■『特捜ロボ ジャンパーソン』感想まとめ9■
“いつの日か君は 語って欲しい
戦いだけに 生きた勇者の事を”
ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜ロボ ジャンパーソン』
感想の、まとめ9(43〜46話)です。文体の統一や、誤字脱字の修正など、若干の改稿をしています。
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〔まとめ6〕 ・ 〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・
〔まとめ10〕 ・ 〔構成分析〕
- ◆第43話「最強最後の超神」◆ (監督:小西通雄 脚本:増田貴彦/扇澤延男)
-
またも、過去に単独で書いている脚本家による連名脚本。扇澤さんのこれまでの仕事量を考えると、
増田貴彦(レスキューシリーズでぼちぼち仕事。今作では、ロボットハンター・ミサキと女怪盗パンサーレディ回を担当)
がベースを書いて扇澤さんが手を入れたとか、そんな感じでしょうか? すっかり宮下さん見ないけど(最近担当回は34話の連名脚本。
単独だと31−32話のビルゴルディ誕生編)、後を扇澤さんに託して既に『ブルースワット』に注力しているのであろうか。
個人的にはこのまま、扇澤作品化しちゃってOKですが(笑)
「泣いている……地球が……。あたしの地球が泣いている。もう泣かせはしない。今こそこの手で、
奴等からおまえを救い出してみせる」
麗子様、復活。
台詞から推察するに、ここに来て、忘れた頃の環境汚染ネタでしょうか。
部下に用意させた謎の機械の中へと足を進める麗子様。
今こそ、真のスーパーサイエンス、発動の時!
「開始します! 我がスーパーサイエンスネットワークの、最終作戦を!」
時同じくして、IS化学の工場が金色の怪物・超獣神に襲われ、風を切ってその足に突き刺さるJPカード!
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
「ベイベ!」
立ちはだかるJPとGGだったが、超獣神は、パワーレベル無限大のバイオモンスター。ホーミングブリットも一切効かず、
その吹き出す炎に吹き飛ばされる二人。迂闊ガンモドキでは露払いにもならないと、ジックキャノンを構えるラスボスだったが、
超獣神の飛行に体勢を崩されて発動に失敗。その隙に超獣神の吹き出したガスで、なんと、逃げ遅れた人々が溶けて砂になってしまう……!
「これ、肥料よ!」
「肥料?」
「ええ。これ怪物に溶かされた人、肥料になっちゃってるの。高有機質の肥料に」
“人間の残骸”を分析するかおる、軽い、かおる、軽いわー(笑)
躊躇なく、元人間を鉢植えにかけました。
というか、基地の花、誰も世話していないのか(笑)
高有機質の人間肥料をかけられた花はまたたくまに元気を取り戻す。しかし果たして、敵の目的は何なのか?!
あれだけ強力なバイオモンスターを作り出すのはSSNの仕業に違いないと推測しながらも、その真意に悩むジャンパーソン達だったが、
そこへ助けを求める通信が入ってくる……。
その頃SSNでは、コマンド隊長・黒木率いる部隊によって、脱走者が皆殺しにされていた。
これまで鉄の結束、というか変態的忠誠心に溢れていたSSNも、最終盤を迎えていよいよ殺伐として参りました。
JP基地に助けを求めたのは、その脱走者の一人。男は駆けつけたジャンパーソンに「スーパーサイエンスネットワークの首領、
綾小路麗子の最終目的は人類絶滅計画」である事を告げ、持ち出したフロッピーディスクを託すが、
コマンド部隊によって殺害されてしまう。
襲い来るコマンド部隊に向け、サーチしないでジャンバルカンをぶっ放すラスボス(笑)
コマンド部隊はディスクの回収を諦めて撤退し、ジャンパーソン達は基地に戻ってその内容を確認する……そこに収められていたのは、
〔超獣神:開発試作コード〕という名の、これまでのSSNの研究成果の資料映像であった。そう、
てんでばらばら趣味で行われていたと思われた変態博士達の研究開発は、実は超獣神開発の為のプロジェクトだったのだ!
……あ、ニンジャとウラメシエネルギーと超能力は除いて下さい。
むしろこの3つを組み合わせたら最強説もありますが。
SSNの人類絶滅計画、そしてそれを主導する綾小路麗子とは何者なのか?
43話にして敵組織のボスの名前を知ったジャンパーソン達は、ディスクの中に、様々な分野の科学者のリストが入っている事に気付く。
詳しく調べると、○印のついた名前は行方不明となっており、×印のついた名前はなんらかの変死を遂げていた。そう、
○印の科学者はSSNの誘いに乗り麗子様の忠実な下僕と化した者達であり、×印は誘いを断った為に密かに消された者達なのだ。
ジャンパーソンとガンギブソンはリストの中で唯一、「?」とつけられた植物学者・倉橋歳三の元へ、綾小路麗子の情報を求めて向かう。
「お会いになった事がありますね、綾小路麗子に?」
「麗子は……私が育てた娘です」
麗子の父・綾小路博士は、40年前、倉橋とともに絶滅寸前のヒメハルソウを研究していた植物学者であった。
環境の変化に弱いヒメハルソウを何とか生育しようとしていた綾小路博士だが、綺麗な空気・水・土壌を必要とするヒメハルソウは、
もはや地球環境では育つ事が出来なくなってしまっていた。苦悩の末、博士はありったけの植物と、
お腹に娘――後の綾小路麗子――を宿した妻を連れて、宇宙ステーションへと移住する。麗子はそこで誕生し、
綾小路一家はステーションで生育したヒメハルソウやその他の植物に囲まれながら、幸せな生活を送ることなる。
なんと、
麗子様は宇宙ステーションで生まれ育った生粋のスペースノイドだった!
そして、自分の植物の研究の為に妊娠した妻まで連れて宇宙ステーションへ移住し、
子供を宇宙の無菌環境で純粋培養してしまう、と綾小路博士が明らかに凄いマッド!
またか! 歴史の影にはまたマッドなのか!
まあ、個人でさっくり宇宙ステーションへ移住できるぐらいなので、作中世界ではそこまで奇特な例では無いのかもしれませんが……
数十年後の世界で宇宙開発が進んでいる気配が無いところを見るに、
『ジャンパーソン』世界は何らかの事情で宇宙ステーションブームが過去のものになって、
人類が地球に閉じこもった世界なのかもしれません。やたらにヒューマノイド型ロボットの研究が進んでいるのも、
そもそもは宇宙開発分野で積極的に進められていた名残なのかも。
だが、幸せな日々は、麗子推定10歳ごろ、突然の悲劇によって引き裂かれる。軍事衛星の衝突(これは、
果たして事故なのであろうか?)によって宇宙ステーションが崩壊し
、ヒメハルソウの種子とともに脱出ポットに乗せられた麗子ただ一人だけが助かったのである……。
「この種を根付かせてくれ、おまえの手でもう一度地球に!」
地球では2年前に完全に絶滅してしまったというヒメハルソウの種と、
ステーションでの一家の生活の収められた8ミリビデオのフィルムを娘に托し、両親はステーションの崩壊とともに炎に消える。
「麗子! パパとママはこの8ミリの中にいる! いつまでもおまえの側にいて、見守っているよ!」
脱出ポットで地球へと辿り着いた麗子は倉橋に引き取られて育てられ、
成長とともにヒメハルソウを地球に根付かせようと研究に打ち込んだが、結局、汚染されていく一方の地球環境では、
ヒメハルソウを育てる事はできなかった。
ヒメハルソウはただの植物ではなく、綾小路麗子にとっては両親との思い出の象徴であり、
そして“死人と約束してしまった”事により、麗子の思いは徐々に妄執へと変質していく――
人類全体への絶望に。
「地球の環境汚染は、ひどくなる一方です。綾小路が信じるといった人間の英知は、結局なにひとつ働きはしなかったんだ……!」
ここで明かされる、麗子様の背景。
そしてジャンパーソンとスーパーサイエンスネットワーク(綾小路麗子)の戦いは、
人間愛を信じる者と人間に絶望した者の戦いである、という要素が浮かび上がります。
とりあえず倉橋博士をJP基地に匿おうとするジャンパーソン達だったが、「いや、私はここにいなければならない」と、
倉橋博士はそれを拒否。
10年前――地球環境の為に人類を絶滅させると宣言した麗子を倉橋は思いとどまるように説得したが、失敗。
麗子は「全ての準備が整った時、8ミリを取りにくる」と、フィルムを残して去っていたのだった。倉橋は麗子が8ミリを取りに来た時を、
最後の説得の機会にしようと賭けていた。
かなり強引な老けメイクの倉橋博士は、なるほど回想シーンがメインという事か(^^; おそらく設定上これ、
70歳ぐらいなのだろうなぁ……どう老けメイクしてもさすがにそうは見えませんが(^^;
麗子の残していった8ミリ……綾小路家のファミリームービーを見せられる、二人のロボット(笑)
久しぶりに友人の家を訪れたら親バカ全開の子供の成長記録ムービー始まってしまった的な困った空気が漂うが、
そこへ襲撃してくるSSNコマンド部隊。JPとGGは博士をかばいながら迎撃に飛び出し、その間に、麗子は8ミリを回収。
凄くさらっとコマンダー黒木を撃つガンギブソンだったが、幸いバイオモンスター。
そして、遂にラスボスの前に姿を現すスーパーサイエンスネットワーク首領・綾小路麗子。
「おまえが! スーパーサイエンスネットワークの首領、綾小路麗子か!」
JPさん、麗子様は一応人間扱いで、GGが脊髄反射で撃とうとするのを阻止。
まあ多分それ以上に、地球を愛する麗子様の言い分を、人間愛を信じるラスボスとして聞いてみようとしている節あり。
「お久しぶりです倉橋博士。永遠のお別れを言いに参りました」
「考え直してくれ麗子! 人間も、おまえが愛する地球の一員なんだ!」
「はっ、勝手な事を。その人間が地球を蝕むだけ蝕み、泣かせたんじゃない! 気付かないふりしないで!」
「人間が地球を泣かせた……」
新しい思想に、ちょっと考えるラスボス。
麗子は地球上からそんな人間を絶滅させ、文明の名の元に築かれたビルや道路など、全てを破壊する事を宣言する。
「そして私は種を蒔くのよ。剥き出しとなった大地に――この手で種を。やがて種は芽を吹き、根を張り、
地球を緑で覆い尽くす。私に溶かされて肥料となった人間達を養分にして」
「この手で種を」の時の表情が超素敵。
「私に溶かされて……? 人間たちを養分に……?」
「私は緑の地球を甦らせる……地球を人間から奪い返す! 今の私は地球の守護神、その名は……
ちょーーーじゅーーーしぃん!」
スーパーサイエンスの力によって、黄金の怪物へと変貌を遂げる綾小路麗子。そう、超獣神の正体は、
綾小路麗子そのものだったのだ!
この真相を知らなかったのか、コマンド部隊も仰天。
そして超獣神の吐き出すガスを受けて、あっさり肥料と化す倉橋博士。
今回はJPさん、全然人間を守れておりません(^^;
まあ、ラスボス的には愛の力で麗子を説得できなかった倉橋博士は人間失格なので、守るモチベーション低かったっぽい。
人間を抹殺すると共に地球環境再生の為の肥料にするという、シャ○・アズナブルもビックリの、
エコかつ一石二鳥な、恐るべき、麗子様の人類絶滅計画! 果たしてラスボスは、
超獣神に打ち勝つ事が出来るのか!!
急に明かされた背景で、実に後付けっぽく(実際、後付けでしょうし)いきなり壮大に「地球のため」とか言い出すと、
だいたい陳腐かつチープになりがちなわけですが、麗子様の設定をぶっ飛んだ所――なんと生粋のスペースノイドだった!――に置く事で、
発言の数々に説得力を持たせるという、脅威の力技。
作品世界の設定には若干の無理は出ましたが、良くも悪くも、懐が広いのが『ジャンパーソン』世界。
このぐらいはフォージャスティス!
人間の愛を信じる者、と、人間に絶望した者、という今作らしい対比が生まれたのも良かった所です。
それにしても、ここでまさかの『逆シャア』展開とは……(笑)
- ◆第44話「燃える女王様!!」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男/増田貴彦)
-
どうしてこのサブタイトル……!
そして何故か、前回と連名の表記順が逆になった。
超獣神に押されまくるジャンパーソンとガンギブソン。というか、ガンモドキが本格的に何の役にも立ちません。
再びジックキャノンを構えるラスボスだが、発動を一瞬躊躇った隙にコマンド部隊の攻撃を受け、逃げられてしまう。
「どうして撃つのをためらった?」
「俺はあいつを……綾小路麗子を知りすぎてしまった。綾小路麗子は守ろうとしているんだ。緑の地球、地球の命を。
自分の体を怪物にしてまで。その悲壮なまでの決意が、一瞬俺に引き金を引くのを躊躇わせた」
麗子様に、人間愛の一つの形を見てしまうラスボス。
「いいかジャンパーソン、やつは化けもんだ。片っ端から人間を溶かしまくる、化けもんだ! それ以外の何者でもねぇ。
何が……何が地球の守護神だ!」
無限のパワー持つ超獣神であったが、かおるの分析によると、一体では幾ら何でも人類を絶滅させるのは難しい。綾小路麗子は、
人類絶滅の為にまだ何か策を用意している筈……。
「あの装置さえ完成すれば、間もなく私は神となる。ほほほほほほっ、神となって、人間を、地球を蝕み続けてきた害虫どもを、
一匹残らず滅ぼすのよ! もう泣かせはしない。わたしの地球――」
愛情の果ての妄執から、遂に神を名乗らんとする麗子。その最後の一手とは、無限のエネルギーを利用したワープ装置にあった。
途中で、政府中枢にバイオ兵士を送り込むぞ作戦を推進していた麗子様ですが、どうやらそれも、ワープ装置研究の一環であった模様。
あ、ニンジャとかウラメシエネルギーとか超能力は(以下略)。
まあ、伝説の勇者ほらだは、個人技でテレポート(ルーラ)できましたが。
「今わたしは遂に、神へのステップをのぼるの」
調整中のワープ装置を使用した超獣神は、無差別攻撃を開始。次々と人間を肥料に変えていく。
「もう俺は躊躇わない。この手で、この手で必ず倒す!」
その光景に打って出たジャンパーソンとガンギブソンだったが、超獣神は二人をあざ笑うかのように神出鬼没のワープを繰り返す。
「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス! 超獣神、俺はお前を許さない!」
ジックキャノンを発動するが、それすらもワープにより回避。だが、かすめたキャノンの一撃は超獣神に確かにダメージを与え、
その間にかおるがワープステーションの所在地を確定する事に成功。超獣神の暴虐を止めるべく、
いよいよジャンパーソン達はSSNの心臓部へと殴り込む。
「会ってみたいの、綾小路麗子って人に!」
(というか、このままだと私のヒロインの座が危ないの!)
カチコミに同道を願うかおるの決意を汲み、SSNのアジトがあるとおぼしき場所へ向かう3人+アールジーコ。
ここでBGMは挿入歌「正義のために」。登場の遅かった挿入歌ですが、まさしくジャンパーソンという歌で、
実によくはまります。
アジトへの入り口を発見した一行だが待ち伏せをくらい、バイオ兵士軍団の攻撃でアールジーコは吹っ飛んで損傷、
ガンギブソンは哀れ崖下へ真っ逆さま。結局迷惑だったかおるが捕まって人質にされ、ジャンパーソンは投降。
二人はジャンパーソンさえ破れない超電磁バリアの檻へ閉じ込められ、そこへ麗子様が姿を見せる。
牢屋の格子越しに、人類絶滅の大演説を謳う麗子様が、非常に熱演。
「私は神! 命あるもの全てを司る、地球の守護神なのよ!」
「おかしい、あなたは絶対おかしい!」
キ○ガイ、キチ○イを詰る。
「おだまり恥知らずが!」
「恥知らず?!」
かおる、超不快そう(笑)
「人間は全て恥知らずよ! 驕り高ぶった、愚かで、恥知らずな地球の害虫よ!」
ビルゴルディ登場編でちらっと書きましたが、今作の裏テーマって多分、「本当のモンスターは一体誰か?」なのですが、
様々な紆余曲折を経て、ジャスティスという名のモンスターと、地球の為に自ら変貌したモンスターの対決を通して、
本当のモンスターは人間ではないのか、という部分が問われる、という地点まで来たのは感慨深い。
なお、かの有名な『寄生獣』(岩明均)の広川演説よりも少々早く、創作におけるシンクロニティと、
90年代前半の“時代の空気”というのを思う所です。
「私は宇宙で生まれたわ。暗闇の宇宙で。物心がついてから、宇宙ステーションの窓の向こうに、
いつも私は遠く地球を見ていた」
宇宙で生まれ、地球を両親から聞く憧れの地として育ったからこそ募り膨れあがった綾小路麗子の妄執。
前回、“脅威の力技”と書きましたが、ただのキチガ○でも気宇壮大なだけの悪役でもなく、
綾小路麗子を設定上無理のない範囲で“純然たる地球人とは別の視点を持つ存在”とする事で、
その発言と思想に彼女なりの説得力を持たせるという、凄まじい展開。
この2話だけで出てきた設定なのに、全てをねじ伏せて納得させるという、物凄い荒技。
環境テロリストテーマというのは(特に今日見返すと)安易に使って安っぽくなりがちなのですが、
背景設定に驚天動地の物理トリックを組み込む事で、それを物語の中に見事にねじ込んで、豪快にストレートを放り込んできました。
超展開(いい意味で)。
ちなみに、漫画『寄生獣』が90〜95年連載、今作が93年で、アニメ『起動武闘伝Gガンダム』が94年、
やはりそういう時代だったのかなぁと思うのですが、こういった環境テロリストテーマを含んだ作品の流れというのも、
並べてみたい気はします。というか、詳しい人がどこかで並べていてくれないものか(笑)
「私は信じた。私は憧れた……地球に。10歳の時その両親が死んだわ。私はひとり地球に戻った。
初めて地球の土を踏んだわ。でもそこは私が夢見たような星ではなかった。緑は破壊され、山は抉り崩され、命の芽吹く筈の大地は、
固く封じ込められ、私は聞いた……確かに聞いたのよ! 地球の泣き叫ぶ声を。血を吐き、
のたうち回りながら救いを求める地球の声なき声を。誰がいったい地球を泣かせたのよ!」
綾小路麗子はその理想と高潔さゆえに人間を見限った。
しかし……科学や技術は人間の愚かさを補うためのツールの筈だ。それを信じていればいつかは……と、かおるに反論させるのですが、
かおるは最初が最初すぎたので、その後じわじわと路線修正を計ってはみたものの、
やはり思いついた綺麗事を言っているようにしか聞こえません(^^;
かおるが人間の英知を信じた結果としてMX−A1をジャンパーソンに再生させた、というのならここで鮮やかな対比になるのですが、
むしろ人間の英知を信じていないからジャンパーソン作ったとしか思えない為、説得力0むしろマイナス(笑)
確かMX−A1を廃棄した人間の身勝手さに怒って再生させていたような記憶があるのですが。
ここばかりは、作品の根っこ(14話以降の再起編における土台)なのでどうしようもない。
最終盤、何とか、「三枝かおる」を物語の中に柔らかく収めようという苦心は見えるのですが、やはり、
手遅れだと思います。スタート地点から、あまりに地下を走りすぎていたというか。
「人間に英知などありはしない!」
「ある! 地球を泣かせたのが人間なら、その地球をもう一度救えるのも人間なんだ!」
後むしろ、かおるが綺麗だと、ジャンパーソンの発言がかおるの受け売りっぽくなってしまうのも良くないわけで、
あくまでかおる(制作者)より、ジャンパーソンの方が人間(の愛)を信じているというのが、今作の根本的面白さではあります。
作り手もそれは把握しているだろうから、結局のところ、かおるの説得というのは成功しないわけですが(^^;
「ジャンパーソン、三枝かおる、もう人間が地球のためにできる事は、一つしか残っていないのです。ふふふっ、私に溶かされ、
肥料となって大地の養分になる事しか」
「その結論は間違ってる!」
ジャンパーソンの必死の制止も空しく、麗子の決意に揺るぎはない。そこに、ワープ装置の準備を完了させた麗子様の下僕達が入ってくる。
「ありがとう! 今日までよくやってくれましたみんな!」
「麗子様、旅立つ前に、どうぞ私たちに最後のお慈悲を!」
揃って、麗子様に溶かされる事を希望する科学者達。
格好いい、格好いいなぁSSN……! どこかのポンコツ組織とは大違いだ!
「これで私達も、地球の栄養になれる」「麗子様「麗子様「麗子様ぁ」
超獣神に変貌した麗子様によって、嬉しそうに肥料にされる下僕一同。
ちなみにこの時、一同の先頭に立って溶かされた広瀬博士を演じているのは、今をときめくワイルドタイガー平田広明。
超獣神はいよいよワープ装置の中へ入り、JPとかおるを始末する為にコマンド部隊が現れるが、
その時、壁を破壊してガンギブソンが突入してくる!
役に立った!
ハイもう一度……
役に立った!
ガンギブソンは外から檻を破壊し、ジャンパーソンはすかさずワープ装置を破壊(超重要アイテムの筈なのに、
超獣神のリアクションが薄かったのは残念)。三枝組の反撃開始で主題歌が流れ出し、戦いの部隊は外へ。
ガンギブソンはコマンド部隊と戦い、かおるはアールジーコを捜し、ジャンパーソンは超獣神と激突。
「もう終わったんだ。人間に戻るんだ綾小路麗子!」
「誰が戻るか! 私は超獣神! ワープなど出来なくても、片っ端から人間を消してやる!」
「考え直すんだ。おまえほどの科学力があれば、別の方法で地球の環境を……!」
「うるさっい……ジャンパーソン! おまえさえ居なければ、地球を救えるんだ!」
ラスボス、遂に地球の敵に。
クライマックスバトルは、超獣神が格好良さよりも不気味さ寄りなのと、この後に控える<ネオギルド>戦、
ビルゴルディ戦を意識してか、取っ組み合いは今ひとつ盛り上がらず。JPさんが麗子様に手加減しているというのもありますが。
ただその中で一応、ラスボスの口から“選べたかもしれない、そして今からでも選び直せる筈の、もう一つの道”が提示されるのは、
しっかりとした作劇。
コマンド部隊の包囲連携攻撃で今日も盛大にGGさんが死にかける中、かおるはアールジーコを回収して緊急修理。
ラスボスはジックキャノンの砲口を超獣神へと向ける。
「止まれ……止まるんだ!」
だが、綾小路麗子はもはや、人間全てを肥料にするまで止まれない。
「……――眠れ、超獣神! ジックキャノン!!」
覚悟を決めたジャンパーソンの放ったジックキャノンは超獣神を直撃し、深いダメージを負わせる。
コマンド部隊は超獣神をガードに入った所で、遠距離からスピンドルキャノンを受け、一網打尽に。
よろめきながら逃げる超獣神に追い打ちを入れようとするガンギブソンを止める、ジャンパーソンとかおる。
前後編通じて、ジックキャノンが当たれば終わり、という戦闘バランスを崩さず守ったのは、細かく良いところ。
……無限大エネルギーのバイオモンスターすら、ラスボスの火力の前には虫同然、という
無慈悲なヒエラルキーですが。
しかもラスボスの最強技って、精神注入棒の時に見せたジャンパーソンフルバーストではないかと思うので、
多分まだ本気出してない。
致命傷を受けて本部に戻り、超獣神の姿を保てなくなった麗子は、残された最後の力で8ミリのフィルムを再生する。
「わー、きれい! 地球には広いお花畑がいっぱいあるんでしょ? あたし、
パパとママと一緒に思いっきりお花畑を駆け回ってみたいな」
そこにあったのは、家族の記憶、暖かい思い出、失われた夢。
「泣いている……わたしの、わたしの夢見たっ、わたしの、憧れた……わたしの、愛した! 地球がっ……な、泣いている!」
部屋に飾った地球の写真パネルへと伸ばした手は虚空をもがき、綾小路麗子、絶命。
末期の芝居をたっぷり、というのは悪役冥利に尽きるといった所でしょうか。全編通して本部の机で一人芝居、というのが多い中、
見事な存在感と迫力でありました。
椅子に倒れ込んだ麗子様、何故か変な化粧まで取れて綺麗な白いドレス姿に。
そしてフィルムは幼い日の彼女の姿を映し――
「パパ、ヒメハルソウの花が咲いたよ!」
途切れる。
麗子の亡骸が握りしめていた、ヒメハルソウの種子を手にするジャンパーソン。
「綾小路麗子……俺はおまえに誓う! この地球を必ず、必ずこの花が根付けるような星にしてみせると!」
この時、ガンギブソンがちょっと離れた位置に立っているというのがいい。
超獣神化の影響か、麗子の死体は粒子となって消滅し、スーパーサイエンスネットワークはここに壊滅する。
最後はややマイルドめで、しかしジャンパーソンの台詞が格好良く締めました。
劇中でやってきた事を考えれば、フィクションの因果応報としては死んで当然の麗子様なのですが、
一貫してJPさんが麗子様に優しいというのは、この前後編の特徴的なところ。
宇宙ステーションで培養された麗子様のイノセントな狂気は明らかにジャンパーソンとの対比であって、
“生まれに歪められた者”へのJPさんの自己投影と一貫した優しさがよく出ています。
ゆえにジャンパーソンは麗子に“生まれ変わって”欲しくて、最後の最後まで説得を試みた。
一方で、罪を償って生まれ変われば何でも許されるのか、という部分における危うさはあるのですが。
で多分、ラスボス的に今回のデリートは自らのタブーを犯した――人間にジャスティス執行した感覚でないかと思われるのですが、
その辺り、最後の戦いになるであろうビルゴルディとの対決の、布石になるのかならないのか(真壁も人間ぽいけど、現状、
ガンギブソンとの相撃ちが濃厚ですし)。
従来ならあっさりジャスティス執行していたであろう麗子(超獣神)に対し、それを躊躇ったのはジャンパーソンにとっての
「揺らぎ」であって、おそらく今回の前後編は、ラスボスにとって改めて自分の「ジャスティス」
について考える話でもあったのかと思うのですが、その辺り、拾うのか拾わないのか、どちらにせよクライマックスの展開が楽しみです。
まあ、布石を置くだけ置いて放り投げる場合もあるので、期待しすぎない方がいいかもしれませんが(笑)
様々なひずみの出る1年間の特撮ヒーロー作品において、ひずみを承知で盛り込んだ背景設定の巧みさでウルトラCの着地を決めて見せる、
という見事なSSN最終章でした。
次回、
「ネオギルド最終最大最後の作戦」
「まさにラストオブネオギルド」
「ジョージ真壁究極の作戦」
どこまで盛るんだ(笑)
- ◆第45話「衝撃!!処刑の街」◆ (監督:金田治 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
-
真壁を捜して家出をしたガンギブソンは、ブラボータウンに辿り着く。そこは人間とロボットの共存する街……の筈だった。
ロボットが人々に追われ、リンチを受けている姿を目撃したガンギブソンはそれを止めようと乱入するが、
逆に助けようとしたロボットに腰の銃を奪われてしまう安定の迂闊ぶり。そこを元教師ロボット・ロイドに助けられたガンギブソンは、
リンチを受けていたロボットとともに、ロボット安酒場へと連れていかれる。
「この街では、ロボットはあまり騒がないほうがいいな」
1年前、街外れに建てられた呪いの塔。その塔から発せられる電波はロボットの運動回路を破壊する効果を持っており、それ以来、
ブラボータウンでは共存の理想は崩れ、ロボット達は人間によって支配されているのであった。
そもそもロボットの人権がかなり認められている(としか思えない)『ジャンパーソン』世界で、人間とロボットの共存する街、
と言われても微妙にピンと来ないのですが、恐らくはロボットの人権問題について先進的な活動を進めたモデル地区、とか、
そういった所か。
だが、その地区は今や、見る影もない無法地帯へと堕していた。
「なぜ立ち上がらない?」
さらっと人間への反攻をそそのかすガンギブソン。
その言葉に、一斉に銃を構える酒場に集うロボット達。実は彼等はロイドをリーダーとするレジスタンスであり、
これまでは戦力不足から手をこまねいていたが、ガンギブソンの来訪をこれ幸いと、
彼を仲間に引き入れて反攻の狼煙をあげようとしていたのだ。しかしGGの目的はあくまでジョージ真壁への復讐……
仲間入りを拒んだガンギブソンは外に出た所で、ロイドを慕う少年・祐二から声をかけられる。かつてロイドの教え子だった祐二は、
争いを憎み愛と慈しみを説いていたロイドがおかしくなったと、ロイドを止めるようにガンギブソンに頼むのであった。
……うんまあ、活動家としてはそれほど珍しくない気もします。
無法の街にやってくる流れ者のガンマン……という今作の初期コンセプトに存在したと思われる西部劇をなぞる展開なのですが、
街の外へ脱出できない理由が特に提示されていない為(GGさん普通に入ってきてるし)、武装蜂起まで追い詰められる理屈が少々弱い。
肝心な部分なので、ここは何か理由をつけて欲しかった所です。舞台と状況設定は面白いのに、どうも詰め足りない(^^;
その夜、酔っ払いロボットが奪われたガンギブソンの銃で殺され、それをきっかけにロボットと人間の対立が加熱。
衝突寸前の状態まで行く両者の様子を窺っていたガンギブソンは、人間サイドの不意打ちを受け、ジープから鉄鎖で引きずり回される。
一方、<ネオギルド>がロボットによる世界征服を目的としているなら、どこかで人間とロボットの全面戦争を始めようとする筈……
と探りを入れていたJP基地では、ブラボータウンの異変をキャッチ。それこそ<ネオギルド>の陰謀に違いない、とラスボス出撃。
走行するジープに引きずり回されるガンギブソンのシーンは迫力たっぷりで、今回最大の見所(これも西部劇である)。
なんとか脱出に成功したガンギブソンは、ロボットの迫害を扇動し、ブラボータウンで人間とロボットの対立をあおっていた者達の正体が、
<ネオギルド>のロボットである事を知る。バイクと一緒に奪われたスピンドルキャノンで吹っ飛ばされそうになるが、その時、
風を切るJPカード!
「そいつらネオギルドのロボットだ!」
うん、聞く前にシャドージェイカーで思い切り轢いたけどね。
駆けつけたジャンパーソンは暗殺ロボット達を蹴散らすが、街では緊張状態が限界に達し、抗争の火花が切って落とされてしまう。
「人間対ロボットの戦争が始まっちまったんだ!」
うーん……うーん…………例えば『ジャンパーソン』世界で一般的には、人間型ロボットがそれほど社会の一員扱いされているわけではないけれど、
このブラボータウンでは一歩進んだ共存がなされている。しかしその、ロボットにとっての理想郷といえる街で……
という展開ならわかるのですが(たぶん脚本サイドはそう志向している)、これまで散々、
人間と区別つかないロボットが人間社会に混ざりまくって一般に受け入れられてきたので、ブラボータウンの特異性が全くなく、
どうにもここまでの作品世界とピントが合っていません。
監督が初参加の金田治というのも、これまでの世界観の把握という点で、悪い方向に働いている感じ。
せめてロイド先生がロボットヘッドだったらまた雰囲気違ったかと思うのですが、ロイド先生は人間類似型だし、
そもそもロイドを慕う祐二少年が人間なのかロボットなのかも、この後のシーンまでわからないという始末。
見た目では区別のつかない人間類似のロボットとそうでないロボットが特に理由なく(主にメタ的なキャスティングの都合で)
混在しているという番組都合でやむを得ない作品世界の欠点が、人間とロボットの交流というテーマにおいて、悪い方向で噴出した形に。
そしてロボット達とサブマシンガンで撃ち合う人間達(笑) レスキューポリスシリーズの世界観の延長線上にあるといえばさもありなんですが、
ロボットとか関係なく無法地帯すぎるぞブラボータウン。
まあこれまでも、全てが危なすぎるロボット刑務所とか、謎の宇宙開発頓挫?、などありましたので、
恐らくこのブラボータウンも革新政権時代に作られた特区で、法律の問題でその後も残ってしまった歴史の闇の残滓か何かかと思われますが
(だから一般人が近づかず、都市内部で閉鎖的なコミュニティが完結している)。
抗争が激化する中、呪いの塔が発動。次々とロボット達が苦しみ倒れるが、ジャンパーソンとガンギブソンには何の影響も及ぼさない。
そして武装蜂起を扇動するロイドもひとり何事もなく、呪いの塔へと歩みを進めていく。それを見たガンギブソンは、
ロボット酒場で皆が口にしていたアルコールオイルの存在に気付く。呪いの塔はロボットの運動回路を破壊しているのではなく、
特定のアルコールオイルを飲んだものにだけ不具合を発生させているのだ! そう、
自分は口にせずに街のロボット達にアルコールオイルを振る舞っていたロイドこそネオギルドの一味であり、
ロボット側からこの暴動を仕組む工作員だったのだ。
ロイドは手はず通りに呪いの塔を破壊し、制圧される人間達。そしてそこに、革命の支援者として姿を見せるジョージ真壁一行。
人間に不当な忍従を強いられてきたロボット達に暴動を起こさせ、勝利を味わわせる。
そしてこのブラボータウンから暴動の火を世界各地に拡散させ、革命の炎とする。それこそが、<ネオギルド>最終作戦!
作戦計画自体は面白いのですが、どうもこう、上述してきた理由の積み重ねで、これまでの作品世界と巧く繋がっておらず、
盛り上がりきれない感じに。今作ぐらいはっちゃけた世界観なら、都市一つで暴動などとケチな事を言わず、
日本全国でいきなりロボット革命の火の手を上げるぐらいで大丈夫だったと思います(笑)
結局これが、<ネオギルド>の限界なのか……!
最終作戦の第一段階発動に満足げな笑みを浮かべるジョージ真壁。だがその前に、ラスボスとガンギブソンが立ちふさがる。
次回、ラスト・オブ・ネオギルド!
- ◆第46話「NG(ネオギルド)最終決戦!!」◆ (監督:金田治 脚本:宮下隼一/鈴木康之)
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ロイドをサーチしたジャンパーソンは、彼が暴動を操る為にネオギルドによって第二の人工知能チップを埋め込まれ、
人格改造を受けている事に気付く。その他、真壁に誘導されているだけのロボットを撃つわけにはいかない、と仏心を出すJPさんは、
祐二少年の案内で街外れの廃屋に逃げ込む。10年前から放置されているというその廃墟で、ジャンパーソンは一枚の家族写真を発見。
そこに写っていたのは、中年男性と二人の子供、一体のロボット。そして背景に書かれていたのは「真壁慎一郎」の文字。
まさかこの二人の子供は、ジョージ真壁とベン藤波なのか? ジャンパーソンはかおるに真壁慎一郎についての調査を依頼する。
回想で、久々に登場のベン藤波、改めて物凄いインパクト(笑)
にしてもこの写真は、前回の内に見せても良かった気がします。
人々を救出しようとするジャンパーソンとガンギブソンだったが、ロイド以下の攻撃を受け、囲まれてしまう。
「かおるとアールジーコによろしくな。あばよ坊主!」
ジャンパーソンに祐二の護衛と人々の救出を任せ、囮を兼ねて突撃するガンギブソンだったが、
真壁率いる<ネオギルド>のロボット軍団の攻撃を受け、追い詰められる。銃を撃とうとするも右腕を吹っ飛ばされ、
地面に落ちた腕が引き金を引こうともがく、というのは格好良い演出。
蜂の巣にされるガンギブソン、真壁によるトドメの一撃が迫るが、その時、風を切るJPカード!
人々を無事に救い出したジャンパーソンが間一髪間に合い、結局、市民ロボット達も含めて実力行使で完全制圧。
泡を食って逃げ出す真壁の前に立ちふさがる、ジャスティスの化身。
「おまえは人間だったのか」
かおるの調査によって判明した事実……それはジョージ真壁がロボット工学の権威・真壁慎一郎の息子であり、弟のベン、
執事ロボットのボニーとともに、20年前、このブラボータウンで一家仲良く暮らしていた、という事実であった。
だが悲劇は突如、一家に襲いかかる。
買い物途中に公務執行妨害を行ったボニーが、警官の銃撃を受けてパニック状態に陥り、拳銃を奪って子供を人質に取る行為に及び、
射殺されたのだ。この事件の責任を追及された真壁博士は、世間の糾弾に対する悲嘆の中、病死。
残された兄弟は追われるように街を出る事になった……。
「罪を犯して、追われ、傷ついたロボットを偶然介抱したせいで……」
いやいやいやいや。
回想シーンではどう見ても、目の前でロボットを取り押さえた警官を突き飛ばしているのですが、
これが悪質な公務執行妨害でなくて、何なのか。
道で倒れているロボットを見つけて介抱していたら警官が駆けつけて誤解された……ならわかりますが、
全くそんな映像になっていないので、非常に意味不明。
なおこの、物語上では悲劇に同情させるべきなのに、シナリオと映像が全然そうなっていない為に根本的な所が激しく破綻している、
というのは『特救指令ソルブレイン』第45話「標的は小さな証人」で、同脚本コンビがやらかしています。
(※無謀運転の対向車の為に交通事故に巻き込まれた少女が、原因は対向車ではなく自分の父親と断定された事で警察不審に陥る物語だが、
この父親は飲酒していた上に、どう回想映像を見ても娘に気を取られて脇見運転している。)
映像演出の問題も含むので脚本だけの不手際とは言い切れないのですが、時を置いて、違う監督で、ほぼ同様のミスをしているので、
脚本の問題と言って差し支えなさそう。
後ぽっと出の同年代の子供の区別などつかないので、ジョージがボニーに人質にされた方なのか、
或いはそれを見ていた方なのかわからない、というのも地味にマイナス(こちらは演出のウェイトが大きいけど)。
まあ、突き飛ばされていきなり銃撃する警官も警官ですが、なにぶん20年前の話なので、この当時のロボットの人権は、
そんな扱いだったのかもしれません。というかその辺りの要素も盛り込めば深みが出たのに、そういう事も無し。
そして混乱していた?とはいえ警官の銃を奪い、自分の仕えていた子供を人質に取るボニーは、
明らかに人工知能に欠陥があり、真壁博士は糾弾されて当然。
むしろこの展開なら、家族とも思っていたロボットに裏切られた兄弟がそのトラウマから、
ロボットを奴隷のように支配しつつ更にそのロボットに人間を支配させる、というねじくれた願望に突き進む、
ぐらい歪めた方が面白かったと思うのですが、ちょっとしたボタンの掛け違いで大事なロボットと幸せな家庭を奪った人間社会とこの街への復讐が動機だろう、
とごく普通に収めてしまうJPさん。
「違う……違う……違う! ぬぁぁぁぁぁ!!」
感情的な復讐を否定し、ラスボスに突撃するジョージだが、軽くいなされる。
自分が求めるのは復讐ではなく力だ、と吠えるジョージ。だが……
「そんな力に……愛や慈しみを無くしたそんな力に、未来はない!」
あ、自分、全否定した。
力の権化として正義を執行してきたラスボスが、無力な小悪党を身も心も叩きのめす、という悪魔のような展開。
まあ何というか、どこまでも覇道を往くヒーローです。
「俺が見たのは……目的の為なら手段を選ばず、人間も、ロボットも利用しようとする、おまえの卑劣な陰謀だ!
ジョージ真壁、俺はおまえを許さない!」
ラスボスに追い詰められるジョージだが、まだくじけない。
「既に火の手は上がった。時間の問題で全面戦争が幕を開ける。それに勝利するロボットが人間を支配し、
そしてそのロボット達をこの私が支配する。ブリキではない、この私の肉体が!」
一生懸命鍛えた肉体で、ラスボスに必死で殴りかかるジョージだったが、全く無効。
愛を見失った人間が、超魔王ジャンパーソンに傷を付ける事など、出来はしない!
力とは何か?
正義とは何か?
力が正義だ!
更にやってきたガンギブソンに首根っこを掴まれ、大ピンチに追い込まれるジョージ。だがそこへ、祐二を人質にしたロイドが現れ、
真壁の解放を迫る。真壁は自由を取り戻すが、祐二少年の必死の呼びかけにロイドの封じられていた電子頭脳が活動を取り戻し、
祐二を解放。少年に銃を突き付け、やがて下げるロボット……その姿に過去の自分を思い返す真壁は愛用の鉄球をロイドへと投げつける。
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
あの鉄球、ホントに最後の武器だった。
車で乗り込んできたかおるに危うくトドメを刺されそうになりながら、必死に逃げ出す真壁。
ブラボータウンの地下に隠されていた<ネオギルド>のアジトに辿り着くが、もはや、その身を守るロボットは一体も居ない。
つくづく<ネオギルド>最終作戦って、<ネオギルド>側の準備が整ったのではなく、
ジャンパーソンに追い詰められた結果の文字通りの最後の作戦であったという事が窺えます。
「何が力だ! 結局おまえは、この街から離れる事の出来ない、ただの甘えた子供に過ぎなかったんだよ!」
ガンギブソンにまで罵倒され、真壁様、心身ともにフルボッコ。
ガンギブソンは真壁に銃口を向けるが、ジャンパーソンはそれを止める。
「人間だから撃つなってか……冗談言うな! こいつはキャロルの仇だ、復讐の相手なんだ!
やっとそいつが果たせるんだ……俺はこいつを撃つ!」
「そうじゃない! もう戦いは終わった。ネオギルドは壊滅したんだ。今更……今更この男を倒す意味は無い!」
……あれ、本当にもう、地上でジャンパーソンが制圧した分で、最後の戦力だったのか(^^;
それにしてもかつて、最終決戦でここまで
ゴミのような扱い
を受けたボスキャラ(3分の1とはいえ)が居たでありましょうか。
「俺は誓ったんだ! キャロルの墓に、ジョージ真壁を倒すと!」
ガンギブソンはジャンパーソンを振り切って引き金を引く……が、その銃弾は真壁のヘアバンドをかすめただけに終わる。
「キャロルが止めたんだ……そんな事しちゃ駄目だって。あいつが……そう言った気がしたんだ」
ジョージ、ガンギブソンにすら、殺す価値もなし扱いを受ける。
ボスキャラとしてあらゆる権威を破壊し尽くされ、組織もプライドも力も全てをラスボスの猛威の前に否定されたジョージは、
ゆらりと立ち上がる。
「まだだ……まだ戦いは終わってはいないぞ。貴様らも、この街も、全て地上から抹消してやる」
最後は自爆装置をぽちっとな。
大爆発が、街を、<ネオギルド>本部を破壊していき、JPとGGはグランドジェイカーを召喚して脱出。
「ボニー……ベン……ボニー……」
真壁は引き出しから家族写真を取り出して見つめながら、炎の中に消えるのであった……。
ここに<ネオギルド>は壊滅、ブラボータウンも大損害を受けるが、正気を取り戻したロイドの指導のもと、
人々とロボットは再び手を取り合って街の再建の為に立ち上がるのだった。
「終わったな……」
「いや、始まったのさ。ガンギブソン、おまえもな」
ロボットと人間の融和は、街の復興を通じて、再びここから始まるのだ……。
そして、復讐を終えたガンギブソンの新たな人生も。
この重ね合わせ自体は悪くないのですが、しかしこれなら、やはりロイド先生はロボットヘッドでやるべきであったろうな、と。
演技させる都合などもあったのでしょうが、自分達の積み重ねてきたものを信じきれずに、中途半端な事をやってしまった感。
『特救指令ソルブレイン』以降、ろくな事が無い最悪の連名脚本として私の中で確固たる地位を築いている
〔宮下隼一/鈴木康之〕の組み合わせですが、本当にこの後ろの人は何? 宮下隼一の弟子とかなのでしょうか。
2年連続で酷い事して、ここでまた最終盤に名前が出てくる事情が理解しかねるのですが、今回も酷い内容。
宮下脚本もそれほど評価していませんが、宮下さん単独の方が、遙かにマシ。
1年もので細かい伏線がすっ飛ばされる事はままありますが、第27話「大首領の正体!!」で触れた“生命の樹”
のエピソードを完全無視したのは、さすがにいただけません。前線にジョージが出てきてJP達と戦い、
実はそれはコピーロボットで……という展開上の重要さもさる事ながら、
生真壁がわざわざ植物学者のもとで助手として働いていたという過去ネタはキャラクターの背景に直接関わる部分であり、
そうまでして欲しがった永遠の生命エネルギーというのは拾わなければいけない要素でした。
また、幾らほぼ無かった事になっている1クール目の出来事とはいえ、
ジャンパーソンがベン藤波を思いっきりパニッシュしてしまっているので、そこも何とかフォローを入れなければいけなかったと思います
(例えば脳以外全て機械化していた、とかでもいいけど、それならそれで真壁が言及すべき)。
他にもロボットと人間の関係、その上で人間愛を信仰しているからロボットはジェノサイドされても構わないという思想のラスボス、
など、幾らでもJPvsジョージの対比において盛り込める要素があったと思うのですが、全く汲み取られず。
ロボットの為に怒るガンギブソン、という立ち位置も特に活かされないなど、積み上げてきた諸々をほとんど活用できず、
実に勿体ないシナリオ。
最初から最後までジョージはへたれでぽんこつだった、というのは合理的といえば合理的なんですが、
ジョージがあまりに情けなく終わりましたし、その情けなさが物語の面白さに繋がりませんでした。実は情けないヤツだった、
というのは構わないと思うのですが、それならそれを物語として面白くしなければならない。ごくごく単純に、
真っ正面からラスボスに粉砕されただけ、というのはあまりに残念。
特にスーパーサイエンスネットワーク最終章で麗子様が真っ向勝負でジャンパーソンの信念を揺るがしただけに、
ジョージの残念さだけが際立ってしまいました。
そんな残念なジョージが最後は自爆、というのも実に月並み。月並みそのものを否定するわけではないですが、
『ジャンパーソン』はもっと狂ってなくては面白くならないのです。ここまで40数話が狂いまくっていただけに、あまりにも普通。
つまり、狂気が足りない。どうせラスボスにゴミクズ扱いを受けるにしても、ボスキャラの最期にふさわしいもっと狂った展開が欲しかった。
ガンギブソンを殺さなかったのは評価しても良い所ですが、全体としては、
うーん……<ネオギルド>って劇中の重要度ヒエラルキーとしてはSSNより上なわけですが
(だからこの決戦ローテの順番自体は正しい)、その立ち位置の重要性を活かせない、「対立」も「選択」もない、
ただただ残念な最終章となってしまいました。
実質的に<ネオギルド>最終章は、ジーザス・エンド編だった、という事に。
なおベン藤波は4話のジョージの台詞によると「腹違いの弟」だそうなのですが、
ジャンパーソンがざっくり殺してしまった事から純然たる人間ではないと設定せざるを得ず、あれ……もしかして……お父さん、
ロボットに子供う(以下検閲削除)
次回、ヒロイン奪取の為に、かおる、起死回生・最後の手段に打って出る!
“風を切り 闇を裂く
紫の ロンリーウルフ”
→〔その10へ続く〕
(2014年10月5日)
(2017年4月20日 改訂)
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