■『超人機メタルダー』感想総括&妄想余談■


“僕は、僕の夢を守り、この美しさと平和を未来へ繋ぐ”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『超人機メタルダー』感想の総括と余談、構成分析。

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☆総括☆
 色々面白い要素を盛り込んだ作品であった……という前置きの上で、作品としてまず大きな欠点を挙げるとすると、
 物語の軸となるミステリー部分が弱すぎた事
 になると思います。
 今作ではこれを、“ゴッドネロスの正体、ひいてはゴッドネロスと古賀博士の関係”に置いているのですが、正直、どうでも 良すぎました。
 「ゴッドネロスの表の顔は桐原剛造」は視聴者には最初から提示されている為に特にインパクトはなく(それを利用した影武者ネタは 面白かったのですが、物語的には使い切れず)、終盤に明かされる「ゴッドネロスの正体は村木國夫という、旧日本陸軍の少佐で古賀博士 の助手」という真相に至っては、だからどうしたというレベルで、いずれも、軸になって物語を引っ張るには弱すぎました。
 加えて特に良くないのが、そもそもそれがメタルダーにとってさして大きな問題には見えない事。
 例えばメタルダーが生みの親である古賀博士の仇としてゴッドネロスを追う為にその正体を探ろうとする、という動機付けが最初に 提示されていたならばまた違ったのですが、メタルダーは当初、古賀博士が生みの親という点も今ひとつ認識していないしネロス帝国に ついても理解していない、おまけに最後の最後まで古賀博士の仇という意識は無い。4話〜6話を通して、自分の出自と古賀親子について 知り、社会知識を得るとともにネロス帝国について認識するのですが、これは明らかに引っ張りすぎました。
 とどめに、ようやく主人公の行動目的が確立した次の回にした事が、サッカーのコーチ。
 続く8話では古賀博士の元助手に会いに行くのですが、せめてどうしてこのエピソードを逆にできなかったのか(^^; しかも結局、 劇中でこの元助手から情報を得たシーンが無かった為、全く何の意味もなかった、という事になってしまいました。
 メタルダーが必死にゴッドネロスの正体を追うもなかなか掴めない、ならまだしも、そういった展開・描写がほぼ皆無であった為に、 物語の軸と主人公の目的が非常に宙ぶらりんになってしまいました。
 結果的に初期、ふらふらしているメタルダーに、意味もなくネロス帝国がけしかけては自滅していく、という構図が続いてしまう事に。
 またこれには、そもそも「ゴッドネロスの正体を探る」というシチュエーションが、物語上で展開しようとするには地味かつ バリエーションを作りにくく、あまり真面目に調べると案外あっさり正体に近づかざるを得ない、という事情も影響したと思います。 つまり、メインストーリーを進めにくかった。そういう点でも、物語の軸にするには弱すぎました。
 そしてこれを軸にしてしまった為に、古賀博士とゴッドネロスの関係について一切不明のまま序盤の物語を進行させざるを得ず、 ゴッドネロスが何をそんなにメタルダーにこだわっているのかがあまりにも意味不明となり、非常に物語の掴みがわかりにくくなって しまいました。これがまた、主人公への感情移入を阻害する原因ともなり、連鎖的に悪影響を及ぼしたと思います。
 主人公が社会常識を得るとともに行動目的が定まり、トップガンダーの登場を経てネロス帝国サイドの個性化が進んだ6話以降は 落ち着いてくるのですが、この凝りすぎたとっかかりが正直失敗だったと思います。
 最終的に打ち切りの影響か、古賀博士と村木の関係も「一緒に超人機を開発していた」程度で流されるのですが、本来なら村木の博士 への嫉妬とか、超人機開発に関するあれやこれとか、もう少し踏み込んだ展開もあったのかもしれません。村木が古賀博士の技術の一部 を引き継いでいるとすると、メタルダーと戦闘ロボット軍団の関係も、また違った描き方が出来るわけですし。

 続けて、テーマ的に最大の迷走となったのが、自省回路によるメタルダーの博愛主義(ずっと「自制回路」と書いていましたが、 Wikipediaによると、どうやら「自省回路」らしい)。
 これはもう、中盤以降、やってしまったとしか言いようが無いのですが……(^^;
 路線変更の産物かと思われますが、結局、メタルダーの気まぐれレベルの存在になってしまいました。
 それでも、前半に生き延びさせたキャラクターを、路線変更後も物語に絡めて一定の始末をつけた点に関しては、評価したいですが。
 後半ざっくり殺られた連中は、可哀想すぎます(^^;
 これに合わせて、剣流星の人間的成長を描く部分がすっ飛ばされ気味だったのも、残念な所。
 流星の変化そのものは描かれていて、初期に比べて中盤以降はぐっと人間らしくなった流星が、八荒を振り切ってトップガンダーを 助けに行く所で一つのクライマックスを迎えるのですが(当初この回でトップガンダーが死ぬ予定だったらしいのもむべなるかな)、 途中のエピソードで波がありすぎて、段階を踏んでいる感じがなかったのが残念。物語の重要な要素でありますし、各脚本家がきちっと 連携を取って描いていってほしかった所です。まあ正直、80年代の東映TVシリーズでそれを求めるのは難しかっただろうなぁ、とは 思いますが。

 路線変更によって無効化されたものといえば、流星×舞の恋愛要素。どこまでやるつもりだったかはわかりませんが、OP、ED、 前半の物語を見るに、主要な要素として物語に絡める予定だったとは思うのですが……途中からは全く気配が無くなった上に、最終回で 「友情」にされてしまいました。
 あんなにバカップルだったのになぁ。
 その上で八荒がコメディ要素込みで舞に粉かけまくるので、バランスは悪い。
 恐らく八荒の初期の動機付けがそれしか無かったのと、脚本家がユーモア要素を入れる際に書きやすかったのかと思われますが、後半の 流星との友情が篤くなってからの八荒は割と好きなので、個人的にはもっと早々にその路線に持っていってほしかった所です。
 八荒といえば、Wikipediaを信じるならば、企画初期から登場予定のキャラクターだったとの事。もっとも立ち位置は違っており、 路線変更の影響を受けた事は間違いないようですが。
 こうして随所で路線変更の影響を感じる今作ですが、一方で変な話、明らかな路線変更や打ち切りがあった割には、ギリギリまとめた 作品、という評価はできると思います。
 同時期に東映YouTubeで配信されていた『大鉄人17』が顕著ですが、酷いものは、それまでの世界観が完全に破綻してしまうので。
 メタルダーが敵をざっくり殺るようになってしまった事は大問題ですが、そこに眼を瞑れば面白い回もあり、見応えを維持したという 点では、路線変更という大敵を前に健闘した作品、という言い方は出来るかな、と。
 中盤以降はなんだかんだで、配信で一番楽しみにしていたのは実は『メタルダー』。

 参加スタッフについては、高久脚本にしては破綻回が少なかったし、藤井邦夫を見直したシリーズ。
 両者とも、戦隊ではほぼ鉄板でがっかり脚本ですが、今シリーズでは光るものを見せてくれました。特に藤井邦夫は38話で 戦闘ロボットの哀しみを拾ってくれたのが良かったし、第28話「可愛い盗賊・きらめくダイヤに乙女の願いを!」は伊藤寿浩監督 の凝った演出もあり、異色作にして楽しい驚きの1本となりました。
 高久さんも、色々迷走したシリーズながら、メタルダーの戦う理由を22話で「僕も戦争が生んだ落とし子だからだ」と持ってきたのは、 感心しました。これをラストに繋げられたなら、なお良かったのですが。
 また、扇澤延男の脚本デビュー作品であるのも、忘れてはいけないところ。メタルダーが終始エネミー扱いの 第11話「勇者の追撃!天空にそそりたつ巨人!!」は、後の片鱗を感じさせる凄まじいデビュー作。もう一本の方はベタなネタをベタに 扱っていて、どうという事はありませんでしたが。

 好きなキャラは、クールギンとバルスキー、そして桐原会長(笑) 会長は格好良すぎましたが、出番が極端に制限されていたのは、 予定通りだったのかスケジュール的な問題だったのか。会長の出番がもっとあれば、ゴッドネロスの正体絡みのミステリーも、もっと 盛り上げる事が可能だったと思うのですが。割と東映絡みで無理に出て貰ったのだろうか、みたいな感じもあるしなぁ……。
 流星さんは特に嫌いというわけではないのですが、序盤のぽんこつぶりがどうにもイメージとして尾を引きます……。
 ああ後、ラプソディ、好き。ゲルドリングも、個性という点ではあり。クールギンなんかも話によって堂々としていたり策をこらしたり 微妙にぶれるのですが、軍団長の個性分けも若干、中途半端になってしまった感はある中、ゲルドリングの存在感は光っていたと思います。
 あと良かった探しとしては、特筆すべきはやはり、メタルダーのデザイン。
 キカイダーというモチーフはありますが、実に格好いい。
 実はキカイダーにときめいた事は無いのですが、メタルダーは凄く好き。また、アクションシーンも格好いい。本文で一度触れましたが、 肩アーマーが独立可動というのが、アクションシーンで割と効いています。後にがんがん再利用される事になるBGMも格好良く、戦闘 シーンの魅力は、作品の大きな魅力でした。
 主題歌はもう、言わずもがな。
 特撮史上に残る名曲でありましょう。
 総体の評価としてはなんか結局、感想本編で書いた、
 構成ガタガタだけど随所に光るものがある奇作
 という表現に落ち着くかなぁ(笑)
 個人的なニュアンスの問題ですが、怪作というより、奇作。
 00年代的な作品に通じるものの萌芽を多く感じさせながら、それらを全く生かし切れなかった作品という言い方も出来るかと思えますが、 そういう意味では、偉大なる踏み台であったのかも知れません。
 そして、もう少し〜〜なら、もう少し〜〜なら、という事を色々と考えて、妄想の中で完成度を上げたくなる作品。実際には 特撮TVシリーズで構成ががちっとはまるのは難しいのですが、背骨の通った構成が貫かれていたらなぁ、と夢想せずにはいられません。
 そういう点では、良くも悪くも、はまってしまった、と言う他無いのでしょう。
 メタルダーよ、永遠に!

☆妄想余談:はたしてメタルダー『マーズ』化構想はあったのか?☆
 最終回の視聴後に思いついた妄想です。

 『メタルダー』最終回、唐突に明かされる、メタルダーの動力である超重力エネルギーが制御不能になると地球が壊滅する規模の 爆発が起きる、という設定。
 あくまでこれは「爆弾」ではなく、「制御不能になると爆発する」というものですが、なんにせよ、“制御システムが損傷した状態で 動き続けると地球が壊滅する動力源”を軍事用ロボットに組み込んだ古賀博士は、まごうことなきキ○ガイと言える でしょう。
 何の伏線も無かった事も含め、如何にも最終回を盛り上げる為に勢いで盛り込んだ設定かと思われますが、敢えてここで考えてみたい。
 もしこれが、作品初期からあった設定だとしたら?
 古賀博士がある明確な意図を持って、メタルダーにそんな危険な動力源を積み込んでいたとしたら?
 ――さて、地球破壊爆弾といえば『マーズ』(横山光輝)です。
 誰が何と言おうと『マーズ』です(翻案であるアニメ作品『ゴッドマーズ』の方が有名かもしれない)。
 『マーズ』は1976〜77年に連載されていたマンガ作品。海底火山の噴火によって生まれた新島で発見された全裸の少年・マーズ。 言葉も話せず身元も不明な少年はしかし、瞬く間に言語や社会の知識を吸収していく。実は彼の正体は、遙かな昔に地球を訪れた異星人が、 将来、暴力性を科学文明として発達させた地球人が宇宙にとって危険な存在になった時に、地球を破壊する為に用意した存在であった。 だが火山活動の影響で予定より100年早く目覚めたマーズは、その使命を忘れていた。地球人が滅ぼさねばならないほど危険な存在とは 思えなかったマーズは、同様の使命を持って異星人に用意され、人類文明を監視していた6人の監視者とその操る六神体に対し、本来は 地球を滅ぼす為のロボットであるガイアーを操り、立ち向かう――。
 というのが、『マーズ』の骨子。
 主人公は地球人類を滅ぼす為に用意された人造人間であり、その操るロボットは、マーズの命令・マーズの死亡・自らの破壊・ 六神体全ての破壊のいずれかの条件により起爆する、地球破壊爆弾を内蔵。そんな地球人を滅ぼす為の存在が使命に逆らって地球人を守り、 そして――という物語。
 これを基に原作者の承認の下に大幅に改作された『六神合体ゴッドマーズ』では、元来地球攻略の尖兵として送り込まれた主人公タケル が死ぬと、主人公ロボの動力源である反陽子爆弾が起爆して地球が滅亡する仕様。
 そもそも『キカイダー』をモチーフにしている今作ですが、それを隠れ蓑にもう一つか二つ、過去の名作を取り込んでいたという 可能性もあったかもしれません。
 実はメタルダーは、古賀博士によって最初から意図的に造られた、地球破壊爆弾だったのだとしたら?
 仮にメタルダーが人間の良心に触れ、人を愛する事を学べれば、彼は自省回路を発達させていき、やがて人間とほぼ変わらずに生きて いく。
 だがメタルダーが人間の悪意のみに触れ、自省回路を発達させる機会の無いままにただの戦闘ロボットとしてしか生きていけない 世界ならば、いずれ超重力エネルギーは暴走し、地球は壊滅する。
 もしかすると、特攻で息子を失った古賀博士は、敗戦濃厚になってもなお自分の科学技術を戦争続行に利用とする国家、しいては人類に 絶望していたのかもしれません。
 そして彼は、軍の研究にかこつけて、地球の運命を決める力を持つ、一人の超人機を作り出す。
 天使の心と悪魔の力、自省回路と戦闘回路、人の感情と無敵の戦闘力を併せ持つ存在――メタルダー。
 メタルダーが人の心を得れば良し、だがメタルダーが起動後、一定期間を経ても自省回路が発達しないままならば、内蔵された時限回路 によって超重力エネルギーは暴走、世界は終末を迎える。
 だが戦争は超人機の投入前に終結し、古賀博士はメタルダーを封印、人類の時間に猶予を与える。
 しかし、自分の助手であった村木國夫の生存と世界の支配という野望を関知した古賀博士は、ネロス帝国の勢力拡大の背景に、己の 後継とでもいうべき科学技術が使われている事を知り、自分自身にさえ絶望する。……かくて戦後40年、メタルダーの封印を解いた 古賀博士は、己の罪の身勝手な精算として、何も語らずに玉砕。生のままのメタルダー/剣流星をこの世に誕生させ、一切の予断 の無い状態で、彼にこの世界を目にさせようとする。
 人類を許せるか許せないか?
 彼自身に、それを決めさせる為に。
 ・・・
 色々と謎の多い古賀博士
 メタルダーに組み込まれた自省回路と戦闘回路
 人間に造られてその命令に従うだけの戦闘ロボットの哀しみ
 後半に取り上げられた要素も含めて、諸々の事物をまとめると、こんな『メタルダー』も、もしかするとあったのかもしれない。 ……とまあ、思いつきからのこじつけですが、こう考えてくると、個人的に劇中で最も理解不能な人物である、古賀博士の行動の脈絡 について一定の説明がついてしまうのです(笑)
 メタルダーはそもそも、人類の命運を天秤に乗せたロボットであった――
 最終盤、スプリンガーによって(最終回を見る限り、スプリンガーは超重力エネルギーが制御不能になると地球が壊滅する事を 知っていた!)自分が人類の審判者として古賀博士に造られたという真実を知るメタルダー。友人達との楽しい思い出がある一方で、 虐待される動物達、破壊される自然、とどまらぬ人間の悪意……果たして人は、守るべき存在なのか? 一方、古賀の仕掛けた重力 エネルギーの真実に気付いたゴッドネロスは、(地球を守ろうと)メタルダー抹殺の為に全軍団を総動員する。激しい戦いの中で、 次々と命を落としていく仲間達。哀しみに暮れるメタルダー、自分はなぜこの世に生まれたのか、この力をどちらに使うべきなのか……
歴史をつなぐのか ピリオドうつのか
タイムリミット タイムリミット
タイムリミットは近い
 運命の時は迫る。
 あーそうか、劇中ではトップガンダーの最期の時に使っていましたが、本来は流星が「怒る!」によりメタルダーに瞬転後、負の感情が 頂点に達して更に「怒る!」と、それがキーとなって超重力エネルギーが暴走、地球が壊滅するのです多分。
 これなら舞さんもメタルダーの最後のストッパーとしてヒロインポジションで際立つし、こうなるとネロス帝国の側も一ひねり加えて、 クールギン辺りが影武者として偽りの人生を与えられてきた虚しさから破滅主義に走り、ゴッドネロスを裏切って帝国を掌握すると、 むしろメタルダーを暴走させて地球を壊滅させる為に非道な作戦を展開する……ぐらいまで有りかもしれない。
 とか妄想も広がります。
 ……まあ、最終回(近辺)に突然でっちあげた、というのが一番正解に近いとは思いますが(笑)
 2%ぐらいは、あったかもしれない。

★構成分析★
話数サブタイトル監督脚本備考
「急げ!百鬼魔界へ」小笠原猛高久進 〔剣流星、覚醒〕
「余は神・ネロスなり」小笠原猛高久進 〔流星、仰木舞と出会う〕
「野兎への愛に
ハンマー男ベンKが涙する」
冨田義治 高久進
「魚雷アグミス対
海軍少尉メタルダー」
冨田義治 高久進
「耐える!
百発百中のガンプレイ」
折田至
小笠原猛
高久進
「怒る!ヘビー級王者
ガルドスをKOせよ」
折田至
小笠原猛
高久進〔トップガンダー、離反〕
「ゴールを決めろ!
タグ兄弟との炎の決闘」
冨田義治 山崎晴哉
「さらばバーロック!
鉄仮面の秘密」
冨田義治 掛札昌裕
「夢みるモンスター!
十字砲火の恋人たち」
伊藤寿浩 藤井邦夫〔ヘドグロス編1〕
10「超絶技!名曲ロボットの
バイオリン攻撃」
伊藤寿浩 上原正三
11「勇者の追撃!
天空にそそりたつ巨人!!」
小西通雄 扇澤延男
12「愛しのモンスター
包囲する忍者たち!」
小西通雄 藤井邦夫〔ヘドグロス編2〕
13「危機一髪!
親と子が愛をもどす海猫の村」
冨田義治 高久進
14「妹よ生きて!
哀しみの女戦士マドンナ」
冨田義治 中原朗
15「翔くモンスター
息子よ、母の願いを!」
三ツ村鐵治 藤井邦夫〔ヘドグロス編3〕
16「恋のライバルは
バリバリ爆走族」
三ツ村鐵治 高久進〔北八荒、登場〕
17「危うし舞!
走る独眼竜トップガンダー」
伊藤寿浩 高久進〔トップガンダー、再登場〕
18「舞の秘密情報
プールサイドの罠」
伊藤寿浩 高久進
19「夏休みは
ゴーストバンクへ冒険ツアー」
小笠原猛 高久進〔メタルダー、ゴッドネロスと遭遇〕
20「ターゲットは仔犬?
火をふく機甲軍団」
三ツ村鐵治 高久進
21「大都会ミステリー
ホタルを呼ぶ美少女」
三ツ村鐵治 高久進
22「空飛ぶローラー!
赤いイルカの襲撃」
伊藤寿浩 高久進
23「トップは誰だ?!
ピンからキリの大運動会」
伊藤寿浩 中原朗
24「プリンセス天巧VS
ガラドーの魔術合戦」
小笠原猛 高久進
25「とびだせ!
ジャック電撃応援団」
三ツ村鐵治 高久進〔※番組放映枠移動〕
26「ぶっちぎり!
炎のジャック野郎」
三ツ村鐵治 高久進
27「助けて!
愛しのゴリちゃん逃亡日記」
小笠原猛 扇澤延男
28「可愛い盗賊
きらめくダイヤに
乙女の願いを!」
伊藤寿浩 藤井邦夫
29「ある哀しいのら犬の物語」伊藤寿浩 中原朗
30「守れ!秘密基地」小笠原猛 高久進
31「瞬転を狙え!
愛を夢みる少女」
小笠原猛 藤井邦夫
32「百年美人伝説」三ツ村鐵治 柳川茂
33「大包囲網
熱き友情の脱出」
三ツ村鐵治 高久進
34「千の顔を持つ帝王・ネロス」伊藤寿浩 高久進〔仰木信吾、アメリカから帰国〕
35「帝王・ネロスの正体は?」伊藤寿浩 高久進〔ゲルドリング、死亡〕
36「大反撃!戦闘ロボット軍団」小笠原猛 高久進〔シルバーカークス崩壊〕
37「大崩壊!ネロス帝国」小笠原猛 高久進〔ゴーストバンク崩壊
美人秘書ズ、クールギン、ドランガー、トップガンダー、死亡〕
38「大逆襲!
愛と憎しみの荒野」
三ツ村鐵治 藤井邦夫〔バルスキー、死亡〕
39「大決戦!
メタルダーよ永遠に」
三ツ村鐵治 藤井邦夫〔メタルダー、スプリンガー、ゴッドネロス、死亡〕


 サブタイトルが長い!

 各担当回数は、
 (演出/小笠原猛:11本(※折田至との連名2本) 三ツ村鐵治:10本 伊藤寿浩:10本 冨田義治:6本 小西通雄:2本)
 (脚本/高久進:23本 藤井邦夫:7本 中原朗:3本 扇澤延男:2本 柳川茂:1本 上原正三:1本 山崎春哉:1本  掛札昌裕:1本)

 脚本では、高久進が全体の約3分の2を担当。高久進が芯になって、単発エピソードを数人の脚本家に色々やらせてみようという構想 だったのか、7〜11話までを、それぞれ別の脚本家が書く、という構成になっています。ただシステム的にうまくいかなかったのか、 視聴率などの不振でそれどころでなくなったのか、ここで書いた5人中の3人は、その1本のみ。最終的には既に前年の『フラッシュマン』 にも参加していた藤井邦夫がサブライターという形となり、後番組の影響もあって最終2話も担当する事となりました。結果的には、 高久−藤井ラインで作品の色彩がある程度落ち着いたのは、中盤の混乱を拡大しなかったという点で良かったと思います。
 2クール目の終わりから3クール目にかけては意欲的な単発エピソードも登場しており、総じて、色々あったけど野心的な試みも結構 頑張った、と言えるとは思います。
 演出は比較的均等ですが、中盤にローテが乱れているのは、(Wikipedia情報ですが)パイロット版の演出にプロデューサーが不満で 小笠原猛が一時期ローテを外されたり、冨田義治が家庭の事情で降板したり、などが理由との事。全体としてはこれという事はないですが、 伊藤寿浩が色々と趣向を凝らした異色の28話は非常に演出が面白かったです。もう少し、こういう個性と遊びは欲しかった。

 構成としては脚本も連続で書かかれていますが、6話までが序であり、メタルダー側とネロス帝国側の基本的な立ち位置が決まる部分。 たびたび書いていますが、やはりここが、長すぎたと思います。その後しばらく単発エピソードで話を転がし、16話で新キャラ登場、 17話でトップガンダーが復活。
 徐々にコメディ部分を増やしつつ、殺意の波動に目覚めていくメタルダー。
 実際には9話のヘドグロスを皮切りに13話ぐらいからは一切の躊躇なく敵をずんばらりんしてはいるのですが、構造的には15話 までが前期メタルダー、16話以降が後期メタルダー、といった所でしょうか。
 その後しばらくは、油断していたら夏休みなのにメタルダーとゴッドネロスが出会ってしまう、とかあったものの、基本的には単発 エピソードで、ネロス帝国の運動会や、プリンセス天巧降臨など、遊び心のあるエピソードが散見され、路線変更による試行錯誤は 窺えつつも、世界観を壊しすぎない範囲でバラエティを出す、という点では検討していると思えます。
 25話から放映枠が朝に移動し、JAC祭前後編など挟みつつ、31話では軍団長が最前線で作戦指揮を執り、32話のゲルドリング 死亡?!と徐々に緊張感を高めて、34話の仰木新吾の帰国からクライマックス展開へ。37話の戦死者リストが凄い(笑)
 上記総括でも書きましたが、物語の軸となるミステリー要素が弱いので、途中途中で山場を作れない、というのが難しい所だったと 思われます。「実はネロスは○○だった!」的なものが物語に影響を与えるのは本当に最後の最後ですし、小出しにして使えるネタも ありませんでした。
 うまく敵軍団の内部抗争やメンバー入れ替えをメタルダーと絡めて展開できれば、また違う形で盛り上げ所を作れたかもしれませんが、 まあ、そういう事を言い出すとキリがないのが、『メタルダー』(^^;

 面白いとか面白くないというより、特に印象深いエピソードは、
「夢みるモンスター!十字砲火の恋人たち」、「勇者の追撃!天空にそそりたつ巨人!!」、「夏休みはゴーストバンクへ冒険ツアー」、 「トップは誰だ?!ピンからキリの大運動会」、「可愛い盗賊きらめくダイヤに乙女の願いを!」、「大逆襲!愛と憎しみの荒野」
 といったところ。
 色々と迷走した本作ですが、38話でぎりぎり『メタルダー』的なるものについて一定の決着を描けたのは実に良かったと思います。 最終話がそれを踏まえきれずにお茶を濁す形になってしまったのが、残念でしたが。

 ……なんかまた色々と、構成について悶々としてきそうなので、この辺りで総括と分析を終了したいと思います。
 それでは皆様ご一緒に、

 「私を夜の闇に包め」


(2013年1月7日)
(2017年6月9日 改訂)
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