■『特捜ロボ ジャンパーソン』感想まとめ10■
“本当の名前を 誰も知らない
残された JPカード”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜ロボ ジャンパーソン』
感想の、まとめ10(47〜最終話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ1〕 ・ 〔まとめ2〕 ・ 〔まとめ3〕 ・
〔まとめ4〕 ・ 〔まとめ5〕
〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・
〔まとめ9〕 ・ 〔構成分析〕
- ◆第47話「謎?!裏切りの嵐」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
-
ジャンパーソンとガンギブソン、修理と休憩中。
<ネオギルド>とのげきと……う……?
なんか無理矢理、前回の戦いに意味があった事に(笑)
その頃、塾でパソコンを使って勉強中の子供達が突如暴れ出すなど、世界各地で、子供による理由も原因も不明の破壊行為が続発していた。
それを知り、ほくそ笑む、帯刀ビルゴルディ。
「既に、我が最終作戦は、発動進行中だ。もはや誰にも止める事はできん。新しい歴史のスタートは近い」
魔王による魔王の為の魔王な世の中……だいぶ野心が肥大化している気がしますが、これもセーラ喪失後の暴走の一環という事で。
JP基地でTVを見ていた周平(毎度お馴染み『コンバトラーV』!)も突如様子がおかしくなり、手近にあった銃を基地内部で乱射。
子供の手の届く所に、光線銃置くな。
何とか取り押さえて気を失った周平の脳波を調べるが、異常は無し。目を覚ました周平には暴れていた間の記憶はなく、
その事から最近起きている事件と同様なのではないかと、JPとGGは捜査に。スクラップしていた新聞をあさっていたかおるは、
橘順子という女性心理学者がスリップ事故で危篤状態、という記事に目をとめる。
このシーンが、おそらく尺の都合によるカットの影響だと思うのですが、周平落ち着く→JPとGG調査へ→
服装の替わったかおるがスクラップをめくって急に驚く、とかおるの行動が唐突かつ意味不明。文章にすると、
「かおるも独自に調べているのでは?」といっけん違和感ないのですが、別のシーンを挟んで更に服を着替えるという事は、
一回流れを切っているという事であり、その上で必要な説明が省かれてしまった為、映像で見ると成り行きがさっぱり伝わらない、
という非常に困った事に(後の展開を考えると、周平を同席させない為に時間経過を描く必要があったのでしょうが、
今回こういう構成的な粗が酷い)。
順子の病室では、今は亡きセーラに代わって看護婦コスプレに身を包んだマヤとシンディが、順子を調べ、満足して退室。
しばらく後に、急に自分の設定を思い出したのか変装してやってきたかおるが声をかけるが、
昏睡状態の彼女が目を覚ます筈がなく退室しようとした所で、やおら起き上がる順子。
若干ホラー。
「待って! 待ってかおる!」
心理学の分野である研究を行っていた順子は、とある人物から資金提供を受け、その人物の為に子供達を使って研究のテストを実行。
その結果起こったのが、今回の集団錯乱事件であった。自分の研究が恐ろしい企みに利用されているのかもしれない……
そう気付いた順子は出資者の目を欺く為に事故を擬装、意識不明を偽って入院していたのであった。
ごく一般的な行為なのか、事故の擬装。
まあなにぶん『ジャンパーソン』世界なので、事故や死を擬装して行方をくらますのは一流科学者のたしなみ
という可能性は否定しきれませんが。かおる明らかに、それ用のコピーロボットを複数用意していましたし。
「わたし世界を彼等に、あの男に差し出してしまったのかもしれない」
順子から恐ろしい告白を受けたかおるは、それっきり、消息を絶ってしまう――。
それから三日、連絡の取れないかおるを心配してJP達が焦れる中、当のかおるは何故か公園のベンチにぼんやりと座り込み、
これまでのジャンパーソンの戦い、自分を助ける格好いいジャンパーソンとか、
勢いでジャンパーソンに抱きついてみたりした時の事を思い出していた。
「ジャンパーソン……!」
いきなり、楽しく遊ぶ家族連れの子供を突き飛ばしてどこかへ走り出すかおる。
………………え、もしかして今更、自分が「正義」の名の下に世界の命運を左右する狂気のロボットを作り出したキチガイである事を自覚した?
かおるが向かった先――それは、帯刀コンツェルン!
「やっとお目にかかれたわ帯刀さん、いえ、ビルゴルディ!」
ブルーのスーツでタイトミニスカ黒ストッキングに、メガネ&パーマのおめかしモードで、帯刀の総裁室へ飛び込むかおる。
「死にたくないのよあたしは! 生きてこの目で確かめたい! 科学者として。人間を超え、ロボットを超えたビルゴルディ、
あなたの最終作戦を、勝利を」
事故に遭う前の順子から最終作戦の全てを聞いた、と称したかおるは、そのあまりに完璧な計画に敗北を認め、
ジャンパーソン達を切り捨て、帯刀に味方する事を申し出る。もちろん簡単に信じる帯刀ではないが、
かおるは取引材料としてJP基地の場所を教えると告げるのだった……。
一方、JP基地ではJPとGGが、囲みのついた、橘順子に関する記事を発見。アールジーコの口から、順子がかおるの親友である事、
ハイパーサブリミナルの研究をしていた事、サブリミナル効果とは何か、について諸々の説明。
すべからく最初に提示しておけばかおるの行動についてすんなりだったのですが、かおるの行動をJP達から隠す為に情報を分断しようとした結果、
ただただ不自然に視聴者にとって話がわかりにくくなってしまい、非常によろしくない構成、下手な脚本。
ジャンパーソンとガンギブソンは順子の病室へ向かうが、順子は意識不明で話を聞くことは出来ない。
更にそこへ飛び込んできたマヤが、華麗なロープアクションで順子をさらっていく。その途中で起きて暴れるも、車に押し込まれる順子。
……この人はどうやって、昏睡状態を擬装していたのでしょうか?(^^;
事前のマヤとシンディの確認シーンも、間違いなく昏睡状態と認識したのか、嘘を見破ったのかわからず
(嘘だと見破ったらその場で連れ去る気はしますが、かといって意識を取り戻した順子を見ても一切驚かず、
全てが意味不明(^^;
本当にこの連名は最悪。
JPとGGは後を追うが、哀れ順子は手榴弾で爆死。ここでジャンパーソン、ようやくマヤをサーチし、
正真正銘の人間である事が判明する。
今回最大の衝撃(笑)、強化スーツ補正込みとはいえ、<ネオギルド>最強の暗殺ロボット(自称)・
ガンギブソンと互角の戦いを演じるマヤは、まごうことなき人間だった!
伝説の勇者ほらだとの、人類最強対決が見たい(笑)
ちょっぴり動揺するジャンパーソンの胸に突き刺さるビルゴルディカード! 魔王降臨し、戦闘にもつれ込む両陣営。
マヤはGGと互角……というかむしろ、互角以上。
いったいぜんたい、総裁はどこでこの人をスカウトしてきたのか。
クライマックスも近づいての全力バトルで、マヤとGGは回し蹴りの応酬。JPとBDも激しくぶつかり合うが、
全体的にBDサイド優勢。
こういう時は飛び道具……とガンギブソンがホーミングバレットを放つが、ビルゴルディのハンドビームにかき消される。
ジャンパーソンがジャンバルカンで畳みかけてダメージを与えるが、ビルゴルディ、すぐさまニーキックミサイルで反撃。
今度はガンギブソンがスピンドルキャノンを構えるが、なんとビルゴルディのロケットパンチで奪われてしまう。
JPとGGはスピンドルキャノンで吹き飛ばされ、ラスボス、ジックキャノン発動。ジックキャノンとスピンドルキャノンの衝突の結果、
わずかにジックキャノンが押し勝ち、威力を減殺しながらも魔王にダメージを与える。
魔王はブレストビームを放って撤退し、両者痛み分け。
必殺武器の打ち合いは、らしくて面白い戦闘でした。
そして今回改めて判明したのは、正面からぶつけ合うと、スピンドルキャノンよりジックキャノンの方が強い事。そして、
ホーミングバレットのヒエラルキー。
とりもなおさず、ガンギブソンの戦力ヒエラルキー。
が、頑張れ……!
ビルゴルディは順子を抹殺した事をかおるに告げるが、それを平然と受け入れるかおる。
「そこまでしておまえは科学と心中したいのか」
「奴隷よ、あたしは科学の奴隷」
「科学の奴隷か……いいだろう。次はジャンパーソン基地の壊滅だ」
かくてここに、悪の最狂タッグが誕生した! 果たしてジャンパーソンは、正義の狂気は悪の狂気に打ち勝つ事ができるのか!?
そしてかおるは、切り札中の切り札・裏切り者プレイにより、まさかのミラクル大逆転で麗子様からヒロインの座を奪い取る事ができるのか?!
三枝かおる・フォー・ヒロイン!
本当に爆殺されたとしたらえらく酷い扱いの順子ですが、今作の場合は完全コピーロボットが有り得るので、
空白の三日間に準備したとか幾らでも後付けできてしまうので、保留。同様に、かおるも保留。
作品的には本当にビルゴルディに走っていた方が断然面白いのですが、さすがにそんな事は無い気もしますが。しかし、
本気にしろ嘘にしろ、言動と行動が錯乱しすぎていて、展開にドキドキワクワクするというよりも、モヤモヤします(^^;
なにぶんシナリオが信用できないので、意図通りに支離滅裂なのか、
まともに書いているつもりでシナリオそのものが支離滅裂なのか、区別つかない。
まあただ、アップにする都合でか妙に凝った順子の事故の記事に「婚約者」という文字が確認できたので、「親友だったのに、
科学の発展に身を捧げるには男なんて要らない、ゴミよゴミ、と誓い合ったのに、うきーーー」
というのが最後の引き金だったという可能性も多分に考えられます。
- ◆第48話「JP(ジャンパーソン)基地壊滅!!」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
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抹殺された親友の後釜に顔色一つ変えずに座る事で帯刀の信用を得たかおるは、JP基地壊滅作戦を任される事に。
順子の研究していたハイパーサブリミナル効果は、純粋で無垢な子供ほど影響を与えやすい為に、対象となる子供をリストアップしていく。
新たな魔王に仕えながら、JP誕生からの軌跡を振り返るかおる……時間と予算節約の為か、終盤適度に回想シーンを挟むいつもの仕様。
「かおるの真意がわからない」と、未だかおるの行方を掴めないままのJP達は順子の周辺を調べ、
その研究にどこかから大量の援助資金が提供されていた事を突き止める。その資金ルートの先に、魔王が居るのか……?!
一方、姉の失踪に気落ちする周平は、同級生の女の子・春子に励まされていた。以前の、
ガンギブソンが逮捕されて正義が法をぶち破る回に出てきた女の子ですが、
こういうキャラクターを再利用するというのは、珍しい使い方。そして春子は、洗脳対象の子供達に、リストアップされていた……。
見覚えのある少女の顔に、何事か考え込むかおる。そこへやってくる、お局様、もといマヤとシンディ。
「後からやってきて総裁に色目使うんじゃないわよ、このあ○ずれのロボットフェチ女! モテない女は自分の理想のロボット作って、
(以下検閲)」みたいに絡まれるが、敵愾心剥き出しの二人を、かおるはせせら笑う。
「黙って聞きなさい! ジャンパーソン基地を設計したのはこのあたしよ。あなたたちの手で壊滅できるほど、やわじゃないわ」
ここでこれまで地味に謎だったJP基地が、かおるメイドである事が確定。まあ、普通に考えるとそうなのですが。
やはり三枝家は資産家で、あの基地も私有地の一角にあったりするのか。
活動家になるには資金力が必要。
『ジャンパーソン』が僕らに教えてくれた、大切な事。
すっかりいい感じに悪が板に付いてきたかおるは、JP基地壊滅作戦を発動。
リストアップした子供達をハイパーサブリミナル効果で深夜の公園に集合させる。
そこに置いてあった武器を手に手に取った子供達は、JP基地に向けて進軍開始。
アールジーコが基地の入り口に銃火器と爆薬反応を感じて警戒するも、外部からの操作で勝手に開く隠し扉。
「おいまさか、かおるが?!」
やすやすと基地に侵入した子供達は、子供相手に抵抗できないジャンパーソンとガンギブソンを銃で滅多撃ちにし、
バットで内部の設備を破壊していく。
かつてスーパーサイエンスネットワークの福の神兄弟により、「花畑で子供達に囲まれ、戦い終わって平和になって、
ありがとうジャンパーソンの歌を唄われる」という幸せな夢を見ていたJPさんだけに、実にえぐくていやらしい展開。
三枝かおる、鬼畜。
そこに周平がやってきて内部の光景に困惑し、その姿に、先日の周平の行動を思い出すジャンパーソン。この子供達も、
同様に暗示をかけられているとしたら……!
「そう、これが従来のサブリミナルを超えた最新テクノロジーと精神科学の結晶、ハイパーサブリミナルよ!」
突然の通信の主は、三枝かおる!
「ジャンパーソン、ガンギブソン、すぐに降伏しなさい。あなた達に子供達を傷つける事はできないはずです」
更にモニターのかおるの背後に、魔王ビルゴルディが姿を見せる。
「いや、降伏するな、抵抗しろ。子供達を抹殺してみろ、ジャンパーソン、ガンギブソン。ふっふっふふふ……」
暗示に使われている単語の一つが「DESTROY」なのがまた、どこか懐かしさを漂わせて素敵な所です。
「なぜだ! どうしてなんだかおる?!」
「しょせん、私は人間。あなたはロボット、そういう事よ。でも、彼は、ビルゴルディは、
その二つを超えた存在」
かおるは背後から肩に置かれたビルゴルディの手に、頬をすり寄せる。
「わかってとは言わないわ」
実に楽しそうに高笑いするかおる。
ここまでやれば、ここまでやれば、この先どう転んでもインパクト的にヒロインは私のもの!
麗子様超えへ向けて、着々と進行する、恐るべきかおるの計画!
そう、私は、神になる!(あれ?)
かおるは基地のカメラが限界になった、と称すると映像を切り、そのタイミングでサブリミナル効果を解除。
かおるの裏切りに衝撃を受けながらも、正気を取り戻した子供達を連れて脱出をはかるジャンパーソンとガンギブソン。
だがその混乱の中で、春子が周平の手を強引に引いて別の方向へ走っていってしまう。
大爆発するJP基地、子供達を乗せて脱出に成功するグランドジェイカー、そして春子に連れられた周平の前に姿を見せたのは、
三枝かおる。
子供達を洗脳して基地を破壊したのが姉であると、はっきり知る周平。そんな周平に、
戦いに巻き込まれないように自分と一緒に来てほしいと言うかおるだったが、同級生らを巻き込んだかおるの行為が許せない周平は、
かおるを拒絶する。
前回、周平が事件に巻き込まれた事で家族愛が急にヒートアップ→どんなに愛を向けてもジャンパーソンは自分の家族にはなってくれない事実を認めて錯乱、
という流れに見えるようにはなっていますが、さて。
この辺りどうしても裏も表も読みたがる性分なので、色々考えてしまってスッキリ楽しめません(^^;
展開としては、当初の(3クール目にじわじわ補正していく前の)かおるのキャラクターにも則ってますし、
本気錯乱の方が絶対に面白いのですけど!(笑)
基地を失いとりあえず、<ネオギルド>時代のガンギブソンがキャロルと共に使っていた隠れ家へ潜む面々。
かおるは本当に自分達を裏切ったのか、そして魔王ビルゴルディの最終作戦はいかなるものなのか……ここで力強く
「それでもかおるを信じる!」と言われずに「何を考えていようがビルゴルディを倒す!」という結論でまとまる所に、
かおるの人徳とヒロイン力の限界を思い知らされます。
今後の動きを検討する中、周平がつけたTVのニュースで、なんとキャロルそっくりのロボットが街で暴れ回っている事を知るJP達。
「アイアムブラックキャロル、ごめんあそばせ」
矢も楯もたまらずガンギブソンは外へ飛び出していき、それを追うジャンパーソン。
はたしてブラックキャロルとは何者なのか?! それぞれの思惑が複雑に交錯する中、いよいよ、正真正銘、最後の戦いの幕が開く!
次回、
「魔王ビルゴルディが世界に向けて放つ破滅へのカウントダウン。鋼鉄のオデッセイ!
ジャンパーソン、ビルゴルディ、ガンギブソン!
『特捜ロボジャンパーソン』激動の30分、「炎に消えたガンギブソン」。Sea you again!」
色々面白かった今作の次回予告ですが、とうとうメタネタを(笑)
そして「鋼鉄のオデッセイ」とは何なのか、意味はわからないけど、勢いは凄い。
<ネオギルド>最終章があんまりだったので、ここでガンギブソンがもう一度拾われたのは良かったところ。さて、
ちゃんとまとめられるかどうか……。テンションだいぶ変わるので、さすがに今回、先行して放映リストを確認したのですが、
残りは宮下隼一の単独名義だったので、宮下さんの本気に期待したい。
- ◆第49話「炎に消えたGG(ガンギブソン)」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
-
隠れ家を飛び出したガンギブソンは、キャロルの墓が掘り返されているのを確認する。そしてそこに残されていたのは、黒い薔薇。
「キャロルがここで眠っていた事を知っているのは、俺とおまえを除けば、かおるしかいねえんだ」
ああなるほど、そう繋ぐか。
これで確かに、かおるの関与を決定づける要素として、キャロルでなくてはいけなかった、という理由が機能します。
「俺はあいつを、かおるを許さねえ! 絶対にな! ブラックキャロルを押さえて、かおるの居場所を突き止める。そして、
きっちり落とし前をつけさせる。ジャンパーソン、おまえだろうと邪魔はさせねえ!」
ガンギブソンはかおるを探すために一人走り出す……だがその憤りすらも、かおるの手の平の上であった。
ブラックキャロルはガンギブソンを誘き寄せる為の餌であり、かおるはガンギブソンとジャンパーソンの分断を狙っていたのである。
……まあ、裏切りが嘘だとしても、かおるにとって素でガンギブソン、微妙に鬱陶しい存在ですしね。
「なかなかの作戦だ」
「さいこーの作戦と言ってほしいわねぇ」
かおる、お局二人を挑発(笑)
「大したもんだ。我々もバラバラに引き離して、仲間割れさせるつもりか」
「かもね」
帯刀のかまかけに、ニヤリと笑ってみせるかおる。この辺り、うまい。
ブラックキャロルは警備会社のトラックを襲って逃亡、それを追跡した迂闊ガンモドキは倉庫の中へと誘い込まれる。
その前に姿を現したのは――科学の奴隷、三枝かおる!
「動くとブスリよ、ガンギブソン」
ガンギブソンと対峙したかおるは、自分が裏切った事を強調しながらも、倉庫に仕掛けられた監視カメラに目配せをし、
ガンギブソンもそれに気付く。
(どういうこった、かおるは何を言おうとしているんだ、いったい何を)
かおるは裏切ったわけではないのか……? アイコンタクトを図ったガンギブソンはかおるの芝居に乗り、
ブラックキャロルともつれ合いながら、そのメッセージを聞く。
「私はかおるが作ったブラックキャロル。キャロルではありません」
ブラックキャロルはキャロルを模してはいるが、あくまでもかおるが作ったメッセンジャーにすぎない。
そしてその記憶回路にはかおるの手によって、ビルゴルディの恐るべき最終作戦のデータが隠されていた! 嘘か真か、
かおるの策略に乗り、ブラックキャロルの記憶回路を手にしようと猿芝居を続けるガンギブソン、だがそこへ魔王一味が姿を現すと、
もう用済みだとブラックキャロルを瞬殺。
「ばかやろぉ! 二度も、二度も俺を悲しませるつもりか!」
吹き飛んだブラックキャロルを抱きかかえつつ、その記憶回路を回収するガンギブソン。
瀕死のブラックキャロルを横たえたガンギブソンはビルゴルディにスピンドルキャノンを食らわせようとするが、
魔王はなんとロケットパンチで瀕死のキャロルを回収すると自らの盾とする。
それがキャロルではないとわかっていながら引き金をひけないガンギブソンはスピンドルキャノンを取り落とし、
ブラックキャロルは完全抹殺、ガンギブソンは、帯刀組の一斉攻撃の的に。しかしトドメのニーキックミサイルが炸裂する寸前、
横からの閃光がミサイルを空中で破壊。
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
ガンギブソンの信号をキャッチしたジャンパーソンが、間一髪、救援に駆けつける!
JP&GGvsビルゴルディ&マヤ、という2on2マッチもすっかりお馴染みになりましたが、最終局面という事で、
火花飛び散る気合いの入った格闘アクション。ジャンパーソンとビルゴルディもガンガン回りまくりの殴りまくりで非常に格好いい。
そしてこっそりとラスボスともやり合うマヤ。
強すぎる……!
最近、謎のリモコンビームでJPにもGGにもダメージを与えられるようになっているシンディですが、
さすがにバトルには直接参加せず。しかしあのリモコンは何なのか。いやどうして、小道具はあの形になったのか(笑)
壮絶な激闘は、光線兵器大盤振る舞いのビルゴルディにより、帯刀組有利に展開し、追い詰められたJPとGGは柱の陰に身を隠す。
「ジャンパーソン、かおるは、あいつは、裏切っちゃいねえ」
ええーーーーーー(おぃ)
「頼むぜジャンパーソン、ビルゴルディを、ビルゴルディを倒してくれ!」
ガンギブソンはブラックキャロルの記憶回路をジャンパーソンに托すと、ジャンパーソンをかばって飛び出し、
魔王ビームの直撃を受けて炎の中へと消える……!
ビルゴルディが残るジャンパーソンにトドメを、と動いた所で、さっと前に出たかおるは倉庫に仕掛けていた爆弾のスイッチを入れ、
凄まじい爆発で崩れ落ちる倉庫、その中へと消えていくジャンパーソン……。ラスボスは範囲攻撃では殺せないので、これで大体、
かおるの裏切りとJP抹殺が擬装である、という事が確定してしまいました。
どうなんだどうなんだ……と引っ張った所で、記憶チップをコンピューターに差し込んだら大爆発!!
「おほほ、あたしは奴隷よ、科学の奴隷!」
という展開もまだちょっぴり期待していたのですが、儚く夢と消えました(笑)
帯刀組が立ち去った後、崩壊した倉庫の瓦礫の下で身を起こしたジャンパーソンは、ガンギブソンのロケットを発見する……
しかし友の姿を、見つける事は出来なかった。アジトになんとか帰還したジャンパーソンは周平に「ガンギブソンは……?!」
と問われるが、無言で首を左右に振る。ここからガンギブソンの回想で、背後に流れる挿入歌が昭和歌謡調ヒーローソング
「君は眠れ、そして歌え」という、三ツ村監督の音楽のセンスは相変わらず面白い。
ガンギブソンがジャンパーソンと違う独自の道を見せる第36話「命短し美少年!」で使われた挿入歌ですが、
確認したらそもそもこの回の監督が三ツ村さんだったので、かなり意識的なリンクでもあるのかも。
ガンギブソンに托された記憶回路の中身を確認するジャンパーソン……そこに記録された映像に映っていたのは、
三枝かおるその人であった。かおるが順子から聞いた魔王ビルゴルディの最終作戦――それは、
ハイパーサブリミナルによる全世界同時クーデター!
「衛星放送を利用して、全世界の警官、兵士、民間人を問わず、武器を持つ全ての人々に一斉蜂起を促すメッセージをハイパーサブリミナルで植え付けるの」
立て!
武器をとれ!
魔王のために!
すなわち、魔王軍編成。
これまで直属の秘書以外に、組織だった戦力を持っていなかった帯刀が、この最終章において軍団を編成しようとする、
というのは面白い。
……はいいのですが、「警官、兵士、民間人を問わず、武器を持つ全ての人々」にメッセージを植え付けると言っているのに、
イメージ映像だとどう見ても「武器を持っていない民間人」が「武器屋を襲って火器を手に入れている」のですが(笑)
というか、ごく普通に街中にガンショップがあるYO!
嗚呼、ここは世紀末TOKYOディストピア。
最終章で改めて、『ジャンパーソン』世界と《レスキューポリス》シリーズのディストピア観が重なってしまいました(笑)
この無法な世の中で、世紀末を紅蓮に染め上げる魔王軍大作戦において、一斉蜂起のバックアップを行うのが、
密かに集めた志願者達を改造して編成される、バイオボーグ軍団!
さすがに一流のビジネスマンらしく、着実に最終作戦の準備を進めていた帯刀……それと知らずにハイパーサブリミナルの研究で帯刀に協力していた順子は、
計画の真実を知って一斉蜂起プログラムの解除コードを作成していたがその途中で怪しまれ、逃亡。
病院で順子から全てを聞いたかおるは、彼女になり代わって帯刀の懐に飛び込む事を決意する。
その為に順子を海外へと逃亡させ、囮のコピーロボットを用意して彼女の死を擬装。それを踏み台にして帯刀陣営に潜り込むと、
ジャンパーソン達に多大な損害をもたらしてまで、その信用を勝ち得たのであった。
かおるが誰にも言わずにそこまでしなければなかった理由……それは、ハイパーサブリミナルによる一斉蜂起が来月に迫っている為だった。
解除コードは送信できてもすぐに効果を発揮するわけでなく、それを仕掛けて発信するのは早ければ早いほどいい。
帯刀の所有する通信衛星から、出来る限り早く解除コードを送信して一斉蜂起プログラムを無効化する為に、
かおるは強引な手段を使ってでも虎口に飛び込む必要があったのだ。
ジャンパーソンはビルゴルディを倒す事は出来ても、ハイパーサブリミナルを解除する事はできない。
そしてそれを止めなければ、仮にビルゴルディを倒しても、世界は破壊の炎に包まれる。
ビルゴルディの最終作戦を完全に阻止する為に、かおる自身も戦わなくてはならなかったのだ。
と、かおるの裏切りは「お芝居でした」とごく普通であまり面白くない所に着地しつつ、一応、破綻しないレベルの理由はつけました。
順子の死が相変わらずのコピーロボット擬装とか繰り返しネタでつまらなかったりはしますが、かおる自身の台詞にあるように、
これは誕生編の意図的な焼き直しで、別の誰かの死を擬装する事によって、これまで死者であったかおるが甦る、
というニュアンスか。
それはそれとして、実に酷い使われ方だったキャロルの墓をさらっと暴き、
明らかにガンギブソン捨て駒やむなしの謀略を巡らすというのが、非常にマッド。
勝利の為に手段は選ばず、ジョージ真壁あたりとは、悪の器の違いを感じさせます。
「ジャンパーソン、あなたはビルゴルディを倒して。彼の正体は、帯刀コンツェルンの総裁、帯刀龍三郎よ」
「帯刀龍三郎……ビルゴルディ!」
ば・れ・たーーー!(笑)
ここで主題歌インスト。
「決戦だ決戦だ!」
「周平、必ずかおると一緒に帰ってくる」
「約束だよ、ジャンパーソン……!」
(必ず、必ず戻ってみせる)
途中途中は、物語導入用便利キャラ以上の存在にはなりませんでしたが、最終的にそこそこ周平に存在意義を出せたのは良かった。
かおるからの情報を元に、アールジーコとバイオボーグ手術施設へ乗り込むジャンパーソン。
「手分けしよう、アールジーコ」
いやそこで手分けすると、アールジーコの命が危ない(笑)
案の定、撃たれて転がるアールジーコ。その声に駆けつけたジャンパーソンは、超鋼鉄の鎖によって動きを封じられてしまう。
そして姿を見せる、人を捨て、人を超えた、闇の化身。
「ようこそ地獄へジャンパーソン」
「帯刀龍三郎……!」
奇矯なピンクのシャツのペロペロキャンディ男として初登場してから物語を積み重ねて約1年。今ここに遂に、ジャンパーソン、
帯刀龍三郎と邂逅す。
「ジャンパーソン、ここが貴様の墓場だ。泣け、喚け、祈れ! 貴様はもう、終わりだ。終わりだ!」
帯刀はビルゴルディへと変貌を遂げ、自由を奪われたジャンパーソンに次々と炸裂する、デュアルレーザーとニーキックミサイル。
果たしてラスボスはこのまま倒れてしまうのか、そしてビルゴルディの最終作戦の辿り着く先は。
「最終回、戦慄の大クライマックスが、幕をあげる!」
とうとう、劇中ナレーションまでメタに(笑)
そして散々楽しませてくれた次回予告も、いよいよファイナル!
「ジャンパーソン・ファイト・フォー・ジャスティス!
「ビルゴルディ・ファイト・フォー・イビル!」
ジャンパーソン!
ビルゴルディ!
ジャンパーソン!
ビルゴルディ!
ジャンパーソン!
ビルゴルディ!
ジャンパーソン!
ビルゴルディ!
ジャンパーソン!
ビルゴルディ!
いよいよ決着、最終回
「ジャンパーソンよ永遠に」
ソーロング!
両者の戦闘シーンを交互に入れながら、ひたすら名前を連呼し続けるという、怒濤のハイテンション。
最後まで素晴らしい次回予告でありました(笑)
- ◆最終話「JP(ジャンパーソン)よ永遠に」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)
-
囚われのジャンパーソンが最終作戦を知っていた事から、かおるから情報が漏れている事に確信を得る帯刀。
「やはりかおるはダブルスパイだったということか。敵ながらあっぱれと誉めてやりたいが、遅すぎたよ」
泳がせすぎの感はありますが、完全に信用しきったわけでないのは、さすが良かった。
かおるは解除コードを完成させるが、監視していたマヤにより捕らえられてしまう。コンピュータールームから引きずり出される寸前、
なんとか解除コードを発信するかおる。だが……
順子が疑わしくなった時点で、帯刀はハイパーサブリミナルによる最終作戦発動のタイミングを早めていた。それは一ヶ月後ではなく、
ちょうど今日、この日の正午ジャスト。
そう、今がその時だ。
DESTROY
魔王の為に
全世界にハイパーサブリミナルによる暗示効果が発動。魔王軍が一斉蜂起し、世界中で暴動や内乱が発生。
ビルゴルディは身動きできないジャンパーソンと、マヤが引きずってきたかおるに、その惨禍を見せつける。
「見たかジャンパーソン。我が勝利を。魔王ビルゴルディの勝利を」
「なに?!」
日本の裏社会を牛耳るどころか、ついに世界中を魔王の色に染め上げようとするビルゴルディ!
「ジャンパーソン、俺を見ろ。人間とロボットの共存。おまえの目指す理想こそ、この俺だ」
「違う! 違う!! 俺の、俺の理想はそんなものじゃない!」
あ、逆鱗に触れた(笑)
ジャンパーソンは怒りのハイパワーで、鎖を引きちぎる!
「人間にも、様々な人間がいる。生まれも育ちも、性格もみんな違う! ロボットもそうだ! だからこそ、
互いを認め合い、尊重しあう。合体しなくても、手を繋ぎ合えるんだ、共存できるんだ! それこそが俺の理想だ。
実現できるなら……実現できるなら、俺は死んでも構わん」
最後まで、理想の死を追いかけるJPさん。
つくづく、このヒーローのよって立つところが窺えます。
後これ、単体の台詞としては格好いいし、何となくこれまでの物語をまとめてもいるのですけれど、
どちらかというとテーマとしては<ネオギルド>編のテーマ。本来なら<ネオギルド>編においてこのロボットと人間の共存とその理想についてが語られ、
ビルゴルディ編ではもっと個人の執念みたいなものが中心に来る筈ではなかったのか。
まあ、がったがたになってしまった<ネオギルド>編もフォローしつつ、この暴風雨のような作品に一応の着地点を作り出した、
という点は評価して良いかと思います。
「じゃあ、死ね」
ぼろぼろのジャンパーソンに次々と炸裂する、ビルゴルディビーム、シンディリモコン、マヤ光線銃。
帯刀組の一斉射撃を受けたジャンパーソンは遂に倒れ、踏まれ、蹴り飛ばされ……活動を停止する。
「嘘よ……。嘘よ……嘘よ、ジャンパーソン、ジャンパーソン、ジャンパーソン!」
エネルギーゲージが消灯し、ぴくりとも動かなくなったジャンパーソンにすがりつくかおる。
「世界が、全世界が、この俺の、ビルゴルディの前にひざまづくのだ。ふふはははは、わははははははははは」
ハイパーサブリミナルによる世界一斉蜂起は成り、宿敵ジャンパーソンは倒れた。
後は全世界に向けて魔王軍勝利のメッセージを発信する事で魔王の軍団の暗示は固定化され、世界はビルゴルディの名の下に支配される。
ジャンパーソンとかおるを残し、帯刀組はおめかししてTV局へ。
白スーツ帯刀、格好いい。そしてシンディさん、気合い入りすぎ(笑)
バイオボーグ手術施設に閉じ込められ、取り残されたかおるは、涙を流しながらジャンパーソンの側に寄りそう。
「ジャンパーソン……どうして……どうしてあたしを置いて……? ジャンパーソン……!」
ここで流れる挿入歌は、「紫狼伝説」。これ、物凄く格好いいので、是非フルで聞いて下さい。
というか「正義のために」を調べた時に一緒に見つけて聞いたのですが、一番格好いい所の前で曲だけになってしまっているので(笑)
「ジャンパーソン……!」
沈黙して倒れるジャンパーソンのボディに指を這わせたかおるは、そっと顔を寄せていき――唇を重ねる。
演技といい、演出といい、完全にラブシーン。
三ツ村監督、やりきった!
かおる→ジャンパーソンは、これまでも微妙に匂わせてはいましたが、ここまでハッキリやったのは驚き。
「ジャンパーソン……アメリカから帰ったあの時から、あたしは貴方と生き、貴方と戦い、貴方と死ぬと決めていたの。だから、
だから、あたしは貴方の側にいきます」
かおるはジャンデジックに手を伸ばすと、自らに銃口を向ける。
「ジャンパーソン……思い出をありがとう……」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
全部、全部吹っ飛ばした、この女の狂気が!!!!!!
凄い。
凄い。
凄い。
第3クールのマイルド路線で忘れかけていましたが、そうでした、三枝かおるは、ジャンパーソンより狂っているのでした。
これまでの戦いも全て、正義とか理想とかそんなものは脇に投げ捨てて、「ジャンパーソンとの思い出」に集約されるのです。
ジャンパーソンが届かない人間愛を信仰し続けるように、三枝かおるもまた、届かないロボットへの愛を抱えて深く静かに狂っているのでした。
前々回、ベンチでぼんやりと固まって「ジャンパーソン……!」とか叫んで走り出したのは、ジャンパーソンとの間に距離を感じたのではなくて、
ジャンパーソンの勝利の為に他の全てを犠牲にする覚悟を固めていたのか!!
たった一人の肉親も、一緒に戦ってきたロボットも、そして自分自身さえも、ジャンパーソンの勝利の為に捨て駒に出来る女、それが、
三枝かおる!!!
そして最終回において遂に重なる、ジャンパーソンのデストロイ願望と、かおるの心中願望。
これが、1993年に東映ヒーローが辿り着いてしまった、狂気の果てか。
だが、
「かおる……?」
かおるの指がジャンデジックの引き金を引く寸前、目覚めたジャンパーソンの手がそれを止める。
回復する胸のエネルギーゲージ、浮かび上がる「エネルギー充填完了」の文字。
……て、休憩していただけなのか(笑)
凄いぞラスボス。
つまり今の今まで、第一形態だったのですね。
そう、最近のラスボスなら、第三形態ぐらいまであって当たり前!
断じて愛の奇跡とかではありません(笑)
思えばMX−A1時代に廃棄された時も、こうして甦ったのか。
「かおる、死ぬにはまだ早すぎる。おまえも、俺も、ヤツを、まだビルゴルディを倒していないんだぞ」
自己修復完了、復活して立ち上がるジャンパーソン。そしてジャンパーソンは、ある一つの決断を下していた。
「あのビルゴルディを倒すには、今の俺自身を捨てなくてはならない」
「え?」
「MX−A1に戻るしかないんだ!」
MX−A1……それはかつて警視庁科学装備研究所で誕生した超高性能の警官ロボット。この世の犯罪を撲滅する為に生まれ、
あらゆる悪を完全破壊する事をその生きる目的とした、ジャンパーソンの前身。
「MX−A1として作動するには、君にこの回路を切ってもらうしかない!」
廃棄されたMX−A1からジャンパーソンとして再生する際に取り付けられたリミッターの解除を望むジャンパーソン。
だがそれは……
「馬鹿なこと言わないで! それは、理性を、良心を、正義を司っている、貴方の命ともいえる回路なのよ! ジャンパーソン、
それを切ったら、善悪の判断を捨てる事になるのよ。そんな事、あたしに出来るわけないじゃない。
敵しか見えないただの殺人マシンになってしまうのよ」
ジャンパーソンの新生は、まさに奇跡と呼ぶ他ない出来事であった。
そのリミッターを解除すれば、おそらくジャンパーソンは二度と、今のジャンパーソンには戻れない……・
「わかっている。だがこれしかない。敵に対する徹底的な攻撃と破壊本能。それこそが今の俺には必要なんだ。
ビルゴルディを倒すために」
ここでジャンパーソンが選んだもの、それは……
理想の死よりも究極の勝利
信仰を、信念を、理想を、己の生き様、存在意義、自由意思による自己判断すら捨て、それでも、倒さねばならない悪がある。
己の「正義」を自ら見いだしたものが、今再び、絶対の「正義」に身をゆだねる。
強敵を倒す為に自分を見失いかねない強大な力の封印を解く……という劇作の構造そのものは、
少年マンガ的な“禁断の力”パターンなのですが、ではその“禁断の力”とは何か――というと、
判断を捨てた究極絶対の「正義」である、と。
今作のいびつさが巡り巡って到達したそこが、1993年に東映ヒーローが辿り着いてしまった、正義の果て。
「かおる! 回路を切ってくれ!」
「嫌。嫌よ! あたしは絶対に嫌よ!」
「かおる!」
「嫌よ、あたしにはできない……」
泣き崩れるかおるに、なおも迫るラスボス。
「かおる、今の俺にはこれしかない! ……頼む」
基本、JPさんは亭主関白。
そしてジャンパーソンが人間愛に勝てないように、かおるはジャンパーソンには勝てないのだ。
再びジャンパーソンを失う事を知りながらも、かおるはリミッター解除の手術を敢行する……
そしてジャンパーソン/MX−A1の究極正義回路に、倒すべき悪としてターゲットの名が刻み込まれる――その名を、ビルゴルディ!
今、魔王ビルゴルディ抹殺の為に、大魔王ジャンパーソンが、最終モードを起動する!
正直、ここ5話、主に脚本の問題でテンション下がる出来だったのですが、最終回、まさかの大大大逆転!
……まあなんか微妙に、MX−A1の設定変わっている気はしますが(笑) ここは、これを拾ってきた事に意地を見たい。
かおるの告白からキスシーン、ジャンパーソンの「MX−A1に戻るしかないんだ!」の怒濤の展開は、今作の締めくくりにふさわしい、
狂気と正義のカオス。
人間愛に対する狂信者であり理想主義者であったジャンパーソンが、それに殉じるのではなく、勝利の為にそれを捨てる事を選ぶ。
「正義」の意味を追い求めたロボットが、究極の悪に打ち勝つ為に、あらゆる判断を捨てた「究極の正義」を選ぶ。
それはある意味ではヒーローの死であり、ジャンパーソンの敗北であります。
しかしジャンパーソンは、その果てに掴む勝利に意味を見いだした。
善悪の判断を捨て、敵しか見えないただの殺人マシンになっても、そこに「正義」はあるのか? 「正義」とは何か?
「悪」とは何か? 「勝利」とは何か? 何の為に生まれ、何の為に死ぬのか?
まさに今作ならではのクライマックスです。
自分達の勝利を信じて疑わず、TV局に向かう帯刀組の車に、風を切り突き刺さるJPカード!
地平線の向こうから姿を見せたのは、究極の正義の執行者として再び転生した、ジャンパーソン。
ジャンパーソンは懐かしのジャンパー姿からそれを脱ぎ、マスクを装着する。
これが、最狂最後のジャスティスだ!!!
「なに?!」
「ばかな!」
「ジャンパーソン……生きていたのか」
驚愕に顔を歪める帯刀組をターゲット確認、ジャスティスの鬼神はジャンデジックを抜き放つ。
「ターゲット・ビルゴルディ、抹殺する、破壊する」
もはや、「フォー・ジャスティス」すら言わないぃぃぃぃぃ!!!
そう、MX−A1にとって「フォー・ジャスティス」は自明なので、口にする必要すらないのだ!
最終回に決め台詞が無いのは残念ではありますが、実に合理的ではあります。
機械っぽい喋りに戻っているのも非常に良し。
というかここで1話のジャンパーモードを久々に展開したのは、やはり1クール目は抜けきっていなかったという事でしょうか、
MX−A1(笑)
「どういう事だ。いつものジャンパーソンと、まるで違う」
そこへやってきた魔王軍を目にした帯刀は、ビルゴルディに変身すると、魔王軍(一般市民)をラスボスへとけしかける。
「破壊しろ!」「破壊だ!」「ビルゴルディ様のために!
ジャンパーソンを取り囲み、銃口を向ける人間達。
「邪魔をするな。今の俺に、善悪の識別回路は無い。ターゲットの抹殺あるのみ。
体はそのようにしか反応しない。動かない。邪魔をするな」
でも案外と、理性的(笑)
あとMX−A1はあくまで「正義」を遂行するロボットであり、悪の基準自体は持っていた筈なのですが、
ルーゴ回でガンギブソンが外そうとした善悪識別回路と、微妙に設定が混ざっているっぽい(^^;
だが、ハイパーサブリミナルの暗示化にある人々もまた、自己による判断の能力を失っていた。
次々とジャンパーソンに銃弾が突き刺さり、ジャンパーソンはよろめきながらもビルゴルディへと歩を進め、
「邪魔するな!」と人間を蹴散らす。
「こいつは見物だ。戦え、殺し合え。人間を、世界を敵に回せ、ジャンパーソン」
哄笑するビルゴルディ。
だがその時――かおるの仕掛けた解除コードがようやく効果を見せ始め、
ハイパーサブリミナルによる一斉蜂起プログラムの呪縛から人々を解き放つ!
ここは若干、駆け足になってしまったところ。前後の記憶が無い筈なのに、銃を捨てた人々がいきなり怯えて逃げ出してしまうのも、
タメが無いですし。……まあ、ラスボスが本能的に逃げ出さずにはいられないオーラを放っていたのかもしれませんが。
「むぅ……どういう事だ?」
「ビルゴルディ! 時間はかかったけど、ようやくハイパーサブリミナルが解除されたわ。ここだけでなく、世界中でね」
ニヤニヤしながら現れるかおる、超楽しそう。
「ビルゴルディ、おまえの作戦もこれで終わりだ!」
そしてもう一人……満身創痍のガンギブソンが姿を見せる。あの爆発を生き延びたガンギブソンは、
バイオボーグ施設で志願者達の身柄を押さえ、アールジーコも回収して地獄から舞い戻ってきたのだ!
「あなたの負けよ、帯刀さん。――いや、ビルゴルディ!」
かおる、とにかく楽しそう。
まあ、かおるとすれば、折角取り戻したジャンパーソンを再び殺すも同然の事態になったわけで、
帯刀への憎しみで巨大化ぐらい出来そうな気分だと思われますが。
「ターゲット・ビルゴルディ、抹殺する」
駆けつけた仲間達へ振り向く事もなく、ただひたすらに、正義の道を行くジャンパーソン。
フォーマル衣装を脱ぎ捨てた帯刀組の銃撃がほとばしり、ガンギブソンはかおるを守るが、ジャンパーソンはその横を素通りする!
魔王vs大魔王、ひたすらノーガードの打ち合いに、轟く雷鳴。戦いは、何故かよく分からないが、
打ち捨てられたマネキンの置かれた施設の内部へなだれ込み、ジャンパーソンとビルゴルディ、ガンギブソンとマヤが激しく激突する。
本日も苦戦するガンギブソン、とうとう思いっきりマヤを撃つ。
降り出す雨。
回転するビルゴルディ。
雨中の戦闘でビルゴルディが、ジャンパーソンの打撃を軸にして、くるっと横回転して自ら地面に叩きつけられているのですが、
どうやるんだあの動き。
「ジャンパーソン!」
「邪魔するな。どけ」
反撃を受けた倒れた所に駆け寄ってきたかおるを、冷静にはらいのけるジャンパーソン。
「ターゲット・ビルゴルディ、抹殺する」
割と物怖じしないアールジーコが合体し、ジックキャノンが正面からビルゴルディに炸裂。追い打ちでスピンドルキャノンも炸裂。
ヘルメットが脱げ、よろけるビルゴルディだったが、その状況からなおも反撃し、吹き飛ぶアールジーコとガンギブソン。
ラスボスはジャンブレーダーを装着すると、魔王ブレストビームを正面から受けながら突撃し――遂にその刃がビルゴルディを刺し貫く!
人間であろうが、ロボットであろうが、バイオボーグであろうが、一切の躊躇なく放たれた一撃はビルゴルディを深々と突き刺すが、
魔王はまだ倒れない。再度の刺突に対するクロスカウンターを受け、動きの鈍るジャンパーソン。
ビルゴルディはその隙にかおるを人質に取り、それを助けようとしたガンギブソンにはマヤが踊りかかる。
「ガンギブソン、地獄への道連れだ!」
ガンギブソンのボディを貫く、マヤの一撃。ガンギブソンは至近距離からマヤに銃弾を浴びせると、
なおも攻撃を続けるマヤの首筋をナイフで突き刺し、更に喉を切り裂く。倒れるマヤを見たシンディは、ガンギブソンに突貫。
「死ねぇ!」
謎リモコンで自爆し、ガンギブソンを大爆発の巻き添えにしながら果てるシンディ。
始末しないわけにもいかないし、爆発巻き込まれパターンかと思われた帯刀秘書ズでしたが、壮絶な玉砕。特にマヤは、
最後の最後まで凄かった。
そしてマヤとシンディの壮絶な忠誠心に、総裁のカリスマを感じます。
ただ一方でこの、モテすぎるという慢心が帯刀をしてかおるを取り込めると思わせ、最終作戦の破綻に繋がったと考えると、
なかなか因果。
「マヤ……シンディぃぃぃ!!」
吠える帯刀に、突撃するジャンパーソン。帯刀はそれを迎え撃ち、エネルギーを大放出。
二人の魔王の強烈なエネルギーのぶつかり合いは大爆発となり、その爆炎の中から、かおるを助けて脱出するジャンパーソン。
「I’ll be back!」
エネルギーを使い過ぎた為か白髪化した帯刀は、最後の力で魔王ビームを発射。
「危ない、かおる!」
ジャンパーソンはかおるをかばってビームを受け止め、全ての力を使い切った帯刀は、大爆発の炎に飲み込まれて消える……。
「大丈夫か……かおる」
「ジャンパーソン、回路が切れてるのに、どうして……」
満身創痍になり、そして究極正義執行モードに入っていた筈にも関わらず、ジャンパーソンは自らの意思でかおるを守った。
「……そうよ! 回路なんてそんな機械的なもの、関係ないのよ! 人間とロボットの境界を、ジャンパーソン、貴方は越えたのよ!
今こそ! 今こそ!」
降りしきる雨の中、ジャンパーソンに抱きつくかおる。
そう、ヒーローは今再び、自らの意思で自らの「正義」を掴み直したのだ!!
流れ出す主題歌。
「ベイベ」
ちゃっかり生きているガンギブソンは、毎度死にかけていたら死ななくなってしまった「閉店SALE」状態。
今作の世界観で、思いっきり人間殺したのに生き残ったというのは、なかなか凄い。まあ、
ジャンパーソンも実質帯刀を殺ってしまっているので、バランス的にとんとん、とも言えますが。
「かおる、ガンギブソン!」
二人の仲間に両脇を支えられ、立ち上がるジャンパーソン。
ナレーション「遂に、魔王は倒れ、世界は救われた」
ラストは、主題歌をバックに、子供達と遊ぶ平和な日常風景。アールジーコもちゃんと回復しました(笑)
いっけん牧歌的な日常風景……とはいえ、ビルゴルディ倒したら世界から悪と犯罪が消えるわけでなし、
夜な夜な非合法パニッシュ活動は続けられている事でしょう――世界が、「正義」の恐怖に服従するその日まで!
「ありがとう、ジャンパーソン。ありがとう、ガンギブソン。
君たちこそ、人間とロボットを繋ぎ、今日と明日を繋ぐ架け橋だ。
またいつか、ともに戦おう。
さらば、戦士達。さらば、僕等のヒーロー」
真っ暗闇の洞窟の中を全力疾走していた今作ですが、最後は割とマイルドに着地し、さらっとしたエンド。
今までの流れを考えると、若干「え……そういう話だっけ?」という部分もあるものの、迷走と暴走を繰り返した今作に、
ヒーロー番組として表向き綺麗な着地点を見つけたのは、良い仕事だったと思います。
近年の流れや担当回の間隔からしていた嫌な予感が的中し、45−46話がぼろぼろ、47−48話も出来が良いとは言いがたく、
だいぶテンション下がっていたのですが、最後は何とか踏ん張ってくれました。あえて1クール目の要素を拾いに行ったのは、
2クール目以降の流れを踏んだ扇澤ラインとは別の、宮下さんのこだわりを感じます。まあ、44話までの勢いで、
扇澤『ジャンパーソン』も見てみたかったですが(笑)
演出面でも、ジャンパーソン対ビルゴルディの力の入った格闘アクションに加え、主なBGMと挿入歌を使い切ったりと、
三ツ村監督がラスト2話としてやる事をきっちりやってくれました。
ちょっと面白いのは、帯刀組に倒されたジャンパーソンが再起動したのは、かおるの愛…………ではなく、
エネルギーが充填されたから。
ジャンパーソンが最後にMX−A1からジャンパーソンに立ち戻ったのは、ジャンパーソンの精神的成長……ではなく、
ビルゴルディに殴られた頭部へのダメージの影響。
と、さりげなくしかし絶妙に、奇跡が全面的に肯定されていない所。勿論、愛の奇跡と受け止めても良いのですが、
それ以外の要因と取れるものが描写されているのは、意図的なものではないかと思われます。
最強最後の敵となった帯刀/ビルゴルディ、物語の都合による裏切られキャラはどうしても格が落ちてしまいがちなのですが、
セーラの存在と、マヤとシンディが最後まで忠節を尽くした事により、女に助けられ、女を利用し、
そして女に足下をすくわれるキャラクター、という事で一貫性が出たのは良かったところ。「英雄色を好む」とも言いますが、
そういった英雄性を持たせる事により、悪の英雄としてある程度の器を保ったまま、退場する事が出来ました。その点では、
秘書をただの侍らせキャラにせず、マヤにしろシンディにしろ割と前線で暴れていたというのも、
最終的には作劇として効果が出たといえます。
最初はどうなる事かと思われましたが、迫力のある最後の敵、として見事に君臨してくれました。
……まあそれでもやっぱり、最後の最後までラスボスがラスボスだったんですが(笑)
まさかここに来て、第二形態と最終形態を発動するとは。
そしてそのラスボスすら倒してしまったのが……三枝かおる。
この物語の真の勝者が誰かといえば、三枝かおるを置いて他にありません。
かおるの狂気が、ジャンパーソンに押し勝った(笑)
途中で触れた「紫狼伝説」が、非常に今作のラストをイメージしたと思われる挿入歌なのですが(もちろん途中で作っていますので、
あくまでキーワードやイメージを作詞家が汲んだ歌詞ですが)、「紫狼伝説」がトゥルーエンドだとすると、
TVのラストは、グッドエンドないしかおるエンド(笑)
これだけ鮮やかな、ヒロインレース大逆転は、初めて見たかもしれません。
46話終了時点では、ヒロイン力0もしくはマイナスぐらいだったのに、ラスト4話で怒濤の大逆転。ヒロインの座を勝ち取るどころか、
作品全てを飲み込みました。
正直私は、三枝かおるを見くびっていました。反省。
途中、あまりに人間として最悪だったかおるを補正する動きが3クール目にあったわけですが、メインライターである宮下さんが、
「いや、やっぱりかおるはアレでいいんだ」と、初登場時の路線に戻した、というのは面白い所。まあ、
初期が強烈すぎて補正が全く効果を発揮しなかったというのもあるかもですが(笑)
最終的にもっと突っ込んで欲しかった部分もあるし、45〜48話は本当に勿体なかったと思いますが、とにかくこう、凄いもの見た、
と思わせてくれる作品でありました。
頭おかしい面も含めて中盤はエピソードのアベレージも高く、刑事ヒーロー路線の極北、
90年代に辿り着いてしまった正義と狂気の北極点として、東映ヒーロー史的観点からも、再評価の望まれる作品です。
ここまで書いてきた感想をベースに、今後も、『ジャンパーソン』については事あるごとにアピールしていきたい。
ちょっと特撮ヒーロー物にすれている人の方が面白い、という面はありますが、一応正統派ヒーローとしてのカモフラージュも展開し、
あまり計算していない感じなのに正義と狂気の果てに辿り着いてしまった奇跡の一作、鋼鉄のオデッセイ!
「正義」の勝利の筈なのだけど、その実態は、デストロイ願望を持つヒーローと、そのヒーローとの心中願望を持つヒロインによる、
世直しテロリズム。
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
残り色々はまた、総括で。
“あいつの素顔を 誰も知らない
勝利の伝説が残る だけさ……”
→〔構成分析へ続く〕
(2014年10月5日)
(2017年4月20日 改訂)
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