■『特救指令ソルブレイン』感想まとめ2■


“愛するこの星 生まれた君たちを
哀しみに染めたくないから”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特救指令ソルブレイン』 感想の、まとめ2(7〜12話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ3〕 ・  〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・  〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕


◆第7話「人間再生マシーン」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:鷲山京子)
 帝都物産で爆弾による脅迫事件が発生。警察の必死の捜査も空しく爆弾は爆発し、警察はその信頼を著しく落とす事になる。爆発の データを分析した結果わかった事は、爆弾が、探知機で念入りに調べた筈の場所に設置されていた事。この爆弾は、探知機に 引っかからないのだ!
 その頃、とある民家に雷が落ち、中にあった一台のマシンを起動させる。
 それは、人間再生マシーン。
 未完成だった筈のマシンは、落雷と、小学生の出鱈目な修理という二つの偶然の要素から機能を発揮し、コンピュータの中に保存されて いた記録から人格を再構成、マシンの生みの親であり、10年前に死んだトンデモ発明家・牧野陣五郎を再生してしまう。
 トンデモ発明家として実の息子からも変人(狂人?)扱いされていた陣五郎は、文字通りに「死んでもあいつには頼らん! 顔も 見たくないわ!」と、物心ついた頃には既に死んでいた為に自分を無邪気に慕ってくれる孫のマサルと共にマシンを完成させようとして、 部品を探しに街へ。ところがそこで入ったデパートが、爆弾犯第二の標的! やはり探知機に引っかからない爆弾であったが、陣五郎は それを見つけて解除させる。
 電気エネルギーによって再構成されていた陣五郎は、電磁波の乱れから、その特殊な時限爆弾を見つける事が出来たのだ!  ソルブレインに協力を求められる陣五郎だが、エネルギーが尽きる前に研究を完成させたい思いから、それを拒否。彼の中にあったのは、 「研究を完成させて、自分をバカにした連中を見返してやる」という執念だけであった。そんな祖父の姿に、「もっと大切な事がある筈。 おじいちゃんなんか嫌いだ」とソルブレインに自分だけでも協力しようとするマサルだが、爆弾を見つけだしたという陣五郎を追っていた 二人組の犯人に、祖父ともども拉致されてしまう。
 ここで松田がようやく単独で活躍するのですが、超一瞬。犯人を確保するもマサルを人質にされて逆に気絶。というか犯人グループは ちゃんと松田を始末してください。そういう所で手抜きするから、情報が本部に伝わるんですよ! (シーン的には描かれていない ので、気絶させられた後、ぐるぐる巻きにされて転がされていた松田が、超縄抜け技術で、トラップ満載の犯人のアジトから脱出した、と 妄想するのは可)。
 孫を人質にされ、どうやって爆弾を見つけたのかという犯人の問いに、しょーじきに「電磁波感知能力だ!」と答える陣五郎だが、 もちろん納得されるわけはない。
 祖父を助けようと奮闘する孫、そんな孫の姿に心打たれ、存在を懸けた放電攻撃で犯人を痺れさせる祖父。
 一方、陣五郎が既に10年前に死亡している事、マサルの友達(セミレギュラー的に使われる自転車屋の少年で冒頭に登場)から 人間再生マシーンの事を聞いた大樹は、ソリッドステーツに、強力な電磁波をサーチしてもらう。
 なんという無駄運用
 犯人達に追い詰められていた二人だが、ギリギリで大樹らが駆けつけ、御用。エネルギーを使いすぎた陣五郎は、マサルのお陰で、 研究第一で周囲全てが敵となっていた自分にも、人間らしい心が最後に手に入った、と感謝する。花や空、その美しさを数十年ぶりに認め、 すがりつく孫を大樹らに託し、離れてゆく陣五郎。
 孫をわざわざ刑事に託したので、これはまさか、おじいちゃん、無駄に大爆発(今週、爆発してないし)と かするのかとドキドキしていたのですが、爆発はせず、光になって綺麗に昇華。
 人の心の優しさは、時に死者をも救うのだ!
 祖父と孫の交流話でもあるのですが、爺がラストチャンスで人生をやり直す話、になっているのが面白い所。
 今回もなぜか熟年以上に優しい目線を送る、レスキューシリーズ。
 にしても、マサル父(陣五郎息子)は、このトンデモ博士によって、経済的にも社会的に もそうとうな苦労をしたのだろうというのが、出番無いけど透けてみえて泣けてきます。それはもう、会話も しなくなるよ!
 電磁波がマジカルパワーすぎるなどあるものの、前回に続いて、これぐらいが水準なら……という出来。単純に立ち上げ予算を 使い果たしただけかもしれませんが、地味路線に戻したら一気に見られるようになってきました。
 やはり、1話、2話は、無駄に派手すぎでした。
 というか、敵も基地もソリッドステーツも派手なのに、ソルブレイバーだけが前作と同じような(むしろ弱体化しているような) 性能なので、バランスが悪かった。
 話の展開が落ち着いてきて、その辺りのバランスが取れてきた感じ。
 未だに、大樹の服装には慣れませんが。
 なんだろうなー、黒革ジャケットが悪いのか、襟立てシャツが悪いのか。髪型も微妙にヤクザ感を増しているしなー(笑)
 で、次回、またも派手めの予感で、果たしてどうなる。

◆第8話「消えた強化スーツ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:山田隆司)
 射撃訓練中、警察学校の同期で、ソルブレインの隊長選考で競い合った岡山守に絡まれる大樹。
 「なぜソルブレインの隊長の最終審査で、おまえが選ばれ、俺が落とされたのか、未だにわからんよ」
 ううーん、余裕かまして、拳銃の片手撃ちとかするからでは?
 「岡山、君にはソルブレインになる資格がないからさ」
 そこに現れる、岡山の上司、笹本部長。
 「西尾くんは全て、標的の右肩に命中させた。君のは心臓だ」
 ここはなかなか格好いい。
 いかにもプライドが高くて嫌なヤツという感じの岡山と、実直ないい人そうで、敬意を集める笹本、という対比もよく出ています。
 そんな笹本は警察を辞めて父親の会社に副社長として入る事になっており、退職前に正木への挨拶にソルブレイン本部にやってきたので あった。
 その数日後……廃棄処分される筈だったソルブレイバーのプロトスーツが、輸送中に強奪される。その運搬スケジュールを知っていたの は、正木の他には10名足らず。すぐにリストアップされたメンバーのアリバイが確認されるが、全員、確固たるアリバイを持っていた。
 プロトスーツは全ての面でソルブレイバーのソリッドスーツを上回る性能だが、装着可能時間がソリッドスーツより2分短く、また、 着用者にかかる負担が大きすぎる為に、制式採用されなかったのであった。
 えーとつまり……

 犯人は、香○竜馬

 プロトスーツの捜索が進められる中、駐車場でそのプロトスーツに襲撃された正木は、重傷を負って入院。
 「先生の話によると、並の人間だったら大変な事になっていたそうですよ」って、正木はいったい何をそんなに鍛えているのか。
 (答:色々と恨みを買っていて自衛の必要があるから)
 プロトスーツは一般人では着用もままならない事から、スーツが着用可能な肉体能力の持ち主を過去の事件からリストアップする事に。
 だから、犯人は、香川○馬

 正木不在の特救本部に、プロトスーツ運搬に関する係員の話を盗み聞きしている制服警官が居た、という掃除のおばちゃんからの 目撃情報がもたらされる。
 つまり、犯人は、掃除のおばちゃん
 ……ではなくて、それを聞いた松田は、何かと突っかかってくる岡山を犯人だと決めつけ、岡山の部屋に向かう3人。もちろん否定する 岡山だが、風邪で欠勤していた岡山には、事件当日のアリバイを証明する事ができない。だが大樹には、岡山が嘘をついているようにも 見えずにいた。
 そんな3人に、実はソルブレインの隊長候補で最終選考に残ったのは「大樹と笹本だった」と明かす正木。
 正木の補佐としてソルブレイン設立に貢献していた笹本は自他共に認める隊長候補の最右翼だったが、選考の結果、隊長は大樹に決定。 以後、笹本はソルブレインと一切関わらず、警視庁関東管区の職務にあたってきた……念のために退職した笹本の勤め先に出向いて アリバイを確認する大樹と松田だが、秘書らが彼のアリバイを証明。
 その頃、岡山をマークしていた純子がプロトスーツに襲われ、ソルジャンヌにブラスアップするも、一蹴される。松田が笹本の会社に 出向いてその存在を確認すると副社長室から確かに聞こえてくる笹本の声。
 そしてソルブレイン本部にかかってくる、犯人からの挑発的な電話。
 クロス2000によりそれが、ボイスチェンジャーで偽装されたものだと知った大樹の指示で松田が副社長室に突撃すると、そこに 居たのは笹本ではなく、ボイスチェンジャーで笹本の声に偽装した部下だった! プロトスーツ強奪の実行犯となった下請け会社で 偽装工作がばれた事を知った笹本は、再びソルブレイン本部に電話をかけ、「決闘に応じない場合は、無差別殺人を行う」と大樹を 廃工場へと呼び出す。
 いくら御曹司の頼みにしても、笹本自動車は、会社ぐるみで犯罪に協力しすぎでは(笑) もともと、笹本の 立場を利用して不正を誤魔化していたとか、後ろ暗い事があるとしか思えません。
 そして笹本を「ぼっちゃん」と呼ぶ謎の解体業者のおじさんは、走行中のパトカーの窓ガラスを狙撃とかしていたのですが、 傭兵か、歴戦の元傭兵なのかっ?! 今は一介の解体業者だけど、かつては“伝説の巨人”と呼ばれた男かなにか なのか?!
 あと、掃除のおばちゃんの目撃情報以降、凄い勢いで容疑者が絞られている(実際、大樹も正木も、ほぼ笹本が真犯人だと考えていると しか思えない)のですが、たぶん、プロトスーツを装備できるのは日本で3人だけとか、そーいうレベルっぽく、まあ、あの 研究所の作るものだから仕方がない。
 そして激突する、ソルブレイバー vs ソルブレイバー!
 「笹本さん……何故こんなバカなことをするんですか!」
 「俺はいつでもトップだった。出世でも誰にも負けなかった! それが、ソルブレインの隊長にはなれなかった。全ての面で俺より 劣っているおまえによって、俺のプライドはズタズタにされてしまったのだ。貴様と正木だけは、生かしておくわけには いかんのだぁぁぁ」
 妄執に狂い、大樹を追い詰める笹本だったが、プロトスーツの装着限界に達して倒れる。制御しそこねたビーム兵器の射撃で爆発炎上 する廃工場の中で、それでもなお命を狙ってくる笹本を救い出す大樹。退院した正木を含め、外で皆に出迎えられるがその時、
 松田「大変だ! あそこに子供が!」

なぜか

工場の窓際に

三輪車の幼児


 ……あっれー、今回ここまで凄い面白かったのになー。
 松田がこの瞬間、えらく棒演技になったのも含めて、色々と台無し。
 続くシーンの意図はわかりすぎるほどわかるのですが、もう少し、何とかならなかったのか(^^;
 燃え上がる工場に飛び込もうとするソルブレイバーを押しとどめるジャンヌ。
 「装着可能時間の限界を超えてます。行けば貴方が死にます」

 じゃあ、貴女が行け

 本当にもう少し、何とかならなかったのか。
 ジャンヌの静止を振り切って工場に突入したブレイバーは、ぼろぼろになりながらも幼児を救い出し、見事に帰還。そのまま仰向けに 倒れたブレイバーを見て、ひきつった笑い声をあげる笹本。
 「馬鹿なヤツだ、こんなくだらんことに、命をかけて!」
 大樹の無事を確認した正木は、腕の包帯を外し、笹本を殴り飛ばす!
 「恥ずかしいとは思わんのか、おまえほどの男が。
 常にトップに立ち、上からしか物を見れないおまえにはわかるまい。どんなに小さく弱い命でも、自分の力が続く限り、救おうとする ソルブレイバーの心と勇気。
 それこそが、ソルブレインの隊長の最大の条件であり、私が、おまえを隊長の座に据えなかった最大の理由だ」
 涙を流す正木、その言葉と心に、笹本も崩れ落ちる。
 ……しかし、笹本がここまで歪んだのは、正木のせいでは?
 多分さすがにもともと、幼児を見殺しにしてひゃっはーする人では無かったと思うのですが。
 ラスト、死力を振り絞って幼児救出に向かうソルブレイバー、狙い澄まして流れる主題歌、とシーンは格好いいし、意図はわかるの ですが、無理矢理な幼児出現ジャンヌさんのぽんこつぶりは何とかならなかったのか。面白かっただけに、 その2点だけ、非常に残念。
 プロトスーツにジャンヌが襲われるという展開はあったのだから、スーツを大破させておくか、いっそジャンヌさん一時リタイア させても良かったような。『ソルブレイン』は妙に、ラストのメンバー揃い踏みにこだわるのですが……よく考えると『ウインスペクター』 もそうだったので、微妙に制作上で縛りがあったのかしら。
 最初にいかにも、今回の悪役然とした岡山を出し、対比として笹本を置き、真犯人はどちらだというサスペンスを交えながら笹本の 狂気へと繋げていった展開は秀逸。大樹に因縁をつけるキャラを出す事で、正直ここまで劣化竜馬さんでしか無かった大樹にようやく キャラクターとしての取っかかりが生じ、見ていて話にノリやすくなってきました。
 竜馬さんが最初に妹との絡みを置いていたのに対し、大樹は人間的繋がりが無い所にぽんと現れてしまっていたので(松田が目標に しているような演出はあったけど、ああいうのはもっと強調するべき)非常にキャラクター性が希薄だったのですが、遅まきながら “ソルブレインの隊長として選ばれた西尾大樹という男”が、他のキャラと対比される中で浮き彫りになったのは、非常に良かったと 思います。
 なんというか、『ソルブレイン』がやっと始まったという感じ。
 西尾大樹の物語になってきた。
 選ばれた男と選ばれなかった男の交錯、というシナリオのコンセプトも良く、しつこいですが「大変だ! あそこに 子供が!」以外は、非常に良い出来でした。変な話、ウインスペクターの最終回にあっても良かったようなエピソード。
 まあ竜馬さんの場合は、装備が危険すぎるので誰にも羨ましがられていなかった説がありますが!

◆第9話「父と娘の赤い絆」◆ (監督:小西通雄 脚本:宮下隼一)
 銀行強盗の車を追って、珍しくごく普通にカーチェイスするソルブレインだったが、逃走車が他の車と衝突。乗っていた少女・神崎茜が 重傷を追ってしまう。極めて珍しい血液の為、ハーグの血液センターから輸血用の保存血液が手配されるが、それが届くまで体力が保つか もわからない、極めて厳しい状況に関係者の焦りが募る。
 そんな中、病室に現れた茜の父は、毒性の高い化学物質を不法投棄している疑いで内偵が進んでいる中光化学の社長、神崎栄三 (時村博士ぇぇぇぇぇ!!)であった。
 やってる。間違いなくやっている(おぃ)
 上述の理由から取り巻きとソルブレインの間の険悪な雰囲気をわざわざ描くのは、この作品のいい所。神崎サイドが警察に非協力的 なのも、伏線として機能。
 ……しかしまあ、警察の捕り物に巻き込まれて娘が重体で、病室に行ったらうすらでかくてちゃらちゃらした若いのが、 黒革・黒革・茶革、で並んでいたら、それはイラッとするよね……!
 玲子さんがまた、に戻ってしまったのですが、絵的に暑苦しくなるので、前回までのように、カラーリングで 彩りを添えた方が宜しいかと思います。
 その頃、中光化学の不法投棄に関わり会社から尻尾切りをされた男の娘、早瀬美穂は新聞でこの事件を知り、空輸されてきた保存血液を 盗むと、神崎に取引の電話をかける。事件を知り駆けつけた大樹達に、神崎社長は「1億円と引き替えだと言われた」と語るが、電話を 受けた妻の態度に、この事件には何か裏がある、といぶかしむ大樹。そう、美穂の目的は金などではなく、中光化学が毒物の不法廃棄を 認め、その工場を閉鎖する事。そして毒物の影響で今も苦しむ父に償う事であった!
 尾行をまかれた大樹から連絡を受けて神崎妻に追い込みをかけた本部長は、電話の内容と事件の裏の真実を聞き出す。一方、取引現場で 美穂と対面した神崎社長は、「たとえ娘の命をたてにとられても、聞けない事がある」と、生死の境をさまよう娘よりも会社を優先し、 あくまで金でかたをつけようとする。
 神崎家と早瀬家の二つの家族の思いに、社長の会社への思いも絡め、あくまで神崎社長が根っからの極悪人というわけではなく (悪い人なのは確かなんですが)、一つの会社を背負ってしまったものとしての葛藤がある、としたのは良いところ。
 結局、交渉は決裂。攻撃的な社長の部下二人は美穂を縛り上げた上に時限爆弾を設置して彼女を亡き者としようとし、娘の命を諦めた 社長を急き立ててその場を去る……話の都合により、むしろ部下二人の方が悪い人と化すのですが、時限爆弾で 木っ端微塵にするぐらいだったら、拷問でもして血液の在処を聞き出せばいいのにと思うのですが、まあ、 絵的にできないか(^^; ただ、交渉決裂→即木っ端微塵、で血液の在処を探す努力を一切しないのは違和感というか、 部下二人が超酷い。社長に対して。
 正木から得た情報を持って大樹達は中光化学に乗り込むが、神崎社長の態度はにべもなく、松田の罵倒にも無言。
 会社の廊下に立っているドーザーが怖いけど、それでも無言。
 そこへ現れた本部長、おもむろに神崎社長に近づくと、制服の内側からポケットレコーダーを取り出す。
 ――「パパ……私の言う事を聞いて……」
 そこから流れ出す、息も絶え絶えな娘の呼吸器を外して、レコーダーに録ったコメントを、 社長に突きつける正木。

 本部長、超鬼畜

 ……そうか、正木はこうやって、今の地位を確立したのか。
 かねてから、《寝業》や《根回し》が得意スキルと思われていた本部長ですが、遂にその片鱗が公開。
 思った以上に凶悪でした。
 崩れ落ちる社長。
 時限爆弾の話を聞いたソルブレインは美穂の囚われた工場跡に向かい、無事に彼女を救出。
 今回も、ジャンヌとドーザーは何の役にも立ちませんでした。
 神崎社長は会見で自分たちの罪を告白、美穂は血液の在処をソルブレインに託し、神崎茜の手術は無事に成功。美穂の父も最新の治療を 受ける事が出来るのであった……そして娘は逮捕(多分)。というか娘をちゃんと捕まえないと、 テロリズムを許容する事になるからなー。目的は手段を正当化しないんですよ?
 前半、登場人物それぞれの立場と想いが交錯する展開は悪くなかったのですが、取引の時に、部下二人が血液を探そうともしないという のは、やはり問題。あの二人にとっては、社長の娘 < 会社、なところが冷たく描写されているといえばされているのですが、探すフリ ぐらいしましょうよ、と。あと、ラストで謝罪に来た美穂を許す神崎茜さんがあまりにも嘘っぽい人格者になってしまったので、最後の 病室のシーンは要らなかったかな、と。
 ゲストキャラが若い女の子という事で、明確な逮捕シーンの描写を避けた為かとは思いますが(それはそれでどうかと思いますけど、 フィクション的に仕方ないところか)。
 基本的にレスキューシリーズは、ラストで大団円の雰囲気を出そうとしている時ほど、造っている側が「これで済まないよなぁ……」 と思っているっぽいのが透けて見えて困ります(笑)
 むしろ、どす黒い。
 そして真っ黒な正木回でした。
 まさか、こんな形で正木回とは。
 で、次回、
 誕生! 老人放火団
 ナレーションが疑問の余地なくおかしい。
 日の丸鉢巻きの老人達が火炎瓶投げるとか、予告映像が既に頭オカシい。
 ワクワクしますね!(おぃ)

◆第10話「わしら純情放火団」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)
 20年分の世相の違いがあるので、当時と今とで捉え方の違ってくる部分もあるかとは思いますが、予告より更に、斜め上で酷かった なぁ……。
 深夜、火付けの練習をしている、黒服の若い男1+老人3。
 「明日、四人目のお仲間が面接にいらっしゃる予定です」
 「決まれば」
 「「いよいよ」」
 「われら老人放火団の誕生です」
 ある日、暴走族に囲まれていたぶられている老人・岡田を助けた増田。再就職の為に面接に行く途中だったという岡田と喫茶店で一息 つきながら、さきごろ40年勤めた会社を辞めたが送別会も無かった、という話を聞いて、「社会があんまりお年寄りに冷たくしてると、 今に反乱が起きますよ。老人達の大反乱が」とやたらに憤る。
 …………うーん、自慢できる事が「40年間、無遅刻・無欠勤」で、退社時に「ご苦労様、の一言も無かった」というのはつまり、 岡田さんは単なる駄目社員だったのではなかろうかとか思ったら駄目ですか、そうですか。駄目社員だからどんな 扱いを受けてもいいという訳では勿論ないのですが、後半の行動も合わせて考えると、岡田さんは単なるダメな人 だったという気はしないでもない。
 増田と別れた岡田が面接に向かった、あけぼの社で彼を待っていたのは、老人達と火付けの練習を行っていた、顔に傷のある男・須藤。
 「我が社の仕事は放火です。日本中を焼け野原にするのが仕事です」
 いきなりの爆弾発言。
 戸惑う岡田を、若い連中に蔑ろにされた経験は無いか? そんな事でいいのか? 終戦の時に中学生だった貴方のこれまでの奮闘は 報われたのか? と言葉巧みに誘導する須藤。
 「だからこの国をもう一度焼け野原にしてやるんですよ!」
 「豊かさに腐りきった若い奴らに、かつて貴方が味わったと同じ、何もないところから国をつくりあげる試練を与えてやるんです!」
 その気になってしまった岡田、放火団に加わる事を決意(この時点で駄目すぎる)。
 ここで老人放火団のテーマ。

 「「「わ、わ、わしらは老人放火団
 マッチ一本愛の鞭
 恨みに燃える真っ赤な炎
 腐った日本を焼き尽くせ おー!」」」

 なんかこう、色々、最低です(^^;

 そして発生する3日で7件の連続放火。事件の調査に向かったソルブレインは、放火現場のどこでも、火事を見ながらはしゃぐ 老人達の姿があった、という証言を得る。たまたま現場近くの中学生が撮影していた火事の写真に、岡田が写っているのを見つけた 増田は、増田が面接試験に向かう筈だったあけぼの社を訪れるが、既にもぬけの空。大屋から、社長は須藤という男だったと情報を得る。
 一方、あけぼの社を引き払ってアジトに隠れていた須藤&放火団の面々だったが、老人達に放火対象の選択に疑問を挟まれ、須藤は 真の目的を割と素直に白状。
 彼の目的は、自分の信じる社会正義の為などではなく、家族を破滅に追い込んだ不動産王・桜木への個人的復讐であり、これまで放火の 目標にしたのは全てその桜木の持ちビルであった!
 20年前、桜木の為に一家は家に火を放って心中、ひとり生き残ってしまった須藤は左足と顔の一部に大火傷を負い、義足で不自由 しながら、社会の片隅で生きてきた……そんな須藤の事情を聞いた老人達は、「あんたの為にやるんじゃない。自分たちの為だ」と、 須藤への協力を約束。
 その頃、ソルブレインもこれまでの7件の放火が全て、桜木の持ちビルを対象にしていた事に気付き、桜木と接触。また須藤の足取りを 探った増田は、彼が心臓の病で余命いくばくもないという事を知る。
 桜木をマーク中の玲子の前に、白昼堂々、歌いながら現れてビルに火を付ける老人達。
 玲子とドーザーが慌てて消火するが、老人達の二人、岡田と飯島が桜木を拉致し、須藤の待つアジトへと連れて行く。後を追った ソルブレインの前に立ちはだかったのは、日の丸の鉢巻きを締めた老人二人火炎瓶 攻撃。

 ひゃっはーーー 腐った日本を消毒だぁぁぁぁぁぁ!!

 その背後のアジトの中は、今、炎に包まれていた。己の余命を悟る須藤が、桜木とチェーンデスマッチ状態で、 一緒に焼け死のうとしていたのだ!
  「真面目なだけが取り柄だった親父も、
 優しかったお袋も、
 素直で可愛かった妹も、
 みんな炎の中に消えたんですよ。
 これでやっと、20年遅れでみんなの所に行ける。あなたを連れてね!」
 「死にたくない!」と必死に叫ぶも、鎖にからめとられる桜木。
 外では、ブラスアップした大樹と玲子が、結局、老人達に実力行使。火炎瓶を打ち砕き、竹槍突撃をいなし、 二人を無力化するとアジトの中に駆けつけるが、既に火勢の収まったアジトの中では、床に倒れて須藤が息絶えていた。
 息も絶え絶えながらも何とか生きていた桜木を運ぶジャンヌと、力尽きた須藤を背負って外に出てくるブレイバー。
 その姿に、岡田は呟く。
 「桜木だけが生き残った……腐りきった日本だけが」
 途中からは岡田に同情して協力していたとはいえ、そもそもは、「腐った日本=若いやつら」、だった筈なのに、ここで、腐った日本の 象徴が、老人らと同世代(ちょっと上ぐらい?)の桜木にすり替わる、という、恐ろしく アクロバットな脚本。
 結局老人達も、必要なのは“お題目”であって、自分たちの私怨をぶつけて憤懣を晴らしたかっただけなのだ、という構図が明確に 浮き彫りにされます。
 熟年以上に優しいレスキューシリーズなので何か救済があるのかと思いきや、卓袱台を投げっぱなしジャーマンで ひっくり返しながら猛スピードで崖下へ転がり落ちたまま誰も帰ってこない、という

 狂気のエピソード。

 もちろん、前半部分で充分に取り返しのつかない事をしているのですが、そこから更に、加速して背中に蹴りを入れて きました。
 良いか悪いかでいえば、見ている途中で、だいぶ引きました。
 構成のテクニカルさでいえば扇澤脚本の精髄とも言える出来かとは思うのですが、あまりに内容が酷すぎて評価しがたい。
 岡田「この、何もかも焼き払われた所から、私はこの国を造った。道路を造り、橋を造り、この国全てを造り上げた。凄いだろ?  全部、私たちが造ったんだよ。汗と涙で。それなのに……誰も、それを認めてくれん」
 増田「俺は認めますよ」
 岡田「良かった……良かったなぁ飯島さん。わたしらを認めてくれる、若いやつらが居たよ」
 増田「でも、気持ちはわかるけど、でも、あなたたちがやった事は、やっぱり間違ってるんですよ。……連続放火、ならび拉致誘拐で、 逮捕します!」
 岡田らに手錠をかける増田。
 増田は叫ぶ。
 「本部長、真っ当に生きてきたこの人達が、なぜ俺に手錠をうたれなけりゃいけなくなっちまったんスか! 誰が、何がこの人達を 追い詰めちまったんスか!」
 ……えーとそれは、自分たちが満足できない事を、他人に憤懣としてぶつけられる心性だからだと思うなぁ。
 増田の個人的同情は自由ですが、社会に責任を転化するまでもなく、明らかにこの人達が悪い。
 この、増田が妙に肩入れする事で誤魔化しつつバランスを取ってはいるけれど、どう見ても老人達に一切同情の余地がない、というのが 今回の凄くて酷いところ。
 敢えて言うなら復讐者の須藤には同情の余地はありますが、桜木が死ぬ事で誰かが満足してはいけない、という所を踏み越えなかったの は評価。
 それをやってしまうと、前回に引き続いてテロリズムの許容になってしまうので。
 ラストはナレーションで締め。
 ――手錠をうった純の心に、やりきれぬ、苦い思いが残った。
 その苦さが、どこから来るものなのか、増田純、22歳の春の、辛い犯人逮捕だった。
 色々と、問題のあるエピソード。
 何がまずいかというと、人の善性が一切描かれない話、というのはよろしくないなぁ、と。
 敢えていうなら増田が人が好いのですが、あくまであれは正義の味方ポジションからの態度と発言なので、ゲスト全員が全て大義を 建前にした歪んだ私怨で行動していて(建前を立てているからなお悪い)、その結果、誰も救われないというのは、いかがしたものか、 と。
 ラストの増田の言葉で勝手に老人達が赦されているのですが、むしろ、あの老人達が赦されてはいけないポジションなので、もう一つ おかしい。まあ、更に全編悪意まみれだと解釈すれば、増田のその場の勢いの「俺は認めますよ」発言に対する岡田の返答は、 (簡単にわかってたまるか)的な嫌味だとも受け止められますが。
 今回、この辺りは混線していて、そもそも
 「桜木だけが生き残った……腐りきった日本だけが」
 という台詞が無ければ、最初は若い世代への憎しみで放火していた老人達が後半は須藤の境遇に同情して……という形で、同じ逮捕まで 描くにしても、もう少し人情話よりに収められたかと思うのですが(それで良いかはさておき)、それを是としなかったし、この台詞で 救いようがなくなっている。
 ではどうしてこうなったかというと、ややメタな話になりますが、このエピソードには、戦後約45年が経ち、終戦時に中学生ぐらい だった岡田の世代(1930年代前半生まれ)が退職を迎える、という社会背景があります。
 で、その世代が憎しみを向けるのは経済的繁栄を当然のものと享受し自分たちを敬わない若い世代なのか?  ……いや本当に憎いのは、彼等より少し上の世代で、戦後の混乱期に時流に乗って勝ち抜けた一部の成り上がりではないのか。
 どうもこのシンボルとして、桜木が置かれている。
 スタッフ会議でどういうメンバーが話し合うのかはわかりませんが、東映プロデューサーの堀長文が1936年生まれ、今回監督の 小西通雄が1930年でどんぴしゃ、脚本の扇澤延男が1956年、と存外この台詞は、小西監督の実感辺りから出てきたのでは、 なんて事も想像します。
 その上で老人達にまた若いやつらに向けて文句言わせたり増田がフォローしたりで、物語としてはますます混線してしまうのですが(^^;
 “正解がない”というリアリズムといえば聞こえがいいですが、物語としては一本、芯を通すべきではなかったのかな、と。せめて 増田の話になっていれば良かったのですが、そういう構造でもないですし。
 あとこれは『ソルブレイン』全体の問題になりますが、“若き刑事の悩み”という部分で増田にスポットを当てたのは失敗だったと 思います。竜馬さんとの差別化をはかるという意味でも、大樹で良かったような。とすると、そもそもの増田の存在意義が無くなって しまう(^^;のですが、大樹をヒーロー化する為に、成長要素のドラマ部分を増田に割り振ってしまうと、ますます大樹の個性が 薄れてしまうので、大樹は思い切って“悩めるヒーロー”で良かったのではないかなぁ。
 逆説的に、そういうヒーロー像のOKが出なかったので、ソルブレインに増田が誕生した、という感じですが。
 8話でようやく独り立ちを始めた大樹ですが、やっぱりキャラが薄い(服装は濃い)ので、もう少し意識的にキャラ造りしてほしい ところ。積極的に日常パートを描いてみる、とか、主に竜馬さんとの差別化という点でも、やりようは色々あると思うのですが。


◆第11話「愛と復讐の挽歌」◆ (監督:小笠原猛 脚本:増田貴彦)
 玲子のかつての幼馴染みであり、正木に復讐を誓う青年・桐生一也から、ソルブレイン本部に黒い薔薇が送られてくる。それは遺伝子 配合で誕生した薔薇の姿の麻薬、バイオローズ。そしてソルブレインを狙って動き出す、凄腕の暗殺者、真柴3兄妹!
 通り一遍のメロドラマ(玲子と一也の幼馴染み同士の淡い想い)
 意味不明のタイミングで豹変する真の黒幕
 とシンプルに出来悪し。
 特に一也の父の元助手であり、麻薬密売の罪を一也父になすりつけ、今も一也を操り人形としている事件の真の黒幕・沼田が、どうして わざわざ警察に正面から喧嘩を売ってその始末が中途半端というタイミングで一也を裏切ったのか、理解不能。
 真柴3兄妹も、ビルの上からライフル撃ったり、謎の光線銃でブレイバーを撃つぐらいでは、 インパクトが足りません。
 唯一、サバイバルナイフを使って接近戦を挑んでくる真柴妹(けばい)は変わり種で面白かったですが、玲子さんとすり替わるという トリックの為に早々に出番終了で、残念。
 あと、やたらに一也に忠誠の篤いちんぴら森岡はちょっと面白かった。
 玲子さんを掘り下げつつ玲子さんアクション回だったのですが、物語がテンプレすぎて堀り下がらず、次回予告が妙に盛り上がっている と駄目パターン。

◆第12話「誕生!新ドーザー」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升)
 深夜、少女にかかってくる謎の電話。
 「由美ちゃん、ママよ……助けて……」
 それは、10日前に事故に巻き込まれて死んだ筈の母親の声だった!
 場面かわって、交通安全キャンペーンで風船を配るソルドーザー。
 前もやったよなぁと思ったら、玲子の台詞で「ウインスペクターのバイクルとウォルターもやったんだから」と入れる辺りは、 前作のメインライターらしい細やかさ。
 通りすがりの由美ちゃんと父親の会話を耳に挟んだ玲子が事情を聞き、悪戯電話の事を知ったソルブレイン。父親が職業柄、家を 空けがちな為、ドーザーと亀吉が由美ちゃんの家に張り込む事となる。
 夜11時、鳴り響く電話から、由美ちゃんを呼ぶ母親の声。通話時間が短すぎて逆探知には失敗するが、録音したテープを分析した結果、 母親の声はコンピューターによる合成音だという事が発覚する。果たして、誰が何の為にかけている電話なのか……?
 その頃、パワーアッププランに基づいて変形システムが採用されようとしていたドーザーは、設計書を見て思い悩んでいた。
 「私はやっぱり、ただのマシンだったんです」
 「変形すると、手も足もなくなってしまう。そんなの嫌です」
 人間らしくありたいドーザーが、車両タイプへの変形=人の形を失う事を恐れる、というのは非常に面白い。
 バイクルとウォルターを踏まえている割には、ドーザーの人工知能は幼すぎるし、人命救助組織がそれを運用している事自体はどうかと 思うのですが、再びロボット刑事を0から描くにあたって、魂は奈辺にあるのか? というネタに、踏み込んできたという程でもないですが、 触れてきたのは好み。
 いよいよプログラム完成の日、技術開発センターに行く事を拒否するドーザー。
 「変形を覚えても、おまえの心まで変わるわけではない」
 「大切なのは姿形じゃない、心なんだ」
 と本部長の説得を受け、センターに向かう事に。
 相手が生後三ヶ月だと、本部長にも説得可能だった……!
 まあドーザーのAIは、柔軟性を重視しすぎた感もありますが(^^;
 一方、由美ちゃん宅を警戒していた大樹だが全く役に立たず、日中にかかってきた電話を受けた由美ちゃんが姿を消してしまう。 同じ頃、玲子の調査により、第七世代コンピューターの著名な開発者であった岡島三郎博士が由美ちゃんの母親と一緒に事故にあって 死亡していた事が判明。遺された博士の手帳を調べた大樹は、博士が“母親ロボット”を研究していた事を知る。
 博士は幼い頃に母親を亡くした体験から、自分のように寂しい想いをする子供達を少しでも減らそうと、母親を失った子供達の為の 母親代わりとなるロボットを研究。その過程で、理想的な母親の頭脳をコピーする必要性から、由美ちゃんの母親に協力を頼んでいた のだった。
 だが、由美ちゃんの母親の頭脳をコピーし後、由美ちゃんの母を家に送る途中で事故にあって二人は死亡。そして博士は自分の 研究の保守の為、研究所に防衛システムを仕掛けていた。
 「博士の身に万一の事があった場合、研究所に現れなくなってから、ちょうど10日後、コンピューターもろとも、研究所が自爆する ようにセットしたみたいなんです」
 どんな表沙汰に出来ない研究をしていたのか、博士
 もう、見ている方も慣れてきてしまいましたが(笑)
 むしろ、自爆しないと駄目な気がしてきて、慣れって恐ろしい。
 由美ちゃんの家にかかってきた電話はおそらく、自爆システムの作動に気付いた、母親ロボットの助けを求める声……!
 事故があったのは、10日前の午後2時45分。
 研究所の爆発まで、あと10分!
 岡島物理学研究所に急ぐ大樹だが、由美ちゃんは一足早く研究所にたどり着いていた。そして時計は無情に刻まれ、爆発する研究所。

 ご近所・超迷惑

 大樹はブラスアップ、そして駆けつけたソルドーザーが変形! 車両タイプのドーザークローラーが、炎上倒壊する研究所の瓦礫を かきわけ、ブレイバーとジャンヌは由美ちゃんの救出に成功。母親ロボットの声の元に向かいたがる由美ちゃんをブレイバーとジャンヌに 託し、ドーザーは研究所の奥へと突き進む。
 そこでドーザーが目にしたのは、半分は機械・半分はマネキンにカツラ、という未だ人間とはかけ離れた母親ロボットの姿であった。
 電話する母親ロボットの映像が終始、椅子に座って後頭部だけ、というカットだったのでわかるネタではありましたが、容赦なく グロテスクな外見にする事で、インパクトが出ました。
 その姿におののくドーザーであったが、その心に本部長の言葉が響く。
 (大切なのは姿形じゃない、心なんだ)
 娘に助けを求める母親ロボットの声、そこに心を見るドーザー。爆炎の中でドーザーは母親ロボットの上にかがみこみ……
 爆発する研究所から、無事に脱出してきたドーザーは、外で待つ由美ちゃんに、1枚のフロッピーを渡す。
 それは、母親ロボットにインプットされていた、由美ちゃんの母親のデータであった。
 「由美ちゃん、お母さんは、この中に居ます。お母さんの優しさや、由美ちゃんとの思い出がぜーんぶ入ってます」

 FD1枚扱いのお母さん

 由美ちゃんは、渡されたフロッピーを大事に胸に抱くのであった……
 あー、ちょっと最後、やりすぎて、微妙にいい話ではなくなったような……(笑)
 ロボット刑事と、母親ロボット、二つの人工知能の姿を通して、“ロボットと心”を問う好編。
 ドーザーが変形を前にアイデンテティの置き所に悩むというのも良かったし、母親ロボットを助けに行ったドーザーがグロテスクな 作りかけの姿を目にして戸惑い、しかしそこに心を見る、という展開は非常に良かった。
 『ウインスペクター』ラストから『ソルブレイン』1・2話と、非常に出来の悪かった杉村回ですが、一息置いて、“科学のいきすぎ” や“人工知能”など、好きそうなテーマを書いた事もあってか、なかなの出来でした。パワーアップ回の処理としても、秀逸。
 ロボットの体と人間の心、の二面を持つドーザーの成長とともに自己肯定の物語にもなっています。
 というか、あのドーザーの反応を見ていると、下手に変形プログラムの組み込みを強行していたら、変形後にボディと心のギャップに 恐慌をきたしたドーザーが暴走とか、関係者の懲戒免職で済まない事態に発展していたような気も しないでもない。
 まあドーザーが変形して、破壊と切り開きを担当してしまうと、ますますブレイバーの仕事が戦闘しか無くなって しまって、なんだかなぁ感が激しく増しますが!(笑)
 しかし亀吉は、役に立たなすぎる。
 ドーザー担当の筈だったのに、説得一つも出来ないし。

 ――次回

 大樹が、少女を轢いた

 あー…………「いつか、こんな事になるんじゃないかと思っていたんです」(関係者談)

→〔まとめ3へ続く〕

(2012年12月4日)
(2019年12月27日 改訂)
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