■『特捜ロボ ジャンパーソン』感想まとめ6■


“風が唸る ガンが火を噴く
おまえがいるから ジャンパーソン 俺がきらめく


 ブログ「ものかきの繰り言」の方に連載していた『特捜ロボ ジャンパーソン』 感想の、まとめ6(28〜32話)です。全体的に長くなってきたので変則分割。文体の統一や、誤字脱字の修正など、 若干の改稿をしています。

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〔まとめ7〕 ・ 〔まとめ8〕 ・ 〔まとめ9〕 ・  〔まとめ10〕 ・ 〔構成分析〕


◆第28話「ウラメシ大作戦」◆ (監督:蓑輪雅夫 脚本:曽田博久)
 OPに、グランドジェイカー追加。映像を見るとどうもマリンジェイカー?もあるみたいですが、本編登場はいつになるのか。

 「幽霊退治?」
 「話によるとどうも。ポルターガイストみたいなのよね」
 「ははっ、かおる、君まで」
 信じてないけど、ドイツ語で〜とか解説始める、如何にもなかおる(乙女チック三つ編み)。
 ここで、かおるを軽く笑うジャンパーソン、というのは珍しい。
 深夜0時に幽霊が出る、という友人の家に泊まり込む周平だったが、問題の時間、どんどん、という壁を叩く音と共に、 家では確かに怪奇な現象が。
 真っ暗な背景にサブタイトルの文字が出て、そこに懐中電灯の光が入って本編に繋がる、という演出は秀逸。
 台所へ向かった周平達が目にしたのは、宙を舞うラーメン丼、ナルト、ネギ、そしてそこへ乗り込んで来る謎の白衣集団。
 というか、不法侵入。
 更に言うと、壁を叩いていたのはこの人達だった気がする。
 「やはり阿久津博士のポルターガイストだったのだ」
 白衣の集団の先頭に居た髭の男が、空中に浮かぶ丼と割り箸の辺りに向け、怪しげな機械を向ける。
 「ウラメシエネルギー、発射!」
 するとなんと、そこに浮かび上がる、これまた白衣の男。
 髭の男は、スーパーサイエンスネットワークの誇る天才(自称)であり、オカルト科学の権威・ドクター軽部!  軽部の使った光線により、阿久津博士は、三流ポルターガイストから正統派の立派な幽霊になったのである!!
 ……麗子様! 麗子様! また駄目そうな人ですよ!
 周平から事の次第を聞き、阿久津博士について探るジャンパーソン。
 もうすっかり、聞き込みに行くのも、聞かれた方が平然と受け応えるのも、普通になってしまいました。
 謎のヒーローはどこに!
 たぶん今頃、草葉の陰で、若林さんと小森警部と高井戸が泣いています。
 それこそ、化けて出そう。
 阿久津博士は空間ワープの研究者だったが、1年前に屋敷が大爆発。その際に建物全体が不思議な光に包まれて消失し、 中に居た妻子ともども、生存は絶望されていた。
 そしてそんな阿久津の幽霊を追っていた軽部博士の目的は、死んだ人間を幽霊にして、生前の研究を奪い取る事。
 ポルターガイスト→幽霊、としてしまったので、何が違うのかいまいちわからなくなりましたが(どうも、 ポルターガイスト=意識の散漫な雑霊で、幽霊=意志を持った明確な霊体、というのが『ジャンパーソン』世界の格付けっぽい)、 死者を降霊してお宝の場所を聞き出すとか、そういうパターンの亜流と考えればいいのか(^^;
 阿久津の空間ワープに関する研究を奪い、特殊部隊を自在にワープさせる事が出来るようになれば世界征服は目前…… 麗子様こだわりの方針を現実とするべく、阿久津を追う軽部。
 今回この、阿久津と軽部の両博士の造形・演技が非常に秀逸で、エピソードを面白くしています。
 生前の家族の思い出を胸に、幸せそうな一家団欒を襲う阿久津だったが、 そこへやってきたジャンパーソンは取り出したJPカードを投げつける。
 「ホーミングカード!」(?)
 台詞を言って投げたので何事かと思ったら、普通にサーチして、生体反応なし、を確認。
 一瞬、「モーニングカード!」と聞こえたので、最近忘れられているフラッシュ機能でお祓いでもするのかと思いました(笑)
 (※後のエピソードから、「WARNINGカード」と判明。)
 幽霊阿久津を追う、ジャンパーソンと軽部。
 軽部博士は明らかに『ゴース○バスターズ』なバキューム装置で阿久津を吸い込もうとするが、人魂攻撃による反撃を受け、 やむなく撤退。人魂攻撃はラスボスすら押し返すが、そこへガンギブソンが飛び込んでくる。
 「ジャンパーソン、遠慮せずに呼んでくれたっていいんだぜ」
 「頼りになるなら呼んでるさ」

 本音が(笑)

 「言ってくれるじゃねえか」
 阿久津を銃撃するガンギブソンだったが、霊体には実体攻撃は無効! 二体のロボを翻弄した阿久津は、 騒霊能力によりガンギブソンの銃を奪うと姿を消す。
 ……ガンマン、おい、ガンマン。
 その頃、大涌谷に、消えていた博士の家が出現! 現地へ向かったジャンパーソンと、大事な魂を奪われたガンギブソンだったが、 後先考えずに飛び込んだGG、家ごとワープして消えてしまう。
 役に立たなすぎる。
 そういえばJPさんは万能系ヒーローでかなり冷静な為、ここまでこういう“率先してトラップに引っかかる” というのが無かったのですが(ラスボスなのでトラップとか気にしない、はあった)、 ここに来て劇中の迂闊分が、全てガンギブソンに集中していく事に。

 ヒロインか、ヒロイン狙いなのか?!

 超空間を彷徨う阿久津家の中で、死んだと思われていた阿久津の妻子を発見するGG(迂闊、役に立つ)。 二人はワープ現象によって時間の停止した阿久津家の中で気を失っているだけで、死んではいなかった。ガンギブソンは 「母と娘はこの中で生きてるぜ!!」と写真立てにメッセージを書くと、家がどこぞの湖畔近くに出現した際に、それを投擲。 屋敷を追っていたジャンパーソンはそのメッセージを受け取るが、かおるの計測によると、阿久津家は段々と遠くへ遠くへとワープしていた。
 「もしかして、これは霊界に近づいている事を意味してるんじゃないかしら」

 どうして(笑)

 明らかに霊現象とか信じていなかったかおる、プライドの高さで表面上は冷静を装っていますが、かなり動揺している模様。
 一方、しつこく阿久津を追っていた軽部は幽霊を今一歩の所まで吸い込みかけるが、その時、風を切るJPカード!
 「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
 軽部一味をあっさりと追い散らすジャンパーソンだったが、阿久津が奪ったガンギブソンの銃が火を噴く!
 「幸せなやつらは呪ってやるんだ」と、すっかり立派な怨霊と化した阿久津博士に、妻子の生存を告げるジャンパーソン。 かおるの計算によると、ワープを繰り返す屋敷の次の出現地点は、恐山上空5000m。そこが恐らく、霊界への入り口!
 家族への想いを現世への怨念にするのではなく、家族を救う力にしてくれ、とジャンパーソンは阿久津博士を説得すると、 グランドジェイカーで恐山上空へと向かう。
 「阿久津博士、念じるんだ」
 もうさっぱり意味はわかりませんが、人間のラブが引き起こすミラクルを過剰に信じる、 というラスボスの姿勢は貫かれているので、そこには違和感がない、というのが凄い所(笑)
 愛の奇跡か、はたまた霊の導きか、恐山上空で、阿久津家の中へワープするジャンパーソンと阿久津博士。 内部のガンギブソンと無事に合流するが、ワープ装置の前には、自ら命を絶ち、 ウラメシエネルギーによって幽霊と化した軽部博士が先回りしていた!
 凄く駄目な人だけど、科学者としてはここまで劇中屈指の有能さかもしれない、軽部博士(^^;
 空間ワープシステムの心臓部を手に入れた軽部と阿久津の霊体が取っ組み合い、最終的に二人は、 開いた穴から霊界へと吸い込まれて消えていく。阿久津の指示により、心臓部のチップを逆回転させる事で、 元の敷地へと無事に帰り着く阿久津家。ここでは、壊れた装置にセットしたパネルを、JPとGGが強引に押さえ込んで機能させる、と、 最近じんわりと役立たずだったGGに、存在意義があったのが地味に良かったところ。
 阿久津の妻子も無事に意識を取り戻し、阿久津に奪われていたガンギブソンの銃は、どこからともなく戻ってきて、めでたしめでたし。
 「まったく、この世には不思議な事があるもんだぜ」
 まあ、妻子はこれから、非常に大変そうではありますが。
 前作『エクシードラフト』の(実質的)最終話であった第46話で、愛の裏返しの憎しみが父の仇を殺したのに対し、 憎しみの裏返しの愛が家族を救った話と見ると、なかなか趣深い。
 まあそれはうがち過ぎとして、全編頭おかしくてツッコミきれない内容なのですが、 幽霊相手でも全くブレないジャンパーソンにより、本作らしからぬオカルト話の筈が、 実に本作らしい仕上がりになってしまったという、狂気の果てのミラクル。
 マシンガンジョー、精神注入棒、そして今回の幽霊話と、今作における曽田脚本は、全体の割といいアクセントとして機能しています。 久々に東映ヒーローもの復活の曽田さんも、ノリが良くて楽しそう。
 次回、<ネオギルド>、まさかの大攻勢!

◆第29話「英雄(ヒーロー)死すべし!!」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:中野睦)
 見所は、怪しげな軍服ルックの子供二人が持ってきた電子部品の買い取りをしてしまうヤマダ電機(笑)
 ちょうど20年前ですが、当時はまだ、今ほど大きい会社では無かったのか……?
 <ネオギルド>のロボット狩りを行う兄弟、細川浩司と正志は、通りすがりの警官ロボットを問答無用で爆殺。 やってきたJPさんも謎の光線銃で容赦なく吹き飛ばすと、警官ロボットの残骸を回収して去って行く。
 ……懐かしい破壊行為です。
 こういうのを、因果は巡る、とでも言えばいいのか(笑)
 軍服にベレー帽と、形から入るタイプで立派な活動家の道を歩む細川兄弟の父は、 3ヶ月前に行方不明になったロボット工学の権威、細川博士。かおるの調べでは、このところ電気街にロボットの中古部品が出回っており、 どうやら兄弟が、ハントしたロボットのパーツを解体して売り払っているらしい。
 この行為に憤りを見せる二人ですが、やはり地下活動家たるもの、安易に足の付きそうな資金調達などもっての他です。 財力あってこそのアナーキズム!
 細川兄に解体されている警官ロボットは機能を完全に停止していないらしく、胴体から外された頭部 (首から下は箱の中に隠れて演技している、という映像)が解体に文句を言って口の中にペンチ突っ込まれたり、 この辺りのちょっとしたコミカルさは、かつて磁光真空剣に助手席で道案内させた三ツ村監督らしいコミカルさか。
 その頃、ガンギブソンはネオギルドの追っ手による猛攻を受けていた。
 なかなか派手なアクションで久々の見せ場かと思われたガンギブソンですが、黄色タイツの髭のおっさん・ギルゴードン×2、 白レオタードの女戦士・シルバレラ。3体の強力暗殺ロボットの攻撃を受け、あっという間に瀕死に。
 ……ここ3回ほど、全くいい所がありません(笑)
 更にそこへ自ら姿を見せるジョージ真壁。
 「駄目だ……俺は死ぬ。…………死にたくねぇ……」
 この辺り、凄く、ガンギブソンっぽいところ。
 だが、真壁はガンギブソンにトドメを刺す事なく、ある取引を持ちかける。
 「このままだと、世界中のロボット全てが、滅びる運命にあるのだ」
 それが嫌なら、協力しろ、と……。
 ヤマダ電機で資金調達を行っていた細川兄弟を襲撃する、<ネオギルド>の刺客。不意を打たれた二人は捕まりそうになるが、 その時、風を切るJPカード! だが、ジャンパーソンの前にはガンギブソンが立ちはだかり、細川兄弟は逃亡。 ジャンパーソンはダークジェイカーで細川兄弟を追い、<ネオギルド>は兄弟のジープにカブトムシ型の発信器を飛ばす。
 気になったから、と言われればそれまでですが、ジャンパーソンが細川兄弟を追いかける動機付けはやや弱い。この後、 追跡中にかおるが合流し、細川博士が「<ネオギルド>に大打撃を与える何か凄い発明」をしていたという情報がもたされるのですが、 かおるの同道させる都合で、情報の入手を強引にここに挟み込んだ感じにはなってしまいました。
 兄弟にしてみると冒頭に光線銃で吹き飛ばした手前、どう公平に判断しても、命がけの逃亡です。
 そんなわけでジープから後方に、ロケットミサイル発射。
 ……だが、そんなものではラスボスを止める事など出来はしない!
 平然とスカイジェイカーで追跡を続行するジャンパーソン。
 「今度は空から追いかけてくるぅ!」
 そうだ、おまえたち人間に、恐怖というものを教えてやる!
 それを見事に、乗り越えてみせろ!
 細川兄弟はジャンパーソンを研究所へと誘い込む事にし、近づいたスカイジェイカーとかおるの車に、 細川家から放たれるレーザービーム!
 大事な研究を守る為、安心と当然のセキュリティです。
 ジャンパーソンはかおるを助けに着陸し、兄弟の制止を無視すると、強行突破して裏口から研究所へと潜入。するとそこには、 行方不明になっていた細川博士が檻に閉じ込められていた。
 「はははははは、ははははははは! 貴様も小僧達の罠にはまったんだ!」
 哄笑する博士を助け出そうとしたジャンパーソン、そしてかおるも細川兄弟の罠にはまり、次々と囚われてしまう。
 手錠拘束とかされても、ヒロインゲージの上がる気配が髪の毛一本ほども感じないかおる、ある意味凄い。
 「どういうつもり? ジャンパーソンをこんなとこへ閉じ込めて」
 「ロボットだからさ。ロボットはみんな捕まえないとね」
 その言葉に違和感を覚え、細川博士をサーチしたジャンパーソンは、博士が人間ではなく、ロボットである事を知る。 細川博士そっくりのロボットの正体は、<ネオギルド>の潜伏用ロボット・カーマン。細川博士は既に殺されており、 カーマンと入れ替わっていたのだ。
 博士の研究を奪おうとしたカーマンだったが、その正体に気付いた兄弟は逆にカーマンを捕らえると、 博士の遺した研究を完成させる事で、<ネオギルド>に復讐を果たそうとしていた。
 博士の遺した研究――その名は、ジーザス・エンド。
 あらゆるヒューマノイド型ロボットにとって心臓部といえる生命チップを停止させる特殊な電磁波を放射、 人工衛星によって反射増幅する事で、その影響範囲は日本全土に及ぶ……発動したが最後、 日本中のありとあらゆるロボットを一切の区別なく殺戮する、対ロボット最終兵器であった!
 父の復讐に昏い情念を燃やす兄弟。弟の目つきが、非常にいい感じ。
 「そんな! ジャンパーソンは正義のロボットよ!」
 「正義のロボット? 何が正義のロボットだ。ロボットなんかどいつもこいつも、ただの機械の塊じゃないか!」
 「違う! それは間違っている! 私たちロボットにも、命があるんだ!」
 「親父も同じようなこと言って悩んでいた。ジャンパーソン……。正しいロボットだけでも救える方法はないかって。馬鹿だよ!  そんな事言っている間に、ジーザス・エンドを完成させていれば、ネオギルドに殺されずに済んだんだ」
 ジーザス・エンドを使っていれば父は死ななかった筈……その思いが兄弟をますますねじれさせていく。
 実際のところ、ここまで描かれてきた程度に日常生活にロボットが浸透している世界で、 何の安全装置も準備しないまま無差別にロボットをジェノサイドにしたら社会が大パニックに陥って下手したら機能停止するわけですが、 細川博士、どう考えても危険すぎるテロリスト。
 仮に<ネオギルド>の脅威に対抗する為にやむをえず研究開発したのだとしても、この世界観で全ロボット殺戮兵器を作り上げ、 それに「ジーザス・エンド」と名付けてしまう時点で、 かおると同系統の狂人であることは疑問の余地がありません。
 このエピソードのこっそり怖い所は、復讐に狂い、<ネオギルド>憎しの思いから反ロボットの理論武装をしている兄弟に対して、 既に死亡している為に、兄弟の回想における“いい父親”像でしか描かれない細川博士が、 明らかに狂信的なロボット排斥主義者ないし神の代弁者を語るマッドサイエンティストの類である事。
 当初は、ロボットではあるが人間愛至上主義であるジャンパーソンに、がちがちのロボット排斥主義者をぶつけるという、 シンプルにねじれた脚本だと思っていたのですが、なんというか、もっと根本的な所から狂気が滲んでいる!
 ジーザス・エンドの最終ユニット完成まであと1日。だが研究所の外には、発信器の信号を辿り、<ネオギルド>の部隊が迫っていた……。

◆第30話「爆裂!!最期の魂」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:中野睦)
 ロボットをただの「機械の塊」と言う細川兄弟に対し、「ロボットは生きている」と説得を試みるかおる。
 かおる「科学じゃ割り切れないけど、人間と同じ命が宿っているのよ!」
 兄「いい加減にしろ! もしそれが本当なら、こいつらはみんな、モンスターだぜ!」
 JP「モンスター?」
 弟「ロボットが死んだら、人間と同じようにお墓を作るの? そんなの変だよ」
 1クール目に散々やってきた暴虐の数々を、我が身に突き付けられるJPとかおる(笑)
 全てのロボットを破壊し、人間自らの手で、間違った科学の進歩をたださなければいけない。それに気付かなければ、 俺たち人間の未来は無い! と活動家らしくアジ演説をぶる細川兄。
 「その通りだ! 私ももっと、人間に立ち上がって欲しい!」
 ジャンパーソン、まさかの同意(笑)
 ジャンパーソンは、自分が正義執行でいわば泥をかぶって人間の日常生活を守る事に酔っている節があるのかと思っていたのですが、 むしろ深すぎる人間愛への信仰ゆえに、人間が自らの力でその社会を浄化できると信じていた!
 「わかってないなジャンパーソン。なぜ人間がそこに気がつかないか。それは、あんたがいるからさ!」
 「?!」
 「あんたが活躍すればするほど、人間はあんたを頼りにして、何もしなくなるんだ。ジャンパーソン!  あんたが本当に人間の事を考えるならば、あんたが居なくなるのが一番いいのさ!」
 そして投げ込まれる、ヒーロー不要論。
 前回の段階では、兄にしろJPにしろ台詞で語りすぎかと思っていたのですが、ここに来て、 テンション落ちない会話のやり取りが軒並み狂気を孕んでエキサイティングにヒートアップ(笑)
 ジャンパーソンはこれに何と返すのかと思われたその時、壁を突き破ってガンギブソンが研究所へと突入してくる。 ガンギブソンは弟を人質にとって兄をジーザス・エンドの所へ案内させ、それを破壊しようとするが、そこへ現れる真壁軍団。 ジョージ真壁の真の目的は、ジーザス・エンドの破壊ではなく、回収し、自分に逆らうロボットにだけ効くように改造する事であった。
 ジーザス・エンドを破壊したらとっととジョージを裏切ろうと考えていたガンギブソン、 そんなガンギブソンを先行役として利用していたジョージ、あまりレベルの高くない騙し合いで揉めている間に、 細川兄は隠し持っていた未完成のユニットを装置にセットし、ジーザス・エンドを発動させる!
 「死ね! ロボットなんかみんな、死んじまえ!」
 日本列島に降り注ぐ、殺ロボット電磁波の嵐! 生命チップを破壊する衝撃に苦しむガンギブソン、ネオギルドのロボット達、 そしてジャンパーソンだったが、何故かその中で活動できたジョージ真壁が、兄弟を取り押さえる。未完成だったユニットも爆発、 機能を停止し、外に連れ出した兄弟を陰険な袋叩きにする<ネオギルド>の面々。
 危機を感じたジャンパーソン、超本気。
 フルパワーで強引に戒めを破壊し、かおると共に脱出するジャンパーソン……やっぱり、その気になれば脱出できたのか(笑)
 細川兄弟をいたぶる<ネオギルド>だったが、ジャンパーソンとガンギブソンに挟まれ、「ジーザス・エンドは必ずいただく!」 と言い残して一時撤退。
 なお今回のジョージは、指から真壁光線ではなく、手持ち武器のレーザーライフルを扱っており、伏線を反映して区別した模様。 ……まあ、完全コピーロボットだと、後で幾らでも「実は……」ネタは出来てしまうのですが。
 危機を脱したジーザス・エンドと細川兄弟だったが、
 「俺はまだ、おまえの味方にもどったわけじゃないぜ」
 壊れたユニットを修理しようとする兄へ、銃口を向けるガンギブソン。
 しかし、その前にジャンパーソンが立ちふさがる!
 「ジャンパーソン、死んでもかまわんというのか!」
 「その通りだ。
 私は信じる。私たちが居なくなったら、人間はきっと立ち上がるだろう。そして、ネオギルドだけじゃない。 他の悪の組織も倒し、間違った科学を、正しい方向へただすにちがいない!」
 ヒーロー不要論を突き付けられたヒーローが、
 「その通り! 私が居なくなったらきっと人間は立ち上がる筈だ!」
 とそれを受け入れて前向きに破滅しようとするという、狂気の果てのヒーロー物の極北、 恐るべし、『ジャンパーソン』……!
 何が狂ってるって、根拠ゼロ。

 敢えて言うなら、ラスボスの果てしない人間愛信仰。

 加えて凄まじいのは、これはヒーローがその正義に殉ずる事によって起きる個人単位の自己犠牲ですらなく、 人間が自ら立ち上がるなら自分はもとより他の無辜のロボットが大量に巻き込まれるジェノサイドでも構わない、 というジャンパーソンの抱える破滅願望に根ざしているという事。
 事ここに至って、誰よりもジャンパーソンが自らの出自を呪い、ロボットという存在を憎んでいるのではないかという暗黒面が噴きだし、 「ロボットは生きている」けれど「ロボットは殺っていい」というJP理論の根底にあるのは徹底的なロボット差別主義である事が浮き彫りになってしまいました。

 駄目だ! みんな狂ってる!!

 (ある意味、東映ヒーローとしては、『仮面ライダー』テーマのストレートにして純粋な昇華と言えるかもしれませんが)
 「いや! そんなの嫌よぉ!!」
 「かおる……」
 うん、かおるは、人間信じてないから。
 しかし今作の、人間信じてないからジャンパーソンの正義執行をサポートしていたかおるが、ジャンパーソンから人間(愛)信仰を突き付けられる、 という構図はどこまでも歪んでいます(^^;
 「冗談じゃないぜ! そんな綺麗事、信じられるかってんだ! 貴様がなんと言おうと、俺はこいつをぶっ壊す!」
 「ガンギブソン!」
 「どけ! 俺は死にたくないんだ!」
 ぷっちーーーん
 鉢植え回に続き、再びジャンパーソンの目が光る!
 JP怒りの鉄拳、またも炸裂。
 「ガンギブソン! キャロルを思い出せ!」
 キャロルの仇さえ討てれば死んでもいい筈
 ↓
 ジーザスエンドが発動すれば<ネオギルド>大壊滅
 ↓
 キャロルの仇が討てるのだから、死んでも問題ない筈
 ↓
 むしろ、潔くて漢らしい
 ↓
 無 問 題 !

 広がり続ける灼熱の狂気空間に飲み込まれ、説得を受け入れてしまうガンギブソン。

 ……いや待て君たち、もう一度深呼吸して、よく考えよう。たぶん文明大崩壊システムだから、ジーザス・エンド! 日本だけ、 という可能性もあるけど。
 「いや! あたしは嫌よ!」
 「かおる、いい加減にしろ」
 ジャンパーソンの叱責を受け、言葉を無くすかおる。
 かおるにしても、ジャンパーソンを失う事が嫌なだけで、他は概ねどうでもいい為、感情論に終始し、 システムの孕む危険性は二の次三の次。
 「浩司くん、ジーザス・エンドを完成させてくれ」
 「ジャンパーソン……」
 「そして君の手で、ネオギルドを潰すんだ!」
 同時に日本も大崩壊するけどな!

 愛があれば、大丈夫☆

 一周回って、むしろジャンパーソンに焚き付けられる細川兄。常人なら精神の平衡を失いかねない所ですが、 復讐に狂う細川兄は手を止める事なく、JPとGGが警護に立つ中、ジーザス・エンドの完成を急ぐ。そんな兄に、 敢えてカーマンを生かしたままなのは父そっくりのカーマンを殺せなかったからで、本当は貴方は優しい心を持っている筈…… と粘り強く説得を試みるかおるであったが、なにぶんヒロイン力が限りなく0に近いので、 浩司の心の針をぴくりとも動かす事は出来ないのであった。
 油断していると、かおるが浩司を刺しそうで、凄く、ドキドキします。
 一方、体勢を立て直した真壁はカブトムシ発信器を使って細川弟を催眠状態にすると、カーマンを解放させる事に成功する。 弟を人質にとって襲来するネオギルドであったが、ジャンパーソンとガンギブソンは人質そっちのけでいきなり飛びかかり、 交戦状態へと持ち込む(笑)
 肉親の情に流されずにその引き金を引けるのか。
 ――そう、市井の活動家から真の革命家へと脱皮できるか否か! ラスボスはその覚悟を問うている!!
 破滅主義、コワイ。
 JP&GGvsネオギルド軍団という、珍しい多人数肉弾バトルで、ここは見せ場たっぷり。最近、確信を持ってきましたが、 ガンギブソンは間違いなく、肉弾戦の方が強い(笑)
 乱戦を抜けだした浩司は真の革命家となるべく未完成のジーザス・エンドを発動させようとし、かおるはそれを必死に止めるが、 追いかけてきたノーマル暗殺ロボに追い散らされて逃げ出す事になる二人。一方戦場では、意識を取り戻した弟の首に爪をあてながら、 カーマンが迫っていた。
 「動くな! この小僧が死んでもいいのか!
 直後にワイヤーパンチ(笑)
 すぐ後にガンギブソンが飛び込んで強引に救出するのですが、見事な連携というよりは結果的に助かっただけで、 覚悟完了した破滅主義者の前には、人質など塵ほどの意味も持たない事がよくわかります。 そこへ暗殺ロボットに追われたかおると細川兄が逃げてきて、<ネオギルド>軍団の攻撃から、 3人を守るジャンパーソンとガンギブソン(兄は守らないとジーザス・エンドが発動できないし、かおるにはさすがに義理も情もある)。
 ここでは久々の、<レスキューポリス>シリーズ名物だった、鉄の壁ポーズ。
 3人を守って猛攻を受け、満身創痍となるジャンパーソンとガンギブソンは膝を付きながらも、浩司にジーザスエンドの発動を託す。
 「浩司くん、君たち、人間の力で、もう一度、もう一度、正しい世の中に、私たちロボットを生み直してくれ!」
 ここでジャンパーソンの抱えるテーマと繋がったのは良かった所。
 良かった所で、素直に受け止めると格好いい台詞なんですが、なんですが、 今の世の中をリセットして正しい人間とロボットの関係を作り直そう、というジャンパーソンの主張は明らかに行き過ぎていて、 かつ身勝手で、自分の体験をベースに「今の世の中、駄目だと思う」というJPさんのこれまでの数々の正義執行が、 如何に破滅主義に裏打ちされた世直しテロリズムであったかというのが改めて強調されてしまった、 という恐ろしい展開。
 ジャンパーソン達がネオギルド軍団を食い止めている間にまたもジーザス・エンドへと戻った浩司は、 「こんなもの、こんなもの……!」とジーザス。・エンドを破壊する。
 それは、ジャンパーソンの中に確かに「人間と同じ命」を見たからなのか、それとも、 「このままでは、俺はこいつと同じになってしまう……!」という恐怖を感じたからなのか。
 異変を感じるジョージ真壁、ジーザス・エンドを破壊し、JPらの元へと戻ってくる浩司。
 今回かなり盛り上がったのですが、ここで研究所と戦場の行ったり来たりを繰り返したのが、非常に間が抜けてしまい、 勿体ない感じになってしまいました。もうちょっと、演出、頑張ってほしかった。
 かおると細川兄弟は退避し、改めて対峙し、ぶつかり合う、JP&GGvs<ネオギルド>軍団。
 左腕を持ち上げるいつものポーズを決めるジャンパーソンの横で、決めポーズが無いガンギブソンは仕方なく、肩をすくめる(笑)
 というか、もうこれ、このまま戦闘でも決めポーズになるのか……?

 3人をガードしなくて良くなったジャンパーソンは、超本気。

 久々のジャンブレーダーで交錯一閃、シルバレラ瞬殺。
 ニーキックミサイル発射で、ギルゴードン×2爆殺。
 ジャンバルカン激射で、カーマン滅殺。
 <ネオギルド>強力ロボット軍団、ここに秒殺。
 前後編という事もあり、手を変え品を変え、アクション満載で楽しかったです。
 ロボットも生きているとか、カーマンを殺せなかった優しさとか、そういった点に関しては後日改めて考えたい。
 ……あ、GGさんは、黒いの3体、倒しました。
 「おのれ……覚えていろジャンパーソン、ガンギブソン!」
 ジョージは煙幕を張って逃亡。
 27話で、やれば出来る所を見せたジョージでしたが、戦力大激減で、再び、 <ネオギルド>の明日はどっちだ?!
 「浩司くん、なぜだ、なぜジーザス・エンドを作動させなかった」
 なんか、責 め ら れ て る!
 「出来なかった……俺には。ジャンパーソン、あんたを殺すなんて、俺には出来なかったんだ……」
 膝を付いて泣く浩司。
 なんていうか、ロボットの命に共感したというより、もっと深い狂気を覗き込んで憑きものが落ちた としか思えないんですが(笑)
 「浩司くん、君たち人間の力で、正しい世の中をつくってくれ。私も頑張る。そしていつか、 人間とロボットが共存できる日が来ることを、信じている。きっとな」
 ……いやええと、既に共存はしていると思うんですよ。
 一部に困ったロボットが居るだけで。
 <ネオギルド>を壊滅させる為に(そもそもその為に造られたのかは不明ですが)、 そんな社会を一回更地にしようという細川博士の狂気を、我らがジャンパーソンがもっと大きな狂気で飲み込んでしまうという、 恐ろしい狂気のインフレーション。
 問答無用の正義執行→プログラムを超えてつかみ取った新たな「正義」の意味→行き過ぎた人間愛信仰→ 他のロボットを巻き込んでも構わないジェノサイド願望  と
 3クール目にして、新たなフェーズへ突入してしまった、ジャンパーソンの狂気。
 一応正義のヒーローが、「間違った生まれなりに正しく生きようと努力してきたけど、そんな世界をリセットしてくれるなら、 多少のジェノサイドは仕方ない」と認めてしまうという、驚愕の地平。
 ある種のパロディだったりアンチヒーローだったり、コメディ調の“らしくないヒーロー”で、 「ヒーロー物を相対化する」というのはありますが(同時期の『五星戦隊ダイレンジャー』は、 “ヒーローになりかけ”のメンバーを置く事で、かなり意識的に行っている)、ひたすら正統派のヒーローの筈なのに、 その宿す狂気が「ヒーロー物を突き抜けてしまった」という、とんでもない所へやってきてしまいました。
 作り手がどうも、確信犯でやっているわけではなく、たまたまそうなっているっぽいのがまた。
 次回、なんだか熱い展開になりそうですが、今度はいかなる狂気が炸裂するのかっ?!

◆第31話「新型JP(ニュータイプジャンパーソン)誕生?!」◆ (監督:小西通雄 脚本:宮下隼一)
 いきなり出てくる、目つきの悪い小型メカ。
 それはかおるが国連時代、停戦監視用に開発していたロボット、アールジーコであった。
 優れたレーダー機能を備えたアールジーコは、ジャンパーソンを「ジャンパー」、かおるを「マミー」、 ガンギブソンを「ガンモドキ」と呼ぶなど、実に軽い口調で、いきなりガンギブソンと揉める。
 「いい加減にしろ、二人とも。仲間同士のいざこざは敵に付け入る隙を与えるだけだぞ」
 ジャンパーソンが仲裁に入り、仲直りをするガンギブソンとアールジーコ。
 ここまでの世界観と少々そぐわないマスコットメカに演出として困ったのか、なんか、変な芝居(笑)
 「さすがジャンパーソンね。これで我がチームも一層のパワーアップがはかれそうだわ」
 突然、委員長キャラと化すジャンパーソン、そして「我がチーム」とか言い出した悪の女教師・三枝かおるは、 組織の更なる強化にほくそ笑むのであった!
 ところで、ずっとガンギブソンのあだ名を悩んでいたのですが(悩まなくていい)、
 ガンモドキ!
 これは参りました(笑)
 もうこれだけで、アールジーコ登場の甲斐があったと言っても過言では無い!(おぃ)
 ふわふわ動く小型マスコットロボ、というと某デミタスを思い出さずにはいられず、二の舞にならない事を祈ります。
 その頃、バトルマシン計画も失敗に終わった帯刀は怒り狂いながら、これまでのジャンパーソンとの戦いを思い返していた。
 「ジャンパーソン、ジャンパーソン、ジャンパーソぉン!」
 編集の都合で、ジャンパーソンが殴ったら珍大光が爆発した感じに(笑)
 「遊びは終わりだジャンパーソン、あのネオギルドが造り出すロボットを超え、 あのスーパーサイエンスネットワークが造り出すバイオモンスターを超え、そして……貴様を超える最強の存在に生まれ変わるために、 俺は俺自身を改造する。――究極の悪。絶対の悪。魔王の誕生だ」
 ルーゴ回の伏線が発動し、不穏な決意を口にする帯刀。なんとそれは、自らの改造!
 悪の組織のボスが実は怪人だったり謎の生命体でしたというのは割とある話ですが、 悪の組織のボスがあまりに圧倒的なラスボスに対抗する為に物語中盤で自らを改造するというのは、 なかなか珍しいシチュエーションでしょうか。
 一方、ロボット刑務所の再建計画に携わっていた鳴海博士から「至急、見せたいものがある」 と連絡を受けたかおるは単身待ち合わせに向かうが、鳴海の身柄は一足違いでマヤによって拉致されてしまう。 現場に遺されていたフィルムの中身を確認したかおるは、そこに時実博士の姿を発見する。
 時実小五郎(野口英世似)……それは、かおると鳴海の師にあたるロボット工学の権威であり、あの、 MX−A1の立案者であった!
 てっきり濁されるかと思っていましたが、ここで遂に姿を現す、殺意丸出しロボの生みの親。 現状かおるがあまりにアレなので、責任を押しつけられるもっと酷そうな人を出してみた、という感もありますが(笑)
 時実小五郎役は、洋画の吹き替えなどでも活躍する森田順平で、非常にいい声。露骨なキチガ○ではなく、 いっけん落ち着いている○チガイを好演。
 いったい鳴海は何を伝えたかったのか……時実家を訪れたジャンパーソンとかおるだが、家の中は荒れ果て、 無人になって久しい様子であった。時実博士はMX−A1の第二次プロジェクトを申請するが、 それは機械と生体の融合により人間を超える存在を造り出そうとする禁忌の計画であり、政府はこれを却下。 その反動も手伝ってますます研究にのめり込む内にとうとう妻に愛想を尽かされるが、娘を連れて出て行こうとした妻が、 娘と共に事故死。その日を境に、学会からも姿を消していた……。
 「人間としての心も、科学者としての心も、きっとその時捨ててしまったに違いないわ。……全て」
 キチ○イ、キ○ガイを批難する。
 時実博士をやたら断定的に詰るかおるですが、そのやっている事は正義を執行する審判者としてのロボットの作成であり、 人間を超えるロボットが大好きなかおるが、人間を超える存在を造り出そうとする時実を否定する、というなんとも歪んだ構図です(笑)

 「ゴジラでもビオランテでもない。本当の怪獣は、それを造った人間です」
 (白神博士/『ゴジラvsビオランテ』)

 モドキの時もそうでしたが、かおるが“人間以上(外)”の存在にやたらに忌避感を示すのは、一般論以上に、 歪んだロボット愛と人間不信の発露にしか見えません(^^;
 国家予算のちょろまかしによる人類超越計画に失敗した上に、家族も失った時実に資金協力を申し出たのが、帯刀龍三郎であった。 時実は帯刀の手術シーンを見せつけながら、第二次MX−A1プロジェクトに、さらってきた鳴海をスカウトしようとする。
 手術しながらスカウトする、というのが実にマッド。
 「断る! 私は科学者として、いや、人間として恥ずべき事はするつもりはない!」
 「そう言うだろうと思ったよ。しょせん君などに、このプロジェクトの偉大さはわからん」
 完全にイッてしまっている時実の言葉に、鳴海はなんとか縄抜けに成功して逃げ出すと、JP基地へ連絡。
 ……公衆電話でかかるのか(笑)
 急ぎ鳴海の救援に向かうジャンパーソンであったが、時実による帯刀のオペも完了してしまう。
 「成功だ……! 新しい歴史の幕開けだ! 人間を超え、ロボットを超え、あのジャンパーソンをも超える、まさに、 魔王とでも呼ぶ他ない存在。バイオボーグ・ビルゴルディの誕生だ。――目覚めよ、ビルゴルディ!」
 ビルゴルディはいきなりは全身を描かれず、鳴海に迫る鋼鉄の足音、逃げ出した鳴海を追い詰める黒い影、とまずはホラー調の演出。
 鳴海の隠れている工場地帯に辿り着いたジャンパーソンとアールジーコは、手分けして鳴海を捜索。 この展開で単独行動をとってしまうアールジーコ、いきなり大ピンチの予感(笑)
 案の定、鳴海を発見した直後に撃たれる。
 「俺が相手だ!」
 そこへ駆けつけるジャンパーソンだったが、何者かの銃撃により、目の前で倒れてしまう鳴海博士。
 「貴様は誰だ!」
 暗がりから姿を現したのは、ジャンパーソンと似た意匠を持つ、赤+金配色の鋼鉄の存在――それこそが、 バイオボーグ・ビルゴルディ!
 2013年の今見ると、凄く、アイアンマン(笑) (※『アイアンマン』の初登場は1963年ですが、近年のメジャー化、 という意味で)
 「似ている……この俺に」
 そう、
 目には目を、歯には歯を。
 ラスボスにはラスボスを。
 すなわち

 狂気の正義 vs 絶対の悪

 これぞまさしく

 魔王頂上決戦!

 にせウルトラマンに、にせライダー、キカイダーにハカイダー、 古来よりヒーローに対抗する為の偽ヒーローないしダークヒーローというのは数多いですが、ここで注目されるのは、 悪玉サイドが正義のヒーローの姿を纏う事でそれに対抗しようとするという、逆『デビルマン』の構図になっている事。
 まさしく己を捨てて悪魔の力を手に入れた帯刀=ビルゴルディ、連続回し蹴りからの飛び蹴り炸裂、その凄まじい戦闘力に、 ラスボスまさかの滅多打ち。そして、腕も飛んだ!
 更に、ニーキックミサイル!
 そこへ駆けつけたガンモドキがミサイルを撃ち落とすが、合流した二人を吹き飛ばすデュアルレーザー!
 実に徹底したパチモンぶりです(笑)
 まあ、同じMX−A1をベースにしていると考えると、著作権は時実博士にありそうですが。
 試運転という事か、ビルゴルディはそこで撤退。やってきたかおるは、虫の息の鳴海博士を抱き起こす。
 「三枝くん、先生を……時実先生を止めてくれ」
 鳴海はロボット刑務所再建の為に各方面に声をかける中で、時実が犯罪組織に協力、 第二次MX−A1プロジェクトを密かに進行していた事に気付いてしまい、独自にその身辺を探っていたのだった。
 「あの男に、先生はあの男に改造手術をほどこして、ビルゴルディという名の、悪の魔王を……!」
 「ビルゴルディ、悪の魔王……」
 同じMX−A1から生まれた、光と闇。
 というか、闇と闇。
 鳴海博士は、“その男”の名を告げる事なく絶命するが、ジャンパーソンには一つの心当たりがあった。
 「おそらく、あの組織だ。<ネオ・ギルド>でもスーパーサイエンスネットワークでもない、もう一つの組織!」
 ……よく、知らなかった(笑)
 まあ、帯刀コンツェルンは表社会のグループ名しか無くて、特に闇の組織名が設定されてないからなんですが。帯刀、 自分の中では何か考えていそうだけど、発表する機会に恵まれていない。
 「でも酷いよ、ジャンパーソンをコピーしてさぁ」
 「なんという事を……なんという事を……時実先生!」
 かおるの泣き顔のアップが力入りすぎて凄いことに。
 そして会話の流れの関係で、鳴海の死に憤っているのではなく、私のジャンパーソンが汚された事 に怒っているようにしか見えない。
 MX−A1をベースに魔改造をほどこすという、やっている事は全く同じなんですが(笑)
 かおるに自覚があるのかはさておき、同じだから余計に怒っているというか。
 はからずも、ヒーローと最強の敵だけではなく、その背後に居るマッドサイエンティストの存在までが合わせ鏡になっている、 というのが今作の恐ろしい所です。
 再登場あえなく死亡した鳴海博士ですが、助けを求める人間をジャンパーソンが救えなかった描写は恐らく劇中初で 間に合わなかった、的にやや濁していますが)、戦闘ばかりでなく、ここに来て初の、ヒーロー完全敗北となりました。
 ビルゴルディは装着変身タイプらしく、ヘルメットを外して、哄笑する帯刀龍三郎。
 「ふふふふ、遺言を書いておけ、ジャンパーソン。ガンギブソンともども、今度こそ地獄へ送ってやる。貴様達にもう、明日はない。 終わりだ、終わりだ、終わりだ!」
 いい年したおっさんが悪の変身ヒーローとなり最強の敵として立ちはだかるという、まさかすぎる展開。
 スーツの赤金配色といい、中身が金持ちの社長な事といい、ビルゴルディのイメージモチーフは『アイアンマン』でしょうか?
 くしくも今作の放映年(1993年)は、『アイアンマン』の初登場(1963年)から30周年にあたるのですが、 まさかマーベル・コミックもスタン・リーも、かつてレオパルドンを生んだあの国で、 そんなオマージュが捧げられていたとは夢にも思うまい。
 いや、実際のところどうなのかは知りませんが。
 今作自体が企画段階で『バットマン』を意識していたという話は耳に挟んだので、全く偶然とも思えない所ではあります。
 今回は、途中で引用した台詞を借りるならば、まさに
 「ジャンパーソンでもビルゴルディでもない。本当の怪物は、それを造った人間です」
 というエピソードだったのですが……あっれー……もしかして、そういうテーマだったのかなぁ、今作。
 そう見ると前回、細川兄弟が命あるロボットを「モンスター」と称したり、兄がジャンパーソンに叩きつけたヒーロー不要論も、 また少し別の意味を持ってきたりも。
 『ゴジラvsビオランテ』の公開が1989年で、1990年代になると、環境問題なりその背景としての科学の発展への疑義、 というのが様々な物語の中で大きなテーマとして扱われる事が多くなっていくわけですが、そう考えると、 『ゴジラvsビオランテ』−『特警ウインスペクター』(レスキューポリスシリーズ)−『特捜ロボジャンパーソン』というのは、 テーマ的に深く繋がっているのかもしれない……ジャンパーソンは、東映ヒーローと東宝怪獣のクロスする場所に居たのだ!  とまで言うとまあ、与太話ではありますが(笑)
 しかしここにきて、当初は問答無用かつ単純明快なヒーロー像で《レスキューポリス》シリーズとの脱皮・差別化を図られていた今作が、 思ったよりも前シリーズを踏まえており、ジャンパーソンの狂った人間愛信仰を通して、むしろ、人間とは何か?  をえぐり出す作風になってきたのは、非常に興味深い。
 帯刀がMS化したのは、人間のままだとジャンパーソンがパニッシュできない作劇上の都合が主かとは思いますし、 最終的に「悪」を捨てない人間と対峙したジャンパーソンの決断……という展開も見たかった気はしますが、これはこれで、 面白い展開になって参りました。
 さて後半戦、どうなっていきますやら。
 なお筆者は『ゴジラvsビオランテ』を物凄い偏愛しているので、『ビオランテ』と絡めて何か語り出したら、 話3分の1ぐらいで聞いて下さい(笑)

◆第32話「脱出不能の迷宮(ラビリンス)」◆ (監督:小西通雄 脚本:宮下隼一)
 東洋銀行で、銀行強盗発生!
 駐車場から逃げだそうとした犯人だが、その前に突き刺さるJPカード!
 しかし現れた黒い影は、強盗の逮捕に協力するどころか、なんと銀行の警備員を撃ち殺す。
 続けて今度は、パトカーから逃走する暴走族を、ニーキックミサイルで支援(笑)
 もちろん全てはストレスの溜まったジャンパーソンの仕業……ではなく、ビルゴルディによる、 嫌がらせであった。
 投げつけられたJPカードを見た瞬間に、銀行強盗が無条件降伏しようとするあたり、この世界も随分、 ジャスティスによる恐怖が根付いている模様です。
 罠とわかっていても、この挑発を捨て置くわけにはいかない。かおるの制止を振り切り、 ジャンパーソンは真の魔王がどちらかを決めるべく、ビルゴルディとの戦いへ向かう。
 幼女を人質にした強盗グループに向けて投げつけられる偽JPカード。現れたビルゴルディは警官隊に銃を向けるが、 そこへ突き刺さる、風を切るJPカード!
 「ジャンパーソン・フォー・ジャスティス!」
 ぶつかり合う、ラスボスと魔王。
 これまで重いアクションの多かった今作で、ビルゴルディは鋭い回し蹴りなど、スピード感あるアクションが非常に映えます。 当然意図的な差別化でしょうが、これまでにない難敵、というのが良く出ていて素晴らしい。
 格闘戦における反応速度、打撃力ではビルゴルディが上。ビルゴルディのロケットパンチ(ワイヤーパンチと違って、無線) を受けたジャンパーソンはブレイクナックルで反撃するが、なんとビルゴルディはそれを受け止めると、自らの右腕に装着してお返し(笑)  追い込まれたジャンパーソンはスカイジェイカーを召喚するが、今度はコントロールをジャックされてしまい、 逆に機銃の雨を浴びる事になる。
 て、『バビル2世』!
 駆けつけたガンギブソンによって窮地から救い出され、各種無線にはスクランブル対策がかけられるが、 ジャンパーソンの攻撃すら取り込む闇の兄弟機・ビルゴルディの力に、組織はかつてない苦境に追い込まれるのであった。
 なにか打開策はないのか……考え込むかおるは、鳴海の残した写真が、時実博士のプライベートラボを写している事に気付く。 情報を求め、時実プライベートラボへと向かう、ガンギブソンとアールジーコ。
 凄い巨大だ、時実プライベートラボ。
 なにか、奥さんの出て行った真の理由が垣間見えます。
 そして迂闊ガンモドキ、あっさりと罠にはまり、謎の空間に取り込まれる(笑)
 「ようこそガンギブソン、ラビリンスへ」
 突然ミサイルが現れたり、地割れが起きる謎空間……まあストレートに言って要するに、 定期的にやるように言われているとしか思えない魔空空間ですよ奥さん!
 そこは、時実博士が自分の意識をパルス信号化してラボ内部に実体化させた、いわばバーチャルマインドシステムの世界であった。 魔空空間に翻弄され、ビルゴルディの攻撃に追い詰められていくガンギブソンと、 だっこちゃんのように腕にくっついて一蓮托生になりつつあるアールジーコ。
 修理を終えて目覚めたジャンパーソンは、モニターされている戦闘を見ながら、 これを打ち破るには外部から時実博士の意識にアクセスするしかない、と提言。
 「もっと深い、彼自身も気付いていない、隠された、心の奥底に対してなら!」
 「潜在意識! それだわ、ジャンパーソン!」
 時実対策をかおるに任せ、ガンギブソン救援へ向かうジャンパーソンもまた、時実ラボで魔空空間へと飲み込まれる。
 火の玉や恐竜、果ては戦車に襲われる二人。続けて戦闘機、更にメテオストライク、と大盤振る舞い。
 しかしビルゴルディは、普通に戦っても両者を圧倒できるのにどうしてわざわざ、謎空間でイメージ超能力で戦うのか。
 今回はこの、ギミックとしての魔空空間ありき、で話を作る事になっていたのか、 この空間のシナリオ上の必然性が全く描かれないのが困ったところ(^^; ハッタリはハッタリで良いのですが、 出来れば物語の中に綺麗に組み込んでほしい所であります。
 二人が追い詰められていく中、時実ラボへと車を走らせたかおるは、車内からあるデータをパルス信号として発信し、 バーチャルシステムの妨害を開始する。
 魔空空間を作成する時実の意識の中に姿を現し、「もうこんな事はやめて」と叫ぶのは、失われた妻子の幻影。
 「これは……?!」
 酷い、酷すぎる。

 三枝かおる、鬼畜。

 「こんな事が出来るのは。まさか……生きていたのか三枝くん」
 時実の妻子の写真立てを持って現れたかおるは、自分がやったのはあくまで妻子の映像情報をパルス信号として送り込んだだけで、 それをイメージ世界の中で実体化し、今の行為をやめるように叫ばせたのは時実の潜在意識である、と主張。
 「目を覚まして下さい先生、奥さんと、お嬢さんのためにも」
 動揺する時実はかおるをラボの部屋から追い出すが、これにより、魔空空間は消滅。現実世界へ帰還したJP、GG、BDは、 生身の戦いを展開し、炎上していくラボの中で壮絶な死闘が繰り広げられる。
 力の入った2対1バトルで、やはりここでも映える、ビルゴルディの飛び回し蹴り。
 2体の最強ロボに挟まれながらも圧倒的優位に戦いを進めていたビルゴルディだったが、 ガンギブソンにトドメを刺そうとした所をジャンパーソンが背後からアークファイヤーで焼きに入り形勢逆転。 ジャンブレーダーからジャンバルカンの連打、ガンギブソンの銃撃などもあり、逆に追い詰められる。しかしその時、 飛び込んできたマヤが二人を蹴散らしてビルゴルディを助けると、ラボを崩壊させて逃亡。 マヤとビルゴルディはラボを脱出する為に時実のもとへと向かうが、そこでは変心した時実が待ち受けていた。
 「やはり私が間違っていた。こんな事は人間としてするべき事ではなかった。おまえは、私が一緒に地獄へ連れて行く」
 いきなり真人間に戻った博士、もろともに果てようと、ラボの自爆スイッチをぽちっとな。 怒りのビルゴルディ帯刀はその場で時実を抹殺するが、大崩壊していくラボ……密かにピンチになるかおる(笑)
 ついでにかおるも抹殺しようとしたのですね、わかります。
 そもそも博士の台詞が、ビルゴルディとかおるの両者に向けられている疑惑(笑)
 ジャンパーソン、ガンギブソンはかおると合流し、ブレイクナックルとドリルジェイカーで3人+アールジーコはなんとか脱出に成功するが、 時実博士は妻子の写真とともに、炎に包まれて消えるのであった……。
 後日、時実博士の墓碑の前で嘆くかおるをジャンパーソンが慰めようとするが、ガンギブソンがそっと止める、というのは、 喪失を経験しているガンギブソンらしさが出て良かったところ。まあ、かおるとしてはここはジャンパーソンに慰められてヒロイン度を上げたかった所な気はしますが!
 その辺り、微妙に余計な事をするのもガンギブソンらしいかもしれない(笑)
 時実博士を救えなかった悲しみにくれるかおるだったが……その時、墓碑の十字架に突き刺さるビルゴルディカード!  あの大爆発の中、ビルゴルディとマヤもまた、生き延びていたのだ。
 「必ず地獄に送ってやる。首を洗って待っていろ。ジャンパーソン、ガンギブソン……!」
 様々な狂気を孕みながら、戦いはますます激化していく……!
 うーん……前編の盛り上がりを生かし切れなかった、残念エピソード。
 2対1で挟撃されても圧倒的だったビルゴルディに、いきなりジャンパーソンの反撃が決まって押し込んでいく理由が一切ないのが、 非常に雑で勿体ない。そも特撮の戦闘は、勢いのみで逆転してしまうというのは良くある事ですが、 ここまで圧倒的だったラスボスの前に初めて現れた対等以上の敵であり、強烈なインパクトをもたらしたビルゴルディだけに、 そこは丁寧に描いてほしかったです。
 アールジーコが何か切り札にでもなるのかと思いきや、後半、フェードアウトするし(^^;
 また例えば、改心した時実が再びバーチャルシステムを起動して、それがビルゴルディに隙を作るとかすれば、 バーチャルシステムにシナリオ上の意味も出るし、時実の変心が、印象的になったと思うのですが。
 バーチャルシステムに関しては途中で書いたように、大きなハッタリを効かせてほしいというシナリオ外からの要望だった感はありますが、 シナリオ上の必然性を何とかもう少しでっち上げてほしかった所です。
 で、肝心の時実博士がそもそも、妻子を失って暴走したのではなく、妻子を失う前からMX−A1作ったりバイオボーグを計画していた人なので、 その博士が「心の奥底では自分の研究を止めて欲しがっていた」から「幻の妻子の呼びかけに応えて改心する」というのは、かなりちぐはぐ。
 そういった物語上の辻褄、というのはさておくにしても、後編でここまで安直に改心するなら、前編から振りようは幾らでもあった筈で、 単純に非常につまらないシナリオになってしまいました。
 結論として最も筋が通るのは、潜在意識と偽ったかおるの精神汚染攻撃。
 あたしのジャンパーソンを汚した罪、許すまじ!
 そして、それはそれとして、心から時実博士の死を悼んでいる所に、かおるの狂気を見るべきでしょうか(笑)
 帯刀の変身、モブ含めけっこうな数の人死に、とかつてないハードな展開になってきたところで……次回、 宇宙人襲来。
 普通に考えると、世界観ぶち壊しのやってはいけないネタですが、この飛び具合といい、サブタイトルといい、扇澤脚本か?  今作はそうかと思うと、曽田さんが斜め上から抉り込んでくるので侮れませんが。

→〔その7へ続く〕

(2013年12月18日)
(2017年4月20日 改訂)
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