■『特捜ロボ ジャンパーソン』構成分析■


“ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!”

 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた 『特捜ロボ ジャンパーソン』感想に基づいた構成分析。ジャンパーソンの変遷を軸に、 全体を大まかに区分けしての物語の流れを見てみました。+放映リストより。

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◆第1章 謎のジャスティスモンスター現る (1〜14話)
├1−7:前期
└8−14:後期
 ジャンパーソンが問答無用で悪をパニッシュして回る最初期。
 最低限の口数でジャスティスの限りを尽くしていく7話までと、徐々に口数が増え、 真っ当なヒーローらしい言動が増えていく8話以降に更に分かれます。
 大きな違いは、それまで主題歌の歌詞通りに、教えてくれ君は誰だどこから来てそしてどこへ を文字通りに体現し(すぎ)ていたジャンパーソンが、ゲストキャラとコミュニケーションを取るようになり、 優しい言葉をかける機能が付くようになった事。
  • 「君が信じてるジョーは俺じゃない。この人だ。本当に悪い人なんて居ないんだ」(第8話)
  • 「英夫くん、お父さんはここにいる。いつまでも、君の胸に」(第9話)
  • 「君に一言云っておく。死んだものは帰らないんだ」/「よく見るんだ、これが君の兄なら、真っ赤な血が流れる筈だ」(第11話)
  • 「君を必要とする人間が居る限り、君はこの世に存在しなければならないんだ」(第12話)
  • 「正彦くん。このエンブレムの中に、U2の思い出が生きている。正彦くん、辛いだろうが勇気を持って、悲しみを乗り越えるんだ。 U2もきっと、それを望んでいるよ」(第14話)
 作品としては、レギュラーだと思われた人物が次々と消えていったり、コンセプトが定まりきってない雰囲気の強い初動の混乱期なのですが、 圧倒的な力による蹂躙と、人の自立を促す、という基本のスタンスはこの時期に確立していると言えます。ただこの時点では前期とのギャップが強く、 ジャンパーソンの背景が全く不明という事もあり、急に綺麗事を言うようになった感じが強かったですが(^^;
 ジャンパーソンの内面についてジャンパーソン自身が口にしているのは、ジャンパーソンが夢を見る第10話、 新展開の前に勿体ないから初期設定を用いて1話でっちあげたのでないか疑惑の募る第13話ぐらい。
  • 「夢だ……これは夢だ。戦いは終わってない。まだ本当の平和では。俺は、俺は行かなくては。走れ、夢に留まるな!」(第10話)
  • 「私は、正義の為だけに戦う!」/「私は戦い続ける。全ての悪を倒し、私のような戦士が、必要なくなるその日まで」(第13話)
 この、「正義を遂行し終える日まで戦い続ける」という如何にも正義に燃えるヒーローらしい志が、 後に表裏一体を成す「人間に愛されて死ぬのがロボットの本望」というジャンパーソン理想の死に様として展開するのが、 今作の恐ろしい所。
◆第2章 悪を倒せ (14〜18話)
├14:
├15:ターニングポイント・《内なる正義の声》の登場
└16−18:精神不安定期
 └17−18:誕生編・三枝かおる登場
 第14話が二重にカウントされているのは間違いではなく、話の構造的には第1章なのですが、「何の為に生まれ、どう生きていくのか」 というテーマが15話以降の前振りになっており、第1章と第2章を繋ぐエピソードの為です。

「おまえは正義に生きる事を望まれて生まれてきた。俺は、破壊する事だけを望まれて生まれた」
「裏切ればいい」
「おまえは自分を裏切れるか? 正義を捨てられるか? 誰も背負って生まれた運命には、逆らえないんだ」
「どう生きるかを決めるのは、自分自身だ!」
「運命が全てだ!」
(第15話「翼をすてた天使」)

 今作の方向性を決定づけたのが、ジャンパーソンの中に眠っていた《内なる正義の声》が目を覚まし、 “正義のロボットに生まれた”というのは本当に善なのか?と、今作これまでの価値観を揺るがす大きなターニングポイントとなった、 第15話。
  • (完全破壊しろ。部品一個この世に存在させるな。 その為に俺は生まれたんだろ)
  • 「エンジェル。私も決して、祝福されて生まれてきたわけではなかった。おまえと同様、忌まわしい生い立ちを持つ。 しかしそれを自らの意志で断ち切った。どう生まれたかが問題ではない。どう生きていくかが重要なんだ」
 前身であるMXーA1の残滓、邪悪な犯罪者の完全抹殺を命じる《内なる正義の声》の目覚めにより、 ジャンパーソンが精神的に不安定になり、そこから改めて立ち上がるまでが、誕生編を含めた16−18話。第16話では、 自分の境遇を重ね合わせる事で敵対するロボットに同情を寄せ、ジャンパーソンが初めて感情を込めて叫ぶという、非常に珍しい展開。 ……ロボットに精神注入棒でネオギルド精神を叩き込むというプロットも非常に珍しいですが。
 「叩き込め、ネオギルド精神!」
  • 「それが仲間に対する言葉かぁ!」(第16話)
  • (なぜ揺れる……どうして躊躇する! おまえは、悪を倒す、 ただそれだけの為に生まれてきたのではなかったのか! 悪を倒せ、悪を倒せ……)
    「違う、違う、今の俺は、もう、違うんだ……!」(第17話)
  • 「俺は怖い。自分自身が怖いんだ、かおる」(〃)
  • 「精神的外傷……トラウマという事か」(〃)
  • 「俺は勝つ! 俺自身に、必ず、必ず勝つ、勝ってみせる」(〃)
  • 「俺は、俺はもうあの時の俺には戻らない、二度と。俺は、俺を超える。乗り越えてみせる!」(第18話)
 というわけで表向き、呪われた生い立ちを乗り越え、生まれ変わった正義の心、ジャンパーソンがやらねば誰がやる!  とジャンパーソンの背景がハッキリしますが、その結果わかった事は、
 公的な正義の執行者として失格の烙印を押されたけど、修復されて新しい命をつかみ取ったから、私的に正義の味方をやるよ!  だって大切なのはどう生きていくかだからフォージャスティス! と闇の正義執行人として再生した、 ジャンパーソンの狂気。
 そして、そんなジャンパーソンを独自の信念で生み出し、そそのかし、自分で辿り着いた意志と新しい命だからOK☆と全肯定し、 あまつさえ武装強化した上で、法律とかどうでもいいけど愛と命と正義を心から信じている 信念系マッドサイエンティストの上に狂信的テロリストの素養を持ち合わせた完全なキチガイ・三枝かおる が背後に居たという驚愕の展開。
 18話にしてようやく視聴者寄りのメインキャラが増員したかと思わせて、 むしろジャンパーソンよりもっとヤバい人(いっけん良識人)、 というのはまさしく今作の真骨頂と言う他ありません。
◆第3章 再起動そしてガンギブソン (19〜28話)
├19−20:
├21−23:ガンギブソン(刑務所)編
└24−28:
  • 「私は彼を救いたい。同じ正義を守る者として、彼を立ち直らせてあげたいのだ」/ 「関町さん、貴方はこの里美さんの思いがわからないのか。戦うんだ! この子の気持ちを踏みにじってはいけない」(第19話)
  • 「しっかりするんだ。ユウくん達を守れるのは、あなたしかいない」/ 「ユウくん、君のパパは、世界一のパパだ!」(第20話)
 誕生編を経て、更なるレギュラー増員の前に、スタンダードなエピソード2話。人間の“心の強さ”を物凄く美化して捉えている節があり、 人間愛を狂信するが故に、凶悪なスパルタで人の自立を促すという、ジャンパーソンの「俺に、人間の愛の力というものを見せてみろ」路線がより明確に。
 その後は一山越えての中盤戦という事で、ライバルから仲間へと転向するガンギブソンの合流他、キャラクターと世界観の積み上げ中心。
◆第4章 ジーザス・エンド (29〜30話)
└29−30:<ジーザス・エンド>編
「ジャンパーソン、死んでもかまわんというのか!」
「その通りだ。 私は信じる。私たちが居なくなったら、人間はきっと立ち上がるだろう。そして、ネオギルドだけじゃない。 他の悪の組織も倒し、間違った科学を、正しい方向へただすにちがいない!」
(第30話「爆裂!!最期の魂」)

 ヒーロー不要論を突き付けられたヒーローが「その通り! 私が居なくなったらきっと人間は立ち上がる筈だ!」 とそれを受け入れて前向きに破滅しようとし、その為なら日本中のありとあらゆるロボットを一切の区別なく殺戮する対ロボット最終兵器 <ジーザス・エンド>が発動しても構わない、と告げる第二のターニングポイント。
 最大の問題は、これがヒーローが正義に殉ずる個人単位の自己犠牲ではなく、ロボットが人間と共存し、 人権に近い物を有している世界におけるジェノサイドである事。
 これまで繰り返されてきた、「ロボットは生きている」けれど「ロボットは殺っていい」というJP理論の根底にあるのは、 行き過ぎた人間愛信仰と対を成す徹底的なロボット差別主義であり、誰よりもジャンパーソンが自らの出自を呪い、 ロボットという存在を憎んでいるのではないかという、ジャンパーソンの抱える破滅願望が浮き彫りに。
  • 「浩司くん、君たち、人間の力で、もう一度、もう一度、正しい世の中に、私たちロボットを生み直してくれ!」
  • 「浩司くん、君たち人間の力で、正しい世の中を作ってくれ。私も頑張る。そしていつか、 人間とロボットが共存できる日が来ることを、信じている。きっとな」
 ジャンパーソンの根底には、「今の世界」「今のロボットの存在」は“間違っている”という認識があり、 それがリセットされるなら多少のジェノサイドは可である、という思考は、個人の体験を元にした実に身勝手なものといえ、 一応正義のヒーローが、破滅主義に裏打ちされた世直しテロリズムを執行していた、というのが改めて強調されてしまい、 これにより今作は更なる狂気の淵へ邁進する事に。
 「正義とは何か」を追求してきた今作は、ここに至ってヒーローの持っていた「正義の背景に存在した破滅願望」を浮き彫りにする事で、 ヒーロー物として一つ別のフェイズへ移行してしまったといえます。
 なおこの思想は少し方向性を変えると「腐った人間共を滅ぼして新しい世界を作るのだ」というよくあるラスボス思想になるのですが、 その「新たな世界の神になる」のを他人(狂信する人間愛)に任せようとするのが、実にジャンパーソンの狂った所です。
◆第5章 俺達が守るべきは何なのか (31〜42話)
├31−32:ビルゴルディ編
├33:
├34:ビルゴルディ編2
├35−38:ガンギブソン編2
└39−42:
 敵組織のテコ入れで、魔王ビルゴルディが誕生。普通に作れば、強敵登場→新兵器で撃破、となりそうなのですが、 ビルゴルディ誕生(第31話)・普通に撃破(第32話)・vs勇者ほらだ(第33話)・改めて新兵器でビルゴルディを撃破(第34話)、 と少し不思議な構成になっているのは、何かトラブルがあったのではないか、と穿ってしまう所です(^^;
 半端に間に挟まった第33話が、頭おかしい傑作回なのですが(笑) 麗子様役の高畑淳子さんの出産があり、 撮影スケジュールの問題が何かしらあったのかもしれません。
  • 「遊びは終わりだジャンパーソン、あのネオギルドが造り出すロボットを超え、 あのスーパーサイエンスネットワークが造り出すバイオモンスターを超え、そして……貴様を超える最強の存在に生まれ変わるために、 俺は俺自身を改造する。――究極の悪。絶対の悪。魔王の誕生だ」(第31話)
 帯刀が自らの人間性を放棄して生まれ変わったビルゴルディの登場は勿論重要なのですが、 もう一つの大きなポイントは、より深刻な狂気のフェイズへ移行したジャンパーソンの「正義」から独立して、 暗殺ロボットではない己の立ち位置を掴み始めるガンギブソン。
  • 「ただのイメージよ! 分かっていてもあの娘には耐えられなかったんだ! それだけおまえを大切にしていたってこったろうが!  父親なんだからよ……!」(第35話)
  • 「許せねえ、許せねえ! ロボットをなんだと思っていやがる!」(第36話)
  • 「俺にはわかるぜ、ヤツの気持ちが。サイレントにとってのジェルソミーナは、俺にとっての、キャロルさ。 ……正体がわかってみりゃ、奴はもう一人の俺だったわけよ」/「ビルゴルディ! 許せねえ! よくもサイレントの心を、 愛する者を失った心を弄んでくれたな!」(第37話)
 人間とロボットの絆、ロボット同志の愛情、を描いたエピソード群の中で、「人間の都合でロボットの自由と尊厳が踏みにじられて良いのか」 と“ロボットの為に怒るもの”として、ガンギブソンがジャンパーソンの正義から自立のきざしを見せる一方、ジャンパーソンは、 「人間に愛されていた事がわかったなら、役割を全うしたロボットは満足して黙って死ね」という自分の理想の死に様を少年ロボットに押しつけ、 両者の立ち位置の微妙な違いが描写。
 この両者の正義のズレ(人間愛信仰/ロボットの為の怒り)は膨らませればかなり面白くなる要素だと思ったのですが、 ガンギブソンの持つテーマが集約される筈だったネオギルド最終決戦が残念エピソードだった為に着陸失敗。非常に勿体なかった部分です。
 <ジーザス・エンド>編で表向き「人間とロボットが共存できる世界にしたい!」とまとめたのだから、 ジャンパーソンが人間とロボットの絆に寄り添う展開になるのかと思いきや、むしろ逆方向に飛んでいくのが、今作らしい所。
  • 「俺も生まれ変わったからだ。生まれ変わって、第二の人生を歩んでいるからだ」(第39話)
  • 「しかしおまえは生まれ変わったんだ。今のおまえは、俺たちとともに戦う正義の戦士なんだ」(第42話)
 各組織との最終決戦を前に、死を体験して俗世から一度切り離される(三枝かおるも、戸籍上は死亡している)事で 「真の正義の執行者」として転生できる、という『ジャンパーソン』世界の根本原理が明かされ、 やや強引な展開だった第38話「GG荒野に散る」は、ガンギブソンがジャンパーソン(MX−A1)と同じ臨死体験を経る事で 「正義の戦士」 としてのイニシエーションを終える為にどうしても必要だった事が判明。
 そして、正義の執行者は高らかに宣言する。
 「俺たちが守るべきは法律じゃない。命と愛だ!」
 この「愛」というのは、今作の中心的テーマであると同時に、その用い方が今作の大きな特性の一つなのですが、 その辺りはいずれ総括で書きたい予定。
 なお「法律」は第1話からずっと意識的にぶっちぎりっぱなしなので、そもそも最初から天秤の上に乗せた事が無い、 というのがこの台詞のポイントです。
◆第6章 ジャンパーソン・フォー・ジャスティス (43〜50話)
├43−44:SSN最終決戦編
├45−46:ネオギルド最終決戦編
└47−50:帯刀組最終決戦編
 三大組織との最終決戦編。
  • 「泣いている……地球が……。あたしの地球が泣いている。もう泣かせはしない。今こそこの手で、 奴等からおまえを救い出してみせる」(第43話)
  • 「私は緑の地球を甦らせる……地球を人間から奪い返す! 今の私は地球の守護神、その名は……ちょーーーじゅーーーしぃん!」(〃)
  • 「俺はあいつを……綾小路麗子を知りすぎてしまった。綾小路麗子は守ろうとしているんだ。緑の地球、地球の命を。 自分の体を怪物にしてまで。その悲壮なまでの決意が、一瞬俺に引き金を引くのを躊躇わせた」(第44話)
  • 「いいかジャンパーソン、やつは化けもんだ。片っ端から人間を溶かしまくる、化けもんだ! それ以外の何者でもねぇ。 何が……何が地球の守護神だ!」(〃)
  • 「……――眠れ、超獣神! ジックキャノン!!」(〃)
  • 「綾小路麗子……俺はおまえに誓う! この地球を必ず、必ずこの花が根付けるような星にしてみせると!」(〃)
 非常に出来の良かったSSN最終決戦編では、生まれに歪められたイノセントな狂気を持つ者として綾小路麗子がジャンパーソンの対比に置かれ、 ガンギブソンが化け物と断じる超獣神を、(恐らく)人間としてジャンパーソンが撃破。麗子に純粋な人間愛の一つの形を見たジャンパーソンが、 麗子の意思を継ぐという形で、ジャンパーソンの抱える「正義」と「人間愛への狂信」が揺らされつつ、その上で一歩前に進む、 という決着を見ます。
 殺人というタブーを含め、ある種、ジャンパーソンの“敗北”が描かれているのが大きなポイント。
 続けてのネオギルド最終決戦編では“ロボットと人間の関係”に関する決着が描かれる事が期待されたのですが、色々あって、 大惨事に。特にジャンパーソンとガンギブソンの微妙な立ち位置の違いは広げて欲しかったのですが、非常に残念でした。
  • 「何が力だ! 結局おまえは、この街から離れる事の出来ない、ただの甘えた子供に過ぎなかったんだよ!」(第46話)
  • 「もう戦いは終わった。ネオギルドは壊滅したんだ。今更……今更この男を倒す意味は無い!」(〃)
 もはやジャンパーソンにとっても、ガンギブソンの復讐を止める事の方が優先されており、 完全に相手にされていないジョージの姿に涙も流れません。
 ロボットと人間が共存する今作の社会背景をベースに、 ジョージ真壁のロボットへの視点・ガンギブソンのロボットへの視点・ジャンパーソンのロボットへの視点、がぶつかり合い、 ジャンパーソンに影響を与えてこその<ネオ・ギルド>編だと思われたのですが、残念な着地に終わりました。
 帯刀編も入りはドタバタしたのですが、最終話で何とかリカバリー。
  • 「人間にも、様々な人間がいる。生まれも育ちも、性格もみんな違う! ロボットもそうだ! だからこそ、互いを認め合い、 尊重しあう。合体しなくても、手を繋ぎ合えるんだ、共存できるんだ! それこそが俺の理想だ。実現できるなら……実現できるなら、 俺は死んでも構わん」(第50話)
 自らの人間性を放棄して悪の本能のみに生きる事を選んだ帯刀/ビルゴルディの掲げる理想社会に対し、 無思考の絶対正義を離れて自らの「正義」を探し求めたジャンパーソンが、ロボットを含めた個の尊重を理想と掲げる事で今作のテーマが集約され、 愛と狂気の物語は一つの着地を見ます。
 最終回でとにかく凄いのは、なんと言っても三枝かおるなのですが、いずれ別項で取り上げたい予定。……そんなことばかり言っていて、 にっちもさっちも進んでいないのですが(^^;

 ひとまずジャンパーソンの変遷を軸に今作の流れをまとめましたが、 盛り込まれた幾つものテーマがアクロバットなキャッチボールで繋がっていって化学反応を起こし、 ジャンパーソンの思想性一つ取ってもかなり多様な解釈を可能とするのが、今作の面白い所だと思います。
 その上で、問題作として終わる要素を幾つか孕んでいたと思うのですが、視聴者に対して誠実に完結させた点を、個人的には凄く評価。
 今作の持っている個々のテーマ性に関しては、ブログで少しずつ紐解いているので、順次まとめていく予定です。

★放映リスト★
 〔評〕は、大雑把な各エピソードの評価。◎……名作、○……それなりに面白かった、−……普通、×……駄目回。
 ただし、どこに基準を置くか、を考えるとややこしくなるので、相対的というよりは印象評価だと思ってください。 記憶と感想を読み返してのものなので、微妙にリアルタイムで見た時と、違っている所もあるかもしれません。

話数監督脚本敵対組織備考
小西通雄宮下隼一ギルド
小西通雄宮下隼一ギルド 〔<ギルド>壊滅〕
簑輪雅夫宮下隼一帯刀 〔帯刀龍三郎登場〕
簑輪雅夫宮下隼一帯刀 〔<ネオ・ギルド>、SSN登場〕
三ツ村鐵治宮下隼一ネオ・ギルド
三ツ村鐵治扇澤延男SSN
石田秀範鷺山京子帯刀
石田秀範曽田博久SSN
簑輪雅夫宮下隼一ネオ・ギルド
10簑輪雅夫扇澤延男SSN ×
11三ツ村鐵治増田貴彦帯刀
12三ツ村鐵治酒井直行ネオ・ギルド
13小西通雄浅香晶SSN ×
14小西通雄中野睦ネオ・ギルド
15簑輪雅夫扇澤延男帯刀
16簑輪雅夫曽田博久ネオ・ギルド
17三ツ村鐵治宮下隼一帯刀 〔三枝かおる、三枝周平登場〕
18三ツ村鐵治宮下隼一帯刀
19小西通雄増田貴彦SSN
20小西通雄鷺山京子SSN
21簑輪雅夫宮下隼一ネオ・ギルド 〔ガンギブソン、キャロル登場〕
22簑輪雅夫宮下隼一ネオ・ギルド 〔キャロル死亡〕
23三ツ村鐵治宮下隼一SSN 〔ガンギブソン仲間に〕
24三ツ村鐵治扇澤延男SSN
25小西通雄浅香晶帯刀 〔セーラ死亡〕
26小西通雄酒井直行帯刀 〔ジェイガリバー登場〕
27簑輪雅夫浅香晶ネオ・ギルド
28蓑輪雅夫曽田博久SSN
29三ツ村鐵治中野睦ネオ・ギルド 〔ジーザス・エンド編〕
30三ツ村鐵治中野睦ネオ・ギルド 〔〃〕
31小西通雄宮下隼一帯刀 〔ビルゴルディ登場、アールジーコ登場〕
32小西通雄宮下隼一帯刀 ×
33簑輪雅夫曽田博久SSN
34簑輪雅夫宮下隼一/井上一弘帯刀 〔ジックキャノン登場〕
35三ツ村鐵治扇澤延男ネオ・ギルド
36三ツ村鐵治鷺山京子ネオ・ギルド
37小西通雄酒井直行/扇澤延男帯刀 〔スピンドルキャノン登場〕
38小西通雄扇澤延男ネオ・ギルド 〔ガンギブソン死亡そして復活〕
39簑輪雅夫曽田博久帯刀
40簑輪雅夫小林靖子ネオ・ギルド 〔※小林靖子脚本デビュー作〕
41三ツ村鐵治鷺山京子帯刀 ×
42三ツ村鐵治扇澤延男ネオ・ギルド
43小西通雄増田貴彦/扇澤延男SSN 〔超獣神登場〕
44小西通雄扇澤延男/増田貴彦SSN 〔SSN壊滅〕
45金田治宮下隼一/鈴木康之ネオ・ギルド ×
46金田治宮下隼一/鈴木康之ネオ・ギルド 〔ネオ・ギルド壊滅〕×
47簑輪雅夫宮下隼一/鈴木康之帯刀 ×
48簑輪雅夫宮下隼一/鈴木康之帯刀 〔JP基地壊滅〕
49三ツ村鐵治宮下隼一帯刀
50三ツ村鐵治宮下隼一帯刀 〔帯刀組壊滅〕

(演出担当/簑輪雅夫:16本 三ツ村鐵治:16本 小西通雄:14本 金田治:2本 石田秀範:2本)
(脚本担当/宮下隼一:20本(※うち連名5本) 扇澤延男:10本(※うち連名3本) 曽田博久:5本  鷺山京子:4本 浅香晶:3本 中野睦:3本 増田貴彦:4本(※うち連名2本) 酒井直行:3本(※うち連名1本)  小林靖子:1本  〔鈴木康之:4本 井上一弘:1本〕※ともに宮下隼一との連名)


 演出陣は前年の『特捜エクシードラフト』からスライドする形で、一年を通してローテ監督メイン3人はそのまま。前年に続き、 若手から石田秀範が2本を演出。そしてJAC草創期のメンバーでありスーツアクターを経てアクション監督をしてきた金田治が、 本編監督として終盤の2本を担当。
 三ツ村監督を筆頭に、この時期の安定したメンバー構成。
 脚本も前年に続いて宮下隼一がメインに入り、扇澤延男がサブ、多数の脚本が年間通して参加する、といった形。 特筆すべきは80年代戦隊を支えてきた曽田博久の、『地球戦隊ファイブマン』以来3年ぶりの東映特撮参加(翌年、 『忍者戦隊カクレンジャー』で戦隊復帰)。そして、90年代半ば以降にに主力の一角を担う事になる小林靖子の脚本デビュー。
 《レスキューシリーズ》の流れを受けつつ、くしくも東映ヒーローの過去と未来が交錯しているという、 非常に面白い顔ぶれになっています。

 各組織の作戦主導回数は、
 〔帯刀:19回 ネオ・ギルド:17回 SSN:12回 ギルド:2回〕
 概ね順当に、劇中における組織の重要度順。途中、麗子様の産休がなければ、ネオ・ギルドの作戦が一つか二つ、 SSNに流れた可能性はあるかもしれません。
 2−2−4話使っての最終決戦編など、かなり綺麗に収まったと思います。

 基本的に最初から最後までラスボスだったジャンパーソンは、転機となるような敗北とパワーアップは無い代わりに、 全体としてこまめに武装が強化されていくのが特徴。特に1クール目の怒濤の新武装ラッシュは、 00年代戦隊や10年代の仮面ライダーのひな形といったら誰か騙せそうなレベルで、各武装の初出話数は以下。
 1話:ジャンデジック
 4話:ワイヤーパンチ
 5話:アークファイヤー、ジャンブレーダー
 7話:ジャスティック、ニーキックミサイル
 9話:ジャンバルカン
 12話:デュアルレーザー
 16話:JPフルバースト(全武装解放) ※未遂
 22話:ブレイクナックル
 26話:ジェイガリバー(サポートメカ)
 31話:アールジーコ(サポートメカ)
 34話:ジックキャノン
 37話:スピンドルキャノン(ガンギブソン用)
 どう考えても本来なら32話でビルゴルディに敗れた後、新兵器ジックキャノンで逆転勝利を収めるという予定だったと思われるのですが、 どういうわけかジックキャノンの初使用が34話に延長され、32話ではガンギブソンとの協力でビルゴルディに勝ってしまった為、 ジックキャノンはとんだオーバーキル兵器に。……これは、90年代<メタルヒーロー>にかけられた呪いなのか(笑)
 その後一応、ガンギブソンにも新装備が与えられるのが、今作の優しさ。
 ジェイカー関係は正直細かく覚えていないのですが、スカイとランドはそれなりに活躍したイメージ。ジェイガリバーに関しては、 33話の演出が印象深いです。そして結局、OPには登場しているマリンは使ったっけ…………?
 物語と微妙に合わない追加ギミックが出てきて困る(或いは出てきたけど即効でフェードアウト)という事例もままある中、 基本破壊兵器に集中する事で、違和感のない武装強化が続いたのは今作の良かった所。アールジーコも、 登場当初は存在感を残せるか不安でしたが、上手い事ガンギブソンのキャラを補強する存在になって、良かったと思います。

   星取りに関しては、全体通して割と高めに評価している作品なので駄目回だけまとめて言及すると、
 「扇澤さんの作風が駄目な方向に噴出した」第10話、「なくなった初期設定で強引に話をでっちあげた疑惑があり、 全体的に意味がわからない」第13話、「前編で盛り上げたのに非常に雑にビルゴルディに逆転勝利を収めてしまう」第32話、 「アクション主体にしてもあまりにドタバタして見所のない」第41話、「全てが残念に終わったネオギルド完結編」第45−46話、 「かおるの友人の偽装工作がはちゃめちゃすぎる」第47話
 といったところ。
 作品世界の懐が妙に広い事もあり、なにか変な所に着地した気がするのだけど『ジャンパーソン』的なテーマとしては成立している、 というエピソードが散見されるのが一つ特徴といえます(笑) 連名含め総勢11名の脚本家が参加しながらも、 不思議と脚本間で盛り込んだ要素が大事にされ、通してみると統一感が高い、という要素も加わって、 破綻していそうで破綻しない、というアベレージの高さを生みました。
 どんなトンデモ展開でも、ジャンパーソンの抱えているテーマと繋げると、『ジャンパーソン』として成立してしまう、 というのは今作最大の武器だったと思います。そして、成立させている、という部分で、スタッフが良い仕事でした。

(2015年12月13日)

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