送車を用い、護送中に事故を偽装。
手錠で繋がれた大樹と永田は、山中へと逃走する……。
犯人をわざと逃がしてアジトの場所を探る、てもはや囮捜査の領域すら踏み外しているような(^^;
見所は、チンピラ役が偽装に見えない大樹さんの「兄貴!」プレイ。
なんかもう、大樹の見た目から浮かんだアイデアとしか思えません(笑)
しかし、「このままでは被害者が浮かばれない」という大義名分をかかげて、違法操作に手を染める警察組織ってむしろ怖いの
ですが、そろそろ誰か、後ろから撃ってでも正木を止めた方がいい気が。変に大義名分を掲げるのが一番タチが悪いわけで、素直に
『ソルブレイン』世界では囮捜査はやむを得ない場合は認められている、という事で良かったと思うなぁ。
リアリティの線引きを、凄く悪い形で間違えた感じ。
手錠に繋がれたまま、山中を逃げる永田(演ずるは元レッドワン、阪本良介氏)とリアルヤクザ大樹さん。途中で、無理矢理に手錠の
鎖を断ち切る為に、気絶させた大樹を線路に寝かせて鎖の上を列車に通過させる……とか無茶を永田が行おうとしますが、ギリギリで
大樹が目覚めて、二人揃って、鉄橋から落下。
たぶん実行したら、永田も一緒に巻き込まれて死亡したと思うので、失敗して良かったと思います。
落下した川から二人は何とか這い上がるが、その際に発信機が外れてバックアップしていた玲子達が大樹を追跡できなくなってしまう。
というかどうして、発信機をジャケットの外側にだけ付けていますか。
更に今度は大樹が崖から転落しかけ、手錠で繋がれた二人はもろともに落下しそうに。隠し持っていた鍵を取り出し、
「手錠を外して、兄貴だけでも!」
と変なプレイで盛り上がる大樹さん。
その姿に心打たれたのか、「兄貴!」を連呼して正直鬱陶しいチンピラを嫌がっていた永田、なんとか大樹を引っ張り上げる。
「殺しはごめんだ、それだけさ」
……いや貴方、ついさっき、そのチンピラを列車に轢かせようとしていたじゃないですか。
散々悪事を働いてきたのに、「子供に顔向けできんことはやらん」とか支離滅裂な永田は「俺は兄貴から離れないからな」と言うチンピラ
を仕方なく受け入れ、グループのアジトへ向かう。
「早く分け前をくれ。俺は抜けさせてもらう」と言ってはいけない台詞を口にし、当然のように命を狙われ、逃げ出す二人。ここでは
珍しく、大樹が格好いい生身アクション。なんとか二人は逃げ延び、大樹は永田の事情を聞く。殺し以外の数々の悪事を積み重ねてきた
永田は子供が産まれた事で自分のそれまでを悔いたが、妻は子供を連れて出ていってしまう。今更子供の前に顔を出す気はないが、
しかし子供に何か残してやりたい……と考えた永田は、連続金塊強盗犯に加わったのであった。
……えーもう……なんだろうこの人……ミラクル駄目人間というか、たぶん自分がカッコいいと思っているのが、
物凄くタチが悪い(見た目は確かに格好いいのですが)。通常、こういった立ち位置の人物は、犯罪者ではあるが同情の余地がある、
という形で描くわけですが、何の余地もなくて凄い。
「けど子供が喜ぶかな、そんな金」
と、いきなり説教を始める大樹は、「ただのチンピラじゃねえな、なにものだ」と疑われ、慌てて笑って誤魔化す。
……素か、貴方。
いや、言いたくなる気持ちはわかるのですけど(笑)
永田から、グループが香港マフィアと取引しようとしているという情報を得た大樹は公衆電話から本部に連絡を入れるが、永田に身元が
バレ、後ろから殴られて気絶。目覚めた大樹は玲子達に伝言を残すと、分け前を手に入れる為に取引現場へと向かう永田の後を追い、
走る。チャイナ服の袖から手榴弾を取り出して投げる香港マフィアに追い詰められていた永田を、間一髪で助けた大樹は、自分が囮に
なっている内に彼を逃がそうとする。
「子供のために犯罪を犯すほどの気持ちがあるなら、必ずやりなおせる。俺は信じる」
香港マフィア達を引きつける大樹、そこへ本部長達が到着し、ブラスアップすると圧倒的な戦闘力で犯人グループを逮捕。
そして……どさくさに紛れて姿を消したかに思われた永田は、金の入ったトランクを手に大樹の前に姿を見せる。
「逃げられるわけないだろ、繋がってちゃ」
崖から落ちそうになった時についた、手錠の傷跡をみせる永田。
ここは演出的に格好良く、途中は色々どうかとは思うものの、最後は何となくまとめました。いつも出しゃばってくる本部長ではなく、
主人公(大樹)が犯罪者を説得したのも良し。もう少し全体として丁寧に内容を詰めていれば、しっかりと面白いエピソードになった
だろうだけに、詰めが足りなかったのが残念。
次回予告、
「ソルブレインはどんな小さな犯罪も見逃さない!」
て、なんか怖いなぁ(笑)
色々と、過剰にされそうで怖い。
- ◆第18話「明日へ走る自転車」◆ (監督:小笠原猛 脚本:鷺山京子)
-
クレジットを見るとワンセブンの中の人(新堀さん)がどこかに居たようですが、誰だろう。たぶん、あの柄の悪い人の中の誰かだとは
思われますが。
大樹達がよく利用しているサイクルロードが、イースト・ケミカル社の新工場用地として立入禁止になってしまう。看板を立てにやって
きた柄の悪いごろつき達を見た大樹、「どうもおかしい、あのチンピラはとかく悪い噂のある地上げ屋だ」と、“顔が気に入らない”
レベルの根拠で前回の恨みを感じる物凄い見込み捜査を開始。結果、最近イースト・ケミカル社の工場で不審な爆発事件が起きていた事や、
胡散臭い連中が出入りしている事が判明。これまた見込み捜査で工場に忍び込んだ大樹は、隠蔽された爆発の跡を発見して煤を採取し、
その分析からどうやら高性能爆弾が爆発していたらしい事がわかる。
「青葉台サイクルロードを守ろう運動」を開始して署名を集めるサイクリングショップ店長・鶴岡(数話おきにちょろっと出てくる人)
と仲間達だが、地上げ屋の嫌がらせを受ける。……まあ、地上げ屋さん達は普通に経済活動しているだけなのに(土地を買おうとしている
段階ならともかく、看板を立てているという事は既に購入済みのわけですし)、正義を標榜して抗議されたらちょっとムッとして当然な
気もするのですが、まず問題なのは、ざっくり売ってしまった地権者な気がするわけです(笑)
ところで鶴岡さんはここまでどちらかといえばコミカルな雰囲気だったのに、今回はやたらにシリアス。いかめしい髭面もあって、
どちらかといえば真面目な顔をしている方が映えるのですが、こっそり路線変更している気もしないでもない。
その頃、ソルブレインの調査により、イースト・ケミカル社は業績が極めて悪化しているにも関わらず、工場は昼夜を問わず活発に
ラインを動かしている事が判明。そこから推理は転がり、正規ルートでは売りさばけない商品を扱っているのではないか→爆薬を密売
しているのでは→公園に爆弾工場を造ろうとしているんだ!
何故、そんな目立つ事をしてわざわざ
……しかし、本当にそうだった!
事件の裏で糸を引く柳田は、これ以上土地の買収問題が目立たないようにと、「8年前の自転車レースにおける八百長」の証拠写真と
テープを突きつけ、鶴岡を脅迫。かつてツール・ド・フランスにも出場した名選手であり、当時は名コーチとして指導に辣腕を振るって
いた鶴岡は、その写真を前に、反対運動を止めてしまう。
鶴岡を信じる大樹だが、実はこの八百長事件には複雑な事情があった。当時、鶴岡が指導していた竹内という選手が、難病の息子の
治療費の為に柳田から金銭を受諾し、八百長をしてレースを敗退。話を聞いた鶴岡は店の開業資金として貯め込んでいた金を用いて
柳田にそれを返却したが、その時に札束を手にした姿を、あたかも鶴岡が金を受け取った場面のように、写真に撮られてしまっていたのだ。
竹内はその後、酒に溺れ、事故死。鶴岡は残された竹内の妻子を気に懸けながら、父を英雄視して必死に難病のリハビリを続ける竹内の
息子の為に、この事件の真実が明るみに出ない事だけを願っていた。
8年前の八百長事件と、今回の爆弾密造事件に繋がりを感じる大樹だが、竹内の息子を守りたい鶴岡は事件への協力を拒む。そして彼は
竹内が遺した真相を告白したテープを手に、地上げ屋に独自の取引を求める。竹内のテープと脅迫写真を交換し、この事件の全てを完全に
闇に葬ろうというのだ。取引現場に現れた柳田とそれぞれの証拠品を交換しようとする鶴岡だったが、ヤクザがまともに取引に応じるわけ
もなく、心配して姿を見せた息子のヒロシともども、抹殺されそうになる。
……だがその時!
「柳田、まんまと罠にかかったな」
鶴岡の背後に姿を見せるソルブレイン一同。
実は鶴岡は、既にソルブレインと協力態勢にあったのだ!
と視聴者にもミスディレクションを仕掛けてくる展開なのですが、今回は民間人を囮か正木。
そしてヒロシがさらわれたゾ。
ヒロシを連れて逃走する車にロープを引っかけるが、凄い勢いでひきずられるブレイバー(笑) なんか反射的に引っかけた
ブレイバーも驚いているかのような、見事な転がりっぷり。
そして地上げ屋さんの思わぬ手榴弾部隊に、ちょっと苦戦するソルブレインであったが、ドーザーの活躍もあり、全員撃退。ブレイバー
も無事にヒロシ少年を助け出し、柳田一味は逮捕されるのであった。
存在意義の薄かったセミレギュラーキャラに焦点を当て、過去の傷が現在の事件と繋がり、二組の父子の絆を描くという複雑なプロット
を強引ながらも一つのエピソードとしてまとめたのは脚本家の手腕ではありますが、
正木が八百長に関する脅迫写真とテープを鶴岡に渡し
「柳田を罰する証拠は充分です。8年前の事件が表沙汰になる事はありません」
はまずい。
鶴岡はそれを炎上する車の炎で灰にしてしまうのですが、「自転車レースの八百長で稼いだ金が資金源」と、柳田が明言していたしなー、
蒸し返されないわけないと思うんだけどなー、柳田は謎の獄中死とかしそうで怖い。
「どんな小さな犯罪も見逃さない!」
というか、予断による捜査と恣意的な証拠の選択とか、今回は結果的に犯罪の拡大を未然に防げたからいいものの、明らかに
ソルブレインは、
正木の私的機関として、暴走を開始しています。
まあ前作における竜馬さんも何回か、容疑者宅に何故かこっそり侵入とかしていて叩けば埃が出ないわけではありませんが、
ソルブレインはツッコミで済まない範囲で、自ら規程した法を踏み外している、というのはとても気になります。
こう見ると、『ウインスペクター』において、竜馬は決して唯々諾々と正木に従うばかりでなかった、というのは、
そういう意図ではなかっただろうとはいえ、劇中の引き締めになっていたという事がよくわかります。竜馬は時に正木の意図を超えて
自分の信念に基づいて行動し、それは竜馬のヒーロー性を担保すると同時に、正木の価値観が絶対ではないという事も表現し、更に、
劇中を通して竜馬だけではなく正木もまた成長している、という関係性が構築されていた。
『ソルブレイン』にはそれが無いので、組織として非常に危うく見えるし、大樹がいつまで経っても薄っぺらい。
→〔まとめ4へ続く〕
(2012年12月4日)
(2019年12月27日 改訂)
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