■『特救指令ソルブレイン』感想まとめ1■


“犯罪が高度化した時代、人の命と心を救う為に、
自らの青春をかけて立ち上がった若者達が居た。
――それが、特捜救急警察である”


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特救指令ソルブレイン』 感想の、まとめ1(1〜6話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。

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◆第1話「東京上空SOS」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:杉村升)
 東京上空に突如現れ、街に甚大な被害をもたらした巨大飛行物体。その正体は、宇宙ステーションだった! 宇宙ステーションを 誘導したのは、西部科学技術開発センターで開発されていた人工頭脳A320。急速な成長を続けるA320は研究所の主任、稲垣博士の 協力のもとに、自身の更なる強化を図ろうとする、だが……!
 警視庁内部の一部屋だったウインスペクターから一転、特捜救急警察ソルブレインと いう単独のビルを所有し、大幅に組織としてスケールアップ。吹き飛ぶビル、弾ける車、吹き上がる炎、と謎の飛行物体も派手 に大破壊を行い、世界観はだいぶ派手になりましたが、本部長の振り返り方は一緒。
 ヒーロー物の2話ぐらいまでは予算大投入で派手、というのはお約束ですが、それにしても、派手。
 穿った勘ぐりを承知で、『ウインスペクター』終盤の予算をこちらに回したとしか思えません(笑)
 ソルブレインのメインコンピューター・クロス2000は、世界観の共通性という意味でも、別にマドックスでも良かったような。 マドックスは警視庁用という事で、クロス2000は発展型か何かなのか。
 本部に情報センターが別にある、というのはいい。なにしろ本部長は、電話を取らせてはいけない人なので。
 宇宙ステーションの誘導電波の発信元とみなされる西部科学技術開発センターに向かった主人公・西尾大樹は、研究所の主任・稲垣博士 の息子、カズオと遭遇。一緒に博士に話を聞こうとするが、博士はすっかり、人工頭脳の進化と科学の発展の為には多少 の犠牲は仕方がないと、とち狂っていた。
 暴走する人工頭脳 ブレイン A320は、自身の更なる進化の為に自らを人間の肉体に移植しようとし、 その適合体として博士の息子を要求。
 「カズオ……A320の指示に従ってくれ。全ては人類の進歩のためだ」
 コンピュータに息子を売る博士
 A320はカズオの身柄を手に入れると、自分を止める可能性のある稲垣博士を裏切り、彼等を亡き者とするべく宇宙 ステーションを研究所に落下させる。
 所員達を救い、カズオくんを奪還する為、西尾大樹、ソルブレイバーにブラスアップ!
 更に本部からは、巨大レスキューメカ・ソリッドステイツ−1が出撃。それぞれ専任の隊員が居るというのは、この先ドラマ的に 活かされるのかはわかりませんが、面白い所。更に大樹の同僚、樋口玲子もソルジャンヌにブラスアップし、燃えさかる研究所から 所員達を救い出す。
 特殊スーツも着ていないのに、何故かジャンヌと一緒に火事場のかなり奥まで入り込む、同僚刑事・増田純が熱い(笑)
 カズオ少年を助け出したソルブレイバーが通りすがりに博士も助け、コンピューターに売ったにも関わらず自分に手をさしのべてくれる 息子の姿に、博士も改心して、大団円。
 ……もちろん博士は逮捕だけど!
 クライマックスのレスキューアクションは、大火災にエレベーター落下に、何故か飛んでくるプロペラとか、色々とやりすぎて散漫に なってしまいました。もっとシンプルで良かった。色々やった挙げ句に、最後は大爆発で「脱出失敗か?!」と皆が思ったら煙の中から 姿を見せる、という一番面白くないオチでしたし。

◆第2話「爆襲エスパー姉妹」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:杉村升)
 傷害事件で服役中の鶴岡は、警察への復讐と脱獄の為に、イギリスから二人の娘、エミとルミを日本に呼ぶ。イギリスの諜報機関MI6 が開発したESP装置を身につけた二人は、音声は強力な震動波となり、磁気を逆転させて物体を動かす、という超能力を発揮して通り すがりの少女を人質に取ると街を無差別攻撃。更にソルブレイン本部の攻撃を宣言する!
 箕輪監督……こんなに下手だっけ?
 役者が慣れてない云々以上に、演技指導とか演出とか台詞回しが全体的に低レベルで、首をひねる出来。
 実は刑務所で花を育てていた鶴岡、それは風船について飛んできた種だった、その種を風船につけて飛ばしていたのは人質にされた 少女だった、娘達の本部襲撃はブラフで本命は刑務所襲撃、襲撃を待つ鶴岡は育てた花を大事に鉢に植え替えていた、と話は繋がり (強引でご都合なのはいいけど、もう少し風情と伏線が欲しい)、娘達のブラフを見破って退却させた大樹は、面会室で鶴岡 にスイートピーの種を叩きつける(笑)
 おまえに心の拠り所をくれた少女がおまえの娘の為に悲惨な目に遭っている、と事情を説明した大樹は更に、
 「この鉢植えが大事なら娘達のアジトを教えろ。ぐふふふふ。さもなくばこうだ!」
 と鉢植えを床に叩きつけようとし、折れる鶴岡。
 ……あっれー、娘達は暴行傷害で服役中の父親を刑務所から脱獄させる為に、わざわざ超能力装置を身につけてイギリス からやってきたのに鉢植え大事にそれを裏切る父
 …………えーとなんでしょう、2話続けて、子供を裏切る父の話?
 姉妹二人が自発的に父親を助けに来たならともかく、父親が自分の脱獄の為に呼んで暴れさせたのに、この仕打ちはあまりにあまりでは。
 かくて、哀れ姉妹はアジトをソルブレイバーに強襲されて逮捕。
 アジトの大火災でソルブレイバーは危機に陥るが、サポートロボット・ソルドーザーの活躍で脱出に成功。心を入れ替え刑に服する事 にした鶴岡の元を、人質にされていた少女が訪れて新しい花の種を渡し、鶴岡は涙を流すのであった……。
 1話もそうだったのですが、前作ラストから大上段に掲げた、「心を救う」というテーマにこだわり すぎて、シナリオに無理が出ています。加えてそれを、ソルブレインという組織のモットーという事で、繰り返し口にしてしまったり するので、むしろドラマが浅くて薄っぺらい。
 シンプルな話として、犯人が改心しなくてはいけない、というのは明らかに物語のルールとして面白くない。
 これは早く気付いて、軌道修正してほしいところ。
 あとこの話に関して言えば、そもそも鶴岡がどんな犯罪者だったのか、が描写されないので、そんな男にも花を愛でる心が、という ドラマ性が全く生まれず、加えて多分最終的に娘達の方が罪が重そうと、果てしなく駄目駄目。
 完全な新番組として見ればいいのでしょうが、こちらとしては、わざわざあんな形にしてまで『ウインスペクター』と世界観を繋げて おいてこれなのか、というのはどうしても引っかかる所。
 前作の反省点を活かして、各部署の専任のキャラクターを置くという形を取っているので、それが活きてくる事には期待。
 個人的には、特警に足りなかった秘書的お姉さんの部分を埋める、情報センターの相川みどりさんに期待です(笑)
 もうちょっと綺麗なお姉さん系だったらどんぴしゃだったのに!(何が)
 ソルジャンヌはえらくバブリーだしなぁ(^^;
 エンディングの映像を見ると、これも前作では描かれなかった、隊員達の若者らしさ(刑事以外の部分)を出していく意図があるのかも という感じですが、玲子の服装は『ジバン』の頃に逆戻りというか、純子さんは刑事らしさを前面に出す為に、かなり意図的に抑えた 衣装にしていたのか、と今更ながら納得してみたり。
 あと心配なのは凄く中途半端な使い方になりそうな、現場担当3人目の増田の存在意義。コメディリリーフ要員は、メンテ担当の戸川 みたいですし、果たして、ちゃんと使えるのやら。
 主役(大樹)は、初期の竜馬さんが若干ちんぴらぽかったとするなら、ヤクザの下っ端ぽい感じ(おぃ)
 全身から醸し出す、鉄砲玉オーラ。
 というか、増田とセットで、やたらにヤクザの若い舎弟コンビっぽい(笑)
 特捜救急警察というよりは、宮内組の雰囲気。
 その本部長は、なぜかエンディングで筋肉をアピール。まだまだ若い者に負けはしない。
 それにしても今のところ、もはや不要になったウインスペクターを海外へトバして、本部長が自分を頂点として好き勝手 できる新組織を作り出したようにしか見えないのですが、正木の政治力、恐るべし……!
 どうしても前作と比べてしまうという事もあり、この出来が続くとかなり厳しいのですが、中盤にアレがアレからアレするらしいから なぁ……面白くなってくる事に期待。

◆第3話「父は天使か怪物か」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 メンテナンス後に戸川が公園でうたた寝したために放置プレイを受けたソルドーザーが、街に出て大騒ぎ……ううーん、前作から 世界観繋がっているのに、どうしてソルドーザー一つぐらいで大騒ぎになるのか。
 そして刑事達3人は、どうしてそんなに革度が高いのか。
 交番に厄介になったソルドーザーを迎えにいった戸川。そこへ交通事故発生の報が入り、ソルドーザーを捕まえた田代巡査とその息子、 戸川とソルドーザーは事故現場に。後部座席の男を救出しようとした田代巡査は、同乗していた男に「先生」と言われる老人に顔を 引っ掻かれる。そして絶命する先生。それを見て「これで良かったんだ……」とこぼす男。
 その夜、ストーブの火を見て様子が急変した田代巡査は急に暴れ出すと外へ飛び出していき、追いかけてきた息子の首をしめる…… その顔は、あの死んだ男にそっくりだった!
 翌日、「うちの息子が行方不明なんです」と、何故かソルブレイン本部にやってくる田代巡査。
 ソルブレインの本部長室は、そんなにフレンドリーでオープンなのか(^^;
 前日の田代巡査と息子のやり取りに、「父」というものについて考えを巡らせていたソルドーザーは、戸川とともに聞き込みに行き、 昨夜の事件の目撃者から、少年を襲った人物についての情報を得る。
 それこそが、昨日の交通事故で死亡した男――遺伝子工学の権威、渋沢博士。同乗していた男(博士の助手)から話を聞いた西尾と 樋口は、渋沢博士の恐るべき研究について知る。博士は染色体をある種のアメーバに移植。そのアメーバを他人の体の中に入れる事で、 その人間の染色体を塗り替え、人格すら消し去ってしまう事で、天才の遺伝子の拡散による天才の量産を研究していたのだった!  どうやらそのアメーバの作用により、渋沢博士の爪に傷つけられた田代巡査が徐々に、博士の染色体に侵されているらしい!
 田代巡査の確保に動く西尾達だったが、同僚の吸うタバコの火に反応して博士の人格が表に出た田代は、同僚にアメーバを取り付かせて 逃走。捜査により、博士の隠れ家と、さらった子供で生体実験を行おうとしている事がわかり、そこへ向かうソルブレイン。
 いきなり、「博士について詳細がわかりました!」と玲子が駆け込んできたと思ったら、博士の隠れアジトから、さらった子供に何を しようとしているかまでわかっているのは謎というか、ここまでの前振り台無し。こういう情報の入手と展開というのは、物語上の バランスなわけで。これで済むのだったら、聞き込みシーン全面的に要らないよなーと(笑)
 ううーん……『ウインスペクター』は丁寧に作っていたのに、どうしてこんなになってしまったのだろう。
 ソルドーザーの話だった筈なのに、目撃証言を得た以降、ドーザー出てこないし(^^;
 突貫してきたソルブレインに対し、博士人格が巡査の拳銃を乱射して、お約束の工場大炎上。炎の中で、いつどうなって知ったのか、 息子に「父ちゃんの中に、変な生き物が入って悪さをさせているんだ」と言われ、苦しみながら正気を取り戻す田代巡査。
 「私の体の中にそんなものが! おのれぇぇぇぇぇぇ」
 ……いやなんかこう、台詞、おかしい。
 巡査と博士の人格を行ったり来たりする田代。ジャンヌとドーザーが息子を助け、自ら命を捨てようとした田代に組み付いた ソルブレイバーは、アメーバを何とかしようと考えを巡らす。
 「熱だ……熱に弱いにちがいない。田代巡査の中に居るアメーバを、熱の力で追い出す!」
 炎上し、室温の上がっていく工場内部でもがき苦しむ田代を押さえつけるブレイバー。

 そこまで思いついたなら、帰ってから病院でやって

 あとジャンヌさんは、見ていないで子供と脱出して。
 50度近い高温の中で、アメーバは田代の体内から吐き出され、化学薬品と混ざって、大爆発。こうして渋沢博士の狂気の研究は炎と 消え、田代親子も救われたのであった。
 いかにも玩具売りたそうなソルドーザー、その話を先に持ってきたのもわかるのですが、無理矢理に聞き込みまでさせてなお途中で 存在が消え、クライマックスのレスキューアクションでも、倒れてきた鉄骨を防ぐ、というスペック的には非常に普通の仕事しかせず、 田代親子との絡み方もそれほどでなく、スポットの当て方としてはなんとも中途半端。
 物語の部分は『ウインスペクター』の方が丁寧かつ濃かったし、これでブレイバーやジャンヌの活躍が、いかにも凄いヒーローという 感じで派手に描かれているならまだわかるのですがそういう事もなく、特にジャンヌさんに至っては、存在が嫌がらせレベル。 今ひとつ、作品として何がやりたいのか、伝わってこない。
 今のところ、誉める所としては、これまでになかったピアノ音楽などが効果的に使われるようになった事ぐらいかなぁ……。前作の 残像がちらつくというのもあるけど、どうも話にノれなくて、困った困った。

◆第4話「夢のゲームソフト」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升)
 ようやくちょっと面白かった。
 最新型の体感ゲームマシンが盗まれた! 開発元によると、マシンはまだ未完成の為、長時間使用すると、脳に障害が起こる可能性が あるのだという。捜査線上に浮かび上がったのは、マシンの開発チームの一員だった、佐野由起夫。佐野は盗み出したマシンを独自に 完成させようと子供達にテストプレイをさせるが、ダンジョンゲームから脱出できなくなってしまった子供達が廃人状態になり、困った 佐野は子供達をアジトから離れた場所に投棄する。
 ダンジョンゲームは遊園地ロケで、アイテムを入手した3人の子供達がそれぞれ、剣士風、弓使い風、ガンマン風の衣装となり、 次々と現れる着ぐるみモンスターを倒していくという、なかなか楽しい出来。
 容赦なくボウガン(残酷なので異教徒にだけ使用可)を引き絞る女の子とか、なかなか面白い。
 こういう、ちょっと古いタッチの描写が活きる話になると、途端に小西監督の演出ラインがはまります。
 国道沿いを彷徨っている所を保護された子供達は開発元のマシンでダンジョンゲームをクリアする事により廃人状態からの回復を 試みられるが、うまくいかない。佐野がマシンに改造を加えた事により、佐野のマシンでゲームを行わねばならないのだ。このまま 佐野のマシンが見つからなければ、子供達は完全な植物状態となってしまう……その時、子供の一人の袖についた汚れに気付く大樹。
 分析するとそれは、長く空気にさらされると爆発するという、特殊な産業廃棄物の液体によるものだった。 佐野のアジトはどこかこの、産廃が廃棄された場所があるに違いない! その時、その産廃によるものと思われる爆発事件が発生し、 ソルブレインは現場に急行する!
 ここはきちっと前半で伏線を引いているのですが、杜撰すぎる産廃処理をネタに組み込んでくる所は、作品らしさが出て良かったかと 思います。幾ら何でも杜撰すぎで危険すぎるとは思いますが、まあ、動物性タンパク質に襲いかかり吸収して増殖する 産業廃棄物とか存在した世界観なので、たぶん、このぐらいは日常茶飯事、かもしれない。なお明らかに違法投棄っぽかった ので、この業者には後でソルブレインが追い込みかけるよ!
 燃えさかる工場の前で佐野を逮捕したソルブレインは、中にあるマシンを分解して運びだそうとするが、複雑すぎて無理。しかしこの マシンが無ければ子供達を治す事は不可能……ならば、子供達をここで治療するしかない。ブレイバーとドーザーが出来る限り 延焼を防いでいる間に(ブレイバーに消化装備の存在が判明)ジャンヌが開発元に向かい、炎に包まれる工場の中で、 連れてきた子供達にマシンをセット。
 一緒に来ている開発元の研究員が、超・男らしい
 更に子供達を助けるべく、ブレイバーもマシンをセットしてゲームの中に飛び込むと、最後はゲーム中のビルから飛び降りて、 故意にゲームオーバーになるという荒技で、ゲームの世界を脱出。炎と共に崩れ落ちる工場の中から全員の脱出にも成功し、子供達は 無事に救われるのであった。
 最後に本部長がやってきて、ソルブレイバーを呑み込んだまま爆発する工場に向けて「ソルブレイバー?! ソルブレイバー!!」と 叫ぶのは、最初の方はお約束にしようと話し合いでもあったのかもしれませんが、あんまり面白くないし、4話連続は、やりすぎかと思い ます(^^;
 比較的シナリオがすんなりまとまり(ポイント:佐野の心とか割とどうでもいい)、4話目にしてようやく、ほどほどの出来。
 クライマックスの炎上展開はちょっと強引でしたし、なにより、バーチャルヘッドセットを装着したソルブレイバーの 画がえらく間抜けなのは何とかして欲しかったですが、体感ゲームというSF小道具の使い方も悪くなく、なかなか楽しめました。
 で同時に、玩具展開のあったと思われるソリッドステーツは仕方ないとして、増田と戸川も要らないよなぁ、としみじみ。
 少なくとも、二人は要らない。
 正直、増田はどうして配置しているのかわからないのですが(コメディリリーフだったら、それこそ戸川か増田のどちらか一人で良く、 必然性としてはメカニックの方が強い。ただし、戸川はメカニックキャラとしてはどうかと思う)、刑事もの的リアリティの為の人手 というには4話までの独自行動が少なすぎ、何より問題なのは、現場近くまで突貫に付き合うので、ブレイバーとジャンヌよりも、

 むしろ増田が凄く見える事(笑)

 これは早く何とかしてほしいです。
 この影響もあるかと思うのですが、前作を踏まえている割には、「ブラスアップ!」の盛り上がりに欠けるのも、改善していってほしい ところ。このシリーズは、変身→突入に至るまでのシナリオの流れを丁寧に書かないと、そこが盛り上がらないのだな、と改めて。
 更に今回は開発元の研究員が凄い漢らしく燃えさかる工場の中でマシンを操作してしまったりしたので、もう少し、ブレイバー とジャンヌのヒーロー演出を強調してほしいところ。今のところブレイバーは危険な兵器を装備しているだけで、 ジャンヌは開発費の無駄遣いの感じしかない……。
 まあ、前作のクラステクターに比べると、装着するだけで命がけという感じは薄いので、両スーツとも機能的には ファイヤーよりだいぶオミットされていそうですが。というか思想的には、出来る限り広く浅く装着できるスーツを目指すのは正しいの ですけど、ジャンヌさんとか、本気で広報の為だけに開発した疑惑があるよ某研究所と正木?!
 さて、次回予告のカメラワークが面白かったけど、誰だろう。
 近作でチーフ助監督を務めていた石田秀範が今作で監督デビューするそうなのですが、もう来るのかなぁ……パターンだとデビューは 後半が多いし、予告の抜き取りだけだと何ともですが。

◆第5話「怪人がくれた勇気」◆ (監督:小笠原猛 脚本:増田貴彦)
 革度、下がる
 玲子さんが、黒革を脱皮。
 大樹とかぶって画面がてかりすぎだったし、色彩が華やかになって、この方がよろしいのではないでしょうか。純子さんもそうでしたが、 女性レギュラーの衣装を毎度変えるのはいいと思います。1エピソード単位なので、エピソードによっては3日連続で同じ服着ている事に なる、とかのネックはありますが(^^;
 深夜3時、黒服の集団に囲まれて拳銃で撃たれる中年の男が、まるで獣――狼男のような姿に変身すると、黒服達を蹴散らして夜の闇へ と逃走していく。この狼男の目撃事件を捜査していた大樹は、捜査中に山口という少年と出会う。
 彼はその狼男が「ボンドさん」でないかと言う。
 自分が何をやりたいのかわからなくなって学校に足が遠のいていたある日、不良グループ仲間入りの儀式としてホームレス狩りに参加 した少年はしかしそれをする事が出来ず、逆に不良グループに暴行を受けた所をそのホームレスに助けられ、仲良くなる。自分を 「ジェームス・ボンド」と名乗る中年男性(ごく普通のサラリーマン風日本人)に、「やりたい事がないのは、君が何もやってない からだよ」と諭される少年。
 何かに追われているらしいボンドさんはある日、車を見て脅えて逃げ出し、その時に落とした紙を少年は拾っていた。それは、未来食品 開発という会社のモニター契約書であり、大樹はさっそく会社の調査に向かう。
 実はこの未来食品では、元・遺伝子工学研究所の主任研究員であった九条社長のもと、最強の生体兵器を作る為の生体実験が繰り 返されていた。ボンドさんはその実験施設からの逃亡者であり、未来食品の刺客に追われていたのだ。追い詰められ、再び狼男化した ボンドさんは追っ手を蹴散らすと、未来食品の施設へと突撃。狼男化する薬品を投与されていた男達を解放し、研究施設は狼男大パニック 状態。そこにソルブレインが駆け込み、ジャンヌさん、ちょっと活躍。そして今日も普通に火事場に突撃の増田。
 九条を殺しかけたボンドさんだが、ブレイバーの説得により、山口少年との交流の思い出が甦り正気に戻る。そして山口少年は ボンドさんの言葉を胸に、再び学校へ通うように、なるのであった。
 ……なんかまるっきりただのあらすじになってしまいましたが、良くも悪くも特にこれといって無し(^^; 予告は面白かったのに、 本編の映像は普通でしたし。

◆第6話「バクダンと落語家」◆ (監督:小笠原猛 脚本:扇澤延男)
 相談があると言われて、同級生の落語を聞きに行く玲子、と社会勉強でついていく戸川とソルドーザー。その同級生・三遊亭金太の 落語は全く受けておらず、客の反応は非常に冷たく、戸川などは寝ている始末。
 三遊亭金太役は三遊亭金時(おそらく本職の落語家)、ロケは新宿末広亭。
 なお聞いた話だと寄席の客は、リアルに割と厳しいらしい。
 出番を終え、食事の約束をする玲子と金太(玲子さんは多分、その気も無いのに誰にでも優しくて、主にモテない複数人から誤解されて いるタイプ)だが、突如、拉致される三遊亭金太。実は彼は、石丸化学という一流企業の一人息子であった。その母は、5年前に夫の死後、 一人で会社を切り盛りしてきた豪腕の持ち主。石丸家で犯人からの電話を待つソルブレインだが、一千万円の要求を受けた石丸母は、 「何か大きな事の出来る人間の声ではない」とざっくり電話を切ってしまう。
 果たして、根は善人らしい犯人達は、金太に家庭の事情を聞き、落語が下手だと言う金太に、いや面白かった、と励ます始末。一方、 自分の落語を誉められた金太も「誘拐してくださって、どうもありがとうございます」と、緊迫感はゼロ。結局犯人グループは気絶させた 金太を石丸家の近くに送り返し、金太は金太で、誘拐などされていない、と犯人をかばう。
 犯人の一人がわざとらしく悪役顔なのですが、首筋に一発で金太を見事に気絶させるので、実際に何か怪しげな組織に居たという 可能性も否定はできません(笑)
 翌日今度は、同じ犯人グループが、工場の爆破を予告。電話を受けた金太は「やめさせる」と飛び出していき、気絶する前にアジトの 窓から見えたガスタンクを探す。
 誘拐事件を追っていたソルブレインは、犯人グループが、熊谷金属の社長一家だと目星をつける。もともと石丸化学の下請けだったが 5年前の社長交代時に契約を切られた熊谷金属は積もりに積もった借金が一千万、その返済期日が迫って思いあまった末に今回の誘拐事件を 起こしたのであった。
 石丸家へ向かったソルブレインは、爆弾を仕掛けるという電話があった事を聞き、現場の工場へと向かう。道すがら、金太が大学を 辞めて落語家を志す事にした真の理由を母に聞かせる玲子。
 父の死後、会社を切り盛りする母親が夜中に一人で泣いているのを見た金太は、自分が笑われる事で皆の辛さを紛らわせる仕事をしたい、 と落語家を目指したのであった。
 苦労する母親の姿を見て辿り着いた結論が、大学やめて落語家になる、という選択肢は激しく オカシイ。
 いや、とっぽい天然、の金太のキャラクターとしては間違っていないのですが、見ている側としては、とてもおかしい(笑)
 熊谷一家のアジトにたどり着いた金太は「犯罪者になってほしくない」と一家を止めようとし、金太の言葉に社長も思い直すが、
 「実は……もう仕掛けちまったんだ、時限爆弾を」
 ただしそれは、「一番奥の倉庫にぼやがでる程度」というつつましい火薬の量だった……が、一番奥の倉庫は現在薬品倉庫となっていて、 ちょっとした火でも大爆発が起こってしまう。慌てて止めに行く一家+金太だが、その目前で爆弾は爆発。薬品に引火し、 豪快に吹き飛ぶ倉庫。正直、本当に「ぼや程度で済む火薬」量だったのか、けっこう怪しい。
 倒れる鉄骨の下敷きになった一家+金太は、駆けつけたソルブレインによって救出される。倉庫の外に引っ張られてきた一家を前に、 現場へやってきた本部長に頭を下げる石丸母。
 「お騒がせいたしました。古い倉庫の取り壊し作業も無事に終了いたしましたので、お引き取り下さい」
 そして彼女は、作業費用の名目で、熊谷金属に一千万円を払う事を約束する。
 誘拐事件と爆破事件、二つの事件を無かった事として呑み込もう、という彼女の態度を受け入れる本部長と、大樹達。
 ここで、松田がごねる、というのは実にいい。
 なあなあでただ大団円になるのではなく(石丸母は、長期的視野で一千万は回収すると思われますが)、別の価値観を挟んでおくと いうのが素晴らしい。またここで、ドーザーが「若旦那、ご隠居の言う通りですよ」と、落語に影響を受けた、という序盤のネタをオチに きかすのも秀逸。
 大樹の「これでいいんだ。事件の真相を暴くのが、我々の仕事ではない。人の命と、人の心を救う事。それが仕事なんだ」というのは、 強調しすぎてしつこくなった感はありますが。まあ、仕方ないかこれは。
 前作『ウインスペクター』の水準から最も期待していた扇澤脚本(逆にここで外されると辛い所だった)ですが、キャラクターも巧く 使っていて、面白かったです。特に玲子さんにスポットをあてつつ、うまくドーザーの個性を表現したのは良かった。次回予告が おかしげな時は……という伝統芸も炸裂(笑) 今作も、扇澤脚本には期待して良さそう。

→〔まとめ2へ続く〕

(2012年12月4日)
(2019年12月27日 改訂)
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